(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱交換機構は、複数の内部熱交換器を有し、前記内部熱交換器への流路を開閉する仕切弁をさらに有することを特徴とする請求項1または2の何れか一の請求項に記載された有機溶剤含有ガス処理システム。
前記脱離用ガスが、前記熱交換機構に供給される前の前記濃縮ガスとの間で熱交換を行う熱交換手段をさらに有する請求項1乃至3の何れか一の請求項に記載された有機溶剤含有ガス処理システム。
前記熱交換機構を通過した後の前記脱離用ガスを加熱若しくは冷却する加熱冷却器を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一の請求項に記載された有機溶剤含有ガス処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システムについて図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の実施形態のいくつかを例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0013】
(実施の形態1)
図1に本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1の構成を示す。本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1は、濃縮脱離装置20と、蓄熱式燃焼装置30と、濃縮脱離装置20に脱離用ガスAを送風するブロア10を有する。
【0014】
ブロア10は濃縮脱離装置20に捕捉された有機溶剤を取り出すための、キャリアガスとして、脱離用ガスAを送風する。脱離用ガスAは通常のフレッシュエアを好適に利用することができるが、窒素や酸素の比率を変化させた気体であってもよい。なお、ブロア10の流量は後述する制御装置40で制御されてもよい。
【0015】
濃縮脱離装置20は、原ガスV中の有機溶剤を濃縮できれば特に限定されない。例えば多塔式吸着濃縮装置やハニカムローター型濃縮装置等が利用できる。中でもハニカムローター型濃縮装置は好適に利用できる。よく知られているように、ハニカムローター型濃縮装置は、吸着材が充填されたローターが軸20aを枢軸として回転している。そしてローターの一部から有機溶剤を含む原ガスVが供給され、有機溶剤が吸着材で除去された浄化ガスCVを排出する。原ガスV中の有機溶剤を吸着材に吸着させる工程は吸着工程である。
【0016】
一方、有機溶剤を吸着した吸着材は、ローターの回転によって原ガスVが供給されたのとは異なる位置で脱離用ガスAに晒される。脱離用ガスAは、原ガスVが供給されるのとは反対側から供給される。脱離用ガスAは吸着材を通過する際に有機溶剤を取り去り、有機溶剤を含有する濃縮ガスBとなる。なお、濃縮ガスB中の有機溶剤濃度は、原ガスV中の有機溶剤濃度や、脱離用ガスAの流量によって変化する。なお、吸着材に脱離用ガスAを接触させ、吸着材から有機溶剤を脱離させて濃縮ガスBを生成するのは、濃縮ガス生成工程である。
【0017】
すなわち、濃縮脱離装置20は、有機溶剤を含む原ガスVと脱離用ガスAが供給され、原ガスVから有機溶剤を除去した浄化ガスCVと、脱離用ガスAが有機溶剤を含んだ濃縮ガスBを排出する。
【0018】
蓄熱式燃焼装置30は、少なくとも第1蓄熱部31と第2蓄熱部32の2つの蓄熱部を有する。蓄熱式燃焼装置30は、3つ以上の蓄熱部を有していてもよい。また蓄熱式燃焼装置30は、第1蓄熱部31および第2蓄熱部32を連通する連通部33を有する。第1蓄熱部31と第2蓄熱部32は、互いに気密に仕切られている。それぞれの蓄熱部は、一方の端から他方の端まで気体が通過できる。それぞれの蓄熱部は、気体が通過することで、気体から熱量を奪い、若しくは気体に熱量を付与する。
【0019】
