【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『活力ある生涯のためのLast 5X イノベーション』委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光制限部材は、前記筐体の開口部に設けられ、前記揺動ミラーからのレーザ光の前記開口部におけるスポットの一部を遮蔽することにより、当該レーザ光の強さを制限して前記筐体外へ透過する遮光部材である
請求項1に記載のレーザレンジファインダ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0024】
(実施の形態)
[1.レーザレンジファインダの構成]
まず、本実施の形態に係るレーザレンジファインダの構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0025】
図1は、実施の形態におけるレーザレンジファインダ1の概略構成の一例を示す斜視図である。なお、
図1は、レーザレンジファインダ1の筐体11を透視して筐体11内方を示した図となっている。また、説明の都合上、遮光部材51及び反射板52には網掛けを施している。
図2は、実施の形態におけるレーザレンジファインダ1の信号処理部60の機能構成の一例を示すブロック図である。なお、
図2では、信号処理部60に加えて、受光部30も図示されている。
【0026】
なお、
図1では、Z軸方向をレーザレンジファインダ1の走査軸(基準方向)に平行な軸として示しており、Y軸を上下方向(設置状態での重力の作用する方向)として示している。以下ではY軸方向を上下方向として説明するが、使用態様によってはY軸方向が上下方向にならない場合も考えられるため、Y軸方向は上下方向となることには限定されない。以下の図においても、同様である。
【0027】
また、以下において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示しており、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向やZ軸方向についても同様である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態におけるレーザレンジファインダ1は、光源10と、スキャンミラー20と、受光部30(受光部30にはスキャンミラー20の反射光を集光する光学部も含まれる)と、ビームスプリッタ40と、窓部50とを備え、さらに、
図2に示す信号処理部60を備える。
【0029】
光源10は、筐体11内に配置され、レーザ光を出射し、例えばレーザダイオード(LD)で構成されている。この光源10は、変調信号出力部(不図示)から出力される変調信号に従ってレーザ光を出射する。
【0030】
スキャンミラー20は、光源10からのレーザ光を走査領域(図中のA−Cエリア)で走査する揺動ミラーであり、例えば、揺動器(図示せず)によって所定の軸線を中心に揺動するMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。なお、軸線は、例えば、Y軸方向に延びている。スキャンミラー20は、軸線を中心に揺動することにより、光源10からのレーザ光を対象物に向けて1軸方向(例えば水平方向)に走査する機能を有している。さらに、スキャンミラー20は、対象物で反射したレーザ光を受光部30に向けて反射する機能を有している。
【0031】
ここで、光源10から出射されたレーザ光は、スキャンミラー20が揺動することにより、所定の範囲(
図1中のA−Cエリア)で走査される。当該所定の範囲の一部(
図1中のB−Cエリア)には、反射板52(後述する)が設けられており、スキャンミラー20から反射板52に入射したレーザ光はレーザレンジファインダ1の外部に出射されることなくスキャンミラー20に反射される。つまり、スキャンミラー20によって走査されたレーザ光のうち、レーザレンジファインダ1の外部に出射されるレーザ光は、当該所定の範囲の他部(
図1中のA−Bエリア)に出射されたレーザ光である。以下、
図1中のA−Cエリアをミラースキャンエリア(走査領域)、A−Bエリアを測距エリア(測距領域)、B−Cエリアを基準位置検出エリアと記載する場合がある。
【0032】
