【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、請求項1の各特徴によるトリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部によって解決される。さらに、前記課題は、請求項9による(本発明の)内側ジョイント部用のローラ要素によっても解決される。本発明のさらに有利な設計態様及び上位の機能的グループは従属項に示されている。各請求項に個々に列挙される特徴は、技術的に有意な方法で相互に組み合わされてもよく、また、本説明からの事例の例示的な事実によって補完されてもよく、それにより本発明の更なるさまざまな実施形態が実証されうる。
そのためには、回転軸と三つの突部とを有するハブを備える、トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部であって、該突部は、半径方向にハブから外側に延在し、ハブに隣接する移行領域と軸受け領域とを有する、内側ジョイント部を提案する。各突部は、長手方向軸と、軸受け領域において冠形周面とを有する。内側ジョイント部は第一平面を有し、第一平面は、突部の全ての長手方向軸を備え、回転軸と垂直になるように定義される。各突部の冠形周面は、第一平面にある第一表面線を形成し、長手方向軸に沿った高さにおいて突部の最大直径があり、内球半径を有する内球が予め定義され、内球の中心点は当該高さの地点で長手方向軸上にあり、内球は、第一表面線の対向する接点と接触する。各突部の第一表面線は、いずれの場合もそれぞれの接点と隣接しつつ内球の外側にある少なくとも第一角度範囲にあり、第一角度範囲は、内球の中心点から発出し、いずれの場合もそれぞれの接点の両側に最大20度の角度まで、特にいずれの場合も最大10度の角度まで延在する。各突部の冠形周面の第二表面線は第二平面にあり、第二平面は、第一平面と垂直になるように配置され、それぞれの突部の長手方向軸を含んでいる。さらに、第二表面線は、接触点において突部の最大直径の高さでのみ内球と接触し、いずれの場合もそれぞれの接触点と隣接しつつ内球内にある少なくとも第二角度範囲にわたり、各第二角度範囲は、内球の中心点から発出し、いずれの場合もそれぞれの接触点の両側に最大30度の角度まで、特にいずれの場合も最大20度の角度まで延在する。
【0006】
トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部の基本的な構成は既知であることが想定され、該構成においては、ハブは、特にシャフト(回転軸を中心に回転する)を受容できるため、供給されたトルクを外側ジョイント部に突部を介して伝達でき、又は、その逆も可能である。各突部は、当業者に容易に明らかである機能的な領域を有し、一般的には、さらに外側で軸受け領域と隣接する前に、半径方向にハブから延在する移行領域が設けられ、該軸受け領域の冠形周面は、その上に嵌合されるローラ要素のための摺接面を表す。該周面は、ほとんどの場合球形状ではなく、冠形になるように具体化される。長手方向軸と垂直になるように、或いは、端面のベクトルの曲率半径が、長手方向軸周りに配置されて開き角度が30度から60度である円錐に配されるように成形されることを特徴とする端面は、突部の径方向の末端を形成してもよい。
【0007】
各突部の各長手方向軸は、内側ジョイント部の回転軸に対して垂直となるように位置する共通平面にあり、ここでは、該平面を「第一平面」とする。次に第一平面において突部を通る部分を見ると、周面の外形は、「第一表面線(surface line)」(第一平面における突部の表面線)を構成する。軸受け領域における当該第一表面線は、内側ジョイント部の周方向における力の伝達が該第一表面線を介して行われるので、機能的に重要である。それゆえ、この表面線は、明確に定められた内球半径を有する内球を画定するものともみなされる。そのためには、長手方向軸と垂直である最大直径(値という点では)を有する突部の高さは、まず軸受け領域内に特定されなければならない。ここで、当該最大高さとは、すなわち、半径方向に最も外側に位置する突部の最大直径を想定する。当該高さにおいて最大直径を画定する第一表面線の対向する部分の各点は、したがって(それぞれ仮想的又は数学的な)内球の各接点であり、内球の中心点は長手方向軸上に位置し、内球半径は、長手方向軸の高さにおける突部の最大直径の半分に相当する。突部の外形を説明するためにここで参照される内球は、本明細書で提案される実施形態に相応して異なる突部の球形状との比較に役立つ。
