特許第6346875号(P6346875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346875
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】設計支援装置および設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   G06F17/50 628A
   G06F17/50 680Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-126161(P2015-126161)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-10342(P2017-10342A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】301069030
【氏名又は名称】株式会社トヨタ車体研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100133271
【弁理士】
【氏名又は名称】東 和博
(72)【発明者】
【氏名】津之浦 勝士
(72)【発明者】
【氏名】迫田 卓
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】上村 英彦
【審査官】 早川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−295024(JP,A)
【文献】 特開2012−003425(JP,A)
【文献】 特開2005−247159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルと他方の部品モデル間の見切り部を交差して通る複数の断面について両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、見切り部における両モデル間の隙間の幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果から、判定対象の両モデル間の見切り隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
測定結果を出力する手段を備え、
当該手段が、基準値と許容範囲の上限値および下限値を含み、全ての断面について隙間の幅の計測値がプロットされたグラフを出力することを特徴とする、請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルとヒンジモデル回りに回転する他方の部品モデル間のかじり回避領域を交差して通る複数の断面について、ヒンジモデル回りに他方の部品モデルを回転させた時の両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、かじり回避領域における両モデル間の隙間の最小幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果から回転時の両モデル間のかじり回避隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項4】
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のヒンジモデルとヒンジモデル回りに回転する他方の部品モデル間の接触回避領域を交差して通る複数の断面について、ヒンジモデル回りに他方の部品モデルを回転させた時の両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、接触回避領域における両モデル間の隙間の最小幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果から回転後の両モデル間の接触回避隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項5】
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルとヒンジモデル回りに回転する他方の部品モデル間の接触回避領域を交差して通る複数の断面について、ヒンジモデル回りに他方の部品モデルを回転させて所定の停止位置から所定量オーバーランさせた時の両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、接触回避領域における両モデル間の隙間の最小幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果からオーバーラン時の両モデル間の接触回避隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項6】
設計支援装置が、
