(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記情報記憶部が前記ローミング判断情報テーブルに格納する値には、前記受信電波強度情報および前記スループット情報のそれぞれの値から導出されたスコア値がさらに含まれ、
ローミング先候補となる無線中継装置は、前記スコア値を基に選定される、請求項1に記載の無線通信端末。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置などは、一例であり、発明の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1にかかるシステムの全体図である。
【0019】
図1に示すとおり、無線通信端末T1は無線通信インタフェースを備えるものであり、例えば、ノートPC(Personal Computer)やタブレットやスマートフォンなどである。
【0020】
無線中継装置A1、A2およびA3は、有線通信インタフェースおよび無線通信インタフェースを備える。また、無線中継装置A1は、無線通信端末T1と無線通信経路(R1)によって無線接続されている。なお、無線通信は、例えばIEEE802.11規格などに適合する無線LANにより実現される。
【0021】
つぎに、通信端末S1は、少なくとも有線通信インタフェースを備えるものであり、例えば、デスクトップ型PCやサーバ装置などである。
【0022】
ハブ装置H1は、無線中継装置A2と有線で接続されており、LAN10を経由して通信端末S1とも接続している。なお、本発明の実施の形態1のハブ装置H1は、MACアドレスでデータのあて先を判断し送信するスイッチングハブであり、IEEE802.3規格に準拠した10BASEに対応したものとする。
【0023】
無線中継装置A1、A2およびA3は、通信端末S1とLAN10で接続されている。ここで、LAN10は、有線LAN、無線LANのどちらでもかまわないが、セキュリティー面からより好ましくは有線LANが考えられる。本発明の実施の形態1では有線LANとして説明する。
【0024】
また、本発明の実施の形態1では、無線中継装置A1と無線接続している無線通信端末T1は1台で説明するが、無線中継装置A1、A2およびA3にはこれ以上の複数台の無線通信端末が接続していてもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる無線通信端末T1、無線中継装置A1〜A3、通信端末S1、およびハブ装置H1のハードウェア構成図である。これらの装置は備えている通信インタフェースの構成が異なること以外は、同じハードウェア構成である。例えば、無線中継装置A1〜A3は有線、無線通信インタフェースの両方を備えているが、通信端末S1は有線インタフェースのみを備えているなどである。
【0026】
図2に示すとおり、これらの装置は、CPU20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、記憶装置23、WNIC(Wireless Network Interface Card)24、NIC(Network Interface Card)25および各構成部品間を接続している内部バス26などを備えている。
【0027】
なお、ハブ装置H1のハードウェア構成は図示しないが、
図2において、CPU(Central Processing Unit)20の代わりに専用IC(不図示)、例えば有線通信インタフェース(例えば、IEEE802.3規格に準拠など)を制御できるICなどを備えている。
【0028】
CPU20は、ROM21に格納された制御プログラムを実行するプロセッサである。
【0029】
ROM21は、制御プログラム等を保持する読み出し専用記憶領域である。
【0030】
RAM22は、CPU20が制御プログラムを実行するときに使用するワークエリアとして用いられる記憶領域である。
【0031】
記憶装置23は、制御プログラム、制御情報、装置情報、または認証情報などを記憶する記憶領域である。
【0032】
WNIC24は、無線通信を行う無線通信インタフェースを備えている。例えば、IEEE802.11a、b、g、n、ac規格等に適合する無線LANの通信インタフェースである。
【0033】
NIC25は、有線通信を行う有線通信インタフェースを備えている。例えば、IEEE802.3規格等に適合する有線LANの通信インタフェースである。
【0034】
