【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度経済産業省「産業技術研究開発(次世代型産業用三次元造形システム技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記引用文献1に記載の技術では、欠陥を完全に除去することは難しく、また、水蒸気分圧が少し変化するだけで焼結体の相対密度が大きく低下するという問題がある。また、上記引用文献2に記載の方法では、工程が煩雑となりコストが掛かるため、実用化は非常に困難である。
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る金属積層造形用粉末は、
レーザー回折・散乱法で粒子径分布測定した場合の体積基準の50%粒子径が10μm以上100μm未満、比表面積が0.5m
2/g以下で、かつ、単位表面積当りの酸素量が30mg/m
2以上100mg/m
2以下のアルミニウム系粉末であって、
前記アルミニウム系粉末100g当りの水素量(Xml:標準状態)と比表面積(Ym
2/g)との関係、および、前記水素量(Xml:標準状態)と酸素量(Z重量%)との関係が次式で示される。
X/Y ≦ 130
Z/X ≧ 0.003
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る金属積層造形用粉末の製造方法は、
上記金属積層造形用粉末の製造方法であって、
酸素量が制御された不活性ガス雰囲気中でガスアトマイズ法、または、回転円盤アトマイズ法により、アルミニウム系合金粉末を製造する工程と、
前記アルミニウム系合金粉末を、不活性ガス中で300℃〜600℃で脱気する工程と、
を有する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る金属積層造形物は、
上記金属積層造形用粉末を用いて、粉末床溶融結合方式による3次元積層造形装置により造形した金属積層造形物であって、
水素含有量が100g当り3ml以下(標準状態)、かつ、相対密度が99%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミニウムを含む欠陥の無い健全な金属積層造形物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、本明細書において、「標準状態」とは0℃で1気圧の状態を示す。
【0010】
《前提技術》
アルミニウム系材料を用いた鋳造あるいは粉末冶金において、アルミニウム系材料に含まれる水素が欠陥を生じる原因となることが知られている。このため、アルミニウム合金を鋳造あるいは粉末冶金により作製する場合は、工程中に脱ガス処理を行い固溶水素あるいは表面水素(水等)を除去する方法が一般的に実施されている。しかしながら、アルミニウム系材料を金属積層造形に用いる場合、このような脱ガス工程を導入することは非常に難しい。例え導入できたとしても、脱ガスに非常に時間がかかり、生産効率を著しく低下させる結果となる。
【0011】
(課題)
本実施形態の課題は、アルミニウム系粉末を用いた金属積層造形における欠陥の生成機構について検討し、粉末に含まれる単位表面積当りの水素と酸素の量を制御することにより、脱ガス工程なしに、欠陥の無い造形物を得ることである。
【0012】
本実施形態のもう1つの課題は、アルミニウム系粉末が経時により吸湿し、積層造形物の密度が低下するという問題を解決することにある。例えば、積層造形後、造形に使用されなかった粉末を回収し再利用する場合、粉末が吸湿し初期の造形物密度が得られないという問題を解決する。
【0013】
《アルミニウム系合金粉末》
本実施形態のアルミニウム系合金粉末を得る方法は、次の2つの工程を有する。
(1) 酸素量が制御された不活性ガス雰囲気中でガスアトマイズ法、より好ましくは回転円盤アトマイズ法により、アルミニウム系合金粉末を製造する。
(2) 次に、製造されたアルミニウム系合金粉末を、不活性ガス中で300℃〜600℃、より好ましくは400℃〜500℃で脱気して、本実施形態のアルミニウム系合金粉末とする。
【0014】
(1:アルミニウム系合金粉末の製造)
本実施形態で使用するアルミニウム系合金材料は、Al−Si−Mg系合金であり、特に、純度99.7wt%のAl地金に、Si=10wt%、Mg=0.4wt%を添加し、加熱したAl-10wt%Si-0.4wt%Mgを合金溶湯として使用する。なお、アルミニウム系合金材料の合金組成については、Al−Si−Mg系合金に限るものではなく、展伸用合金(A1000系、A2000系、A3000系、A4000系、A5000系、A6000系、A7000系、A8000系)、鋳物用合金、または、ダイカスト用合金が好適に使用される。
【0015】
(ガスアドマイズ法の場合)
得られたAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金の900℃溶湯を直径2.2mmのノズルから噴出し、2.5MPaの高圧窒素で噴霧して、大気中で冷却されたアトマイズド粉体をサイクロンおよびバグフィルターで捕集する。または、酸素量1ppm以下に調整された窒素中で冷却されたアトマイズド粉体をサイクロンおよびバグフィルターで捕集する。なお、噴霧条件や噴霧雰囲気は、噴霧圧力が2.0〜5.0MPaの範囲でよく、噴霧雰囲気は窒素、アルゴン、あるいは、ヘリウムであってもよい。
