(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基板(1)と、前記透明基板(1)の電極(11)に隣接する、白色光を放出するOLEDシステム(2)とを含む有機電界発光装置(100)であって、前記透明基板(1)が、前記電極(11)を担持する支持体(10)を含み、前記電極(11)が、基板から出発する順序で、第一誘電体層(D1)、第一金属導電層(M1)、第二誘電体層(D2)、第二金属導電層(M2)、及び第三誘電体層(D3)を少なくとも含む層の積層体からなり、電極(11)内の金属導電層(M)の数は二つであり、第三誘電体層(D3)は酸化インジウムに基づいた層を含まないものにおいて、第二誘電体層(D2)の幾何学的厚さが少なくとも65nmであり、第一金属導電層(M1)の幾何学的厚さが少なくとも8.5nmであり、第三誘電体層(D3)の幾何学的厚さが20nm未満であり、第一誘電体層の幾何学的厚さ(Tk.D1)は、第一誘電体層の幾何学的厚さに対する第二誘電体層の幾何学的厚さの比率(Tk.D2/Tk.D1)が少なくとも1.90となるようなものであり、前記有機電界発光装置(100)が、72以上のCRIを有することを特徴とする有機電界発光装置(100)。
電極(11)の誘電体層が、亜鉛の酸化物、スズの酸化物、チタンの酸化物、アルミニウムの窒化物、ケイ素の窒化物、それらの少なくとも二つの混合物、亜鉛とスズの混合酸化物、及びチタンとジルコニウムとイットリウムの混合酸化物から選択された化合物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機電界発光装置(100)。
請求項1に記載の有機電界発光装置(100)であって、120nmの幾何学的厚さ及び12Ω/□(±0.5Ω/□)の平方当たりの抵抗を持つITOの電極で最適化された同じOLED装置の輝度の少なくとも85%に等しい輝度、72以上のCRI、及び2.0以下のカラーデルタを持つことを特徴とする有機電界発光装置(100)。
【背景技術】
【0004】
照明用途のために白色光を放出するOLED装置を製造する目的のために、できるだけ高い演色評価数(CRI)を持つ光源を製造することが必要である。
【0005】
演色評価数(CRI)は、理想的なまたは自然の光源と比べて種々の対象物の色を忠実に再現するための光源の能力の定量的な尺度である。高いCRIを持つ光源は、それらが照明された対象物の色の色合いの認知を改善するので、多くの照明用途で望ましい。演色評価数は、国際照明委員会(CIE)によって、光源が照明する対象物の色彩的外観に対する光源の効果として規定され、前記外観は、以下の著作に規定されるように、参照光源によって照明された同じ対象物の外観を認識してまたは認識せずに比較される:“CIE 17.4−1987 International Lighting Vocabulary”またはNickerson,Dorothy;Jerome,Charles W.(1965年4月),“Color Rendering of light sources:CIE method of specification and its application”,Illuminating Engineering(IESNA)60(4):262−271。
【0006】
OLEDのための透明電極としてスズをドープされた酸化インジウム(ITO:インジウムスズ酸化物)の層または他の導電層または多層(例えば、フッ素をドープされた酸化スズの層または銀系金属層を含む層の集成体)の使用が知られている。建物、列車または自動車の熱管理のために意図されたガラス上の積層体で使用される多層と同様の多層は、それらが合理的な電極厚さについてITOの層に関する導電性を大きく改善するための機会を提供するので、好ましいものであることができる。
【0007】
しかし、導電性多層が単一の銀系金属層を含むとき、放射された色の角度安定性の問題が起こりうる。一つの解決策は、そのとき文献WO2009083693に記載されるような二つの銀系金属層を含む建築用遮光製品と同様の多層を使用することである。この文献は、OLED装置のための銀の二層を含む導電構造の使用を開示する。OLED装置内でこのタイプの構造の使用は、前記装置の多色放射スペクトルの角度依存性を制限することを可能にすることがそこに記載されている。
