特許第6346962号(P6346962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6346962-皮膚を水和させるための美容組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6346962
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】皮膚を水和させるための美容組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20180611BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20180611BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/37
   A61K8/42
   A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-562256(P2016-562256)
(86)(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公表番号】特表2017-511346(P2017-511346A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】US2015026738
(87)【国際公開番号】WO2015164291
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】61/982,884
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】クナル ヴィレンドラ グジラティ
(72)【発明者】
【氏名】吉見 直久
(72)【発明者】
【氏名】ステヴァン デイビッド ジョーンズ
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02033617(EP,A1)
【文献】 特開2006−176518(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116941(WO,A1)
【文献】 特開2012−012389(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/018547(WO,A1)
【文献】 特開2005−170941(JP,A)
【文献】 特開2009−132643(JP,A)
【文献】 特開2008−189623(JP,A)
【文献】 Hand and Nail Cream,Mintel GNPD,2014年 2月
【文献】 Sensitive Skin Hydratouch Calming Day Cream,Mintel GNPD,2011年 8月
【文献】 Repairing Lotion,Mintel GNPD,2013年 1月
【文献】 Whitening Extensive Moisture Ampoule,Mintel GNPD,2015年 9月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)2重量%〜10重量%グリセリンである湿潤剤と、
ii)1重量%〜20重量%イソステアリン酸イソステアリルである脂質二重層構造化剤と
iii)1重量%〜20重量%ヒドロキシエチル尿素であるカオトロピック剤と、
を含む、局所塗布に適した美容組成物。
【請求項2】
美容組成物の使用方法であって、処置を必要とする顔面皮膚表面に請求項1に記載の美容組成物を塗布する工程を含む、方法。
【請求項3】
皮膚の水和を高める方法であって、皮膚表面に請求項1に記載の美容組成物を塗布する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時の良好な感覚的体験を維持しながら、強化された水和力を提供するスキンケア組成物に関する。具体的には、湿潤剤、カオトロピック剤、及び脂質二重層構造化剤(lipid bilayer structurant)を含むスキンケア組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
消費者は、皮膚に塗布したときに、皮膚の状態を改善し、同時に望ましい触感体験を提供してくれるような、手、ボディ及び顔用のローション又はクリームを、長きにわたって待ち望んでいる。これに応えるため、皮膚に塗布したときに、十分な伸び、感触、潤滑性、及び吸収を呈するよう、長年にわたって数多くの美容組成物が処方されている。最近では、「乾燥肌用処方」として知られるような、乾燥肌状態を治療するよう処方された専用ローション及びクリームが消費者向けに発売されている。
【0003】
米国特許第4,389,418号に記述されている乾燥肌用処方は、閉塞性皮膚軟化剤としてワセリン又は鉱物油を、また湿潤剤としてグリセリンを使用している。閉塞性皮膚軟化剤は、角質層の上に水を通さないバリアを形成することにより皮膚からの水分喪失を物理的に防止又は低減させ、湿潤剤は、水分を化学的に引き付けて、角質層の外側表面及び上層にこれを保持し、これらによって、皮膚自体の全体的な含水量を増加させる。現在市場にある他の処方は、より多量のグリセリンを使用して、皮膚の水和特性を向上させている。
【0004】