言い換えると、測距エリア(A−Bエリア)とは、スキャンミラー20によってレーザ光が走査されるミラースキャンエリア(A−Cエリア)のうち、レーザレンジファインダ1が対象物の距離及び方向を検知できるエリアである。すなわち、測距エリア(A−Bエリア)とは、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)のうち、当該スキャンミラー20から反射板52に到達するレーザ光の光路及び当該光路の延長上を除く領域である。
【0033】
また、基準位置検出エリア(B−Cエリア)とは、スキャンミラー20によってレーザ光が走査されるミラースキャンエリア(A−Cエリア)のうち、スキャンミラー20から反射板52に到達するレーザ光の光路及び当該光路の延長によって形成される領域である。
【0034】
本実施の形態では、上述したようにスキャンミラー20がレーザ光L1を1軸方向(水平方向)に走査するため、ミラースキャンエリア、測距エリア、及び、基準位置検出エリアは2次元の平面領域となる。
【0035】
なお、本実施の形態では、スキャンミラー20は、レーザ光を1軸方向(例えば水平方向)に走査するとして説明するが、スキャンミラー20は、レーザ光を2軸方向(水平方向及び垂直方向)に走査してもよく、この場合、ミラースキャンエリア、測距エリア、及び、基準位置検出エリアは3次元の空間領域となる。
【0036】
受光部30は、スキャンミラー20によって走査されたレーザ光の対象物及び反射板52からの反射光を受光する、例えば、フォトダイオード(PD;Photodiode)、又は、当該フォトダイオードよりも高感度なアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photo Diode)で構成されている。具体的には、受光部30は、対象物及び反射板52からの反射光を、スキャンミラー20及びビームスプリッタ40を介して受光する。また、受光部30は、対象物及び反射板52からの反射光の光路上に配置され、スキャンミラー20及びビームスプリッタ40を経由した反射光を集光してPDに導く光学部(例えば、集光レンズ)を備える。
【0037】
ビームスプリッタ40は、光源10とスキャンミラー20との間に配置され、光源10から出射されたレーザ光をそのまま通過させ、スキャンミラー20からの光を受光部30に反射する(導く)。なお、光源10から出射されたレーザ光をそのまま通過させ、スキャンミラー20からの光を反射させる部材であれば、ビームスプリッタ40でなくてもよく、例えば、有孔ミラーであってもよい。
【0038】
窓部50は、筐体11の開口部に設けられ、遮光部材51と反射板52とを備える。スキャンミラー20で反射されたレーザ光は、当該窓部50を介して筐体11の外部(レーザレンジファインダ1の外部)へ出射される。また、出射されたレーザ光の対象物からの反射光は、当該窓部50を介して筐体11の内部(レーザレンジファインダ1の内部)へ入射する。この窓部50の詳細については、後述する。
【0039】
ここで、スキャンミラー20で反射されたレーザ光は、光強度が比較的大きな直線偏光の光である。これに対し、対象物からの反射光は、光強度が非常に小さな拡散光となる。そこで、筐体11の開口部のうち遮光部材51及び反射板52を設けた領域以外は、スキャンミラー20の面積より大きく、受光部30によって対象物からの反射光を受光できるだけの十分な光量を確保できるだけの大きさにすることが好ましい。
【0040】
なお、以下、本実施の形態では、反射板52は窓部50に設けられているとして説明するが、これに限らない。反射板52は、ミラースキャンエリア(走査領域)に設けられていればよく、例えば、走査領域の端部が筐体11の開口端部を含む場合、反射板52は、筐体11内面の開口端部に設けられていてもよい。
【0041】
次に、
図2を参照しながら、実施の形態におけるレーザレンジファインダ1の信号処理部60の機能構成について説明する。
【0042】
同図に示す信号処理部60は、受光部30が受光した対象物からの反射光を用いて、レーザレンジファインダ1から当該対象物までの距離を算出する。また、さらに、受光部30が受光した反射板52からの反射光を用いて、当該対象物の方向(角度)を算出する。この信号処理部60は、測距信号処理部61と、強度信号モニタ部62と、基準位置検知部63と、演算部64とを備え、例えば、システムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)、あるいは、IC(Integrated Circuit)を用いて構成されている。あるいは、信号処理部60は、マイクロコントローラにより構成されていてもよい。以下、信号処理部60の具体的な構成について、説明する。
【0043】
