特許第6346980号(P6346980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6346980
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】光硬化型防湿絶縁コート剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20180611BHJP
   C09D 5/25 20060101ALI20180611BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20180611BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180611BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   C09D175/14
   C09D5/25
   C09D4/02
   C09D7/63
   H01B3/30 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-132472(P2017-132472)
(22)【出願日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田代智史
(72)【発明者】
【氏名】大谷久貴
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−279458(JP,A)
【文献】 特開2007−100021(JP,A)
【文献】 特開昭59−036171(JP,A)
【文献】 特開2015−160927(JP,A)
【文献】 特開2014−159522(JP,A)
【文献】 特開2004−300388(JP,A)
【文献】 特開2007−308679(JP,A)
【文献】 特開2010−254891(JP,A)
【文献】 特開2007−308680(JP,A)
【文献】 特開平05−025418(JP,A)
【文献】 特開平05−179173(JP,A)
【文献】 特開平05−222325(JP,A)
【文献】 特開平07−286117(JP,A)
【文献】 特開平07−238240(JP,A)
【文献】 特開2007−314756(JP,A)
【文献】 特開2007−308681(JP,A)
【文献】 特開2008−291114(JP,A)
【文献】 特開2008−280414(JP,A)
【文献】 特開2010−254890(JP,A)
【文献】 米国特許第08932419(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0174956(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/158566(WO,A1)
【文献】 特開平06−223636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/14
C09D 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンアクリレート(A)と、単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)と、パラフィン(C)と、光開始剤(D)と、シランカップリング剤(E)と、可塑剤(F)と、を含み、前記単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)が脂肪族環式骨格を含むモノマーと、ヘテロ環式骨格を含むモノマーからなり、前記(B)におけるヘテロ環式骨格を含むモノマーの配合比率が、(B)全量の3〜15重量%であって(C)成分の含有量が全固形分に対し0.1〜5重量%である光硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項2】
前記単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)が更に直鎖アルキル基骨格を含むモノマーを含むことを特徴とする、請求項1または2いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項3】
前記単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)の炭素数がC5〜C11であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項4】
ガラス板上に厚さ100μmとなるよう光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を塗布し、その上に24mm幅で厚み125μmのPETフィルムを重ね合わせ、その上から紫外線照射して硬化させ、180度方向にクロスヘッドスピード300mm/分で引張った際の剥離強度が、1.0N/m以上であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項5】
光硬化型防湿絶縁コート剤組成物10gをトルエン30gに溶解し、更に50gの純水を加えて攪拌後一晩水層に抽出し、その後水層5mlを採取してその中に5mlのアセチルアセトンを溶解させ、60℃で10分間過熱後に室温まで放置した溶液を分光光度計で測定したホルムアルデヒド濃度が、10ppm未満であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を用いて絶縁処理されることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の電気接続部分などで用いられる防湿絶縁コート剤組成物および、それを用いて絶縁処理した電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスエポキシ、紙フェノール、ポリイミド等の基材に代表されるプリント配線板へ半導体等の電子部品を実装する際に、その電気接続部には接続信頼性を高めるため防湿絶縁コート剤が塗布される場合がある。従来このコート剤には熱硬化樹脂の使用、あるいは有機溶剤に溶解した樹脂を塗布後に乾燥する方法が一般的であった。しかし熱硬化樹脂の場合は樹脂硬化に加熱工程が必要で硬化時間がかかるため生産性に問題があり、有機溶剤を使用する樹脂は塗布時に溶剤を揮発させるため環境への負荷が高いという問題が有った。
【0003】
