【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る駆動補助装置を適用した自転車の概略構成を示す斜視図である。
【0014】
図1を参照すれば、この自転車は、基体となるフレームとして、ヘッドチューブ1a、トップチューブ1b、ダウンチューブ1c、シートチューブ1d、シートステー1e、及びチェーンステー1fを一体的に有している。ヘッドチューブ1aにおける上方側にはステムを介してハンドルバー2が取り付けられ、下方側にはフロントサスペション4が取り付けられている。ハンドルバー2の先端側にはハンドル2′が取り付けられる。フロントサスペション4に取り付けられる前車輪5は、内側に複数のスポークが設けられたリム5aの外側にタイヤ5bが取り付けられた構造となっている。シートチューブ1dのトップチューブ1b及びシートステー1eの繋がり箇所にはシートピラーを介してサドル3が取り付けられる。シートステー1e及びチェーンステー1fの先端側に取り付けられる後車輪6についても、内側に複数のスポークが設けられたリム6aの外側にタイヤ6bが取り付けられた構造となっている。尚、前車輪5及び後車輪6共、スポークは簡略して図示している。
【0015】
また、チェーンステー1fには挿通軸18が回転可能に挿通されるように取り付けられ、挿通軸18には第2のギア14及びこれと対向して第3のギア15が取り付け固定される。第3のギア15は通常チェーンホイールと呼ばれ、後車輪6の支軸23に取り付け固定された第4のギア16と共に第2のチェーンC2が架け渡される。この第4のギア16には、必要に応じて第2のチェーンC2の回転移動を変速する変速機が取り付けられる。以上に説明した箇所は一般的な自転車と同様な構成である。
【0016】
実施例1に係る駆動補助装置は、フレームを挿通してフレームに対して回転可能に支持される支持軸8と、支持軸8に回転力を付与する一対のペダル7a、7bと、を有する。ペダル7bは
図1中では隠れている。また、駆動補助装置は、支持軸8とペダル7a、7bとが取り付けられて可動するとき、これらの支持軸8とペダル7a、7bとの間の距離を変更可能にする一対の可変機構9a、9bを有する。可変機構9bは
図1中では隠れている。更に、駆動補助装置は、支持軸8を偏芯位置で挿通させて可変機構9a、9bに対向するようにフレームに固定された一対のガイド部材10a、10bと、支持軸8の回転を被伝達部となる後車輪6に伝達する伝達機構と、を有する。
【0017】
具体的に云えば、ガイド部材10a、10bには、中心部分に歪円形状のランド部Lが設けられ、このランド部Lに対して支持軸8がフレームにおける後方側に該当する偏芯位置でフレームを含めて挿通されている。また、ランド部Lの周囲に沿って非円形で環状に延びた環状ガイド溝11a、11bが設けられている。ガイド部材10bの環状ガイド溝11b及びランド部Lは
図1中では隠れている。このような構造のガイド部材10a、10bは、例えば金型を用いれば一体的に製造することができる。但し、このような構造の場合、環状ガイド溝11a、11bの下方近傍壁部とランド部Lの上方近傍壁部とにおける所定の領域には、コロ12aが圧力を加えて移動しても変形しないように必要に応じて硬い補強部材を結合するか、或いは焼入れ等により硬度を強化しておくのが好ましい。また、ランド部Lにおける支持軸8を挿通させるための軸穴は支持軸8の径よりも相当に大きくすることが可能である。
【0018】
可変機構9a、9bは、環状ガイド溝11a、11bに嵌め込まれてそれらの壁部を移動可能な係合体としてのコロ12a、12bを有する。可変機構9bのコロ12bは
図1中では隠れている。コロ12a、12b自体は、環状ガイド溝11a、11bの壁部との接触箇所(軸部)を回転させるために内蔵するボール状や丸棒状のベアリングをピンに取り付けた構造であり、ガイド部材10a、10bの環状ガイド溝11a、11bの壁部に沿って移動する。これにより、可変機構9a、9bは、ガイド部材10a、10bと協働し、後文で説明するように自体伸縮しながら環状ガイド溝11a、11bの壁部に沿ってコロ12a、12bが移動する仕組みのクランク機構として機能する。因みに、コロ12a、12bは、構造上で環状ガイド溝11a、11bの凹面を摺動するように構成できる他、摺動しないようにも構成できる。コロ12a、12bが環状ガイド溝11a、11bの凹面を摺動しない方がペダル7a、7bを漕ぐ足の負担を軽減できる。コロ12a、12bには、例えばTHKボールスプラインのミニチュアボールスプラインLSB型やボールスプラインLSB型、或いはTHK LMシステムの直動システム・回転運動タイプのカムフォロア等を使用できる。
