(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346781
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】印刷された弾性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20180611BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20180611BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20180611BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20180611BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
B32B27/12
A61F13/15 311Z
A61F13/49 310
B32B27/00 K
B41M1/30 Z
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-94964(P2014-94964)
(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2014-218081(P2014-218081A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】13166524.2
(32)【優先日】2013年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504376658
【氏名又は名称】モンディ・グローナウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ホーメレ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・シェーンベック
【審査官】
佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06702795(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0092943(US,A1)
【文献】
特開2006−205705(JP,A)
【文献】
特表2009−501603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
B41M 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性フィルム(1)を細長い片(2)に切断し、
該細長い片(2)を二つの表層(5、6)の間で互いに隣り合わせて積層させ、そして 領域(8)の中で積層された該細長い片(2)によってウェブの横方向において弾性となる、その領域(8)中で、そのように構成された積層体(7)を延伸させる、
印刷された、弾性積層体の製造方法であって、
前記弾性フィルム(1)に、それが細長い片(2)に切断される前に、前記積層体(7)のテキスタイルの表層(5、6)を介して可視できるモチーフが印刷されることを特徴とする、上記の方法。
【請求項2】
該弾性フィルム(1)のウェブの方向に延びる着色された平行な細長い片で形成された縞模様のモチーフが前記弾性フィルム(1)に印刷されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弾性フィルム(1)がフレキソ印刷によって印刷されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記弾性フィルム(1)がグラビア印刷又はデジタル印刷によって印刷されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記印刷の前に、前記弾性フィルム(1)を、ウェブの方向を横切って延伸させ、そして弾性引き戻し後に印刷することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記弾性フィルム(1)が、該弾性フィルム(1)の延伸前の開始幅(B1)よりも、10%〜30%大きい弾性引き戻し後に幅(B2)を有するように、ウェブの方向を横切って50%超拡張されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記弾性フィルム(1)及び/又は積層体(7)を延伸させるために、相互にかみ合うプロフィルローラーからなるストレッチローラー装置が使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記弾性フィルム(1)として、ポリオレフィンエラストマーから製造されたフィルムが使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記弾性フィルム(1)として、スチレン−イソプレン−スチレン−ブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン−ブロックコポリマー、ポリウレタン、エチレン−コポリマー又はポリエーテルブロックアミドから製造されたエラストマーコア層を有する単層又は多層フィルムが使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記細長い片(2)が、偏向器(3)にわたって誘導され、そして、平行な細長い片(4)としてラミネーターに供給され、該ラミネーターの内部で、該細長い片(2)が、テキスタイル表層(5、6)間で積層されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記弾性の細長い片(2)が、前記表層(5、6)の間で違いに離間して積層されて、前記積層体(7)の中に弾性領域及び非弾性領域(8、9)を形成させることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された弾性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、二つのテキスタイル表層間で相互に隣り合って積層されて、積層体を形成する弾性フィルムを細長い片に切断する方法であって、該積層体が、細長い片によって弾性になった領域において、ウェブ方向に対して横方向に延伸される、該方法に基づく。その横方向における延伸はまた、メカニカル活性化とも呼ばれ、材料のウェブの方向に対する横方向(CD方向)における積層体の弾性特性を向上させる。