【0008】
しかし、角度安定性のこの概念は、建築上の層に対して普通であり、その文献中に与えられた解決策は、OLED装置での使用のためには最適化されていない。実際、かかる層の使用は、OLED装置のために、特に演色評価数(CRI)に関して、特に「通常の高性能有機積層体」により、最適化される好適な光源を得ることを可能にしないと我々には思われる。「通常の高性能有機積層体」は、装置の有機部分が「厚く」なるように選ばれること、すなわち異なる放射源(赤、緑、青、黄)の少なくとも二つが有機分離層によって互いに分離されることを意味する。さらに、建築用用途のために知られた三つの銀系金属層を含む多層は、OLED装置での使用のためには最適ではない。実際、これらの層は、過剰な光吸収を示し、従って光電子装置の効率を低下する場合があると我々には思われる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、OLED装置のための二つの銀系層を含む導電性構造の選択であり、前記選択は、高CRI、高輝度(すなわち、多量の放射される光、または高効率)、及び観察の角度に依存する色の低い変化性(カラーデルタ(color Delta))の最良の可能な組み合わせがこれらのOLED装置に対して得られることを可能にする。
【0010】
カラーデルタは、完全放射体軌跡に沿った色の変化性とそれに直角な色の変化性を組み合わせる。完全放射体軌跡は、種々の完全放射体源の放射点を組み合わせ、従って標準白色光源(例えばD65,C,A)の大部分に近い。従って、白色またはほとんど白色の光を放射する装置に対しては、それらが白色からさらに離れるように動くときに完全放射体軌跡のこの曲線に対して直角の色差上により大きなペナルティーを課することを助言できる。
【0011】
すなわち、カラーデルタは以下の式によって表わされる:
ここで
− nはデータ点の数である(n
>5であり、0から60°の範囲にわたって分布される)。
− p(x)は、完全放射体軌跡の3次近似であり、二つのスケール定数の選択は、完全放射体軌跡に対して平行な変化が完全放射体軌跡に対して直角な変化より2.5倍小さくペナルティーを課されることを意味する。この選択は、他の角度経路に対して完全放射体軌跡に近い角度経路を奨励する。
− x
i及びy
iは、CIE 1931システムの各角度iでの色座標である。
【0012】
その態様の一つによれば、本発明は、請求項1に記載の有機電界発光装置のための透明基板に関し、従属請求項は、好適な実施態様を表わす。
【0013】
本発明は、電極を担持する支持体を含む有機電界発光装置のための透明な基板に関し、前記電極は、基板から出発する順序で、第一誘電体層(D1)、第一金属導電層(M1)、第二誘電体層(D2)、第二金属導電層(M2)、及び第三誘電体層(D3)を少なくとも含む層の積層体からなり、電極内の金属導電層(M)の数は二つであり、第三誘電体層(D3)は酸化インジウムに基づいた層を含まない。第二誘電体層(D2)の幾何学的厚さは少なくとも65nmであり、第一金属導電層(M1)の幾何学的厚さは少なくとも8.5nmであることを特徴とする。
【0014】
この種の電極を持つこの種の基板は、いったんOLED装置内に一体化されたら、高CRI、高輝度(すなわち高効率)、及び観察の角度に依存する色の低い変化性の間の最良の可能な妥協を提供する利点を持つ。有機電界発光装置のためのこれらの特性の一つに対して良好な結果を提供する透明基板は存在するけれども、電極の第二誘電体及び第一金属導電層の厚さの極めて特別な選択のみが高CRI、高輝度及び低カラーデルタ、または角度による良好な色安定性を提供することを我々は見出した。
【0015】
さらに、この選択は、異なる放射源(赤、緑、青、黄)の少なくとも二つが有機分離層によって互いに分離されている、有機部分が通常の高性能有機積層体であるOLED装置の一体化のために特に適していることを我々は見出した。
【0016】
本発明の基板は透明であり、すなわちそれは、可視光の波長範囲において多くとも50%、またはさらに多くとも30%、好ましくは多くとも20%または多くとも15%、より好ましくは多くとも12%または多くとも10%の光吸収率を示す。本発明の基板は支持体と電極を含む。
