(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
[配線基板の構造]
図1は、第1の実施の形態に係る配線基板を例示する断面図であり、
図1(a)は配線層と絶縁層が交互に複数積層された配線基板の一部を示した図、
図1(b)は
図1(a)のA部の部分拡大図である。
【0012】
図1(a)を参照するに、配線基板1は、絶縁層10と、配線層20と、絶縁層30と、配線層40と、保護絶縁層50とを有している。
【0013】
なお、本実施の形態では、便宜上、配線基板1の保護絶縁層50側を上側又は一方の側、絶縁層10側を下側又は他方の側とする。又、各部位の保護絶縁層50側の面を上面又は一方の面、絶縁層10側の面を下面又は他方の面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を絶縁層10の凸部10xの上端面10a−1の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を絶縁層10の凸部10xの上端面10a−1の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0014】
絶縁層10は、例えば、多層配線の層間絶縁層として、ビルドアップ工法を用いて多層配線を形成することができる絶縁層である。絶縁層10としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ系樹脂等の熱硬化性の絶縁性樹脂を含浸させた絶縁樹脂等を用いることができる。絶縁層10として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂等の熱硬化性の絶縁性樹脂を含浸させた絶縁樹脂等を用いてもよい。熱硬化性の絶縁性樹脂からなる絶縁層10の厚さは、例えば、10〜1000μm程度とすることができる。
【0015】
又、絶縁層10の材料としては、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂等の感光性の絶縁樹脂を用いることができる。感光性の絶縁樹脂からなる絶縁層10の厚さは、例えば、5〜10μm程度とすることができる。絶縁層10は感光性の絶縁樹脂を主成分とするが、必要に応じシリカやアルミナ等のフィラーを含有しても構わない。
【0016】
絶縁層10は、上面10aと下面10bを備えている。下面10bは、下層の絶縁層及び下層の配線層を覆うように形成されている(図示せず)。又、絶縁層10は、配線層20と下層の配線層を電気的に接続するためのビア配線を備えている(図示せず)。
【0017】
絶縁層10は、一方の側に、凸部10xと、凹部10yが形成されている。 具体的には、絶縁層10の上面10aは、配線層20が形成される領域が凸部10xに、それ以外の領域が凹部10yに形成されている。すなわち、配線層20の外側(隣接する配線層20の間)に位置する(露出する)絶縁層10の上面10aは、他方の側(下面10b側)に向かって掘り下げられて凹部10yが形成されている。
【0018】
絶縁層10の上面10aにおいて、凸部10xの一方の側に位置する面を上端面10a−1、凹部10yの一方の側に位置する面を底面10a−2と称する。又、凸部10xを構成する側壁面及び凹部10yを構成する内壁面は、同じ面から構成される。すなわち、凹部10yの内壁面は、凸部10xの側壁面でもあり、同じ構成を持ち、凸部10xと凹部10yは、連続するように設けられている。凸部10xを構成する側壁面及び凹部10yを構成する内壁面は、説明の便宜上、凹部10yの内壁面を視点に説明する場合がある。
【0019】
凹部10yの底面10a−2は、凸部10xの上端面10a−1よりも他方の側(下面10b側)に低い位置にある。凸部10xの上端面10a−1は平滑面であり、凸部10xの上端面10a−1の面粗度は、例えば、Ra3〜20nm程度とすることができる。これに対して、凹部10yの底面10a−2及び内壁面は粗化面であり、凹部10yの底面10a−2及び内壁面の面粗度は、例えば、Ra50〜100nm程度とすることができる。このように、凹部10yの底面及び内壁面は、凸部10xの上端面10a−1よりも面粗度が高い。
【0020】
凹部10yの内壁面の金属膜21側は、金属膜21に近づくにしたがって拡幅している。言い換えれば、凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの側壁面の金属膜21側は金属膜21に近づくにしたがって縮幅している。つまり、凸部10xの上端面10a−1の幅(絶縁層10と金属膜21の界面の幅)W
