(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346954
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】オーゼティック構造を備えた履物
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20180611BHJP
A43B 5/06 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
A43B13/14 D
A43B5/06
A43B13/14 A
【請求項の数】64
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-544335(P2016-544335)
(86)(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公表番号】特表2016-530979(P2016-530979A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014052038
(87)【国際公開番号】WO2015041796
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】14/030,002
(32)【優先日】2013年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314006455
【氏名又は名称】ナイキ イノヴェイト シーヴィー
【氏名又は名称原語表記】NIKE INNOVATE C.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 温道
(72)【発明者】
【氏名】クロス,トーリー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ホッファー,ケヴィン,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,デイヴィッド,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】キルシュナー,パトリック,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ランジュバン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】メシュター,ジェイムズ,シー.
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−275805(JP,A)
【文献】
特開2012−095801(JP,A)
【文献】
特開2011−067370(JP,A)
【文献】
米国特許第03201894(US,A)
【文献】
実公昭57−032722(JP,Y2)
【文献】
実開昭51−098731(JP,U)
【文献】
国際公開第2007/052054(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/171911(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/059142(WO,A1)
【文献】
特開2005−046605(JP,A)
【文献】
特開2006−192136(JP,A)
【文献】
特開2001−275711(JP,A)
【文献】
特開2003−052403(JP,A)
【文献】
特開平07−000209(JP,A)
【文献】
特表2012−513489(JP,A)
【文献】
特開2012−029768(JP,A)
【文献】
特開2013−017604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00−23/30
A43C 1/00−19/00
A43D 1/00−999/00
B29D 35/00−35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーと、
ソール構造と、
を備える履物製品であって、前記ソール構造はアウトソールを備え、前記ソール構造は、前記アウトソールの外面に対して接線方向である第1の方向を有し、また、前記ソール構造は、前記第1の方向に直角な第2の方向を有し、前記第2の方向は、前記アウトソールの前記外面に対しても接線方向であり、
前記ソール構造はさらに、幾何学的パターンで配列された複数の開口部を含み、前記開口部は、前記アウトソールの厚みを貫通するスルーホールであり、
前記ソール構造に対して前記第1の方向に張力を印加すると、前記アウトソールが前記第1の方向および前記第2の方向に広がる、履物製品。
【請求項2】
前記アウトソール形状に合うミッドソール形状を有するミッドソールをさらに備える、請求項1に記載の履物製品。
【請求項3】
前記開口部は、前記ミッドソールの厚みを貫通している、請求項2に記載の履物製品。
【請求項4】
インナーソールをさらに備える、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項5】
前記幾何学的パターンは、前記開口部を取り囲んでいる前記アウトソールの多角形部分を備える、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項6】
前記多角形部分は、ヒンジとして機能して、前記多角形部分が互いに対して回転することを可能にする接合部によって互いに接合される、請求項5に記載の履物製品。
【請求項7】
前記多角形部分は三角形部分である、請求項5に記載の履物製品。
【請求項8】
前記複数の開口部は、前記ソール構造が張力を受けていないときには閉じられている、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項9】
前記複数の開口部は、前記ソール構造が張力を受けたときには開かれる、請求項8に記載の履物製品。
【請求項10】
前記開口部のうちの少なくとも一つは、前記ソール構造が張力を受けておらず、および垂直方向の圧縮を受けていないときには開かれ、および前記ソール構造が垂直方向の圧縮を受けたときには閉じられる、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項11】
前記アウトソールを覆っている外側被覆をさらに備える、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項12】
前記ソール構造は、トレッドパターンを有する、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項13】
前記幾何学的パターンは六角形パターンである、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項14】
前記ソール構造は、オーゼティック発泡材料から成る、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項15】
六角形パターンで構成されたオーゼティック構造を有するアウトソールを備える履物製品用のソール構造であって、
前記アウトソールは平面を画成し、
前記六角形パターンは、三角形部分を互いに対して回転させることを可能にするヒンジとして機能する接合部によって互いに接合された前記三角形部分によって囲まれた多角形開口部を備え、
前記アウトソールは、かかと領域および甲回り領域を有し、および前記六角形パターンは、前記甲回り領域よりも前記かかと領域において実質的により大きい六角形の形状構成を含み、
前記アウトソールが第1の方向に張力を受けると、前記アウトソールは、前記第1の方向と、前記第1の方向に直角で、前記ソール構造の前記平面内にある第2の方向との両方向に広がる、ソール構造。
【請求項16】
六角形パターンで構成されたオーゼティック構造を有するアウトソールを備える履物製品用のソール構造であって、
前記アウトソールは平面を画成し、
前記六角形パターンは、三角形部分を互いに対して回転させることを可能にするヒンジとして機能する接合部によって互いに接合された前記三角形部分によって囲まれた多角形開口部を備え、
前記アウトソールに取り付けられたアウトソールを覆う外側被覆をさらに備え、前記外側被覆は、前記アウトソールの前記六角形パターンと相補的であり、および前記六角形パターンと結合する六角形パターンを備える、
前記アウトソールが第1の方向に張力を受けると、前記アウトソールは、前記第1の方向と、前記第1の方向に直角で、前記ソール構造の前記平面内にある第2の方向との両方向に広がる、ソール構造。
【請求項17】
前記アウトソールの幾何学的構造に合う幾何学的構造を有するミッドソールをさらに備える、請求項15または請求項16に記載のソール構造。
【請求項18】
前記多角形開口部は、それぞれ、6つの三角形部分によって囲まれる、請求項15または請求項16に記載のソール構造。
【請求項19】
前記多角形開口部は、約100°〜170°の開口部を含む辺に凹角を有することによって特徴付けられる、請求項15または請求項16に記載のソール構造。
【請求項20】
前記アウトソールは、成形された高分子材料である、請求項15〜請求項19のいずれか一項に記載のソール構造。
【請求項21】
前記六角形パターンは、前記六角形パターンを生成するように前記高分子材料を成形することによって形成される、請求項20に記載のソール構造。
【請求項22】
前記多角形開口部はスルーホールを備える、請求項15〜請求項21のいずれか一項に記載のソール構造。
【請求項23】
前記多角形開口部は止まり穴を備える、請求項15〜請求項21のいずれか一項に記載のソール構造。
【請求項24】
前記多角形開口部は、前記アウトソールが張力を受けていないときは閉じられ、および前記多角形開口部のうちの少なくとも一つは、前記アウトソールが横方向または長手方向の張力を受けたときには開かれる、請求項15〜請求項23のいずれか一項に記載のソール構造。