【0016】
サイクロンにて捕集したアトマイズド粉体のうち50%粒径が21μmの合金粉を遠心力型気流式分級機にかけてさらに分級し、7μm以下の粉体の大半を除去する。次に、目開き45μm(325mesh)の篩いを通過させて得られた粉体を、ブレンダーを用いて均一に混合し、本実施形態のAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金粉末を得る。なお、本実施形態のAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金粉末としては、目開き45μm(325mesh)の篩い上に残った粉末を回収した粉体を用いることもできる。すなわち、50%粒子径が10μm以上100μm未満であるのが望ましい。
【0017】
(回転円盤アトマイズ法の場合)
得られたAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金の1100℃溶湯を直径1.7mmのノズルから、直径4mの、酸素量0.01重量%に調整された窒素チャンバー内に設置された、20000rpmで回転する直径100mmのグラファイト製回転円盤上に噴出し、アルミニウム系粉末を得る。この時の噴出ノズルと回転円盤の距離は15mmである。得られたアルミニウム系粉末を捕集し、遠心力型気流式分級機にかけてさらに分級し、7μm以下の粉体の大半を除去する。次に、目開き45μm(325mesh)の篩いにかけて得られた粉体を、ブレンダーを用いて均一に混合し、本実施形態のAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金粉末を得る。
【0018】
(2:アルミニウム系合金粉末の脱気)
得られたアルミニウム系合金粉末を、不活性ガスであるアルゴン雰囲気中で、300℃〜600℃、より好ましくは400℃〜500℃で脱気する。加熱時間は、10時間ほどである。なお、不活性ガスとしては、窒素、あるいは、ヘリウムも使用できる。また、加熱時間は、1〜100時間の間であればよい。
【0019】
《金属積層造形物》
ガスアトマイズ法、または、回転円盤アトマイズ法により製造され、さらに不活性ガス雰囲気で脱気された、本実施形態のアルミニウム系合金粉末を金属積層造形材料として、粉末床溶融結合方式による3次元積層造形装置により金属積層造形物を造形する。
【0020】
なお、3次元積層造形装置として、出力400W級のYbファイバーレーザー(ビームスポット径0.1mm)を搭載したEOS社製EOSINT M280を使用する例を示すが、本実施形態の金属積層造形物の特長は、積層造形方法により限定されるものではない。
【0021】
《評価方法》
アルミニウム系合金粉末およびその積層造形物の評価を、以下のようにして行なった。
(1) 粒度分布測定
レーザー回折式粒度分布計(日機装社製 マイクロトラック MT-3300)にて、各実施例または各比較例の粉体を超音波で180秒分散させたのち、測定系内循環水に投入し測定した。
(2) 比表面積の測定
BET法(マウンテック社製 Macsorb HM model-1210)により測定した。
(3) 酸素量の測定
不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法(堀場製作所社製 EMGA-920)により測定した。
(4) 水素量の測定
粉末の水素量:ランズレー法により測定した。
積層造形物の水素量:LECOジャパン社製 RHEN602型により測定した。
【0022】
(3) サテライトを有する粒子比率の算出
走査型電子顕微鏡(日本電子社製 JSM-6510A)を用いて各実施例、または各比較例の粉体を試料台に粒子同士の重なりがないように固定し、500倍に拡大した像を電子的に複数の視野を撮影したのち、同一試料から複数の粒子を少なくとも100個観察し、サテライトをもつ粒子と、サテライトをもたない粒子のそれぞれの粒子数をカウントした。
視野の撮り方として、1視野に含まれる粒子の数が15以下になるように撮影した。視野の寸法としては、縦横が50%粒子径の4倍〜12倍になるような大きさとした。粒子の重なりを極力減らして無作為抽出、すなわち、融着しているように見えるものなど、あいまいなものは全てサテライトとしてカウントした。
【0023】
(4) 円形度
上記(3)と同様にして撮影された複数の視野を画像解析ソフト(キーエンス社製VHX-1000)にて100個以上の粒子の円形度Ψcを測定して平均円形度を評価した。
(5) 5μm未満粒子の存在度の算出評価
上記(3)と同様にして撮影された複数の視野から100個以上の粒子を画像解析ソフト(キーエンス社製VHX-1000)にてHeywood径(円相当径)を算出し、5μm未満の粒子数、5μm以上10μm未満の粒子数、10μm以上の粒子数を求めた。以下の式により5μm未満粒子の存在度を算出した。この存在度が1.0以下の場合、流動性に優れる。
流動性の評価:
(直径が5μmより小さな粒子の個数×3)/(直径が10μm以上の大きな粒子の個数)