【0008】
特に、第一平面における最大直径は、第二平面における突部の最大直径よりも若干小さく(0.01から0.1ミリメートルの範囲)なるように異なっていてもよく、それにより第三平面において突部を通る断面はわずかに楕円状に成形され、当該第三平面は、各突部の長手方向軸だけでなく第一平面とも垂直になるように配向される。
【0009】
第一平面における内球の外形の輪郭とこれらの接点に隣接する第一表面線の輪郭とを比較すると、それぞれ、第一表面線は湾曲が少なく、又は内球の外側に延在している(長手方向軸からの距離がより遠い)ことが分かる。この判別は、対応する各第一角度範囲(第一表面線を基準とする角度範囲)のために行われるべきであり、第一角度範囲の各値は、特に設計態様を目的として、長手方向軸の方向(半径方向)に最大直径を有する高さの上下において異なっていてもよい。このように、当該高さの下の第一角度範囲を当該高さの上の第一角度範囲より大きく、又は同等、或いはそれより小さくなるように具体化することができる。両方の第一角度範囲が最大である場合、いずれも20度ずつの角度を含むことになり、合計で40度となる。一方の第一角度範囲が最小で、他方の第一角度範囲が最大である場合、一つの第一角度範囲(一つの接点の上又は下)は、20度に亘ってのみ延在し、他方側に向かっては(相応して同じ接点の下又は上)上記の条件は満たされなくてよい。しかしながら、第一表面線は、少なくとも一方側においてさらに外側に位置し、特に、接点の両側においては角度が2度の(最小の)第一角度範囲にわたって、特に少なくとも5度の第一角度範囲にわたっていることは明らかである。
【0010】
従って、第一表面線の輪郭は球状とは異なり、特に第一平面においては、第一平面における内球の断面円の輪郭よりも平坦に延在する。トリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部と外側ジョイント部との間の周方向力は、主に当該第一平面に伝達される。第一表面線が平坦であるため、軸受け領域の突部表面とローラ要素の内周面との間の接触は、より密着することになる。また、第一表面線が平坦であるため、(第一平面における)トリポード型等速ジョイントの力の第1の方向におけるヘルツ接触応力をかなり低減することができる。このように、当該トリポード型等速ジョイントによって比較的大きな力を伝達できるため、既知のトリポード型等速ジョイントにおける場合よりも最大直径の値が著しく小さい突部も具現化できる。そのため、比較的小さいローラ要素を使用することができ、その結果として外側ジョイント部の外形寸法を縮小することができる。ローラ要素と突部との間がより密着して接触することにより、特に、外側ジョイント部に対する内側ジョイント部の偏向角度が16度を超える場合、等速ジョイントのNVH(noise、 vibration、 harshness=騒音、振動、乗り心地)特性も改善される。そのように偏向角度が大きい場合、3次の周期的軸力(cyclical axial force of the 3
rd order)に起因するいわゆる「横揺れ(shuddering)」又は「起動時のぐらつき(start-up wobbling)」が動作中に既知の各ジョイントに発生することは明らかである。
【0011】
