【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
佐竹晃太,モバイルヘルスを用いた疾患治療のエビデンスと今後の展望,医学のあゆみ,2017年10月14日,Vol.263 No.2,p.201−206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験者が治療用アプリケーションを使用する被験者用端末と、医師が使用する医師用端末と、治験の管理を行う治験管理用サーバとを備え、上記被験者用端末と上記医師用端末と上記治験管理用サーバとが協働して上記治療用アプリケーションの治験を行うシステムであって、
上記治験管理用サーバは、
上記被験者を特定可能な被験者特定情報と、上記被験者を治療群または対照群の何れかに割り付ける際に参照する割付因子情報とを上記医師用端末から入力する被験者情報入力部と、
上記被験者情報入力部により入力された割付因子情報に基づいて、対象者分布が適当な分散状態となるように上記被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付けるランダム割付部と、
上記ランダム割付部による上記治療群または上記対照群の何れかへの割り付け結果を示す割付情報を上記被験者用端末に直接または間接的に送信する割付情報送信部とを備え、
上記被験者用端末は、
上記治験管理用サーバから送られてくる上記割付情報に基づいて、上記治療用アプリケーションを、実治療用機能を提供する第1のモードまたは擬似的治療用機能を提供する第2のモードの何れかに設定するモード設定部とを備えた
ことを特徴とする治療用アプリケーションの治験システム。
上記モード設定部は、上記被認証部による初回の認証後に上記治験管理用サーバから送られてくる上記割付情報に基づいて、上記治療用アプリケーションを上記第1のモードまたは上記第2のモードの何れかに設定することを特徴とする請求項2に記載の治療用アプリケーションの治験システム。
上記第2の治験管理用サーバは、上記被験者用端末から送信される入力情報の正当性が上記認証処理部により認証された後、上記被験者秘匿情報を上記被験者用端末に送信する被験者秘匿情報送信部を更に備え、
上記被験者用端末は、上記第2の治験管理用サーバから受信した上記被験者秘匿情報を上記第1の治験管理用サーバに送信し、当該被験者秘匿情報に対応する割付情報を取得する割付情報問い合せ部を更に備え、
上記治験管理用サーバの上記割付情報送信部は、上記被験者秘匿情報の送信元の上記被験者用端末に対して上記割付情報を送信し、
上記被験者用端末の上記モード設定部は、上記割付情報問い合せ部により取得された上記割付情報に基づいて、上記治療用アプリケーションを上記第1のモードまたは上記第2のモードの何れかに設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の治療用アプリケーションの治験システム。
上記治験管理用サーバの1つである第2の治験管理用サーバによる認証を上記被認証部が受けたときに、上記被験者を特定可能な被験者特定情報に紐付けられた被験者秘匿情報を上記第2の治験管理用サーバから受信する被験者特定情報受信部と、
上記被験者特定情報受信部により受信された上記被験者秘匿情報を上記治験管理用サーバの1つである第1の治験管理用サーバに送信し、当該被験者秘匿情報に対応する割付情報を取得する割付情報問い合せ部とを更に備え、
上記モード設定部は、上記割付情報問い合せ部により取得された上記割付情報に基づいて、上記治療用アプリケーションを上記第1のモードまたは上記第2のモードの何れかに設定することを特徴とする請求項7に記載の治療用アプリケーションを搭載した端末装置。
実治療用機能を提供する第1のモードと、擬似的治療用機能を提供する第2のモードとを有し、選択的に設定された何れかのモードに従って動作する治療用アプリケーションプログラムであって、
上記治療用アプリケーションの治験の管理を行う治験管理用サーバにより発行された認証情報を用いて、上記治験管理用サーバの認証を受ける被認証手段、および
上記被認証手段による認証後に上記治験管理用サーバから送られてくる割付情報であって、上記治療用アプリケーションを使用する被験者の割付因子情報に基づいて治療群または対照群の何れかに割り付けられた結果を示す割付情報に基づいて、上記第1のモードまたは上記第2のモードの何れかに設定するモード設定手段
としてコンピュータを機能させるための治療用アプリケーションプログラム。
上記治験管理用サーバの1つである第2の治験管理用サーバによる認証を上記被認証手段が受けたときに、上記被験者を特定可能な被験者特定情報に紐付けられた被験者秘匿情報を上記第2の治験管理用サーバから受信する被験者特定情報受信手段、および
上記被験者特定情報受信手段により受信された上記被験者秘匿情報を上記治験管理用サーバの1つである第1の治験管理用サーバに送信し、当該被験者秘匿情報に対応する割付情報を取得する割付情報問い合せ手段として上記コンピュータを更に機能させ、
上記モード設定手段は、上記割付情報問い合せ手段により取得された上記割付情報に基づいて、上記治療用アプリケーションを上記第1のモードまたは上記第2のモードの何れかに設定することを特徴とする請求項9に記載の治療用アプリケーションプログラム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態による治療用アプリケーションの治験システムのネットワーク構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、第1の実施形態による治療用アプリケーションの治験システム(以下、単に治験システムという)は、被験者が治療用アプリを使用する端末装置である被験者用端末100と、医師が使用する医師用端末200と、治験の管理を行う治験管理用サーバ300とを備え、被験者用端末100と医師用端末200と治験管理用サーバ300とが協働して治療用アプリの治験を行うシステムである。
【0018】
治療用アプリは、被験者の症状や毎日の行動などに関する情報を随時入力し、その入力情報をもとに所定の分析を行って、所定のアドバイスに関するメッセージを出力したり、被験者の行動を伴う所定の処理を実行したりすることにより、被験者の生活習慣の改善を通じて治療することを目的としたアプリケーションである。なお、分析は、治療用アプリ自身で行ってもよいし、治験管理用サーバ300または別の分析専用サーバで行うようにしてもよい。
【0019】
本実施形態において、治療用アプリは、実治療用機能を提供するためにコーディングされたプログラム(以下、実治療用プログラムという)と、擬似的治療用機能を提供するためにコーディングされたプログラム(以下、擬似的治療用プログラムという)とを含む。実治療用機能とは、上述した所定のアドバイスや所定の処理に関して、被験者の生活習慣の改善を通じた治療効果が実際に期待される内容を実行するための機能をいう。一方、擬似的治療用機能とは、上述した所定のアドバイスや所定の処理に関して、被験者の生活習慣の改善を通じた治療効果が期待されない内容を実行するための機能をいう。
【0020】