連通部33は、燃焼室でもあり、燃焼触媒33aとバーナー33bを有する。燃焼触媒33aは、白金系触媒等が好適に利用でき、有機溶剤の燃焼温度を低くすることができる。バーナー33bは、電気式若しくは燃焼式が利用できるが、電気式が好適に利用できる。バーナー33bは、燃焼触媒33aの温度を燃焼温度に維持する。
【0020】
第1蓄熱部31を通ってきた濃縮ガスBは連通部33で燃焼され、濃縮ガスB中の有機溶剤は水と二酸化炭素に分解される。分解された濃縮ガスBは、二酸化炭素と水を含む排出ガスDとなり、連通部33に連通している第2蓄熱部32に送り出され、排出される。したがって、排出ガスDは、「燃焼した濃縮ガスB」である。なお、濃縮ガスBを燃焼させるのは燃焼工程である。
【0021】
排出ガスDは、第2蓄熱部32で熱を放出する。第2蓄熱部32はその熱を蓄熱し、蓄熱量を増加させる。一方、第1蓄熱部31は、濃縮ガスBに熱を付与し続けるため蓄熱量は減少する。したがって、一定のタイミングで第1蓄熱部31と第2蓄熱部32を交換する。交換は、通常濃縮ガスBの入口と排出ガスDの出口の接続を変更することで行われる。つまり、第1蓄熱部31と第2蓄熱部32の交換後は、濃縮ガスBは、第2蓄熱部32から入り、連通部33を通過した後、排出ガスDとなって第1蓄熱部31を通過し排出される。
【0022】
交換の際には、濃縮ガスBに熱を付与していた第1蓄熱部31をパージしてもよい。第1蓄熱部31は濃縮ガスBが通過しているので、有機溶剤が残留している。パージは有機溶剤を含んでいないガスを第1蓄熱部31に流すことで、残留している有機溶剤を追い出す処理である。蓄熱式燃焼装置30が、蓄熱部を3つ以上有していれば、濃縮ガスBの受け入れ、排出ガスDの排出、パージという3つの状態を順に回すことができる。結果、濃縮ガスBの流れを止めることなく、濃縮ガスBの燃焼処理を連続的に行うことができる。
【0023】
本発明の有機溶剤含有ガス処理システム1では、蓄熱式燃焼装置30の連通部33に熱交換機構34が設けられている。熱交換機構34は、連通部33の内部若しくは連通部33の外壁面の熱を利用し、濃縮脱離装置20に供給される前の脱離用ガスAに熱を付与する。
図1では、熱交換を行う部分を符号34aで表した。以後、内部熱交換器34aと呼ぶ。また、脱離用ガスAが吸着材に接触させられる前に、濃縮ガスBを燃焼させて(燃焼工程)生じた熱で温度を上昇させるのは予備加熱工程である。
【0024】
また、熱交換機構34はヒータ35を有していてもよい。ヒータ35は脱離用ガスAに付与する熱量が、内部熱交換器34aだけで不足する場合に用いる熱源である。ヒータ35は、電気式であっても、燃焼式であってもよい。したがって、熱交換機構34は、少なくとも内部熱交換器34aを有し、ヒータ35を含んでいてもよい。
【0025】
これらの各装置は、流路によって連結されている。流路はダクトやパイプ等で構成される。ブロア10から蓄熱式燃焼装置30までは、第1流路51で連結されている。蓄熱式燃焼装置30の連通部33に設けられた熱交換機構34内には、第1流路51に接続された第2流路52が配置されている。第2流路52は、内部熱交換器34a内の流路である。第2流路52には、第3流路53が連結されており、濃縮脱離装置20の脱離用ガス取り入れ口に接続されている。
【0026】
濃縮ガスBが排出される濃縮脱離装置20の濃縮ガス排出口には第4流路54が接続されて、蓄熱式燃焼装置30の取り入れ口に連結されている。また、蓄熱式燃焼装置30の排出口には、排出路55が接続されている。また、濃縮脱離装置20には、原ガスVが供給される原ガス流路60と、原ガスVから有機溶剤が除去された浄化ガスCVを排出する浄化ガス流路62が設けられている。なお、本明細書を通じて、各流路において、「上流」とはブロア10側(気体の送風源側)をいい、「下流」とは気体が流れる先側をいう。
【0027】
本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1では、上記の構成からさらに効率が向上し、若しくは利便性が高まる以下の構成要素を付加してもよい。
【0028】