【0017】
支持体は、550nmの波長で少なくとも1.2,1.4または1.5の屈折率を持つことが好ましい。これは、同一の基板構造に対して伝達または放射される光の量を増加することを可能にする。
【0018】
用語「支持体」は、支持体自体だけでなく、支持体、並びに支持体の屈折率n
supportに近い屈折率n
materialを持つ、言い換えれば│n
support−n
material│
<0.1(│n
support−n
material│は屈折率間の差の絶対値を表わす)を持つ材料の少なくとも一つの層を含むいずれかの構造を示す。我々は、一例として、ソーダ石灰石英ガラスの支持体上に付着された酸化ケイ素の層を挙げることができる。
【0019】
支持体は、その面の一方または両方の上の光の抽出を促進する追加の装置を含むことができる。これらの装置の一つ(すなわち拡散層)は、発行された文献WO2009/017035,WO2009/116531,WO2010/084922,WO2010/084925,WO2011/046156,WO2011/046190、及び出願PCT/JP2011/074358に記載されており、全ては参考としてここに組み込まれる。一般的に、この拡散層は、5μmより大きい厚さを持ち、かつ干渉光学系であるとみなされない。この種の拡散層が本発明による電極と接触状態にある場合、n
supportは、そのとき、この拡散層の、任意選択的にマトリックスの、指標であると考えられる。
【0020】
あるいは、支持体のスキャッターを回避するかまたは最小にすることが望ましいかもしれない。従って、本発明による基板は、20%以下、より好ましくは10%以下、又はさらにより好ましくは2%以下または1%以下のヘーズ値を示すことができる。この利点は、この種の基板を組み込んだ有機装置がスイッチを切ったときに魅惑的な、乳白色でない外観を持つということである。鏡状外観は、例えばもし反対の電荷の第二電極が反射的であるなら得られることができ、またはもし第二電極もまた半透明であるなら透明な板ガラス装置を作ることが可能である。
【0021】
反射性第二電極の場合、完全な有機装置は、そのとき、支持側で測定されたとき20%より大きい、またはより好ましくは40%より大きい、またはさらにより有利には60%より大きい光の反射率(CIEによる、光源D65 2°)を持つことができる。半透明第二電極の場合、完全な有機装置は、そのとき、少なくとも5%、またはより有利には少なくとも10%、またはさらにより好ましくは少なくとも20%の光の透過率(CIEによる、光源D65 2°)を持つことができる。
【0022】
支持体の機能は、電極を支持及び/または保護することである。支持体はガラス、硬質プラスチック(例えば:有機ガラス、ポリカーボネート)または柔軟な高分子フィルム(例えば:PVC,PET,PP,PTFE)からなることができる。支持体は硬いことが好ましい。あるいは、それは単独で巻回されることができる(例えばロールからロールへの蒸着工程で有用な超薄可撓性ガラス)。
【0023】
支持体がガラスからなるとき、例えばガラス板であるとき、ガラス板は少なくとも0.05mmの幾何学的厚さを持つことが好ましい。ガラスは、ソーダ石灰石英ガラス、透明、または本体もしくは表面上を着色されたものであることが好ましい。有利には、それは超透明ガラス、すなわちFe
2O
3として表わすと0.020重量%未満、好ましくは0.015重量%未満の全鉄含有量しか持たないガラス、であることができる。その低い多孔性のため、ガラスは、本発明による透明基板を含む装置のいかなる形の汚染に対しても良好な保護を提供する利点を持つ。
【0024】
本発明による電極は、基板から出発する順序で、第一誘電体層(D1)、第一金属導電層(M1)、第二誘電体層(D2)、第二金属導電層(M2)、及び第三誘電体層(D3)を少なくとも含む層の積層体からなる。電極は、陽極として、または逆に陰極として作用することができる。
【0025】
本発明による電極には二つの金属導電層がある。これは、OLED装置によって放射される色の角度安定性の問題を減少することである。