測距信号処理部61は、光源10から出射されたレーザ光に含まれた変調信号と、受光部30が受光した反射光に含まれる変調信号との位相差を用いて、レーザレンジファインダ1から対象物までの距離を算出する。つまり、測距信号処理部61は、当該位相差を用いて、レーザ光が光源10から出射されてから受光部30で受光されるまでの時間を算出する。この時間は、レーザ光が光源10から測定対象物までを往復するのにかかる時間である。したがって、測距信号処理部61は、当該時間の1/2に光の速さを乗算することにより、当該距離を求めることができる。また、測距信号処理部61は、求めた距離を示す距離情報信号を出力する。
【0044】
強度信号モニタ部62は、受光部30が受光した反射光の光強度を用いて、当該反射光が基準位置検出エリアからの反射光か否かを判定する。具体的には、当該反射光の光強度が所定の閾値(例えば、測距エリアからの反射光の飽和光量)以上の場合に、当該反射光が基準位置検出エリアからの反射光(反射板52からの反射光)であると判定し、当該反射光が基準位置検出エリアからの反射光であることを示すクロック信号(パルス信号)を出力する。
【0045】
基準位置検知部63は、強度信号モニタ部62から出力されたクロック信号の信号周期を用いて、スキャンミラー20の走査方向(走査角:走査位置)を示すミラー位置認識信号を出力する。具体的には、基準位置検知部63は、強度信号モニタ部62から出力されたクロック信号の信号周期とスキャンミラー20に対して反射板52が配置された方向(基準位置検出エリアの方向)とから、スキャンミラー20の最大走査角度を算出する。さらに、算出した最大走査角度とスキャンミラー20の揺動周期とから、スキャンミラー20の走査方向(走査角:走査位置)を算出する。
【0046】
演算部64は、測距信号処理部61から出力された距離情報信号と、基準位置検知部63から出力されたミラー位置認識信号とを用いて、レーザレンジファインダ1に対する対象物の方向(位置)、及び、レーザレンジファインダ1から対象物までの距離を演算する。また、演算した当該方向及び当該距離を示すスキャンエリア距離情報を出力する。
【0047】
このように、信号処理部60は、受光部30によって受光された反射板52からの反射光と対象物からの反射光とのタイミングを用いて、レーザレンジファインダ1に対する対象物の方向(位置)を算出する。また、当該信号処理部60は、さらに、受光部30が受光した対象物からの反射光の位相と、光源10から出射されたレーザ光の位相との位相差を用いて、レーザレンジファインダ1から対象物までの距離を算出する。
【0048】
なお、信号処理部60は、基準位置検知部63によって算出されたスキャンミラー20の最大走査角度を示す信号を、スキャンミラー20を駆動(揺動)させるミラー駆動部(不図示)へフィードバックすることにより、スキャンミラー20の最大走査角度を制御してもよい。
【0049】
[2.窓部の構成]
次に、窓部50の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態における窓部50の構成の一例を示す斜視図である。なお、説明の都合上、遮光部材51及び反射板52には網掛けを施している。
【0050】
上述したように、窓部50は、筐体11の開口部に設けられ、遮光部材51と反射板52とを備える。また、
図3に示すように、さらに、透過部材53を備える。
【0051】
[2−1.遮光部材]
遮光部材51は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)のうち測距エリア(A−Bエリア)、かつ、筐体11内に配置され、スキャンミラー20からのレーザ光L1の強さ(光強度)を制限して筐体11外へ透過する光制限部材の一例である。ここで、「筐体11内に配置されている」とは、筐体11の内部(内方)に配置されている場合も筐体11の開口部に配置されている場合も含まれる。
【0052】
具体的には、遮光部材51は、筐体11の開口部に設けられ、スキャンミラー20からのレーザ光L1の当該開口部におけるレーザスポットLSスポットの一部を遮光することにより、当該レーザ光の強さを制限して筐体11外へ透過する。より具体的には、遮光部材51は、スキャンミラー20によるレーザ光L1の走査方向(水平方向)に沿って測距エリア(A−Bエリア)に配置されている。このように構成された遮光部材51により、スキャンミラー20からのレーザ光L1は、強さ(光強度)が制限されて筐体11外へ出射される。つまり、遮光部材51は、レーザ光L1のレーザスポットLSの一部と重なるように配置されることにより、スキャンミラー20からのレーザ光L1の一部をレーザ光L2として透過させ、他の一部を透過させない。ここで、「レーザ光を透過させない」とは、透過量をゼロにする場合に限らず、透過量を実質的にゼロ(例えば、透過量5パーセント以内)にすればよい。