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込むステップと、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルと他方の部品モデル間の見切り部、かじり回避領域、接触回避領域のいずれかを交差して通る複数の断面について両モデルの断面外形線を生成するステップと、
生成された両モデルの断面外形線から、見切り部、かじり回避領域、接触回避領域のいずれかについて、両モデル間の隙間の幅を断面毎に計測するステップと、
断面毎に計測された隙間の幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定するステップと、
全ての断面についての判定結果から、判定対象の両モデル間の隙間について合否を判定するステップと、
判定結果を出力するステップをそれぞれ実行する
ことを特徴とする設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両モデル等の設計作業を支援するための支援装置および支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両モデルの設計作業は3次元CADを用いて行われる。車両用ボディに他の部品(ドア、フード、フェンダーなど)を組み付ける場合、ボディと部品、部品と部品の間で隙間の有無や可動部の干渉の有無を設計時にチェックする必要があり、設計従事者が3次元CADで作成した3次元モデルから多数の断面図を作成し、断面図を一つずつチェックするようにしている。この断面図は手作業で作成する場合が多く、作成する断面の数も膨大となるため、設計従事者の負担が大きく、また、設計図面の出図後に不具合が見つかると設計変更が余儀なくされる等の課題があった。
【0003】
従来より、車両用ボディの設計において、ヒンジセンターを中心に回転する第1部材(フード等)と第2部材(フェンダー等)との間で干渉の有無を判定するようにした設計支援装置および方法が知られている(特許文献1参照)。同装置および方法によれば、干渉の有無のチェックを短時間で行えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の装置および方法は、回転する第1部材(フード等)と第2部材(フェンダー等)との間で接触するかどうかで干渉の有無を判定するものであり、他のチェック作業、例えばボディと部品、部品と部品間の隙間の適正チェック、あるいは回転する部品のオーバーラン時の干渉チェック(回転する部品が規定の停止線を越えてオーバーランする時の他の部品との干渉チェック)等の作業は、従来同様に多数枚の断面図をもとにした手作業に頼らざるを得なかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、ボディと部品、部品と部品間において、見切り部の隙間の適否を容易に判定できる設計支援装置と設計支援方法を提供すること、また、見切り部以外の部位における隙間の適否についても容易に判定できる設計支援装置と設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る設計支援装置は、
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルと他方の部品モデル間の見切り部を交差して通る複数の断面について両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、見切り部における両モデル間の隙間の幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果から、判定対象の両モデル間の見切り隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係る設計支援装置は、
測定結果を出力する手段を備え、
当該手段が、基準値と許容範囲の上限値および下限値を含み、全ての断面について隙間の幅の計測値がプロットされたグラフを出力することを第2の特徴とする。
【0009】
本発明に係る設計支援装置は、
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルとヒンジモデル回りに回転する他方の部品モデル間のかじり回避領域を交差して通る複数の断面について、ヒンジモデル回りに他方の部品モデルを回転させた時の両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、かじり回避領域における両モデル間の隙間の最小幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果から回転時の両モデル間のかじり回避隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを第3の特徴とする。
【0010】