【請求項25】
アッパーおよびソール構造を備える履物製品であって、前記ソール構造がアウトソールを備え、前記アウトソールが、
多角形開口部を囲む多角形部分を有することによって特徴付けられている履物製品であって、
前記多角形開口部は、前記アウトソールの厚みを貫通するスルーホールであり、
前記多角形部分は、前記ソール構造が張力を受けたときに、複数の多角形部分が互いに対して回転するように、隣接する多角形部分にヒンジ式で接合され、
前記アウトソールの一部が長手方向の張力を受けると、前記アウトソールは長手方向および横方向の両方向に広がり、また、前記アウトソールの一部が横方向の張力を受けると、前記アウトソールは、前記横方向および前記長手方向の両方向に広がる、履物製品。
【請求項26】
前記ソール構造は、前記アウトソールの構造に合う構造を有するミッドソールをさらに備える、請求項25に記載の履物製品。
【請求項27】
前記多角形開口部は、前記ミッドソールの厚みを貫通している、請求項26に記載の履物製品。
【請求項28】
インナーソールをさらに備える、請求項25〜請求項27のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項29】
多角形部分は三角形部分である、請求項25〜請求項28のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項30】
前記ソール構造は、前記アウトソールの底面に取り付けられた外側被覆をさらに備える、請求項25〜請求項29のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項31】
前記多角形開口部は、中心を有し、および前記ソール構造が垂直方向の圧縮を受けたとき、前記多角形部分は、前記多角形開口部の前記中心に向かって押し付けられる、請求項25〜請求項30のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項32】
前記アウトソールは、前記アウトソールを前記アッパーに外側被覆することによって、前記アッパーに取り付けられる、請求項25〜請求項31のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項33】
多角形開口部を囲んでいる三角形部分によって形成された前記多角形開口部から成るパターンを含むアウトソールを備える履物製品であって、
前記アウトソールは、かかと領域および甲回り領域を有し、
前記多角形開口部は、前記甲回り領域よりも前記かかと領域において実質的により大きく、
前記多角形開口部は、中心を有し、
前記三角形部分は、それらがヒンジとして機能し、それによって、前記三角形部分を互いに対して回転させることを可能にするように、それらの頂点で接合され、
前記アウトソールは、横方向と、長手方向と、垂直方向とを有することによって特徴付けられ、
前記アウトソールの一部が横方向の張力を受けたとき、前記アウトソールは、前記横方向および長手方向の両方向に広がり、
前記アウトソールの一部が長手方向の張力を受けたとき、前記アウトソールは、前記長手方向および前記横方向の両方向に広がり、
前記アウトソールの一部が垂直方向の圧縮を受けたとき、前記三角形部分は、前記多角形開口部の前記中心に向かって押し付けられる、履物製品。
【請求項34】
前記履物製品は、かかと領域を有し、および前記多角形開口部の前記パターンは、前記かかと領域まで延びている、請求項33に記載の履物製品。
【請求項35】
前記アウトソールは、内側側部と、外側側部と、甲回り領域とを有し、および前記アウトソールは、前記甲回り領域の内側側部にカーブアウト部分を備える、請求項33または請求項34に記載の履物製品。
【請求項36】
前記アウトソールは、足先領域を有し、前記多角形開口部は、前記甲回り領域よりも前記足先領域においてより大きい、請求項33に記載の履物製品。
【請求項37】
前記アウトソールは、かかと領域を有し、および前記かかと領域内の前記多角形開口部は、大略的に横方向に向けられている、横方向で内側に凹んだ側部を有することによって特徴付けられ、および前記大略的に横方向に向けられた内側に凹んだ側部は、浅い凹角を有する、請求項33〜請求項36のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項38】
前記アウトソールは、足先領域を有し、および前記足先領域内の前記多角形開口部は、大略的に横方向に向けられている、横方向で内側に凹んだ側部を有することによって特徴付けられ、および前記大略的に横方向に向けられた内側に凹んだ側部は、鋭い凹角を有する、請求項33〜請求項37のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項39】
前記アウトソールは、かかと領域を有し、および前記かかと領域は、外側側部と、中心と、内側側部とを有し、
前記かかと領域の前記外側側部、および前記かかと領域の前記内側側部における前記多角形開口部は、前記かかと領域の前記中心における前記多角形開口部よりもかなり小さい、請求項33〜請求項38のいずれか一項に記載の履物製品。
【請求項40】
履物製品に採用されるオーゼティック構造であって、
前記オーゼティック構造は、少なくとも3つの凹状辺を有すること、および中心を有することによって特徴付けられた多角形開口部から成るパターンを備え、
前記オーゼティック構造内の前記多角形開口部のパターンと結合するパターンを有する外側被覆をさらに備え、
前記オーゼティック構造は、長手方向と、横方向と、厚さとを有し、
前記オーゼティック構造は、長手方向の張力を受けたときに、前記長手方向および前記横方向の両方向に広がり、
前記オーゼティック構造は、横方向の張力を受けたときに、前記横方向および前記長手方向の両方向に広がり、
前記多角形開口部は、垂直方向の圧縮を受けたときに、それらの中心に向かってつぶれる、オーゼティック構造。
【請求項41】
前記オーゼティック構造は、本質的にオーゼティックな材料で形成される、請求項40に記載のオーゼティック構造。
【請求項42】
前記材料構造は、本質的にオーゼティックな発泡材料から成る、請求項41に記載のオーゼティック構造。
【請求項43】
前記多角形開口部は、多角形部分が互いに対して回転してもよいように、柔軟性のある接合部によって隣接する多角形部分に接合された前記多角形部分によって囲まれる、請求項40〜請求項42のいずれか一項に記載のオーゼティック構造。
【請求項44】
前記多角形開口部は、前記材料が張力を受けたときに、前記多角形部分が互いに対して回転するように、それらの頂点で、隣接する多角形部分の頂点に弾力的に接合される前記多角形部分によって囲まれる、請求項40〜請求項43のいずれか一項に記載のオーゼティック構造。
【請求項45】
前記多角形部分は三角形である、請求項44に記載のオーゼティック構造。
【請求項46】
前記多角形開口部のサイズは、前記オーゼティック構造の第2の領域における前記多角形開口部のサイズと比較して、前記オーゼティック構造の第1の領域において実質的に大きくなっている、請求項40〜請求項45のいずれか一項に記載のオーゼティック構造。
【請求項47】
前記オーゼティック構造は、比較的弾力性のある材料から成る第1の層と、硬い材料から成る第2の層とを備える積層複合材料である、請求項40〜請求項46のいずれか一項に記載の材料構造。
【請求項48】
複数の前記多角形開口部は、約150°〜170°の第1の凹角を有することによって特徴付けられる第1の内側に凹んだ側部と、110°〜130°の第2の凹角を有することによって特徴付けられる第2の内側に凹んだ側部とを有する、請求項40〜請求項47のいずれか一項に記載のオーゼティック構造。
【請求項49】
前記多角形開口部は三角形開口部である、請求項40〜請求項47のいずれか一項に記載のオーゼティック構造。
【請求項50】
履物製品の少なくとも一部を構成する、素材から成るシートであって、
長手方向と、横方向と、垂直方向とを有し、
三角形部分によって囲まれた開口部を有する六角形構造から成るパターンを備え、
各三角形部分が、前記三角形部分が互いに対して回転できるように、柔軟性のある接合部によって、隣接する三角形部分に接合され、
前記長手方向に張力を受けたときに、前記長手方向および横方向の両方向に広がる、素材から成り、
複数の前記三角形開口部は、前記素材から成るシートが張力を受けていないときに開かれる、シート。
【請求項51】
複数の前記三角形開口部は、前記素材から成るシートが張力を受けていないときは閉じている、請求項50に記載の素材から成るシート。
【請求項52】
前記六角形構造は、中心を有し、および前記素材から成るシートが垂直方向の圧縮を受けたとき、前記三角形部分は、前記六角形構造の前記中心に向かって押し付けられる、請求項50に記載の素材から成るシート。
【請求項53】
前記素材から成るシートが、衝撃による垂直方向の圧縮を受けたとき、垂直方向の圧縮を受けた前記素材から成るシートの密度が増加する、請求項50〜請求項52のいずれか一項に記載の素材から成るシート。
【請求項54】
前記素材から成るシートは、オーゼティック構造を有する、請求項50〜請求項53のいずれか一項に記載の素材から成るシート。
【請求項55】
前記シート素材は、本質的にオーゼティックな発泡材料から成る、請求項50〜請求項54のいずれか一項に記載の素材から成るシート。
【請求項56】
前記三角形開口部は、3つの内側に凹んだ側部を有し、および前記3つの内側に凹んだ側部の各々は、110°〜170°の凹角を有する、請求項50〜請求項55のいずれか一項に記載の素材から成るシート。
【請求項57】
履物製品に使用される複合オーゼティック材料であって、
前記複合オーゼティック材料は、