電極の金属導電層は主として前記電極の電気導電性を提供する。それらは、金属または金属の混合物を含む少なくとも一つの層を含む。金属及び/または金属の混合物は、Ag,Au,Pd,Pt,Al,Cu,Zn,Cd,In,Si,Zr,Mo,Ni,Cr,Mg,Mn,Co,Snから選ばれた少なくとも一つの元素を含むことが好ましい。好ましくは、金属及び/または金属の混合物は、Ag,Au,Cu,Alから選ばれた少なくとも一つの元素を含む。より好ましくは、金属導電層は、純粋な形の銀、または好ましくはPd及びAuから選ばれた別の金属と合金されたものを含む。
【0026】
第一金属導電層(M1)の幾何学的厚さは少なくとも8.5nm、好ましくは少なくとも8.7nmまたは少なくとも9.0nm、より好ましくは少なくとも9.5nmである。好ましくは、第一金属導電層(M1)の幾何学的厚さは13.0nm未満、好ましくは12.5nm未満または12.0nm未満、より好ましくは11.5nm未満である。
【0027】
第二金属導電層(M2)の幾何学的厚さは少なくとも6.0nm、好ましくは少なくとも7.0nmまたは少なくとも7.5nm、より好ましくは少なくとも8.0nmである。好ましくは、第二金属導電層(M2)の幾何学的厚さは25.0nm未満または20.0nm未満、好ましくは18.0nm未満または15.0nm未満、より好ましくは13.0nm未満である。
【0028】
有利には、電極の二つの金属導電層の全幾何学的厚さ、すなわち、第一金属導電層(M1)の幾何学的厚さと第二金属導電層(M2)の幾何学的厚さの合計は30.0nm未満、好ましくは多くとも29.0nm、より好ましくは多くとも28.0nmである。これらの値は、多層電極がOLEDシステムによって放射された光をあまり吸収しないことを意味する。
【0029】
誘電体層は、異なる性質の一つ以上の下層を含むことができる。有利には、それらは550nmの波長で少なくとも1.6、少なくとも1.8または少なくとも1.9、及び/または多くとも2.7または多くとも2.5の屈折率を持つ化合物を含む。好ましくは、それらは、支持体の屈折率より少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2大きい屈折率を持つ。
【0030】
好ましくは、誘電体層は、以下のものから選択される少なくとも一つの化合物を含む:
− Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Zn,Al,Ga,In,Si,Ge,Sn,Sb及びBiから選ばれた少なくとも一つの元素の酸化物、並びにそれらの少なくとも二つの混合物。
− 窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、窒化アルミニウム、オキシ窒化アルミニウム並びにそれらの少なくとも二つの混合物。
さらにより好ましくは、それらは、亜鉛の酸化物、スズの酸化物、チタンの酸化物、アルミニウムの窒化物、ケイ素の窒化物、それらの少なくとも二つの混合物、亜鉛とスズの混合酸化物及びチタンとジルコニウムとイットリウムの混合酸化物から選ばれた少なくとも一つの化合物を含む。
【0031】
第二誘電体層(D2)の幾何学的厚さは少なくとも65nm、好ましくは少なくとも67nmまたは少なくとも70nm、より好ましくは少なくとも73nmである。有利には、第二誘電体層(D2)の幾何学的厚さは90nm未満、好ましくは88nm未満または86nm未満である。
【0032】
さらに、第二誘電体層(D2)及び第一金属導電層(M1)の厚さまたは第一誘電体層(D1)の厚さのレベルで追加の選択が本発明の同じ一般的な目的を目ざすことができることを我々は見出した。
【0033】
従って、第二誘電体層の幾何学的厚さ(Tk.D2)及び第一金属導電層の幾何学的厚さ(Tk.M1)は、以下の式を満たすことができる:
【0034】
好ましくは、第一誘電体層の幾何学的厚さに対する第二誘電体層の幾何学的厚さの比率(Tk.D2/Tk.D1)は少なくとも1.90またはより好ましくは少なくとも1.95または少なくとも2.00である。
【0035】
また有利には、第一誘電体層の幾何学的厚さ(Tk.D1)は少なくとも54nmまたは少なくとも55nmであることができる。それは80nm未満、70nm未満または65nm未満であることができる。より厚い第一誘電体層は、基板に起因するアルカリ種の移動に対して電極の感受性を低下することに貢献することができる。