2は、凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの縮幅していない部分(金属膜21とは反対に位置する絶縁層10の他方の側)の幅W
1よりも狭い。凸部10xの上端面10a−1の幅W
2は、例えば、2〜5μm程度することができる。凹部10yの深さD
1は、例えば、0.5〜2μm程度とすることができる。
【0021】
絶縁層10の凸部10xの上端面10a−1には、配線層20が形成されている。配線層20は、金属膜21と、金属層25とを有している。配線層20は、微細配線層(高密度の配線パターンを備えた配線層)である。ここで、微細配線層とは、ライン/スペースが10μm/10μm以下の配線層を指す。配線層20のライン/スペースは、例えば、2μm/2μm〜5μm/5μm程度とすることができる。配線層20の厚さ(金属膜21の下面から金属膜23の上面までの総厚)は、例えば、1〜3μm程度とすることができる。
【0022】
なお、ライン/スペースにおけるラインとは配線幅を表し、スペースとは隣り合う配線同士の間隔(配線間隔)を表す。例えば、ライン/スペースが10μm/10μmと記載されていた場合、配線幅が10μmで隣り合う配線同士の間隔が10μmであることを表す。
【0023】
金属膜21は、上面21aと下面21bと側面21cとを備えている。金属膜21は、下面21bの外周部が上端面10a−1の外側に露出するように上端面10a−1に形成されている。金属膜21は、金属層25よりも絶縁層10との密着性が高い金属により形成されている。金属膜21は、所謂、密着層である。金属層25の材料が銅である場合には、金属膜21の材料としては、例えば、チタン、ニッケル、クロム等を用いることができる。金属膜21の厚さは、例えば、20〜100nm程度とすることができる。金属膜21の幅W
3は、上端面10a−1の幅W
2よりも0.1〜0.3μm程度幅広に形成されている。又、金属膜21の幅W
3は、凸部10xの幅W
1よりも広く形成されている。
【0024】
金属層25は、金属膜21の上に積層されている。具体的には、金属層25は、金属膜22と金属膜23から構成されている。金属膜22は、金属膜21の上面21a上に形成されている。金属膜22は、金属膜23を形成するための所謂、シード層である。
【0025】
又、金属膜23は、金属膜22上に積層されている。金属膜22及び23の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。金属膜22の厚さは、例えば、100〜500nm程度とすることができる。金属膜23の厚さは、例えば、1〜6μm程度とすることができる。
【0026】
金属層25は、上面25aと下面25bと側面25cとを備えている。
金属層25(金属膜22及び金属膜23)の幅W
4は金属膜21の幅W
3と略同一である。又、金属層25の幅W
4は、凸部10xの幅W
1よりも広く形成されている。
【0027】
絶縁層30は、絶縁層10上に、配線層20を被覆すると共に、凹部10yを充填するように形成されている。絶縁層30の材料としては、例えば、絶縁層10と同様のもの用いることができる。絶縁層10上に、絶縁層10と同一材料で絶縁層30を形成してもよいし、絶縁層10とは異なる材料で絶縁層30を形成してもよい。配線層20と絶縁層30は、絶縁層10上に交互に複数積層することができる。複数積層した場合、最上層の絶縁層30に配線層40が形成される。
【0028】
配線層40は、絶縁層30の一方の側に形成されており、密着層及びシード層(図示なし)を介して配線層20と電気的に接続されている。配線層40は、絶縁層30を貫通し配線層20の上面を露出するビアホール30x内に充填されたビア配線、及び絶縁層30の上面に形成された配線パターンを含んで構成されている。配線層40の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。配線層40を構成する配線パターンは、絶縁層30の上面から突出する金属ポスト又はパッドである。また、必要に応じて、絶縁層30の上面に金属ポスト又はパッド間を接続する引き回し配線パターンを含んでいてもよい。配線層40の絶縁層30の上面から突出量は、例えば、1〜10μm程度とすることができる。
【0029】
保護絶縁層50は、絶縁層30上に配線層40を被覆するように形成されている。保護絶縁層50の材料としては、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂等を主成分とする絶縁性の感光性樹脂を用いることができる。保護絶縁層50は感光性樹脂を主成分とするが、必要に応じシリカやアルミナ等のフィラーを含有しても構わない。保護絶縁層50の厚さは、例えば、5〜30μm程度とすることができる。