【0053】
この遮光部材51は、例えば、透過部材53に塗布されたカーボンブラック等の光吸収剤を含有する樹脂であり、当該遮光部材51に入射したレーザ光を透過させない。なお、遮光部材51の構成はこれに限らず、当該遮光部材51に入射したレーザ光の光路を変えることにより、当該レーザ光を筐体11外へ透過しなくてもよく、例えば、入射したレーザ光を、筐体11外へ透過せず、かつ、受光部30に到達しないような光路で反射する鏡等の反射部材であってもよい。
【0054】
また、遮光部材51は、スキャンミラー20によるレーザ光L1の走査方向(水平方向)に沿って測距エリア(A−Bエリア)の全域に亘って配置されており、当該走査方向のいずれの位置においても、開口部に入射したレーザ光のスポット面積を同等の割合で遮光するように設けられていることが好ましい。これにより、スキャンミラー20からのレーザ光は、測距エリアのいずれの光路においても、同等の割合で制限されて筐体11外へ出射される。
【0055】
このように、遮光部材51は、スキャンミラー20によるレーザ光L1の走査角度範囲の一部において当該レーザ光L1の光路上に配置され、当該光路を通るレーザ光L1の強さを制限して透過する。
【0056】
[2−2.反射板]
反射板52は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)のうち筐体11内に配置され、スキャンミラー20からのレーザ光を反射する。つまり、反射板52は、測定エリア(B−Cエリア)外、かつ、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)内のうち、筐体11内に配置されている。具体的には、反射板52は、スキャンミラー20からのレーザ光L1を当該スキャンミラー20に反射する反射面を有する。当該反射面は、比較的大きい既知の反射率を有していればよく、例えば、白色等の塗料が塗られて形成されていても構わないし、鏡のように光を全反射する部材が取り付けられて構成されていてもよい。また、当該反射面の大きさは、レーザスポットLSよりも大きければよい。
【0057】
このように、反射板52は、スキャンミラー20によるレーザ光L1の走査角度範囲の他の一部において当該レーザ光L1の光路上に配置され、当該光路を通るレーザ光L1をスキャンミラー20に反射する。
【0058】
[2−3.透過部材]
透過部材53は、筐体11の開口を塞ぐように設けられ、スキャンミラー20からのレーザ光L1及び当該レーザ光L1の対象物からの反射光を透過する、例えば、アクリル樹脂又はガラス等である。なお、窓部50は、透過部材53を有していなくてもよく、例えば、筐体11の開口部に架橋された柱形状の遮光部材51と、当該筐体11の開口部に設けられた反射板52とを備えてもよい。
【0059】
[3.測距エリアと基準位置検出エリアとの分離]
以上のように構成された窓部50により、本実施の形態に係るレーザレンジファインダ1は、測距エリア(A−Bエリア)と基準位置検出エリア(B−Cエリア)とを、分離して識別することができる。つまり、基準位置検出エリアからの反射光を、測距エリアからの反射光と区別することができる。
【0060】
[3−1.対象物が窓部直前以外に位置している場合]
まず、対象物が窓部50の直前以外に位置している場合について、
図4及び
図5を用いて説明する。つまり、この場合、対象物は、窓部50に張り付くことなく、窓部50から所定の距離だけ離れた位置に配置されている。
図4は、本実施の形態における窓部50の測距エリア(A−Bエリア)を通過する光の様子を示す断面図である。
図5は、本実施の形態における窓部50の基準位置検出エリア(B−Cエリア)における光の様子を示す断面図である。
【0061】
[3−1−1.測距エリア]
図4に示すように、測距エリア(A−Bエリア)では、スキャンミラー20により走査されたレーザ光L1は、窓部50(筐体11の開口部)において、遮光部材51によりスポット径が絞られる。つまり、窓部50において、レーザ光L1のスポットの一部が遮蔽される。これにより、レーザ光L1の強さ(光強度)が制限されて、筐体11外へ透過される。つまり、筐体11外へ出射されるレーザ光L2の強さは、スキャンミラー20からのレーザ光L1と比較して小さくなる。
【0062】