内部バス26は、CPU20,ROM21、RAM22、記憶装置23、WNIC24、NIC25を電気的に接続し、信号のやりとりを行うバスである。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態にかかる無線通信端末T1の機能ブロック図である。
【0036】
図3に示す無線通信端末T1は、無線通信部30、取得部31、情報記憶部32、判断部33、測定部34、制御部35、設定部36などを備えている。
【0037】
以下に本発明の実施の形態にかかる無線通信端末T1の各機能について、
図3、
図6、
図7および
図8を用いて説明する。
【0038】
無線通信部30は、無線中継装置A1、A2またはA3(以後、現在接続中の無線中継装置およびローミング先の候補となり得る無線中継装置を総称して、近隣の無線中継装置と呼ぶ)やLAN10を経由して通信端末S1との間でデータフレーム、種々の制御情報その他の通信を行うために必要な情報などを送受信する。
【0039】
また、無線通信部30は、制御部35の制御を受けて、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行うスループットの測定を行う。
【0040】
さらに、無線通信部30は、制御部35の制御を受けて、判断部33が選定したローミング先無線中継装置候補へローミングする。無線通信部30は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23、WNIC24などにより実現される。
【0041】
取得部31は、無線通信部30を介して、近隣の無線中継装置の情報を得る。例えば、近隣の無線中継装置の情報とは、無線通信における認証方式や暗号化方法やSSID(Service Set Indentifier)や受信電波強度などである。取得部31は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0042】
情報記憶部32は、ローミング判断情報テーブル321を備える。情報記憶部32は、取得部31が取得した近隣の無線中継装置ごとの受信電波強度などをローミング判断情報テーブル321に格納する。
【0043】
また、情報記憶部32は、ローミング判断情報テーブル321に、測定部34が無線通信部30を介して測定した無線通信端末T1と通信端末S1との間のスループットの測定値をスループット情報として無線中継装置ごとに格納する。このスループットの測定方法は後に詳述する。
【0044】
さらに、情報記憶部32は、設定部36に備えられた第1情報テーブルと第2情報テーブルとを参照しつつ、無線中継装置ごとに、ローミング判断情報テーブル321に格納された受信電波強度と、無線通信端末T1−通信端末S1間のスループットの測定値とを基に、受信電波強度のスコアとスループットのスコアを算出し、格納する。
【0045】
そして、情報記憶部32は、無線中継装置ごとの受信電波強度のスコアと無線中継装置ごとのスループットのスコアを合計し、無線中継装置ごとにその合計スコアをローミング判断情報テーブル321に格納する。無線中継装置ごとのスループットとは、両端が無線通信端末T1と通信端末S1で共通するが、経由する無線中継装置が異なれば両端を繋ぐ経路が異なるため通信端末T1と通信端末S1の間のスループットも異なることを意味する。
【0046】
情報記憶部32は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0047】
ローミング判断情報テーブル321は、
図8に示すとおり、無線通信端末T1がスキャンすることによって取得した近隣の無線中継装置の受信電波強度の値を受信電波強度情報として格納でき、設定部36に備えられた第1情報テーブルと、自身に格納している近隣の無線中継装置の受信電波強度の値とを参照して情報記憶部32が算出するスコア値を格納できる。
【0048】
また、ローミング判断情報テーブル321は、
図8に示すとおり、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行ったスループットの測定により取得されたスループット値を格納でき、設定部36に備えられた第2情報テーブルと、自身に格納している無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行ったスループットの値とを参照して情報記憶部32が算出するスコア値を格納できる。
【0049】
さらに、ローミング判断情報テーブル321は、
図8に示すとおり、情報記憶部32が、無線中継装置ごとに受信電波強度のスコアとスループットのスコアを合計した合計スコアを格納できる。
【0050】
