(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347093
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】無線通信システム、送信機、受信機、無線通信方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/022 20170101AFI20180618BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
H04B7/022
H04B7/06
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-75783(P2013-75783)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-204143(P2014-204143A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】畠内 孝明
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−303172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信用と受信用とで2つのアンテナを有する任意の位置に置かれた一つの受信機と、それぞれ送信用と受信用とで2つのアンテナを有する複数の送信機とで構成され、
前記受信機は、
送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する手段と、
複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する手段と、を有し、
前記送信機は、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段と、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段と、
該位相を調整した送信信号を電波で送信する送信手段と、を有し、
前記受信機から予め送信された基準信号を基に複数の前記送信機それぞれの送信時の位相を調整し複数の前記送信機からそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記位相情報を抽出する手段は、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段と、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段と、該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の逆位相となるように調整することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最大となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最小となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
受信機から予め送信された基準信号を基に複数の送信機それぞれが送信時の位相を調整して複数の前記送信機から送信された電波を前記受信機で合成して受信する無線通信システムに使用される送信機であって、該送信機は、
任意の位置に置かれた受信機に対して、複数の送信機が、位相が調整された電波をそれぞれ送信する送信手段と、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段と、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段と、を有していることを特徴とする送信機。
【請求項8】
前記位相情報を抽出する手段は、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段と、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段と、該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段と、を有していることを特徴とする請求項7に記載の送信機。
【請求項9】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整することを特徴とする請求項7または8に記載の送信機。
【請求項10】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の逆位相となるように調整することを特徴とする請求項7または8に記載の送信機。
【請求項11】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最大となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする請求項8に記載の送信機。
【請求項12】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最小となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする請求項8に記載の送信機。
【請求項13】
受信機から予め送信された基準信号を基に複数の送信機それぞれが送信時の位相を調整して複数の前記送信機から送信された電波を前記受信機で合成して受信する無線通信システムに使用される受信機であって、該受信機は、
任意の位置に置かれ、複数の送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する手段と、
前記基準信号を受信するまでの経路長を基に送信機が位相情報を抽出し、該抽出した位相情報を基に前記送信機が受信機で同位相となるように送信信号の位相を調整して送信する信号を受信する手段と、
前記複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を合成して受信する手段と、を有していることを特徴とする受信機。
【請求項14】
送信用と受信用とで2つのアンテナを有する任意の位置に置かれた一つの受信機と、それぞれ送信用と受信用とで2つのアンテナを有する複数の送信機とで構成され、
前記受信機において、送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する過程、
前記送信機において、前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に送信機で位相情報を抽出する過程、
前記送信機において、前記受信機で同位相となるように前記位相情報を基に送信信号の位相を調整する過程、