【0030】
保護絶縁層50は、開口部50xを有し、開口部50xの底部には配線層40の一部が露出している。開口部50xの底部に露出する配線層40は、例えば、半導体チップ等と電気的に接続されるパッドとして機能する。又、配線層40を構成する配線パターンが金属ポストの場合、保護絶縁層50は、金属ポストの側面を覆うように形成してもよい。又、保護絶縁層50を形成しなくてもよい。
【0031】
なお、開口部50xの底部に露出する配線層40の上面(金属ポストの場合は上面のみ又は上面及び側面)に、表面処理層(図示せず)を形成してもよい。表面処理層の例としては、Au層や、Ni/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni/Pd/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)等を挙げることができる。又、開口部50xの底部に露出する配線層40の上面に、OSP(Organic Solderability Preservative)処理等の酸化防止処理を施して表面処理層を形成してもよい。
【0032】
[配線基板の製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明する。
図2〜
図4は、第1の実施の形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。なお、本実施の形態では、単品の配線基板を形成する工程を示すが、配線基板となる複数の部分を作製後、個片化して各配線基板とする工程としてもよい。
【0033】
まず、
図2(a)に示す工程では、絶縁層10を準備し、絶縁層10の一方の面にスパッタ法や無電解めっき法等により金属膜21及び金属膜22を順次積層する。絶縁層10の材料や厚さ等は前述の通りである。
【0034】
金属膜21の材料としては、例えば、チタン、ニッケル、クロム等を用いることができるが、ここではチタンを用いる例を示す。金属膜21の厚さは、例えば、20〜100nm程度とすることができる。金属膜22の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。金属膜22の厚さは、例えば、100〜500nm程度とすることができる。なお、金属膜21は、絶縁層10と金属層25との密着性を向上するために設ける密着層である。又、金属膜22は、金属膜23を形成するためのシード層である。
【0035】
次に、
図2(b)に示す工程では、金属膜22の上面(配線層20が形成される予定の領域)に開口部300xを有するレジスト層300(ドライフィルムレジスト等)を形成する。そして、金属膜22を給電層に利用した電解めっき法により、開口部300x内に露出する金属膜22上に、銅等からなる金属膜23を形成する。金属膜23の厚さは、例えば、1〜6μm程度とすることができる。
【0036】
次に、
図2(c)に示す工程でレジスト層300を剥離液により除去し、
図3(a)に示す工程では、例えば、金属膜23をマスクとするウェットエッチングにより金属膜23に被覆されていない部分の金属膜22を除去する。金属膜22が銅からなる場合には、例えば、酸性の酸化性液体の水溶液により除去できる。
図3(a)に示す工程により金属膜22及び金属膜23から構成される金属層25が形成される。
【0037】
次に、
図3(b)に示す工程では、隣接する金属層25(金属膜22及び23)の間から露出する金属膜21を除去する。更に金属膜21が除去されて露出した絶縁層10の上面10aを除去(掘り下げ)して金属膜21及び金属層25の積層体の周囲に凹部10yを形成する。
【0038】
言い換えれば、金属膜21が除去されて露出した絶縁層10の上面10aを除去(掘り下げ)することで金属膜21及び金属層25の積層体が形成された領域が突出する凸部10xを形成する。すなわち、金属膜21及び金属層25が形成されている絶縁層10の上面10aは、凸部10xとなり、それ以外の絶縁層10の上面10aは、凹部10yとなる。なお、絶縁層10の上面10aにおいて、10a−1は凸部10xの一方の側に位置する上端面、10a−2は凹部10yの一方の側に位置する底面を示している。
【0039】
チタンからなる金属膜21及び絶縁層10は、例えば、異方性エッチングによる一連の工程で除去することができる。異方性エッチングとしては、例えば、CF