本発明に係る設計支援装置は、
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のヒンジモデルとヒンジモデル回りに回転する他方の部品モデル間の接触回避領域を交差して通る複数の断面について、ヒンジモデル回りに他方の部品モデルを回転させた時の両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、接触回避領域における両モデル間の隙間の最小幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果から回転後の両モデル間の接触回避隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを第4の特徴とする。
【0011】
本発明に係る設計支援装置は、
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込む手段と、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルとヒンジモデル回りに回転する他方の部品モデル間の接触回避領域を交差して通る複数の断面について、ヒンジモデル回りに他方の部品モデルを回転させて所定の停止位置から所定量オーバーランさせた時の両モデルの断面外形線を生成する手段と、
生成された両モデルの断面外形線から、接触回避領域における両モデル間の隙間の最小幅を断面毎に計測する手段と、
断面毎に計測された隙間の最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する手段と、
全ての断面についての判定結果からオーバーラン時の両モデル間の接触回避隙間について合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段を備える、ことを第5の特徴とする。
【0012】
本発明に係る設計支援方法は、
設計支援装置が
データベースからボディモデルと部品モデルまたは複数の部品モデルから構成される物体モデルの3次元データを読み込むステップと、
読み込まれた物体モデルの3次元データから、判定対象である一方のボディモデルまたは部品モデルと他方の部品モデル間の見切り部、かじり回避領域、接触回避領域のいずれかを交差して通る複数の断面について両モデルの断面外形線を生成するステップと、
生成された両モデルの断面外形線から、見切り部、かじり回避領域、接触回避領域のいずれかについて、両モデル間の隙間の幅を断面毎に計測するステップと、
断面毎に計測された隙間の幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定するステップと、
全ての断面についての判定結果から、判定対象の両モデル間の隙間について合否を判定するステップと、
判定結果を出力するステップをそれぞれ実行する
ことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、設計従事者は、従来のように大量の断面図を作成して見切り部の隙間や、見切り部以外の他の部位におけるかじり回避隙間や接触回避隙間のチェックを行う手間が省け、設計工数や時間の大幅短縮、さらには設計見直しの削減を図ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る設計支援装置を含むシステム全体構成図、
図2】本発明に係る設計支援プログラムの初期画面を示す図、
図3】判定項目の選択画面を示す図、
図4】3次元形状データの例を示す図、
図5】フェンダーモデルとフロントドアモデルの見切り部を示す側面図、
図6】見切り隙の判定にあたり、図5のA−A線〜D−D線の各断面毎に生成されたフェンダーモデルとフロントドアモデルの切断外形線を示す図、
図7】見切り隙の測定結果と判定結果を示す図、
図8】見切り隙の測定結果をグラフ形式で示す図、
図9】本発明に係る設計支援方法を実施するための手順を示すフロー図、
図10】かじり隙の判定にあたり、生成されたフェンダーモデルとフロントドアモデルの切断外形線を示す図、
図11】かじり隙の測定結果と判定結果を示す図、
図12】底付き隙の判定にあたり、生成されたヒンジモデルとフロントドアモデルの切断外形線を示す図、
図13】底付き隙の測定結果と判定結果を示す図、
図14】操作隙の判定にあたり、生成されたフロントドアモデルとリアドアモデルの切断外形線を示す図、
図15】操作隙の測定結果と判定結果を示す図、
図16】オーバーラン隙の判定にあたり、生成されたフロントドアモデルと周辺部品モデルの切断外形線を示す図、
図17】オーバーラン隙の測定結果と判定結果を示す図、
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1において、符号100は本発明に係る設計支援装置を示している。
【0016】
