(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リブ部は、前記チューブ固定部の両端部を近接させ、両フック部を前記幅方向に並べて配置させたときに、それぞれ両フック部の前記幅方向に対向する側面に連続して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の医療用チューブの固定クリップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の固定クリップを医療用チューブに取り付ける際には、固定クリップの挿通孔に医療用チューブの一端部を通して、医療用チューブの所定位置まで固定クリップを移動させて取り付ける必要があるため、挿通孔と医療用チューブとの係合状態を強固に設定できない。また、特許文献1の固定クリップは、挟着部材の上ホルダと下ホルダとの間に被挟着物を挟着する構成とされていることから、患者の衣服やシーツ等の厚みが比較的薄い被挟着物であれば安定して固定することができるが、医療機器等に備え付けられた支柱等に取り付けようとした場合には安定して固定することが難しい。このように、特許文献1の固定クリップの形状では、固定箇所が制限される。
【0007】
一方、特許文献2の固定クリップ(園芸用クリップ)のようなフック部分を有する形状を採用した場合には、支柱への固定は行えるが、厚みの薄い被挟着物への固定は不安定になる。また、特許文献2の固定クリップは、両フック部分の間からばね部分の内側に医療用チューブを入れることができるので、医療用チューブの長さ方向の途中位置であっても比較的容易に固定クリップを固定できる。しかし、特許文献2の固定クリップの構造では、支柱等の被挟着物に固定クリップを挟着しなければ、すなわち、両フック部分の間に被挟着物を配置した状態にしなければ、固定クリップを医療用チューブに固定しておくことができない。このため、医療用チューブに予め固定クリップを取り付けておくことができず、作業者は、医療用チューブを固定する際に、医療用チューブと固定クリップとの固定と、固定クリップと被挟着物との固定との、一連の作業をまとめて行う必要があり、作業が煩雑化する。
【0008】
このように、特許文献1又は特許文献2に記載の固定クリップは、それぞれ固定箇所が限定されており、また特許文献2の固定クリップにおいては、その取り扱いも容易ではなく、作業を煩雑化させるおそれがある。このため、作業者は、医療用チューブを被挟着物に固定するために、固定クリップの他にも、従来から使用している輪ゴムやビニールテープ等を使用する必要があり、依然として作業者に与える負担が大きいものとなっている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、医療用チューブを安定して固定でき、作業者の取り扱いを向上させて容易に着脱を行うことができる医療用チューブの固定クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の医療用チューブの固定クリップは、弾性材により形成され帯状部材が円弧状に湾曲形成されたチューブ固定部と、前記チューブ固定部の両端から延在する一対の保持アーム部とを備え、両保持アーム部は、基端側に形成されたフック部と、先端側に形成された挟持部とを有し、両フック部は、前記チューブ固定部とは逆向きに反って円弧状に湾曲した形状とされるとともに、各フック部は互いに離れて前記チューブ固定部の幅方向にずれて形成されており、両挟持部は、前記フック部よりも幅広の形状に形成されるとともに、前記チューブ固定部の両端部を近接させたときに、各挟持部の少なくとも一部が前記チューブ固定部の幅方向に重なり合う形状に形成されており、前記チューブ固定部の両端部を近接させ、両保持アーム部の基端部を交差させるとともに、両挟持部を相互に乗り越えさせた状態のときに、前記チューブ固定部の弾性復元力により前記チューブ固定部の両端部が互いに離間する方向に付勢され、両挟持部が互いに当接させられることにより、前記チューブ固定部が環状に形成されるとともに、両フック部の内側円弧面が互いに内向きに配置され、両フック部が前記幅方向に並んで配置されることにより、両フック部が環状に組み合わされた円環部が形成され、両保持アーム部の基端部を交差させずに、前記チューブ固定部の両端部を離間させた状態のときに、両フック部の前記内側円弧面が互いに外向きに配置され
ており、前記フック部と前記チューブ固定部との接続部に、前記フック部の円弧形状を該円弧の長さ方向に延長して該フック部に連続した補助フック部が形成されている。
【0011】