第一平面に対して90度オフセットする一つ/個々の突部の長手方向軸を通る部分においては、明細書中で「第二表面線」(第二平面における表面線)と称する冠形周面の対応する外形を特定できる。これにより、輪郭は、再び同じ内球と、すなわち第二平面における(特に長手方向軸の同じ高さでの)内球の断面線と比較される。ここでは、長手方向軸に関して互いに対向する二つの点で内球も第二表面線に接触し、該二つの点はここでは接触点と称される。したがって、第二表面線の各接触点及び第一表面線の各接点(だけ)は、内球の共通の円上にある。第二平面における内球の外形の輪郭と接触点に近接する第二表面線とを比較すると、第二表面線の方がより大きく湾曲し、或いは(長手方向軸からの距離がより短い)内球の内側を通ることが分かる。当該判別は、対応する第二角度範囲(第二表面線を参照する角度範囲)にとって必須であり、該第二角度範囲の各値は、特に設計態様のために、長手方向軸の方向において最大直径である高さの上及び下で異なっていてもよい。この点に関して第一角度範囲に関する対応説明を行ったが、本明細書において当該説明は第二角度範囲にも同様に適用される。
【0012】
内球の内側を通る第二表面線の第二平面における輪郭により、特に小さい遊びをローラ要素と突部との間で調整できるようにするため、第二平面におけるローラ要素の中心は、ジョイントの偏向時に突部に関して変位可能となる。ジョイントが偏向し、突部に対するローラ要素の傾動が実行されるときに、この起こり得る変位によって第一表面線の領域における突部とローラ要素との間の妨害の発生を回避できる。この起こり得る妨害とは、ここでは大きな第一曲率半径によって(或いは、それぞれ直線によって)形成される第一表面線の輪郭によるものである。それゆえ、ローラ要素の内周面との複数の接点が第一表面線の領域において突部の片側に構成されることによって、妨害が起こり得る。次に第二表面線の輪郭は、確実に突部とローラ要素との間の変位を可能にし、それによって妨害を積極的に防止する。
【0013】
特に、第二表面線の輪郭により、ジョイントが偏向する際に、突部の第二表面線とローラ要素との間の接触が突部の片側にだけ発生することを可能にする。これは、内球半径より小さいローラ要素との接触領域における特に突部半径にまで遡ることである。このように、偏向角度が大きい場合のローラ要素の中心(ローラ要素の中心点)は、突部の中間点に関して、また、第二平面に沿って変位することができる。それにより、大きい偏向角度において妨害が発生することなく、ローラ要素と突部との間(第一表面線の領域における)の遊びを最小限にできる。
【0014】
特に、第二表面線と第一表面線との間の、突部のそれぞれの長手方向軸を中心とする周方向への移行は連続的である。ここでの連続的の意味は、表面線の外形又は周面上それぞれに急激な変化がないことである。
【0015】
特に、突部は、長手方向軸を中心に回転対称である周面を有していない。第一平面における第一表面線の輪郭(力の第1の方向)は、特に内球との接点或いは接触点にそれぞれ近接する第二平面における第二表面線の輪郭とは異なる。第一表面線及び第二表面線は、いずれの場合も動作中にさまざまな応力に適応する。動作中に、第一平面の領域に配置された突部の周面のそれらの領域によって周方向力の大半は伝達される。等速ジョイントの軸方向に作用する(非常に低い)力は、第二平面に配置された突部の周面のそれらの領域を介して伝達される。こうした軸方向に作用する力により、内側ジョイント部は、外側ジョイント部に対して軸方向にずらされる。
【0016】
特に、軸受け領域における第一表面線は、少なくとも接点で最大となる第一曲率半径を有する。当該最大第一曲率半径(値の点で)を用いることにより、内球に対する第一表面線の(ずれている)輪郭がここで画定される。内球は、第一表面線の第一曲率半径よりも(かなり)小さい突部の最大直径又は最大内球半径をそれぞれ有する。このことを特に少なくとも接点に近接する第一角度範囲及び/又は接点自体に適用する。
【0017】
特に、接点における第一曲率半径(eKRmax)の値の内球半径(IKR)の値に対する比(V1)は、少なくとも50である(V1=eKRmax/IKR≧50)。当該比は、100から1000の範囲にあることが好ましい(100≦V1≦1000)。この場合、既に上述された接触は、特に好適に実現される。
【0018】
第一曲率半径を大きくすることは、ローラ要素と突部との間の接触圧を対応する方法(好適な接触)で軽減する。ここでは、50から1000の範囲の各値によって、妨害のない必要な遊びとその結果として生じる低い接触圧(ヘルツ接触応力)との間に好適な妥協が可能となる。