多角形部分によって囲まれた多角形開口部から成るパターンを備える、比較的硬い材料から成る第1の層であって、前記第1の層が張力を受けたときに、前記多角形部分が互いに対して回転してもよいように、柔軟性のある接合部によって、各多角形部分が隣接する多角形の形状構成に接合される第1の層と、
前記第1の層に取り付けられた比較的弾力性のある材料から成る第2の層であって、前記第2の層は、前記第1の層と同じ多角形開口部から成るパターンを有し、および前記第2の層内の前記多角形開口部から成るパターンは、前記第1の層内の前記多角形開口部から成るパターンと位置合わせされる第2の層と、を備え、
前記複合オーゼティック材料は、第1の方向に張力を受けたときに、前記第1の方向と、前記第1の方向に対して直角である第2の方向との両方向に広がる、複合オーゼティック材料。
【請求項58】
前記第1の層とは反対側にある前記第2の層の側で、弾力性のある材料から成る前記第2の層に取り付けられた、柔軟性および弾力性のある材料から成る第3の層をさらに備える、請求項57に記載の複合オーゼティック材料。
【請求項59】
前記第2の層とは反対側にある前記第1の層の側で前記第1の層に取り付けられた、柔軟性および弾力性のある材料から成る外側被覆をさらに備える、請求項57に記載の複合オーゼティック材料。
【請求項60】
前記外側被覆は、その表面から突出し、および前記第1の層内で前記多角形開口部と結合する多角形の形状構成から成るパターンを備える、請求項59に記載の複合オーゼティック材料。
【請求項61】
前記多角形開口部は、少なくとも3つの内側に凹んだ側部を有し、および前記多角形の星形開口部の前記3つの内側に凹んだ側部の各々は、約110°〜約170°の凹角を有する、請求項57〜請求項60のいずれか一項に記載の複合オーゼティック材料。
【請求項62】
複数の前記多角形開口部は、約110°〜130°の凹角を有する一方の内側に凹んだ側部と、約150°〜170°の凹角を有する他方の内側に凹んだ側部とを有する、請求項61に記載の複合オーゼティック材料。
【請求項63】
前記多角形開口部は、三角形の星形開口部である、請求項57〜請求項62のいずれか一項に記載の複合オーゼティック材料。
【請求項64】
前記多角形の形状構成は、三角形の形状構成である、請求項57〜請求項63のいずれか一項に記載の複合オーゼティック材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーゼティック(auxetic)構造およびそれを備えた履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
履物製品は、典型的には、少なくとも2つの主要な構成要素、すなわち、着用者の足を受け入れるためのエンクロージャを形成するアッパーと、地面または競技面に対する一次的接触部である、アッパーに固定されたソールとを有している。また、履物は、ある種の締め付けシステム、たとえば、ひももしくはストラップまたはそれらの組合せを用いて、着用者の足の周りに履物を固定してもよい。ソールは、3つの層、すなわち、インナーソールと、ミッドソールと、アウターソールとを備えてもよい。
アウターソールは、地面または競技面に対する一次的接触部である。それは、一般的に、トレッドパターンおよび/もしくはクリートもしくはスパイク、または、特定の運動、作業もしくは娯楽活動に、もしくは特定の地面に適した向上したトラクションを履物の着用者に与える他の突起を持っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
「オーゼティック(auxetic)構造」という用語は、本願明細書で用いる場合、一般的には、それが第1の方向に張力を受けたときに、第1の方向に直角な方向にその寸法を増加させる構造を指す。たとえば、その構造が長さと、幅と、厚さとを有していると説明できる場合に、その構造が長手方向に張力を受けると、それは幅が拡大する。いくつかの実施形態では、オーゼティック構造は、長手方向に伸ばされたときには長さおよび幅が拡大し、また、横方向に伸ばされたときには、幅および長さが拡大するが、いずれも厚さは拡大しないような双方向性である。このようなオーゼティック構造は、負のポアソン比を有することによって特徴付けられている。また、このような構造は、一般的に、印加された張力と、張力の方向に直角な寸法の増加との間に少なくとも単調な関係を有することになるが、その関係は、比例的または線形である必要はなく、また一般的に、増加した張力に応答して増加する必要があるだけである。
【0004】
本開示によれば、履物製品は、アッパーおよびソールを含んでいる。ソールは、インナーソールと、ミッドソールと、アウターソールとを含んでもよい。ソールは、オーゼティック構造で形成された少なくとも一つの層を含んでいる。この層は、「オーゼティック層」と呼ぶことができる。
【0005】
履物を着用している人が、オーゼティック層にかかる長手方向または横方向の張力を増加させる活動、たとえば、ランニング、ターン、跳躍または加速を行うと、オーゼティック層は、その長さおよび幅が増加してトラクションを高め、競技面(playing surface)との衝撃をある程度吸収する。
【0006】
以下の説明は、限られた種類の履物についてのみ考察しているが、実施形態では、テニスおよび他のラケットスポーツ、ウォーキング、ジョギング、ランニング、ハイキング、ハンドボール、トレーニング、トレッドミル上でのランニングまたはウォーキング、およびバスケットボール、バレーボール、ラクロス、陸上ホッケーおよびサッカー等のチームスポーツを含む多くのスポーツおよび娯楽活動に適応させることができる。
【0007】
ある態様において、履物製品は、アッパーおよびソール構造を含んでいる。前記ソール構造はアウトソールを含む。前記ソール構造は、前記アウトソールの外面(outer surface)に対して接線方向である第1の方向を有し、また、前記ソール構造は、前記第1の方向に直角な第2の方向を有し、前記第2の方向は、前記アウトソールの前記外面に対しても接線方向である。前記ソール構造はさらに、幾何学的パターンで配列された複数の開口部を含んでいる。前記ソールに対して前記第1の方向に張力を印加すると、前記アウトソールが前記第1の方向および前記第2の方向の両方向に広がる。
【0008】
別の態様においては、履物製品用のソール構造は、六角形パターンから成るパターンで構成された構造を有するアウトソールを含んでいる。前記アウトソールは、平面を画成している。前記六角形パターンは、三角形部分を互いに対して回転させることを可能にするヒンジとして機能する接合部によって、互いに接合された前記三角形部分によって囲まれた多角形開口部を備えている。前記アウトソールが第1の方向に張力を受けると、前記アウトソールは、前記第1の方向と、前記第1の方向に直角で、前記ソール構造の平面内にある第2の方向との両方向に広がる。
【0009】
別の態様において、履物製品は、アッパーおよびソール構造を含み、前記ソール構造はアウトソールを備え、前記アウトソールは、多角形開口部を囲んでいる多角形部分を有することによって特徴付けられている。前記多角形部分は、前記ソール構造が張力を受けたときに、前記複数の多角形部分が互いに対して回転するように、隣接する多角形部分にヒンジ式で接合されている。前記アウトソールの一部が長手方向の張力を受けると、アウトソールは長手方向および横方向の両方向に広がり、また、前記アウトソールの一部が横方向の張力を受けると、アウトソールは、横方向および長手方向の両方向に広がる。
【0010】
別の態様において、履物製品は、前記多角形開口部を囲んでいる三角形部分によって形成された多角形開口部から成るパターンを含んでいる。前記多角形開口部は、中心を有している。前記三角形部分は、ヒンジとして機能し、それによって、前記三角形を互いに対して回転させるように、それらの頂点で接合されている。前記アウトソールは、横方向と、長手方向と、垂直方向とを有することによって特徴付けられている。前記アウトソールの一部が横方向の張力を受けると、アウトソールは前記横方向および長手方向の両方向に広がり、また、前記アウトソールの一部が長手方向の張力を受けると、アウトソールは、前記長手方向および前記横方向の両方向に広がる。前記アウトソールの一部が垂直方向の圧縮を受けると、前記三角形部分は、前記多角形開口部の中心に向かって押し付けられる。
【0011】
別の態様において、オーゼティック構造は、少なくとも3つの内側に凹んだ側部を有すること、および中心を有することによって特徴付けられた多角形開口部から成るパターンを含んでいる。前記オーゼティック構造は、長手方向と、横方向と、厚さとを有している。長手方向の張力を受けると、前記オーゼティック構造は、前記長手方向および前記横方向の両方向に広がる。横方向の張力を受けると、前記オーゼティック構造は、前記横方向および長手方向の両方向に広がる。垂直方向の圧縮を受けると、前記多角形開口部は、それらの中心に向かってつぶれる。
【0012】
別の態様において、素材から成るシートは、長手方向と、横方向と、垂直方向とを有している。前記素材から成るシートは、三角形部分によって囲まれた開口部を有する六角形構造から成るパターンも含み、各三角形部分は、互いに対して回転できるように、柔軟性のある接合部によって、隣接する三角形部分に接合されている。前記素材から成るシートが前記長手方向に張力を受けると、そのシートは、前記長手方向および前記横方向の両方向に広がる。
【0013】
別の態様において、複合オーゼティック素材は、多角形部分によって囲まれた多角形開口部から成るパターンを備える比較的硬い材料から成る第1の層を含み、各多角形部分は、前記第1の層が張力を受けたときに、互いに対して回転できるように、柔軟性のある接合部によって、隣接する多角形の形状構成に接合されている。前記材料は、前記第1の層に取り付けられた比較的弾力性のある材料から成る第2の層をさらに含み、前記第2の層は、前記第1の層と同じ多角形開口部から成るパターンを有し、および前記第2の層内の前記多角形開口部から成るパターンは、前記第1の層内の前記多角形開口部から成るパターンと位置合わせされている。前記複合オーゼティック素材が第1の方向に張力を受けると、その素材は、前記第1の方向と、前記第1の方向に直角な第2の方向との両方向に広がる。