被験者は、実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れか一方が実行された状態(後述する第1のモードまたは第2のモードの何れかが設定された状態)で、治療用アプリを利用する。ただし、どちらの機能のプログラムが実行されているかは不知の状態とする。つまり、本実施形態の治験システムは、薬の臨床試験で一般的に実施されているプラセボ対照試験を応用して治療用アプリの治験を行うものである。なお、実治療用プログラムが実行された状態の治療用アプリを利用する被験者が治療群、擬似的治療用プログラムが実行された状態の治療用アプリを利用する被験者が対照群である。
【0021】
被験者が使用する被験者用端末100は、治療用アプリをインストールして実行可能なものであれば、何れも適用可能である。例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどを被験者用端末100として用いることが可能である。ただし、治療用アプリが被験者の生活習慣の改善を通じて治療することを目的としたものであるので、常時持ち歩きが可能なモバイル型の端末を用いるのが好ましい。
【0022】
医師が使用する医師用端末200は、被験者用端末100にインストールされた被験者用の治療用アプリと連携して動作する医師用の治療用アプリがインストールされた端末である。このアプリケーションをインストールして実行可能な端末であれば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどの何れも適用可能である。なお、以下の説明において、特に区別しない限り、単に「治療用アプリ」というときは被験者用のアプリケーションを意味するものとする。
【0023】
治験管理用サーバ300は、被験者用端末100および医師用端末200にインストールされた各アプリケーションと連携して動作する専用のアプリケーションがインストールされた管理用装置である。特に、本実施形態において治験管理用サーバ300は、複数の被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付ける処理、実治療用機能または擬似的治療用機能の何れの機能を提供するものとして治療用アプリを動作させるかを決定するのに必要な処理を実行する。その詳細については後述する。
【0024】
図2は、第1の実施形態による被験者用端末100および治験管理用サーバ300の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、第1の実施形態による被験者用端末100は、その機能構成として、治療機能実行部11、割付情報受信部12およびモード設定部13を備えている。
【0025】
上記各機能ブロック11〜13は、被験者用端末100にインストールされた治療用アプリの実行によって実現されるものである。この場合、上記各機能ブロック11〜13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶された治療用アプリのプログラムが動作することによって実現される。
【0026】
なお、上述したように、治療用アプリは、実治療用プログラムおよび擬似的治療用プログラムを含む。治療機能実行部11は、実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れか一方が動作することによって実現される。一方、割付情報受信部12およびモード設定部13は、実治療用プログラムおよび擬似的治療用プログラムとは異なる基本プログラムが動作することによって実現される。
【0027】
第1の実施形態による治験管理用サーバ300は、その機能構成として、被験者情報入力部21、ランダム割付部22および割付情報送信部23を備えている。また、治験管理用サーバ300は、記憶媒体として、割付データベース記憶部20Aを備えている。
【0028】
上記各機能ブロック21〜23は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック21〜23は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0029】
治験管理用サーバ300の被験者情報入力部21は、被験者を特定可能な被験者特定情報と、被験者を治療群または対照群の何れかに割り付ける際に参照する割付因子情報とを医師用端末200から入力し、その入力情報を割付データベース記憶部20Aの割付データベースに登録する。被験者特定情報は、被験者の氏名、性別、年齢、住所、症状などを含み、個々の被験者を特定可能な情報である。割付因子情報は、対象者分布が適当な分散状態となるように被験者を治療群または対照群の何れかに割り付ける際に必要となる情報であり、例えば症状の重症度を示す情報を割付因子情報として用いる。
【0030】
被験者特定情報および割付因子情報の入力は、医師が患者の診断を通じて医師用端末200に対して行う。すなわち、医師が患者の診断を通じて、その患者を治験対象の被験者として登録することを決定すると、医師用端末200から治験管理用サーバ300にアクセスし、医師用端末200に入力した被験者特定情報および割付因子情報を治験管理用サーバ300に送信する。これに応じて治験管理用サーバ300の被験者情報入力部21は、医師用端末200から送られてきた被験者特定情報および割付因子情報を入力する。被験者情報入力部21は、被験者特定情報および割付因子情報を入力すると、これらを割付データベースの一情報として割付データベース記憶部20Aに記憶させる。
【0031】
被験者として登録された患者は、医師から通知された所定のダウンロードサイトにアクセスして、治療用アプリをダウンロードして被験者用端末100にインストールする。
【0032】
ランダム割付部22は、被験者情報入力部21により入力された割付因子情報に基づいて、対象者分布が適当な分散状態となるように被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付け、その割り付け結果を示す割付情報を割付データベースに登録する。なお、ランダム割付部22は、被験者として必要な人数の登録(被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの記憶)が完了した後に、各被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付ける処理を実行する。そして、その割り付け結果を示す割付情報を、割付データベースの被験者特定情報に関連付けて割付データベース記憶部20Aに記憶させる。
【0033】
図3は、割付データベース記憶部20Aに記憶される割付データベースの1つのレコードの一例を示す図である。1つのレコードに一人の被験者に関する情報が記録される。
図3に示すように、割付データベースの1つのレコードは、レコードID(RID)、被験者特定情報、割付因子情報および割付情報を含む。被験者情報入力部21が被験者特定情報および割付因子情報を入力した段階でこれらの情報がレコードに記録され、ランダム割付部22により割り付けが行われた段階で割付情報が該当レコードに追加して記録される。なお、ここに示した情報は、第1の実施形態を説明する上において最低限必要な情報であり、これ以外の情報が含まれていてもよい。
【0034】
割付情報送信部23は、各被験者の割付情報を割付データベース記憶部20Aから読み出して被験者用端末100に送信する。この割付情報の送信は、被験者には非公開の状態で、治療用アプリのみが認識可能な形態で黙示的に行う。すなわち、割付情報送信部23は、被験者用端末100にインストールされた治療用アプリに対して割付情報を黙示的に送信する。治療用アプリは、受信した割付情報を後述するモード設定に使用するが、被験者用端末100のディスプレイに表示したり、スピーカから音声出力したりするといった形態での公開は一切行わない。
