(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明におけるリチウム電池は、以下で説明するリチウム電池用電極を備える。
【0010】
ここで、リチウム電池は、一般的に、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含む構造を有している。リチウム電池の典型的な態様は、正極板、負極板、セパレータ、電解液、及び外装材を含み、正極板と負極板とはセパレータを挟んで対向し、且つ、電池全体を電解液が満たしている構造を有する態様である。
【0011】
後述するように、本発明では、リチウム電池の正極及び/又は負極、例えば、上記正極板及び/又は上記負極板として、以下で説明する本発明のリチウム電池用電極が用いられる。本発明のリチウム電池用電極は、特に、正極、例えば、上記正極板として好適に用いることができる。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
〔リチウム電池用電極〕
本発明のリチウム電池用電極は、集電体(A)と、前記集電体(A)に接触し、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックを含む導電助剤(c)、及び窒素含有ポリマー(d)を含有する合材層(B)と、を備える。
【0014】
合材層(B)は、少なくとも、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、導電助剤(c)、及び窒素含有ポリマー(d)を含む。
また、上記リチウム電池用電極では、集電体(A)の少なくとも一部と、合材層(B)の少なくとも一部と、が接触している。
【0015】
本発明のリチウム電池用電極は、正極であっても負極であってもよい。
すなわち、本発明のリチウム電池用電極は、上記のリチウム電池において、正極板を構成してもよいし、あるいは、負極板を構成してもよい。
ただし、本発明の好適な態様の1つにおいて、本発明のリチウム電池用電極は正極として用いられる。この場合、上記のリチウム電池において、本発明のリチウム電池用電極は正極板を構成することになる。
【0016】
以下、本発明のリチウム電池用電極の各構成要素について説明する。
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも集電体(A)と合材層(B)とを備える。
【0017】
<集電体(A)>
集電体(A)としては、各種のものを使用することができるが、通常は金属や合金が用いられる。具体的には、正極の集電体としては、アルミニウムやニッケル、SUS等が挙げられ、負極の集電体としては、銅やニッケル、SUS等が挙げられる。
【0018】
<合材層(B)>
合材層(B)は、少なくとも、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、導電助剤(c)、及び窒素含有ポリマー(d)を含む。
合材層(B)は、活物質を含むことから、電極反応が起こる場として機能する。
【0019】
本発明のリチウム電池用電極は、正極及び負極のいずれにも用いうるものである。
すなわち、合材層(B)に含まれる活物質(a)が後述する正極活物質である場合、本発明のリチウム電池用電極は正極として機能し、正極板として用いることができる。一方、合材層(B)に含まれる活物質(a)が後述する負極活物質である場合、本発明のリチウム電池用電極は負極として機能し、負極板として用いることができる。
【0020】
ただ、本発明の好適な態様においては、本発明のリチウム電池用電極は、合材層を構成する活物質が正極活物質であるリチウム電池用電極であり、この場合正極として機能することから、正極板として用いられる。
【0021】
なお、本明細書において、合材層は、「電極合材層」とも呼ばれる場合がある。
【0022】
(活物質(a))
−正極活物質−
本発明のリチウム電池用電極が正極である場合、合材層(B)は、活物質(a)として、正極活物質(例えば、高電圧環境下においてリチウムイオンを吸蔵・放出可能である正極活物質)を含む。
正極活物質としては、MoS
2、TiS
2、MnO
2、V
2O
5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiNi
XCo
(1−X)O
2〔0<X<1〕、α−NaFeO
2型結晶構造を有するLi
1+αMe
1−αO
2(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1−α)≦1.6)、LiNi
xCo
yMn
zO
2〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2等)、LiFePO
4、LiMnPO
4等のリチウムと遷移金属とを含む複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とを含む複合酸化物が好ましい。
負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0023】
−負極活物質−
本発明のリチウム電池用電極が負極である場合、合材層(B)は、活物質(a)として負極活物質を含む。
負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
【0024】
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
【0025】
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。前記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0026】
前記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
【0027】
前記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。