【0019】
ところで、ランド部Lは動作原理上において、必ずしも必要でなく、ランド部Lを持たずに支持軸8の周囲に非円形で凹んで展開する歪円形状のガイド凹部が設けられた場合、コロ12a、12bはガイド凹部の壁部に沿って移動する形態となる。また、この場合には支持軸8がガイド凹部の凹面に対してフレームにおける後方側に該当する箇所の偏芯位置で直接挿通される構成となる。この場合にも支持軸8を挿通させるための軸穴は支持軸8の径よりも相当に大きくすることが可能である。尚、上記ガイド部材10a、10bの構造は、係るガイド凹部において、中心に歪円形状の支持軸8がフレームにおける後方側に該当する偏芯位置で挿通されるランド部Lを別部材で設ければ、ガイド凹部の壁部とランド部Lの壁部との間に環状ガイド溝11a、11bが形成される。それ故、こうした組み付け構造にしても一体的に形成された場合と構成上は同じものとみなすことができる。
【0020】
図2は、上述した駆動補助装置の要部である可変機構9a及びガイド部材10aの構造を簡略して示した斜視図である。
【0021】
図2を参照すれば、可変機構9aのコロ12aは、ペダル7aを漕いだとき、ガイド部材10aの環状ガイド溝11a内に嵌め込まれた状態で壁部に沿って移動する。ガイド部材10aの環状ガイド溝11aは、フレームにおける前方側に該当する箇所を鈍端、後方側に該当する箇所を鋭端とする歪円環形状となっている。また、環状ガイド溝11aは、鈍端側の丸味(所謂R)が大きく、且つ鈍端側における上部の丸味は下部の丸味よりも小さくなっている。歪円形状のランド部Lやガイド部材10aの輪郭形状についても同様に、前方側に該当する箇所が鈍端、後方側に該当する箇所が鋭端となっている。因みに、ランド部Lを持たないガイド凹部の場合にも同様な歪円形状となる。支持軸8は、上述したようにガイド部材10aにおける環状ガイド溝11aの内側のランド部Lにおける鋭端側寄りの箇所に対して回転可能に偏芯位置でフレームを含めて挿通されている。ガイド部材10aの輪郭形状については、図示した以外の形状、例えば略四角形状として変更しても良い。ガイド部材10a、10bが環状ガイド溝11a、11bを持つ構造は、以下に例示するように様々な形態を適用することができ、全体の軽量化を図ることも可能である。
【0022】
図3は、ガイド部材10aを別部材で組み付け構造とする場合の各部材を例示した図であり、同図(a)は補強基板LBを示す図、同図(b)は外ガイド部材GOを示す図、同図(c)はランド部Lを示す図である。また、
図4は各部材を組み付けたガイド部材10aの組み付け構造を示した図であり、同図(a)は平面方向からの図、同図(b)は側面方向からの断面図である。
【0023】
ガイド部材10aの組み付け構造の一例として、
図3(a)〜(c)に示されるようにガイド部材10aの輪郭形状と同様な歪円形状の補強基板LBに対して内ガイド部材となる軸穴LHが設けられたランド部Lと歪円環形状の外ガイド部材GOとを組み付ける場合が挙げられる。軸穴LHはランド部Lにおける鋭端側寄りの箇所の偏芯位置に設けられている。この場合、補強基板LBの所定箇所に予め位置決め固定用のネジ穴を穿孔しておき、ランド部Lを所定の高さを保持するようにタップTを介在させて補強基板LBに対してネジ止めして取り付ける。その後、ランド部Lの周囲に外ガイド部材GOを同様なタップTを介在させて補強基板LBに対してネジ止めして取り付け、外ガイド部材GOの内側とランド部Lの外側との間に環状ガイド溝11aが形成されるような組み付けを行えば良い。ここで説明した組み付けの手順は反対にしても良い。この結果、
図4(a)及び
図4(b)に示されるような組み付け構造となる。尚、ランド部Lに代えて、凸部のランド部Lの周囲に凹部の環状ガイド溝11aが形成された溝付ランド部を内ガイド部材として用いても良い。溝付ランド部はランド部Lの周囲に環状ガイド溝11aが一体的に形成されている分、ランド部Lの単体よりも大型となる。
