【実施例】
【0127】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0128】
《測定方法及び評価方法》
(1)活性層と基材との剥離強度
実施例及び比較例で得たセパレータの活性層に、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製、製品名:スコッチ(登録商標)600)を、セパレータの長さ方向に対して平行に貼りつけた。テープを活性層から50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP−5N)を用いて測定した。5点測定し、得られた剥離強度の平均値を、
活性層と基材の剥離強度として、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
A:剥離強度が50N/m以上
B:剥離強度が40N/m以上50N/m未満
C:剥離強度が40N/m未満
【0129】
(2)セパレータのハンドリング性(耐ブロッキング性;常温剥離強度試験)
実施例及び比較例で得たセパレータを20mm×100mmに切り取ったサンプルを2枚準備した。これらを重ね合わせた後、温度25℃、圧力5MPaの条件で3分間プレスした。プレス後のサンプルにおけるセパレータ同士の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2−500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
(評価基準)
A:剥離強度が30N/m未満
B:剥離強度が30N/m以上40N/m未満
C:剥離強度が40N/m以上
【0130】
(3)冷熱衝撃特性
実施例及び比較例で得たセパレータを使用し、下記a〜dのように組み立てた各二次電池について、冷熱衝撃特性(耐冷熱サイクル特性)の評価を行った。
【0131】
a.正極の作製
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)を96質量部と、正極導電剤としてカーボンブラック粉末を2質量部と、正極バインダー(結着剤)としてポリフッ化ビニリデンを2質量部とを乾式混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させて正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを、正極集電体となる厚さ13μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥した後、圧延することにより、正極を作製した。この時の正極活物質層の充填密度及び厚みは、集電体の両面に正極活物質層が形成されている部分で3.95g/cc、及び140μmであった。
【0132】
b.負極の作製
炭素系活物質(人造黒鉛)を97質量部と、ケイ素系活物質(SiO
x)(x=1.05)を3質量部とを混合した。得られた混合物を98質量部と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)を1質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の微粒子を1質量部と、を混合し、これらを水に分散させて負極合剤スラリーを得た。この負極合剤スラリーを負極集電体となる厚さ8μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、圧延した。次いで、圧延後の負極合剤をPVDFの融点以上の温度である170℃で加熱した。これにより、炭素系活物質及びケイ素系活物質の表面にPVDF微粒子を融着させた。以上の工程により、負極を作製した。この時の負極活物質層の充填密度及び厚みは、集電体の両面に負極活物質層が形成されている部分で1.75g/cc、及び137μmであった。
【0133】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(質量比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF
6を濃度1.2mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
【0134】
d.電池組立
a.で作製した正極と、b.で作製した負極と、実施例及び比較例で得たセパレータとをそれぞれ切り出して重ね合わせた後、室温にて長手方向に捲回してつぶすことにより、扁平状の捲回体(電池素子)を作製した。この電池素子を、内側から外側に向かってポリプロピレン/アルミ/ナイロン(nylon)の3層からなる厚み120μmのラミネートフィルムに挿入し、外装部材の1辺を残して熱融着した。電池素子を収容した外装部材内に、c.で調整した非水電解液を注入し、減圧下で外装部材の残りの1辺を熱融着して減圧封止した。これを金属板間で80℃3分間加熱することで、厚み2mm×幅30mm×高さ30mmの二次電池を得た。
【0135】
得られた二次電池について、25℃で56mAの定電流で4.35Vまで充電し、続いて充電電流14mAまで定電圧充電を行った。定電圧充電後に充電状態の二次電池の抵抗(1kHz交流インピーダンス:Ω)を測定し、この抵抗を初期抵抗とした。
【0136】
次いで、熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)を用いて、70℃に昇温し4時間維持した。その後、電池を20℃で2時間に亘って保持し、次に−40℃で4時間に亘って保持するというサイクルを50回繰り返した。上記dと同様の方法で、二次電池の抵抗(1kHz交流インピーダンス:Ω)を測定した。この結果と上記dで測定した初期抵抗から、冷熱サイクル前後の抵抗変化量(冷熱サイクル後の抵抗−初期抵抗)を算出し、下記基準で評価した。
(評価基準)
A:冷熱衝撃前後の抵抗変化量が0Ω以上20Ω未満
B:冷熱衝撃後の抵抗変化量が20Ω以上40Ω未満
C:冷熱衝撃前後の抵抗変化量が40Ω以上
【0137】
(4)低温サイクル特性
実施例及び比較例で得たセパレータを使用し、下記a〜cのように組み立てた各二次電池について、低温サイクル特性測定を行った。
【0138】
a.正極の作製