こうした問題を解決すべく、短時間で硬化が可能な紫外線硬化性コート剤が開発されてきた。例えば特許文献1では末端がアクリロキシ基またはメタクリロキシ基であるポリブタジエンと、不飽和二重結を有する単量体と重合開始剤を含有する組成物が開示されている。また更に、透湿度が小さく基板材料に対して充分な接着性を持つコート剤として、特許文献2では水添ポリブタジエンジオールから合成したエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、イソボルニルアクリレートとベンゾフェノンを含む組成物が開示されている。しかしながらこれら組成物は、光源がLED(発光ダイオード)の場合は硬化性が不十分という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐179655号公報
【特許文献2】特許第5162893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電子部品の電気接続部分などで用いられる防湿絶縁コート剤組成物で、短時間に硬化可能で、絶縁信頼性に優れた組成物であると共に、それを用いて絶縁処理した電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンアクリレート(A)と、単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)と、パラフィン(C)と、光開始剤(D)と、シランカップリング剤(E)と、可塑剤(F)と、を含み、前記単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)が脂肪族環式骨格を含むモノマーと、ヘテロ環式骨格を含むモノマーからなり、前記(B)におけるヘテロ環式骨格を含むモノマーの配合比率が、(B)全量の3〜15重量%であって(C)成分の含有量が全固形分に対し0.1〜5重量%である光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)が更に直鎖アルキル基骨格を含むモノマーを含むことを特徴とする、請求項1または2いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)の炭素数がC5〜C11であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する
【0009】
請求項4記載の発明は、ガラス板上に厚さ100μmとなるよう光硬化型防湿絶縁コー
ト剤組成物を塗布し、その上に24mm幅で厚み125μmのPETフィルムを重ね合わせ、その上から紫外線照射して硬化させ、180度方向にクロスヘッドスピード300mm/分で引張った際の剥離強度が、1.0N/m以上であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0010】
請求項5記載の発明は、光硬化型防湿絶縁コート剤組成物10gをトルエン30gに溶解し、更に50gの純水を加えて攪拌後一晩水層に抽出し、その後水層5mlを採取してその中に5mlのアセチルアセトンを溶解させ、60℃で10分間過熱後に室温まで放置した溶液を分光光度計で測定したホルムアルデヒド濃度が、10ppm未満であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか記載の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を用いて絶縁処理されることを特徴とする電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、短時間に硬化が可能な防湿および絶縁特性に優れた光硬化型の樹脂組成物、およびこれにより防湿絶縁処理された電子部品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物の構成は、水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンアクリレート(A)と単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)とパラフィン(C)と光開始剤(D)とシランカップリング剤(E)と可塑剤(F)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。
【0015】
本発明の水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンアクリレート(A)は、防湿絶縁層を構成するベースオリゴマーであり、例えばポリオールに、複数のイソシアネート基を有する化合物、および水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。使用するポリオールは、透湿度が低く絶縁性に優れまた成形皮膜に適度な柔軟性を付与する水添ポリイソプレン系である。数平均分子量は5,000〜20,000が更に好ましく、1,000未満では得られる硬化物の粘着性が強く表面にべとつき感が残り、30,000を超えると組成物の粘度が高くなり、作業性に悪影響を及ぼす。数平均分子量(以下「Mn.」と表記)は、ゲル透過クロマトグラフィー法により、スチレンジビニルベンゼン基材のカラムでテトラハイドロフラン展開溶媒を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定・算出した。
【0016】
本発明で使用される(A)の原料である、複数のイソシアネート基を持つ化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートがあり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、イソホロンジイソシアネートが好ましい。また水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがあり、これらの中では2-ヒドロキシエチルアクリレート好ましい。
【0017】
(A)の配合量は、硬化物の透湿度と組成物の特性バランスから全固形分に対し15〜40重量%が好ましく、18〜35重量%が更に好ましく、20〜30重量%がとりわけ好ましい。15重量%未満では透湿度が高くなる傾向があり、40重量%を超えると粘度が高くなり作業性が悪化する。市販の水添ポリイソプレン骨格を持つウレタンアクリレートとしてはRX71−72(商品名:亜細亜工業社製、Mn.13,000)がある。
【0018】
本発明で使用される単官能の(メタ)アクリレートモノマー(B)は、(A)を希釈すると同時に(A)と反応して皮膜硬度を上げるために配合される。基材との密着力、防湿性、(A)との相溶性など観点から、脂肪族環式骨格を含むモノマーと、ヘテロ環式骨格を含むモノマーを含む単官能の(メタ)アクリレートである。(B)の配合量は、皮膜強度と粘度等の特性バランスから全固形分に対し45〜75重量部が好ましく、50〜70重量部が更に好ましく、55〜65重量%がとりわけ好ましい。
【0019】