ローミング判断情報テーブル321は、記憶装置23などにより実現される。
【0051】
判断部33は、無線通信端末T1が、近隣の無線中継装置をスキャンし、接続可能な近隣の無線中継装置が存在するか判断する。また判断部33は、無線通信端末T1が接続可能な近隣の無線中継装置との間で行う無線通信において、受信電波強度が一定のしきい値を超えるか否かを判断する。また判断部33は、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行うスループットの測定を行うか否かを判断し、測定を行う場合その旨を測定部34に通知する。また、判断部33は、接続中の無線中継装置A1へ無線通信端末T1がスリープモードに遷移する、またはスリープモードからアウェイクモードに遷移する旨を制御部35に通知する。
【0052】
また、判断部33は、ローミング判断情報テーブル321の近隣の無線中継装置ごとに格納されている合計スコアを比較し、合計スコア値が最も大きい値である無線中継装置をローミング先無線中継装置候補として選定し、その無線中継装置へローミングする旨を制御部35へ通知する。
【0053】
これら判断部33が行う様々な振舞いは、動作フロー図(
図5)を参照しつつ、後に詳述する。
【0054】
判断部33は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0055】
測定部34は、判断部33の通知を受けて、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行うスループットの測定を無線通信部30を介して行う。測定部34は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0056】
制御部35は、判断部33の通知を受けて、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行うスループットの測定を行うように無線通信部30を制御する。また、制御部35は、判断部33の通知を受けて、判断部33が選定したローミング先の無線中継装置候補へローミングするように無線通信部30を制御する。制御部35は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0057】
設定部36は、第1情報テーブル361と第2情報テーブル362を備え、第1情報テーブル361と第2情報テーブル362の設定をユーザが変更または、更新などを行うことを受け付ける。設定部36は、CPU20、ROM21、RAM22、記憶装置23などにより実現される。
【0058】
第1情報テーブル361は、
図6に示すとおり、受信電波強度値を範囲ごとに分け、その各範囲に対してスコア値を設定している。この設定は、工場出荷時に予め設定されてもよいし、ユーザによって任意に設定できるようにしてもよい。第1情報テーブル361は、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置との間で行う無線通信の受信電波強度値をスコア化するために利用される情報テーブルである。第1情報テーブル361は、ROM21および記憶装置23などにより実現される。
【0059】
第2情報テーブル362は、
図7に示すとおり、スループット値を範囲ごとに分け、その各範囲に対してスコア値を設定している。この設定は、工場出荷時に予め設定されてもよいし、ユーザによって任意に設定できるようにしてもよい。第2情報テーブル362は、無線通信端末T1が近隣の無線中継装置を介して通信端末S1との間で行う無線通信のスループットの測定値をスコア化するために利用される情報テーブルである。第2情報テーブル362は、ROM21およぶ記憶装置23などにより実現される。
【0060】
つぎに、
図4は、本発明の実施の形態1にかかる無線通信端末T1が移動し、ローミング処理が開始される際のシステム全体図である。
【0061】
図4に示す状況は、
図1において説明した無線通信端末T1が移動し、無線通信経路R1を維持するよりも、新たな無線通信経路を構築した方がよいと判断され、新たな無線通信経路を構築する(以下、ローミング処理)場合である。例えば、無線通信端末T1と無線中継装置A1(接続中AP(AP1)とも呼ぶ)との間で受信電波強度が、一定値以下まで低下したことによりローミング処理を開始するなどである。このように
図4ではローミング処理により、無線通信端末T1は、無線中継装置A2(ローミング候補AP(AP2)とも呼ぶ)またはA3(ローミング候補AP(AP3)とも呼ぶ)と、それぞれ接続可能になり無線通信経路R2またはR3を構築することを示している。