正極活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部と、導電剤としてアセチレンブラックを2重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。正極集電体としての厚み20μmのAl箔の両面に、得られた正極合剤塗料を塗布して乾燥することにより、正極活物質層を形成した。これを、一対のローラで加圧して圧延することにより、総厚さが120μmの正極を得た。なお、正極集電体の短手方向の一辺に、正極活物質層が形成されていない正極集電体の露出部を設けた。
【0139】
b.負極の作製
負極活物質として人造黒鉛を100体積部と、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体を結着剤の固形分換算で2.3体積部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1.4体積部と、所定量の水とを双腕式練合機にて攪拌し、体積固形分率が55%の負極合剤塗料を作製した。体積固形分率とは、合剤塗料に含まれる固形分の体積濃度のことである。得られた負極合剤塗料を、負極集電体としての厚さ15μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、圧延し、総厚さが185μmの負極を得た。なお、負極集電体の短手方向の一辺に、負極活物質層が形成されていない負極集電体の露出部を設けた。
【0140】
c.電池の作製
a.で作製した正極と、実施例及び比較例で得たセパレータと、b.で作製した負極とを積層及び捲回して捲回体を得て、捲回体を円筒型電池ケース内に挿入した。EC(エチレンカーボネート)・DMC(ジメチルカーボネート)・MEC(メチルエチルカーボネート)混合溶媒にLiPF
6を1MとVCを3重量部溶解させた電解液5.5gを、円筒型電池ケース内入れて封口し、設計容量2000mAhの円筒型18650非水系二次電池を作製した。
【0141】
d.低温サイクル特性の測定
以下の方法で低温100サイクル時点での容量維持率の測定を実施した。封口後の上記電池について慣らし充放電を2回行い、45℃環境で7日間保存した後、以下の充放電サイクルを−30℃で100回繰り返した。充電については、定電圧4.2V、1400mAで充電を行い、充電電流が100mAまで低下したとき充電を終了し、放電は2000mAの定電流で終止電圧3Vまで放電することを1サイクルとして、1サイクル目に対する100サイクル目の放電容量比を100サイクル容量維持率として測定を行なった。そして、低温サイクル特性を下記基準で評価した。
(評価基準)
A:低温100サイクル時点での容量維持率が70%以上
B:低温100サイクル時点での容量維持率が60%以上70%未満
C:低温100サイクル時点での容量維持率が60%未満
【0142】
(5)活性層と基材との剥離強度のばらつき
上記「(1)活性層と基材との剥離強度」と同様に、実施例及び比較例で得た幅600mmのセパレータに対して、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製、製品名:スコッチ(登録商標)600)を、セパレータの長さ方向に対して平行(TD方向)に、100mmの間隔をあけて5点貼り付けた。同様にして、セパレータの長さ方向に対して垂直(MD方向)に、500mmの間隔をあけて上記のテープを5点貼り付けた。貼り付けられたテープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP−5N)を用いて測定した。そして、下記式に基づき、剥離強度の標準偏差と平均値から、剥離強度のばらつき[%]を計算し、下記の基準で評価した。
【0143】
【数1】
【0144】
式中、xは剥離強度の平均値、nは測定数を示す。
(評価基準)
A:活性層/基材の剥離強度のばらつきが15%未満
B:活性層/基材の剥離強度のばらつきが15%以上25%未満
C:活性層/基材の剥離強度のばらつきが25%以上
【0145】
(6)衝突耐性(衝突試験)
図1は、UL規格1642及び/又は2054に従う衝突試験の概略図である。UL規格1642及び/又は2054では、試験台上に配置された試料の上に、試料と丸棒(φ=15.8mm)が概ね直交するように、丸棒を置いて、丸棒から610±25mmの高さの位置から、丸棒の上面へ9.1kg(約20ポンド)の錘を落すことにより、試料に対する衝撃の影響を観察する。
図1とUL規格1642及び2054を参照して、実施例における衝突試験の手順を以下に説明する。
【0146】
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm
3、容量密度175mAh/g)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm
3、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm
3、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm
3)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧延した。圧延後のものを57.0mm幅にスリットして正極を得た。この時の正極活物質塗布量は109g/m
2であった。
【0147】
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm
3、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm
3、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧延した。圧延後のものを58.5mm幅にスリットして負極を得た。この時の負極活物質塗布量は5.2g/m
2であった。
【0148】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒(キシダ化学(株)製Lithium Battery Grade)に、LiPF
6を1mol/Lとなるように溶解して、非水電解質である電解液を得た。
【0149】
d.電池組立