【0035】
なお、被験者用端末100に割付情報を送信する際に使用する被験者用端末100の宛先情報は、例えば、被験者特定情報の1つとして、医師用端末200から治験管理用サーバ300に送信して登録する。この場合、割付情報送信部23は、被験者用端末100の治療用アプリに対して割付情報をプッシュ型にて送信する。
【0036】
割付情報を送信する方法の別の例として、プル型で送信するようにしてもよい。すなわち、治療用アプリのインストールが完了した被験者用端末100から治験管理用サーバ300にアクセスして割付情報をリクエストし、その応答として割付情報送信部23が被験者用端末100に割付情報を送信するようにしてもよい。この場合、治験管理用サーバ300のアクセスに使用するアドレス情報は、治療用アプリがあらかじめ保有している。
【0037】
更に別の例として、割付情報送信部23は、医師用端末200を経由する形で被験者用端末100に割付情報を間接的に送信するようにしてもよい。すなわち、割付情報送信部23は、医師用端末200にインストールされている医師用の治療用アプリに対して割付情報をプッシュ型またはプル型にて送信する。割付情報を受信した医師用の治療用アプリは、当該受信した割付情報を被験者用端末100に自動的に転送する。
【0038】
なお、この場合における被験者用端末100の宛先情報は、被験者からの通知を受けて医師用端末200にあらかじめ登録しておく。あるいは、割付情報送信部23が医師用端末200に割付情報を送信する際に、被験者特定情報の1つとしてあらかじめ割付データベース記憶部20Aに記憶されていた被験者用端末100の宛先情報を一緒に送信するようにしてもよい。
【0039】
被験者用端末100の治療機能実行部11は、治療用アプリが有する治療機能を実行する。すなわち、上述したように、治療機能実行部11は、被験者の症状や毎日の行動などに関する情報を随時入力し、その入力情報をもとに所定の分析を行って、所定のアドバイスに関するメッセージを出力したり、被験者の行動を伴う所定の処理を実行したりする。このとき、治療機能実行部11は、治療用アプリが単独で処理を実行したり、治療用アプリが治験管理用サーバ300または別の分析専用サーバと連携して処理を実行したりする。
【0040】
また、上述したように、治療用アプリは、実治療用プログラムおよび擬似的治療用プログラムを含む。治療機能実行部11は、治験管理用サーバ300において被験者が治療群または対照群のどちらに割り付けられたかによって、実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れか一方に基づいて、各種の処理を実行する。
【0041】
割付情報受信部12は、治験管理用サーバ300から送られてくる割付情報を受信する。モード設定部13は、割付情報受信部12により受信された割付情報に基づいて、治療用アプリを、実治療用機能を提供する第1のモードまたは擬似的治療用機能を提供する第2のモードの何れかに設定する。
【0042】
モード設定部13により第1のモードが設定された場合、治療機能実行部11はそれ以降、実治療用プログラムに基づいて各種の処理を実行する。一方、モード設定部13により第2のモードが設定された場合、治療機能実行部11はそれ以降、擬似的治療用プログラムに基づいて各種の処理を実行する。
【0043】
モード設定部13が治療用アプリに対して何れかのモードを設定するタイミングは、例えば、被験者が治療用アプリを実際に使い始める前のタイミングである。例えば、モードの設定が完了していないタイミングで被験者が治療用アプリを起動した場合、モードの設定が未完了である旨のメッセージを表示し、治療用アプリ(実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの機能)の使用ができないようにロックをかける。その後、モード設定部13によりモードの設定が実行されたときに、治療用アプリのロックを解除する。これにより、モードの設定が完了した後のタイミングで被験者が治療用アプリを起動した場合は、治療用アプリの使用が可能な状態となっている。
【0044】
図4は、以上のように構成した第1の実施形態による治験システムの動作例を示すフローチャートである。なお、
図4に示すフローチャートを実行する前に、医師が患者の診断を通じて、その患者を治験対象の被験者として登録することを決定し、医師が医師用端末200に被験者特定情報および割付因子情報を入力しているものとする。
図4に示すフローチャートは、医師用端末200に入力された被験者特定情報および割付因子情報を治験管理用サーバ300に登録する際に開始する。
【0045】
まず、医師用端末200は、医師により入力された被験者特定情報および割付因子情報を治験管理用サーバ300に送信する(ステップS1)。これに応じて、被験者情報入力部21は、被験者特定情報および割付因子情報を入力し(ステップS2)、これらを割付データベース記憶部20Aに割付データベースの一情報として記憶させる(ステップS3)。
【0046】
なお、ここでは説明の簡略化のため詳細は図示していないが、複数の医師用端末200から複数の被験者に関する被験者特定情報および割付因子情報が治験管理用サーバ300に送信され、治験に必要な人数分の情報が割付データベース記憶部20Aに割付データベースとして登録される。
【0047】
被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録と並行して、被験者は被験者用端末100に治療用アプリをインストールする(ステップS4)。なお、ここでは説明の便宜上、ステップS4の処理として治療用アプリのインストールを図示しているが、患者が医師の診断により治験の被験者として登録することが決定された後であれば、被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録よりも前のタイミングで治療用アプリのインストールを実行してよい。
【0048】
あるいは、治療用アプリがプル型の通信で治験管理用サーバ300から割付情報を受信する場合は、被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録よりも後の任意のタイミングで治療用アプリのインストールを実行してよい。プル型通信の場合、インストールした治療用アプリを使って割付情報のリクエストをしない限り、割付情報が治験管理用サーバ300から送られてくることはないからである。
【0049】
次いで、ランダム割付部22は、割付データベース記憶部20Aに割付データベースの一部として登録された被験者の割付因子情報に基づいて、対象者分布が適当な分散状態となるように被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付ける(ステップS5)。そして、ランダム割付部22は、その割り付け結果を示す割付情報を、割付データベースの被験者特定情報に関連付けて割付データベース記憶部20Aに記憶させる(ステップS6)。
【0050】
次に、割付情報送信部23は、割付データベースに登録された割付情報を、プッシュ型またはプル型にて被験者用端末100に送信する(ステップS7)。被験者用端末100の割付情報受信部12は、治験管理用サーバ300から送られてくる割付情報を受信する(ステップS8)。