まず、設計支援装置100について説明する。本実施形態において、図1に示すように、設計支援装置100は、3次元データ読込部111と、判定項目選択部112と、条件設定部113と、断面外形線生成部114と、隙間幅計測部115と、隙間幅判定部116と、総合判定部117と、判定結果出力部118と、計測結果出力部119と、入出力部120と、演算処理部121を備えている。また、設計支援装置100は、設計データベース200と、入力装置300と、出力装置400に対しネットワーク回線500で接続されている。
【0017】
設計データベース200は、3次元形状データベース210と、部品情報データベース220と、設計プログラムデータベース230を備えている。3次元形状データベース210には、車両モデルを構成する3次元データとしてボディモデル、各部品(ドア、ヒンジ、フード等)モデルが、サーフェスモデル、ソリッドモデル等の形式で格納されている。部品情報データベース220にはボディモデルや各部品モデルの属性に関する情報が格納されている。設計プログラムデータベース230には車両モデルを設計するための設計プログラム、本発明を実行するための設計支援プログラムを含む各種ソフトが格納されている。
【0018】
設計支援装置100のうち、3次元データ読込部111は、入力装置300、例えばキーボードからの操作により、設計データベース200の3次元形状データベース210から、選択されたボディモデルや部品モデルの3次元データを設計支援装置100内に読み込むようになっている。読み込まれた3次元データは複製され演算処理部121のメモリーに保存される。図2は入力装置300のディスプレイに表示された初期画面G0を示しており、形状データ読み込みボタンB1をクリックすると、3次元データ読込部111が実行処理され、読み込まれ複製された3次元形状データについて作業領域S内で作業を行なうことができる。
【0019】
判定項目選択部112は、入力装置300、例えばキーボードからの入力操作により、複数の判定項目から一つの判定項目を選択する。図2に示す初期画面G0上で判定項目選択ボタンB2をクリックすると、図3の選択画面G1に移行し、選択画面G1上で判定項目として[見切り隙]、[かじり隙]、[底付き隙]、[操作隙]、[オーバーラン隙]のいずれかを選択できる。
【0020】
[見切り隙]は、判定対象の両モデル(例えばフェンダーとドア)間の見切り部に要求される隙間(見切り隙間)が適正かどうかを判定する。[かじり隙]は、判定対象の両モデル(例えばフェンダーとヒンジ回りに所定量回転するドア)間で回転時にかじり(干渉)を回避する隙間(かじり回避隙間)が適正かどうかを判定する。[底付き隙]は、判定対象の両モデル(例えばヒンジとヒンジ回りに所定量回転するドア)間で回転時に接触を回避する隙間(接触回避隙間)が適正かどうかを判定する。
【0021】
また[操作隙]は、判定対象の両モデル(例えば所定量回転するリアドアと所定量回転するフロントドア)間で両モデルの回転時にかじり(干渉)を回避する隙間(かじり回避隙間)が適正かどうかを判定する。[オーバーラン隙]は、判定対象の両モデル(例えば周辺部品と所定量回転するドア)間で回転するモデルのオーバーラン時(規定量の回転範囲を超えて回転する時)に接触を回避する隙間(接触回避隙間)が適正かどうかを判定する。なお、回転には回動の概念が含まれる。
【0022】
条件設定部113は、入力装置300、例えばキーボードからの入力操作により、判定条件(モデル選択、境界条件、回転条件、バラツキ条件等)を設定するもので、[かじり隙][底付き隙][操作隙][オーバーラン隙]を選択する場合、実際のボディ・部品間、部品・部品間の組み付け精度のバラツキを考慮し、バラツキ条件として、車両モデルの前後方向(X方向)、左右方向(Y方向)、上下方向(Z方向)に一定のバラツキ量(例えば±1.0mm)を設定することができる。これにより、複数の各断面について、一定のバラツキ量を考慮した2×2×2=8通りの組合せ(図11等参照)で、後述する両モデル間の隙間Sを計測し、8通りの組合せから各断面毎に最小隙間を求めることができる。
【0023】
断面外形線生成部114は、読み込まれ複製された3次元データに対し、選択された判定項目に関し、判定対象の両モデル間の見切り部、かじり回避領域、接触回避領域を交差して通る複数の断面について、両モデルの断面外形線を生成する。「交差して通る」とは、例えば見切り部が鉛直方向に延在する場合、見切り線に対し、垂直方向に切断するという意味である。図4は複製された3次元データ1の一部を示し、3次元データ1はフェンダーモデル2、フロントドアモデル3、リアドアモデル4、周辺部品モデル等を含んでいる。図5はフェンダーモデル2とフロントドアモデル3の見切り部5を示している。図2に示す初期画面G0で条件設定ボタンB3をクリックすると、図示しない条件設定画面に移行し、各種の判定条件を設定できる。具体的には図5に示すようにフェンダーモデル2とフロンドドアモデル3の見切り部5を含む一定範囲ARを設定し、また、複数の断面位置(A−A線〜D―D線)を設定できる。図5の例の断面位置は上下に4箇所であるが、多数(数十〜数百)箇所設定できる。