この固定クリップは、両保持アーム部の間を開いた状態では、チューブ固定部の両端部間も大きく開いているので、チューブ固定部の内側空間に医療用チューブを容易に挿通させることができる。そして、チューブ固定部の内側空間に医療用チューブを挿通させた状態で、チューブ固定部の両端部を近接させ、両保持アーム部を交差させ、両挟持部を相互に乗り越えさせることで、チューブ固定部の弾性復元力により両挟持部が互いに当接させられて、チューブ固定部が環状に形成される。これにより、チューブ固定部の両端部を近接させた状態に維持でき、縮径されたチューブ固定部の内側空間に医療用チューブを係合させて、固定クリップを医療用チューブの任意の位置に固定できる。
また、このようにして、チューブ固定部を環状に形成し、固定クリップを医療用チューブに固定した状態においては、チューブ固定部の弾性復元力によりチューブ固定部の両端部が互いに離間する方向に付勢された状態となり、両挟持部が当接し、互いに押圧された状態となる。そして、この状態で、チューブ固定部の両端部を内側に押圧して近接させると、両挟持部を離間させることができ、チューブ固定部の両端部の押圧を解除すると、チューブ固定部の両端部間が弾性復元力により広がり、両挟持部を当接させることができる。このように、本発明の固定クリップにおいては、チューブ固定部の両端部の移動に伴って、両挟持部の間を開閉することとされており、両挟持部の開閉により、両挟持部の間に被挟着物を挟んだり、両挟持部の間から被挟着物を取り外したりと、被挟着物と固定クリップとの着脱を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、固定クリップにはフック部が設けられており、両挟持部を当接させた状態では、、両フック部の内側円弧面が互いに内向きに配置され、両フック部が幅方向に並んで配置されることにより、両フック部が環状に組み合わされた円環部が形成される。これにより、両フック部の内側円弧面に囲まれた内側空間が幅方向に連通させられた状態が維持されるので、両フック部の内側空間に支柱等の被挟着物を容易に挿通させることができる。また、両フック部は、両挟持部と同様に、チューブ固定部の弾性復元力により互いに離間する方向に付勢されているので、両フック部の内側空間に被挟着物を挿通させた際には、両フック部により被挟着物を挟持して固定クリップを固定でき、医療用チューブを安定して固定できる。
【0013】
このように、本発明の固定クリップは、両保持アーム部の両挟持部の間と、両フック部の間と、の双方において被挟着物を挟持することができるので、患者の衣服やシーツ等の厚みが比較的薄い被挟着物だけでなく、医療機器等に備え付けられた支柱等の被挟着物にも安定して固定できる。このため、固定クリップの固定箇所が限定されず、作業者は固定箇所毎に種類の異なる固定クリップを使い分ける必要がない。また、被挟着物と固定クリップとの固定前に、予め固定クリップを医療用チューブの任意の位置に固定しておくことができるので、固定クリップと医療用チューブとを一体にして取り扱うことができ、作業者は容易に取り付け作業を行うことができる。
また、チューブ固定部の両端部を近接させ、両挟持部を当接させると、両フック部が幅方向に並んで配置され、環状に組み合わせられる。この際、各フック部に連続する補助フック部を設けておくことで、一方のフック部に他方の補助フック部を幅方向に並べて配置できるとともに、他方のフック部に一方の補助フック部を幅方向に並べて配置できるので、両フック部の内側内周面に囲まれた内側空間に支柱等の被挟着物を挿通した際の、被挟着物と両フック部との係止幅を広く形成できる。したがって、被挟着物に対して固定クリップを安定して固定でき、固定クリップが不用意に回転することを防止できる。
【0014】
本発明の医療用チューブの固定クリップにおいて、両保持アーム部の基端部を交差させずに、両挟持部を離間させた状態のときに、両フック部の間が離間して配置されるとともに、両フック部の内側円弧面が互いに外向きに配置され、前記チューブ固定部の内側空間が開放されているとよい。
【0015】
この場合、両保持アーム部の間から、チューブ固定部の内側空間に医療用チューブを入れることができるので、医療用チューブの長さ方向の途中位置にも、容易に固定クリップを取り付けることができる。
【0018】
本発明の医療用チューブの固定クリップにおいて、前記チューブ固定部の長さ方向の中央部に、その内周面から突出し、幅方向に延在する突起部が形成されているとよい。
【0019】
チューブ固定部の両端部を近接させたり離間させたりして弾性変形させ、両アーム保持部を開閉する際に生じる応力は、チューブ固定部の長さ方向の中央部に集中する。そこで、チューブ固定部の長さ方向の中央部に突起部を形成しておくことにより、中央部に作用する応力を、中央部から両端部側に向けて分散させることができる。これにより、チューブ固定部の破損を防止でき、固定クリップを繰り返し、安定して使用できる。
