特許第6347095号(P6347095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347095
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】電気湯沸器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   A47J27/21 101K
   A47J27/21 101J
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-169611(P2013-169611)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-37494(P2015-37494A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尚輝
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/036956(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第202931574(CN,U)
【文献】 国際公開第99/038426(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01339257(EP,A2)
【文献】 国際公開第01/064084(WO,A1)
【文献】 特開平07−059657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00 − 36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器と、該内容器を収納一体化した容器本体と、該容器本体の側部に設けられた把手部と、上記容器本体の上部にあって上記内容器上部の開口を閉じる蓋体と、上記容器本体の上端部一側に設けられた湯注出口と、上記器の底部に設けられた湯沸しヒータと、上記器の底部に対応して設けられた空焚き検知手段とを備え、上記湯沸しヒータが上記器の底部に複数本隣接する状態で一体的に設けられた面状ヒータよりなるとともに、上記空焚き検知手段が所定面積を有して上記複数本の隣接する面状ヒ―タの隣接部に当接する温度感知面を有する温度感知手段よりなり、温度感知手段の温度感知面が当接する当接面において相互に隣接する面状ヒータは、それぞれ相互に離間する方向に曲成して形成されておりそれによって当該隣接する面状ヒータ相互の間に他の隣接部分よりも広い面状ヒ―タのない空間を確保していることを特徴とする電気湯沸器。
【請求項2】
所定面積の温度感知面を有する温度検知手段が、円盤状のバイメタルであることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸器。
【請求項3】
円盤状のバイメタルの温度感知面に対応する面状ヒータ部分の幅が、上記円盤状バイメタルの温度感知面の半径以下であることを特徴とする請求項2記載の電気湯沸器。
【請求項4】
所定面積を有する温度感知手段の温度感知面に対応する面状ヒータ部分の幅が、6mm以下であることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気ケトルのような電気湯沸器における空焚き検知機構の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、保温ヒータを備え、常時保温ヒータに通電しておくことによって、いつでも所望の温度のお湯が使える保温機能を備えた電気ポットに変わって、必要なときに必要な量のお湯を迅速に沸かすようにし、通電状態の継続による消費電力の無駄を省いた電気ケトルが多く使用されるようになっている。
【0003】
このようなタイプの電気湯沸器では、できるだけ早くお湯を沸かせること、つまり加熱効率の高いものであることが求められる。
【0004】
しかし、従来の電気湯沸かし器では、例えばステンレス製の内容器の底部に伝熱性の良いアルミ板を介してシーズヒータをロー付けした構成のものが一般的であり、内容器の底部を直接加熱するものではないために、必ずしも加熱効率が良いとは言えないのが実情であった(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0005】
そこで、これを改良するために、例えば海外の一部の製品に見られるように、内容器の底部に直接面状ヒータを印刷等の手段で設置するなどして、内容器の底部にヒータ部分を一体化することも可能である(特許文献3、特許文献4を参照)。
【0006】
このような構成を採用すると、内容器の底部が幅広く接する面状ヒータによって直接加熱されるので、極めて加熱効率が良くなり、湯沸し時間が大きく短縮される。
【0007】
なお、これら電気湯沸器の場合、いずれにあってもヒータ部にはバイメタルなどの空焚き検知手段が設けられる(例えば上記特許文献1、特許文献3、特許文献4のバイメタルを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−240075号公報
【特許文献2】特開2009−125356号公報
【特許文献3】特表平09−507395号公報
【特許文献4】特表平09−506792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、以上のような面状ヒータによる加熱構造を採用した場合、ヒータ部の熱応答性、内容器に対する加熱効率が極めて高いため、内容器のヒータ部に対応した部分の温度が他の部分に比べて高くなる。この結果、内容器内面の同ヒータ部に対応した部分から局部的に沸騰による多数の小泡が生じるようになる。この多数の小泡は、やがて合体して、大きな泡となる。特に面状ヒータが複数本隣接して配設されていると、それらの隣り合う泡の集団同士が合体し、大きな泡の塊を形成する。
【0010】
このようにして大きな泡が生じると、当該泡部分が空洞となり、同空洞によって内容器と水との接触が断たれて、上記ヒータ部に対応する内容器底部部分の温度が局部的に異常に上昇し、部分的な空焚き状態が発生する。
【0011】
その結果、当該ヒータ部に対応して設けられている上記空焚き検知手段が誤作動する、面状ヒータの変形が生じる、内容器内周面にフッ素樹脂がコーティングされていたりすると、同フッ素樹脂に悪影響を与える(変色、撥水性の低下)、などの問題を生じさせる。