人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。
また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。
また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0028】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
前記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm
3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0029】
なお、本明細書において、上記正極活物質と上記負極活物質を包括する概念として「活物質」なる表現が用いられることがある。
【0030】
(有機溶剤系バインダ(b))
有機溶剤系バインダ(b)としては、公知の有機溶剤系バインダを使用することができる。
有機溶剤系バインダとしては、たとえば、「最新リチウムイオン二次電池〜安全性向上及び高機能化に向けた材料開発〜」(235ページ、出版社 情報機構、出版年 2008)に記載のものが挙げられる。
有機溶剤系バインダ(b)としては、ポリフッ化ビニリデンが特に好ましい。
【0031】
(導電助剤(c))
導電助剤(c)は、少なくとも、一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックを含む。
導電助剤(c)が一次粒子の平均粒径が1μm以下のカーボンブラックを含むことで、合材層(B)が窒素含有ポリマー(d)を含有するにもかかわらず、リチウム電池の放電容量及び容量維持率の低下を抑制できる。
一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡などで測定することができる。
本明細書中、「平均粒径」は、数平均粒子径を意味する。
【0032】
上記一次粒子の平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
上記一次粒子の平均粒径の下限には特に制限はないが、一次粒子の平均粒径としては、20nm以上が好ましく、30nm以上が特に好ましい。
【0033】
一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックの市販品としては、例えば、SUPER P(ティムカル・グラファイト・アンド・カーボン社製)、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUERBLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)、フラーレン、等が挙げられる。
【0034】
導電助剤(c)は、「一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラック」以外のその他の導電助剤を含んでいてもよい。
ここでいう「その他の導電助剤」の概念には、一次粒子の平均粒径が1μmを超えるカーボンブラックも包含される。
その他の導電助剤としては、炭素材料が挙げられ、より具体的には、グラファイト、一次粒子の平均粒径が1μmを超えるカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の導電性炭素繊維、等が挙げられる。
導電助剤(c)に含まれ得るその他の導電助剤は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
グラファイトとしては、例えば、人造黒鉛や、燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
導電助剤(c)中に含まれる一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックの含有量は、導電助剤(c)の全量に対し、好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
導電助剤(c)中に含まれる一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックの含有量は、導電助剤(c)の全量に対して100質量%であってもよい。即ち、導電助剤(c)は、一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックのみからなるものであってもよい。
【0036】
(窒素含有ポリマー(d))
窒素含有ポリマー(d)は、アミン化合物、アミド化合物、イミド化合物、マレイミド化合物及びイミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(d−1)と、上記化合物(d−1)以外のジオン化合物(d−2)と、の反応生成物であるポリマーを含有することが好ましい。
【0037】
ここで、化合物(d−1)としては、マレイミド化合物が好ましい。
マレイミド化合物としては、一般式(1)〜(4)のいずれか1つで表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0042】
一般式(1)中、nは0以上の整数である。一般式(1)中、nは1から10が好ましい。
一般式(3)中、mは1以上1000以下の実数を表す。マレイミド化合物として、一般式(3)で表される化合物を用いる場合、一般式(3)中のmが異なる複数の化合物を用いてもよい。
【0043】
一般式(1)〜(3)中、Xは−O−、−SO
2−、−S−、−CO−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CR=CR−(Rは水素原子又はアルキル基)、又は単結合を表す。一般式(1)〜(3)中、一分子内に複数のXが存在するときは、複数のXは同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)〜(3)中、R
