【実施例】
【0017】
実施例1(Pd含有窒化コバルト電極触媒の製造および活性測定)
Pd含有窒化コバルト電極触媒層は、電極を形成するために、反応性マグネトロンスパッタリング法によって、ガラス状炭素担体(5mmOD×4mmH、Pine research instrumentationより市販されている)上に堆積された。ここで、反応性マグネトロンスパッタリングを行うために、Pdターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)およびCoターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)が、N
2/(Ar+N
2)(1/2、50%)下で、同時にスパッタリングされる。Coターゲットのスパッタ電力は、種々のCo/Pd原子比を得るために変化された。ArおよびN
2の総流量は、20sccmであり、スパッタ圧は、20mTorrで制御され、スパッタ温度は、室温で制御され、および、スパッタリングには5〜6分要する。Pd含有窒化コバルト電極触媒層は、約100nmの厚さを有する。Pd含有窒化コバルト電極触媒層のCo/Pd原子比は、0.005〜0.682であり、これはエネルギー分散型X線分析(EDS)により分析された。
【0018】
次いで、種々のCo/Pd原子比を有するPd含有窒化コバルト電極触媒層の電気化学的活性が下記のようにテストされた。0.1M KOH溶液中、可逆水素電極が参照電極として用いられた。電極は、0.079V〜0.979Vの電圧範囲で50mV/sのスキャン速度で10回スキャンされた。次いで、酸素還元反応(ORR)のCVおよびLSVが測定された。CV測定において、電極は、0.079V〜0.979Vの電圧範囲で10mV/sのスキャン速度で5回スキャンされた。LSVの測定において、電極は、1600rpmの速度で回転され、0.79V〜1.179Vの電圧範囲で10mV/sのスキャン速度で3回スキャンされた。種々のCo/Pd原子比を有するPd含有窒化コバルト電極触媒層の酸素還元反応の開始電位(例えば、Ewe(V)対RHE)、および0.8Vの動作電圧における活性(mA/mg)が表1に集計されている。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例2(Pd含有窒化鉄電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例2での違いは、CoターゲットがFeターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Feターゲットのスパッタ電力は、種々のFe/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化鉄電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。Pd含有窒化鉄電極触媒層のFe/Pd原子比は、0.008〜0.377であり、これはEDSにより分析された。
【0021】
次いで、種々のFe/Pd原子比を有するPd含有窒化鉄電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表2に集計された。
【0022】
【表2】
【0023】
実施例3(Pd含有窒化イットリウム電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例3での違いは、CoターゲットがYターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Yターゲットのスパッタ電力は、種々のY/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化イットリウム電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。Pd含有窒化イットリウム電極触媒層のY/Pd原子比は、0.010〜0.188であり、これはEDSにより分析された。
【0024】
次いで、種々のY/Pd原子比を有するPd含有窒化イットリウム電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表3に集計された。
【0025】
【表3】
【0026】
実施例4(Pd含有窒化ルテチウム電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例4での違いは、CoターゲットがLuターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Luターゲットのスパッタ電力は、種々のLu/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化ルテチウム電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。PdLuN電極触媒層のLu/Pd原子比は、0.010〜0.390であり、これはEDSにより分析された。
【0027】
次いで、種々のLu/Pd原子比を有するPd含有窒化ルテチウム電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表4に集計された。
【0028】
【表4】
【0029】
実施例5(Pd含有窒化スカンジウム電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例5での違いは、CoターゲットがScターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Scターゲットのスパッタ電力は、種々のSc/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化スカンジウム電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。PdScN電極触媒層のSc/Pd原子比は、0.030〜0.192であり、これはEDSにより分析された。
【0030】
次いで、種々のSc/Pd原子比を有するPd含有窒化スカンジウム電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表5に集計された。
【0031】
【表5】
【0032】
実施例6(Pd含有窒化チタン電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例6での違いは、CoターゲットがTiターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Tiターゲットのスパッタ電力は、種々のTi/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化チタン電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。Pd含有窒化チタン電極触媒層のTi/Pd原子比は、0.043〜0.408であり、これはEDSにより分析された。
【0033】
次いで、種々のTi/Pd原子比を有するPd含有窒化チタン電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表6に集計された。
【0034】
【表6】
【0035】