作製した正極と負極とを、実施例におけるセパレータの両側に重ねて筒状に巻いた捲回体を、ステンレス製の円筒型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、上記電解液を5mL注入し、捲回体を電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉して非水電解質二次電池を作製した。
【0150】
e.加熱処理
d.で得た非水電解質二次電池を、60℃の環境下で48時間保存した。
【0151】
f.初期充放電
e.で得た非水電解質二次電池を、25℃の環境下、0.3Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で充電して、0.3Cの定電流で3.0Vまで放電した。定電流での充電と定電圧での充電時間の合計を8時間とした。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。
次に、電池を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で充電して、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。定電流での充電と定電圧での充電時間の合計を3時間とした。また、1Cの定電流で放電した時の容量を1C放電容量(mAh)とした。
【0152】
25℃の環境下で、f.で得た非水電解質二次電池を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電した。次に、25℃の環境下で、電池を平坦な面に横向きに置き、電池を横切るように、直径15.8mmのステンレスの丸棒を電池の中央に配置した。電池の中央に配置した丸棒から電池の縦軸方向に対して、直角に衝撃が加わるように、9.1kgの錘を61±2.5cmの高さから落下させた。その後、電池の外装温度を測定し、かつ電池からのガスの噴出の有無と電池の発火の有無を観察した。なお、電池の外装温度とは、電池の外装体の底側から1cmの位置を熱電対(K型シールタイプ)で測定した温度である。以下の基準で、衝突試験を評価した。
(評価基準)
A:電池外装温度60℃未満
B:電池外装温度60℃以上80℃未満
C:電池外装温度80℃以上、かつガス噴出、発火無し
D:ガス噴出有り、または発火有り
【0153】
《アクリル樹脂の製造》
〈アクリル樹脂1〉
(コアの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、表1中の1A「混合物」の欄に従って、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部とを投入した。反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(APS(aq))(2質量%水溶液)を7.5質量部添加し、混合物を得た。
【0154】
上記反応容器内の混合物とは別に、表1中の1A「乳化液」の欄に従って、架橋剤及びシリコン化合物以外のモノマーと、その他の使用原料とをホモミキサーにより5分間混合して乳化液1Aを調製した。
【0155】
反応容器に過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、滴下槽から乳化液1Aを反応容器へ滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。乳化液1Aの滴下終了後、反応容器の内部温度を90分間に亘って80℃に維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。その後、反応容器に、表1中の1A「乳化液」の欄に記載されたモノマー及びその他の使用原料と、開始剤として過硫酸アンモニウム(APS(aq))(2質量%水溶液)を7.5質量部と、イオン交換水52質量部とを加え、35℃で12時間撹拌し、その後、室温まで冷却して、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンに水酸化アンモニウム水溶液(25質量%水溶液)を加えてpH=9.0に調整することにより、コアポリマー粒子1Aを40質量%含むエマルジョンを得た。
【0156】
(シェルの製造)
コアポリマー粒子1Aを含むエマルジョンをシードポリマーとして用い、シードポリマーの存在下で、以下のように2段目の重合を行ってシェル部を合成することにより、コア/シェル構造を有する熱可塑性ポリマー粒子を製造した。
【0157】
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、シードポリマーエマルジョンと、表1中の1B「混合物」の欄に記載されたイオン交換水及び乳化剤を投入し、反応容器中の温度を30℃に保ち、表1中の1B「混合物」の欄に記載された開始剤の2質量%水溶液を更に添加し、混合物を得た。
【0158】
上記反応容器中の混合物とは別に、表1中の1B「乳化液」の欄に記載したモノマー及びその他の使用原料をホモミキサーにより5分間混合して乳化液1Bを調製した。
【0159】
滴下槽から前記乳化液1Bを反応容器へ滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。この状態で更に30分撹拌を継続して、シードポリマーにモノマーを吸収させた。
【0160】
次に、反応系のpHを4以下に維持した状態で、反応容器の内部温度を80℃に上昇させ、120分間に亘って攪拌を続け、その後、室温まで冷却した。冷却後、200メッシュの金網でろ過を行い、凝集物等を除去することにより、アクリル樹脂(Tg:60℃、平均粒径:500nm)を含むエマルジョン得た。
【0161】
得られたエマルジョンをろ過した後、25質量%のアンモニア水及び水を加えて、pH=8及び固形分含量=40質量%に調整した上記アクリル樹脂と、後述するアクリル樹脂3とを、これらの合計質量に対するポリマーの配合量が10質量%となるように混合して、混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10質量%で水に均一に分散させて、アクリル樹脂1を調製した。
【0162】
〈アクリル樹脂2〉