1は水素原子又は置換基を表す。一般式(1)〜(3)中、一分子内に複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよい。一般式(1)〜(3)中、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
一般式(4)中、R
4は側鎖を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基、−NR
3−、−C(O)CH
2−、−CH
2OCH
2−、−C(O)−、−O−、−O−O−、−S−、−S−S−,−S(O)−、−CH
2S(O)CH
2−、又は−SO
2−を表す。一般式(4)中、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
一般式(1)〜(3)中、R
1で表される置換基としては、ハロゲン原子又は炭化水素基が好ましい。
【0044】
化合物(d−1)としては、下記一般式(I)又は下記一般式(II)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のマレイミド化合物が特に好ましい。
また、化合物(d−1)としては、一般式(3)で表されるマレイミド化合物であって、mが1以上100以下であり、R
1およびR
2が水素原子であり、Xが−CH
2−である化合物も好ましい。
【0046】
一般式(I)中、R
1は、−CR
3R
4−、−NR
3−、−C(O)CH
2−、−CH
2OCH
2−、−C(O)−、−O−、−O−O−、−S−、−S−S−,−S(O)−、−CH
2S(O)CH
2−、−SO
2−、−C
6H
4−、−CH
2(C
6H
4)CH
2−、フェニレン、ジフェニレン、置換フェニレン、又は置換ジフェニレンを表す。
一般式(II)中、R
2は、−CR
3R
4−、−C(O)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−O−O−、−S−、−S−S−、−SO
2−、又は−S(O)−を表す。
なお、上記R
3及び上記R
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
また、R
1で表される置換フェニレンにおける置換基としては、ハロゲン原子又は炭化水素基が好ましい。
また、R
1で表される置換ジフェニレンにおける置換基としては、ハロゲン原子又は炭化水素基が好ましい。
【0047】
中でも、化合物(d−1)としては、以下の具体例から選ばれる少なくとも1種のビスマレイミド化合物が、特に好ましい。
即ち、特に好ましいビスマレイミド化合物の具体例は、
1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド、
N,N’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド、
N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、
1,1’−(3,3’−ジメチル1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド、
N,N’−エチレンジマレイミド、
N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド、
N,N’−(1,3−フェニレン)ジマレイミド、
N,N’−ケトンジマレイミド、
N,N’−メチレンビスマレイミド、
ビスマレイミドメチルエーテル、
1,2−ビス−(マレイミド)−1,2−エタンジオール、
N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、及び
4,4’−ビス(マレイミド)−ジフェニルスルホンである。
【0048】
また、ジオン化合物(d−2)としては、一般式(III)で表されるジオン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
一般式(III)で表されるジオン化合物は、バルビツール酸又はその誘導体である。
【0050】
一般式(III)中、R
5及びR
6は、同種又は異種の置換基を表す。
R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、又は2−ペンチル基であることが好ましい。
【0051】
(その他の成分)
合材層(B)には、上述した成分以外のその他の成分が含まれていてもよい。
例えば、合材層(B)が合材スラリーから形成される場合、合材層(B)には、合材スラリー由来の各種配合成分が含まれていてもよい。
合材スラリー由来の各種配合成分の例として、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤、等が挙げられる。各種配合成分の具体例は、次述する「合材層(B)の形成方法」の項に記載されている。
【0052】
(合材層(B)の形成方法)
合材層(B)は、例えば、合材スラリーを作製した後、集電体(A)上に上記合材スラリーを塗布し、乾燥することによって製造することができる。
より具体的には、合材層(B)は、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、導電助剤(c)、及び窒素含有ポリマー(d)を含む合材スラリーを集電体(A)上に塗布し、乾燥することにより製造することもできる。
また、合材層(B)は、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、及び導電助剤(c)を含む合材スラリーを集電体(A)上に塗布して塗膜を形成した後、この塗膜の表面上に、窒素含有ポリマー(d)を含む溶液を塗布し、乾燥することによって製造することもできる。後者の態様も、本発明に含まれる。
【0053】
合材スラリーは、溶剤を含むことが好ましい。