上述の解決策は皮膚の水和を改善するのに有効であり得るが、皮膚への塗布時に良好な感触を提供するものではなく、典型的には、べたついた粘着性の感触をもたらす。よって、生体条件での水和効果及び消費者が知覚できるような水和効果を提供し、同時に、塗布時の組成物の感触を低下させないような組成物を開発するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,389,418号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
局所塗布に適した美容組成物が提供される。局所塗布に適した美容組成物であって、安全かつ有効な量の湿潤剤と、安全かつ有効な量のカオトロピック剤と、安全かつ有効な量の脂質二重層構造化剤とを含む、美容組成物。
【0007】
美容組成物の使用方法もまた、提供される。この方法は、処置を必要とする顔面皮膚表面に美容組成物を塗布する工程を含み、この美容組成物は、安全かつ有効な量の湿潤剤と、安全かつ有効な量のカオトロピック剤と、安全かつ有効な量の脂質二重層構造化剤とを含む。
【0008】
皮膚の水和を高める方法であって、この方法は、皮膚表面に局所用組成物を塗布する工程を含み、この組成物は、安全かつ有効な量の湿潤剤と、安全かつ有効な量のカオトロピック剤と、安全かつ有効な量の脂質二重層構造化剤とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書は特許請求の範囲をもって結論となすものであるが、以下の説明を添付図面と併せて考慮することで本発明のより深い理解が得られるものと考えられる。
図1】湿潤剤及びバリア構築剤の皮膚浸透における、カオトロピック剤の効果を示す模式図である。
図2】本発明の美容組成物を塗布した前腕皮膚で測定したコルネオメータ測定値のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別途記載のないかぎり、すべての百分率は組成物の重量を基準にした重量パーセントである。特に明記しないかぎり、すべての比は重量比である。すべての数値範囲は、より狭い範囲を含む。区切られた上下の範囲限界は互換性があり、明示的に区切られていない更なる範囲を作る。有効数字の数は、指示されている量を限定するものでもなく、測定の精度を限定するものでもない。すべての測定は、約25℃及び周囲条件で行われると理解され、ここで「周囲条件」とは、約1気圧及び相対湿度約50%という条件を意味する。
【0011】
本明細書で使用するとき、「美容組成物」は、哺乳類のケラチン性組織上への局所塗布に適した組成物を意味する。
【0012】
本明細書で使用するとき、「誘導体」とは、アミド、エーテル(esther)、エステル、アミノ、カルボキシル、アセチル、及び/又は所与の化合物のアルコール誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用するとき、「希釈剤」とは、湿潤剤、カオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤を分散、溶解、ないしは別の方法で組み込むことができる材料を指す。
【0014】
「安全かつ有効な量」とは、1つ又は2つ以上の生物学的効果を誘発するのに十分であるが、重篤な副作用(例えば、過度の毒性又はアレルギー反応)を避けるのに十分な少なさである量を意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、「湿潤剤」とは、皮膚に対して水分保持の効果をもたらす物質を意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「ケラチン性組織」とは、皮膚、毛髪、爪、角皮等を含むが、これらに限定されない哺乳類の最も外側の保護被覆として配置されるケラチン含有層を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、「塩」とは、これらに限定されないが、所与の化合物のナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マンガン、銅、及び/又はマグネシウム塩が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用するとき、「スキンケア活性物質」とは、皮膚に塗布したとき皮膚に利益又は改善をもたらす化合物を意味する。スキンケア活性物質は、肌への塗布に対してのみでなく、毛髪、爪、及びその他の哺乳類ケラチン性組織に対してもまた有用であると理解すべきである。
【0019】
スキンケア組成物は一般に、潤いと湿潤の効果を提供するために、湿潤剤を組み込んでいる。例えば、グリセリンは典型的に、潤いを向上させるために、種々のスキンケア活性物質と組み合わせて、スキンケア組成物中に見出される。近年では、異なるスキンケア組成物を用いて、皮膚に対する様々な長期的効果を改善することに重点が置かれている。しかしながら、より明白な使用中及び短期的な潤い又は水和の効果及び知覚を提供することについては、ほとんど注目されていない。皮膚の水和を改善する方法の1つは、スキンケア組成物中の湿潤剤の量を増やすことである。これは効果的ではあるものの、湿潤剤濃度を高めると、結果として得られる組成物を皮膚に塗布する際に粘着性となるか又はべたつく傾向があり、消費者にとっては不快な使用体験をもたらす傾向が強まる。ここで驚くべきことに、美容組成物中で、湿潤剤をカオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤と組み合わせることによって、湿潤剤を増加した場合の結果に匹敵する皮膚水和の相乗的改善が得られるが、これに伴って触感が悪くなる副作用は生じないことが判明した。