熱交換手段41は、第1流路51中に設けられ、脱離用ガスAが熱交換機構34に供給される前に、熱量を交換できる装置である。まず、熱交換手段41は、第1流路51と第4流路54との間で熱交換を行う外付け熱交換器41aであってよい。また、熱交換手段41は、濃縮脱離装置20(熱交換器41b)であってもよい(詳細は
図5で説明する。)。
【0029】
また、第3流路53には、加熱冷却器43、温度センサ44が設けられている。温度センサ44は、加熱冷却器43の下流側で、濃縮脱離装置20の脱離用ガスAの供給口(取入れ口)直前までの間に設けるのがよい。濃縮脱離装置20直前の脱離用ガスAの温度を監視することで、脱離用ガスAの流量を制御できるようにするためである。
【0030】
また、温度センサ44の信号に基づいて、ブロア10の流量および、加熱冷却器43等を制御する制御装置40が設けられていてもよい。各流路には、上流から下流に向かう空気の流れを強化するために、補助ブロア11を適宜配置することができる。流路での圧損を補償するためである。
図1では、第4流路54に補助ブロア11を示したが、他の流路に配置してもよい。
【0031】
以上の構成を有する有機溶剤含有ガス処理システム1の動作について説明する。本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1は、脱離用ガスAを濃縮脱離装置20に供給する前に濃縮ガスBを燃焼して生成した熱との間で熱交換を行うものである。濃縮ガスB中には有機溶剤が含まれており、これを燃焼させると、有機溶剤自体が燃料となり熱量を発生する。その熱で脱離用ガスAを加熱する。したがって、脱離用ガスAを加熱するためのエネルギーを別途用意する必要がない。そのため、有機溶剤含有ガス処理システム1全体としての省エネルギー運転が可能となる。
【0032】
まず、気体の流れを説明する。原ガスVは、図示しない有機溶剤発生場所で発生し、原ガス流路60で濃縮脱離装置20に供給される。原ガスVは、濃縮脱離装置20中の吸着材によって、有機溶剤が吸着され、有機溶剤を有さない浄化ガスCVとなり、浄化ガス流路62によって排出される。浄化ガス流路62の先は、大気中であってもよいし、図示しない再利用場所であってもよい。
【0033】
ブロア10から送出される脱離用ガスAは第1流路51を通り、蓄熱式燃焼装置30に向かう。蓄熱式燃焼装置30では、熱交換機構34を通過する第2流路52が設けられている。蓄熱式燃焼装置30からは、濃縮脱離装置20まで第3流路53が設けられる。脱離用ガスAは、これらの流路を通る。そして、濃縮脱離装置20を通過すると脱離用ガスAは濃縮ガスBとなる。
【0034】
濃縮ガスBは第4流路54を通って、蓄熱式燃焼装置30の第1蓄熱部31に向かう。濃縮ガスB中の有機溶剤は、蓄熱式燃焼装置30を通過すると、水と二酸化炭素に分解され、排出ガスDとなる。排出ガスDは、排出路55を通って放出される。
【0035】
次に有機溶剤含有ガス処理システム1を運転するために必要な熱量について説明する。なお、当業界では、熱量を単位体積当たりの気体の温度に換算して説明される。したがって、熱量を温度(℃)で表す場合もある。
【0036】
濃縮脱離装置20には、原ガスV中の有機溶剤が吸着されている。この有機溶剤を脱離させるためには、濃縮脱離装置20に供給する脱離用ガスAは、およそ180℃程度の温度にする必要がある。脱離用ガスAは最初20℃ほどであるので、脱離用ガスAを20℃から180℃まで160℃分上昇させるための熱量が必要となる。これを熱量QAとする。
【0037】
脱離用ガスAは、濃縮脱離装置20から有機溶剤を脱離させると、濃縮ガスBとなる。濃縮ガスBは、有機溶剤の蒸発熱によって180℃の脱離用ガスAより温度は下がる。濃縮ガスBの温度をTB1℃とする。第4流路54中に熱交換器41a(熱交換手段41)が設けられている場合は、濃縮ガスBは、蓄熱式燃焼装置30に供給される前の脱離用ガスAに熱を付与する。結果、濃縮ガスBの温度はさらに下がる。第4流路54中で熱交換によって下がってしまった濃縮ガスBの温度はTB2℃とする。