合材スラリーに含まれ得る溶剤としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンなどに代表される非プロトン性極性溶剤もしくはこれらの混合液を選択できる。
【0054】
合材スラリーは、増粘剤を含んでいてもよい。
増粘剤としては、電気化学セル用として用いられる公知のものを使用することができ、たとえば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールとの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;変性ポリアクリル酸;酸化スターチ;リン酸スターチ;カゼイン;各種変性デンプン;などが挙げられる。
【0055】
合材スラリーは、必要に応じ、添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を奏する限り、特に制限されない。添加剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤などが挙げられる。
【0056】
合材スラリーは、例えば、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、及び導電助剤(c)(及び、必要に応じ、窒素含有ポリマー(d)、溶剤等のその他の成分)を攪拌機に加え、攪拌することで作製することができる。
合材スラリーを作製する上で、攪拌機の種類に制限されない。
攪拌機の例としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサー、高速撹拌機などが挙げられる。
【0057】
集電体(A)上に合材スラリーを塗布し、乾燥する上で、塗布方法及び乾燥方法は特に限定されない。
塗布方法としては、例えば、スロット・ダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、又はグラビアコーティングなどの方法が挙げられる。
乾燥方法としては、温風、熱風、又は低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線などの乾燥法が挙げられる。乾燥時間及び乾燥温度については、特に限定されないが、乾燥時間は通常1〜30分であり、乾燥温度は通常40℃〜180℃である。
【0058】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法には特に制限はないが、上述した合材層(B)の形成方法によって集電体(A)上に合材層(B)を形成する工程を有する製造方法が好ましい。
かかる好ましい製造方法は、更に、上記合材層(B)を形成する工程の後、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により合材層(B)の空隙率を低くする工程を有することがより好ましい。
【0059】
〔リチウム電池〕
本発明のリチウム電池は、上述したリチウム電池用電極を備える。
より詳細には、本発明のリチウム電池は、正極及び負極を備え、正極及び負極の少なくとも一方として、上述したリチウム電池用電極を備える。
【0060】
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池であってもリチウム二次電池であってもよいが、リチウム二次電池であることが好ましい。
【0061】
リチウム電池は、一般的に、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含む。リチウム電池の典型的な態様は、正極板、負極板、セパレータ、電解液、及び外装材を含み、正極板と負極板とがセパレータを挟んで対向し、且つ、電池全体を電解液が満たしている態様である。
ここで、本発明のリチウム電池は、正極及び/又は負極、例えば、上記正極板及び/又は上記負極板の形で、上述したリチウム電池用電極を備える。
【0062】
本発明の特に好適な態様において、正極、例えば、上記正極板は、本発明のリチウム電池用電極のうち、活物質(a)として正極活物質を採用した電極である。
【0063】
<正極(正極板)>
本発明のリチウム電池において、正極、例えば、上記正極板として、上述した本発明のリチウム電池用電極が好適に用いられる。
この場合、本発明のリチウム電池は、活物質(a)として正極活物質を採用し、正極、例えば、上記正極板として機能する上述したリチウム電池用電極を備えることになる。
【0064】
<負極(負極板)>
本発明のリチウム電池において、負極、例えば、上記負極板として、従来公知の構成の負極(あるいは、負極板)を用いることができるし、上述した本発明に係るリチウム電池用電極を用いることもできる。
【0065】
一方、本発明に係るリチウム電池において、負極、例えば、上記負極板は、従来公知の構成を有するものであってもよい。この場合、負極、例えば、上記負極板は、例えば、負極活物質を含む合材スラリーを作成した後、集電体上に該合材スラリーを塗布して、乾燥することによって製造することができる。合材スラリーの調製、合材スラリーの塗布方法及び乾燥方法は、前述した「合材層(B)の形成方法」を参照できる。なお、合材スラリーの調製には、水系溶媒、ポリフッ化ビニリデンなどの非水系溶媒、等を用いることができる。また、合材スラリーは、(導電性)カーボンブラックなどの導電助剤を含んでいてもよい。
【0066】
<セパレータ>
上記セパレータとしては、例えば、(微)多孔性ポリエチレンフィルム、(微)多孔性ポリプロピレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリアニリンフィルム、ポリイミドフィルム、不織布、ポリエチレンテレフタラートフィルム、ポリスチレンセルロースフィルム、及び、これらを2つ以上組み合わせた多層複合構造体が挙げられる。
セパレータには、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされていてもよい。
また、リチウム電池において、負極板とセパレータの間に、耐熱性フィラーと接着剤とを含む多孔質耐熱層が存在していてもよい。