【0051】
そして、モード設定部13は、割付情報受信部12により受信された割付情報に基づいて、治療用アプリを、実治療用機能を提供する第1のモードまたは擬似的治療用機能を提供する第2のモードの何れかに設定する(ステップS9)。これ以降、治療機能実行部11は、モード設定部13により設定された何れかのモードに従って、実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れかに基づいて各種の処理を実行することになる。
【0052】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態によれば、治験管理用サーバ300において、被験者の割付因子情報に基づいて、被験者の治療群または対照群への割り付けがランダムに行われることにより、治療群と対照群との割り付けのランダム化が実現される。
【0053】
その割り付けの結果を示す割付情報は、被験者用端末100および医師用端末200の何れにも明かされず、治験管理用サーバ300から被験者用端末100に黙示的に送信される。そして、当該送信された割付情報に基づいて、被験者用端末100にインストールされた治療用アプリが、実治療用機能を提供する第1のモードまたは擬似的治療用機能を提供する第2のモードの何れかに自動設定される。このため、被験者および医師の双方とも、被験者が治療群または対照群のどちらに割り付けられて、治療用アプリがどちらのモードで動作しているのかが分からない状態で、治療用アプリを用いた治療が実施されることとなる。
【0054】
以上により、第1の実施形態による治験システムによれば、治療用アプリについてプラセボ対照試験を応用した治験を行う場合において、治療群と対照群との割り付けのランダム化および二重盲検化をシステム的に実現することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。第2の実施形態による治療用アプリケーションの治験システムのネットワーク構成は、
図1と同様である。
図5は、第2の実施形態による被験者用端末100および治験管理用サーバ300の機能構成例を示すブロック図である。なお、この
図5において、
図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0056】
図5に示すように、第2の実施形態による被験者用端末100は、その機能構成として、認証情報受信部14および被認証部15を更に備えている。認証情報受信部14および被認証部15の機能も、被験者用端末100にインストールされた治療用アプリの実行によって実現されるものである。
【0057】
また、第2の実施形態による治験管理用サーバ300は、その機能構成として、割付情報送信部23に代えて割付情報送信部23Bを備えるとともに、認証情報発行部24および認証処理部25を更に備えている。割付情報送信部23B、認証情報発行部24および認証処理部25の機能は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。また、第2の実施形態による治験管理用サーバ300は、記憶媒体として、割付データベース記憶部20Aに代えて割付データベース記憶部20Bを備えている。
【0058】
認証情報発行部24は、被験者が治療用アプリを使用する際に入力すべき認証情報を発行する。認証情報は、例えばユーザIDおよびパスワードである。認証情報発行部24により発行された認証情報は、被験者特定情報と関連付けて、割付データベースの一部として割付データベース記憶部20Bに記憶される。
図6は、割付データベース記憶部20Bに記憶される割付データベースの1つのレコードの一例を示す図である。
図6に示すように、割付データベースの1つのレコードは、レコードID(RID)、被験者特定情報、割付因子情報、割付情報および認証情報を含む。
【0059】
認証情報発行部24が認証情報を発行するタイミングは、例えば、ランダム割付部22により被験者に対して治療群または対照群の割り付けが行われたタイミングとすることが可能である。この場合、被験者情報入力部21が被験者特定情報および割付因子情報を入力した段階でこれらの情報がレコードに記録され、ランダム割付部22により割り付けが行われた段階で割付情報が該当レコードに追加して記録され、認証情報発行部24により認証情報が発行された段階で当該認証情報が該当レコードに追加して記録される。なお、ここに示した情報は、第2の実施形態を説明する上において最低限必要な情報であり、これ以外の情報が含まれていてもよい。
【0060】
認証情報発行部24により発行された認証情報は、割付データベース記憶部20Bに登録されるほか、被験者用端末100に送信される。この認証情報の送信は、第1の実施形態で説明した割付情報送信部23による割付情報の送信と同様、治験管理用サーバ300からのプッシュ型の通信によって行うようにしてもよいし、被験者用端末100からのリクエストに応じたプル型の通信によって行うようにしてもよい。また、認証情報発行部24は、医師用端末200を経由して被験者用端末100に認証情報を送信するようにしてもよい。
【0061】
認証情報をプッシュ型で送信する場合、認証情報発行部24は、ランダム割付部22から割り付けが完了した旨の通知を受けて認証情報を発行し、発行した認証情報を割付データベース記憶部20Bに記憶させるとともに、被験者用端末100に送信する。一方、認証情報をプル型で送信する場合、認証情報発行部24は、ランダム割付部22からの通知を受けて発行した認証情報を割付データベース記憶部20Bに記憶して待機し、その後、被験者特定情報を含む認証情報発行リクエストを被験者用端末100から受けたときに、割付データベース記憶部20B内から被験者特定情報に対応する認証情報を読み出して被験者用端末100に送信する。
【0062】
なお、認証情報発行部24が認証情報を発行するタイミングは、ランダム割付部22により被験者に対する割り付けが行われたタイミングに限定されない。例えば、被験者情報入力部21が被験者特定情報を入力したタイミングとしてもよい。また、被験者が被験者用端末100に治療用アプリをインストールした後、治療用アプリから治験管理用サーバ300にアクセスして認証情報をリクエストし、その応答として認証情報発行部24が認証情報を発行するようにしてもよい。
【0063】
ただし、以下に説明するように、第2の実施形態では、認証に成功した場合に割付情報を治験管理用サーバ300から被験者用端末100に送信するようにしている。そのため、被験者が被験者用端末100に認証情報を入力して治験管理用サーバ300の認証を受けるときには、ランダム割付部22による割り付けが完了していることが必要である。よって、割り付けが完了したタイミング以外の上記のタイミングで認証情報を発行する場合は、認証情報発行部24がランダム割付部22から割り付け完了の通知を受けるのを待って、治験管理用サーバ300から被験者用端末100に認証情報を送信するようにするのが好ましい。
【0064】
被験者用端末100の認証情報受信部14は、認証情報発行部24により発行された認証情報を受信する。この認証情報は、被験者用端末100のディスプレイにて確認することが可能な情報である。被験者は、ディスプレイにて確認した認証情報を、メモに記録したり、被験者用端末100の記憶媒体に記憶させたりして、忘れることなくいつでも使える状態にしておく。
【0065】