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、表1中のアクリル樹脂2「混合物」の欄に従って、イオン交換水70.4質量部と、乳化剤として「アクアロンKH1025」0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」0.5質量部とを投入した。次いで、反応容器内部の温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液(「APS(aq))を7.5質量部添加し、混合物を得た。
【0163】
上記反応容器内の混合物とは別に、表1中のアクリル樹脂2「乳化液」の欄に従って、モノマー及びその他の使用原料と、乳化剤として「アクアロンKH1025」3質量部と、「アデカリアソープSR1025」3質量部と、「NaSS」0.05質量部と、APS(aq)7.5質量部と、イオン交換水52質量部との混合物をホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を調製した。
【0164】
過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、上記乳化液を滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。
【0165】
次に、反応系のpHを4以下に維持した状態で、反応容器の内部温度を80℃に上昇させ、120分間に亘って攪拌を続け、その後、室温まで冷却した。冷却後、200メッシュの金網でろ過を行い、凝集物等を除去することにより、アクリル樹脂(Tg:―20℃、平均粒径:160nm)を含むエマルジョン得た。
【0166】
得られたエマルジョンをろ過した後、25質量%のアンモニア水及び水を加えて、pH=8及び固形分含量=40質量%に調整した上記アクリル樹脂と、後述するアクリル樹脂3とを、これらの合計質量に対するポリマーの配合量が10質量%となるように混合して、混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10質量%で水に均一に分散させて、アクリル樹脂2を調製した。
【0167】
〈アクリル樹脂3〉
表1に示すアクリル樹脂2の使用原料をアクリル樹脂3の使用原料に置き換えたこと以外は、アクリル樹脂3と混合する前までのアクリル樹脂2の製造と同じ条件下で、アクリル樹脂3(Tg:−30℃、平均粒径:160nm)を製造した。
【0168】
《実施例1》
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
重量平均分子量(Mw)が1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%と、Mwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)80質量%とからなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0169】
得られた混合物25質量部を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン(35cst(40℃))75質量部を供給し、210℃及び250rpmの条件で溶融混練して、第1のポリオレフィン溶液を調製した。
【0170】
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
Mwが2.0×10
6の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)40質量%と、Mwが5.6×10
5の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3)60質量%からなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0171】
得られた混合物25質量部を、上記と同タイプの別の二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン(35cSt(40℃))75質量部を供給し、上記と同条件で溶融混練して、第2のポリオレフィン溶液を調製した。
【0172】
(3)押出
第一及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液の層厚比が10/80/10となるように押し出した。押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度2m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
【0173】
(4)第1の延伸、成膜溶剤の除去、乾燥
ゲル状三層シートを、テンター延伸機により116℃でMD方向及びTD方向ともに5倍に同時二軸延伸(第1の延伸)した。延伸ゲル状三層シートを20cm×20cmのアルミニウム枠板に固定し、25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し、100rpmで3分間揺動しながら流動パラフィンを除去し、室温で風乾した。
【0174】
(5)第2の延伸、熱固定
乾燥膜を、バッチ式延伸機を用いて、126℃でTD方向に1.4倍に延伸(第2の延伸)した。次に、この膜をテンター法により、126℃で熱固定処理を行った。
【0175】
(6)活性層の形成
無機粒子として酸化アルミニウム(Al
2O
3、平均粒径0.6μm)を80.0質量部と、アクリル系樹脂としてアクリル樹脂1を20.0質量部と、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)を1.0質量部とを、100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製した。
【0176】
このように製造した塗布液に、(5)で製造した三層微多孔質膜を浸漬してディップコーティングした後、ワイヤサイズがそれぞれ0.5mmのワイヤバーを使用して、両面に塗布されたスラリーコーティング層の厚さをそれぞれ調節し、溶媒を乾燥させた。多孔性膜の両面にそれぞれ形成された活性層の厚さは4.0μmであった。
【0177】
以上のようにして作製した活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2及び4に示す。