【0024】
断面外形線生成部114は、図2に示す初期画面G0で断面外形線作成ボタンB4をクリックすることで、処理を実行する。図6(A)〜(D)は、図5に示すフェンダーモデル2とフロントドアモデル3の見切り部5を含む一定範囲ARにおいて、各断面位置(A−A線〜D−D線)毎に生成された両モデルの断面外形線を示している。図6(A)〜(D)に示すように、フェンダーモデル2側の断面外形線Lとフロントドアモデル3側の断面外形線Lの間には見切り部5に対応する隙間Sが設けられている。
【0025】
隙間幅計測部115は、上記断面外形線生成部114で複数の断面位置毎に生成された両モデルの断面外形線から、両モデル間の隙間Sの幅をそれぞれ計測するもので、計測された隙間Sの幅は、部品情報データベース220に保存される。図2に示す初期画面G0で隙間幅計測ボタンB5をクリックすると、隙間幅計測部115が実行される。
【0026】
隙間幅判定部116は、複数の断面位置毎に計測された両モデル間の隙間Sの幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定するもので、個々の判定結果は部品情報データベース220に保存される。例えば、計測された隙間の幅が基準値(例えば5mm)に対し許容範囲(例えば±1mm)内に収まれば適正(○)と判定し、許容範囲外であれば不適正(×)と判定する。
【0027】
総合判定部117は、全ての切断位置についての判定結果から、判定対象の両モデルの見切り部5について、両モデル間の[見切り隙](見切り隙間)に関する合否を判定するもので、判定結果は部品情報データベース220に保存される。本実施形態では隙間幅判定部116で計測された複数の断面位置のうち、すべての断面位置で計測された隙間の幅が基準値(例えば5mm)に対し許容範囲(例えば±1mm)に収まるときに適正(○)と判定し、少なくとも一つの断面位置で計測された隙間の幅が許容範囲外であると、不適正(×)と判定する。
【0028】
判定結果出力部118は、出力装置400に対し判定結果、すなわち上記隙間幅判定部116による個々の判定結果と、上記総合判定部117による総合判定結果を出力する。計測結果出力部119は、上記隙間幅計測部115による計測結果を出力する。図7に判定結果出力部118と計測結果出力部119の出力例を示す。出力装置400にはディスプレイやプリンター等が含まれる。
【0029】
上記隙間幅判定部116から総合判定部117、判定結果出力部118、計測結果出力部119までの一連の処理は、図2に示す初期画面G0上で判定実行ボタンB6をクリックすることにより実行される。出力内容は図2の初期画面G0上の条件設定ボタンB3をクリックすることより移行される条件設定画面(図示せず)上で設定できる。例えば上記隙間幅計測部115による計測結果を、計測結果出力部119の実行により、図8に示すグラフ形式で出力できる。
【0030】
隙間幅判定部116による個々の判定結果と上記総合判定部117による総合判定結果は、図6に示す各断面位置の断面外形線の近傍に表示させるように設定することもできる。図8に示すグラフと合わせて一枚の出力図面にそれぞれの判定結果とグラフを表示させることで、設計従事者は一枚の出力図面から一目で判定項目毎の判定結果をチェックすることができる。
【0031】
なお、入出力部120は外部装置との間でデータの入出力を行い、演算処理部121は、3次元データ読込部111、判定項目選択部112、条件設定部113、断面外形線生成部114、隙間幅計測部115、隙間幅判定部116、総合判定部117、判定結果出力部118、計測結果出力部119が実行する際の演算処理を行う。
【0032】
次に、上記設計支援装置100を用いて、判定項目を選択し、設計図面について、判定対象のモデル間の隙間について合否を判定する手順について、図9のフロー図等を参照しながら説明する。なお、以下に具体的に記述する条件や設定値は、本発明の実施の形態を説明するための一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0033】
(見切り隙のチェック)
まず、設計従事者が入力装置200からの操作により設計支援プログラムを開き、図2の初期画面G0上で形状データの読込ボタンB1をクリックし、3次元形状データベース210から、ボディモデルと部品モデルからなる車両モデルの3次元データ1を設計支援装置100内に読み込み、複製する(図4参照:ステップS1)。次に、図2の初期画面G0上で判定項目選択ボタンB2をクリックし、図3の選択画面G1から判定項目を選択する(ステップS2)。ここでは[見切り隙]を選択する。次に、複製された3次元データ1に対し、図2の初期画面G0上で条件設定ボタンB3をクリックし、図示しない条件設定画面上で[見切り隙]の判定対象となる両モデルの見切り部5を含む一定範囲と、複数の断面位置を設定する(図5参照:ステップS3)。