被認証部15は、認証情報発行部24により発行された認証情報(治験管理用サーバ300から送信された認証情報)を用いて、治験管理用サーバ300の認証を受ける。すなわち、被験者は、治験管理用サーバ300から送信された認証情報を被験者用端末100に入力する。被認証部15は、被験者により被験者用端末100に入力された認証情報を治験管理用サーバ300に送信し、認証の成否の結果を治験管理用サーバ300から受信する。
【0066】
被認証部15が治験管理用サーバ300の認証を受けるタイミングは、被験者用端末100にインストールした治療用アプリを起動したタイミングである。具体的には、被験者が治療用アプリを起動すると、ログイン画面が表示されるようにする。そして、被験者がこのログイン画面にユーザIDおよびパスワードから成る認証情報を入力すると、それが治験管理用サーバ300に送信され、認証が実行される。
【0067】
治験管理用サーバ300の認証処理部25は、認証情報発行部24により発行された認証情報(割付データベース記憶部20Bに記憶された認証情報)を用いて、被験者用端末100から送信される入力情報の正当性を認証する。ここで、割付データベース記憶部20Bに記憶された認証情報と、被験者用端末100から送らてくる入力情報とが一致しなかった場合、認証処理部25は、認証に失敗した旨を被認証部15に返信する。一方、割付データベース記憶部20Bに記憶された認証情報と、被験者用端末100から送らてくる入力情報とが一致した場合、認証処理部25は、認証に成功した旨を被認証部15に返信するとともに、その旨を割付情報送信部23Bに通知する。
【0068】
割付情報送信部23Bは、認証処理部25による認証が行われた(認証に成功した)被験者用端末100に対して割付情報を送信する。本実施形態において、割付情報送信部23Bは、被験者用端末100に治療用アプリをインストールした後、その被験者用端末100に関して認証処理部25により最初に認証が行われたときのみ、その被験者用端末100に対して割付情報をプッシュ型にて送信する(なお、ログインによる認証が行われたことに応答して割付情報を送信しているので、プル型通信の一種とも言える)。この割付情報の送信は、認証に成功した旨のメッセージを認証処理部25が被験者用端末100に送信する際に、そのメッセージと共に送信するようにしてもよい。
【0069】
モード設定部13は、被認証部15による初回の認証後に治験管理用サーバ300から送られてくる割付情報に基づいて、治療用アプリを第1のモードまたは第2のモードの何れかに設定する。これにより、被験者が治療用アプリを実際に使い始めるときに、治療用アプリを第1のモードまたは第2のモードの何れかに設定し、治療用アプリを最初から実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れかに基づいて動作させるようにすることができる。
【0070】
図7は、以上のように構成した第2の実施形態による治験システムの動作例を示すフローチャートである。なお、
図7に示すフローチャートを実行する前に、医師が患者の診断を通じて、その患者を治験対象の被験者として登録することを決定し、医師が医師用端末200に被験者特定情報および割付因子情報を入力しているものとする。
図7に示すフローチャートは、医師用端末200に入力された被験者特定情報および割付因子情報を治験管理用サーバ300に登録する際に開始する。
【0071】
まず、医師用端末200は、医師により入力された被験者特定情報および割付因子情報を治験管理用サーバ300に送信する(ステップS11)。これに応じて、被験者情報入力部21は、被験者特定情報および割付因子情報を入力し(ステップS12)、これらを割付データベース記憶部20Bに割付データベースの一情報として記憶させる(ステップS13)。
【0072】
なお、ここでは説明の簡略化のため詳細は図示していないが、複数の医師用端末200から複数の被験者に関する被験者特定情報および割付因子情報が治験管理用サーバ300に送信され、治験に必要な人数分の情報が割付データベース記憶部20Bに割付データベースとして登録される。
【0073】
被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録と並行して、被験者は被験者用端末100に治療用アプリをインストールする(ステップS14)。なお、第1の実施形態で説明したのと同様、被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録よりも前または後のタイミングで治療用アプリのインストールを行ってもよい。
【0074】
次いで、ランダム割付部22は、割付データベース記憶部20Bに割付データベースの一部として登録された被験者の割付因子情報に基づいて、対象者分布が適当な分散状態となるように被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付ける(ステップS15)。そして、ランダム割付部22は、その割り付け結果を示す割付情報を、割付データベースの被験者特定情報に関連付けて割付データベース記憶部20Bに記憶させる(ステップS16)。
【0075】
次に、認証情報発行部24は、割付データベースに登録された被験者のそれぞれに対して認証情報を発行する(ステップS17)。そして、認証情報発行部24は、発行した認証情報を、割付データベースの被験者特定情報に関連付けて割付データベース記憶部20Bに記憶させる(ステップS18)。さらに、認証情報発行部24は、発行した認証情報を、それぞれの被験者の被験者用端末100に送信する(ステップS19)。被験者用端末100の認証情報受信部14は、認証情報発行部24により発行された認証情報を受信する(ステップS20)。
被験者用端末100の認証情報受信部14は、認証情報発行部24により発行された認証情報を受信する(ステップS31)。
【0076】
ここまでは、各被験者の被験者特定情報および割付因子情報が順次入力され、治験に必要な人数分の情報が揃った段階で、各被験者の割付情報および認証情報に関する処理をそれぞれ一度の処理でまとめて行う流れである。これに対して、以下の処理は、個々の被験者毎に個別に行うものである。
【0077】
被認証部15は、被験者によって被験者用端末100に認証情報が入力されたか否かを判定する(ステップS21)。すなわち、ステップS14でインストール済みの治療用アプリが起動され、その際に表示されたログイン画面に対してユーザIDおよびパスワードが入力されたか否かを被認証部15が判定する。
【0078】
ここで、認証情報が入力されていない場合、ステップS21の判定が継続される。一方、ユーザによって被験者用端末100に認証情報が入力された場合、被認証部15は、入力された認証情報を治験管理用サーバ300に送信する(ステップS22)。これに応じて、治験管理用サーバ300の認証処理部25は、割付データベース記憶部20Bに記憶された認証情報を用いて、被験者用端末100から送信された入力情報の正当性を認証する(ステップS23)。
【0079】
ここで、認証処理部25は、認証に成功したか否かを判定する(ステップS24)。認証に失敗した場合、認証処理部25は、認証に失敗した旨のエラーメッセージを被験者用端末100に送信し(ステップS25)、
図7に示す治験管理用サーバ300の処理を終了する。一方、認証に成功した場合、認証処理部25は、認証に成功した旨を被験者用端末100に送信するとともに(ステップS26)、その旨を割付情報送信部23Bに通知する。