【0036】
本発明によれば、電極の最後の誘電体層、支持体から最も遠いもの、すなわち第三誘電体層(D3)は、酸化インジウム(例えばITO)に基づいた層を含まない。より好ましくは、電極の誘電体層のいずれも酸化インジウムに基づいた層を含まない。実際、インジウムの使用は特定の問題を提起する。第一に、インジウム資源は限られており、それはこれらの装置の製造費用の避けられない増加をすぐ導くだろう。さらに、有機電界発光装置中に存在するインジウムはこれらの装置の有機部分中に拡散する傾向を持ち、それらの寿命の短縮を導く。
【0037】
電極の第三の誘電体層及び最後の誘電体層の幾何学的厚さは好ましくは少なくとも5nmまたは少なくとも8nm、より好ましくは少なくとも10nmである。好ましくは、それは30nm未満または好ましくは25nm未満、より好ましくは22nm未満、20nm未満または18nm未満である。
【0038】
あるいは、電極の最後の誘電体層の厚さはその抵抗厚さによって規定されることができる。層の抵抗厚さは、この層を構成する材料の比抵抗(ρ)のこの同じ層の幾何学的厚さに対する比率に等しい。好ましくは、電極の最後の誘電体層の抵抗厚さは多くとも10
12オーム、好ましくは多くとも10
7オームである。かかる値は、電極の最後の誘電体層の光学パラメーターを最適化することを可能にし、従って高点火電圧を避けることを可能にする電気的特性と矛盾しない厚さを維持しながら透過される光の量を最適化する。
【0039】
一般に、電極の層D1,D2またはD3に対する幾何学的厚さの値がここに与えられるとき、それらは550nmの波長で1.8〜2.2、より好ましくは1.9〜2.1またはさらにより好ましくは1.95〜2.05の屈折率を持つ構成材料に対して与えられる。従って、それらは、2に近い屈折率を掛けた幾何学的厚さに等しい光学的厚さに相当する。もし異なる屈折率を持つ別の材料が選ばれるなら、対応する幾何学的厚さを再計算することで十分である。
【0040】
有利には、金属導電層の一つ、幾つかまたはそれぞれの下の電極の誘電体層はまた、支持体に最も近い金属導電層の面と接触する核形成層を含むことができる。この層は、金属導電層を構成する金属層、例えば銀の好ましい成長を可能にし、従って例えば積層体の吸光係数を制限することによって金属導電層の良好な電気的及び光学的特性を得ることを可能にする。それは、好ましくは少なくともZnO
x(x
<1)及び/またはZn
xSn
yO
z(x+y
>3及びz
<6)を含む。好ましくは、Zn
xSn
yO
zは多くとも95重量%の亜鉛を含み、亜鉛の重量%は、層中に存在する金属の全重量に対して表わされている。好ましくは、結晶化層はZnOからなるものである。核形成層の幾何学的厚さは、少なくとも5nmまたは少なくとも8nmであることが有利であり、それは、多くとも15nmまたは多くとも12nmであることが有利である。この厚さは、それを含む誘電体の厚さ内に含まれる。
【0041】
金属導電層の一つ、幾つかまたはそれぞれに金属導電層の上部に、すなわち支持体から最も遠い金属導電層の面の上に、保護遮断層を与えることもまた有利であることができる。この層は、特に酸化または窒化による金属導電層の劣化を避けることを可能にする。それは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn及びAlから選ばれた少なくとも一つの元素を含む金属、窒化物、酸化物または亜化学量論酸化物を含むことができる。最も好ましくは、犠牲層は、少なくともTi,TiO
x(x
<2)、TiN,NiCr,NiCrO
x,TiZrO
x(TiZrO
xは、50重量%の酸化ジルコニウムを持つ酸化チタンの層を示す)、またはZnAlO
x(ZnAlO
xは、2〜5重量%の酸化アルミニウムを持つ酸化亜鉛の層を示す)を含む。好ましくは、遮断層は、いわゆる「セラミック」層である。すなわちそれはセラミックターゲットから得られる。セラミック遮断層を選ぶことにより、光電子装置の効率を低下する寄生吸収を避けるための利点を証明することができる。遮断層の幾何学的厚さは少なくとも0.4nmまたは少なくとも0.5nmであることが有利であり、それは多くとも7.0nmまたは多くとも6.0nmであることが有利である。