【0062】
つぎに、
図5を参照しながら、本発明の実施の形態1にかかる無線通信端末T1が近隣の無線中継装置をスキャンし、通信端末S1との間でスループットを測定するフローについて説明する。
【0063】
ステップS500にて、無線通信端末T1は、無線中継装置A1以外の近隣の無線中継装置をスキャンする。このスキャンは、(1)無線中継装置から一定時間ビーコンフレームを受信できなかった場合に無線通信端末が無線接続を行いたいSSIDの情報を無線中継装置へ向けてプローブリクエストにより送信し、無線中継装置からその応答を受けることにより無線接続処理へ移行するアクティブスキャンや、(2)無線中継装置からブロードキャストされるビーコンフレームを無線通信端末が受信してSSIDの確認を相互に行い、無線接続処理へ移行するパッシブスキャンなどを意味している。
【0064】
ステップS501にて、情報記憶部32は、上記スキャンで得られた無線中継装置の情報の一部である受信電波強度を無線中継装置ごとに受信電波強度情報としてローミング判断情報テーブル321に格納する。
【0065】
ステップS502にて、情報記憶部32は、ローミング判断情報テーブル321に格納された近隣の無線中継装置の受信電波強度をもとに、無線中継装置ごとに、設定部36の第1情報テーブル(受信電波強度スコア表)361を参照しつつ、受信電波強度のスコア値を算出し、ローミング判断情報テーブル321に格納する。
【0066】
ステップS503にて、判断部33は、ステップS500において行われたスキャンにより、無線通信端末T1が接続可能な無線中継装置(接続中の無線中継装置A1以外)が存在し、且つ、無線通信が可能な受信電波強度値を満たしているか否かを判断する。満たしている場合は、ステップS504へ遷移する(ステップS503のYes)。満たしていない場合は、処理を終了する(ステップS503のNo)。
【0067】
これ以降、無線通信端末T1は、ローミング先として候補となった無線中継装置すべて(本例では、A2およびA3)を使って、それぞれ目的とする通信端末S1までの通信スループットを実測する。
【0068】
まず無線通信端末T1は、ステップS504にて、接続中の無線中継装置A1に対し、自身がスリープモードへ遷移することを通知する。この通知により、無線中継装置A1は、無線通信端末T1がスリープモードへ遷移することを認識し、以後、通信端末S1などから無線中継装置A1を介して、無線通信端末T1が受信すべきデータを一定期間あるいは、一定量バッファリングするように動作する。この間に、無線通信端末T1は、他の無線中継装置と接続し通信スループットを測定する訳である。つまり、無線通信端末T1は、無線中継装置A1に対し、自らがスリープモードへ遷移したことを通知し、あたかも自らがスリープモードへ遷移したかのように認識させる。このように、無線通信端末T1は、無線中継装置A1との接続を維持しつつ、他の無線中継装置と接続し通信スループットを測定することができ、さらに、必要であれば、無線中継装置A1との無線通信を迅速に行うことができるのである。
【0069】
ステップS505にて、ステップS503で無線通信端末T1が接続可能な無線中継装置のうちの一つ(例えばA2)と無線接続処理を行い、無線接続できたか否かを判断する。無線接続できた場合は、判断部はスループットの測定を行うことと判断してステップS506へ遷移する(ステップS505のYes)。無線接続できなかった場合は、ステップS505を繰り返す(ステップS505のNo)。このように、無線通信端末T1が接続可能な無線中継装置のうち1台と無線接続を試みる。
【0070】
ステップS506にて、無線通信端末T1は、無線中継装置A2を介して、通信端末S1と送受信のスループット測定を行う。ここで行われるスループットの測定は、さまざまな測定方法が適用できるが、例えば、一定時間または一定回数だけ所定サイズのテストデータを無線通信端末T1と通信端末S1間で送受信し、その平均スループットを算出することで求めてもよい。その他、無線通信端末T1と通信端末S1間で送受信した際の応答時間を測定してもよい。
【0071】
ステップS507にて、ステップS506で行われた無線通信端末T1と通信端末S1との間で行われる送受信のスループット測定値を無線中継装置ごとのスループット情報としてローミング判断情報テーブル321に格納する。なお、接続中の無線中継装置(本例では、A1)のスループット測定値は、既に無線通信端末T1と接続中の無線中継装置との間で行っている無線通信において、接続中の無線中継装置が導き出したスループット測定値を利用すればよい。