【0038】
蓄熱式燃焼装置30に供給されると、燃焼温度Tr(およそ350℃〜450℃)まで濃縮ガスBの温度は上げられる。この時に必要な熱量をQBとする。
【0039】
図2には、本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1(
図2(a))と従来の有機溶剤含有ガス処理システム100(
図2(b))の構成を示す。なお、この図での説明に不要な部分は削除して示した。また、
図2(a)においては、
図1の熱交換器41aがない構成である。これを有機溶剤含有ガス処理システム1aとし、熱交換器41aが付いているシステムを有機溶剤含有ガス処理システム1bとする。
図1は有機溶剤含有ガス処理システム1bを示している。
【0040】
図2(b)を参照して、従来の有機溶剤含有ガス処理システム100では、有機溶剤含有ガス処理システム1のように熱交換機構34を有していないので、熱量QAを脱離用ガスAに付与するための加熱器102が必要である。
【0041】
脱離用ガスAは、両方システムとも、熱量QAを付与されて、濃縮脱離装置20および濃縮脱離装置120に供給され、濃縮ガスBとなって、蓄熱式燃焼装置30および蓄熱式燃焼装置130に供給される。さて、濃縮ガスB中には有機溶剤が含有されているので、濃縮ガスBを燃焼させるとそれ自体が燃料となり、熱量QEを生じる。これは、有機溶剤の酸化発熱熱量で、通常温度上昇分として表され「Δt」と呼ばれている。
【0042】
このΔt分の熱量は、連通部33に供給された濃縮ガスBの温度上昇のためにも充当することができる。また、熱交換機構34内を通過する脱離用ガスAの温度上昇のために充当することもできる。なお、以下従来の有機溶剤含有ガス処理システム100の符号を括弧で示す。
【0043】
本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1aでは、この熱量QEを、脱離用ガスAを昇温させるための熱量QAと、濃縮ガスBを燃焼温度Trまで昇温させるための熱量QBに充当する。
【0044】
一方、従来の有機溶剤含有ガス処理システム100では、熱量QEを、濃縮ガスBを昇温させるための熱量QBに充当することはできるものの、脱離用ガスAを昇温させるための熱量QAについては、使用されていない。つまり、別途エネルギー源が必要となる。
【0045】
より具体的に説明する。なお、Δtは150℃とする。つまり、有機溶剤を燃焼させることで、150℃分の熱量が蓄熱式燃焼装置30(130)内で発生する。また、蓄熱式燃焼装置30(130)内においては、熱交換効率を90%とする。すなわち、第1蓄熱部31(131)および第2蓄熱部32(132)で熱交換される場合と、熱交換機構34での熱交換効率は90%とする。
【0046】
まず、熱交換器における熱交換の簡易的な計算の仕方を
図3を参照し説明する。
図3を参照し、熱交換器200には、流量が同じ流体αと流体βが別々の方向から流れ込み、熱交換を行う。今、図の右側が温度が高い側で、左側は温度が低い側とする。また、流体αの温度が流体βの温度より高いとする。そして、それぞれの流体の熱交換器200に入る前の温度をTα1、Tβ1とし、熱交換器200を出た後の温度をそれぞれTα2、Tβ2とする。
【0047】
すると、熱変換効率η(%)は(1)式のように表される。
【数1】
【0048】
再度
図2(a)を参照する。脱離用ガスAの初期温度を20℃とし、濃縮脱離装置20に供給する際には、180℃に昇温させるとする。つまり、160℃分の熱量が熱量QAである。また、濃縮ガスBは80℃に降温し、蓄熱式燃焼装置30の燃焼温度Trは400℃とする。したがって、320℃分の熱量が熱量QBである。
【0049】
まず、蓄熱式燃焼装置30の蓄熱部における入力出力の関係より、80℃の濃縮ガスBは、368℃まで上昇される。したがって連通部33において、濃縮ガスBは燃焼温度Trを400℃にするために、あと32℃分の熱量が必要である。また、400℃の排出ガスDは、112℃まで温度が低下する。