【0042】
有利には、電極は、支持体に対して、前記電極を作る多層積層体の上に位置された、表面電気特性の均一性を改善するための薄層を含む。表面電気特性の均一性を改善するための薄層の主な機能は、電極の表面全体に渡る均一な電荷移動を得ることを可能にすることである。この均一な移動は、表面のあらゆる点で実質的に等しい放射または変換された光束に反映される。これはまた、光子系装置の寿命を増やすことを可能にする。なぜならこの移動はあらゆる点で実質的に同じであり、従って存在しうるホットスポットを排除するからである。均一性を改善するための層は、少なくとも0.5nm、好ましくは少なくとも1.0nmの幾何学的厚さを持つ。均一性を改善するための層は、多くとも6.0nm、好ましくは多くとも2.5nm、より好ましくは多くとも2.0nmの幾何学的厚さを持つ。均一性を改善するための層は、少なくとも金属、窒化物、酸化物、炭化物、オキシ窒化物、オキシ炭化物、炭窒化物またはオキシ炭窒化物を含む。より好ましくは、表面電気特性の均一性を改善するための薄層は、少なくともTiオキシ窒化物、Zrオキシ窒化物、Niオキシ窒化物、NiCrオキシ窒化物、Ti窒化物、Zr窒化物、Ni窒化物、またはNiCr窒化物を含む。
【0043】
ある特別な実施態様では、本発明による透明基板は、支持体が電極が付着された面とは反対の面の上に機能的被覆を持つようなものである。この機能的被覆は、例えば、反射防止、拡散、曇り防止、汚染防止、引掻抵抗性または選択的吸収機能を持つ層または幾つかの層の積層体であることができる。
【0044】
別のその態様によれば、本発明は、上述のような透明基板と、透明基板の電極に隣接する、白色光を放射する有機電界発光層のシステム(OLEDシステム)とを含む有機電界発光装置に関する。
【0045】
OLEDシステムが白色光を放射するように、それは赤、緑、黄及び青の光を放射する化合物の単一の有機層内の混合物から;赤、緑、黄及び青の光を放射する部分にそれぞれ対応する有機層の三つのまたは四つの構造体をまたは有機層(黄及び青の放射)の二つの構造体を積層することによって;または三つまたは四つ(赤、緑、青及び黄の放射)の並置または光散乱系と組み合わせたまたは組み合わせていない有機層(黄及び青の放射)の二つの構造体によって形成されることができる。有機層の積層体に言及するとき、有機層は連続するか(これらの構造は「薄い」と呼ばれる)、または電子及びホールの移動のために層によって分離される(これらの構造は「厚い」と呼ばれ、かつ「通常の高性能有機積層体」と呼ばれることができる)ことができる。
【0046】
用語「白色光」は、基板の表面に垂直な照射に対して、0°の色度座標が、四辺形の輪郭を含んだ、八つの色度四辺形の一つの中に含まれる光を表わす。これらの四辺形は、標準規格ANSI_NEMA_ANSLG C78.377−2008の10〜12頁で規定されている。これらの四辺形は、「CIE(x,y)色度図の表1のSSL製品の色度仕様のグラフ表示」と題する
図A1、パート1に示される。
【0047】
通常、Gは、緑の光を優勢に放射する放射有機層を示し、Bは、青の光を優勢に放射する放射有機層を示し、Rは、赤の光を優勢に放射する放射有機層を示す。順序GBR,RGB,BRG,RBG,GRB,BGRは、異なる放射層が現れる順序であり、これらの順序は電極に関して表わされ、順序の第一文字は前記電極から最も遠い放射層に対応する。有機層は、単一材料の層、またはそれぞれが異なる材料の複数の層からなることができる。また、四つの放射層を持つシステムを使用することもでき、そこでは黄色(文字Yにより示される)がOLEDシステムの可視光のスペクトル範囲を広げることを可能にする。
【0048】
本発明による有機電界発光装置は、GBR,RGB,BRG,RBG,GRB及びBGRシステムから選択されたOLEDシステムを含むことができ、GBR及びRGBシステムが好ましい。本発明による有機電界発光装置はまた、BYRG,BRYGシステム及びその変形から選ばれたOLEDシステムを含むことができ、BYRGまたはBYGRシステムが好ましい。好ましくは、本発明による有機電界発光装置は、少なくとも二つの異なる放射層を分離する有機層を含む通常の高性能有機積層体から形成されたOLEDシステムを含み、それらは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも15nm、またはさらにより好ましくは少なくとも30nmの厚さを持つ。