前記送信機において、前記位相を調整した送信信号を電波で送信する過程、および、
前記受信機において、複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する過程、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項15】
前記位相情報を抽出する過程は、
受信機から送信された基準信号を増幅する過程、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る過程、および、該合成出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する過程、を含むことを特徴とする請求項14に記載の無線通信方法。
【請求項16】
前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整して送信することを特徴とする請求項14または15に記載の無線通信方法。
【請求項17】
前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の逆位相となるように調整して送信することを特徴とする請求項14または15に記載の無線通信方法。
【請求項18】
前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する過程、および、該位相が調整された送信信号をフィードバックして前記制御信号に基づく遅延量を調整して前記合成出力の振幅が最大となるようにする過程、を含むことを特徴とする請求項15に記載の無線通信方法。
【請求項19】
前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する過程、および、該位相が調整された送信信号をフィードバックして前記制御信号に基づく遅延量を調整して前記合成出力の振幅が最小となるようにする過程、を含むことを特徴とする請求項15に記載の無線通信方法。
【請求項20】
送信用と受信用とで2つのアンテナを有する任意の位置に置かれた一つの受信機と、それぞれ送信用と受信用とで2つのアンテナを有する複数の送信機とで構成され、
複数の前記送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する無線通信システムにおける送信機のコンピュータを、
前記受信機に対して、複数の送信機が、位相が調整された電波をそれぞれ送信する送信手段、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段、として機能させるプログラム。
【請求項21】
前記無線通信システムにおける送信機のコンピュータを、前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段として機能させる場合、さらに、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段、
該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段、
該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段、として機能させることを特徴とする請求項20に記載のプログラム。
【請求項22】
閉空間の特定の位置に置かれた受信機と、前記閉空間の周辺位置に置かれた複数の送信機とで構成され、
前記受信機は、
送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する手段と、
複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する手段と、を有し、
前記送信機は、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段と、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段と、
該位相を調整した送信信号を電波で送信する送信手段と、を有し、
前記受信機から予め送信された基準信号を基に複数の前記送信機それぞれの送信時の位相を調整し複数の前記送信機からそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項23】
前記位相情報を抽出する手段は、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段と、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段と、該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段と、を有していることを特徴とする請求項22に記載の無線通信システム。
【請求項24】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整することを特徴とする請求項22に記載の無線通信システム。
【請求項25】
前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最大となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする請求項23に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じて有線通信システムに比してビット誤り率が劣る電波を用いる通信システムを使用しても有線通信システムとの遜色がない通信品質を期待できる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムを利用して通信を行う場合に、発信された電波が壁などの周辺の物体(障害物)に反射して複数の伝搬経路が形成され、当該複数の伝搬経路を通ってきた異なる位相の電波の干渉によって通信障害をもたらす現象(マルチパスフェーディング)が当該技術分野の技術者に広く知られている。
【0003】
一般に電波を用いる場合には受信点が異なると、複数の到来波の電波経路長が異なるため干渉の影響度合いが異なることを利用して、従来、複数の受信アンテナで電波を受信し、受信電力が強い方のアンテナからの受信を有効とする手法(アンテナダイバシティ)が採用されている。
【0004】
そんな中にあって、下記特許文献1には、送信機からの信号を複数のアンテナを用いて受信し、受信した複数のアンテナからの信号の位相を受信機内で変化させて合成し、合成した信号の強度が高くなるよう受信機内で信号を調整する信号合成装置が記載されている。
【0005】