【0034】
次に、初期画面G0で断面外形線作成ボタンB4をクリックして、断面外形線生成部114を実行し、複数の断面位置毎に両モデルの断面外形線を生成する(図6参照:ステップS4)。次に、初期画面G0で隙間幅計測ボタンB5をクリックして、隙間幅計測部115を実行し、断面位置毎に生成された断面外形線から両モデル間の隙間幅を計測する(ステップS5)。
【0035】
次に、初期画面G0で判定実行ボタンB6をクリックして、隙間幅判定部116を実行し、各断面位置毎に計測された両モデル間の隙間幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS6)と共に、総合判定部117を実行して、全ての切断位置における判定結果から、両モデル間の見切り部5における見切り隙(見切り隙間)の合否を判定する(ステップS7)。
【0036】
続いて、判定結果出力部118および測定結果出力部119を実行し、隙間幅判定部116による個々の判定結果と総合判定部117による総合判定結果、隙間幅計測部115による計測結果を出力する(図7図8参照:ステップS8)。
【0037】
設計従事者は、車両モデルの設計時に上記設計支援プログラムの実行により、上記各ステップ(S1)〜(S8)を実行させ、出力図に表示された総合判定結果と個々の判定結果から、見切り隙間のチェックを効率的に実施することができる。すなわち、設計従事者は、プログラムの実行の結果、総合判定結果が合格(○)であれば該当する判定対象の見切り隙間は合格であり、総合判定結果が不合格(×)であれば複数の断面位置のいずれかの判定結果が不適正(×)であることを直ちに把握し、該当する断面位置の隙間幅が許容範囲に収まるように、修正作業に取り掛かることができる。
【0038】
(かじり隙のチェック)
図10は、選択画面G1上で[かじり隙]を選択し、図示しない条件設定画面上で判定条件(モデル選択、境界条件、回転条件、バラツキ条件)を設定した後、断面外形線生成部114を実行して、[かじり隙]に対応して生成された断面外形線(可動軌跡線を含む)を示している。すなわち、複製された3次元データ1について、フェンダーモデル2とヒンジモデル中心6回りに回転するフロントドアモデル3間のかじり回避領域R1を含む一定範囲を設定し、前記かじり回避領域R1を交差して通る複数の断面について、さらに、設定したバラツキ条件(XYZ方向に±1.0mm)の8通りの組合せについて、ヒンジモデル中心6回りにフロンドドアモデル3を回転させたときの両モデル、すなわちフェンダーモデル2の断面外形線Lと、フロントドアモデル3の回転軌跡を示す複数の断面外形線Lと、フロントドアモデル3の先端eにおける可動軌跡線Lを生成する。
【0039】
そして、隙間幅計測部115の実行により、各断面毎に生成されたフェンダーモデル2の断面外形線Lとフロントドアモデル3側の断面外形線Lと可動軌跡線Lから、両モデル間の隙間Sの最小幅がそれぞれ計測され、隙間幅判定部116および総合判定部117の実行により、両モデル間の隙間Sの最小幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かが切断位置毎に判定されると共に、両モデル間の[かじり隙](かじり回避隙間)に関する合否が判定される。図11に[かじり隙]に関する判定結果と測定結果を示す。
【0040】
(底付き隙のチェック)
図12は、選択画面G1上で[底付き隙]を選択し、上記同様に図示しない条件設定画面上で判定条件(モデル選択、境界条件、回転条件、バラツキ条件)を設定した後、断面外形線生成部114を実行して、[底付き隙]に対応して生成された境界部分の断面外形線を示している。すなわち、図4の3次元データ1について、ヒンジモデルとヒンジモデル中心6回りに回転するフロントドアモデル3間の接触回避領域R2を含む一定範囲を設定し、前記接触回避領域R2を交差して通る複数の断面について、さらに、設定したバラツキ条件(XYZ方向に±1.0mm)の8通りの組合せについて、ヒンジモデル中心6回りにフロンドドアモデル3を規定量(最大開度)回転させた時の各モデル、すなわち、フェンダーモデル2の断面外形線Lと、回転後(最大開度)のフロントドアモデル3の断面外形線Lと、ヒンジモデルの断面外形線Lを生成する。
【0041】
そして、隙間幅計測部115の実行により、回転後のフロントドアモデル3の断面外形線Lとヒンジモデルの断面外形線Lから、両モデル間の隙間Sの最小幅が計測され、隙間幅判定部116および総合判定部117の実行により、両モデル間の隙間Sの幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かが切断位置毎に判定されると共に、両モデル間の[底付き隙](接触回避隙間)に関する合否が判定される。図13に[底付き隙]に関する判定結果と測定結果を示す。