【0024】
図5は、
図2に示されるガイド部材10aへの補強構造を例示したもので、同図(a)は補強部材D1、D2を具備したガイド部材10aの平面図、同図(b)は同図(a)の重心付近での鉛直方向断面図である。
【0025】
図5(a)及び
図5(b)を参照すれば、ガイド部材10aの環状ガイド溝11aにおける下方近傍壁部の所定の領域には硬い補強部材D1が結合され、ランド部Lの上方近傍壁部における所定の領域にも硬い補強部材D2が結合され、これによってコロ12aが圧力を加えて移動しても変形しないように対策を施した様子を示している。補強部材D1、D2に代えて、同様な領域を対象に焼入れ等により硬度を強化しておくことも可能である。ここでは
図2に示した一体化構造のガイド部材10aを例に説明したが、係る補強対策は
図3と
図4(a)及び
図4(b)とを用いて説明した組み付け構造のガイド部材10aにも同様に適用できる。因みに、これらの何れの構造においても、支持軸8を挿通させるための軸穴LHは支持軸8の径よりも相当に大きくすることが可能である。
【0026】
ガイド部材10aの組み付け構造の他例として、ガイド部材10aの輪郭形状と同様な歪円形状の補強基板LBに予め加工された大きさが異なる歪円環形状板部材を用いる場合が挙げられる。この場合、補強基板LBの所定箇所に予め位置決め固定用のネジ穴を穿孔しておき、内ガイド部材となる外形の小さい歪円環形状板部材を所定の高さを保持するようにタップTを介在させて補強基板LBにネジ止めして取り付ける。その後、外形の小さい歪円環形状板部材の周囲に外ガイド部材GOとなる外形の大きい歪円環形状板部材を同様なタップTを介在させて補強基板LBにネジ止めして取り付け、外形の大きい歪円環形状板部材(外ガイド部材GO)の内側と外形の小さい歪円環形状板部材(内ガイド部材)の外側との間に環状ガイド溝11aが形成されるような組み付けを行えば良い。ここで説明した組み付けの手順は逆であっても良い。
【0027】
このような組み付け構造においても、外ガイド部材GOの下方近傍壁部と内ガイド部材の上方近傍壁部とにおける所定の領域には、コロ12aが圧力を加えて移動しても変形しないように硬い補強部材D1、D2を結合するか、焼入れ等により硬度を強化しておくのが好ましい。また、この構造においても、基本機能上は補強基板LB上に外ガイド部材GOとなる外側の歪円環形状板部材だけを設けるようにしても良く、外側の歪円環形状板部材の内壁側に非円形で凹んで展開するガイド凹部が形成されることになる。何れの構造においても、補強基板LBに設けられる支持軸8を挿通させるための軸穴LHは支持軸8の径よりも相当に大きくすることが可能である。
【0028】
ガイド部材10aの組み付け構造の別例として、補強基板LBを用いずにフレームを変形させて補強部分を増設しておき、フレームに対して直接的に内ガイド部材と外ガイド部材GOとを結合する場合が挙げられる。この場合、組み付け構造の一例で説明した部材を用いると、フレームに対して内ガイド部材となる歪円形状のランド部Lとその周囲に外ガイド部材GOとなる外形の大きい歪円環形状板部材とを結合し、外ガイド部材GOの内側とランド部Lの外側との間に環状ガイド溝11aが形成される構成とすれば良い。組み付け構造の他例で説明した部材を用いると、内ガイド部材となる内側の外形の小さい歪円環形状板部材と外ガイド部材GOとなる外側の外形の大きい歪円環形状板部材とを結合し、外形の大きい歪円環形状板部材の内側と外形の小さい歪円環形状板部材の外側との間に環状ガイド溝11aが形成される構成とすれば良い。
【0029】
組み付け構造の別例における前者の場合には支持軸8がランド部Lの鋭端側寄りの箇所の偏芯位置及びフレームを挿通する構造となり、支持軸8を挿通させるための軸穴LHを支持軸8の径よりも相当に大きくすることが可能である。後者の場合には支持軸8がフレームを直接挿通するだけの構造となる。このような構造の場合、何れも補強基板LBの凹面が存在しないため、可変機構9aのコロ12aは、ペダル7aを漕いだときにガイド部材10aの環状ガイド溝11a内に嵌め込まれた状態で壁部に沿って移動する動きとなる。因みに、組み付け構造の一例においても、タップTの高さ、ネジ止め寸法を選定することによりコロ12aが補強基板LBの凹面に接触せずに摺動しない組み付け構造にすることができる。同様に、一体化構造のガイド部材10aにおいても、環状ガイド溝11aを或る程度深くすれば可変機構9aのコロ12aが凹面に接触せずに摺動しない構造にすることができる。