脂肪族環式骨格をもつ(メタ)アクリレートとしては、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどがあげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、低粘度で皮膚刺激性や臭気が低いイソボルニルアクリレートが好ましい。
【0020】
ヘテロ環式骨格をもつ(メタ)アクリレートとしては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、テトラメチルピペリジニルメタクリレート、アクリロイルモルフォリンなどがあげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、希釈性が高くまた(C)との相溶性も良いテトラヒドロフルフリルアクリレートが好ましい。(B)全体におけるヘテロ環式骨格をもつアクリレートの比率は3〜15重量%が好ましく、4〜10重量%が更に好ましい。3重量%以上とすることで充分な接着力を確保でき、15重量%以下とすることで絶縁信頼性を確保できる。
【0021】
その他のアクリレートとしては直鎖アルキル基含有の(メタ)アクリレートがある。直鎖アルキル基は低極性であるため、配合することで組成物全体の極性を下げ絶縁性を向上させると共に、骨格形状が類似している(C)との相溶性を向上させることが期待できる。直鎖アルキル基(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。Cの数が4以下では臭気や揮発性が高く、12以上では硬化性が低下する傾向があり、これらの中では希釈性が高く低臭気で低アウトガスのn-オクチルアクリレートが好ましい。
【0022】
更にそれ以外のアクリレートとしては、水酸基含有、アミノ基含有の(メタ)アクリレートがある。水酸基含有の(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートなどがあり、アミノ基含有の(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N,N‐ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどがあり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
本発明で使用されるパラフィン(C)は、硬化皮膜表面のべとつきを抑える目的で配合され、またLED光源に対する硬化特性を向上させて、光硬化剤の配合量を抑えることができる。液状よりも、揮発性が小さい常温で固体のパラフィンワックスが好ましいが、液状パラフィンでもかまわない。配合量は全固形分に対し0.1〜5重量%であり、0.2〜3重量%が好ましく、0.3〜1重量%が更に好ましい。
【0024】
本発明で使用される光重合開始剤(D)は、紫外線や電子線などの吸収でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、LEDの発光波長である380nm以上で吸収帯域をもつ開始剤が好ましい。(D)の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し2〜15重量部が好ましく、3〜10重量部が更に好ましい。但しLEDを光源とする場合は、開始剤の吸収帯域特性および硬化特性に影響を与える(C)によって、必要配合量が大きく左右される。
【0025】
380nm以上で吸収帯域をもつ指標としては、アセトニトリルに0.1%溶解した(C)溶液を分光硬度計で各波長の吸収スペクトルを測定した時の380nmにおける吸収量が0.5%以上である事が望ましい。例えば2-ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)-ブタノン−1、2-ジメチルアミノ−2−(4−メチル-ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2.4.6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2.4.6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドなどがあり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。市販品ではIrgacure379、379EG、369E、TPO、Darocur4265(商品名:BASFジャパン社製)、SpeedcureTPO−L(商品名:ランブソン社製)などがある。
【0026】
更に、本組成物へシランカップリング剤(E)を配合することにより回路基板との密着力を促進することが出来る。シランカップリング剤としては、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中では接着信頼性や異種材料の接着性の点でアクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびトリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。(E)の配合量は、全固形分に対し5重量部以下が好ましく、3重量部以下が更に好ましい。5重量部を超えると密着力が強くなりすぎ、一旦剥がして修正するリペア性が低下する傾向がある。
【0027】
更に加えて、本組成物へ可塑剤(F)を添加することで、硬化皮膜に柔軟性を付与することができる。(A)との相溶性に優れる水素化ポリブタジエンが好ましく、とりわけ相溶性と透明信頼性の点で両末端に水酸基を持つ水素化ポリブタジエンが好適である。特にガラス転移点(以下「Tg」と表記)が−35℃以下であると柔軟性に優れた硬化皮膜を形成することが出来る。市販品ではGI−1000(商品名:日本曹達社製、Tg−44℃)、GI−2000(同、Tg−42℃)がある。(F)の配合量は、全固形分に対し10重量部以下が好ましく、6重量部以下が更に好ましい。10重量部を超えると硬化性が低下し、皮膜表面にタックが残りやすくなる。
【0028】
本組成物には必要に応じ、硬化助剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、難燃剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、分散剤、チクソ付与剤などの添加剤も併用することができる。
【0029】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
【0030】
実施例1~4