レーザレンジファインダ1から出射されたレーザ光L2の測定ターゲット2からの反射光は、レーザ光L2が測定ターゲット2で拡散反射されることにより、レーザ光L2よりも極めて光強度の小さい拡散反射光L3となり、レーザ光L2と同様の光路でレーザレンジファインダ1へと入射する。
【0063】
このように、測距エリアに測定ターゲット2が存在する場合には、レーザ光L1、L2よりも極めて光強度の小さい拡散反射光L3がスキャンミラー20へと入射する。つまり、受光部30では、微弱な光が受光される。なお、測距エリアに測定ターゲット2が存在しない場合には、スキャンミラー20へと入射する光が実質的にゼロとなる。
【0064】
[3−1−2.基準位置検出エリア]
一方、
図5に示すように、基準位置検出エリア(B−Cエリア)では、スキャンミラー20により走査されたレーザ光L1は、窓部50(筐体11の開口部)において、反射板52により反射され、筐体11外へは実質的に透過されない。
【0065】
スキャンミラー20により走査されたレーザ光L1の反射板52からの反射光は、反射板52の反射面が比較的非常に大きい反射率を有していることから、レーザ光L1と同等の光強度を有する。例えば、反射板52の反射面が鏡のように光を全反射する部材により構成されている場合には、反射板52からの反射光は、光強度が比較的大きな直線偏光の直線反射光L4となる。
【0066】
このように、基準位置検出エリアでは、光強度が比較的大きな直線反射光L4がスキャンミラー20へと入射する。つまり、受光部30では、光強度が比較的大きな光が受光される。
【0067】
よって、信号処理部60において、強度信号モニタ部62が、受光部30によって受光された光の光強度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、当該光が基準位置検出エリアからの反射光(反射板52からの反射光)であるか、測距エリアからの反射光であるかを分離して識別することができる。
【0068】
[3−2.対象物が窓部直前に位置している場合]
次に、対象物が窓部50の直前に位置している場合について、本実施の形態の比較例と比較しながら説明する。つまり、この場合、対象物は、窓部50に張り付いた状態で配置されている。なお、以下では、対象物が光を全反射する全反射ターゲットであるとして説明するが、比較例に生じる問題は、対象物が全反射ターゲットである場合に限らず、反射板52の反射率と同等の反射率を有する場合であっても同様である点について留意されたい。
【0069】
[3−2−1.比較例に生じる問題]
まず、対象物が窓部の直前に位置している場合において、比較例に生じる問題について、
図6〜
図8を用いて説明する。
図6は、比較例における窓部950の構成の一例を示す斜視図である。なお、説明の都合上、反射板52には網掛けを施している。
図7は、比較例において生じる問題について説明するための図である。
図8は、比較例において、
図7の状態の場合に信号処理部60で取得される各種の信号を示すグラフであり、(a)は受光振幅強度を示すグラフ、(b)は基準位置検知信号を示すグラフである。
【0070】
比較例におけるレーザレンジファインダは、実施の形態におけるレーザレンジファインダ1とほぼ同様の構成を有するが、
図6に示すように、窓部950が窓部50と比較して、遮光部材51を備えない点が異なる。つまり、比較例におけるレーザレンジファインダでは、測距エリアにおいて、スキャンミラー20により走査されたレーザ光L91は、遮蔽されることなくレーザ光L1と同等のスポット径のレーザ光L92として筐体11の外部へ出射される。
【0071】
これにより、
図7に示すように、全反射ターゲット2Aが窓部950の直前に位置している場合、全反射ターゲット2Aからの反射光L95は、レーザ光L1と同等の光強度を有する直線偏光の光となる。
【0072】
その結果、信号処理部60では、全反射ターゲット2Aからの反射光L95を、基準位置検出エリアからの反射光(反射板52からの反射光)であると誤認識する場合がある。具体的には、比較例では、受光部30から出力される信号が
図8の(a)のようになる。つまり、強度信号モニタ部62によって所定の閾値以上であると判定される箇所が、基準位置検出エリア(B−Cエリア)だけでなく、測距エリア(A−Bエリア)にも出現する。よって、強度信号モニタ部62から出力される基準位置検出エリアからの反射光であることを示すクロック信号(パルス信号)は、
図8の(b)に示すようになる。
【0073】