【0080】
この通知を受けて、割付情報送信部23Bは、割付データベースに登録された割付情報を、プッシュ型にて被験者用端末100に送信する(ステップS27)。被験者用端末100の割付情報受信部12は、治験管理用サーバ300から送られてくる割付情報を受信する(ステップS28)。
【0081】
そして、モード設定部13は、割付情報受信部12により受信された割付情報に基づいて、治療用アプリを、実治療用機能を提供する第1のモードまたは擬似的治療用機能を提供する第2のモードの何れかに設定する(ステップS29)。これ以降、治療機能実行部11は、モード設定部13により設定された何れかのモードに従って、実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れかに基づいて各種の処理を実行することになる。
【0082】
以上のように構成した第2の実施形態によれば、上記した第1の実施形態と同様、治療用アプリについてプラセボ対照試験を応用した治験を行う場合において、治療群と対照群との割り付けのランダム化および二重盲検化をシステム的に実現することができる。
【0083】
また、第2の実施形態によれば、初回のログイン時に治療用アプリに対するモードの設定が行われるので、当該モードの設定が完了するまで治療用アプリの使用にロックをかけたり、モードの設定が未完了のタイミングで治療用アプリが起動されたときに、その旨のメッセージを表示したりするなどの処理を不要とすることができる。これにより、被験者による治療用アプリの使用開始に関する利便性を向上させることができる。
【0084】
また、第2の実施形態では、ランダム割付部22による割り付けの後に認証情報発行部24が認証情報を被験者用端末100に送信するようにしているので、認証処理部25による認証成功時には確実に割付情報を治験管理用サーバ300から被験者用端末100に送信することができる。これにより、ランダム割付部22による割り付けが行われる前に被験者用端末100からログインが行われた場合にエラーメッセージを出力するといった処理を不要とすることができる。
【0085】
なお、上記第2の実施形態では、モード設定部13によるモード設定のタイミングを治療用アプリに対する初回ログイン時とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被験者が治療用アプリの使用を開始してからしばらくの間は、治療群に対しても対照群に対しても共通の機能を提供し、途中から提供機能を分けるような治験の運用を行う場合に、例えば複数回目のログイン時に治療用アプリに対するモード設定を行うようにしてもよい。あるいは、初回ログイン時から一定時間が経過した後のログイン時にモード設定を行うようにしてもよい。
【0086】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図面に基づいて説明する。
図8は、第3の実施形態による治療用アプリケーションの治験システムのネットワーク構成を示す図である。
図8に示すように、第3の実施形態において治験管理用サーバ300は、第1の治験管理用サーバ300
-1および第2の治験管理用サーバ300
-2を備える。
【0087】
第1の治験管理用サーバ300
-1を運営する事業者と、第2の治験管理用サーバ300
-2を運営する事業者は異なる。第1の治験管理用サーバ300
-1は、
図5に示した被験者情報入力部21、ランダム割付部22および割付情報送信部23Bと同様の構成を備え、複数の被験者を治療群または対照群の何れかに割り付ける処理、治療用アプリの動作モードを決定するのに必要な処理を実行する。一方、第2の治験管理用サーバ300
-2は、
図5に示した認証情報発行部24および認証処理部25と同様の構成を備え、認証に関する処理を実行する。
【0088】
図9は、第3の実施形態による被験者用端末100および治験管理用サーバ300の機能構成例を示すブロック図である。なお、この
図9において、
図5に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0089】
図9に示すように、第3の実施形態による被験者用端末100は、その機能構成として、被験者秘匿情報受信部16および被験者秘匿情報送信部17を更に備えている。被験者秘匿情報送信部17および割付情報受信部12により、割付情報問い合せ部18が構成されている。被験者秘匿情報受信部16および被験者秘匿情報送信部17の機能も、被験者用端末100にインストールされた治療用アプリの実行によって実現されるものである。
【0090】
また、第3の実施形態による第1の治験管理用サーバ300
-1は、その機能構成として、被験者情報入力部21、ランダム割付部22、割付情報送信部23Cおよび被験者秘匿情報発行部26を備えている。これらの機能ブロックは、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。また、第3の実施形態による第1の治験管理用サーバ300
-1は、記憶媒体として、割付データベース記憶部20Bに代えて割付データベース記憶部20Cを備えている。
【0091】
また、第3の実施形態による第2の治験管理用サーバ300
-2は、その機能構成として、認証情報発行部24C、認証処理部25および被験者秘匿情報送信部27を備えている。これらの機能ブロックは、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。また、第3の実施形態による第2の治験管理用サーバ300
-2は、記憶媒体として、認証データベース記憶部20Dを備えている。
【0092】
第1の治験管理用サーバ300
-1が備える被験者秘匿情報発行部26は、被験者情報入力部21により入力された被験者特定情報に紐付けた被験者秘匿情報を発行する。被験者秘匿情報は、それだけでは被験者を特定することができない情報である。例えば、被験者秘匿情報は、被験者特定情報とは異なり、また被験者特定情報から推測することもできない被験者番号とすることが可能である。
【0093】
被験者秘匿情報発行部26が被験者秘匿情報を発行するタイミングは、被験者情報入力部21により被験者特定情報が入力された後の任意のタイミングとしてよいが、ランダム割付部22によって被験者に対する治療群または対照群の割り付けが行われたタイミングとするのが好適である。
【0094】
被験者秘匿情報発行部26は、発行した被験者秘匿情報を、被験者特定情報と関連付けて、割付データベースの一部として割付データベース記憶部20Cに記憶させる。また、被験者秘匿情報発行部26は、発行した被験者秘匿情報を、第2の治験管理用サーバ300
-2が備える認証情報発行部24Cに通知する。
【0095】
認証情報発行部24Cは、被験者秘匿情報を第1の治験管理用サーバ300
-1から受けて、当該被験者秘匿情報に関連付けて認証情報を発行する。上述したように、ランダム割付部22により被験者に対して治療群または対照群の割り付けが行われたタイミングで被験者秘匿情報発行部26が被験者秘匿情報を発行し、これを受けて認証情報発行部24が認証情報を発行しているので、認証情報が発行されるタイミングは、第2の実施形態と同様、ランダム割付部22による割り付けが行われたタイミングとなる。
【0096】