【0014】
実施形態の他のシステム、方法、機能および利点は、当業者には、以下の図および詳細な説明を検討した時点で明らかであるか、または明らかになるであろう。そのようなすべての追加的なシステム、方法、機能および利点が、この説明およびこの概要内に含まれ、および実施形態の範囲内にあり、および以下のクレームによって保護されることが意図されている。
【0015】
実施形態は、以下の図面および説明を参照することによって、より良く理解することができる。図における構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ実施形態の原理を示すにあたり強調されている。さらに、図において、同様の符号は、異なる図面にわたって類似の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】オーゼティック構造を備えたソールを伴う履物製品の実施形態を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す履物製品の模式的な底部斜視図である。
【
図3】さまざまな張力の状態における、
図3のアウトソールの底面の一部を示す一連の模式図である。
【
図4】アッパーが取り除かれている状態のアウトソールを示す模式的な上面図である。
【
図5】
図4に示すアウトソールの底面を示す模式図である。
【
図6】張力を受けていないときの、
図5に示すアウトソールのかかと領域を示す拡大図である。
【
図7】
図6で指示されている線A−Aに沿った断面を示す模式図である。
【
図9】長手方向の張力を受けたときの、
図5に示すかかと領域の拡大図である。
【
図10】横方向の張力を受けたときの、
図5に示すかかと領域の拡大図である。
【
図11】張力を受けていないときのソールを示す模式図である。
【
図12】横方向の張力を受けたときの、
図11に示すソールの足先の一部を示す拡大図である。
【
図13】長手方向の張力を受けたときの、
図11に示すソールの足先の一部を示す拡大図である。
【
図14】長手方向の張力を受けたときの、
図11に示すソールの中足の一部を示す拡大図である。
【
図15】さらなる長手方向の張力を受けたときの、
図11に示すソールの中足の一部を示す拡大図である。
【
図16】張力を受けていないときの、
図5に示すソールの足先を示す拡大図である。
【
図17】長手方向の張力を受けたときの、
図5に示すソールの足先を示す拡大図である。
【
図18】横方向の張力を受けたときの、
図5に示すソールの足先を示す拡大図である。
【
図19】張力を受けていないときの、地面に係合する部材を有するアウトソールの一部を示す底面図である。
【
図21】張力を受けていないときの、
図19のアウトソールの一部を示す上面図である。
【
図22】張力を受けたときの、
図19のソールの一部を示す上面図である。
【
図23】さまざまな張力の状態における、
図19のアウトソールの一部を示す一連の底面図を示す。
【
図24】張力を受けていないときのアウトソールを示す底面図である。
【
図25】さまざまな張力の状態における、
図24のアウトソールの一部を示す一連の底面図を示す。
【
図26】張力を受けていないときのアウトソールの別の実施例を示す模式図である。
【
図27】張力を受けたときの、
図26のアウトソールの模式図である。
【
図28】
図26のアウトソールと結合する外側被覆を示す上面図である。
【
図29】
図28に示した外側被覆が
図26のアウトソールとどのように結合するかを示す模式図である。
【
図30】
図28および
図29のアウトソールおよび外側被覆の側面斜視状態を示す模式図である。
【
図31】
図26のアウトソールおよび
図28の外側被覆を支えるソール構造の断面を示す模式図である。
【
図32】ニットアッパーと、オーゼティック構造を有するソールとを備えた履物製品を示す模式図である。
【
図33】
図32の履物製品のアウトソールのオーゼティック構造を示す模式図である。
【
図36】
図32の履物製品のアウトソールの中足部を示す拡大図である。
【
図38】
図32の履物製品の足先における断面を示す模式図である。
【
図39】オーゼティックソール構造を含む編みアッパーを備えたランニングシューズの側面を示す模式図である。
【
図40】
図39の履物製品のアウトソールを示す底面図である。
【
図41】
図39の履物製品の足先領域を示す拡大斜視底面図である。
【
図44】アッパーと、オーゼティック構造を有するアウトソールとを備えたシューズの別の実施例を示す側面図である。
【
図45】
図44の履物製品のシューズのかかと領域における内部を示す模式図である。
【
図46】開口部が非圧縮形態になっているアウトソールの一部を示す模式図である。
【
図47】開口部が圧縮形態になっているアウトソールの一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
明確にするために、本願明細書における詳細な説明は、いくつかの例示的な実施形態を記載しているが、本願明細書における開示は、本願明細書に記載されている特徴およびクレームに列挙されている特徴のうちのいくつかを備えるどのような履物製品に適用してもよい。具体的には、以下の詳細な説明は、ランニングシューズ、ジョギングシューズ、テニス、スカッシュまたはラケットボールシューズ、バスケットボールシューズ、サンダルおよびフリッパー等の履物の形態で例示的な実施形態を説明しているが、本願明細書における開示は、幅広い履物に適用してもよい。
【0018】
一貫性のため、および便宜上、この詳細な説明全体では、図示されている実施形態に応じて、方向を示す形容詞が用いられている。この詳細な説明全体を通して、およびクレームに用いられている「長手方向」という用語は、スポーツシューズまたはレクリエーションシューズ等の履物製品の長さ(または、最も長い寸法)を示す方向を指す。また、この詳細な説明全体を通して、およびクレームに用いられている「横方向」という用語は、履物製品の幅に沿って延びる方向を指す。横方向は、大略的に、長手方向に対して直角であってもよい。この詳細な説明全体を通して、およびクレームにおいて履物製品に関して用いられている「垂直方向」という用語は、履物製品のソールの平面に垂直である方向を指す。
【0019】
本願明細書において単に「ソール」とも呼ばれる「ソール構造」という用語は、着用者の足を支え、および地面または競技面に直接的に接触する面を有している何らかの組合せ、たとえば、単一のソール、アウトソールおよびインナーソールの組合せ、アウトソールと、ミッドソールと、インナーソールとの組合せ、および外側被覆と、アウトソールと、ミッドソールと、インナーソールとの組合せを指すものとする。
【0020】
図1は、履物製品100の実施形態を示す側面斜視図である。履物製品100は、アッパー101と、本願明細書では、以後、単純にソール102とも呼ぶソール構造102とを含んでいる。アッパー101は、かかと領域103と、甲回りまたは中足領域104と、足先領域105とを有している。アッパー101は、着用者が、彼または彼女の足を履物に挿入することを可能にする開口部またはスロート110を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アッパー101は、足の周りでアッパー101を締め付けるか、または他の方法でアッパー101を調節するのに用いることができるひも111を含んでいてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、ソール102は、一次的地面接触面である可能性があるアウトソール120を少なくとも含んでいる。また、いくつかの実施形態では、ソール102は、インナーソール、ミッドソール、または、インナーソールおよびミッドソールの両方も有していてもよい。いくつかの実施形態では、アウトソール120は、トレッドパターンを持っていてもよく、または、クリート、スパイクまたは他の地面係合突起を有していてもよい。
【0022】
図2は、履物製品の実施形態を示す底部斜視図である。この図は、アウトソール120の底部を示している。アウトソール120は、
図2に図示されているように、かかと領域123と、甲回りまたは中足領域124と、足先領域125とを有している。
【0023】
アウトソール120は、それらの頂点で互いに接合されている多角形の形状構成によって囲まれた開口部を有している。それらの頂点における接合部はヒンジとして機能し、ソールが張力を受けたときに、多角形の形状構成が回転することを可能にしている。この動作は、張力を受けたソールの一部が、張力を受けた方向と、張力を受けた方向に直交するソールの平面内の方向との両方向に広がることを可能にする。したがって、それらの開口部、および、多角形の形状構成は、アウトソール120用のオーゼティック構造を形成し、そのオーゼティック構造については以下でさらに説明する。
【0024】
図2に図示されているように、アウトソール120は、本願明細書では、以後、単に開口部131とも呼ぶ複数の開口部131を含むほぼ平らな面を備えている。実施例として、
図2には、開口部131の第1の開口部139の拡大図が模式的に図示されている。第1の開口部139はさらに、第1の部分141と、第2の部分142と、第3の部分143とを有するものとして図示されている。これらの部分の各々は、中央部144において一緒に接合されている。同様に、いくつかの実施形態では、開口部131の残りの開口部の各々は、一緒に接合され、および中央部から外側に延びている3つの部分を含んでもよい。
【0025】