【0020】
美容組成物
本発明の美容組成物は、哺乳類ケラチン性組織、特にヒトの皮膚に塗布することができる。この美容組成物は様々な形態であり得る。例えば、非限定的な形態のいくつかの例としては、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、化粧水、スティック、ペンシル、スプレー、エアゾール、軟膏、クレンジング洗剤液及びクレンジング棒状固形物、シャンプー及びヘアコンディショナー、ペースト、フォーム、パウダー、ムース、髭剃りクリーム、拭き取り剤、ストリップ、パッチ、電動パッチ、創傷被覆材及び粘着性包帯、ヒドロゲル、フィルム形成製品、顔及び皮膚マスク、化粧品(例えばファンデーション、アイライナー、アイシャドウ)などが挙げられる。
【0021】
I.湿潤剤
湿潤剤は、水分子の水素結合と、皮膚の親水性分子官能性とに親和性を有しており、したがって、内部の水分子のみならず皮膚分子にも結合する。湿潤剤(例えばグリセリン)を含む美容製品の局所塗布は、バリア機能の改善、角化細胞の増殖及び創傷の治癒に伴うバイオマーカーの誘導、メラニン強度の低下、表皮の厚さの増大、及び一般的な皮膚の外観の改善を伴い得る。
【0022】
本発明における使用に適した湿潤剤の非限定的な例は、国際公開第98/22085号、同第98/18444号、及び同第97/01326号に記述されており、これには次のものが挙げられる:アミノ酸及びその誘導体(例えばプロリン及びアスパラギン酸アルギニン)、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール及び水とイモセミル抽出物、コラーゲンアミノ酸又はペプチド、クレアチニン、ジグリセロール、ビオサッカリドガム−1、グルカミン塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グリセリンのポリエチレングリコールエーテル(例えばグリセレス20)、グリセリン、グリセロールモノプロポキシレート、グリコーゲン、ヘキシレングリコール、蜂蜜、及びその抽出物又は誘導体、水素化でんぷん加水分解物、加水分解ムコ多糖、イノシトール、ケラチンアミノ酸、LAREX A−200(Larexから入手)、グリコサミノグリカン、メトキシPEG 10、メチルグルセス−10及び−20(両方ともAmerchol(Edison,NJ)から市販)、メチルグルコース、3−メチル−1,3−ブタンジオール、N−アセチルグルコサミン塩、ポリエチレングリコール及びその誘導体(例えばPEG 15ブタンジオール、PEG 4、PEG 5ペンタエリトリトール(pentaerythitol)、PEG 6、PEG 8、PEG 9)、ペンタエリトリトール(pentaerythitol)、1,2ペンタンジオール、PPG−1グリセリルエーテル、PPG−9,2−ピロリドン−5−カルボン酸及びその塩(例えばグリセリルpca)、異性化糖、SEACARE(Secmaから入手)、セリシン、シルクアミノ酸、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、ソルベス20、ソルベス6、糖及び糖アルコール並びにその誘導体(例えばグルコース、マンノース及びポリグリセロールソルビトール)、トレハロース、トリグリセロール、トリメチロールプロパン(trimethyolpropane)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、並びに酵母抽出物、並びにこれらの混合物。
【0023】
より好ましくは、本明細書で使用するための湿潤剤は、グリセリン、ジグリセリン、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、マルチトール、マンノース、イノシトール、トリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸(PCA)ナトリウム、PCA亜鉛、並びにこれらの誘導体及び混合物からなる群から選択される多価アルコールである。
【0024】
本組成物は、安全かつ有効な量の湿潤剤を含む。特に、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%又は5重量%〜8重量%、10重量%、20重量%又は30重量%の湿潤剤を含み得る。実施形態において、本組成物は2つ以上の異なる湿潤剤を含んでよく、例えば、本組成物はグリセリンとキシリトールとを含み得る。
【0025】
II.カオトロピック剤
カオトロピック剤は、例えばタンパク質及び核酸(例えばDNA及びRNA)などの水素結合による巨大分子の水素結合ネットワーク又は構造を壊し、その疎水性作用を弱めることによって分子を変性させる物質である。カオトロピック溶質は、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性作用などの非共有結合力により媒介される分子間相互作用を妨げることにより、系のエントロピーを増大させる。カオトロピック溶質は、タンパク質に隣接する水分子を乱雑にすることにより、(例えば脂質二重層中の)疎水性領域の全体的な疎水性作用を低下させる。これによって疎水性領域が溶液に可溶化され、これによってタンパク質が変性される。図1は、スキンケア組成物2中にカオトロピック剤8を含めた場合の皮膚にもたらされ得る影響を模式的に示す。具体的には、カオトロピック剤が、皮膚の角質層脂質二重層の上にある架橋したタンパク質層4の中の水素結合を変性させ、これにより、組成物のより多くの物質(例えば、スキンケア活性物質10、湿潤剤10など)が皮膚の表面層6の内部に入り込むことができるようになることが、図に示されている。