また、医療用チューブが蛇管で構成される場合には、チューブ固定部の内周面に設けた突起部の端面を蛇管表面の凹凸形状に引っ掛けて固定することができるので、医療用チューブの外周面とチューブ固定部の内周面との係合が緩い場合でも、突起部により医療用チューブと固定クリップとの固定位置がずれることを防止でき、医療用チューブを被挟着物の任意の位置に安定して固定できる。
【0020】
本発明の医療用チューブの固定クリップにおいて、前記フック部の外周面から突出し、長さ方向に延在するリブ部が形成されているとよい。
【0021】
フック部は、チューブ固定部や挟持部よりも幅が狭く形成されているので、チューブ固定部の両端部を近接させて両挟持部を当接させたときに、フック部の負担が大きく、変形や破損が生じるおそれがある。そこで、フック部にリブ部を設けて、フック部の強度を増加させることにより、フック部の変形や破損を防止できる。また、フック部の変形を防止することにより、固定クリップ全体の変形(ゆがみ)も防止でき、医療用チューブを安定して固定できる。
【0022】
本発明の医療用チューブの固定クリップにおいて、前記リブ部は、前記チューブ固定部の両端部を近接させ、両フック部を前記幅方向に並べて配置させたときに、それぞれ両フック部の前記幅方向に対向する側面に連続して形成されているとよい。
【0023】
それぞれのリブ部を、両フック部の幅方向に対向する側面に連続して形成することで、リブ部の厚み(高さ)分だけ両フック部の対向面の面積を広げることができる。これにより、チューブ固定部の両端部を近接させて両保持アーム部を交差させる際に、両保持アーム部が捩じれる方向に力が加わった場合にも、両フック部が互いの対向面やリブ部に接触することで、両フック部を超えて捩じれることが防止され、両保持アーム部の移動を円滑に案内できる。また、両挟持部を当接させ、両フック部により環状の円環部を形成した状態においても、両挟持部の間や両フック部の間を開閉する際に、両フック部が互いの対向面やリブ部に接触することで、捩じれることが防止され、両保持アーム部の移動を円滑に案内できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、固定クリップの固定箇所が限定されず、一つの固定クリップを汎用的に使用でき、また、医療用チューブと被挟着物との着脱を繰り返し容易に行うことができ、医療用チューブを被挟着物に安定して固定できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の医療用チューブの固定クリップの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1〜
図5に示した本実施形態の医療用チューブの固定クリップ101は、例えば、
図10に示すような加温加湿器201に備え付けられる。そして、固定クリップ101は、加温加湿器201と患者に装着される鼻マスク等の患者インターフェースとの間を接続して、呼吸用気体を患者に供給するための医療用チューブ50を、患者の衣服やシーツ等の比較的薄い被挟着物や、支柱等の被挟着物に固定するために用いられる。
【0027】
固定クリップ101は、弾性材により形成され帯状部材が円弧状に湾曲形成されたチューブ固定部10と、チューブ固定部10の両端から延在する一対の保持アーム部20A,20Bとを備え、
図1及び
図2に示すように、両保持アーム部20A,20Bの基端部を交差させずに両保持アーム部20A,20Bの間を離間させた状態と、
図3及び
図4に示すように、両保持アーム部20A,20Bの基端部を交差させて両保持アーム部20A,20Bの先端部(両挟持部40A,40B)を当接させた状態と、に繰り返し変形可能に設けられている。
【0028】
チューブ固定部10は、前述したように、弾性材により形成されており、弾性変形可能に設けられている。なお、本実施形態では、チューブ固定部10と両保持アーム部20A,20Bとが、ポリアセタールやポリプロピレン等の合成樹脂により一体に形成されている。
そして、
図2及び
図4に示されるように、チューブ固定部10の内周面10iにより形成される内側空間15に、医療用チューブ50が挿入可能に設けられている。このチューブ固定部10の内周面10iには、その長さ方向の中央部11に、内周面10iから突出し、幅方向に延在する突起部13が形成されており、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを外側から内側に押圧した際に、チューブ固定部10の中央部11に作用する応力を、中央部11から両端部12A,12B側に向けて分散できるようになっている。