4やSF
6等のガスを用いた反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)を用いることができる。
【0040】
次に、
図3(c)に示す工程では、絶縁層10に形成された凹部10yの底面側及び内壁面側を更に除去し、凹部10yを深くすると共に、凸部10xの幅W
1又は凸部10xの上端面10a−1の幅W
2を金属膜21及び金属層25の幅W
3、W
4よりも狭くする。この際、凹部10yの内壁面の金属膜21側は、金属膜21に近づくにしたがって拡幅する。言い換えれば、凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの金属膜21側(上端面10a−1側)は金属膜21に近づくにしたがって縮幅する。但し、凹部10yの内壁面の金属膜21側が拡幅するか否かは、エッチング条件を変えることにより任意に選択でき、例えば、凹部10yの内壁面を底面に対して略垂直な面とすることも可能である。
【0041】
凹部10yは、例えば、等方性エッチングにより形成することができる。等方性エッチングとしては、例えば、O
2やN
2等のガスを用いたプラズマ処理を用いることができる。なお、プラズマ処理等の等方性エッチングにより、凹部10yの底面及び内壁面が粗化される。凹部10yの底面及び内壁面の面粗度は、例えば、Ra50〜100nm程度とすることができる。
【0042】
次に、
図4(a)に示す工程では、絶縁層10上に配線層20を被覆すると共に、凹部10yを充填する絶縁層30を形成する。絶縁層30の材料や厚さは前述の通りである。例えば、絶縁層30の材料として、液状又はペースト状の樹脂を用い、配線層20を被覆すると共に凹部10yを充填するように、絶縁層10上に液状又はペースト状の樹脂をスピンコート法等により塗布し、硬化させる。
【0043】
次に、
図4(b)に示す工程では、絶縁層30を露光及び現像又はレーザ加工により、絶縁層30を貫通し配線層20の上面を露出するビアホール30xを形成する。そして、絶縁層10上に配線層40を形成する。配線層40は、例えば、セミアディティブ法を用いて形成できる。具体的には、まず、スパッタ法や無電解めっき法により、絶縁層30の上面及びビアホール30xの内壁面及び底面を連続的に被覆する密着層及びシード層を形成する。密着層は金属膜21と、シード層は金属膜22と同様の材料を用いることができる。密着層やシード層の材料や厚さは、金属膜21や金属膜22と同様である。
【0044】
次に、密着層及びシード層上に感光性レジストを塗布し、露光及び現像し、配線層40に対応する開口部を備えたレジスト層を形成する。次に、シード層を給電層に利用した電解めっき法により、レジスト層の開口部に銅(Cu)等からなる電解めっき層を形成する。続いて、レジスト層を除去した後に、電解めっき層をマスクにして、電解めっき層に覆われていない部分の密着層及びシード層をエッチングにより除去する。これにより、密着層及びシード層上に電解めっき層が積層された配線層40が形成される。
【0045】
次に、
図4(c)に示す工程では、絶縁層30の上面に、配線層40を被覆する保護絶縁層50を形成する。保護絶縁層50は、絶縁層30と同様にして絶縁性の感光性樹脂により形成することができる。次に、保護絶縁層50を露光及び現像して開口部50xを形成する。開口部50xの底部には配線層40の一部が露出する。開口部50xの底部に露出する配線層40の上面に、無電解めっき法やOSP処理により前述の表面処理層を形成してもよい。以上により、
図1に示す配線基板1が完成する。
【0046】
このように、配線基板1では、絶縁層10の凹部10yの底面及び内壁面は粗化面である。これにより、絶縁層10と絶縁層30との密着性が向上するため、絶縁層10と絶縁層30との界面における金属膜22及び23の析出が抑制され、絶縁信頼性が向上する。なお、絶縁信頼性の向上については、後述の実施例1でも説明する。
【0047】
又、配線基板1では、凸部10xの上端面10a−1の幅W
2が、金属膜21の幅W
3並びに金属層25の幅W
4よりも狭くなっている。これにより、配線層20(特に金属層25)から絶縁層10と絶縁層30との界面が遠ざかり、絶縁層10と絶縁層30との界面にデンドライト等が発生しにくくなる効果を奏する。イオンマイグレーションの発生要因であるデンドライトの発生を抑制できるため、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0048】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態とは構造が異なる微細配線層の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0049】