また下記特許文献2には、無線伝送信号を複数の受信手段により受信し、それぞれの受信手段の一方から取り出した合成前の第2の受信高周波信号を帯域通過フィルタにより取り出して合成し、合成前後の信号のレベルを比較回路により比較し、合成出力レベルが規定のレベルを下回る場合には、位相反転回路により第2の受信高周波部の出力信号を位相反転させた上で合成回路により第1の受信高周波部の出力と合成し、合成した出力を復調回路で復調することにより出力を得るダイバーシティ受信機が記載されている。
【0006】
また下記特許文献3には、複数のアンテナを用いて送信機からの信号を受信し、受信した信号の強度と位相の基準位相からのずれの度合いとを合成し、合成値から決定される受信品質が良好なアンテナからの受信信号を優先して受信する受信機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−229796号公報
【特許文献2】特開平10−75236号公報
【特許文献3】特開2001−244860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来技術のフェーディング対策では、もっぱら一つの送信機から送信された電波を複数の受信アンテナを有する受信機で受信した後に受信機内部で信号処理して受信レベルの良い、或いは受信電力が大きいアンテナから信号を受信するようにしている。
【0009】
すなわち上記特許文献1には、送信機からの信号を複数のアンテナを用いて受信し、受信した複数のアンテナからの信号の位相を受信機内で変化させて合成し、合成した信号の強度が高くなるよう受信機内で信号を調整する信号合成装置が記載されているが、工場などの閉空間の特定の位置に置かれた受信機の通信品質を向上させることについて言及がなされていない。
【0010】
また上記特許文献2には、無線伝送信号を複数の受信手段により受信し、それぞれの受信手段の一方から取り出した合成前の第2の受信高周波信号を帯域通過フィルタにより取り出して合成し、合成前後の信号のレベルを比較回路により比較し、合成出力レベルが規定のレベルを下回る場合には、位相反転回路により第2の受信高周波部の出力信号を位相反転させた上で合成回路により第1の受信高周波部の出力と合成し、合成した出力を復調回路で復調することにより出力を得るダイバーシティ受信機が記載されているが、工場などの閉空間の特定の位置に置かれた受信機の通信品質を向上させることについて言及がなされていない。
【0011】
また上記特許文献3には、複数のアンテナを用いて送信機からの信号を受信し、受信した信号の強度と位相の基準位相からのずれの度合いとを合成し、合成値から決定される受信品質の良好なアンテナからの受信信号を優先して受信する受信機が記載されているが、工場などの閉空間の特定の位置に置かれた受信機の通信品質を向上させることについて言及がなされていない。
【0012】
またデータの送受信を無線LAN(local area network)を介して相互に無線通信することも当業者によく知られているが、有線を介してデータの送受信するものと比較して総じてビット誤り率が劣るため、信頼性を重視する制御系において無線LANを使用してデータの送受信を行うことに二の足を踏まざるを得ないのが現状である。
【0013】
そこで本発明の目的は、データの送受信を無線で行う無線通信システムにおいて、空間の任意
又は閉空間の特定の位置に置かれた受信機の通信品質を向上させることができる無線通信システム、送信機、受信機、無線通信方法、および、プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の無線通信システムは、
送信用と受信用とで2つのアンテナを有する任意の位置に置かれた
一つの受信機と、
それぞれ送信用と受信用とで2つのアンテナを有する複数の送信機とで構成され、
前記受信機は、
送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する手段と、
複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する手段と、を有し、
前記送信機は、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段と、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段と、
該位相を調整した送信信号を電波で送信する送信手段と、を有し、
前記受信機から予め送信された基準信号を基に複数の前記送信機それぞれの送信時の位相を調整し複数の前記送信機か
らそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信することを特徴とする。
【0015】
上記において前記位相情報を抽出する手段は、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段と、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段と、該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0016】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整することを特徴とする。
【0017】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の逆位相となるように調整することを特徴とする。
【0018】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最大となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0019】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最小となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0020】
また上記目的を達成するために本発明の送信機は、
受信機から予め送信された基準信号を基に複数の送信機それぞれが送信時の位相を調整して複数の前記送信機から送信された電波を前記受信機で合成して受信する無線通信システムに使用される送信機であって、該送信機は、
任意の位置に置かれた受信機に対して、複数の送信機が、位相が調整された電波をそれぞれ送信する送信手段と、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段と、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段と、を有していることを特徴とする。
【0021】