【0072】
ステップS508にて、情報記憶部32は、ステップS507で取得しローミング判断情報テーブル321に格納された近隣の無線中継装置のスループット測定値をもとに、設定部36の第2情報テーブル(スループットスコア表)362を参照しつつ、スループットのスコア値を無線中継装置ごとにローミング判断情報テーブル321に格納する。
【0073】
ステップS509にて、無線通信端末T1は、無線中継装置A2を介して、通信端末S1と送受信のスループット測定が終了したか否かを判断する。終了している場合は、ステップS510へ遷移する(ステップS509のYes)。終了していない場合は、ステップS509を繰り返す(ステップS509のNo)。
【0074】
ステップS510にて、無線通信端末T1は無線中継装置A2と無線接続を切断する。また、無線通信端末T1は、スリープモードを通知した無線中継装置A1に自身がアウェイクモード(通信可能な状態)に遷移したこと旨を通知する。
【0075】
ステップS511にて、ステップS510を経て、無線通信端末T1は、無線中継装置A1から無線中継装置A1のバッファに通信端末S1から無線通信端末T1へ向けてのデータが、バッファリングされているか否かの結果の通知を受ける。その通知の結果、データがバッファリングされている場合は、ステップS512へ遷移する(ステップS511のYes)。データがバッファリングされていない場合は、ステップS513へ遷移する(ステップS511のNo)。
【0076】
ステップS512にて、ステップS511で無線通信端末T1が、無線中継装置A1から無線中継装置A1のバッファに通信端末S1から無線通信端末T1へ向けてのデータがバッファリングされている旨の通知を受けて、無線中継装置A1から無線通信を行い、バッファリングされたデータを取得する。このように、無線中継装置A1にバッファリングされているデータを無線通信端末T1が、無線中継装置A2を介して、通信端末S1と送受信のスループット測定を終了後、データを取得することで、通信端末S1から無線通信端末T1へ向けてのデータを遅延なく取得できる。
【0077】
次に、無線通信端末T1は、ステップS513において、ステップS503で見出された接続可能な無線中継装置を経由した通信端末S1との通信スループットの測定がすべての無線中継装置について完了したか否かを判断する。完了していない場合、ステップS504に戻って、無線中継装置A1に向けてスリープモードに遷移する旨の通知をしたあと、残った無線中継装置(本例では無線中継装置A3)と無線接続処理を行い、無線通信端末T1と通信端末S1との間の送受信のスループット測定を行う。
【0078】
このようにして、ステップS513において全ての接続可能な無線中継装置とステップS504からステップS512の処理を完了した場合は、無線通信端末T1が通信端末S1との間でスループットを測定する処理を終了する(ステップS513のYes)。
【0079】
なお、このスループットの測定は、現在通信中の無線中継装置A1の電波強度がしきい値より低下しローミング処理が必要になったとき行われても良いし、これとは無関係に随時行われても良い。このようにすることで、例えば、無線通信端末T1が、近隣の接続可能な無線中継装置と無線通信を行っていない任意のタイミングで無線中継装置と間で予めスループットの測定を行っておき、ローミング判断情報テーブル321に格納しておくことで、ローミング処理を行うときに予め格納されているローミング判断情報テーブル321の情報を基に、無線通信品質を考慮したより最適なローミング対象の無線中継装置を迅速に選定することができるのである。
【0080】
ここで、本実施の形態にかかるスループット測定の対象となる通信端末は、実施の形態1で1台(本例では、通信端末S1)を前提に説明したが、特定の1台に固定されるものではなく、無線通信端末との間で、適宜、通信先の切り替えなどを行って変更される端末でもよく、また複数の端末であってもよい。つまり、本実施の形態にかかるスループット測定の対象となる通信端末は、無線通信端末が通信を行いたい相手先端末(LAN10に接続された)であればよく、特定の1台の通信端末との通信に限るものではない。
【0081】
つぎに、本発明の実施の形態にかかる
図8に示すローミング判断情報テーブル321の一例を参照し、無線品質を考慮したより最適なローミング対象の無線中継装置を選定することについてより詳細に説明する。
【0082】
図8に示すローミング判断情報テーブル321には、
図1および