図5は、第1の実施の形態の変形例1に係る配線基板を例示する断面図であり、
図5(a)は配線層と絶縁層が交互に複数積層された配線基板の一部を示した図、
図5(b)は
図5(a)のA部の部分拡大図である。
【0050】
図5を参照するに、配線基板1Aにおいて、凹部10yの底面及び内壁面が粗化面である点は配線基板1と同様であるが、凹部10yの内壁面は配線基板1のようには拡幅していない。言い換えれば、凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの幅は略一定であり、凸部10xの上端面10a−1の幅とも略等しくなる。凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの幅W
1(凸部10xの上端面10a−1の幅)は、例えば、2〜5μm程度することができる。
【0051】
金属膜21は、上面21aと下面21bと側面21cとを備えている。金属膜21は、凸部10xの上端面10a−1の外周部を除く領域に形成されている。言い換えれば、金属膜21は、凸部10xの上端面10a−1の外周部を露出するように形成されている。具体的には、上面21aは、金属層25の下面25bの外周部を除く領域(外周部よりも内側の領域)と接している。又、下面21bは、凸部10xの上端面10a−1の外周部を除く領域(外周部よりも内側の領域)と接している。側面21cは、絶縁層30と接している。
【0052】
金属膜21の幅W
3は、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1よりも0.2〜0.4μm程度狭く形成されている。言い換えれば、凸部10xの上端面10a−1の外周部の0.1〜0.2μm程度が、金属膜21の外側の周囲に露出している。金属膜21の周囲に露出する凸部10xの上端面10a−1の外周部は、凹部10yの底面及び内壁面と同程度に粗化されている。
【0053】
又、金属膜21と接している凸部10xの上端面10a−1は、凹部10yの底面及び内壁面の粗度よりも小さな平滑な面とされている。金属膜21の側面21cは、金属層25の側面25c(金属膜22及び金属膜23の側面)及び絶縁層10の凹部10yの内壁面よりも中央部に向かって窪んだ位置にある。
【0054】
金属層25は、金属膜21の上面21aに形成されている。具体的には、金属層25は、金属膜22と金属膜23から構成されている。金属膜22は、下面の外周部が金属膜21の上面21aの外側に露出するように金属膜21上に形成されている。金属膜23は、金属膜22上に積層されている。
【0055】
金属層25は、上面25aと下面25bと側面25cとを備えている。金属層25は、下面25bの外周部(金属膜22の下面の外周部)が金属膜21の上面21aの外側に露出するように金属膜21上に形成されている。又、金属層25の幅W
4は、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1よりも広く形成されている。具体的には、金属層25の幅W
4は、凸部10xの幅W
1よりも0.1〜0.3μm程度幅広に形成することができる。
【0056】
配線基板1Aを形成するには、第1の実施の形態の
図2(a)の工程から
図3(b)の工程を実施した後、
図6に示す工程を実施すればよい。
【0057】
図6に示す工程では、金属膜21の外周側を除去して金属膜21の幅を凸部10xの上端面10a−1の幅並びに金属層25の幅よりも狭くし、金属層25の下面25bの外周部(金属膜22の下面の外周部)を金属膜21の上面21aの外側に露出させる。又、凸部10xの上端面10a−1の外周部を金属膜21の側面21cよりも外側の周囲に露出させる。金属層25が銅からなる場合には、チタンからなる金属膜21は、例えば、アルカリ性の酸化性液体の水溶液を用いたウェットエッチングにより、金属層25に対して選択的に除去できる。
【0058】
その後、第1の実施の形態の
図3(c)の工程から
図4(c)の工程を実施することにより、配線基板1A(
図5参照)が完成する。
【0059】
このように、配線基板1Aでは、配線基板1と同様に、絶縁層10の凹部10yの底面及び内壁面は粗化面である。これにより、絶縁層10と絶縁層30との密着性が向上するため、絶縁層10と絶縁層30との界面における金属層25の析出が抑制され、絶縁信頼性が向上する。なお、絶縁信頼性の向上については、後述の実施例2でも説明する。