【0024】
(6) 合金組成の測定
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP 6500 DUOView)にて、加圧容器で加熱溶解した各実施例または各比較例の粉体を測定した。
(7) 造形物の特性
出力400W級のYbファイバーレーザー(ビームスポット径0.1mm)を搭載したEOS社製EOSINT M280で造形を行った。
直径8mm×高さ15mmの円柱を造形し、アルキメデス法によって、真密度に対する相対密度を測定した。
また、直径6mm×長さ38mmの円柱を造形し、そこから、平行部直径3.5mm、平行部長さ18mmのダンベル状に旋削して作製した。万能試験機(INSTRON M4206)を用いて引張り試験を行った。クロスヘッド速度は、1mm/minとした。
【0025】
《評価結果》
(金属積層造形用粉末)
本実施形態の金属積層造形用粉末は、レーザー回折・散乱法で粒子径分布測定した場合の体積基準の50%粒子径が10μm以上100μm未満、比表面積が0.5m
2/g以下で、かつ、単位表面積当りの酸素量が30mg/m
2以上100mg/m
2以下のアルミニウム系粉末である。
【0026】
また、本実施形態の金属積層造形用粉末は、アルミニウム系粉末100g当りの水素量(Xml:標準状態)と比表面積(Ym
2/g)との関係、および、前記水素量(Xml:標準状態)と酸素量(Z重量%)との関係が、X/Y < 151、Z/X > 0.0022で示される。特に、X/Y ≦ 130、Z/X ≧ 0.003で示される。
【0027】
(金属積層造形物)
上記金属積層造形用粉末を用いて、粉末床溶融結合方式による3次元積層造形装置により造形した本実施形態の金属積層造形物は、水素含有量が100g当り3ml(標準状態)以下、かつ、相対密度が99%以上である。
【0028】
《本実施形態の作用効果》
本実施形態のアルミニウム系粉末による金属積層造形用粉末によれば、下記のような顕著な効果が達成される。
(1)従来のアルミニウム系粉末では困難であった欠陥の無い健全な金属積層造形物が得られる。
(2)公知のアルミニウム系粉末では得られなかった流動性、敷き詰め性が発現されるので、積層造形工程において、均一なパウダーベッドが形成され、緻密な成型品が得られる。
(3)従来のアルミニウム系粉末では、酸素量および/または水素量が増加し積層造形物の密度が低下する問題があったが、本実施形態の金属積層造形用粉末は安定で、回収再利用する場合においても、密度の高い積層造形物が得られる。
【実施例】
【0029】
本発明に係る実施例1〜6および比較例1〜6のアルミニウム系合金粉末の製造およびその積層造形物と、その試験結果を、表1に示す。
【表1】
【0030】
《実施例1〜6のアルミニウム系合金粉末およびその積層造形物》
以下、本実施例1〜6のアルミニウム系合金粉末の製造およびその積層造形物と、その試験結果を説明する。
【0031】
(実施例1)
純度99.7wt%のAl地金に、Si=10wt%、Mg=0.4wt%を添加し、加熱してAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金溶湯とした。得られた900℃溶湯を直径2.2mmのノズルから噴出し、2.5MPaの高圧窒素で噴霧して、大気中で冷却されたアトマイズド粉体をサイクロンおよびバグフィルターで捕集した。サイクロンにて捕集したアトマイズド粉体のうち50%粒径が21μmの合金粉を遠心力型気流式分級機にかけてさらに分級し、7μm以下の粉体の大半を除去した後、目開き45μm(325mesh)の篩いを通過させて得られた粉体を、ブレンダーを用いて均一に混合し、本実施例のAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金粉末を得た。さらに、得られた合金粉末をアルゴン雰囲気中において450℃で10時間加熱した。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0032】
(実施例2)
目開き45μmの篩上に残った粉末を回収した粉体を使用し、アルゴン雰囲気中での加熱温度を400℃にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粉末を得た。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0033】
(実施例3)
アルゴン雰囲気中での加熱温度を425℃にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粉末を得た。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0034】
(実施例4)