大略的には、複数の開口部131の各開口部は、どのような種類の形状を有していてもよい。いくつかの実施形態では、開口部は、凸状および/または凹状の多角形形状を含む多角形の形状を有していてもよい。このような場合、開口部は、特定の数の頂点および縁部(または辺)を備えるものとして特徴付けてもよい。例示的な実施形態では、開口部131は、6つの辺および6つの頂点を有するものとして特徴付けてもよい。たとえば、開口部139は、第1の辺151と、第2の辺152と、第3の辺153と、第4の辺154と、第5の辺155と、第6の辺156とを有するものとして図示されている。さらに、開口部139は、第1の頂点161と、第2の頂点162と、第3の頂点163と、第4の頂点164と、第5の頂点165と、第6の頂点166とを有するものとして図示されている。
【0026】
一つの実施形態では、開口部139の形状(およびそれに対応する一つ以上の開口部131)は、周期的で等辺である正多角形として特徴付けてもよい。いくつかの実施形態では、開口部139の形状は、直線状である代わりに、辺の中間に、内側に向いている頂点を有する辺を備えた三角形として特徴付けることができる。これらの内側に向いている頂点に形成された凹角は、たとえば、180°(辺が完全に直線状であるとき)〜120°以下とすることができる。
【0027】
さまざまな多角形および/または湾曲した形状を含むその他の形状も可能である。一つ以上の開口部131とともに用いてもよい例示的な多角形形状は、限定するものではないが、正多角形形状(たとえば、三角形、正方形、五角形、六角形等)ならびに不規則な多角形または非多角形形状を含む。その他の形状は、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、または、凹状辺を備えた他の多角形形状であると説明することができるであろう。
【0028】
例示的な実施形態では、開口部(たとえば、開口部139)の頂点は、180度未満である内角、または、180度より広い内角に相当していてもよい。たとえば、開口部139に関して、第1の頂点161、第3の頂点163および第5の頂点165は、180度未満である内角に相当していてもよい。この特定の実施例では、第1の頂点161、第3の頂点163および第5の頂点165の各々は、180度未満である内角A1を有している。換言すれば、開口部139は、(開口部139の外側に対して)それらの頂点の各々に、局所的な凸状形状を有していてもよい。対照的に、第2の頂点162、第4の頂点164および第6の頂点166は、180度より広い内角に相当していてもよい。換言すれば、開口部139は、(開口部139の外側に対して)それらの頂点の各々に、局所的な凹状形状を有していてもよい。この特定の実施例では、第2の頂点162、第4の頂点164および第6の頂点166の各々は、180度より広い内角に相当していてもよい。
【0029】
本実施形態は、隣接する辺または縁部がそこで接続する略点状の頂点を含む、ほぼ多角形形状を有する開口部を描いているが、他の実施形態では、いくつかまたはすべての開口部を非多角形とすることができる。具体的には、ある場合には、いくつかのまたはすべての開口部の外側縁部または辺は頂点で接合しなくてもよいが、連続的に湾曲させてもよい。さらに、いくつかの実施形態は、頂点を介して接続された直線状の縁部と、何らかの点または頂点のない湾曲したか、または非線形の縁部と、の両方を含む形状を有する開口部を含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、開口部131は、アウトソール120上に、規則的なパターンで配列してもよい。いくつかの実施形態では、開口部131は、開口部の各頂点が、別の開口部(たとえば、隣接する、または、近傍の開口部)の頂点の近くに配置されるように配列してもよい。より具体的には、ある場合には、開口部131は、180度未満の内角を有するすべての頂点が、180度より広い内角を有する頂点の近くに配置されるように配列してもよい。一つの実施例として、開口部139の第1の頂点161は、別の開口部190の頂点191の近傍に、またはその頂点に隣接して配置されている。ここで、頂点191は、180度より広い内角を有しているように見えるが、第1の頂点161は、180度未満である内角を有している。同様に、開口部139の第2の頂点162は、別の開口部192の頂点193の近傍に、または、その頂点に隣接して配置されている。ここで、頂点193は、180度未満である内角を有しているように見えるが、第2の頂点162は、180度より広い内角を有している。
【0031】
上記の配列から生じる構成は、ソール構造120を、その境界が開口部131の縁部によって画定されている、より小さな幾何学的部分に分けているととらえてもよい。いくつかの実施形態では、それらの幾何学的部分は、多角形部分で構成してもよい。たとえば、例示的な実施形態では、開口部131は、本願明細書では、以後、単に多角形部分200とも呼ぶ複数の多角形部分200を画定するように配列されている。
【0032】
大略的には、多角形部分200の形状は、開口部131の形状と、それらのアウトソール120上での配置とによって決めてもよい。例示的な構成では、開口部131は、隣接する開口部の縁部によって境界が画定されている、複数の略三角形部分を画定するように形成され、および配列されている。当然のことながら、他の実施形態では、多角形部分は、長方形、五角形、六角形、および可能性のある他の種類の正多角形形状および不規則な多角形形状を含む、他のどのような形状も有することができる。さらに、他の実施形態では、開口部は、必ずしも多角形である必要はない(たとえば、頂点で接合されたほぼ直線状の縁部で構成された)幾何学的部分を画定するようにアウトソール上に配列してもよい。他の実施形態では、幾何学的部分の形状は、変えることができ、およびさまざまな、丸みを帯びた、湾曲した、特定の輪郭を有する、波形の、非線形の、ならびに他の何らかの種類の形状または形状特性を含むことができるであろう。
【0033】
図2を見て分かるように、多角形部分200は、各開口部の周りに、規則的な幾何学的パターンで配列してもよい。たとえば、開口部139は、第1の多角形部分201、第2の多角形部分202、第3の多角形部分203、第4の多角形部分204、第5の多角形部分205および第6の多角形部分206に結合されているように見える。さらに、開口部139の周りのこれらの多角形部分のほぼ一様な配置は、開口部139を囲むほぼ六角形の形状を形成している。
【0034】
いくつかの実施形態では、開口部のさまざまな頂点は、ヒンジとして機能してもよい。具体的には、いくつかの実施形態では、一つ以上の幾何学的部分(たとえば、多角形部分)を含む素材の隣接する部分は、開口部の頂点に結合されているヒンジ部分の周りで回転してもよい。一つの実施例として、開口部139の各頂点は、隣接する多角形部分を回転可能な方法で接合する対応するヒンジ部分に結合されている。
【0035】
例示的な実施形態では、開口部139は、頂点161に結合しているヒンジ部分210(
図3を参照)を含んでいる。ヒンジ部分210は、第1の多角形部分201および第6の多角形部分206に隣接する素材の比較的小さな部分で構成されている。以下でさらに詳細に説明するように、第1の多角形部分201および第6の多角形部分206は、ヒンジ部分210において、互いに対して回転してもよい。同様に、開口部139の残りの頂点の各々は、隣接する多角形部分を回転可能な方法で接合する同様のヒンジ部分に結合されている。
【0036】
図3は、単一の軸または方向に沿って引っ張り力が印加されたときのアウトソール120の一部を示す一連の模式的構成図である。具体的には、
図3は、開口部131と多角形部分200の幾何学的配置とがどのようにしてオーゼティック特性をアウトソール120に与えて、それによって、アウトソール120の部分が、印加された張力の方向と、印加された張力の方向に垂直な方向との両方向に広がることを可能にしているかを図示することが意図されている。
【0037】
図3に図示されているように、アウトソール200の部分230は、単一の線形方向(たとえば、長手方向)に印加された張力の結果として、さまざまな中間形態を経る。具体的には、4つの中間形態を、単一の方向に沿って印加される張力の増加レベルと関連付けてもよい。
【0038】
多角形部分200の特定の幾何学的形状およびそれらのヒンジ部分を介した接続により、この線形張力は、隣接する多角形部分200の回転に変換される。たとえば、第1の多角形部分201および第6の多角形部分206は、ヒンジ部分210で回転される。残りのすべての多角形部分200は、開口部131が広がる際に同様に回転される。したがって、隣接する多角形部分200の間の相対的間隔は増加する。たとえば、
図3を見て明確に分かるように、第1の多角形部分201と、第6の多角形部分206との間の相対的間隔(およびそれに伴って、開口部131の第1の部分141のサイズ)は、張力の増加に伴って増加する。
【0039】
このことは、相対的間隔の増加が、(開口部の元々の幾何学的パターンの対称性により)すべての方向で起きるにつれて、第1の方向に沿った、および第1の方向に直角な第2の方向に沿った部分230の広がりを生じさせる。たとえば、例示的な実施形態では、(
図3の左側に見られる)初期の、または、張力がかかっていない形態において、部分230は、当初は、第1の線形方向(たとえば、長手方向)に沿った初期のサイズD1と、第1の方向に直角な第2の線形方向(たとえば、横方向)に沿った初期のサイズD2とを有している。(
図3に見られる)十分に広がった形態では、部分230は、第1の方向に増加したサイズD3と、第2の方向に増加したサイズD4とを有している。したがって、部分230の広がりが、張力方向の広がりに限定されないことは明らかである。さらに、いくつかの実施形態では、広がりの量(たとえば、最終的なサイズと初期のサイズとの比)は、第1の方向と第2の方向との間でほぼ同じであってもよい。換言すれば、ある場合には、部分230は、たとえば、長手方向および横方向の両方向に同じ相対的量だけ広がってもよい。対照的に、他のいくつかの種類の構造および/または素材は、印加された張力の方向に垂直な方向で接触してもよい。