【0030】
何れにせよ、ガイド部材10aは、ガイド凹部が形成されるか、或いは環状ガイド溝11aが形成されていれば良く、組み付け構造や製造方法による細部構成の相違があるものの、その形態を問わないものとする。実施例1に係るガイド部材10aの環状ガイド溝11aは、可変機構9aのコロ12aが凹面に接触せずに壁部に沿って移動できるように形成されているものとする。ガイド部材10bについても、フレームの前方側に該当する箇所を環状ガイド溝11bの鈍端とした同様な構造となっている。
【0031】
可変機構9aについては、ガイド部材10aに対向する一端側の板状片9a‐1に支持軸8が取り付け固定されている。また、この板状片9a‐1のスライド溝Vに一部が係合されてガイド部材10aに対向する他端側の可動片9a−2が板状片9a‐1を挟む形状でスライド溝Vに沿って移動可能に板状片9a‐1に対して結合されている。更に、可動片9a‐2の外方他端側の箇所に軸芯回りに回転可能にペダル7aが取り付けられ、支持軸8とペダル7aとの間に該当する可動片9a‐2の内方一端側の箇所にコロ12aが取り付けられている。加えて、可動片9a‐2の外方他端側のペダル7aから一端側へ向かう箇所には長穴26が設けられ、長穴26内の壁部にピン状突起27が当接しながら長穴26の変位を規制する構造となっている。
【0032】
板状片9a‐1のスライド溝V、及びこれに係合される可動片9a−2の係合部の形状は種々変更できる。例えばNSKリニアガイドのLHシリーズのLAH‐AN型を適用できる。これはスライド溝V内にボールベアリング内蔵され、両方の角に2つ、左右の側面にV溝が2つ設けられたタイプのものである。また、調芯型LNシリーズの産業機械用リニアガイドであり、左右側面にV溝が2つあるLNシリーズ角型AN‐AL型を適用できる。更に、THK LMガイドのコンパクト重荷重用又は中荷重用のLMガイドSR型(レールの形状が多様)、LMガイドVSR‐TBA型(溝を持たないタイプもある)、LMガイドHSR‐TA型(超重荷重型でブロックの内側にボールベアリングが無い)、LMガイドHRV型(四方向等荷重型で幅が長い)を適用できる。その他、TMK LMシステムのFT型やFTW型のニードルベアリングも適用可能である。
【0033】
このような構造の可変機構9aでは、コロ12aが環状ガイド溝11a内に嵌め込まれた状態でペダル7aを漕いだとき、コロ12aが環状ガイド溝11aの壁部に沿って移動するに伴い自体伸縮する。このとき、可動片9a−2の係合箇所が板状片9a‐1のスライド溝Vに沿って移動すると共に長穴26が変位し、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が可変する仕組みとなっている。可変機構9b及びガイド部材10bについても向きが反対となる以外は同様な構成となっている。
【0034】
図6は、
図2で説明した可変機構9aのコロ12aがガイド部材10aの環状ガイド溝11aに嵌め込まれて移動する様子を示した概略図である。
【0035】
図6では、ペダル7aを反時計回りに漕ぐ場合を想定し、可変機構9aのコロ12aがガイド部材10aの環状ガイド溝11aに嵌め込まれて移動したときの可変機構9aの自体伸縮の様子を示している。この可変機構9aの自体伸縮は、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離(クランク長)の変化を示すものである。
【0036】