純度99.7wt%のAl地金に、Si=10wt%、Mg=0.4wt%を添加し、加熱してAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金溶湯とした。得られた1100℃溶湯を直径1.7mmのノズルから、直径4mの、酸素量0.01重量%に調整された窒素チャンバー内に設置された、20000rpmで回転する直径100mmのグラファイト製回転円盤上に噴出し、アルミニウム系粉末を得た。この時の噴出ノズルと回転円盤の距離は15mmであった。得られたアルミニウム系粉末を捕集し、遠心力型気流式分級機にかけてさらに分級し、7μm以下の粉体の大半を除去した後、目開き45μm(325mesh)の篩いにかけて得られた粉体を、ブレンダーを用いて均一に混合し、本実施例のAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金粉末を得た。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0035】
(実施例5)
実施例4で得られたアルミニウム系粉末を450℃のアルゴン雰囲気中で10時間加熱した。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0036】
(実施例6)
純度99.7wt%のAl地金に、Si=10wt%、Mg=0.4wt%を添加し、加熱してAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金溶湯とした。得られた900℃溶湯を直径2.2mmのノズルから噴出し、2.5MPaの高圧窒素で噴霧して、酸素量1ppm以下に調整された窒素中で冷却されたアトマイズド粉体をサイクロンおよび、バグフィルターで捕集した。サイクロンにて捕集したアトマイズド粉体のうち50%粒径が21μmの合金粉を遠心力型気流式分級機にかけてさらに分級し、7μm以下の粉体の大半を除去した後、目開き45μm(325mesh)の篩いを通過させて得られた粉体を、ブレンダーを用いて均一に混合し、本実施例のAl-10wt%Si-0.4wt%Mg合金粉末を得た。さらに、得られた合金粉末をアルゴン雰囲気中において450℃で10時間加熱した。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0037】
《比較例1〜6のアルミニウム系合金粉末およびその積層造形物》
以下、本実施例1〜6のアルミニウム系合金粉末の製造およびその積層造形物と対比するために、比較例1〜6のアルミニウム系合金粉末およびその積層造形物その試験結果を説明する。
【0038】
(比較例1)
アルゴン雰囲気中での加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のアルミニウム系粉末を得た。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0039】
(比較例2)
アルゴン雰囲気中での加熱処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例2のアルミニウム系粉末を得た。
この粉末の特性値およびこの粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0040】
(比較例3)
市販の比較的細かい金属積層造形用アルミニウム系粉末の特性値と、この粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0041】
(比較例4)
市販の比較的粗い金属積層造形用アルミニウム系粉末の特性値と、この粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0042】
(比較例5)
アルゴン雰囲気中での加熱処理を行わなかった以外は、実施例6と同様にして、比較例5のアルミニウム系粉末を得た。
この粉末の特性値と、この粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0043】
(比較例6)
空気中400℃で脱気処理を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例6のアルミニウム系粉末を得た。
この粉末の特性値、この粉末を用いて作製した造形物の相対密度と引張強度とを、表1に示す。
【0044】
《安定性および再利用の検証》
上記実施例1−5、および、比較例1−6のアルミニウム合金粉末について、開放状態で常温1ヶ月保管後、積層造形を5回繰り返した後回収した粉末の水素量および酸素量を測定した。得られた結果を、表2に示す。
【表2】
【0045】
表2より、本実施例の開放状態で保管してもアルミニウム合金粉末は水素量および酸素量の変化が少なく、経時・回収後に再度積層造形しても造形物の密度が低下しないのに対し、比較例でZ/X値が0.0022を下回る粉末、特にZ/X値が0.003を下回る粉末については、積層造形物の密度低下が著しい。
本発明は、アルミニウムを含む欠陥の無い健全な金属積層造形物を提供する。本金属積層造形物を造形する金属積層造形用粉末は、レーザー回折・散乱法で粒子径分布測定した場合の体積基準の50%粒子径が10μm以上100μm未満、比表面積が0.5m
/g)との関係、および、水素量(Xml:標準状態)と酸素量(Z重量%)との関係が、X/Y < 151、Z/X > 0.0022、で示される。そして、この金属積層造形用粉末を用いて、粉末床溶融結合方式による3次元積層造形装置により造形した金属積層造形物は、水素含有量が100g当り3ml以下(標準状態)、かつ、相対密度が99%以上である。