【0040】
図に示す例示的な実施形態では、オーゼティック構造で構成されたアウトソールを含むオーゼティック構造は、長手方向または横方向に引っ張ってもよい。しかし、ここで説明した、幾何学的部分によって囲まれた開口部で構成されたオーゼティック構造の場合の構成は、張力がそれに沿って印加される任意の第1の方向に沿って、および第1の方向に直角な第2の方向に沿って広がることができる構造をもたらす。さらに、広がりの方向、すなわち、第1の方向および第2の方向は、大略的に、オーゼティック構造の表面に対して接線方向であってもよいことを理解すべきである。具体的には、ここで説明したオーゼティック構造は、大略的には、オーゼティック構造の厚さに関連する実質的に垂直方向には広がらなくてもよい。
【0041】
図4は、地面と接触していないアウトソール320の側面(side)の上面図である。
図5は、
図4のアウトソールの底面図である。したがって、
図5は、地面と直接的に接触しているアウトソール320の側面の図である。アウトソール320は、かかと領域331と、中足または甲回り領域332と、足先領域333とを有している。いくつかの実施形態では、アウトソール320は、オーゼティック構造で構成されていてもよい。これらの図に示されているように、アウトソール320は、それらの頂点323において、隣接する三角形の頂点に接合されている三角形部分322から成るパターンによって形成された開口部321のパターンを持っている。開口部321の各々の周りの(
図5の吹き出しに点線で描かれている)6つの三角形322の組合せは、
図5に図示されているような(
図5に一点鎖線で描かれている)六角形パターン324を構成している。
【0042】
図5に図示されているように、六角形パターンは、アウトソールの長さおよび幅にわたってサイズおよび形状が変化する。たとえば、六角形パターンのサイズは、かかと領域331の中心334において最大であり、また、甲回り領域337において最小である。たとえば、開口部の1つの頂点から、その開口部の隣接する頂点までの距離は、ソールの甲回り領域に比べて、かかと領域の中心において2倍大きくてもよい。実施形態では、かかとでは、大略的に横方向に向けられている三角形の辺に対する凹角は、約150°〜170°、たとえば、160°でかなり浅いのに対して、足先においては、その凹角は、約110°〜130°、たとえば、120°でかなり鋭くなっている。より大略的には、凹角は、100°〜170°であってもよい。この形状の場合、かかとにおけるオーゼティック構造は、長手方向の張力を受けたとき、横方向に張力を受けたときに長さが広がる程度よりも、より大きく幅が広がる。足先では、凹角はそれほど変わらず、その結果、長手方向の張力を受けたときの足先における幅の広がりは、横方向の張力を受けたときの長さの広がりに比べてそれほど大きいものではない。
【0043】
図4および
図5に示す実施例では、幾何学的パターンは、開口部321がアウトソール320を貫通するホールを形成するようなスルーホール開口部321を形成している。しかし、他の実施形態では、アウトソール320は、スルーホール開口部を含む必要はない。その代わりに、アウトソール320は、そのアウトソールの上部または底部に、材料から成る薄い連続層があるように、止まり穴を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、その幾何学的パターンは、アウトソールのいくつかの部分にスルーホールを、およびアウトソールの他の部分に止まり穴を形成していてもよい。
【0044】
図6は、アウトソールが張力を受けていないときの
図5に示すアウトソールの、それぞれかかと領域331、中足領域332および足先領域333の拡大図である。
【0045】
図6は、かかと領域331の中心部分334に開口部を形成している、ヒンジ式の三角形の組合せによって形成された六角形パターンが、かかと領域331の外側側部335または内側側部336に向かう六角形パターンよりも大きいことを示している。たとえば、中心部分334に配置されている六角形パターン351は、かかと領域331の内側側部336に配置されている六角形パターン353よりも大きくてもよい。かかとが、地面に垂直な方向で地面または競技面にぶつかった場合、かかとの中心部分334における三角形部分322は、六角形パターン351の中心に向かって動く。このことは、かかとのすぐ下の構造の密度を増加させ、および地面にぶつかるかかとの衝撃を和らげるのに役に立つ。
【0046】
図6に示す実施形態では、かかとの中心部分334における六角形パターンは、六角形パターンの中心で開口部321と交差する長手方向軸に関して略対称的であってもよい。たとえば、開口部342は、開口部342と交差する軸390に関してほぼ対称的である。しかし、かかとの中心部分334の両側の開口部の隣接する列における形状構成は対称的ではない。たとえば、かかとの内側側部の開口部343は、外側に向いている部分392よりも長い、内側に向いている部分391を有している。また、かかとの外側側部の開口部341も同様の形状を有しており、内側に向いている部分が、開口部341の外側に向いている部分よりも長くなっている。この形態は、その中心部分の圧縮する能力を最大化し、およびかかとが地面または競技面にぶつかったときの衝撃力を減衰させる。いくつかの実施形態では、かかとの外側側部335、およびかかとの内側側部336の形状構成の寸法は、かかとの中心における形状構成の寸法よりもかなり小さい(たとえば、3分の2以下のサイズ)。かかとの外側側部および内側側部でのより小さな寸法の六角形パターンは、かかとが、そのかかとの上方に湾曲する輪郭の周りでその湾曲した形状を維持することを可能にし、およびかかとの内側側部および外側側部の柔軟性を最大化する。
【0047】
図7は、履物の構造の実施例を示す、
図6に示すかかと部331で取った断面図である。この実施例では、かかとは、3つの層、すなわち、アウトソール層320と、ミッドソール層340と、インソール層350とを有している。いくつかの実施形態では、アウトソール層320は、比較的硬い、耐摩耗性材料で形成されており、一方、ミッドソール層340およびインソール層350は、快適な履物製品を実現できるように、比較的弾力性のある材料で形成されている。また、
図7は、アウトソール層320およびミッドソール層340を通る開口部321も図示している。
【0048】
図8、
図9は、たとえば、着用者が履物製品のかかとに着地した場合のアウトソール320のかかと領域331のオーゼティック特性を示す。かかと領域331は、長手方向の張力を受けると、長さが増加する。しかし、それらの頂点で接合されたヒンジ式の三角形のパターンとしてのアウトソール320の構造のため、かかと領域331は、その横方向の寸法(たとえば、その幅)も同様に増加する。例示目的のために、張力が印加される前のかかと領域331の初期のサイズが線371によって示されている。
【0049】
このことは、さまざまな理由により、かかとと競技面との間のトラクションを改善するのに役に立つ可能性がある。たとえば、地面に接触する面は、いくらか大きな範囲に及んでいるため、このことは、かかとが地面にぶつかったときに、かかとの少なくとも一部が、滑りにくい競技面と接触することになる可能性を高める。また、三角形の間の開口部は、三角形が広がることを可能にし、地面との接触面積を増加させる。さらに、その衝撃は、三角形の星形開口部の内側縁部と競技面との係合を強めるように、その縁部を開く。
【0050】
図10は、
図8に示すかかと領域の別の図である。この場合、かかと領域331は、横方向の張力を受けている。そのため、三角形が回転しており、およびかかと領域331の寸法は、長手方向および横方向に増加している。点線373は、張力を受けていないときのかかと領域331の輪郭を示す。この形態は、着用者が急激に停止したとき、または、着用者が一方の側部または他方の側部へ押し付けたときの、トラクションのさらなる向上をもたらす。
【0051】
図11は、それらの頂点323で互いに接合されている三角形部分322から成るパターンによって形成された開口部321を示すソールの模式図である。いくつかの実施形態では、開口部321は、中心領域から延びている3つの星形のアームの存在により、三角形の星形形状の開口部として特徴付けてもよい。しかし、前述したように、開口部321は、特定の形状に限定されず、および他の実施形態では、どのような多角形または非多角形の形状も有することができる。
【0052】
上述したように、頂点における接合部はヒンジとして機能し、ソールが張力を受けたときに、三角形部分322が互いに対して回転することを可能にしている。
図11では、
図12〜
図14に関するさらなる説明のために、点線の円で示す領域901および領域902が特定されている。
【0053】
図12は、足先が横方向の張力を受けたときの、
図11に符号901として特定されている領域の拡大図である。
図12に図示されているように、足先が横方向の張力を受けたとき、たとえば、着用者が側部に押し付けたとき、足先におけるアウトソールは、長手方向および横方向に寸法が増加し、その結果、地面または競技面とのトラクションが向上する。
【0054】
図13は、この場合、ソールが長手方向の張力を受けたときの、たとえば、着用者が、彼または彼女の足先から押しのけたときのソールの形態を例示する、
図11に符号901として特定されている領域の別の拡大図である。
図13は、足先が長手方向の張力を受けたとき、アウトソールは、その横方向の寸法および長手方向の寸法を増加させる。
【0055】
図14は、ソールの中足が適度な長手方向の張力を受けたときの、たとえば、地面との接触がかかとから足先へ移行しているときの、
図11に符号902として特定されている領域の拡大図である。
図14に図示されているように、ソールの中足が長手方向の張力を受けたとき、中足は、その横方向の寸法およびその長手方向の寸法が増加する。