【0019】
特に有利な一実施形態によると、各突部の第一表面線は、各接点において、また、いずれの場合も接点に隣接する第一角度範囲において直線として具体化され、第一角度範囲は、内球の中心点から発出し、少なくとも片側において2度から20度の角度で接点と隣接するように延在する。
【0020】
従って、特に第一表面線は、第一角度範囲内に存在する部分にわたって直線の部分(第一曲率半径が非常に大きい)のように延在し、当該直線の部分は、必ず接点の両側に及び/又は接点の両側に均一に構成される必要はない。むしろ、角度が2度から20度の部分が含まれれば十分であり、直線の部分は、特に角度が5度から20度(特に好ましくは5度から10度)にわたって、また、接点を超えて延在することがさらに好ましい。直線の部分、或いは第一角度範囲は、それぞれここでは(大部分が又は実際に)接点の上(すなわち突部の端面に向かって)になるように構成されることがさらに好ましい。 特に、第一表面線は、第一角度範囲の外側で内球と交差でき、その後で内球の内側を進むことができる。
【0021】
特に、第一表面線の領域の第三平面における各突部の周面は、第一曲率半径によって形成される。さらに、第三平面及び、突部の第一平面と各第二平面との間の第四角度範囲における各突部の周面は、連続的に変動する第二曲率半径によって形成される。
【0022】
特に有利なさらなる一実施形態によると、移行領域における各突部は、突部の長手方向軸を中心に周方向に値が変動する移行半径を構成し、移行半径の値は、第一平面において最大になり、周方向において最小になり、第一平面に対して90度オフセットする。移行領域は、一般的に軸受け領域に対して幅が漸減するように構成され、移行領域の各領域ではそれぞれ事実上材料を取り外してもよいことが事前に定義され、それにより高負荷伝導及び耐久性を同時に提供しつつ、軽量化の点でより良い結果が得られる。 特に、最大値と最小値との間の移行半径(transition radius)は連続的に変化し、すなわち、周方向に急激に移行することはない。特に各突部の第二平面において最小値となる突部の外周にわたる移行半径の当該設計態様により、トリポード型等速ジョイントが偏向する場合にローラ要素の一部が入り込む突部の逃げ溝及び/又は切り欠きを設けることができ、偏向角度が大きい場合であっても、ローラ要素と内側ジョイント部との間の衝突を回避できる。そのため、トリポード型ジョイントの外径(すなわち外側ジョイント部の外径)を拡大することなく、外側ジョイント部に対する内側ジョイント部の偏向角度も比較的大きくできる。
【0023】
特に、記載された切り欠きよって、同等の機能を有するトリポード型ジョイントの外径を5%まで縮小することができる。
【0024】
任意に、各突部の第二平面における当該移行の外形は、移行半径によってほぼ定義されるだけである。当該移行領域における突部の外形は、任意で角張っている及び/又は複数の異なる半径を有していてもよい。当業者は、ここでは、対応する方法で当該教示を容易に適用できる。
【0025】
特に、移行半径(URmax)の最大値の移行半径(URmin)の最小値に対する比(V2)は、5から10の範囲にある(V2=URmax/URmin;5≦V2≦10)。特に、この比は、8から10の範囲内にある(8≦V2≦10)。
【0026】
特に、最大限に可能な移行半径は、最も高い曲げ応力が発生する点に設けられる。比較的大きい移行半径は、切欠き応力(notch stressing)を最小化する。上限は、組み立てサイズ、ジョイントの最大偏向角度、及びローラ要素の強度の最適化に起因する。
【0027】
特に、移行領域の高さ、すなわち傾斜されるローラ要素のために突部上に実装される最大の機能的領域の高さを最小にするために、最小移行半径が力の導入領域と直交するように設けられる。当該導入領域とは、ここでは第二平面の領域を意味する。