【0029】
また、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの外周面10oには、幅方向に延在する複数の凸条部14が間隔をあけて形成されることにより凹凸表面が形成されている。そして、この凹凸表面が形成された両端部12A,12Bを
図2に白抜き矢印Fで示すように、内側に向けて押圧することにより、チューブ固定部10を容易に弾性変形させて、
図2に二点鎖線で示すように、両端部12A,12Bを移動して接近させることができるようになっている。一方、両端部12A,12Bの押圧を解除すると、チューブ固定部10の弾性復元力が働くことで、両端部12A,12Bが互いに離間する方向に移動し、両端部12A,12Bの間は押圧時よりも広がって配置され、両端部12A,12Bが元の位置まで復帰するようになっている。
【0030】
チューブ固定部10の両端から延在する両保持アーム部20A,20Bは、基端側に形成されたフック部30A,30Bと、先端側に形成された挟持部40A,40Bとを有している。
このうち、基端側の両フック部30A,30Bは、
図1及び
図2に示されるように、チューブ固定部10の両端に連続して形成され、チューブ固定部10とは逆向きに反って円弧状に湾曲し、内側円弧面が互いに外向きに配置された形状とされている。また、各フック部30A,30Bは互いに離れてチューブ固定部10の幅方向にずれて、言い換えれば幅方向に離れて形成されており、
図2に二点鎖線で示すように、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを近接させて両保持アーム部20A,20Bの基端部を交差させたときに容易にすれ違いが可能な形状とされ、両フック部30A,30Bを大きく干渉させることなく交差できるようになっている。また、両フック部30A,30Bは、
図3及び
図4に示されるように、両挟持部40A,40Bを当接させ、チューブ固定部10を環状に形成した状態において、両フック部30A,30Bの内側円弧面が互いに内向きに配置され、両フック部30A,30Bが幅方向に並んで配置されることにより、両フック部30A,30Bの内側円弧面(内周面)に囲まれた内側空間35A,35Bを幅方向に連通させ、これら両フック部30A,30Bが環状に組み合わされた円環部36が形成されるようになっている。
【0031】
また、各フック部30A,30Bには、両フック部30A,30Bの外周面から突出し、長さ方向に延在するリブ部31A,31Bが形成されており、各フック部30A,30Bは、リブ部31A,31Bにより補強され、変形し難くなっている。本実施形態の固定クリップ101では、両フック部30A,30Bのリブ部31A,31Bは、
図3及び
図4に示すように、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを近接させ、両フック部30A,30B幅方向に並べて配置させたときに、それぞれ両フック部30A,30Bの幅方向に対向する側面に連続して形成されている。具体的には、
図3及び
図4において前側に配置されたフック部30Aには、後側の側面の面積を広げるようにしてリブ部31Aが形成され、後側に配置されたフック部30Bには、前側の側面の面積を広げるようにしてリブ部31Bが形成されている。
【0032】
そして、このように形成された両フック部30A,30Bとチューブ固定部10の両端部12A,12Bとの接続部には、フック部30A,30Bの円弧形状を該円弧の長さ方向に延長するようにして、すなわち、フック部30A,30Bの内側円弧面を基端側に延長するようにして、フック部30A,30Bに連続した補助フック部32A,32Bが形成されている。言い換えると、補助フック部32A,32Bも円弧状に湾曲しており、フック部30A.30Bの内側円弧面と、補助フック部32A,32Bの内側円弧面とは、連続しており、一連の円弧を形成している。
【0033】
一方、両保持アーム部20A,20Bの先端側に形成された両挟持部40A,40Bは、フック部30A,30Bよりも幅広の形状に形成されるとともに、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを近接させたときに、各挟持部40A,40Bの少なくとも一部がチューブ固定部10の幅方向に重なり合う形状に形成されている。つまり、
図2に二点鎖線で示すように、両挟持部40A,40Bは、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを近接させ、両保持アーム部20A,20Bを近接させる方向に移動した際に、互いが干渉する大きさに設けられている。具体的には、