【0050】
なお、第1蓄熱部31と第2蓄熱部32は、1つの熱交換器と見なして(1)式を適用した。つまり、第1蓄熱部31と第2蓄熱部32で構成された熱交換器は、80℃の濃縮ガスBに熱量を付与して368℃まで上昇させて排出し、400℃の排出ガスDから熱量を奪い112℃まで冷却して排出したことになる。
【0051】
次に20℃の脱離用ガスAが180℃になるためには、160℃分の熱量QAが必要であった。今Δtを150℃としたので、これを熱量QAに充当すると、後10℃分の熱量が必要となる。つまり、濃縮ガスBを400℃に上昇し、脱離用ガスAを180℃にするために、32℃と10℃の合計量である42℃分の熱量が必要となる。これを追い焚き熱量QDとする。追い焚き熱量QDは有機溶剤含有ガス処理システム1aを運転するために必要な熱量であり、ランニングコストに含まれる熱量となる。
【0052】
次に
図2(b)を参照する。従来の有機溶剤含有ガス処理システム100では、160℃分の熱量QAは、別途用意する必要がある。Δtから充当することはできない。連通部33を通過していないからである。180℃の脱離用ガスAは、濃縮脱離装置120で有機溶剤を脱離させると、80℃まで温度が下がった濃縮ガスBとなる。この濃縮ガスBは、第1蓄熱部131の熱交換によって、368℃まで温度が上昇する。つまり、燃焼温度Trの400℃に達するまでに後32℃分の熱量が必要である。今Δtを150℃としたので、この32℃分の熱量はΔtから充当される。
【0053】
結果、有機溶剤含有ガス処理システム100では、追い焚き熱量QDは、160℃分の熱量を必要とする。つまり、160℃分の熱量がランニングコストに含まれることとなる。以上のように、本発明に係る有機溶剤含有ガス処理システム1aは、熱を効率よく利用することができ、ランニングコストを低く抑えられるという効果を有する。
【0054】
図4は、
図1で示した第1流路51と第4流路54との間で熱交換を行う外付け熱交換器41aがある場合(有機溶剤含有ガス処理システム1b)の熱量を概算したものである。濃縮脱離装置20に供給される脱離用ガスAの温度は180℃であり、濃縮ガスBとなった際には、80℃まで温度が低下する点は、
図2の場合と同じである。また、蓄熱式燃焼装置30の連通部33での燃焼温度Trも400℃と
図2の場合と同じである。
【0055】
熱交換器41aの熱交換効率は50%とした。すると、熱交換器41aを出た脱離用ガスAの温度は50℃になり、脱離用ガスAに熱を付与した濃縮ガスBの温度も50℃になる。
【0056】
脱離用ガスAの温度は熱交換機構34で50℃から180℃まで加熱されるので、熱量QAは130℃分の熱量である。一方、50℃となった濃縮ガスBの温度は、第1蓄熱部31にて365℃まで上昇する。したがって、400℃まで後35℃分の熱量QBが必要である。なお、排出ガスDの温度は85℃となる。
【0057】
つまり、脱離用ガスAの温度を180℃に加熱し、濃縮ガスBの温度を400℃に加熱するには、後165℃分の熱量が必要となる。今Δtが150℃としているので、追い焚き熱量QDは15℃となる。これは
図2(a)の42℃より少なくてよい。このように、熱交換器41aを設けると、
図2(a)の場合(有機溶剤含有ガス処理システム1a)よりさらに熱の利用効率が高くなる。
【0058】
図5は、第1流路51を少し変形させた形態である有機溶剤含有ガス処理システム1cの構成を示す。第1流路51は、ブロア10から濃縮脱離装置20に連結される。180℃の脱離用ガスAによって有機溶剤を取り去られた直後の濃縮脱離装置20の吸着材は、第1流路51を通過している脱離用ガスAより高い温度になるほどの熱量をまだ有している。
【0059】
有機溶剤含有ガス処理システム1cは、第1流路51を通過する脱離用ガスAに、この吸着材の中を通過させることで、吸着材から脱離用ガスAに熱量を移行させる。つまり、有機溶剤含有ガス処理システム1cは、濃縮脱離装置20を熱交換器41bとして利用する。なお、熱交換器41bは、熱交換手段41である。また、熱交換器41bでは、吸着材の冷却を行っているともいえる。ここでの熱交換の結果、脱離用ガスAの温度は80℃になったとする。