具体的に云えば、位置Aではペダル7aが頂点にあり、コロ12aが歪円環形状の環状ガイド溝11aに案内されて支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が中程度の長さになっている。位置Bではペダル7aが頂点から若干下がった位置にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が相当に長くなっている。位置Cではペダル7aが中程度の高さ位置にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が最長に近くなっている。尚、位置Bと位置Cとの間のやや位置C側寄り箇所でクランク長が最大となる。位置Dではペダル7aが最下点よりやや高い位置にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離がやや長くなっている。因みに、位置Dでの支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離は、位置Bでの支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離よりは短い。
【0037】
位置Eではペダル7aが最下点にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離がやや短くなっている。因みに、位置Eでの支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離は、基準クランク長と呼ばれても良く、位置Aでの支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離よりは短い。位置Fではペダル7aが位置Dよりも幾分高い位置にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が相当に短くなっている。位置Gではペダル7aが中程度の高さ位置にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が最短となっている。位置Hではペダル7aが位置Bよりも幾分低い位置にあり、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が相当に短くなっている。因みに、位置Hでの支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離は、位置Fでの支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離よりも短くなっている。
【0038】
即ち、実施例1に係る駆動補助装置では、
図6に示されるようにペダル7aを漕いでガイド部材10aの歪円環形状の環状ガイド溝11aに嵌め込まれた可変機構9aのコロ12aが壁部に沿って移動する際の力のモーメントの作用を活用している。一般に支持軸8の軸芯がガイド部材10a(ランド部L)の中心付近に位置されていれば、支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が変化する構造を採用しても、可変機構9aの自体伸縮量が小さいため、一定の力でペダル7aを漕ぎ続けると環状ガイド溝11aの形状的に膨らんだ鈍端側では遅い移動となり、縮んだ鋭端側では速い移動となる。そこで、実施例1に係る駆動補助装置では、支持軸8の軸芯をガイド部材10aの中心付近から十分に隔たったランド部Lにおける鋭端側寄りの箇所に偏芯位置で挿通させて可変機構9aの自体伸縮量を大きくしている。この上でコロ12aの環状ガイド溝11aでの移動に伴い、可変機構9aの自体伸縮で支持軸8の軸芯とペダル7aの軸芯との距離が環状ガイド溝11aの形状的に膨らんだ鈍端側では長くなり、縮んだ鋭端側では短くなるようにクランク機構の構造を工夫している。
【0039】
以下は、支持軸8の回転速度を同じ一定速度にする条件下を想定してクランク機構の動作を説明する。クランク機構では、環状ガイド溝11aにおける形状的に膨らんだ鈍端側の半回転分の位置A→Eでのクランク長が基準クランク長以上であるため、コロ12aの移動を容易に速くできる。変速機を使用した場合には、軽いギアではコロ12aの移動をより速くでき、重いギアではコロ12aの移動が遅くなる。しかも、鈍端側の上部の丸味が下部の丸味よりも小さいため、クランク長が長い領域の位置B→Cのコロ12aの移動の方を位置C→Dのコロ12aの移動よりも速くすればペダル7aを漕ぐ足の負担が軽減される。
【0040】