よって、比較例では、強度信号モニタ部62が、受光部30によって受光された光の光強度が所定の閾値以上であるか否かを判定しても、当該光が基準位置検出エリアからの反射光(反射板52からの反射光)であるか、測距エリアからの反射光であるかを分離して識別することができない。
【0074】
基準位置検知部63では、強度信号モニタ部62から出力されたクロック信号の信号周期を用いて、スキャンミラー20の走査方向(走査角:走査位置)を示すミラー位置認識信号を出力するため、このような測距エリア(A−Bエリア)に出現するパルスは誤動作を引き起こす恐れがある。
【0075】
[3−2−2.本実施の形態の効果]
次に、対象物が窓部50の直前に位置している場合において、本実施の形態が奏する効果について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、本実施の形態において生じる効果について説明するための図である。
図10は、本実施の形態において、
図9の状態の場合に信号処理部60で取得される各種の信号を示すグラフであり、(a)は受光振幅強度を示すグラフ、(b)は基準位置検知信号を示すグラフである。
【0076】
比較例に対し、本実施の形態では、窓部50に遮光部材51が設けられていることにより、
図9に示すように、全反射ターゲット2Aが窓部50の直前に位置している場合であっても、全反射ターゲット2Aからの反射光L5は、レーザ光L1よりも光強度の小さな直線偏光の光となる。
【0077】
その結果、信号処理部60では、全反射ターゲット2Aからの反射光L5を、基準位置検出エリアからの反射光(反射板52からの反射光)ではないと判別することができる。具体的には、本実施の形態では、受光部30から出力される信号が
図10の(a)のようになる。つまり、強度信号モニタ部62によって所定の閾値以上であると判定される箇所が、基準位置検出エリア(B−Cエリア)のみに出現する。よって、強度信号モニタ部62から出力される基準位置検出エリアからの反射光であることを示すクロック信号(パルス信号)は、
図10の(b)に示すようになる。
【0078】
よって、本実施の形態では、強度信号モニタ部62が、受光部30によって受光された光の光強度が所定の閾値以上であるか否かを判定することにより、当該光が基準位置検出エリアからの反射光(反射板52からの反射光)であるか、測距エリアからの反射光であるかを分離して識別することができる。
【0079】
基準位置検知部63では、強度信号モニタ部62から出力されたクロック信号の信号周期を用いて、スキャンミラー20の走査方向(走査角:走査位置)を示すミラー位置認識信号を出力するため、比較例において生じるような誤動作を抑制することができる。
【0080】
[4.まとめ]
以上のように、本実施の形態に係るレーザレンジファインダ1は、スキャンエリア(A−Cエリア)のうちスキャンミラー20から反射板52に到達するレーザ光の光路及び当該光路の延長上を除く測距エリア(A−Bエリア)、かつ、筐体11内に配置され、スキャンミラー20からのレーザ光の強さを制限して筐体11外へ透過する光制限部材(本実施の形態では遮光部材51)を備える。
【0081】
これにより、筐体11外部の測距エリアに出力されるレーザ光の光強度は、筐体11内部の測距エリアに出力されたレーザ光の光強度よりも小さくなる。つまり、対象物が全反射ターゲットの場合であっても、当該対象物からの反射光の光強度は、筐体11内部に配置された反射板52からの光強度よりも必ず小さくなる。したがって、レーザレンジファインダ1は、受光部30で受光した光が、対象物からの反射光であるか、反射板52からの反射光であるかを識別することができる。言い換えると、測距エリアからの反射光と基準位置検出エリアからの反射光とを識別することができる。つまり、測距エリアと基準位置検出エリアとを高精度に分離して識別することができる。よって、測距エリアからの反射光を基準位置検出エリアからの反射光と誤認識することを抑制できるので、当該誤認識によって生じ得る、例えば、対象物の角度認識(方向認識)の誤り、及び、不意なキャリブレーション操作といったレーザレンジファインダ1の誤動作を低減することができる。
【0082】
また、本実施の形態では、光制限部材として、筐体11の開口部に設けられ、スキャンミラー20からのレーザ光の開口部におけるスポットの一部を遮蔽することにより、当該レーザ光の強さを制限して筐体11外へ透過する遮光部材51が設けられている。
【0083】