上記において前記位相情報を抽出する手段は、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段と、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段と、該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0022】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整することを特徴とする。
【0023】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の逆位相となるように調整することを特徴とする。
【0024】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最大となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0025】
また上記において前記送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最小となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0026】
また上記目的を達成するために本発明の受信機は、
受信機から予め送信された基準信号を基に複数の送信機それぞれが送信時の位相を調整して複数の前記送信機から送信された電波を前記受信機で合成して受信する無線通信システムに使用される受信機であって、該受信機は、
任意の位置に置かれ、複数の送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する手段と、
前記基準信号を受信するまでの経路長を基に送信機が位相情報を抽出し、該抽出した位相情報を基に前記送信機が受信機で同位相となるように送信信号の位相を調整して送信する信号を受信する手段と、
前記複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を合成して受信する手段と、を有していることを特徴とする。
【0027】
また上記目的を達成するために本発明の無線通信方法は、
送信用と受信用とで2つのアンテナを有する任意の位置に置かれた
一つの受信機と、
それぞれ送信用と受信用とで2つのアンテナを有する複数の送信機とで構成され、
前記受信機において、送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する過程、
前記送信機において、前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に送信機で位相情報を抽出する過程、
前記送信機において、前記受信機で同位相となるように前記位相情報を基に送信信号の位相を調整する過程、
前記送信機において、前記位相を調整した送信信号を電波で送信する過程、および、
前記受信機において、複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する過程、
を含むことを特徴とする。
【0028】
上記において前記位相情報を抽出する過程は、
受信機から送信された基準信号を増幅する過程、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る過程、および、該合成出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する過程、を含むことを特徴とする。
【0029】
また上記において前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整して送信することを特徴とする。
【0030】
また上記において前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の逆位相となるように調整して送信することを特徴とする。
【0031】
また上記において前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する過程、および、該位相が調整された送信信号をフィードバックして前記制御信号に基づく遅延量を調整して前記合成出力の振幅が最大となるようにする過程、を含むことを特徴とする。
【0032】
また上記において前記送信信号の位相を調整する過程は、
前記制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する過程、および、該位相が調整された送信信号をフィードバックして前記制御信号に基づく遅延量を調整して前記合成出力の振幅が最小となるようにする過程、を含むことを特徴とする。
【0033】
また上記目的を達成するために本発明の無線通信システムにおける送信機のコンピュータに機能させるためのプログラムは、
送信用と受信用とで2つのアンテナを有する任意の位置に置かれた
一つの受信機と、
それぞれ送信用と受信用とで2つのアンテナを有する複数の送信機とで構成され、複数の前記送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する無線通信システムにおける送信機のコンピュータを、
前記受信機に対して、複数の送信機が、位相が調整された電波をそれぞれ送信する送信手段、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段、として機能させる。
【0034】
上記において、前記無線通信システムにおける送信機のコンピュータを、前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段として機能させる場合、さらに、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段、
該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段、
該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段、として機能させることを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成するために本発明の無線通信システムは、
閉空間の特定の位置に置かれた受信機と、前記閉空間の周辺位置に置かれた複数の送信機とで構成され、
前記受信機は、
送信機で送信電波の位相を調整するための基準となる基準信号を予め送信する手段と、
複数の送信機から位相が調整されてそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する手段と、を有し、
前記送信機は、
前記受信機から送信された基準信号を受信するまでの経路長を基に位相情報を抽出する手段と、
前記受信機で同位相となるように該位相情報を基に送信信号の位相を調整する手段と、
該位相を調整した送信信号を電波で送信する送信手段と、を有し、
前記受信機から予め送信された基準信号を基に複数の前記送信機それぞれの送信時の位相を調整し複数の前記送信機からそれぞれ送信された電波を前記受信機で合成して受信する、ことを特徴とする。