図15は、中足がさらに大きな長手方向の張力を受けたときの中足を示し、ソールの寸法が、横方向および長手方向にさらに増加していることを示している。
【0056】
図16は、足先が静止状態になっているため張力を受けていないときの、足先領域333の拡大図である。足先領域333の中間部分381において、アウトソールは、その足の親指の付け根の内側側部(すなわち、足の親指からの指骨が中足骨に合流する箇所)に、より大きな六角形パターン324を有し、着用者が急に一方の側に動いたとき、その着用者によって押しのけられることになり、また、足の親指では、着用者は、押しのけることによって飛び跳ねたり、前方に走り出したりするであろう。これらのより大きな形状構成は、それらの動きを吸収するのに役に立ち、およびアウトソールのそれらの領域と競技面とのトラクションを増加させる。
【0057】
図17は、長手方向の張力を受けたときの
図16の足先領域を示し、張力を受けたその領域は、その横方向の寸法およびその長手方向の寸法を増加させることを示している。
図18は、横方向の張力を受けたときの
図16の足先領域を示し、張力を受けたその領域は、その長手方向の寸法およびその横方向の寸法を増加させることを示している。
【0058】
図17および
図18を見て分かるように、アウトソールのオーゼティック構造は、アウトソールの表面領域全体がどちらかの種類の張力を増加させるため、長手方向または横方向のいずれかの張力を受けたときに、トラクションの向上をもたらす。
【0059】
図19〜
図25は、異なるソール構造を備えた実施形態を示す。この実施形態では、ソール400は、その構造が張力を受けていないときには、開口部を有しているようには見えないオーゼティック構造から形成されている。しかし、この構造は、張力を受けたときには、多角形開口部を呈する。したがって、この構造は、張力を受けていないときには(
図19および
図21)、「閉じて」おり、また、その構造の平面内で、長手方向、横方向またはその他の張力を受けたときには「開く」(
図22)と説明することができる。
【0060】
図20は、アウトソール401およびミッドソール402上のトレッドパターン410を示す、ソール400の側断面図である。いくつかの実施形態では、
図20を見て分かるように、アウトソール401は、外側被覆403も有していてもよい。
図19〜
図25に示す実施形態は、たとえば、硬いゴム等の比較的硬い材料で形成されたアウトソール401と、EVAフォームまたはポリウレタンフォーム等の比較的弾力性のある材料で形成されたミッドソール402とを有している。
【0061】
図19、
図21、
図22および
図23に図示されているように、アウトソール401およびミッドソール402はともに、上述したオーゼティック構造を有し、すなわち、それらは、それらの頂点で接合された三角形のパターンを有している。三角形422の頂点423間の接合部は柔軟であり、その結果、それらはヒンジとして機能し、それらの三角形が互いに対して回転することを可能にし、それによって、
図22および
図23に示す開口部421を生じさせる。
【0062】
図19において黒い破線440で描かれているソールの部分は、
図23の4つの模式図に図示されている。これらの模式図は、ソールが張力を受けていないとき(左側の最初の模式図)から、ソールが低張力を受けたとき(第2の模式図)、その後、ソールが適度な張力を受けたとき(第3の模式図)、そして、ソールが最大張力を受けたとき(第4の模式図)までに、ソールの寸法がどのように増加するかを示している。
【0063】
図24は、張力を受けていないときの
図19に示す実施形態のアウトソールの底面図である。
図24は、黒い破線440内で三角形の形状構成450および三角形の形状構成451を特定している。
図25は、アウトソールが漸増する張力を受けたときに、三角形の形状構成450と三角形の形状構成451とが、どのようにして互いから離れて回転して、それらの間の開口部453を開くかを示している一連の4つの模式図である。
【0064】
図19〜
図25に模式的に図示されている実施形態では、アウトソールは、地面または競技面とのトラクションを向上させるトレッドパターン410を有している。また、アウトソールは、必要に応じて、トレッドパターンを覆ってフィットするように成形されている、薄く、弾力性および柔軟性がある「スキン」または外側被覆403も有している。この外側被覆は、たとえば、エラストマー材料から形成してもよい。外側被覆は、水、土、微粒子またはその他の破片が、ソールが張力を受けたときに形成された三角形開口部に入るのを防ぐのに用いてもよい。
【0065】
外側被覆は、アウトソールのオーゼティック構造内の星形の三角形開口部にフィットするように形成してもよい。たとえば、
図26〜
図31は、弾力性および柔軟性がある外側被覆が、オーゼティック構造の三角形の星形開口部に形成されるように成形されている実施形態の模式図である。
図26は、張力を受けていないときのアウトソール構造501を示す。アウトソール構造501は、開口部521によって離間され、それらの頂点523で隣接する三角形に接合されている三角形522を有している。ソール構造が一つの方向に張力を受けると、そのソール構造は、
図27に図示されているように、その方向およびその方向に直角な方向で、およびその構造の平面内で、その寸法が増加する。
【0066】
図28は、外側被覆503の上面図の模式図であり、すなわち、この図は、外側被覆503がソールに取り付けられたときに、外側被覆503の内側になるものから見た図である。この模式図は、外側被覆503の表面550から突出している形状構成551を示す。
図29は、外側被覆503がどのようにしてアウトソール501と結合するかを示す模式図である。外側被覆503上の形状構成551は、ここでは、外側被覆503の反対側から図示されており、そのため、それらの形状構成は、突起ではなく凹部として見えている。(履物製品の底部にあって、そのため、地面に接触する面を持っていることになる)外側被覆は、三角形のトレッドパターン552を呈している。外側被覆503は、伸縮性の弾性材料から作られているため、アウトソール501のどの部分が張力を受けても、増加した長さおよび幅に容易に適応するように伸縮する。したがって、形状構成551のパターンは、アウトソール501のオーゼティック材料に結合することと、競技面に対する着用者のトラクションを向上させる働きをする三角形のトレッドパターン552を形成するという2つの機能を果たす。
【0067】
図30は、外側被覆503の頂点が、どのようにして開口部521にフィットするかを示している、アウトソール構造500および外側被覆503の部分の側面斜視図である。外側被覆503は、薄く、柔軟性および弾力性のある材料から形成されているため、長手方向または横方向の張力を受けたときに、アウトソール構造501の広がりに適応するように容易に伸縮することができる。
図37は、ミッドソール層530と、アウトソール層531と、外側被覆503とを示す、ソール構造500の例示的な構造の一部の断面図である。
【0068】
図32〜
図38は、軽く、柔軟性があって快適なオーゼティック構造を有するソールを備えた履物製品600の別の実施形態を示す。この履物製品は、軽いジョギングやウォーキング用の靴として利用するのに適している。
図32に図示されているように、この実施形態は、オープンニットアッパー601と、オーゼティック構造で形成されたアウトソール602と、インソール603とを有している。
図32は、アウトソール602を形成している高分子材料が、履物のかかと630の後部631の周りで上方に湾曲して、かかとの後部において、追加的な補強、支持および保護をもたらしていることを示している。
【0069】
図33および
図34に図示されているように、アウトソール602は、それらの頂点623において、他の三角形の頂点に接合されている三角形622によって形成された、内側に凹んだ三角形開口部621から成るパターンを有している。この実施形態では、内側に凹んだ三角形開口部621のサイズは、アウトソール602の全面で比較的均一になっている。地面との衝突によって、履物600の一部が、長手方向または横方向の張力を受けたとき、アウトソールのその部分は、それら両方向に広がり、その結果、その衝撃が吸収され、および上述したようにトラクションが向上する。アウトソール602は、
図33〜
図35に示すオーゼティック構造を、合成ゴム、ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン材料中に成形することによって形成してもよい。
【0070】
図35は、履物製品600のかかと630の後部631の拡大図の模式図である。
図35に図示されているように、アッパー601のかかと630の後部631は、かかとの後部を強化するためにアウトソール602に用いられるオーゼティック構造で覆ってもよい。これは、ポリマーが浸透してアッパー601の材料と結合するように、アッパー601の布地にポリマーを外側被覆することによって作ってもよい。
図35に図示されているように、オーゼティック構造は、開口部の底部側に凹角を有し、そのため、オーゼティック構造は、長手方向の張力を受けたときに横方向に広がる。この効果は、着用者の足のかかとを覆って靴を引っ張ることを容易にする。
【0071】
図36および
図34に最も良く図示されているように、履物製品600の柔軟性は、アウトソール602の甲回り領域604におけるカーブアウト650によって高められている。カーブアウト650は、アウトソール602を、甲回り領域604における履物のちょうど内側側部までに制限し、それによって、足先に対するかかとの上方への湾曲に関する抵抗を少なくしている。この構造は、特に、ジョギングまたはウォーキング等の活動に適している、快適で、ストレスの少ない履物製品を実現する。
【0072】
図37は、この実施形態では、アッパー601が、縫製661によってインソール660に縫い付けられていることを示す模式図である。この場合、アウトソール602は、たとえば、接着剤を用いて、または、他の手段により、たとえば、融着、成形または縫製によって、インソール650の底部に取り付けることができる。