更に、環状ガイド溝11aにおける形状的に縮んだ鋭端側の半回転分の位置E→Aでのクランク長が基準クランク長未満であり、その分コロ12aの移動を遅くさせられる。実際にはこの半回転分の位置E→Aではペダル7aを漕ぐ必要がなく、ペダル7aに足を乗せているだけでコロ12aの移動を遅くできる。鋭端側の位置E→Aでの足の負担を無くすことができることにより、鈍端側の位置A→Eでのペダル7aを漕ぐ足の負担を軽減させることができる。この結果、特許文献1記載の梃作用が生じる部分で駆動力が増大される機能と同等に、クランク機構の機能で力のモーメントが作用し、ペダル7aを足で漕ぐ負担を少なくすることができる。ペダル7aを足で漕ぐ作業は、ほぼ位置A→Dで集中して行えば良く、位置E→Hでは殆どペダル7aを漕ぐ必要がない。
【0041】
図7は、上述した駆動補助装置の要部である可変機構9a、9b及び伝達機構の細部構造を一部破断して示した斜視図である。
【0042】
図7では、可変機構9a、9bにおいて、ペダル7a、7bを漕ぐと可動片9a‐2、9b‐2が板状片9a‐1、9b‐1のスライド溝Vに沿って移動可能な様子、並びに長穴26の変位がピン状突起27で規制される様子を示している。これにより、可変機構9a、9bは、ペダル7a、7bを漕ぐとそれぞれ自体伸縮する。その他、
図4では、伝達機構が支持軸8に取り付け固定された第1のギア13と、ガイド部材10a、10bよりも後方側のチェーンステー1f(
図1参照)に挿通して回転可能に取り付けられた挿通軸18に取り付け固定された第2のギア14と、を有する様子を示している。
【0043】
また、伝達機構は、
図1を参照すれば、第1のギア13及び第2のギア14に架け渡される第1のチェーンC1と、挿通軸18に第2のギア14と対向して取り付け固定された第3のギア15と、を有する。更に、伝達機構は、後車輪6の支軸23に取り付け固定された第4のギア16と、第3のギア15及び第4のギア16に架け渡される第2のチェーンC2と、を有する。加えて、伝達機構は、支軸23に取り付けられて第2のチェーンC2の回転移動を変速する略図する変速機を有する。
【0044】
次に、実施例1に係る自転車の伝達機構の働きを説明する。この伝達機構では、ペダル7a、7bを漕ぐと、ガイド部材10a、10bの環状ガイド溝11a、11bにそれぞれ嵌め込まれた可変機構9a、9bのコロ12a、12bが環状ガイド溝11a、11bの壁部に沿って移動する。これに伴い、可変機構9a、9bが自体伸縮しながら回転し、これを受ける支持軸8の回転に応じて第1のギア13が回転する。この第1のギア13と第2のギア14とには第1のチェーンC1が架け渡されているため、第1のチェーンC1の回転移動に伴って挿通軸18と共に第2のギア14が回転する。第2のギア14が回転すると、第3のギア15も挿通軸18と共に回転する。この第3のギア15と支軸23に取り付け固定された第4のギア16とには第2のチェーンC2が架け渡されているため、第2のチェーンC2の回転移動に伴って第4のギア16も支軸23と共に回転する。この結果、ペダル7a、7bを漕いだときの可変機構9a、9bの回転に伴う支持軸8の回転が後車輪6に伝達されて自転車が走行可能な状態になる。
【0045】
因みに、第4のギア16に変速機が取り付けられている場合には、運転者がハンドルバー2の先端側のハンドル2′に具備された図示されない切り替え操作機能で変速機のギアを切り替え操作設定すると、変速機で選択された径のギアに切り替えられる。一番軽くするギアでは、ペダル7a、7bを漕ぐ足の負担を軽減できて回転を速くすることができる。一番重くするギアでは、ペダル7a、7bを漕ぐ足の負担が増大して回転が遅くなる。変速機が増速機の場合には、入力軸の軸径が大きいと遅い回転となり、出力軸の軸径が小さいと速い回転となる。変速機が減速機の場合には、これとは逆であり、入力軸の軸径が小さいと速い回転となり、出力軸の軸径が大きいと遅い回転となる。
【0046】
何れにせよ、実施例1に係る駆動補助装置を適用した自転車では、