【0178】
《実施例2》
実施例1の「(2)第2のポリオレフィン溶液の調製」において、実施例1の混合物の代わりに、Mwが2.0×10
6の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)17.5質量%と、Mwが3.0×10
5の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3)57.5質量%と、MFRが135g/10minで、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体)25重量%とからなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0179】
上記以外は実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2、3及び4に示す。
【0180】
《実施例3》
実施例1の「(2)第2のポリオレフィン溶液の調製」において、実施例1の混合物の代わりに、Mwが2.0×10
6の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)16質量%と、Mwが3.0×10
5の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3)66質量%と、融解熱が96J/gのポリプロピレン18重量%とからなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0181】
上記以外は実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2および4に記載した。
【0182】
《実施例4》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、塗布液として、酸化アルミニウム(平均粒径0.6μm)95.0質量部と、アクリル樹脂1を5.0質量部と、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部とを、100質量部の水に均一に分散させた塗布液を用いた。
【0183】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0184】
《実施例5》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、塗布液として、酸化アルミニウム(平均粒径0.6μm)50.0質量部と、アクリル樹脂1を50.0質量部と、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部とを、100質量部の水に均一に分散させた塗布液を用いた。
【0185】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0186】
《実施例6》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、アクリル系樹脂としてアクリル樹脂1の代わりにアクリル樹脂2を用いた。
【0187】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0188】
《実施例7》
実施例6で製造した活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の片面上に、アクリル樹脂2を、グラビアコーターを用いて、塗工面積比率60%及び塗工目付け0.5g/m
2となるように全面に塗布した。次いで、50℃で1分間加熱して乾燥することにより、熱可塑性ポリマー粒子層を形成したセパレータを得た。評価結果を表2に示す。
【0189】
《実施例8》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、水性アクリルポリオールと水分散性ポリイソシアネート(硬化剤)からなる2液硬化型水性アクリルウレタン樹脂(DIC(株)製WE−301、固形分濃度45質量%)と、平均粒径0.6μmのアルミナ粒子と、イオン交換水とを、それぞれ10:40:50の重量比率(水性アクリルウレタン樹脂とアルミナの重量比率は20/80)で配合し、6時間分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し塗布液を得た。
【0190】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0191】
《実施例9》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、ポリビニルアルコールとアクリル酸、メタクリル酸メチルとの共重合体(日新化成(株)製「POVACOAT」(登録商標))と、平均粒径0.6μmのアルミナ粒子と、溶媒(イオン交換水:エタノール=70:30)とを、それぞれ5:45:50の重量比率(上記共重合体とアルミナ粒子との重量比率は10/90)で配合し、6時間分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し塗布液を得た。
【0192】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0193】
《実施例10》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、無機物粒子として、Al
2O
3粉末の代わりにAlO(OH)粉末(水酸化酸化アルミニウム、平均粒径:1.0μm)を用いた。
【0194】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2示す。
【0195】
《実施例11》
実施例2の「(6)活性層の形成」において、無機物粒子として、Al
2O
3粉末の代わりにBaTiO
3粉末(チタン酸バリウム、平均粒径:0.6μm)を用いた。
【0196】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0197】
《実施例12》