図38は、
図33に示されているような履物製品600の足先の一部にわたる断面図であり、インソール660と、開口部621と、アウトソール602と、任意的なミッドソール603とを示している。
【0073】
図39〜
図43は、たとえば、ランナーが履物で地面を連打する、舗装道路または室内トラック等の硬い面で走るためのランニングシューズとして用いることができる履物製品700の模式図である。この実施形態は、織物アッパー701と、硬い成形ゴムまたはポリウレタンアウトソール702とを有している。
【0074】
図40に図示されているように、アウトソール702は、三角形722がヒンジとして機能し、長手方向または横方向の張力に応答して、三角形722が互いに対して回転することを可能にするように、それらの頂点723で接合されているそれらの三角形722によって、内側に凹んだ三角形開口部721が形成されている、六角形パターン720から成るパターンを有している。アウトソールのいずれかの部分が地面または競技面にぶつかると、そのアウトソールの垂直方向の圧縮が、それらの三角形を、六角形パターンの中心に押し付け、すなわち、三角形の星形開口部が、それらの中心に向かってつぶれる。このことは、衝突の区域におけるアウトソールの密度を増加させて、衝撃力を減衰させる。アウトソール702におけるパターンは、そのパターンを形成するように、アウトソール材料を成形することにより、または、硬い材料から三角形の星形部分を切断することによって形成してもよい。
【0075】
この実施形態では、
図40に図示されているように、六角形パターンは、足のかかとからつま先まで、着用者のかかとの真下の一つの六角形の形状構成741および着用者の足の親指の付け根の下のいくつかの六角形パターン743に関して、ほぼ同じサイズを有している。
図41に最も良く図示されているように、アウトソール702は、着用者の足の親指の真下に、一つの六角形の形状構成742も有している。ソール702の内側部、外側部、前方部または後方部へ向かう六角形パターン720は、アウトソールから上方へ湾曲しており、外側被覆により、または、接着剤を用いることによって、アッパー701の布地に取り付けられている。
【0076】
図42に図示されているように、アッパー701のかかと730の後部731は、外側被覆されたかまたは他の方法で取り付けられた、頂点で接合された複数の三角形によって形成された、内側に凹んだ三角形開口部の六角形の形状構成を有する、硬いゴムか、または、ポリウレタンから成る部分750によって補強されている。履物が、着用者の足のかかとの上で引っ張られたとき、内側に凹んだ三角形開口部が横方向に広がり、履物が、着用者のかかとの上でより容易に滑ることを可能にしている。
図39および
図42は、ソール材料の一部を、アッパー701の布地に重ねて成形して、その下方縁部に対する補強および耐摩耗性を与えてもよいことを示している。
【0077】
図43は、
図40に図示されているようなひものすぐ前の足先における
図39の実施形態の模式的断面図である。この模式図は、開口部721が、弾力性のあるインナーソール703に取り付けられているアウターソール702を示している。アウターソール702は、接着剤、外側被覆または他の何らかの適当な手段を用いることによって、インナーソール703に取り付けてもよい。
【0078】
図44は、ランニング、または、他のスポーツまたは娯楽活動に用いることができる靴800の別の実施形態の模式図である。この靴は、大略的には、
図32に示す靴と同じであるが、ソール802をアッパー801に接続している、材料から成る追加的な周囲バンド810を有している。周囲バンド810は、ソール802およびアッパー801の全周囲に延びている。
図45は、そのかかと領域803における靴800の内部の図の模式図であり、縫製821を用いて、周囲バンド810の底縁部に取り付けられたインソール820を図示している。周囲バンド810の上縁部は、アッパー801の底縁部に取り付けられている。周囲バンド810をインソールおよびアッパーに取り付ける他の方法を用いてもよい。周囲バンド810は、ソール802とアッパー801とを分断することにより、履物800に追加的な柔軟性を与え、それによって、ソール802が、アッパー801によって拘束されることなく広がることを可能にしている。ミッドソールにおける開口部のパターン830は、インソール820の下で見ることができる。
【0079】
これらの図に示されているアウトソールおよびミッドソールに用いられるオーゼティック構造は、本願明細書に記載されているように、三角形または多角形の開口部と接合された三角形または多角形から成るパターンを有するように、従来のポリマー(たとえば、EVA、ゴム、ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン)を成形することによって製造することができる。また、その構造は、硬いポリマーシートを鋳造し、所望のパターンに切断してシートにすることによっても製造することができる。たとえば、
図4〜
図15に示すオーゼティック構造は、所望のパターンを有するようにポリマーを成形することによって作ってもよく、一方、
図16〜
図19に示すオーゼティック構造は、それらのパターンに切断してポリマーシートにすることによって作ってもよい。
【0080】
上述したソール構造のうちのいくつかでは、ソール全体がオーゼティック構造で形成されている。しかし、そのことは、すべての実施形態の場合の必須条件ではない。たとえば、実施形態は、ソールのかかと領域、中足領域および足先領域のうちのいずれか1つ、2つまたは3つに、またはソール全体に、上述したオーゼティック構造を用いてもよい。ソールは、単一のアウトソール層を有してもよい。あるいは、それは、アウトソールおよびインナーソールを、または、アウトソールと、ミッドソールと、インナーソールとを、または、外側被覆と、アウトソールと、ミッドソールと、インナーソールとを、または、上記のいずれかの組合せを有していてもよい。また、それは、一つの方向に張力を受けたときに、ソールが、その張力の方向に垂直な方向に広がるように、そのソールがオーゼティック構造を呈する限り、さらに多くの層を有していてもよい。
【0081】
上記の説明は、長手方向の張力を受けたときに、長さおよび幅の両方が増加し、また、横方向の張力を受けたときに、幅および長さの両方が増加する開口部を有しているヒンジ式三角形で形成された六角形パターンを用いたオーゼティック構造について説明した。それらの構造は、負のポアソン比を有する材料であるオーゼティック発泡材料を用いて形成することもでき、その結果生じる構造は、その固有の特性のため、および材料自体が固有にオーゼティックであるため、印加された張力に垂直な方向に広がる。
【0082】
本実施形態は、他のいくつかの種類のオーゼティック材料と比較して、かなりの厚さを有しているオーゼティック構造を描いている。大略的には、オーゼティック構造を備えるアウトソール等のオーゼティック構造の厚さは、変えることができる。いくつかの実施形態では、ソール構造の部分を形成しているオーゼティック構造は、1ミリメートル以上の厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態では、オーゼティック構造は、5ミリメートルより厚い厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、オーゼティック構造は、10ミリメートルより厚い厚さを有することができる。さらに他の実施形態では、オーゼティック構造は、10ミリメートルより厚い厚さを有することができる。さらに、オーゼティック構造の厚さは、クッション性や支持性等の所望の特性を実現するために選択することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、ソールにおけるオーゼティック構造の厚さは、そのオーゼティック構造によってもたらされるクッション性効果を高めるのに利用することができる。
図46および
図47は、一般的に、垂直方向に印加される可能性がある圧縮力が印加された場合に、一つ以上の開口部がどのように変化する可能性があるかを示している。アウトソールが圧縮されると、たとえば、アウトソールが地面にぶつかったとき、三角形は、そのそれぞれの三角形開口部の中心に向かってつぶれる傾向があり、それによって、衝撃の領域内の材料を増加させて、その衝撃をさらに和らげる。一方、アウトソールの一部が張力を受けたとき、たとえば、着用者が、彼または彼女の足先から押しのけたときに、アウトソールのその部分は横方向および長手方向に広がって、トラクションが向上する。
【0084】
図46を見て分かるように、圧縮力が印加されていない場合、(模式的に図示されている)アウトソール900の一部の開口部920は、当初は開いている可能性がある。しかし、
図47に図示されているように、圧縮力が印加されると、開口部920は閉じる可能性がある。このことは、一般的には、開口部920を取り囲んでいる三角形部分922が、圧縮力を受けたときに(質量保存により)サイズが膨張する傾向があるために起きる可能性がある。これによって、開口部920の内側への収縮が生じ、その開口部の開口サイズが小さくなる可能性があり、または、開口部は(
図40の場合のように)完全に閉じる可能性がある。具体的には、三角形部分922が、開口部920の中心へ押し付けられる可能性がある。
【0085】
さまざまな実施形態について説明してきたが、その説明は、限定的であるというよりも、例示的であることが意図されており、また、当業者には、それらの実施形態の範囲内にある多くの実施形態および実施態様が可能であることは明らかであろう。したがって、実施形態は、添付クレームおよびそれらの等価物の観点を除いて限定すべきではない。また、さまざまな変更および変形を、添付クレームの範囲内で行ってもよい。