認証情報発行部24Cにより発行された認証情報は、被験者秘匿情報と関連付けて、認証データベースの一部として認証データベース記憶部20Dに記憶される。
図10は、割付データベース記憶部20Cに記憶される割付データベースおよび認証データベース記憶部20Dに記憶される認証データベースの各1つのレコードの一例を示す図である。
【0097】
図10(A)に示すように、割付データベース記憶部20Cに記憶される割付データベースの1つのレコードは、レコードID(RID)、被験者特定情報、割付因子情報、割付情報および被験者秘匿情報を含む。すなわち、被験者情報入力部21が被験者特定情報および割付因子情報を入力した段階でこれらの情報がレコードに記録され、ランダム割付部22により割り付けが行われた段階で割付情報が該当レコードに追加して記録され、被験者秘匿情報発行部26により被験者秘匿情報が発行された段階で当該被験者秘匿情報が該当レコードに追加して記録される。なお、ここに示した情報は、第3の実施形態を説明する上において最低限必要な情報であり、これ以外の情報が含まれていてもよい。
【0098】
また、
図10(B)に示すように、認証データベース記憶部20Dに記憶される認証データベースの1つのレコードは、レコードID(RID)、被験者秘匿情報および認証情報を含む。すなわち、認証データベース記憶部20Dには、認証情報発行部24Cにより認証情報が発行された段階で、当該認証情報が被験者秘匿情報と共にレコードに記録される。なお、ここに示した情報は、第3の実施形態を説明する上において最低限必要な情報であり、これ以外の情報が含まれていてもよい。
【0099】
また、認証情報発行部24Cにより発行された認証情報は、被験者用端末100に送信される。この認証情報の送信は、被験者用端末100からのリクエストに応じたプル型の通信によって行うことも可能であるが、治験管理用サーバ300からのプッシュ型の通信によって行うのが好ましい。この場合、認証情報発行部24Cは、医師用端末200を経由する形で被験者用端末100に認証情報を間接的に送信するようにしてもよい。
【0100】
なお、認証情報発行部24Cが被験者用端末100に認証情報をプッシュ型で送信する際に使用する被験者用端末100の宛先情報は、例えば、被験者特定情報の1つとして、医師用端末200から第1の治験管理用サーバ300
-1に送信して割付データベースに登録しておき、被験者秘匿情報発行部26が認証情報発行部24に被験者秘匿情報を通知する際に、宛先情報も一緒に送信するようにしてよい。
【0101】
第2の治験管理用サーバ300
-2が備える被験者秘匿情報送信部27は、被験者用端末100から送信される入力情報の正当性が認証処理部25により認証された後、認証データベース記憶部20Dに記憶されている被験者秘匿情報を被験者用端末100に送信する。この被験者秘匿情報の送信は、認証に成功した旨のメッセージを認証処理部25が被験者用端末100に送信する際に、そのメッセージと共に送信するようにしてもよい。
【0102】
被験者用端末100の被験者秘匿情報受信部16は、被験者秘匿情報送信部27により送信された被験者秘匿情報を受信する。被験者秘匿情報は、被験者を特定できない情報であるから、被験者用端末100のディスプレイに公開可能な情報である。被験者は、ディスプレイに表示された被験者秘匿情報を確認し、それを被験者用端末100に入力する。
【0103】
割付情報問い合せ部18は、上記のように被験者用端末100に入力された被験者秘匿情報を第1の治験管理用サーバ300
-1に送信し、当該被験者秘匿情報に対応する割付情報を取得する。すなわち、割付情報問い合せ部18を構成する被験者秘匿情報送信部17は、被験者秘匿情報を第1の治験管理用サーバ300
-1に送信する。第1の治験管理用サーバ300
-1の割付情報送信部23Cは、被験者用端末100から受信した被験者秘匿情報に関連付けられている割付情報を割付データベース記憶部20Cから読み出し、これを被験者秘匿情報の送信元の被験者用端末100に対して送信する。割付情報問い合せ部18を構成する割付情報受信部12は、この割付情報を受信する。
【0104】
なお、ここでは、被験者によって被験者用端末100に入力された被験者秘匿情報を第1の治験管理用サーバ300
-1に送信するようにしているが、これに限定されない。例えば、被験者秘匿情報受信部16が第2の治験管理用サーバ300
-2から受信した被験者秘匿情報を被験者秘匿情報送信部17が自動的に愛1の治験管理用サーバ300
-1に送信するようにしてもよい。
【0105】
被験者用端末100のモード設定部13は、割付情報問い合せ部18により取得された割付情報に基づいて、治療用アプリを第1のモードまたは第2のモードの何れかに設定する。
【0106】
図11は、以上のように構成した第3の実施形態による治験システムの動作例を示すフローチャートである。なお、
図11に示すフローチャートを実行する前に、医師が患者の診断を通じて、その患者を治験対象の被験者として登録することを決定し、医師が医師用端末200に被験者特定情報および割付因子情報を入力しているものとする。
図11に示すフローチャートは、医師用端末200に入力された被験者特定情報および割付因子情報を第1の治験管理用サーバ300
-1に登録する際に開始する。
【0107】
まず、医師用端末200は、医師により入力された被験者特定情報および割付因子情報を第1の治験管理用サーバ300
-1に送信する(ステップS31)。これに応じて、被験者情報入力部21は、被験者特定情報および割付因子情報を入力し(ステップS32)、これらを割付データベース記憶部20Cに割付データベースの一情報として記憶させる(ステップS33)。
【0108】
なお、ここでは説明の簡略化のため詳細は図示していないが、複数の医師用端末200から複数の被験者に関する被験者特定情報および割付因子情報が第1の治験管理用サーバ300
-1に送信され、治験に必要な人数分の情報が割付データベース記憶部20Cに割付データベースとして登録される。
【0109】
被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録と並行して、被験者は被験者用端末100に治療用アプリをインストールする(ステップS34)。なお、第1の実施形態で説明したのと同様、被験者特定情報および割付因子情報の割付データベースへの登録よりも前または後のタイミングで治療用アプリのインストールを行ってもよい。
【0110】
次いで、ランダム割付部22は、割付データベース記憶部20Cに割付データベースの一部として登録された被験者の割付因子情報に基づいて、対象者分布が適当な分散状態となるように被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付ける(ステップS35)。そして、ランダム割付部22は、その割り付け結果を示す割付情報を、割付データベースの被験者特定情報に関連付けて割付データベース記憶部20Cに記憶させる(ステップS36)。
【0111】
次に、被験者秘匿情報発行部26は、ステップS32で被験者情報入力部21により入力された被験者特定情報に紐付けた被験者秘匿情報を発行する(ステップS37)。そして、被験者秘匿情報発行部26は、当該発行した被験者秘匿情報を、割付データベースの被験者特定情報に関連付けて割付データベース記憶部20Cに記憶させる(ステップS38)。また、被験者秘匿情報発行部26は、当該発行した被験者秘匿情報を、第2の治験管理用サーバ300
-2の認証情報発行部24Cに通知する(ステップS39)。