このように、レーザ光のスポットの一部を遮蔽する遮光部材51を設けることにより、筐体11外部の測距エリアに出力されるレーザ光の光強度を筐体11内部の測距エリアに出力されたレーザ光の光強度よりも小さくすることができる。この一方で、窓部50において遮光部材51はレーザスポット径より幅が小さく、スキャンミラー20の面積、及び、窓部50に比べて極僅かな面積しか占有しない。したがって、光強度が非常に小さな拡散光となっている対象物からの反射光を用いて精度よく距離を測定するために必要な開口面積を遮光部材51が制限するようなことはない。よって、対象物からの反射光が窓部50を通過する際の遮光部材51が設けられていることによる光量低下の影響を抑制することができる。その結果、受光部30でのS/N比を遮光部材51がない場合と同等に扱うことができる。つまり、角度認識精度が向上することで、測距精度が向上する。
【0084】
また、本実施の形態では、遮光部材51は、スキャンミラー20によるレーザ光の走査方向(水平方向)に沿って、測距エリア(A−Bエリア)に配置されている。
【0085】
これにより、遮光部材51は、当該走査方向のいずれの位置においても、スキャンミラー20からのレーザ光を同等の割合で遮蔽することができる。よって、測距エリアと基準位置検出エリアとを一層高精度に分離して識別することができる。なお、遮光部材51は、測距エリアの全域に亘って配置されていることが好ましい。
【0086】
また、本実施の形態では、反射板52は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)の端部に配置されている。言い換えると、基準位置検出エリア(B−Cエリア)は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)の端部に位置している。
【0087】
これにより、反射板52からの反射光を一定の時間間隔で受光することができるので、スキャンミラー20の最大走査角度を容易に算出することができる。よって、対象物の方向(角度)を容易に算出することができる。
【0088】
なお、反射板52は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)かつ筐体11内に配置されていればよく、例えば、筐体11の開口部よりもスキャンミラー20に近い位置に配置されていてもよい。また、例えば、反射板52は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)の中央に配置されていてもよい。また、例えば、反射板52は、遮光部材51と同一平面(X−Y平面)に配置されていなくてもよく、遮光部材51よりもスキャンミラー20に近い位置に配置されていてもよい。
【0089】
(変形例1)
次に、実施の形態の変形例1について、
図11を用いて説明する。
図11は、実施の形態の変形例1における窓部250の構成の一例を示す斜視図である。なお、説明の都合上、遮光部材251a、251bと反射板52とには、網掛けを施している。
【0090】
本変形例に係るレーザレンジファインダは、上記実施の形態とほぼ同様であるが、
図11に示すように、窓部250が複数(本変形例では2つ)の遮光部材251a、251bを備える点が異なる。このような複数の遮光部材251a、251bを配置した構成であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0091】
なお、本変形例では、2つの遮光部材251a、251bを配置した構成を例に説明したが、3つ以上の遮光部材を配置した構成であってもよい。
【0092】
(変形例2)
次に、実施の形態の変形例2について、
図12を用いて説明する。
図12は、実施の形態の変形例2における窓部350の構成の一例を示す斜視図である。なお、説明の都合上、減光フィルタ351及び反射板52Aには網掛けを施している。
【0093】
本変形例に係るレーザレンジファインダは、上記実施の形態とほぼ同様であるが、
図11に示すように、窓部350が、遮光部材51に代わり減光フィルタ351を備え、反射板52に代わり反射板52Aを備える点が異なる。
【0094】
減光フィルタ351は、ミラースキャンエリア(A−Cエリア)のうち測距エリア(A−Bエリア、かつ、筐体11内に配置され、スキャンミラー20からのレーザ光L1の強さ(光強度)を制限して筐体11外へ透過する光制限部材の一例である。具体的には、減光フィルタ351は、筐体11の開口部に設けられ、スキャンミラー20からのレーザ光L1の強さ(光強度)を制限して筐体11階へ透過する、例えば、ND(Neutral Density)フィルタである。この減光フィルタ351は、レーザ光L1の波長の光の強さを抑制する。