【0060】
80℃の脱離用ガスAは、熱交換機構34を通過し、180℃まで加熱される。したがって、熱量QAは100℃分である。一方、濃縮脱離装置20から排出される80℃の濃縮ガスBは、蓄熱式燃焼装置30の第1蓄熱部31で熱交換によって368℃まで温度が上昇する。つまり、濃縮ガスBを400℃にするためには、後32℃分の熱量が必要となる。したがって、脱離用ガスAを180℃にし、濃縮ガスBを400℃にするためには、後132℃分の熱量が必要となる。なお、排出ガスDの温度は112℃である。
【0061】
一方、濃縮ガスB中の有機溶剤が燃焼することで得られる熱量QE(=Δt)は150℃であった。したがって、この場合、追加する熱量は不要であり、追い焚き熱量QDは、0℃である。つまり、有機溶剤含有ガス処理システム1cは、
図4の有機溶剤含有ガス処理システム1bよりさらに熱効率のよいシステムであると言える。
【0062】
(実施の形態2)
図6には、本実施の形態に係る有機溶剤含有ガス処理システム4の構成を示す。有機溶剤含有ガス処理システム4と、
図1で示した有機溶剤含有ガス処理システム1との相違点は、有機溶剤含有ガス処理システム4の熱交換機構38は、熱交換機構34と比較して流量を倍にできる点にある。
【0063】
図7に熱交換機構38の構成を示す。熱交換機構38は2系列の内部熱交換器M1および内部熱交換器M2と、ヒータ35と、仕切弁39で構成されている。熱交換機構38の下側(および周囲を含めてもよい)は連通部33であり、燃焼触媒33aとバーナー33bが配置されている(
図6参照)。その下側には蓄熱部31、32が配置されている(
図6参照)。熱交換機構38の入口38iには、第1流路51が接続されている。また、熱交換機構38の出口38oには、第3流路53が接続されている。熱交換機構38自身は、第2流路52を構成する。
【0064】
熱交換機構38は2つの独立した内部熱交換器M1および内部熱交換器M2が併設されている。内部熱交換器M1および内部熱交換器M2は、それぞれ隔離されている。すなわち、内部熱交換器M1を通過する気体は内部熱交換器M2内には漏れ出さない。したがって、それぞれの内部熱交換器内が第2流路52を構成する。
【0065】
これらを区別するために、それぞれ第2流路52aおよび第2流路52bとする。内部熱交換器M1および内部熱交換器M2の入口はそれぞれ仕切弁39に接続されている。また、内部熱交換器M1および内部熱交換器M2の出口はともに熱交換機構38の出口38oと連通している。
【0066】
仕切弁39は、入口38iと第2流路52bを開閉させる弁であり、入口38iと第2流路52aは常に連通させている。したがって、仕切弁39が閉じると、第2流路52は、第2流路52aだけが連通する。一方、仕切弁39が開くと、第2流路52は、第2流路52aと第2流路52bの2本の流路で構成される。
【0067】
したがって、仕切弁39が閉まっている場合は、第1流路51から導入される脱離用ガスAは内部熱交換器M1だけを流れる(
図7(a))。仕切弁39が開いている場合は、脱離用ガスAは内部熱交換器M1および内部熱交換器M2のどちらにも流れる(
図7(b))。仕切弁39は制御装置40(
図6参照)によって開閉が制御される。
【0068】
これは言い換えると、仕切弁39によって第2流路52の断面積を変化させているともいえる。なお、ここでは熱交換機構38中の内部熱交換器は2つの場合を説明するが、3つ以上の内部熱交換器が備えられていてもよい。また、仕切弁39は内部熱交換器の入口部分で流路制御を行うよう説明するが、内部熱交換器の出口部分に仕切弁39が配置されていてもよい。
【0069】
また、
図7(a)では、第2流路52bが連通状態でないことを点線で表し、第2流路52bと接続している部分の仕切弁39が閉じている状態を黒三角で表した。