図1に示すように、前側のフック部30Aに接続された挟持部40Aは、その前側のフック部30Aよりも幅方向の後側に突出した形状に設けられ、後側のフック部30Bに接続された挟持部40Bは、その後側のフック部30Bよりも幅方向の前側に突出した形状に設けられている。そして、両挟持部40A,40Bは、
図3及び
図4に示すように、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを近接させ、両保持アーム部20A,20Bの基端部を交差させることで、相互に乗り換えた位置に移動可能に設けられており、両挟持部40A,40Bが相互に乗り越えた位置に配置された状態では、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bが互いに対向して配置されるようになっている。
【0034】
また、
図1に示すように、前側の挟持部40A(挟持面41A)の背面には、後方に向かうにしたがい後側の挟持部40Bから離れる方向に傾斜するガイド面42Aが形成され、このガイド面42Aと対称に、後側の挟持部40B(挟持面41B)の背面にも、前方に向かうにしたがい前側の挟持部40Aから離れる方向に傾斜するガイド面42Bが形成されている。これにより、両保持アーム部20A,20Bの先端側を近接させて、両挟持部40A,40Bの背面どうしを接触させた際に、両挟持部40A,40Bが互いのガイド面42A,42Bに沿って案内され、互いを乗り越えて移動するようになっている。そして、
図3及び
図4に示すように、両挟持部40A,40Bが互いを乗り越えた位置では、すなわち、両挟持部40A,40Bを相互に乗り越えさせた状態のときには、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの間が狭められることで、チューブ固定部10の弾性復元力によりチューブ固定部10の両端部12A,12Bが互いに離間する方向に付勢され、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bが互いに当接させられるようになっている。また、このように両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bを互いに当接させた状態では、チューブ固定部10が環状に形成される。
【0035】
また、
図4に示すように、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bを互いに当接させた状態で、
図5に白抜き矢印Fで示すように、チューブ固定部10の両端部12A,12Bをさらに内側に押圧して接近させると、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bを対向させた状態で離間させることができる。そして、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの押圧を解除すると、チューブ固定部10の両端部12A,12B間が弾性復元力により広がり、両挟持部40A,40Bは、その挟持面41A,41Bが当接するまで移動する。このように、固定クリップ101は、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの移動に伴って、両挟持部40A,40Bの間を開閉することができるようになっている。
【0036】
なお、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bには、それぞれ複数の爪部43が形成されており、被挟着物に爪部43をくい込ませることで、被挟着物が滑るのを防止でき、被挟着物を両挟持部40A,40Bの間で強固に挟持できるようになっている。
【0037】
次に、このように構成された固定クリップ101を用いて医療用チューブ50を被挟着物に固定する方法について説明する。
まず、
図1及び
図2に示すように、固定クリップ101の両保持アーム部20A,20Bの間を開いた状態にする。このように、両保持アーム部20A,20Bの基端部を交差させずに、両挟持部40A,40Bを離間させた状態とし、両保持アーム部20A,20Bの間を開いた状態では、両フック部30A,30Bの間が離間して配置されるとともに、両フック部30A,30Bの内側円弧面が互いに外向きに配置され、チューブ固定部10の内側空間15が開放された状態となる。このとき、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの間も大きく開いているので、
図2に示すように、チューブ固定部10の内側空間15に医療用チューブ50を容易に挿通させることができる。
【0038】