図6を参照して説明したように、ペダル7a、7bを漕ぐと、可変機構9a、9b及びガイド部材10a、10bが協働してのクランク機構の機能により力のモーメントが作用する。このとき、可変機構9a、9bが自体伸縮しつつ、ガイド部材10a、10bの環状ガイド溝11a、11bにおける形状的に膨らんだ鈍端側でのコロ12a、12bの移動を低負荷で容易に速くでき、しかも、鈍端側における上部よりも下部で移動を遅くできる。また、環状ガイド溝11a、11bにおける形状的に縮んだ鋭端側でのコロ12a、12bの移動を足で漕ぐ必要を無くして無負荷で遅くすることができる。この結果、ペダル7a、7bを漕ぐ足の負担を少なくして十分に駆動補助することができる。
【実施例2】
【0047】
図8は、本発明の実施例2に係る駆動補助装置を適用した発電機の概略構成を示す斜視図である。
【0048】
図8を参照すれば、実施例2に係る発電機は、
図1に示した自転車を改造して前車輪5及び後車輪6を設けずに非走行の設置タイプとし、中心軸を支軸23′とする変速機21と回転軸を有する発電手段としての発電用モータ22とを付設したものである。このため、基体となるフレームについて、トップチューブ1b、ダウンチューブ1c、及びシートチューブ1dは概ね実施例1の場合と同様な形状であるが、その他は形状を変更している。尚、発電用モータ22には直流(DC)式、交流(AC)式の何れにも適用できる。
【0049】
具体的に云えば、ヘッドチューブ1a′は、フロントサスペション4の取り付けが不要な長尺タイプとされており、下方側に前脚1gが一体的に取り付けられる。シートステー1e′及びチェーンステー1f′は後方両側に延びた箇所に三角枠状部をそれぞれ一体的に形成しており、下方両側に後脚1hがそれぞれ一体的に取り付けられる。奥側の三角枠状部及び後脚1hは
図8中では隠れている。
【0050】
また、一対の三角枠状部間のシートチューブ1d寄りの箇所には、中心軸の支軸23′の一端側の第4のギア16′に取り付けられて第3のギア15′と第4のギア16′とに架け渡たされる第2のチェーンC2の回転移動を増速する変速機21が備えられている。更に、一対の三角枠状部間の後方箇所には、変速機21の支軸23′の他端側に取り付けられた第4のギア16″との間で第3のチェーンC3が架け渡される第5のギア17が回転軸24に取り付け固定された発電用モータ22が備えられている。ここでは、変速機21及び発電用モータ22を取り付けるために別途専用の取り付け工具を用いるものとするが、予めフレームに専用の取り付け片を一体的に形成しておいても良い。
【0051】
因みに、実施例1の第3のギア15はチェーンホイールとしたが、実施例2の第3のギア15′は第1のギア13や第2のギア14と同じタイプのものを用いている。その他、ここでもヘッドチューブ1a′における上方側にはステムを介してハンドルバー2が取り付けられ、シートチューブ1dのトップチューブ1b及びシートステー1e′の繋がり箇所にはシートピラーを介してサドル3が取り付けられる。
【0052】
更に、実施例2に係る発電機では、可変機構9a′、9b′におけるペダル7a、7bが取り付けられる可動片9a′‐2、9b′‐2の外方側の形状を一部長尺化し、その一端側の起立部を板状片9a′‐1、9b′‐1に結合するように変更している。可変機構9b′の板状片9b′‐1及び可動片9b′‐2とペダル7bとは
図8中では隠れている。また、可変機構9a′の板状片9a′‐1の一端側の箇所には、可変機構9a′の回転力を直線の動きに変換するラック・アンド・ピニオン19aが取り付けられている。可変機構9b′についても、向きが反対となる以外は同様な構成であり、板状片9b′‐1には変機構9b′の回転力を直線の動きに変換するラック・アンド・ピニオン19bが取り付けられている。ラック・アンド・ピニオン19bは
図8中では隠れている。
【0053】
これらのラック・アンド・ピニオン19a、19bは歯切りされた一対の棒状ラック間に円形歯車を挟み込んだ構造となっている。上段の棒状ラックは可変機構9a′、9b′と同じ方向に動き、先端側箇所に錘25が取り付けられた下段の棒状ラックは円形歯車の働きによって上段の棒状ラックとは反対方向に動く。このため、錘25は上段の棒状ラックが後退する方向に移動する際、これを挿通させる抜け穴を有している。ラック・アンド・ピニオン19a、19bでは、錘25を動かすことで支持軸8を中心として可変機構9a′、9b′側と錘25側との釣合いを取る役割を担う。尚、ラック・アンド・ピニオン19a、19bにおける各棒状ラックは固定片20a、20bにより挟まれて外れないように固定されている。固定片20bは