実施例7(Pd含有窒化バナジウム電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例7での違いは、CoターゲットがVターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Vターゲットのスパッタ電力は、種々のV/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化バナジウム電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。Pd含有窒化バナジウム電極触媒層のV/Pd原子比は、0.013〜0.290であり、これはEDSにより分析された。
【0036】
次いで、種々のV/Pd原子比を有するPd含有窒化バナジウム電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表7に集計された。
【0037】
【表7】
【0038】
実施例8(Pd含有窒化銅電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例8での違いは、CoターゲットがCuターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Cuターゲットのスパッタ電力は、種々のCu/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化銅電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。Pd含有窒化銅電極触媒層のCu/Pd原子比は、0.034〜0.777であり、これはEDSにより分析された。
【0039】
次いで、種々のCu/Pd原子比を有するPd含有窒化銅の電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表8に集計された。
【0040】
【表8】
【0041】
実施例9(Pd含有窒化ニッケル電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。実施例9での違いは、CoターゲットがNiターゲット(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)と取り替えられたことである。Niターゲットのスパッタ電力は、種々のNi/Pd原子比を得るために変化された。Pd含有窒化ニッケル電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。Pd含有窒化ニッケル電極触媒層のNi/Pd原子比は、0.005〜0.915であり、これはEDSにより分析された。
【0042】
次いで、種々のNi/Pd原子比を有するPd含有窒化ニッケル電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表9に集計された。
【0043】
【表9】
【0044】
比較例1(Pt/C電極触媒の製造および活性測定)
Pt/C(50wt%Ptおよび50wt%C、TEC10V50E、田中貴金属株式会社より市販されている)が、ガラス状炭素(5mmOD×4mmH)に滴下されてベークされ、これによってPt/Cである触媒層が形成された。次いで、実施例1と同様の方法でPt/Cである触媒層の電気化学的活性がテストされ、表10に集計された。結果として示されているように、Pt/Cである触媒層は、1.04Vである酸素還元反応の開始電位、および、0.8Vの動作電圧において15.2mA/mgの活性を有していた。
【0045】
比較例2(Pd電極触媒の製造および活性測定)
ガラス状炭素(5mmOD×4mmH)上にPdの触媒層を堆積させるために、Pd(Ultimate Materials Technology Co., Ltd.より市販されている)が用いられた。次いで、実施例1と同様の方法でPdである触媒層の電気化学的活性がテストされ、表10に集計された。結果として示されているように、Pdである触媒層は、0.94Vである酸素還元反応の開始電位、および、0.8Vの動作電圧において24.0mA/mgの活性を有していた。
【0046】
比較例3(PdN電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例1におけるものと同様であった。比較例2の例との違いは、反応性マグネトロンスパッタリングを行うために、Pdターゲットが、N
2/(Ar+N
2)(1/2、50%)下でスパッタリングされたことであった。PdN電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。次いで、PdN電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表10に集計された。結果として示されているように、PdN電極触媒層は、0.97Vである酸素還元反応の開始電位、および、0.8Vの動作電圧において27.4mA/mgの活性を有していた。
【0047】
比較例4(FeN電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例2におけるものと同様であった。比較例4の例での違いは、反応性マグネトロンスパッタリングを行うために、Feターゲットが、N
2/(Ar+N
2)(1/2、50%)下でスパッタリングされたことであった。FeN電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。次いで、FeN電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表10に集計された。
【0048】
比較例5(TiN電極触媒の製造および活性測定)
電極触媒の製造は、実施例6におけるものと同様であった。比較例5の例での違いは、反応性マグネトロンスパッタリングを行うために、Tiターゲットが、N
2/(Ar+N
2)(1/2、50%)下でスパッタリングされたことであった。TiN電極触媒層は、電極を形成するためにガラス状炭素担体上に堆積された。次いで、TiN電極触媒層の電気化学的活性が実施例1と同様の方法でテストされ、表10に集計された。
【0049】
【表10】
【0050】
表1〜表9は、アルカリ性条件での(種々の金属/Pd原子比を有する)Pd含有金属窒化物電極触媒が、金属とPdとのモル比がより低い場合に、Pd−N−Mの電子雲および電子配置の変化に起因して、より高い酸素還元反応の開始電位を有していることを示している。電子雲および電子配置のdバンドセンターの位置は、触媒および酸素の間の結合の強さを示している。dバンドセンターの位置が効果的にダウンシフトされ得れば、酸素と触媒表面との間の結合の強さは低下され、酸素還元反応(ORR)が効果的に改善され得る。換言すると、このために全触媒活性が向上される。Brewerの金属間結合理論(intermetallic bonding theory)にしたがえば、ハイポ−ハイパーd電子遷移金属(hypo−hyper d−electronic transition metal)の電子軌道の混成(electronic orbital hybrid)は、d電子軌道間の相乗効果をもたらし得、これは全活性を効果的に向上させ得る。従って、市販のPt/C触媒と同様の酸素還元反応の開始電位を有し、および、市販のPt/C触媒活性よりも高い触媒活性を有する(種々の金属/Pd原子比である)Pd含有金属窒化物電極触媒が、表11に示されているように、選択され得る。
【0051】
【表11】
【0052】
以上、実施例を示して本発明を説明しているが、当業者であれば、本発明の思想と技術的範囲から逸脱しない種々の修正および変更を行い得ることは明らかである。明細書の記載および実施例は、例示を意図しているものに過ぎず、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって規定される。