【0049】
いわゆる「薄い」構造の例、及びいわゆる「厚い」構造を作るための関連した材料は、例えばReinekeら(NATURE,Vol.459、2009年5月14日)またはRosenowら(Journal of Applied Physics,Vol.108、113113(2010))に記載されている。
【0050】
特別な実施態様によれば、有機電界発光装置は、ガラス、二重ガラス、または積層ガラスに一体化される。それはまた、幾つかの有機電界発光装置を一体化することも可能である。
【0051】
別の特別な実施態様によれば、有機電界発光装置は、ガラス及び/またはプラスチックの少なくとも一つのカプセル封入材料内に封入される。有機電界発光装置の種々の実施態様は組み合わされることができる。
【0052】
最後に、種々の有機電界発光装置は広範囲の用途を持つ。本発明は、特に一つ以上の発光表面を作るためのこれらの有機電界発光装置の可能な使用に関する。発光表面という用語は、例えば照明板、発光パネル、発光仕切り、工作物の表面、温室、フラッシュライト、スクリーンバッキング、引出し底、発光屋根、タッチスクリーン、ランプ、写真撮影用フラッシュ、発光展示板、安全標識、棚、自動車の乗客室または航空機のコックピットの照明を含む。
【0053】
本発明による有機電界発光装置は、以下のことを併せ持つことが有利である:
− 70以上、好ましくは72以上または74以上のCRI、
− 2.4以下、好ましくは2.0以下または1.8以下のカラーデルタ、及び
− 120nmの幾何学的厚さ及び12Ω/□(±0.5Ω/□)の平方当たりの抵抗を持つITOの電極で最適化された同じOLED装置の輝度の少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%または88%、またはさらにより好ましくは少なくとも90%または95%に等しい輝度。
【0054】
本発明による有機電界発光装置はまた、有利には10000cd/m
2の輝度で15ルーメン/W以上の効率を持つことができる。
【0055】
さらに、本発明による有機電界発光装置は、通常のITO電極または銀の単一層を持つ多層より十分に低い平方当たりの抵抗を持つ電極を組み込み、従って有利に電極の導電性、すなわちOLED装置の効率を促進する。電極の平方当たりの抵抗は5.0Ω/□以下、好ましくは4.0Ω/□以下であることができる。これはまた、追加の電極補強なしにより大きな面積のOLED装置の設計を可能にする。
【0056】
本発明の特別な実施態様は、
図1及び2、及び実施例1〜5を参照して例示として述べられるだろう。本発明の部分を形成しない比較例1〜12もまた与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1の有機電界発光装置(100)は、透明基板(1)、OLEDシステム(2)及び対向電極(3)を含み、透明基板(1)は、電極(11)を担時する支持体(10)を含む。前記電極(11)は、第一誘電体層(D1)、第一金属導電層(M1)、第二誘電体層(D2)、第二金属導電層(M2)及び第三誘電体層(D3)を含む層の積層体からなる。
【0060】
図2の有機電界発光装置(200)は、透明基板(1)、OLEDシステム(2)及び対向電極(3)を含み、透明基板(1)は、電極(11)を担時する支持体(10)を含む。前記電極(11)は、核形成層(N1)を含む第一誘電体層(D1)、第一金属導電層(M1)、遮断層(B1)、核形成層(N2)を含む第二誘電体層(D2)、第二金属導電層(M2)、遮断層(B2),第三誘電体層(D3)及び均一性を改善するための薄層(U)を含む層の積層体からなる。OLEDシステム(2)は、支持体(10)から出発する順序で、ホールの移動のための層を含む第一有機層(OD4)、青放射層(EMB)、電子の移動のための層及びホールの移動のための層を含む第二有機層(OD3)、緑放射層(EMG)、電子の移動のための層及びホールの移動のための層を含む第三有機装置(OD2)、赤放射層(EMR)、及び電子の移動のための層を含む第四有機層(OD1)を含む。このOLEDシステムは「RGB」と呼ばれる。一つ以上のブロッキング層(単数または複数)(