図7(b)では、第2流路52bは入口38iと出口38oの間を連通しており、実線で示した。また仕切弁39の第2流路52bが接続されている部分が開いている状態を白三角で表した。
【0070】
図6を再度参照する。有機溶剤含有ガス処理システム4は、原ガスV中の有機溶剤濃度に応じてブロア10の送流量を制御するとともに、仕切弁39を制御することで、追い焚き熱量QDを0℃に維持しつつ、各所(濃縮脱離装置20に供給直前の脱離用ガスAの温度および、連通部33における燃焼温度Tr)を一定に維持できるシステムである。なお、熱交換機構38の構造は
図7に示した通りであるが、
図6および
図8から
図11を含め、第2流路52bは、第3流路53に直接連結しているように示した。記載簡略化のためである。
【0071】
図8、
図9、
図10を参照して有機溶剤含有ガス処理システム4の動作を説明する。
図8は、原ガスV中の有機溶剤量が少ない場合を示し、
図9は、原ガスV中の有機溶剤量が多くなった場合で脱離用ガスAの流量を増やす場合を示す。また、
図10は、原ガスV中の有機溶剤量がさらに増え、仕切弁39を開き、内部熱交換器M1に加え内部熱交換器M2も使用する場合の状態を示している。
【0072】
まず、
図8を参照する。脱離用ガスAは、ブロア10から濃縮脱離装置20に送られ、その後蓄熱式燃焼装置30の熱交換機構38に送られ、再度濃縮脱離装置20に供給される。脱離用ガスAは、濃縮脱離装置20によって濃縮ガスBとなり、蓄熱式燃焼装置30に供給される。第1蓄熱部31で熱交換を行った後、連通部33で燃焼され、その後排出ガスDとなり、排出される。脱離用ガスAおよび濃縮ガスBの流れは
図5で示した有機溶剤含有ガス処理システム1cと同じである。
【0073】
有機溶剤含有ガス処理システム4の立ち上げ時は、原ガスV中に有機溶剤が少ないので、濃縮ガスB中にも有機溶剤はほとんどない。したがって、連通部33全体の温度は上昇せず、熱交換機構38は、連通部33から熱量をもらえない。そこで、熱交換機構38のヒータ35によって脱離用ガスAの温度を180℃まで上げる。
図8では、ヒータ35の温度が200℃であることを示している。180℃の脱離用ガスAは、濃縮脱離装置20によって、吸着材中の有機溶剤を取り去り濃縮ガスBとなる。そして、蓄熱式燃焼装置30で処理される。
【0074】
有機溶剤がほとんどない濃縮ガスBは、ほとんど自燃しないので、触媒温度を維持するための熱量も必要となる。この熱量はバーナー33bから供給される。つまり、システム立ち上がり時においては、脱離用ガスAの温度を上げるための熱量QAと、濃縮ガスBを燃焼温度Trまで昇温させるための熱量は、別途必要となる。結果、追い焚き熱量QDは0℃ではない。
【0075】
次に
図9を参照する。原ガスV中の有機溶剤の濃度が上昇すると、濃縮ガスB中の有機溶剤量が増加する。すると、連通部33内の温度が上昇し、熱交換機構38は連通部33から熱量を受け取れる。
図9の400℃は、熱交換機構38が連通部33からもらえる温度(熱量)を示している。
【0076】
また、Δtが大きくなり、脱離用ガスAを昇温させるための熱量QAと、濃縮ガスBを燃焼温度Trに上げるための熱量にΔtを充当することができる。この際には、仕切弁39はまだ閉じており、脱離用ガスAは内部熱交換器M1だけを通過する。これは
図6と同じ状態である。また、各所の熱量は
図5と同じ状態である。この状態がシステムの定常運転であり、追い焚き熱量QDは0℃にすることができる。
【0077】
図6の状態(各所の温度は
図5)からさらに原ガスV中の有機溶剤の濃度が上昇すると、連通部33での燃焼温度Trを上昇させることとなる。その結果、熱交換機構38を通過する脱離用ガスAの温度が上昇する。この温度上昇は温度センサ44で検知され、制御装置40に通知される。制御装置40は、この通知によってブロア10に送風量(流量)を増加させるように指示を出す。すると、熱交換機構38を通過する単位時間当たりの脱離用ガスAの量が増え、濃縮脱離装置20の直前の脱離用ガスAの温度上昇は抑制される。結果、脱離用ガスAの温度は維持され、追い焚き熱量QDも0℃のままである。なお、