【0060】
又、配線基板1Aでは、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1が金属膜21の幅W
3より広くなっている。これにより、配線層20(特に金属層25)から絶縁層10と絶縁層30との界面が遠ざかり、絶縁層10と絶縁層30との界面にデンドライト等が発生しにくくなる効果を奏する。又、粗化面の面積が広くなり、絶縁層10と絶縁層30の密着性が増加することで、更にデンドライト等が発生しにくくなる効果を奏する。イオンマイグレーションの発生要因であるデンドライトの発生を抑制できるため、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0061】
なお、凹部10yの内壁面の金属膜21側が拡幅するか否かは、エッチング条件を変えることにより任意に選択できるため、配線基板1と同様に拡幅させてもよい。
【0062】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、第1の実施の形態とは構造が異なる微細配線層の他の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0063】
図7は、第1の実施の形態の変形例2に係る配線基板を例示する断面図であり、
図7(a)は配線層と絶縁層が交互に複数積層された配線基板の一部を示した図、
図7(b)は
図7(a)のA部の部分拡大図である。
【0064】
図7を参照するに、配線基板1Bにおいて、凹部10yの底面及び内壁面が粗化面である点は配線基板1と同様であるが、凹部10yの内壁面は配線基板1のようには拡幅していない。言い換えれば、凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの幅は略一定であり、凸部10xの上端面10a−1の幅とも略等しくなる。凹部10y間に位置する絶縁層10の凸部10xの幅W
1(凸部10xの上端面10a−1の幅)は、例えば、2〜5μm程度することができる。
【0065】
又、金属膜21と接している凸部10xの上端面10a−1は、凹部10yの底面及び内壁面の粗度よりも小さな平滑な面とされている。金属膜21は、上面21aと下面21bと側面21cを備えている。金属膜21は、下面21bの外周部が凸部10xの上端面10a−1の外側に露出するように形成されている。金属膜21の幅W
3は、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1よりも0.1〜0.3μm程度幅広に形成されている。
【0066】
金属層25は、金属膜21の上面21aに形成されている。具体的には、金属層25は、金属膜22と金属膜23から構成されている。金属膜22は、下面の外周部が金属膜21の上面21aの外側に露出するように金属膜21上に形成されている。金属膜23は、金属膜22上に積層されている。
【0067】
金属層25は、上面25aと下面25bと側面25cを備えている。金属層25は、下面25bの外周部(金属膜22の下面の外周部)が金属膜21の上面21aの外側に露出するように金属膜21上に形成されている。金属層25の幅W
4は、金属膜21の幅W
3よりも広く形成されている。具体的には、金属層25の幅W
4は、金属膜21の幅W
3よりも0.1〜0.3μm程度幅広に形成することができる。又、金属層25の幅W
4は、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1よりも広く形成されている。具体的には、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1よりも0.2〜0.6μm程度幅広に形成することができる。
【0068】
配線基板1Bを形成するには、第1の実施の形態の
図2(a)の工程から
図3(b)の工程を実施した後、
図6に示す工程を実施する。そして、
図3(c)の工程を実施し、
図3(c)の工程において、金属膜21の下面の外周部が上端面10a−1の外側に露出するように絶縁層10のエッチングを行えばよい。その後、第1の実施の形態の
図4(a)の工程から
図4(c)の工程を実施することにより、配線基板1B(
図7参照)が完成する。
【0069】
このように、配線基板1Bでは、配線基板1と同様に、絶縁層10の凹部10yの底面及び内壁面は粗化面である。これにより、絶縁層10と絶縁層30との密着性が向上するため、絶縁層10と絶縁層30との界面における金属層25の析出が抑制され、絶縁信頼性が向上する。なお、絶縁信頼性の向上については、後述の実施例3でも説明する。