【0042】
(操作隙のチェック)
図14は、選択画面G1上で[操作隙]を選択し、上記同様に図示しない条件設定画面上で判定条件(モデル選択、境界条件、回転条件、バラツキ条件)を設定した後、断面外形線生成部114を実行して、[操作隙]に対応して生成された断面外形線(可動軌跡線を含む)を示している。すなわち、複製された3次元データ1について、回転するフロントドアモデル3と回転するリアドアモデル4の接触回避領域R2を含む一定範囲を設定し、前記接触回避領域R2を交差して通る複数の断面について、さらに、設定したバラツキ条件(XYZ方向に±1.0mm)の組合せについて、フロントドアモデル3を図示しないヒンジモデル中心回りに回転させると同時にリアドアモデル3をヒンジモデル中心6回りに回転させた時の、両モデル、すなわちフロントドアモデル3とリアドアモデル4の回転軌跡を示す複数の断面外形線L、Lと、フロントドアモデル3の先端eにおける可動軌跡線Lを生成する。
【0043】
そして、隙間幅計測部115の実行により、生成された両モデル3、4の断面外形線L、Lとフロントドアモデル3側の可動軌跡線Lから、両モデル間の隙間Sの最小幅が計測され、隙間幅判定部116および総合判定部117の実行により、両モデル間の隙間Sの幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かが切断位置毎に判定されると共に、両モデル間の[操作隙](接触回避隙間)に関する合否が判定される。図15に[操作隙]に関する判定結果と測定結果を示す。
【0044】
(オーバーラン隙のチェック)
図16は、選択画面G1上で[オーバーラン隙]を選択し、上記同様に図示しない条件設定画面上で判定条件(モデル選択、境界条件、回動オーバーラン条件、バラツキ条件)を設定した後、断面外形線生成部114を実行して、[オーバーラン隙]に対応して生成された断面外形線を示している。すなわち、複製された3次元データ1について、周辺部品モデルとヒンジモデル中心回りに回転するフロントドアモデル3の接触回避領域R2を含む一定範囲を設定し、前記接触回避領域R2を交差して通る複数の断面について、さらに、設定したバラツキ条件(XYZ方向に±1.0mm)の8通りの組合せについて、ヒンジモデル中心回りにフロントドアモデル3を回転させて規定の停止位置から想定される規定量オーバーランさせた時の、両モデル、すなわち周辺部品モデルの断面外形線Lと、フロントドアモデル3の停止位置の断面外形線Lとオーバーラン位置の断面外形線L3’を生成する。周辺部品モデルは例えばフェンダー、サイド部材、ロッカー部材等のモデルである。
【0045】
そして、隙間幅計測部115の実行により、生成された周辺部品モデルの断面外形線Lとフロントドアモデル3のオーバーラン位置の断面外形線Lから、両モデル間の隙間Sの最小幅が計測され、隙間幅判定部116および総合判定部117の実行により、両モデル間の隙間Sの幅が基準値に対し設定された許容範囲内にあるか否かが切断位置毎に判定されると共に、両モデル間の[オーバーラン隙](接触回避隙間)に関する合否が判定される。図17に[オーバーラン隙]に関する判定結果と測定結果を示す。
【0046】
以上説明してきたように、本発明の設計支援装置を用いた設計支援方法を実行することにより、従来のように大量の断面図で各判定項目の隙間をチェックする手間が省け、設計時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0047】
以上の実施形態では、3次元データのモデルとして車両モデルを対象としたが、本発明の適用対象はこれに限らず、航空機、船舶、鉄道等の各モデルにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、3次元データから出力される図面のボディまたはパーツとパーツ間の隙間の適否をチェックする作業に用いる設計支援装置として、また設計支援方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 3次元データ
2 フェンダーモデル
3 フロントドアモデル
4 リアドアモデル
5 見切り部
6 ヒンジモデル中心
100 設計支援装置
111 3次元データ読込部
112 判定項目選択部
113 条件設定部
114 断面外形線生成部
115 隙間幅計測部
116 隙間幅判定部
117 総合判定部
118 判定結果出力部
119 計測結果出力部
120 入出力部
121 演算処理部
200 設計データベース
210 3次元形状データベース
220 部品情報データベース
230 設計プログラムデータベース
300 入力装置
400 出力装置
500 ネットワーク回線
、L、L3’、L、L、L 断面外形線
可動軌跡線
S 両モデル間の隙間
R1 かじり回避領域
R2 接触回避領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17