図8中では隠れている。
【0054】
因みに、ラック・アンド・ピニオン19a、19bが付設された可変機構9a′、9b′の構造は、可変機構9a′、9b′の自体伸縮時に錘25を逆方向に動かすことで釣合いを持たせる働きがあるため、実施例1の自転車に適用させても良い。また、実施例2に係る発電機では、ラック・アンド・ピニオン19a、19bの下段の棒状ラックの先端側箇所に錘25を取り付けるものとしたが、軽量化を重視すれば錘25を取り付けない構成としても良い。更に、ラック・アンド・ピニオン19a、19bが不要であれば可変機構9a′、9b′に付設しなくても良い。
【0055】
次に、実施例2に係る発電機の伝達機構の働きを説明する。この伝達機構では、ペダル7a、7bを漕ぐと、ガイド部材10a、10bの環状ガイド溝11a、11bにそれぞれ嵌め込まれた可変機構9a′、9b′のコロ12a、12bが環状ガイド溝11a、11bの壁部に沿って移動する。これに伴い、可変機構9a′、9b′が自体伸縮しながら回転し、これを受ける支持軸8の回転に応じて第1のギア13が回転する。この第1のギア13と第2のギア14とには第1のチェーンC1が架け渡されているため、第1のチェーンC1の回転移動に伴って挿通軸18と共に第2のギア14が回転する。第2のギア14が回転すると、第3のギア15′も挿通軸18と共に回転する。
【0056】
第3のギア15′と変速機21の支軸23′の一端側に取り付け固定された第4のギア16′とには第2のチェーンC2が架け渡されているため、第2のチェーンC2の回転移動に伴って第4のギア16′も支軸23′と共に回転する。これに伴い、変速機21の支軸23′の他端側に取り付けられた第4のギア16″も支軸23′と共に回転する。第4のギア16″と発電用モータ22の回転軸24とには第3のチェーンC3が架け渡されているため、第2のチェーンC2の回転移動に伴って第3のチェーンC3も回転移動が変速される。この結果、ペダル7a、7bを漕いだときの可変機構9a′、9b′の回転に伴う支持軸8の回転が発電用モータ22の回転軸24を変速するように伝達されて発電可能な状態になる。
【0057】
実施例2に係る駆動補助装置を適用した発電機においても、
図6を参照して説明したように、ペダル7a、7bを漕ぐと、可変機構9a′、9b′及びガイド部材10a、10bが協働するクランク機構の機能で力のモーメントが作用する。この結果、ペダル7a、7bを漕ぐ足の負担を少なくして十分に変速機21の支軸23′へ駆動補助できる。これにより、発電用モータ22の回転軸24を変速させての発電力を制御することができる。
【0058】
因みに、変速機21については、上述した通り、増速機と減速機とがあるが、発電用モータ22の回転軸24を変速させての発電力をどのように取得するかは発電機の種類に応じて採択を行えば良いものである。一般に発電力を抑制したい場合には減速機を使用し、発電力を向上させたい場合には増速機を使用すれば良い。実施例2に係る駆動補助装置の場合には、変速機21として増速機を使用するのが好適である。
【0059】
その他、実施例2に係る駆動補助装置の場合には、各ギアの大小の相違や種類が多く、ペダル7a、7bを漕ぐ力に合わせた変更調整を行うことができるので、これも発電力の制御に寄与する。増速機は比較的高価であるため、仮に搭載しない場合には減速機を使用して各ギアの大小の種類の組み合わせを工夫しても良い。こうした場合にも有効に発電することができる。
【0060】
尚、本発明は上述した各実施例に限定されず、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記各実施例は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であるが、これらは添付した特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。例えば基体(フレーム)を二股に分かれる分岐タイプとすれば、各実施例に係る駆動補助装置の要部、ガイド部材10a、10bと可変機構9a、9bや可変機構9a′、9b′の一部について、可動部位の動作を妨げないように分岐部分の内側に配備するように変形することも可能である。