なお、固定クリップ101と医療用チューブ50とは、固定クリップ101の内側空間15に医療用チューブ50の一端部を通して、医療用チューブ50の所定位置まで固定クリップ101を移動させることにより、医療用チューブ50の長さ方向の途中位置に配置することもできるし、
図6に示すように、両保持アーム部20A,20Bの間から、チューブ固定部10の内側空間15に医療用チューブ50を挿通させることもできる。この場合、両保持アーム部20A,20Bの間を押し広げることで、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの間をさらに大きく開くことができるので、医療用チューブ50を内側空間15に容易に挿入できる。
【0039】
そして、チューブ固定部10の内側空間15に医療用チューブ50を挿通させた状態で、医療用チューブ50の長さ方向の任意の位置において、両保持アーム部20A,20Bを交差させ、
図3及び
図4に示すように、両挟持部40A,40Bを相互に乗り越えさせることで、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bを互いに当接させる。この際、両保持アーム部20A,20Bの両フック部30A,30Bには、幅方向に対向する側面に連続してリブ部31A,31Bが形成されているので、両保持アーム部20A,20Bが捩じれる方向に力が加わった場合にも、両フック部30A,30Bが互いの対向面やリブ部31A,31Bに接触することで、両フック部30A,30Bを超えて捩じれることが防止され、両保持アーム部20A,20Bの移動を円滑に案内できる。
【0040】
そして、両挟持部40A,40Bを相互に乗り越えさせた位置では、チューブ固定部10の弾性復元力によりチューブ固定部10の両端部12A,12Bが互いに離間する方向に付勢されて両挟持部40A,40Bが互いに押し付けられ、両挟持面41A,41Bが当接させられる。これにより、両挟持部40A,40Bが閉じられた状態が維持され、チューブ固定部10が円環状に形成される。また、チューブ固定部10の内側空間15が縮径された状態となるので、チューブ固定部10の内側空間15に医療用チューブ50の外周面を係合でき、
図7に示すように、固定クリップ101を医療用チューブ50の任意の位置に固定できる。
【0041】
また、チューブ固定部10には、長さ方向の中央部に突起部13が設けられているので、
図6及び
図7に示すように、医療用チューブ50が蛇管で構成される場合には、突起部13の端面を蛇管表面の凹凸形状に引っ掛けて固定することができる。この場合、医療用チューブ50の外周面とチューブ固定部10の内周面10iとの係合が緩い場合でも、突起部13により医療用チューブ50と固定クリップ101との固定位置がずれることを防止でき、医療用チューブ50を被挟着物の任意の位置に安定して固定できる。
【0042】
次に、
図7に示すように、固定クリップ101を医療用チューブ50に固定した状態において、
図5に白抜き矢印Fで示すように、チューブ固定部10の両端部12A,12Bをさらに内側に押圧して近接させることにより、両保持アーム部20A,20Bの両挟持部40A,40Bを離間させて開いた状態にする。この際、両保持アーム部20A,20Bの両フック部30A,30Bには、幅方向に対向する側面に連続してリブ部31A,31Bが形成されているので、両フック部30A,30Bが互いの対向面やリブ部31A,31Bに接触して捩じれることが防止され、両挟持部40A,40Bの挟持面41A,41Bを対向させた状態を維持して離間させることができる。そして、この両挟持面41A,41Bの間に、患者の衣服やシーツ等の被挟着物を配置する。
【0043】
両挟持部40A,40Bの間に被挟着物を配置した後で、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの押圧を解除すると、チューブ固定部10の両端部12A,12B間が弾性復元力により離間し(広がり)、両挟持部40A,40Bが近接する方向に移動するので、
図8に示すように、両挟持部40A,40Bの間に被挟着物301を挟むことができる。なお、この際にも、両フック部30A,30Bが互いの対向面やリブ部31A,31Bに接触することで両保持アーム部20A,20Bの移動が円滑に案内される。
このように、固定クリップ101は、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの移動に伴って両挟持部40A,40Bの間を開閉することができ、両挟持部40A,40Bの開閉により、被挟着物301と固定クリップ101との着脱を容易に行うことができる。
【0044】
また前述したように、固定クリップ101は、