耐熱性フィラーとしては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、イットリアなどの無機酸化物;セラミックス;ガラス;などを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着剤としては、ポリフッ化ビニリデンなどの非水系バインダを含んだ非水系溶媒を用いることもできる。
上記の耐熱性フィラーと接着剤とを含む多孔質耐熱層において、耐熱性フィラー100質量部に対して、接着剤0.5〜20質量部(固形分換算)であることが好ましい。
【0067】
<電解液>
上記電解液としては、非水溶媒及び電解質を含む非水電解液が好ましい。
非水電解液に含有される非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。非水電解液に含有される非水溶媒は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
電解質としては、リチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)
2N・Li等が挙げられる。電解液に含有される電解質は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
電解液は、必要に応じて、一般的な添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
<外装材>
上記外装材としては、金属製の缶、例えば鉄、ステンレススチール、アルミニウムなどからなる缶が好ましい。また、外装材としては、極薄のアルミニウムを樹脂でラミネートしてなるフィルム状の袋を使用しても構わない。
外装材の形状は、円筒型、角型、薄型、コイン型など、どのような形状でも構わない。
【0069】
<リチウム電池の一例>
以下、
図1を参照しながら、本発明のリチウム電池の一例であるコイン型電池について説明する。
図1は、本発明のリチウム電池の一例であるコイン型電池の模式的断面図である。
図1に示すコイン型電池では、円盤状負極2、電解液を注入したセパレータ5、円盤状正極1、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板7、8が、この順序に積層された状態で、正極缶3(以下、「電池缶」ともいう)と封口板4(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶3と封口板4とはガスケット6を介してかしめ密封する。
【0070】
〔電気化学セル用ペースト〕
本発明の電気化学セル用ペーストは、活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、一次粒子の平均粒径が1μm以下であるカーボンブラックを含む導電助剤(c)、及び窒素含有ポリマー(d)を含有する。
電気化学セル用ペーストに含有される各成分の具体的な態様については、既に説明したとおりである。
本発明の電気化学セル用ペーストの好ましい態様は、「合材層(B)の形成方法」で説明した、「活物質(a)、有機溶剤系バインダ(b)、導電助剤(c)、及び窒素含有ポリマー(d)を含む合材スラリー」の好ましい態様と同様である。
即ち、本発明の電気化学セル用ペーストは、リチウム電池用電極の合材層(B)の作製に好適に用いられるものである。
更に、本発明の電気化学セル用ペーストは、リチウム電池以外の電気化学セルの電極の作製にも用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0072】
[実施例1〜5、比較例1]
以下の手順にて、リチウム二次電池を作製した。
【0073】
<負極の作製>
人造黒鉛100質量部、カルボキシメチルセルロース1.1質量部及びSBRラテックス1.5質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合材スラリーを調製した。
次に、この負極合材スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層とからなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10.8mg/cm
2であり、充填密度は1.3g/mLであった。
【0074】
<正極の作製>
LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2(90質量部)、ポリフッ化ビニリデン(2質量部)、以下のようにして製造したポリマー(X)溶液(固形分量0.5質量部に相当する量)、カーボンブラックとしてSUPER P(ティムカル・グラファイト・アンド・カーボン社の登録商標)(一次粒子の平均粒径40nm)、他の導電助剤としてグラファイトKS−6(ティムカル・グラファイト・アンド・カーボン社製)(一次粒子の平均粒径3μm)、及び溶媒としてのN−メチルピロリドンを混練し、ペースト状の正極合材スラリーを調製した。ここで、SUPER P及びKS−6は、それぞれ、下記表1に示した量(質量部)を用いた。
次に、この正極合材スラリーを厚さ20μmの帯状アルミニウム箔製の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は19.1〜19.8mg/cm
2であり、充填密度は2.96〜3.06g/mLであった。
ここで、ポリマー(X)は窒素含有ポリマー(d)の一例であり、ポリマー(X)溶液はポリマー(X)のNMP溶液である。
【0075】
−ポリマー(X)溶液の製造−
内容積190mLのSUSオートクレーブと攪拌子を十分に乾燥させた。
乾燥後のオートクレーブの容器内に、一般式(II)中のR
2が−CH
2−であるマレイミド化合物であるN,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業(株))(以下、単に「マレイミド」とする)5.82gと、一般式(III)中のR