接点とハブとの間の領域における各突部の第一表面線は、突部の長手方向軸から少なくとも内球半径に相当する間隔を有することがさらに提案される。すなわち、これは、特に接点とハブとの間の領域(特に少なくとも移行領域内の一部(のみ))の突部の第一表面線が、突部の長手方向軸から、内球半径に略相当する間隔を有することを意味する。 特に、接点から発出してハブに向かう第一表面線は、それゆえ突部の長手方向軸と平行に延在する直線の形で進む。
【0028】
本発明のさらなる一態様によると、本明細書で検討された内側ジョイント部と任意で組み合わせ可能なトリポード型等速ジョイントのローラ要素が提案される。
トリポード型等速ジョイントのローラ要素は、中心と、外周面と、中心軸を中心に回転対称となるように構成される凸形状の内周面とを有する。さらに、ローラ要素の中心軸を含み、凸状内周面の輪郭線を画定する正中面がある。輪郭線は、中心を通って正中面と垂直になるように配置された中央面に近い中央領域において最大の値となる輪郭線半径を構成し、該輪郭線半径の値は、隣接領域において小さくなる。
【0029】
そのような各ローラ要素の原則的な構成は、当業者に既知である。一般的に、そのようなローラ要素は内側軌道輪と外側軌道輪とを備え、針状のローラ要素がその間に中間配置される。ここでは、凸形状の内周面は、一般的に内側軌道輪によって形成され、外周面は、外側軌道輪によって形成される。内側軌道輪は開口を有し、該開口は、ローラ要素が関連するトリポード型等速ジョイントの突部に押し嵌められるように、また、その上に設けられた軸受面と相互に作用できるように設計される。 一般的に、ここでは、中心軸はローラ要素の回転軸を表すので、中心も当該回転軸上にある。ローラ要素と同心上で交差し、正中面に対して垂直である(中心軸を囲む)中央面は、中心を通って延在する。
【0030】
特に、内周面又は輪郭線は、それぞれ、凹部又は直線部分(又はその組み合わせ)を介してこの凸状部の外側に続く。
トリポード型等速ジョイントの動作中、特に凸形状の内周面の各領域は、両方とも(すなわち、中央領域及び比較的小さい輪郭線半径を有する隣接領域)突部の周面と接触してもよい。ローラ要素の内周面の形状により、特に、一般的に偏向角度が小さい場合に頻発する高負荷を接触が良好な中央領域を経由して伝達することが可能となる。通常、偏向角度が比較的大きい場合に生じる低負荷は、隣接領域において幾分不十分な接触によって伝達される。凸状内周面のこの特別な形状により、特に、ローラ要素と突部との間の接触を個々の負荷状況に適合させることができ、同時に、ローラ要素と突部との間のわずかな遊びを実装できる。その結果、ローラ要素が突部上で引っかかる危険性は存在しなくなる。
【0031】
特に、最大の輪郭線半径値(VLRmax)とそれより小さい輪郭線半径値(VLRred)との比(V3)は、少なくとも2である(V3=VLRmax/VLRred;V3≧2)。特に非常に好ましいのは、当該比が3から6の範囲(3≦V3≦6)にあることである。
【0032】
突部上のローラ要素の接触圧と遊びと傾き性能との好適な妥協は、ここでは上記の制限内でもたらされることを実証してきた。
【0033】
さらに有利な一実施形態によると、中央領域は中心から発出する第三角度範囲を備え、第三角度範囲は、中央面を越えてその両側に最小で1度及び最大で6度の角度で延在する。第三角度範囲の非常に好適な制限は、±1.5度から±2.5度(すなわち、中央面の上下で面対称)である。全体的に見れば、第三角度範囲は、2度から12度、特に3度から5度の角度から成ることが好ましい。特に、いずれの場合もより小さい輪郭半径によって形成される内周面の輪郭線は、中心から両側に(すなわち、中央面の上下で面対称)発出するように、それぞれ(より広い)角度範囲にわたって延在し、それによって±1度から±6度、特に±1.5度から±2.5度の第三角度範囲にいずれも隣接するようにする。
【0034】
第三角度範囲の前記値及び更なる角度範囲は、それぞれ、6度又は10度までのジョイント偏向角度(トリポード型等速ジョイントの耐用年数に対する負荷範囲内のヘルツ接触応力)にとって特に有利であり、同時にローラ要素の傾き性能、すなわち10度までの傾斜角度範囲(外側ジョイント部における隙間の中央面に対する角度)を考慮する。
【0035】