図8に示されるような比較的薄い被挟着物301だけでなく、
図9に示すように、医療機器等に備え付けられた支柱等の被挟着物302にも容易に固定できる。
図7に示すように、固定クリップ101を医療用チューブ50に固定した状態においては、両フック部30A,30Bの内側円弧面が互いに内向きに配置され、両フック部30A,30Bが幅方向に並んで配置されることにより、両フック部30A,30Bが環状に組み合わされた円環部36が形成され、両フック部30A,30Bの内側空間35A,35Bが幅方向に挿通させられた状態が維持されている。そして、この円環部36(内側空間35A,35B)に、例えば
図10に示す加温加湿器201の支柱のように、医療機器等に備え付けられた支柱等の被挟着物302を挿通させることで、両フック部30A,30Bの内側空間35A,35Bに容易に被挟着物302を挿通させることができる。この際、両フック部30A,30Bは、両挟持部40A,40Bと同様に、チューブ固定部10の弾性復元力により互いに離間する方向に付勢されているので、両フック部30A,30Bにより被挟着物302を挟持して固定クリップ101を固定でき、医療用チューブ50を安定して固定できる。
【0045】
また、固定クリップ101には、フック部30A,30Bに連続した補助フック部32A,32Bが形成されているので、両フック部30A,30Bの内側空間35A,35Bを幅方向に並べて連通させた状態において、一方のフック部30Aに他方の補助フック部32Bを幅方向に並べて配置できるとともに、他方のフック部30Bに一方の補助フック部32Aを幅方向に並べて配置でき、両フック部30A,30Bの内側空間35A,35Bに被挟着物302を挿通した際の係止幅を広く形成できる。したがって、被挟着物302に対して固定クリップ101を安定して固定でき、固定クリップ101が不用意に回転することを防止できる。
【0046】
このように、本実施形態の固定クリップ101は、両保持アーム部20A,20Bの両挟持部40A,40Bの間と、両フック部30A,30Bの間と、の双方において被挟着物を挟持することができるので、
図8に示すように患者の衣服やシーツ等の厚みが比較的薄い被挟着物301だけでなく、
図9に示すように医療機器等に備え付けられた支柱等の被挟着物302にも安定して固定できる。このため、固定クリップ101の固定箇所が限定されず、作業者は固定箇所毎に種類の異なる固定クリップを使い分ける必要がない。また、
図7に示すように、被挟着物と固定クリップ101との固定前に、予め固定クリップ101を医療用チューブ50の任意の位置に固定しておくことができるので、固定クリップ101と医療用チューブ50とを一体にして取り扱うことができ、作業者は容易に被挟着物への取り付け作業を行うことができる。
【0047】
また、固定クリップ101には、チューブ固定部10の長さ方向の中央部に突起部13が形成されているので、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを押圧した際に、チューブ固定部10の中央部に作用する応力を、中央部から両端部12A,12B側に向けて分散させることができる。これにより、チューブ固定部10の破損を防止でき、固定クリップ101を繰り返し、安定して使用できる。
【0048】
なお、衛生面の観点から、医療用チューブ50は定期的に洗浄や交換をする必要があるが、固定クリップ101は医療用チューブ50の外周面を把持するものであり、呼吸用気体が接触することがない。そして、本実施形態の固定クリップ101は、接着等の繰り返し使用ができない手段とは異なり、チューブ固定部10の弾性復元力を利用して医療用チューブ50に着脱可能に設けられている。このため、医療用チューブ50と固定クリップ101との着脱を容易に行うことができ、医療用チューブ50を交換することにより、同じ固定クリップ101を繰り返し使用できる。なお、固定クリップ101は、ポリアセタールやポリプロピレン等の合成樹脂により一体に形成されているため安価に製造可能であり、医療用チューブとともに使い捨てとすることもできる。
【0049】
なお、本実施形態の固定クリップ101においては、チューブ固定部10の両端部12A,12Bの外周面10oに、凸条部14により凹凸表面を形成したので、押圧時にチューブ固定部10の両端部12A,12Bを把持する指との間の摩擦抵抗を増大させることができる。これにより、指を滑らせることなく、チューブ固定部10の両端部12A,12Bを互いに近接する方向に容易に押圧することが可能となり、両挟持部40A,40Bの間の開閉を容易に行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。