【0095】
このように、光制限部材として減光フィルタ351を用いた構成であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0096】
また、光制限部材として減光フィルタ351を用いることにより、
図12に示すように、減光フィルタ351を透過部材53の反射板52Aが設けられた領域以外の全面に配置することが可能になる。つまり、実施の形態では、遮光部材51をレーザ光L1のスポットの一部を遮蔽するように配置していたが、本変形例では、減光フィルタ351をレーザ光L1のスポットの全てを含むように配置することができる。
【0097】
これにより、レーザレンジファインダ1を組み立てる際に、光制限部材(本変形例では減光フィルタ351)とスキャンミラー20との位置決めについて高い精度が要求されにくくなる。言い換えると、レーザレンジファインダ1の組み立てを容易にすることができる。
【0098】
また、スキャンミラー20がレーザ光L1を2次元走査する場合であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0099】
また、本変形例における反射板52Aは、上記実施の形態における反射板52と比較して、窓部250のY軸方向(垂直方向)の全域に形成されている。
【0100】
これにより、スキャンミラー20がレーザ光L1を2次元走査する場合であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0101】
また、スキャンミラー20が所定の軸線を含む少なくとも2軸を中心に揺動し、かつ、反射板52Aが、当該所定の軸線に平行な方向において、筐体11の開口部を塞ぐように配置されていることにより、次のような効果を奏する。
【0102】
すなわち、測距エリアからの反射光の強さと反射板52Aからの反射光の強さとの差が小さいことにより、測距エリアと基準位置検出エリアとを分離して識別することが困難な場合であっても、測距エリアのY軸方向(垂直方向)に一定の幅で高い反射が存在するとは考えにくいので、一定の周期かつ一定の強さで出現する反射光を反射板52Aからの反射光と見なすことができる。このように、一定の周期かつ一定の強さで出現する反射光を反射板52Aからの反射光と見なすことにより、測距エリアと基準位置検出エリアとを分離して識別することができる。よって、測距エリアからの反射光の強さと反射板52Aからの反射光の強さとの差が小さい場合であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0103】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態及び変形例に係るレーザレンジファインダについて説明したが、本発明は、これら実施の形態及び変形例に限定されるものではない。
【0104】
例えば、レーザ光L1のレーザスポット形状は、略円形、略楕円形、ライン形状、矩形形状等のいずれでもよく、例えば、遮光部材の形状と共に適宜調整されてもよい。
【0105】
また、遮光部材とスキャンミラー20からのレーザ光L1のレーザスポットLSとの重なり面積は、レーザレンジファインダ1から出射されるレーザ光L2の強さ(光強度)と相関がある。具体的には、当該重なり面積が大きいほど、レーザ光L2の強さが小さくなる。そこで、当該重なり面積は、レーザ光L2が全反射された場合の光強度が、基準位置検出エリアからの反射光(反射板からの反射光)からの光強度よりも有意に小さくなるようにすればよい。具体的には、当該重なり面積は、レーザ光L2が全反射された場合の光強度が、強度信号モニタ部62において基準位置検出エリアからの反射光か否かの判定に用いられる閾値よりも小さくなるようにすればよい。
【0106】
また、遮光部材の幅(スキャンミラー20によるレーザ光L1の走査方向に直交する方向の大きさ)は、特に限定されてないが、受光部30におけるS/N比を良好に保つことができる程度の幅であることが好ましい。例えば、遮光部材の幅は、筐体11の開口部におけるレーザ光L1のレーザスポット径程度以下であることが好ましい。
【0107】
また、上記説明では、レーザレンジファインダは、スキャンミラー20と受光部30とが同軸経路で構成された同軸光学系として説明したが、スキャンミラー20と受光部30とが分離して構成された分離光学系であってもよい。
【0108】
さらに、上記実施の形態及び変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。