実施例2の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、混合物として、Mwが1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)16質量%と、Mwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)64質量%とからなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部、シリカ粉末(平均粒径:15nm)20質量%、並びに酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合した。上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0198】
《比較例1》
実施例1において、「(6)活性層の形成」を行わないこと以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に記載した。
【0199】
《比較例2》
実施例1の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、Mwが1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部の代わりに、Mwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部を用いた。
【0200】
上記以外は、実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、 評価結果等を表2に示す。
【0201】
《比較例3》
実施例1の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、Mwが1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部の代わりに、Mwが1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部を用いた。
【0202】
上記以外は、実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、 評価結果等を表2に示す。
【0203】
《実施例13》
実施例2の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、Mwが2.0×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.56×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0204】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表3に示す。
【0205】
《実施例14》
実施例2の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、Mwが0.6×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.86×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0206】
上記以外は実施例2と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表3に示す。
【0207】
《実施例15》
実施例1の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、Mwが1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)55質量%、MFRが135g/10minで、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体)25重量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0208】
上記以外は実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表4に示す。
【0209】
《実施例16》
実施例1の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、Mwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)82質量%、融解熱が96J/gのポリプロピレン18質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
【0210】
上記以外は実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表4に示す。
【0211】
《
比較例17》
実施例1の「(1)第1のポリオレフィン溶液の調製」において、重量平均分子量(Mw)が1.2×10
6のポリプロピレン(PP:融点162℃)35質量%と、Mwが0.74×10
6の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm
3、融点135℃)65質量%とからなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部とした。上記以外は実施例1と同様にして活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0212】
《実施例18》
活性層が無機粒子を含まないこと以外は実施例1と同様にして、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔膜を製造した。各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に示す。
【0213】
【表1】
表1中の略称はそれぞれ以下のとおりである。
(1)乳化剤
KH1025:アクアロンKH1025、第一工業製薬社製
SR1025:アデカリアソープSR1025、株式会社ADEKA製
NaSS:p−スチレンスルホン酸ソーダ、東ソー株式会社製
(2)開始剤
APS(aq):過硫酸アンモニウム水溶液
(3)(メタ)アクリル酸エステル