【0026】
疎水性相互作用を壊しタンパク質構造を変性させることが知られているカオトロピック剤の例としては、グアニジン塩酸塩(R1N−C(NR2)−NR3)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、尿素((R1N−C(O)−NR2)、並びにこれらの混合物及び誘導体、例えばヒドロキシエチル尿素が挙げられるが、これらに限定されない。カオトロピック剤を含む美容組成物を局所的に塗布すると、カオトロピック剤が分子(スキンケア活性物質、湿潤剤、及びその他の成分(例えば脂質二重層構造化剤)を含む)の経皮的浸透を促す。
【0027】
本組成物は、安全かつ有効な量のカオトロピック剤を含む。好ましくは本組成物は、約0.5重量%、1重量%、1.5重量%又は2重量%〜約3重量%、5重量%、10重量%又は20重量%のカオトロピック剤を含み得る。
【0028】
III.脂質二重層構造化剤
表皮の主な機能は、身体の保護バリアとして働き、生命維持に必要な水を保持し、病原体の侵入を防ぐことである。表皮自体は複数の層で構成され、その1つが角質層である。脂質二重層構造が乱され、組織化が弱まると、バリアとして効果的に機能するその能力が悪影響を受ける。
【0029】
本明細書では脂質二重層と好ましく相互作用し脂質二重層を包む脂質二重層構造化剤として知られる、そのバリア機能を高め、より良好な皮膚の水和につながる材料が存在することが見出されている。脂質二重層構造化剤は、脂質二重層を効果的に相互密着させ、表皮から水が移動(及び喪失)するのを防ぐ。
【0030】
脂質二重層構造化剤の例としては、バチルアルコール、モノオレイン酸グリセリル、イソステアリルグリセリルエーテル、イソステアリン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ヘキサデシルグリセリルエーテル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ミリスチル、パルミチン酸パルミチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソオクタデシル、イソオクタデカン酸イソへキサデシル、イソオクタデカン酸、2−ヒドロキシオクタデシルエステル、及びイソステアリン酸セチルグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、脂質二重層構造化剤はイソステアリン酸イソステアリルである。
【0031】
本組成物は、安全かつ有効な量の脂質二重層構造化剤を含む。例えば本組成物は、約0.5重量%、1重量%、1.5重量%又は2重量%〜3重量%、5重量%、10重量%又は20重量%の脂質二重層構造化剤を含み得る。湿潤剤、カオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤の含有による相乗効果を得るには、最小限の量の脂質二重層構造化剤が必要である。しかしながら、含まれる脂質二重層構造化剤が多すぎると、スキンケア活性物質及び湿潤剤の皮膚への初期浸透と、スキンケア活性物質及び湿潤剤の皮膚への全体的な浸透速度とを、阻害する可能性がある。
【0032】
IV.湿潤剤、カオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤の組み合わせ
驚くべきことに、1つ又は2つ以上の湿潤剤を、脂質二重層構造化剤及びカオトロピック剤と組み合わせることにより、皮膚の水和レベルを高めることが判明した。本発明者らは、カオトロピック剤が、皮膚の表面層に入り込む湿潤剤と脂質二重層構造化剤の量を増加させることを見出し、湿潤剤の濃度が増加することにより、皮膚表面層内に結合する水分の合計量が増加し、かつ、脂質二重層構造化剤が角質層内の脂質二重層を相互密着させて、経皮的な水の喪失を低減することを見出した。
【0033】
V.他の成分
この美容組成物は、1つ又は2つ以上のスキンケア活性物質を含んでよく、例えばナイアシンアミドなどのビタミンB3活性物質を含み得る。ナイアシンアミドの局所塗布は、様々な美容スキンケア効果に関連し得る。これらの効果としては、i)年齢に伴う皮膚中のニコチンアミド補酵素の欠乏の正常化、ii)表皮バリア効果を伴う表皮のセラミド合成の上昇、iii)紫外線を浴びることによって生じるダメージに対する保護、iv)メラニン細胞から角化細胞へのメラノソームの移動の阻害(これにより潜在的な皮膚のトーン効果が得られる)、及び皮脂腺の脂質生成の低下が挙げられる。よって特定の例において、加齢/光によりダメージを受けた皮膚の外観を改善するために、美容組成物中にナイアシンアミドを含めることが望ましい可能性がある。
【0034】