図2に示されていない)がまた、一つ以上の電荷移動層(単数または複数)内のOLEDシステム中に設けられることができる。
【0061】
図中の種々の要素は縮尺通りで示されていない。
【0062】
本発明による有機電界発光装置の実施例は表I中に与えられ、本発明の部分を形成しない比較例は表II中に与えられている。
【0063】
有機電界発光装置の各部分、電極を形成する層及び有機システムについては、それらの性質、及びナノメートルで表わされたそれらの幾何学的厚さがそこに記載されている。OLEDシステムによって放射された光もまた規定されている。
Zn
90Sn
10O:Zn(90重量%)とSn(10重量%)の混合された酸化物を示す
Zn
48Sn
52O:Zn(48重量%)とSn(52重量%)の混合された酸化物を示す
TxO:セラミックターゲットを使用してマグネトロン噴霧によって付着されたTiO
2の層を示す
ITO:スズをドープされた酸化インジウムの層を示す。
【0064】
実施例及び比較例の全ての有機電界発光装置はソーダ石灰石英ガラスの支持体を持つ。
【0065】
実施例及び比較例のΩ/□で表わされた電極の平方当たりの抵抗、並びに有機電界発光装置の性能が表I及びIIに与えられる。この性能は、Fluxim社(http://www.fluxim.ch)からのSETFOSシミュレーションソフトウエア(半導発光薄膜光学シミュレーター)、Version 2を使用して計算された。輝度(Lum)は任意単位で示される。与えられたCRIの値は、上記式から0,10,20,...,80度の角度で計算されたCRIの平均値である。カラーデルタ(Deltacol)の値もまた、上に与えられた式から計算された。輝度はまた、SETFOSで入手可能なファイルITO.nkから屈折率が得られるITOの電極(「参照」)により最適化された同じOLED装置の参照輝度に対して相対的に(「比率」で)表わされる。
【0066】
実施例の性能は、80以上の輝度、参照ITO電極により最適化された同じOLED装置の輝度の少なくとも88%に等しい輝度、70以上のCRI及び2以下のカラーデルタを持つ、輝度の値、CRI及びカラーデルタの優れた組み合わせを示す。さらに、本発明による電極は、通常のITO電極または銀の単一層を持つ多層より十分に低い平方当たりの抵抗を持ち、従って電極の導電性、すなわちOLED装置の効率を促進し、それはまた、電極補強なしにより大きな面積のOLEDの設計を可能にする。しかし、比較例のそれぞれに対し、これらの性能図の少なくとも一つは容認できない値(表II中下線を付けた値)を示す。
【0067】
さらに、有機電界発光装置は、実施例5、及び比較例4及び12に基づいて効果的に作られ、これらの装置の外部量子効率(EQE)及び発光効率は10000cd/m
2で測定され、これらの装置のCRI及びカラーデルタは1000cd/m
2で測定された。
【0068】
本発明に従った実施例5による装置は、22.4%の外部量子効率、14lm/Wの発光効率、86以上のCRI及び2.15のカラーデルタを示す。
【0069】
本発明に従わない比較例4による装置(電極が銀の単一層を持つ多層である)は、16.6%の外部量子効率、13.1lm/Wの発光効率、61のCRI及び8.9のカラーデルタを示す。
【0070】
本発明に従わない比較例12による装置(電極が銀の二つの層を持つ多層であるが、そのD2の厚さは59.8nmであり、65nm未満である)は、16.6%の外部量子効率、10.8lm/Wの発光効率、82のCRI及び3.68のカラーデルタを示す。
【0071】
本発明に従った層の他の積層体はまた、第三誘電体層の厚さの影響を研究するために実行された。それらは、ここに実施例6〜9として与えられる。構造による、第三誘電体層のみ及び任意選択的に均一性を改善するための層は、表IIIに与えられた構造に従って、これらの実施例を区別する。これらの実施例は、より低い点火電圧が得られることを可能にする(それは有利であることがわかっている)30nm未満の厚さを持つ第三誘電体層の優位性を示す。