【0112】
この通知を受けて、認証情報発行部24Cは、通知された被験者秘匿情報のそれぞれに対して認証情報を発行する(ステップS40)。そして、認証情報発行部24Cは、発行した認証情報を、被験者秘匿情報と共に認証データベース記憶部20Dに記憶させる(ステップS41)。さらに、認証情報発行部24Cは、発行した認証情報を、それぞれの被験者の被験者用端末100に送信する(ステップS42)。被験者用端末100の認証情報受信部14は、認証情報発行部24Cにより発行された認証情報を受信する(ステップS43)。
【0113】
ここまでは、各被験者の被験者特定情報および割付因子情報が順次入力され、治験に必要な人数分の情報が揃った段階で、各被験者の割付情報および認証情報に関する処理をそれぞれ一度の処理でまとめて行う流れである。これに対して、以下の処理は、個々の被験者毎に個別に行うものである。
【0114】
被認証部15は、被験者によって被験者用端末100に認証情報が入力されたか否かを判定する(ステップS44)。すなわち、ステップS34でインストール済みの治療用アプリが起動され、その際に表示されたログイン画面に対してユーザIDおよびパスワードが入力されたか否かを被認証部15が判定する。
【0115】
ここで、認証情報が入力されていない場合、ステップS44の判定が継続される。一方、ユーザによって被験者用端末100に認証情報が入力された場合、被認証部15は、入力された認証情報を第2の治験管理用サーバ300
-2に送信する(ステップS45)。これに応じて、第2の治験管理用サーバ300
-2の認証処理部25は、認証データベース記憶部20Dに記憶された認証情報を用いて、被験者用端末100から送信された入力情報の正当性を認証する(ステップS46)。
【0116】
ここで、認証処理部25は、認証に成功したか否かを判定する(ステップS47)。認証に失敗した場合、認証処理部25は、認証に失敗した旨のエラーメッセージを被験者用端末100に送信し(ステップS48)、
図11に示す第2の治験管理用サーバ300
-2の処理を終了する。一方、認証に成功した場合、認証処理部25は、認証に成功した旨のメッセージを被験者用端末100に送信するとともに(ステップS49)、その旨を被験者秘匿情報送信部27に通知する。
【0117】
この通知を受けて、被験者秘匿情報送信部27は、割付データベースに登録された被験者秘匿情報を、プッシュ型にて被験者用端末100に送信する(ステップS50)。被験者用端末100の被験者秘匿情報受信部16は、治験管理用サーバ300から送られてくる被験者秘匿情報を受信する(ステップS51)。
【0118】
被験者秘匿情報受信部16が被験者秘匿情報を受信すると、被験者秘匿情報送信部17は、その被験者秘匿情報を第1の治験管理用サーバ300
-1に送信して割付情報のリクエストを行う(ステップS52)。このリクエストを受けて、割付情報送信部23Cは、その被験者秘匿情報に関連付けて割付データベースに登録されている割付情報を被験者用端末100に送信する(ステップS53)。これに応じて、被験者用端末100の割付情報受信部12は、治験管理用サーバ300から送られてくる割付情報を受信する(ステップS54)。
【0119】
そして、モード設定部13は、割付情報受信部12により受信された割付情報に基づいて、治療用アプリを第1のモードまたは第2のモードの何れかに設定する(ステップS55)。これ以降、治療機能実行部11は、モード設定部13により設定された何れかのモードに従って、実治療用プログラムまたは擬似的治療用プログラムの何れかに基づいて各種の処理を実行することになる。
【0120】
以上のように構成した第3の実施形態によれば、上記した第1の実施形態と同様、治療用アプリについてプラセボ対照試験を応用した治験を行う場合において、治療群と対照群との割り付けのランダム化および二重盲検化をシステム的に実現することができる。
【0121】
また、上記した第2の実施形態と同様、モードの設定が完了するまで治療用アプリの使用にロックをかけたり、モードの設定が未完了のタイミングで治療用アプリが起動されたときにその旨のメッセージを表示したり、被験者に対する割り付けが行われる前にログインが行われた場合にエラーメッセージを表示したりするなどの処理を不要とすることができる。これにより、被験者による治療用アプリの使用開始に関する利便性を向上させることができる。
【0122】
また、第3の実施形態では、治験管理用サーバ300を第1の治験管理用サーバ300
-1と第2の治験管理用サーバ300
-2とに分けて、被験者の割り付けおよび治療用アプリのモード設定に関する処理と、被験者の認証に関する処理とを別の事業体で行うようにしている。そして、被験者用端末100と第1の治験管理用サーバ300
-1と第2の治験管理用サーバ300
-2との間の通信を、被験者を特定できない被験者秘匿情報を用いて行うようにしている。これにより、医師と被験者だけでなく、治験を運用する事業体においても、被験者が治療群または対照群のどちらに割り付けられたのかが完全に分からないようにすることができる。
【0123】
なお、上記第3の実施形態は、第2の実施形態をベースとして、治験管理用サーバ300を第1の治験管理用サーバ300
-1と第2の治験管理用サーバ300
-2とに分けて構成する例について説明した。これに対し、第1の実施形態をベースとして、治験管理用サーバ300を第1の治験管理用サーバ300
-1と第2の治験管理用サーバ300
-2とに分ける構成としてもよい。
【0124】
また、上記第1〜第3の実施形態では、複数の医師用端末200から各被験者の被験者特定情報および割付因子情報が治験管理用サーバ300に順次入力され、治験に必要な人数分の情報が割付データベースに登録された段階で、ランダム割付部22による各被験者の割り付け処理を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一人の被験者の被験者特定情報および割付因子情報が入力される都度、その被験者の割り付け処理を行うようにしてもよい。この場合、ランダム割付部22は、一人の被験者に関して割り付けを行う際に、割付データベースに登録済みの被験者に関する割付因子情報および割付情報を参照して、対象者分布が適当な分散状態となるように被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付けるようにしてよい。
【0125】
その他、上記第1〜第3の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
治験管理用サーバ300が、医師用端末200から入力される被験者の割付因子情報に基づいて、被験者を治療群または対照群の何れかにランダムに割り付け、割付情報を被験者用端末100に送信する。そして、被験者が治療用アプリを使用する被験者用端末100において、治験管理用サーバ300から送られてくる割付情報に基づいて、治療用アプリを、実治療用機能を提供する第1のモードまたは擬似的治療用機能を提供する第2のモードの何れかに設定する。これにより、被験者および医師の双方とも、被験者が治療群または対照群のどちらに割り付けられて、治療用アプリがどちらのモードで動作しているのかが分からない状態となるようにして、治療用アプリについてプラセボ対照試験を応用した治験を行う場合において、割り付けのランダム化および二重盲検化をシステム的に実現することができるようにする。