【0003】
テキスタイル表層は、不織材料、織物材料又は編み物材料から製造することができる。細長い片は、十分な量の弾性重合体(elastomeric polymer)を含有する単層又は多層に構成することができる。細長い片は、それらの表層に接着又は溶接される。積層体からなる衛生製品のための弾性要素、特に、弾性の中間領域及びそれに隣接するより弾性の小さい端部を有するおむつのための閉包型の弾性の細長い片に、ダイカットできる。その端部は弾性でないか、又は弾性が小さく、例えば、面ファスナーテープのような、フック−ループ型ファスナー要素を閉じるのに、及びおむつの弾性要素を非弾性領域に取り付けるのに使用される。積層体は、幅広いウェッブとして製造され、これは、複数の積層された弾性の細長い片を含む。それから、得られた多目的材料からおむつを製造するのに必要な閉包型の細長い片をダイカットすることが可能となる。
【0004】
上述したこの種の方法は、例えば、欧州特許第1686209号(特許文献1)から知られている。
【0005】
国際公開第2011/045685号パンフレット(特許文献2)は、弾性の閉じ要素(elastic closure element)及び非弾性のおむつ部分から製造された、印刷されたおむつの製造方法を開示している。その弾性の閉じ要素並びに非弾性おむつ部分は、テキスタイル表層及びフィルムライナー又はフィルム支持体を含む積層体から形成される。おむつの弾性の閉じ要素並びに非弾性部分は、弾性領域及び非弾性領域の縁部において、全体の画像が均一かつ魅力的になるように調和した印刷画像の印象を備える。
【0006】
国際公開第2008/070131号パンフレット(特許文献3)もまた、印刷された、弾性部分及び非弾性部分を有するおむつであって、それぞれの部分おいて印刷された画像が互いに統一されたモチーフを形成するように補完可能な、該おむつを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1686209号
【特許文献2】国際公開第2011/045685号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/070131号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した方法を用いて積層体の上に画像を印刷することに関する課題に対して、今日まで満足のいく解法が得られていない。積層体を製造するのに、予め印刷されたテキスタイル表層が使用される場合、積層体のメカニカル活性の間、及び消費者によって後日使用されている間に、繊維の引裂及び移動によって少なくとも部分的にテキスタイル表層に予め施用される、印刷された画像が破壊されるという問題がある。さらに、表層と弾性の細長い片との印刷された画像の位置合わせに関する問題が追加されるおそれがある。
【0009】
フィルムを細長い片に切断する間にも、また、積層の間にも、ウェブの様々な応力がそれら細長い片に移動するという事実を考慮すべきであり、このことにより細長い片の幅が変化する。要素が、印刷幅全体にわたって分布するランダムに印刷されたモチーフから形成された印刷画像を有する場合、弾性の細長い片と印刷画像との位置合わせのエラーがしばしば顕著となり得る。しかしながら、例えば、縞のモチーフなどが印刷された細長い片で弾性部分を形成した場合において、積層体から製造された弾性要素を、使用の間、例えば、おむつを閉じている間、広範にわたって延伸させると、その弾性領域では、細長い片と印刷モチーフとの間の光学的不正確さは解消される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この背景を鑑みて、本発明の目的は、上述の方法によって製造された弾性の積層体上の印刷された画像の外観を改善することである。
【0011】
本発明の目的及び弾性の積層体の製造を改善するという目的を達成するための
解法は、請求項1に記載の方法に対応している。
【0012】
本発明によれば、細長い片に切断される前に、積層体のテキスタイル表層を介して可視できるように作製されたモチーフで弾性フィルムが印刷される。すでに印刷された積層体を用いても、弾性フィルムには印象が設けられるという事実により、印刷されたモチーフの積層体の弾性領域に対する正確な位置合わせは、常に確保される。本発明における利点は弾性の細長い片が延伸されたとき、印刷された画像はその片に沿って、一様に、かつ、可逆的に延伸するという事実にある。さらに、印刷されたモチーフは、積層体の全面及び背面から、例えば、不織テキスタイルの表層を介して、その積層体が、前面からも背面からも、光学的に等しく魅力的であるように目で見ることができる。例えば、弾性フィルムは、その弾性フィルムのウェブの方向に延びる、平行で、着色された縞からなる細長いモチーフで印刷することができる。
【0013】
弾性フィルムを印刷するのに公知の連続印刷法が使用できる。高速ウェブの弾性フィルムの印刷を可能にする、輪転印刷法が好ましい。最終的な目標は、約400m/分のウェブ速度である。グラビア印刷法及びフレキソ印刷法は有利なプロセスであり、フレキソ印刷法は、複数の表色系に一つの中心シリンダーを用いることができることから、フレキソ印刷法が特に好ましい。静的媒体を用いずに印刷画像をコンピューターから印刷機に転送するデジタル印刷は除外されない。特に、インクジェット印刷法は、インキの小滴を偏向させて印刷画像を生成させることが考慮される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、印刷プロセスの前に、弾性フィルムは、ウェブの方向を横向きに延伸され、次いで、弾性が引き戻された後に印刷され、その後、細長い片に切断される。弾性フィルムの延伸は、積層体の層の機械的な予備活性化を構成し、そして積層体の改善された延伸挙動をもたらす。弾性フィルムの予備活性化は、拡張力に関して、そして、弾性フィルムの予備活性化によって決定される拡張限界において好ましい影響を及ぼし、そして、大きな領域にわたって積層体の延伸作用を容易にし、そしてその後、拡張抵抗は著しく増大する。緊張が取り除かれた後の積層体の戻りの挙動もまた、弾性フィルムが、それが積層体に積層される前に横方向に延伸されることによって予備活性化される場合に改善することができる。弾性フィルムの予備活性化のいずれも、積層体の機械的活性と置き換えることはできず、これを補うことができるだけである。弾性フィルムが予備活性化される場合でさえ、弾性の積層された細長い片で構成される領域において、ウェブの方向を横向きに延伸させることが依然として必要である。