美容組成物はまた、皮膚科学的に許容可能な担体(単に「担体」とも呼ばれ得る)を含んでもよく、その担体の中に、湿潤剤、カオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤が組み込まれて、化合物及び任意のその他の成分が皮膚に送達されることを可能にする。担体は、1つ又は2つ以上の皮膚科学的に許容可能な固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、溶剤、増量剤構成成分、物質等を含有し得る。担体は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよい。担体は、多種多様な形態で提供され得る。非限定的な例のいくつかとしては、単純溶液、(水性又は油系)、エマルション、ムース(エアゾール、非エアゾール)、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、無定形物質)が挙げられる。
【0035】
担体は、1つ又は2つ以上の皮膚科学的に許容可能な親水性希釈剤を含有してよい。親水性希釈剤には、水と、有機親水性希釈剤とが挙げられ、例えば、低級一価アルコール(例えば、C1〜C4)、並びに、低分子量グリコール及びポリオール、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量200〜600g/モル)、ポリプロピレングリコール(例えば、分子量425〜2025g/モル)、グリセロール、ブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ソルビトールエステル、ブタンジオール、エーテルプロパノール、エトキシル化エーテル、プロポキシル化エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0036】
担体はまた、水中油型エマルション、油中水型エマルション、及びシリコーン中水型エマルション等のエマルションの形態であってもよい。エマルションは、一般に、連続水相(例えば、水中油型及び水中油中水型)、又は連続油相(例えば、油中水型及び油中水中油型)を有するとして分類され得る。油相は、シリコーンオイル、非シリコーンオイル(炭化水素油、エステル、エーテル等)、及びこれらの混合物を含み得る。水相は、上記で説明された溶液等の水を含んでもよい。しかしながら、他の実施形態において、水相は、水溶性湿潤剤、コンディショニング剤、抗菌剤、キレート剤、及び/又はその他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるがこれらに限定されない、水以外の構成成分を含み得る。エマルションはまた、担体の重量に基づいて、約1%〜約10%、又は約2%〜約5%の乳化剤を含有してもよい。乳化剤は、非イオン性であっても、アニオン性であっても、カチオン性であってもよい。いくつかの適切な乳化剤は、例えば、米国特許第3,755,560号(1973年8月28日発行、Dickertら)、米国特許第4,421,769号(1983年12月20日発行、Dixonら)、及びMcCutcheonの「Detergents and Emulsifiers,North American Edition」、p.317〜324(1986)に開示されている。
【0037】
多種多様な任意の構成成分/成分が、美容組成物の中に含まれ得る。例えば、美容組成物は、吸収剤、研磨材、固化防止剤、消泡剤、抗菌剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、充填剤、化学的添加剤、化粧殺生物剤、変性剤、化粧収斂剤、薬物収斂剤、外用鎮痛剤、被膜形成剤、湿潤剤、乳白剤、芳香剤、顔料、着色剤、精油、皮膚感覚剤、皮膚軟化剤、皮膚鎮静剤、皮膚回復剤、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防腐増強剤、推進剤、還元剤、追加的スキンコンディショニング剤、皮膚浸透増強剤、皮膚保護剤、溶剤、懸濁化剤、乳化剤、増粘剤、可溶化剤、日焼け止め剤、日焼け防止剤、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、サンレスタンニング剤、酸化防止剤及び/又はラジカルスカベンジャー、キレート剤、油分/皮脂制御剤、制汗剤、金属イオン封鎖剤、抗ニキビ剤、抗炎症薬、抗アンドロゲン剤、脱毛剤、落屑剤/剥離剤、有機ヒドロキシ酸、ビタミン及びその誘導体、並びに天然抽出物を含み得る。そのような他の材料は、当該技術分野では公知である。そのような材料の非排他的な例は、「Harry’s Cosmeticology」、第7版、Harry & Wilkinson(Hill Publishers,London 1982),「Pharmaceutical Dosage Forms−−Disperse Systems」Lieberman,Rieger & Banker、第1巻(1988)及び第2巻(1989)、Marcel Decker,Inc.、「The Chemistry and Manufacture of Cosmetics」第2版、deNavarre(Van Nostrand 1962〜1965)、並びに「The Handbook of Cosmetic Science and Technology」第1版、Knowlton & Pearce(Elsevier 1993)に記述されている。
【0038】
様々な化粧処置を採用することができる。最も関心のある皮膚表面は、顔面皮膚表面、手及び腕の皮膚表面、足及び脚の皮膚表面、並びに首及び胸の皮膚表面、並びに頭皮等、一般的に衣服で覆われない皮膚表面である傾向がある。特に、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻、及び/又は頬の皮膚表面を含む、顔面皮膚及び頭皮の表面は、本明細書で説明する美容組成物で処置され得る。
【0039】