水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンアクリレート(A)としてExcelateRX71−72(商品名:亜細亜工業社製、水添ポリイソプレン骨格、Mn.13,000 )を、単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)としてIB−XA(商品名:共栄社化学社製、イソボルニルアクリレート)およびTHF−A(商品名:共栄社化学社製、テトラヒドロフルフリルアクリレート)およびNOAA(商品名:大阪有機化学工業社製、n−オクチルアクリレート)およびHEAA(商品名:KJケミカルズ社製、ヒドロキシエチルアクリルアミド)を、パラフィン(C)としてキシダ化学製パラフィン(融点60〜62℃)を、光開始剤(D)としてIrgacureTPO(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率1.0%以上)を、シランカップリング剤(E)としてKBM−5103(商品名:信越化学工業社製、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)およびKBM−9659(商品名:信越化学工業社製、トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートシラン)を、可塑剤(F)としてGI−1000(商品名:日本曹達社製、両末端水酸基水素化ポリブタジエン)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例1〜4の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0031】
比較例1〜5
実施例で用いた材料の他、水添ポリブタジエン骨格のウレタンアクリレートRX72−67(商品名:亜細亜工業社製、Mn10,000)およびRX71−44(商品名:亜細亜工業社製、Mn3,000)を、(B)として4HBA(商品名:大阪有機工業社製、4ヒドロキシブチルアクリレート)を、(D)としてIrgacure379EG(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率1.0%以上)およびIrgacure184(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率0.1%以下)およびIrgacure127(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率0.1%以下)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し比較例1〜5の光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0032】
表1
【0033】
評価方法は以下の通りとした。
【0034】
表面硬化性:ガラス板上に厚さ100μmとなるよう光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を塗布し、その上からパナソニック製のLED−UV照射装置UD−40を用い、出力400mW/cm、積算光量が1000mJ/cmとなる様に紫外線照射により硬化させ、皮膜表面のべたつき有無を指触で確認し、べたつき無を○、べたつき有で樹脂が指に付くを×とした。
【0035】
粘度:東機産業製のコーンプレート型粘度計RC−550を用い、コーン角3°×R17.65で25±1℃、回転数20rpmで測定した。作業性の観点から700〜5,000mPa・sを○、700mPa・s未満を×とした。
【0036】
剥離強度:ガラス板上に厚さ100μmとなるよう光硬化型防湿絶縁コート剤組成物を塗布し、その上に24mm幅にカットしたPETフィルム(商品名、東洋紡製、A4300、厚み125μm)を重ね合わせ、その上から前記表面硬化性評価と同じ条件で紫外線照射して硬化させ、当該PETフィルム端部をミネベア製の引張圧縮試験機テクノグラフ TGI-1kNを用いて180度方向にクロスヘッドスピード300mm/分で引張った際の剥離強度を測定し、剥離強度が1.0N/m以上を○、1.0N/m未満を×とした。なお紫外線の照射条件は、特別な表記が無い場合は以下も同じとする。
【0037】
耐マイグレーション試験:25×50mmの板ガラス上に0.6×10.2mmのエリアに描画したITO電極基板(アノード/カソード間のライン/スペース=15/15μm)上に、厚さ100μmとなるよう光硬化型防湿絶縁コート剤を塗布し、同上の条件で紫外線照射して硬化させた試験片を作製し、60℃/90%RHの環境下でDC5Vを印加し、300時間経過後の絶縁抵抗値低下による腐食性について評価し、目視で腐食無しを○、腐食有りを×とした。
【0038】
不純物試験(ホルムアルデヒド):光硬化型防湿絶縁コート剤組成物10gをトルエン30gに溶解させ、50gの純水を入れて攪拌し一晩水槽に抽出させる。その後水層5mLを採取して、その中に5mLのアセチルアセトンを溶解させ、60℃で10分間加熱後に室温まで放置し、その後分光硬度計を用い溶液中のホルムアルデヒドの含有量の測定を行い、10ppm未満を○、10ppm以上を×とした。なお測定値は既知濃度の溶液により予め検量線を作成し同定した。
【0039】
不純物試験(トルエン):ホルムアルデヒドが10ppm未満である実施例1〜4について、トルエンを下記方法で測定した。光硬化型防湿絶縁コート剤組成物0.2gをメタノール5mLに溶解させる。この溶液を島津製ガスクロマトグラフィーGCMS−QP2010 Ultraを用いてトルエンのピークを確認し、そのピークから混入しているトルエンの量を測定して10ppm未満を○、10ppm以上を×とした。
【0040】
評価結果
表2
【0041】
実施例は表面硬化性、粘度、剥離強度、マイグレーション試験、不純物試験すべての面で問題は無く良好であった。
【0042】
一方、(C)を含まない比較例1、および(C)を含まず水添ブタジエン系ウレタンアクリレートを用いた比較例4および5は表面硬化性が劣り、比較例3および4は不純物としてホルムアルデヒドが検出された。また(C)を含まずヘテロ環式骨格も含まない比較例2は、表面硬化したものの不純物としてホルムアルデヒドが検出され、いずれも本願発明に適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の樹脂組成物は、電子部品を搭載する回路基板などで用いられる光硬化型防湿絶縁コート剤組成物で、光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能で、絶縁信頼性に優れた組成物として有用である。

【要約】
【課題】電子部品を搭載する回路基板で用いられる、短時間に硬化可能で絶縁信頼性に優れた光硬化型防湿絶縁コート剤組成物と、それを用いて絶縁処理した電子部品を提供する。
【解決手段】水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜30,000であるウレタンアクリレート(A)と、単官能 (メタ)アクリレートモノマー(B)と、パラフィン(C)と、光開始剤(D)と、を含み(C)成分の含有量が全固形分に対し0.1〜5重量%である光硬化型防湿絶縁コート剤組成物である。
【選択図】なし