【0070】
又、配線基板1Bでは、凸部10xの上端面10a−1の幅W
1が、金属膜21の幅W
3よりも狭くなっている。更に、金属膜21の幅W
3が、金属層25の幅W
4よりも狭くなっている。これにより、配線層20(特に金属層25)から絶縁層10と絶縁層30との界面が遠ざかり、絶縁層10と絶縁層30との界面にデンドライト等が発生しにくくなる効果を奏する。イオンマイグレーションの発生要因であるデンドライトの発生を抑制できるため、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0071】
なお、凹部10yの内壁面の金属膜21側が拡幅するか否かは、エッチング条件を変えることにより任意に選択できるため、配線基板1と同様に拡幅させてもよい。
【0072】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、絶縁層の凹部の粗化面に突起部を形成する例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0073】
図8は、第2の実施の形態に係る配線基板を例示する断面図であり、
図8(a)は配線層と絶縁層が交互に複数積層された配線基板の一部を示した図、
図8(b)は
図8(a)のA部の部分拡大図である。
【0074】
図8を参照するに、配線基板2では、配線基板1と同様に凹部10yの底面及び内壁面は粗化面であり凸部10xの上端面10a−1よりも面粗度が高いが、更に粗化面に突起部15が形成されている。突起部15は、酸化珪素(SiO、SiO
2、SiO
X等)を主成分として形成されている。
【0075】
配線基板2を形成するには、
図9(a)に示すように、絶縁層10として、珪素(Si)、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の各元素を含む有機化合物からなる絶縁性樹脂を準備する。珪素(Si)、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の各元素は、お互いに結合し高分子構造を有している。そして、準備した絶縁層10を用いて第1の実施の形態の
図2(a)の工程から
図3(b)の工程を実施する。
【0076】
次に、
図3(c)に示す工程では、等方性エッチングとして、酸素ガスを含むガスによりプラズマ処理を行う。プラズマ処理は、酸素ガスのみにより行ってもよいし、酸素ガスに他のガス(窒素ガス等)が含まれた混合ガスを用いて行ってもよい。
【0077】
絶縁層10の表面(凹部10yの底面及び内壁面)に酸素ガスを含むガスによりプラズマ処理を施す。これにより、
図9(b)に示すように、絶縁層10の表面(凹部10yの底面及び内壁面)が粗化面となると共に、絶縁層10の表面(凹部10yの底面及び内壁面)は、酸化珪素(SiO、SiO
2、SiO
X等)のリッチな分子構造に改質する。従って、粗化面に酸化珪素(SiO、SiO
2、SiO
X等)を主成分とする突起部15が形成される。なお、
図9において、便宜上、凹部10yの形状の図示は省略している。
【0078】
このように、絶縁層10の凹部10yの底面及び内壁面をプラズマ処理することで、凹部10yの底面及び内壁面を粗化面とすると同時に、凹部10yの底面及び内壁面の粗化面に酸化珪素(SiO、SiO
2、SiO
X等)を主成分とする突起部15を形成する改質をすることができる。これにより、絶縁層10と絶縁層30との密着性が向上するため、絶縁層10と絶縁層30との界面における金属層25の析出が抑制され、絶縁信頼性が向上する。なお、絶縁信頼性の向上については、後述の実施例4でも説明する。
【0079】
[実施例1]
図1に示す配線基板1のサンプルを5個作製し、隣接する配線層20間に3.5Vの電圧を印加してHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験を実施した。HAST試験は、IEC68−2−66で規格化された環境試験の一つである。なお、金属層25として銅を用い、配線層20のライン/スペースは2μm/2μmとした。
【0080】
96時間の試験後、何れのサンプルも隣接する配線層20間に銅の析出は確認されなかった。又、試験時間に対する抵抗値は、
図10に示すように何れも1×10
6Ω以上となり、絶縁信頼性の低下(抵抗値の低下)は見られなかった。なお、抵抗値が1×10
6未満になると、絶縁信頼性が問題となる。
【0081】
[実施例2]