【0036】
また上記において、前記
位相情報を抽出する手段は、
受信機から送信された基準信号を増幅する手段と、該増幅された基準信号と位相調整信号とを合成して合成出力を得る合成手段と、該合成手段からの出力を基に送信信号の位相を調整する制御信号を生成する制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0037】
また上記において、前記
送信信号の位相を調整する手段は、
前記受信機から送信された基準信号を当該送信機で受信し、送信機から送信する送信信号を当該送信機で受信した前記基準信号の同位相となるように調整することを特徴とする。
【0038】
また上記において、前記
送信信号の位相を調整する手段は、
前記制御手段から出力される制御信号に基づいて前記位相調整信号を遅延させてその位相を調整する遅延手段と、該遅延手段から出力される位相が調整された前記位相調整信号を前記制御手段にフィードバックして前記制御手段から出力される制御信号に基づく前記遅延手段の遅延量を調整して前記合成手段から得られる信号の振幅が最大となるようにするフィードバック制御手段と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、任意の位置に置かれた受信機は、各送信機が発射した電波の位相が
同位相または逆位相で一致して合成された信号振幅が最大となる信号を受信するので、
たとえ微弱電波で送信したとしても受信機で合成される信号は位相が一致するためその振幅が大きくなることで受信誤りを大幅に減らすことができる。そのため、無線通信システムを使用したとしても有線通信システムとの比較で遜色のない通信品質を期待することができる。
また本発明によれば、閉空間の特定の位置に置かれた受信機は、前記閉空間の周辺位置に置かれた複数の送信機が発射した電波の位相が同位相または逆位相で一致して合成された信号振幅が最大となる信号を受信するので、たとえ微弱電波で送信したとしても受信機で合成される信号は位相が一致するためその振幅が大きくなることで受信誤りを大幅に減らすことができる。そのため、無線通信システムを使用したとしても有線通信システムとの比較で遜色のない通信品質を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る受信機における受信原理を説明する図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る受信機及び送信機の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る受信機が基準信号を送信している様子を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る受信機が送信した基準信号の位相を基に本発明の実施形態に係る送信機が位相を調整した電波を送信する様子を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る無線通信システムにおける位相調整のための送受信シーケンスを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る無線通信システムの処理フローを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る送信機の位相調整機能を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図1において、本発明の実施形態に係る無線通信システムは、一例として、空間10が限定されている工場内における適用について説明するが、限定された空間においてのみ本発明が適用されると理解すべきでない。そして空間10の任意の場所に受信機20が配置され、また空間10の任意の場所に複数の送信機1〜6が配置されて構成されている。
図1では、空間10の周辺に送信機1〜6が配置される例が示されているがそれに限定されない。複数の送信機1〜6からは、受信機20から送信される基準信号に応じ送信電波の位相を調整した電波を発射する。なお、送信電波の位相を調整する機能については後述する。
【0042】
空間10の任意の場所に配置された受信機20では、複数の送信機1〜6から電波の位相を調整した電波が発射され、当該発射された電波をアンテナ(図示せず)を介して受信する。その場合に本発明の実施形態に係る受信機20では、各送信機では微弱な送信電波でも受信時の位相が完全に一致している電波を受信するため、振幅が大きくなり且つ妨害波が混入しないため、ビット誤りなく受信することができる。受信機20以外の受信機にあっては当該受信機に対して位相が調整されていないため受信した電波がランダムに合成されて電力が小さく抑えられるのでビット誤りなく受信するのは困難である。
【0043】
図2は、本発明の実施形態に係る受信機における受信原理を説明する図である。
図2において、
図2(a)は、受信時の位相が一致した電波の合成を表している。図示例では、振幅Pの2つの波が同じ位相で合成されることで、合成された電波は、振幅2Pを有する電波として受信される。一方、
図2(b)は、受信時の位相が半波長分ずれた電波の合成を表している。図示例では、振幅が同じPの2つの波が半波長分ずれて合成されることで、合成された電波は、それぞれ打ち消し合って、合成された電波の振幅はゼロになる。
【0044】
図2には示していないが、振幅が異なる電波が合成される場合、また、位相のずれが
図2(a)や
図2(b)とは異なる場合の合成波は、上記した例のいずれかの間の振幅で受信されるものとなり、
図2(b)に近似するほど信号を受信することが困難となる。
【0045】
図3は、本発明の実施形態に係る受信機及び送信機の構成を示す機能ブロック図である。
図3において、受信機20は、任意の信号を送受するために送信回路(基準信号発生器)21および受信回路22を有している。また送信機30は、任意の信号を送受するために送信回路31と受信回路(位相抽出回路)34を有している。送信回路21、31において電波に変換された信号は、送信用のアンテナ23、33より発射され、受信用のアンテナ35、24で受信された後、受信回路34、22によって電波から信号に戻される。受信機20の送信回路21には基準信号を生成し発射する基準信号発生器が備わっている。一方、送信機30は、受信機20の基準信号発生器から発射された基準信号をも受信する受信回路34と、受信回路34内に設けられ受信した電波の位相を抽出する位相抽出回路と、該位相抽出回路で抽出した基準信号の位相を基に送信回路31から放出される送信信号の位相を調整する位相調整回路32とを有している。位相調整の具体的構成については後述する。
【0046】
図4は、本発明の実施形態に係る受信機が基準信号を発信している様子を示す図である。