ローラ要素は特に凸形状であり、冠形の外周面を有し、該ローラ要素は、外側ジョイント部に対して外側ジョイント部の案内軌道(隙間)内で共に傾動可能である。
【0036】
本発明は、さらに、本明細書に記載の内側ジョイント部と、各突部上に回転可能に装着された本発明によるローラ要素と、いずれの場合も一つのローラ要素を軸方向に沿って案内するための軸方向に延在する隙間を有する外側ジョイント部とを少なくとも備えるトリポード型等速ジョイントに関する。ここでは、動作中にローラ要素の凸状内周面と接触する各突部の第二表面線の対向部分は、いずれも外形円の一つの線分を形成し、線分の円中心は、いずれも突部の長手方向軸から距離を空けて配置され、当該距離の内球半径に対する比は0.02から0.38の値で適用されることを提供する。
【0037】
換言すると、これは、第二表面線の対向部分(特に各接点を越える部分)は円弧線分で成形されることを意味し、当該円弧線分は、ここでは特に突部の長手方向軸に対して鏡面対称となるように構成される。その上に重畳される、いわゆる外形円は第二平面に複数形成されてもよく、当該各外形円の中心は長手方向軸上に位置していないが、長手方向軸と垂直になるように幾分そこから離れており、それによって「オフセット」の一種が形成される。ここで、内球半径(IKR)からの距離(D)の比(V4)が0.02から0.38の値で(V4=D/IKR;0.02≦V4≦0.38)適用される。すなわち、特に当該比は、二つの外形円がいずれも内球の内球半径よりも小さい外形円半径を有する第二表面線に対して適用される。
【0038】
下限(ここではV4=0.02)を設けることは、トリポード型等速ジョイントが偏向されて、ローラ要素と突部との間に(第一表面線の領域において)小さい遊びがあるときに、確実に妨害を発生させない役割を果たす。ローラ要素と突部との間の(第二表面線の領域における)遊びを低い値に制限する上限を設けると、トリポード型等速ジョイントが偏向されるときに、当該遊びは循環的に発生する。それにより、負荷変動中のNVH問題を回避する。
【0039】
このために、いずれの場合も周方向に90度オフセットされてローラ要素の凸状内周面と接触する部分に第一表面線を形成することがさらに好ましく、それによってかなり大きい外形円半径又は(直線部分による)非常に大きい外形円の直径を有する外形円をそこに形成できる。
【0040】
さらに、本明細書に記載の内側ジョイント部と、各突部の上に回転可能に装着された本発明によるローラ要素と、いずれの場合も一つのローラ要素を軸方向に沿って案内するための軸方向に延在する隙間を有する外側ジョイント部とを少なくとも備えるトリポード型等速ジョイントの実施形態が提案される。ここでは、当該隙間は、各ローラ要素が周方向に支持される一対の軸方向に延在する案内面を有し、傾動軸に対するローラ要素の傾動を制限する少なくとも一つの支持面は一対の案内面の間に配置され、ローラ要素の傾動軸は、ローラ要素の中央面と、外側ジョイント部のジョイント軸と平行である案内面の中心面との交線によって形成されることが提供される。
【0041】
特に、各案内面と隣接するようにいずれも配置される二つの支持面が設けられる。特に、当該支持面は、ここでは各案内面の間で偏心するように構成される。
【0042】
特に、各ローラ要素は、その冠形外周面により、外側ジョイント部の軸方向の運転隙間(running clearances)で(低摩擦)傾動を行うことができる。外側ジョイント部の各隙間における案内面は、ローラ要素の形状に適合する。このように、ローラ要素は、外側ジョイント部に対して、内側ジョイント部と連動して同一方向に傾動するので、ローラ要素に対するトリポード型等速ジョイントのそれぞれの偏向角度に必要な突部の傾斜角度を減少させることができる。傾動におけるこうした傾動角度の減少によって、特に移行半径が最小値である領域においてローラ要素と内側ジョイント部との間の接触を避けることができ、それにより内側ジョイント部と外側ジョイント部との間の偏向角度を比較的大きくすることができる。支持面によってローラ要素の傾動を制限することによって、内側ジョイント部が外側ジョイント部に対して大きく偏向する場合に、特にローラ要素が外側ジョイント部の軸方向の運転隙間内に押し込まれないようにする。