図5に示す配線基板1Aのサンプルを5個作製し、隣接する配線層20間に3.5Vの電圧を印加してHAST試験を実施した。なお、金属層25として銅を用い、配線層20のライン/スペースは2μm/2μmとした。
【0082】
96時間の試験後、何れのサンプルも隣接する配線層20間に銅の析出は確認されなかった。又、試験時間に対する抵抗値は、
図11に示すように何れも1×10
6Ω以上となり、絶縁信頼性の低下(抵抗値の低下)は見られなかった。
【0083】
[実施例3]
図7に示す配線基板1Bのサンプルを5個作製し、隣接する配線層20間に3.5Vの電圧を印加してHAST試験を実施した。なお、金属層25として銅を用い、配線層20のライン/スペースは2μm/2μmとした。
【0084】
96時間の試験後、何れのサンプルも隣接する配線層20間に銅の析出は確認されなかった。試験時間に対する抵抗値は、
図12に示すように何れも1×10
6Ω以上となり、絶縁信頼性の低下(抵抗値の低下)は見られなかった。
【0085】
[比較例]
図5に示す配線基板1Aにおいて、凹部10yの底面のみを粗化し、内壁面を粗化しないサンプルを5個作製し、隣接する配線層20間に電圧を印加してHAST試験を実施した。なお、金属層25として銅を用い、配線層20のライン/スペースは2μm/2μmとした。
【0086】
96時間の試験後、5個中3個のサンプルで隣接する配線層20間に銅の析出が確認された。試験時間に対する抵抗値は、
図13に示すように5個中3個のサンプルで1×10
6Ω未満となり、絶縁信頼性の低下(抵抗値の低下)が見られた。
【0087】
[実施例1〜3、比較例のまとめ]
比較例の結果から、凹部10yの底面のみを粗化するだけでは絶縁信頼性が十部に向上しないことがわかった。これは、凹部10yの平滑な内壁面と絶縁層30との密着性が不十分であるため、凹部10yの内壁面と絶縁層30との界面において金属層25の析出が生じ、配線層20間の抵抗値が低下したためと考えられる。
【0088】
これに対して、実施例1〜3の結果から、配線基板1、1A、及び1Bの何れの構造においても、凹部10yの底面及び内壁面を粗化することの効果が確認された。すなわち、凹部10yの底面及び内壁面を粗化することで、絶縁層10と絶縁層30との密着性が向上し、絶縁層10と絶縁層30との界面における金属層25の析出が抑制され、絶縁信頼性が向上することが確認された。
【0089】
[実施例4]
図8に示す配線基板2のサンプルを5個作製し、隣接する配線層20間に3.5Vの電圧を印加してHAST試験を実施した。なお、金属層25として銅を用い、配線層20のライン/スペースは2μm/2μmとした。
【0090】
192時間の試験後、何れのサンプルも隣接する配線層20間に銅の析出は確認されなかった。又、試験時間に対する抵抗値は、
図14に示すように何れも1×10
6Ω以上となり、絶縁信頼性の低下(抵抗値の低下)は見られなかった。
【0091】
又、実施例4のサンプルと比較例のサンプルについて、絶縁層10の表面(凹部10yの底面及び内壁面)の状態をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析した。XPS分析は、サンプルの表面にX線を照射し、サンプルの表面から放出される光電子の運動エネルギーを計測することにより、サンプルの表面を構成する元素の組成や結合状態を分析する手法である。なお、実施例4のサンプルにおいてプラズマ処理の時間は約180秒とした。
【0092】
XPS分析の結果、
図15(a)に示すように、比較例のサンプルに対して実施例4のサンプルは、絶縁層10の表面におけるシリコン(Si)の検出量が約10atm%(0.4→11.5)増加し、又、酸素(O)の検出量が約20atm%(21.8→39.6)増加していることがわかった。又、炭素(C)の検出量が約30atm%(75.3→47.6)減少していることがわかった。
【0093】
又、
図15(b)に示すように、Si2pスペクトルを確認したところ、実施例4のサンプルではピークトップが103.7eVであり、絶縁層10の表面にSiO
2の結合状態が存在することが確認された。
【0094】
このように、実施例4のサンプルでは、絶縁層10の凹部10yの底面及び内壁面をプラズマ処理することにより、凹部10yの底面及び内壁面の粗化面に酸化珪素(SiO、SiO
2、SiO
X等)を主成分とする突起部15を形成する改質が行われていることが確認できた。
【0095】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0096】
例えば、各実施の形態や変形例は、適宜組み合わせることができる。