【0015】
本発明による方法の好ましい実施形態は、弾性フィルムが、50%超ウェブの横方向に延伸され、そして、その弾性フィルムが延伸される前の開始時の幅よりも10%〜30%大きい幅を拡張が戻された後に有することを提供する。“延伸”という語は、拡張が完全に可逆的ではなく、拡張が戻された後にフィルムがより大きな幅を有する結果となる塑性変形がいくぶんあるという事実に関わらずに用いられる。積層体の後の活性化は、テキスタイル表層の構造に影響を及ぼす。一方、予備活性化した弾性フィルムの横方向での延伸は、多くの部分において可逆的である。予備活性化された弾性フィルム付与された印刷画像は、それゆえ、その後の積層体の活性化の間、それ以上不利な変化を経ることはない。それに応じて、弾性フィルムだけが、予備活性化後に印刷され、その間、弾性フィルムが横方向に拡張され、そしてその後拡張から開放される場合、弾性の積層体上の印刷画像の品質を向上させることができる。
【0016】
弾性フィルム及び/又は積層体の延伸作用のために、相互にかみ合うプロフィルローラーのストレッチローラー装置を使用することができる。
【0017】
好ましくは、弾性フィルムとしてポリオレフィンエラストマーが使用される。ポリオレフィンエラストマーベースの弾性フィルムを使用する場合、その弾性フィルムの予備活性化は特に有利である。
【0018】
さらに、弾性フィルムとして、スチレン−イソプレン−スチレン−ブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、ポリウレタン、エチレン−コポリマー又はポリエーテルブロックアミドの材料から製造されたエラストマーコア層を有する単層又は多層フィルムを使用することもできる。
【0019】
予備活性化及び印刷後、弾性フィルムは細長い片に切断される。それらの細長い片は、偏向器にわたって誘導され、そして、平行な細長い片としてラミネーターに供給され、該ラミネーターの内部で、該細長い片は、テキスタイル表層間で積層される。弾性の細長い片は、相互に離間して横向きに配置される。細長い片の間の横方向における間隔は、偏向器の位置によって調整できる。弾性の細長い片の間の空隙では、表層が直接相互に接合される。弾性の細長い片の間に積層されて、それら弾性の細長い片の間の空隙を補強する、補強用の細長い片を使用することも、本発明の範囲内にある。そのため、積層体の内部は、弾性領域及び非弾性領域で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の印刷された弾性積層体の製造方法を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で、例示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。この唯一の図は、印刷された弾性積層体の製造方法を図式で示している。
【0022】
図に示す方法により、弾性フィルム1は細長い片2に切断され、それは、偏向器3にわたって誘導され、そして平行の細長い片としてラミネーター4に供給される。細長い片2は、積層方向4において、細長い片2に上と下から供給されるテキスタイル表層5及び6の間で積層される。細長い片2及びテキスタイル表層5及び6は、互いに接着されるか又は熱によって互いに接合される。図では、弾性の細長い片2が、表層5及び6の間で
互いに離間して積層されること、及び該テキスタイル表層5及び6が、弾性の細長い片2の間の空隙において互いに直接接合されていることが示されている。このように、弾性領域8及び10、並びに、非弾性領域9は積層体7の中に形成される。積層体は、次いで、アクチベーター10に供給され、そこで、積層体7は領域8において横方向に延伸されて、積層された細長い片2によってウェブの方向に対して弾性となる。積層体7を延伸させるために、相互にかみ合うプロフィルローラーを有するストレッチローラー装置が使用される。延伸により、テキスタイルの表層構造が変更され、そして積層体7のCD方向における拡張特性が改善される。活性化後、積層体は、CD方向において、該活性化によって決定された拡張限界まで、最小限の力で容易に拡張可能となる。
【0023】
テキスタイル表層5及び6は、特に、不織布から製造され、織布又は編み地も可能である。単層又は多層のエラストマーフィルムを、スチレン−イソプレン−スチレン−ブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン、エチレン−コポリマー又はポリエーテルブロックアミドから製造されたエラストマーコア層を有する弾性フィルム1として使用できる。ポリオレフィンエラストマーから製造された弾性のインフレーションフィルムが好ましい。
【0024】
上記のフィルムを細長い片2に切断する前に、印刷ステーション11で、該弾性のフィルム1に、積層体7のテキスタイル表層5及び6を通して可視できるモチーフを印刷する。印刷は、輪転印刷法、特にフレキソ印刷法によって好ましく遂行される。印刷されたモチーフは、例えば、ウェブの弾性フィルムの長手方向に延びる平行で着色された平行な縞から形成された縞のモチーフであることができる。
【0025】
印刷前に、弾性フィルム1は、ウェブの横方向に、50%超延伸される。好ましくは、弾性フィルムの開始の幅に対して100%〜500%の拡張が実行される。弾性が引き戻された後、弾性フィルム1は幅B
2を有し、該幅は、弾性フィルムの開始の幅B
1よりも10%〜30%大きい。引き戻し後、弾性フィルム1は印刷され、そして続いて細長い片2に切断される。弾性フィルム1の拡張及び/又は延伸は、予備活性化を構成する。弾性フィルムの予備活性化は、積層体7の拡張値に関連して非常に有利である。弾性フィルム1を印刷プロセス前に予備活性化することにより、弾性の積層体7の印刷画像を改善することも可能となる。というのも、これは、積層体の延伸の間、積層体に沿って印刷画像が一様にかつ可逆的に拡張し、そして、活性化装置10における弾性フィルム1の予備活性化によって、積層体7が延伸後に完全にリセットされるからである。