図4において、受信機20から空間10の任意の場所、図示例では空間10の周辺、に配置された送信機1〜6のそれぞれまでの距離(電波の経路長)は異なっているので、送信機1〜6がそれぞれ受信する基準信号の位相は異なったものとなる。
【0047】
以上では、もっぱら空間が限定されている工場内における発明の適用について説明したが、これは単なる例示であって、本発明の適用にあたっては空間が限定されていることを要件とするものでない。
【0048】
図5は、本発明の実施形態に係る受信機が送信した基準信号の位相を基に本発明の実施形態に係る送信機が位相を調整した電波を送信する様子を示す図である。つまり
図5には、本発明の実施形態に係る受信機が送信した基準信号を、
図1及び
図4に示した送信機1〜6の内の任意の送信機A,Bで受信した基準信号の位相と、受信した基準信号の位相を基に送信機A,Bが位相を調整して電波を送信するときの送信信号を表している。
図5に示すように、送信機A,Bが受信した基準信号はそれぞれ経路長が異なるため位相が互いに異なるものであり、各受信した基準信号を基にその基準信号の位相と同位相の電波(
図5の上に示す破線)又は反転した電波(
図5の下に示す実線)をそれぞれ発射すると、
図5の上に示す破線の波形および
図5の下に示す実線の波形のように、往路と同じ経路を通って受信機に到達する複数の電波は、受信機の位置で位相が一致した信号として受信されるため、送信機1〜6(図示例では送信機A,B)がたとえ微弱電波で送信したとしても受信機で合成される信号は位相が一致するためその振幅が大きくなり、信号を確実に受信することが可能となる。
【0049】
図6は、本発明の実施形態に係る無線通信システムにおける位相調整のための送受信シーケンスを示す図である。つまり、
図6は、
図5に示す受信機からの基準信号の送信および当該基準信号の位相を基に各送信機で位相を調整し、調整した位相で各送信機が電波を送信するシーケンスを示すものである。受信機が送信する基準信号によって複数の送信機A,Bが自身の送信信号の位相を調整することによって、受信機の位置で各送信機が送信した信号の位相、すなわち送信機Aの送信信号および送信機Bの送信信号の位相、が一致し、合成された信号の振幅が最大となるので、信号を確実に受信することができる。その結果、本発明の無線通信システムにおける通信品質と通常の有線通信システムの通信品質との比較でも遜色のない通信品質が期待できる無線通信システムの構築が可能となる。
【0050】
図7は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの処理フローを示す図である。
図7は、
図5及び
図6ですでに説明した内容を処理フローとしてまとめたものである。
図7において、(a)は受信機の処理動作を、(b)は送信機の処理動作を示すもので、処理動作を受信機と送信機との間におけるシーケンスに関連付けて表示している。
【0051】
図7において、本発明の実施形態に係る無線通信システムにおける受信機が調整動作を開始すると、ステップS11において基準信号を特定の送信機に向けて電波で送信する。特定の送信機では、調整動作を開始すると、ステップS21において、受信機から送信された基準信号が受信できたかをチェックする。基準信号が受信できなければ受信できるまで繰り返す。
【0052】
受信機から発射された基準信号が受信できた場合には、ステップS22において、位相抽出を行う。位相抽出の具体的な動作は
図8で説明する。ステップS22で位相抽出したら、ステップS23において、位相調整を行う。位相調整の具体的な動作は
図8で説明する。ステップS23で位相調整が完了した場合、すなわち、当該送信機において、受信した基準信号と同位相または逆位相にして当該送信機から信号送信する(ステップS24)。
【0053】
受信機は、ステップS12において、
図5の上側の破線で示した波形または
図5の下側に示した波形で特定の送信機から送信された電波を受信する。なお、特定の送信機に向けた基準信号の送信に対して特定の送信機から
図5の上側の破線で示した波形または
図5の下側に示した波形で送信機から送信された電波が受信できない場合には、ステップS11に戻り、最初からやり直す。また、信号が受信できた場合には、別の送信機に対して同様に基準信号を送信し、すべての送信機から
図5の上側の破線で示した波形または
図5の下側に示した波形で送信機から送信された電波を受信できた場合は調整を終了する。そして1つの受信機に対して複数の送信機からデータを送信することで、たとえ微弱電波で送信したとしても受信機で合成される信号は位相が一致するためその振幅が大きくなり、信号を確実に受信することが可能となる。
【0054】
なお上記における位相調整においては、すべての送信機は、受信機から受信した基準信号と同位相にして当該送信機から信号送信する、若しくは、逆位相にして当該送信機から信号送信する、のいずれか一方に統一して位相を調整することになる。送信機からデータを送信する場合には公知の変調方式を利用することができるが、変調方式の詳細は本発明の主題ではないので割愛することにする。
【0055】
図8は、本発明の実施形態に係る送信機の位相調整機能を説明するブロック図である。
図8に示す送信機の構成は、受信機からの基準信号をアンテナ35を介して受信回路34が受信し、受信回路34は受信した基準信号の経路長を基に位相情報を抽出し、抽出した位相情報を基に制御回路343が制御信号を位相調整回路32に与えて送信する電波の位相を調整する。より具体的には、受信回路34において、受信した基準信号はアンプ341により増幅されて合成回路342の一方に供給され、また合成回路342の他方には遅延回路321から出力されアンテナ33に供給される送信信号が供給され、合成回路342において二つの信号が合成される。制御回路343はフィードバック制御により合成された信号の振幅が最大または最小になるように制御信号を遅延回路321に与え、遅延回路321は遅延量を制御する。合成回路342における二つの信号の合成出力の振幅が最大または最小になるとき、送信信号は基準信号波と同位相または逆位相になっている。送信回路31の出力である、送信する電波は、遅延回路321により基準信号波と同位相または逆位相になるように位相が制御されてアンテナ33を介して受信機に向けて送信される。ここにおいても上記したように、すべての送信機は、受信機から受信した基準信号と同位相にして当該送信機から信号送信する、若しくは、逆位相にして当該送信機から信号送信する、のいずれか一方に統一して位相を調整することになる。
【符号の説明】
【0056】
1〜6 送信機
10 空間
20 受信機
21 送信回路(基準信号発生器)
22 受信回路
23、24、33、35 アンテナ
30 送信機
31 送信回路
32 位相調整回路
34 受信回路(位相抽出回路)
321 遅延回路
341 アンプ
342 合成回路
342 制御回路