図4で説明したように無線通信端末T1が無線中継装置A1、A2およびA3を介して通信端末S1との間で無線通信を行い、取得できる受信電波強度値とスループット測定値が格納されている。
【0083】
ローミング判断情報テーブル321に格納されている無線中継装置A1、A2およびA3の受信電波強度のスコアは、それぞれ30、50および40である。また、ローミング判断情報テーブル321に格納されている無線中継装置A1、A2およびA3のスループットのスコアは、それぞれ40、10および40である。次に、ローミング判断情報テーブル321に格納されている無線中継装置A1、A2およびA3の合計スコアは、それぞれ70、60および80である。
【0084】
ここで、判断部33は、ローミング判断情報テーブル321に格納されている各無線中継装置についての合計スコアを参照して、最も大きい合計スコア値である無線中継装置A3(ローミング候補AP(AP3))を、無線通信端末T1がローミングを行う際の最適なローミング対象の無線中継装置として選定し、制御部35に通知する。なお、最も大きい合計スコア値が接続中の無線中継装置(本例では、A1)である場合は、ローミング処理を行わずに引き続き、接続中の無線中継装置と無線通信を継続することにしてもよいし、接続中の無線中継装置を除外した残りの無線中継装置(本例では、A2,A3など)から最も大きい合計スコア値である無線中継装置へローミングを行ってもよい。
【0085】
また、無線中継装置A2のスループットのスコアが、無線中継装置A1およびA3よりも極端に低いのは、
図1および
図4で説明したとおり、無線通信端末T1が無線中継装置A2を介して通信端末S1と接続している無線通信経路上にハブ装置H1が存在するため、ハブ装置H1の仕様を上限としたスループットまでの通信しか行えないからである。つまり、無線通信端末T1が無線中継装置A2との間で行う無線通信での受信電波強度が無線中継装置A1およびA3よりも良好(スコア値が大きい)にもかかわらず、無線中継装置A2から通信端末S1までの無線通信経路上にハブ装置H1が存在することにより、スループットのスコアが良くないことで、合計スコアがよくない結果になったのである。
【0086】
このように、従来の受信電波強度の良し悪しを比較してローミング処理の判断を行っていた場合に比べ、無線通信端末が本来、通信対象としている通信端末までの通信品質を加味することができることで、より好適なローミング処理を行うことができるのである。
【0087】
(その他の実施の形態)
実施の形態1では、無線通信端末がローミング前に複数の無線中継装置の状況を調査することにより、既存の無線中継装置およびネットワーク環境に変更を加えることなく、無線品質を考慮したより最適なローミング対象の無線中継装置を選定できるものであった。
【0088】
本実施のその他の形態では、さらに無線中継装置も自らが有する情報を近隣の無線通信端末に向けて自発的に発信する。無線通信端末は、無線中継装置から発信された情報と、無線通信端末自身が得た情報(実施の形態1で無線通信端末が近隣の無線中継装置との間で行われる無線通信から取得する受信電波強度とスループット)とを考慮することで、より確度の高い無線品質を考慮した最適なローミング対象の無線中継装置を選定することが可能となる。
【0089】
ここで、無線中継装置が無線通信端末に向けて発信する情報とは、例えば、近隣の無線中継装置の配下に接続している無線通信端末の台数などである。本実施の形態にかかる無線通信端末は、このような情報も加味することで、配下に接続している無線通信端末の台数が多く、既に通信負荷がかかっている無線中継装置との接続を避けるなど、より無線品質を考慮したうえでローミング対象の無線中継装置を選定できる。また、近隣の無線中継装置各々が、無線通信による一定時間あたりの総通信量(あるいは平均通信量)を本実施の形態にかかる無線通信端末に通知してもよい。このような情報(各無線中継装置が行っている無線通信の総通信量)は、本実施の形態にかかる無線通信端末だけでは得ることができない情報であり、より確度の高い無線品質を考慮したローミング対象の無線中継装置を選定するにあたり有用である。
【0090】
上述した近隣の無線中継装置の配下に接続している無線通信端末の台数や各無線中継装置が行っている無線通信の通信量などの情報は、無線中継装置から送信するビーコンやプローブ応答に含めて近隣の無線通信端末へ通知できる。ここで、ビーコンやプローブ応答を通知に利用することで、未だ無線中継装置に接続していない無線通信端末(接続を試みていない、他の無線中継装置に接続中の無線通信端末など)も随時、情報を得ることが可能である。