【0043】
軸方向にある各支持面は、隙間の所定の深さにわたって(周方向に)延在し、またいずれの場合もトリポード型等速ジョイントの内側ジョイント部に向かって半径方向内側に延在する。特に、各支持面は外側ジョイント部の材料によって形成されることにより、外側ジョイント部と一体化される。
【0044】
少なくとも一つの支持面は、各ローラ要素が最大10度の傾斜角度範囲で傾動軸を中心に傾動可能となるように配置されることが好ましい。特に、当該傾斜角度範囲は、最大で±10度(正常位置を支点に)、特に傾動軸を中心に最大で±6度である。
【0045】
傾斜角度範囲に対するこれらの制限は、偏向の最大角及び好適なNVH特性にとって特に有利な妥協点となる。そのようにして、3次の周期的軸力及び高周波変位力(high-frequency displacement forces)を最小限にすることができる。
【0046】
以下に、定格トルクが3300N・m(ニュートン・メートル)であるトリポード型等速ジョイントのための有利な(近似)値を例示的に示す。
【0047】
・外側ジョイント部の外径:82mm
・PCR(pitch circle radius:ピッチ円半径−外側ジョイント部のジョイント軸からの各案内面の正中面の間隔):24mmから25mm
・高さ:23mmから26mm
・移行半径(最大値):9mm
・移行半径(最小値):1.5mm
・接点における第一曲率半径(eKRmax):4831.40mm
・内球半径(IKR):9.59mm
・距離:2.02mm
・外形円の半径(IKR距離):7.57mm
特に、PCRに関する各突部の最大直径の高さは、+1mmから−1mmまでオフセットされることが提案される。このオフセットにより、3次の軸力の特性も同様に影響を受けてもよい。特に、最大の位置及び最小の位置だけでなく最大高さ及び最小高さも、偏向角度に依存するように3次の軸力の特性に影響を受けてもよい(
図15を参照:最大は、偏向角度が7.5度のとき、最小は、偏向角度が15度から17.5度の間のときである)。
【0048】
いずれも90°である第四角度範囲は各突部の第三平面に延在し、いずれの場合も第一平面と第二平面との間にある。半径方向に沿って回転軸から発出している突部の周面の輪郭は、いずれの場合も表面線によって形成される。少なくとも第三平面と突部の周面と第四角度範囲内の角度値との交点において、当該表面線をいずれも第二曲率半径(KR)によって形成し、半径方向に沿った周面の表面線の輪郭がそれによって画定される。第一平面の領域における第一表面線の第一曲率半径から発出する第四角度範囲に沿った当該第二曲率半径の値は、連続的に変動する。それぞれの曲率半径をKRとする。いずれの場合も、第二平面においては角度値が0°である。いずれの場合も、第一平面においては角度値が90°である。これは、角度値が0°では、第二表面線の曲率半径は、半径方向に沿った突部の周面の輪郭を画定することを意味する。第二表面線の当該(第二の)曲率半径は、内球半径から距離を差し引いたものに略相当する。角度値が90°の場合は、周面の輪郭は第一表面線の第一曲率半径によって画定される。以下の(第二の)曲率半径の値は、上述のように、定格トルクが3300N・mである例示的なトリポード型等速ジョイントのものと仮定する(表1を参照)。
【0049】
【表1】
特に、内側ジョイント部、ローラ要素および/又はトリポード型等速ジョイントは、自動車両に適合可能であることを提案する。これらの構成要素は、特に、自動車両の駆動装置から各車輪までの接続目的及びトルクの伝達に役立つ。これは、長手方向のシャフトとの併用、又は車両軸を横断するように配置される各シャフト、すなわち各サイドシャフトとの併用により実行される。
【0050】
一般的な技術分野だけでなく本発明も、各図を用いて以下により詳細に説明される。各図面は、特に好適な例示的実施形態を示すが、本発明はそれらに限定されるわけではない。特に、各図面、及び特に例示される割合は単に概略的なものであることを指摘する。各図面において、同一の参照番号は、同一の項目を示している。