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
EHA:アクリル酸エチルヘキシル
BMA:メタクリル酸ブチル
(4)酸モノマー
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
(5)官能基含有モノマー
HEMA:メタクリル酸ヒドロキシエチル
AM:アクリルアミド
GMA:メタクリル酸グリシジル
(6)ポリアルキレングリコール基含有単量体
M−40G:アクリレートモノマー、新中村化学工業株式会社製
(7)架橋剤
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業株式会社製
EDMA:エチレンジメタクリレート
【0214】
【表2】
【0215】
【表4】
【0216】
《評価結果に関する考察》
(1)活性層と基材との剥離強度について
実施例1と比較例2とを比較すると、第1の微多孔質層がPPを含まない(PEのみ)場合よりも、PPとPEとを含む方が剥離強度に優れる傾向にあることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、PPはPEにくらべて極性(表面自由エネルギー)が大きいため、活性層との分子間力が大きくなり、活性層と基材との間の剥離強度が大きくなったからであると考えられる。
【0217】
(2)セパレータのハンドリング性について
実施例2と実施例9を比較すると、水系バインダがPVAを含有する例に比べて、PVAを含有しない例は、セパレータのハンドリング性に優れる傾向にあることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、PVAは吸水性の水酸基を有し、大気中の水分を吸着してベタツキが発生しやすいためであると考えられる。
【0218】
(3)冷熱衝撃特性について
実施例4と実施例2とを比較すると、活性層において無機粒子が少ない方が、冷熱衝撃特性に優れることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、無機粒子が少ない方が、電極とセパレータとの接着性が高く、冷熱サイクルで層間剥離が起こりにくいからであると考えられる。
【0219】
実施例2と実施例9を比較すると、水系バインダがPVAを含有する例に比べて、PVAを含有しない例は、冷熱衝撃特性に優れる傾向にあることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、PVAの方がアクリル樹脂よりも冷熱時の膨張及び収縮が大きいため、PVAの量が少ないことで活性層と他の層との間の剥離がおこりにくくなるからであると考えられる。
【0220】
実施例1と比較例1とを比較すると、基材上に活性層を有する方が、活性層を有しない場合よりも冷熱衝撃特性が良好であることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、電極とセパレータとの接着力が向上し、冷熱サイクル時に界面ずれが生じにくいため、耐冷熱サイクルしても抵抗が悪化しないからであると考えられる。
【0221】
(4)低温サイクル特性について
実施例1と比較例3とを比較すると、第1の微多孔質層がPE単独であるよりも、PEとPPとを含む方が、低温サイクル特性に優れることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、PPのガラス転移温度は0度前後であるため、低温サイクル試験において、電池が0度以下になるとPPが脆くなり、多孔膜の孔の状態、及びLiイオンの伝達に影響を及ぼすからであると考えられる。
実施例2と実施例12とを比較すると、第1の微多孔質層がシリカを含有する方が、低温サイクル特性に優れることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、シリカを含有することにより、第1の微多孔質層が電解質との親和性が向上し、低温サイクル特性が向上したと考えられる。
実施例2と実施例7とを比較すると、活性層のアクリル系樹脂が、ポリアルキレングリコール基を有するエチレン性不飽和単量体を単量体単位として有する共重合体である場合の方が、低温サイクル特性に優れることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、後者の方が、セパレータの膜抵抗が小さくなり、低温サイクル特性が向上したと考えられる。
【0222】
(5)活性層と基材の剥離強度のばらつきについて
実施例2、13、及び14を比較すると、第1の微多孔質層におけるPE/PPのMw比が、0.6〜1.5の範囲内であると剥離強度ばらつきが小さくなる傾向にあることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、第1の微多孔質層のPE/PPのMw比が当該範囲から外れると、PEとPPとの相溶性が悪化する。そして、第1の微多孔質層にPEリッチな部分とPPリッチな部分とが存在することになる。PPはPEに比べ、活性層との接着性に優れるため、活性層との接着性の剥離強度のばらつきが大きくなると考えられる。
【0223】
(6)衝突耐性について
その他の成分として、A成分(直鎖状低密度ポリエチレン)、B成分(融解熱が96J/gのポリプロピレン)を、第1又は第2の微多孔質層に用いることで、衝突耐性が向上する傾向があることが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、A成分は、HDPE、UHMwPEに比べて結晶化しにくく、アモルファス部分が多く、これに対してB成分は、Mw1.2×10
6のPPに比べて結晶化しにくく、アモルファス部分が多く、そして、アモルファス部分には衝撃吸収作用があり、衝突耐性が向上する傾向にあるからであると考えられる。
第1のポリオレフィン樹脂よりも、第2のポリオレフィン樹脂が上記A成分又はB成分を含む方が、蓄電デバイスの衝突耐性の観点から好ましいことが分かった。その理由としては、理論に限定されないが、A成分またはB成分が含まれる層が他の層より厚い場合、A成分またはB成分が含まれる層が電極からより離れている場合(他の層が介在している場合)は、蓄電デバイスの衝突耐性が良好であると推定される。