図9では、流量が増加したことを各流路の線幅を広げて示した。
【0078】
逆に、原ガスV中の有機溶剤の濃度が低下すると、濃縮ガスB中の有機溶剤濃度が低下する。すると、連通部33での燃焼熱量が減るので脱離用ガスAの濃縮脱離装置20直前の温度が低下する。これの温度降下は温度センサ44で検知され、制御装置40に通知される。制御装置40は、この通知によってブロア10に送風量(流量)を減少させるように指示を出す。すると、熱交換機構38を通過する単位時間当たりの脱離用ガスAの量が減り濃縮脱離装置20の直前の脱離用ガスAの温度低下は抑制される。結果、脱離用ガスAの温度は維持され、やはり追い焚き熱量QDは0℃のままである。
【0079】
次に
図10を参照する。
図9の状態から有機溶剤の含有量がさらに増えた場合は、さらに脱離用ガスAの温度が高くなる。これは温度センサ44の温度と現在の流量によって制御装置40は知ることができる。そこで、制御装置40は仕切弁39に指示を送り、仕切弁39を開く。すると、熱交換機構38を通過する脱離用ガスAの量が増え、熱交換機構38で交換する熱量を増大することができる。結果、連通部33での熱量の増加分を脱離用ガスAの流量の増加分として吸収し、各地点の温度を一定に維持する。結果、やはり追い焚き熱量QDを0℃にしたまま運転を継続することができる。
【0080】
上記の動作は、熱交換機構38で温度が上昇した脱離用ガスA(予備加熱工程で昇温した脱離用ガスA)の温度を測定する工程と、温度の値に応じて脱離用ガスAの流量を調整する工程が実行されたと言ってよい。
【0081】
また、
図10に示すように、脱離用ガスAの流量の調整は、温度センサ44の値に応じて予備加熱工程中の脱離用ガスAの流路(第2流路52)の断面積を調整する工程であってもよい。
【0082】
このように、原ガスV中の有機溶剤の濃度に応じてブロア10の流量と、熱交換機構38中を通過できる第2流路52の断面積を調整することで、原ガスV中の有機溶剤量の変動があっても、各所の設定温度を一定に維持することができ、効率の高い運転を維持しながら継続できる。
【0083】
なお、
図6乃至
図10では、熱交換手段41が濃縮脱離装置20を熱交換器41bとして利用する構成に、熱交換機構38を適用する場合として説明をした。しかしそれだけでなく、熱交換器41a(
図1および
図4参照)を用いた構成に熱交換機構38を適用してもよい。この構成の例示として
図11に有機溶剤含有ガス処理システム5を示す。また、熱交換手段41のないシステム(
図2(a))の有機溶剤含有ガス処理システム1aに取り付けてもよい。これは言い換えると、
図11の有機溶剤含有ガス処理システム5から熱交換器41aを取り去った構成である。
【0084】
また、ここでは追い焚き熱量QDを0℃に維持したままでの定常運転を例示したが、追い焚き熱量QDを0℃でない一定の値で維持継続してもよい。処理する有機溶剤によっては、追い焚き熱量QDを0℃にするほどのΔtを得ることができない場合もあるからである。
【0085】
また、
図1に示した加熱冷却器43および補助ブロア11は、
図2以降に示したいずれのシステムにも搭載が可能である。温度センサ44によって脱離用ガスAの温度が変動した場合は、加熱冷却器43で脱離用ガスAの温度を調整することもできる。
脱離用ガスAを送風するブロア10と、有機溶剤を含有している原ガスと前記脱離用ガスAが供給され、浄化ガスと濃縮ガスを排出する濃縮脱離装置20と、前記濃縮ガスを取り込む第1蓄熱部31と、前記第1蓄熱部31に連通し前記濃縮ガスを燃焼する連通部33と、前記連通部33から燃焼した濃縮ガスが送り出される第2蓄熱部32を有する蓄熱式燃焼装置30を有し、前記脱離用ガスAが前記濃縮脱離装置20に供給される前に熱を付与する熱交換機構34を前記蓄熱式燃焼装置30の前記連通部33に有することを特徴とする有機溶剤含有ガス処理システム。