5及びR
6がいずれも水素原子であるジオン化合物であるバルビツール酸(Ruicheng County Xinyu chemical plant社製)1.01gと、を入れた(マレイミド:バルビツール酸=2:1(mol))。
ここにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)129.82gを加え、容器を密閉した(総質量136.65g、固形分濃度5質量%、容器内の占有率70体積%)。密閉した容器に対し、容器内の圧力が5.0MPaとなるまで窒素ガスを導入し次いで容器内の圧力を常圧まで戻す操作を5回繰り返した。これにより容器内を窒素置換した。
次に、ヒートブロックにオートクレーブを設置し、120rpmで攪拌しながら内温が100℃になるよう加熱した。
内温が100℃に達した時点を反応開始点として、内温を100℃に保ったまま24時間撹拌を続けた。反応終了後、容器を冷却し、茶褐色のポリマー(X)溶液を得た。
【0076】
−ポリマー(X)溶液の分析−
得られたポリマー(X)溶液を、水(0.1質量%リン酸水溶液)/アセトニトリル混合系の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。
HPLCのサンプル溶液としては、ポリマー(X)溶液600mgと内部標準物質希釈溶液(N−フェニルスクシンイミド/アセトニトリル=10mg/g)800mgとの混合液を、アセトニトリルで体積50mLとなるまで希釈した溶液を用いた。
HPLCのカラムとしては、日本ウォーターズ株式会社の「Atlantis T3」(5μm、4.6×250mm)を使用した。
HPLCの溶離液としては、0.1質量%リン酸水溶液(以下、単に「水」とする)と、アセトニトリルと、を用いた。
HPLCのグラジエント条件は、体積比(水/アセトニトリル)を99/1から20/80まで25分間かけて連続的に変化させ、次いで体積比(水/アセトニトリル)20/80のまま10分間保持し、次いで3分間かけて体積比(水/アセトニトリル)を20/80から99/1まで変化させる条件とした。
検出器としては、株式会社島津製作所のUV検出器を用いた。検出波長は、分析開始から4.83分までは210nm、それ以降は230nmとした。
以上のHPLCの結果、マレイミド(25.5min)、バルビツール酸(4.6min)、及び内部標準物質(17.2min)がそれぞれ検出された。定量した結果、転化率は、それぞれ、マレイミド94mol%、バルビツール酸99mol%であった。これにより、上記ポリマー(X)溶液の製造では、マレイミドとバルビツール酸との反応生成物としてポリマー(X)が製造されたことが確認された。
【0077】
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:70(体積比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質であるLiPF
6を、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させ、非水電解液を得た。
【0078】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14.5mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いて、コイン状の電極(負極及び正極)を得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径16mmの円盤状に打ち抜きセパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、上記非水電解液40μLを注入してセパレータと正極と負極に含漬させた。
さらに、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封し、直径20mm、高さ3.2mmの
図1で示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、試験用電池と称する)を作製した。
得られたコイン型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。
【0079】
[評価方法]
<電池の抵抗特性:負荷特性と直流抵抗>
恒温槽内(25℃)において、上記コイン型電池を、電流値0.2C、CC−CVにて4.2Vまで充電してから電流値0.2CにてCC放電する工程を4回繰り返した。4回目のCC放電における放電容量を、後述する容量維持率の基準値とした。
ここで、「CC」は定電流(Constant Current)を意味し、「CV」は定電圧(Constant Voltage)を意味する(以下、同様である)。
次いで、充放電後のコイン型電池を、電流値0.2C、CC−CVにて4.2Vまで充電してから、電流値1CにてCC放電し、再度電流値0.2C、CC−CVにて4.2Vまで充電してから、電流値2CにてCC放電した。
上記電流1CにてCC放電した時の放電容量[mAhg
−1]、及び、上記電流2CにてCC放電した時の放電容量[mAhg
−1]を、それぞれ下記表1(放電容量[mAhg
−1]の「1C」及び「2C」)に示す。
更に、これらの放電容量(1C、2C)のそれぞれを、前述の「4回目のCC放電における放電容量」で割って100を乗じた値を、それぞれ、容量維持率[%](1C、2C)とした。結果を下記表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、一次粒子の平均粒径が1μm以下のカーボンブラックを用いた実施例1〜5は、一次粒子の平均粒径が1μm以下のカーボンブラックを用いていない比較例1よりも、容量維持率及び放電容量のいずれにおいても優れていた。
【0082】
日本国特許出願2014−201777の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。