処置方法は、美容組成物を、あらかじめ識別された処置を必要とする皮膚の領域に塗布する工程、あるいは年齢によるしみの外観を防ぐ、処置する、若しくは減らすことを求める、及び/又は皮膚トーンの均一性を改善することを求める領域に塗布する工程、を含み得る。美容組成物を塗布するための多くの処方計画が存在する。美容組成物は、処置期間中、少なくとも1日1回、1日2回、又は1日により頻繁に塗布されてよい。1日2回塗布する場合、1回目と2回目の塗布は、少なくとも1〜12時間の間隔をあける。一般に、美容組成物は、朝及び/又は夜の就寝前に塗布され得る。
【0040】
処置期間は、年齢によるしみの外観又は皮膚トーンの均一性に改善をもたらすのに十分な時間が理想的である。処置期間は、少なくとも約1週間であってもよく、いくつかの実施形態において、処置期間は、少なくとも約4週間、8週間、又は12週間継続してもよい。特定の実施形態において、処置期間は、数ヶ月(すなわち3〜12ヶ月)又は数年間に及ぶ。一実施形態において、美容組成物は、少なくとも4週間、8週間、又は12週間の処置期間中、少なくとも1日に1回塗布される。一実施形態において、美容組成物は、少なくとも4週間、8週間、又は12週間の処置期間中、1日に2回塗布される。
【0041】
美容組成物の使用方法は、処置を必要とする顔面皮膚表面に本発明の美容組成物を塗布する工程を含み得る。更に、皮膚の水和を高める方法は、皮膚表面に本発明の美容組成物を局所塗布する工程を含み得る。
【実施例】
【0042】
本発明には多くの変形が可能であるため、以下の実施例はあくまで説明のみを目的として記載されるものであり、本発明を限定とするものとして解釈されるべきではない。下記の測定値はすべて、合組成物に対する重量%である。
【0043】
【表1】
【0044】
試験はすべて、制御温度制御湿度条件(25℃、相対湿度50%)で、男性及び女性の前腕皮膚において実施された。前腕試験部位を水道水(pH6〜9、周囲温度)で15秒間洗い、ティッシュペーパーを用いて(そっと押さえて)乾かした。20分後、基準となるコルネオメータ測定値を読み取り、既知の量(25μL)のサンプル組成物を試験部位(12cm2)の上に分与し、指サックを用いて拡げた。塗布から10分後、各官能試験員のテスト部位につき5ヶ所の異なる位置で、コルネオメータ(Corneometerモデル番号C825、Courage+Kazaka(登録商標)から市販)の測定値を読み取った。各官能試験員について5つの異なるコルネオメータ測定値の平均を計算した。これを下記の結果の表に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
上記の実施例1〜4はそれぞれ、湿潤剤、カオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤の異なる組み合わせを含む。実施例1は、グリセリン5%を含む。実施例2は、グリセリン5%及びISIS(脂質二重層構造化剤)2%を含む。実施例3は、グリセリン5%及びヒドロキシエチル尿素(カオトロピック剤)2%を含む。実施例4は、グリセリン5%、ヒドロキシエチル尿素2%及びISIS 2%を含む。実施例2及び3を実施例1と比較すると、コルネオメータを用いて測定したときに、表皮水分量が増加していることがわかる。これに対して、実施例4に注目すると、他のすべての実施例に比べて表皮水分量が顕著に増加していることがわかる。更に、実施例4をサンプル1と比べたときの表皮水分量の増加は、実施例2及び3を実施例1と比べたときの増加の合計よりも大きいことがわかる。これは、組成物中にカオトロピック剤及び脂質二重層構造化剤を湿潤剤と一緒に組み込んだ場合の、予想外の相乗効果を示している。
【0047】
本明細書で開示する寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるとして理解されるべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、そのような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0048】
相互参照される又は関連するすべての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本願に引用されるすべての文書は、除外すること又は限定することを明言しないかぎりにおいて、参照によりその全容にわたって本願に援用するものである。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の任意の参照文献との任意の組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書における用語のいずれかの意味又は定義が、援用文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する場合には、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が優先するものとする。
【0049】
本発明の特定の実施形態を図示、説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び改変を行い得ることは当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるこうした変更及び改変のすべてを、添付の特許請求の範囲において網羅するものとする。
図1
図2