【0012】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、空焚き検知手段が所定面積の温度感知面を有する温度感知手段よりなり、上記所定面積の温度感知面に対応する面に設けられた隣接する面状ヒータが、それぞれ相互に離間する方向に成して形成され、隣接する面状ヒータ間に面状ヒータのない空間を確保した構成とすることにより、同問題を解決した電気湯沸器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願各発明は、上記の課題を解決するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、内容器と、該内容器を収納一体化した容器本体と、該容器本体の側部に設けられた把手部と、上記容器本体の上部にあって上記内容器上部の開口を閉じる蓋体と、上記容器本体の上端部一側に設けられた湯注出口と、上記器の底部に設けられた湯沸しヒータと、上記器の底部に対応して設けられた空焚き検知手段とを備え、上記湯沸しヒータが上記器の底部に相互に隣接する並列な状態で一体的に設けられた面状ヒータよりなるとともに、上記空焚き検知手段が所定面積を有して上記並列な面状ヒ―タ相互の隣接部に当接する温度感知面を有する温度感知手段よりなり、温度感知手段の温度感知面が当接する当接面において相互に隣接する並列な面状ヒータは、それぞれ相互に離間する方向に曲成して形成されており、それによって当該相互に隣接する並列な面状ヒータ相互の間に他の隣接部分よりも広い面状ヒ―タのない空間を確保していることを特徴としている。
【0014】
このような構成の課題解決手段によると、面状ヒータよりなる湯沸しヒータの採用により、水を入れた容器本体の加熱効率が大きく向上し、湯沸し時間が大幅に短縮される。
【0015】
しかも、空焚き検知手段が所定面積を有する温度感知手段よりなり、上記所定面積を有する温度感知面に対応する面に設けられた隣接する面状ヒータが、それぞれ相互に離間する方向に曲成して形成され、それによって当該隣接する面状ヒータ相互の間に他の隣接部分よりも広い面状ヒ―タのない空間を確保しているので、隣接した面状ヒータ部分から多数の泡が発生しても、隣接する面状ヒータ間には広い空間があるため、それぞれの泡が相互に合体することを回避できる。したがって、局部加熱による部分的な空焚き状態も生じにくくなるので、従来のような空焚き検知手段の誤作動は生じなくなる。
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、上記所定面積の温度感知面を有する温度感知手段が円盤状バイメタルであることを特徴としている。
【0016】
このような構成の課題解決手段によると、少なくとも円盤状バイメタルの温度感知面に対応する部分では、泡発生部の間隔が広くなるので、面状ヒータにより発生した泡の合体が生じにくくなり、器の隣り合う面状ヒータに対応する部分で局部的に泡が発生しても、それらの泡の合体による影響はなくなり、局部加熱による部分的な空焚き状態も生じにくくなるので、従来のような空焚き検知手段の誤作動は生じなくなる。
(3)請求項3の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、上記請求項2の発明の課題解決手段の構成において、円盤状のバイメタルの温度感知面に対応する面状ヒータ部分の幅が、上記円盤状のバイメタルの温度感知面の半径以下であることを特徴としている。
【0017】
このような構成の課題解決手段によると、面状ヒータは、空焚き検知手段である円盤状バイメタルの温度感知面に対応する部分の幅が、当該円盤状バイメタルの温度感知面の半径以下となっていることにより、少なくとも円盤状バイメタルの温度検知領域に対応する部分では、面状ヒータ部分で生じる泡の数自体が少なく、各面状ヒータ間の泡の合体が生じにくい幅の狭い構成となり、面状ヒータ部分で或る程度の量の小泡が生じても、円盤状バイメタルの温度感知面に対応する温度検知領域部分では泡の合体は発生せず、局部加熱による部分的な空焚き状態も生じにくくなるので、従来のような空焚き検知手段の誤作動は生じなくなる。
(4)請求項4の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、上記所定面積を有す温度感知手段の温度感知面に対応する面状ヒータ部分の幅は、6mm以下であることを特徴としている。
【0018】
このような構成の課題解決手段によると、面状ヒータは、空焚き検知手段である所定面積を有する温度感知手段の温度感知面に対応する部分の幅が、少なくとも同温度感知面に対応する部分では、泡の発生量自体が少なく、隣り合う面状ヒータ間での大きな泡の合体が生じにくい、6mm以下という極めて幅の狭い構成となり、面状ヒータ部分で或る程度の量の小泡が生じても、所定面積を有する温度感知手段の温度感知面に対応する部分では大きな泡の合体は発生せず、局部加熱による部分的な空焚き状態も生じにくくなるので、従来のような空焚き検知手段の誤作動が生じなくなる。
【発明の効果】
【0019】
以上の結果、本願発明によると、面状ヒータ部分での局部加熱による部分的な空焚き状態の発生等の誤った空焚き検知を回避し、面状ヒータの長所を生かした適正かつ迅速な湯沸しを可能とすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の実施の形態に係る電気湯沸器の蓋閉状態における全体的な構造を示す右半分側の断面図である(容器本体を電源台上に載置一体化した図)。
図2】同電気湯沸器の底部材を取り外した容器本体底部における電装部の構成および配線レイアウト等を示す底面図である(湯沸しヒータ配設パターンを省略して示す図)。
図3】同電気湯沸器の内容器底部における湯沸しヒータ配設パターンおよび電装部の取り付け構造を示す底面図である。
図4】同電気湯沸器の内容器底面部に設けられた電装部の構成を拡大して示す底面図である。
図5】同電気湯沸器の内容器および内容器底面部における底板、湯沸しヒータ、電装部取付金具、受電カプラ、空焚き検知用バイメタル部分の構成を示す断面図である。
図6】同電気湯沸器の内容器底面部における安全用サーモスタット部分の構成を示す拡大断面図である。
図7】同電気湯沸器の内容器底部の底板に対する電装部取付金具、底部材取付金具、サーモスタット取付金具の設置状態を示す内容器の斜視図である。
図8】同電気湯沸器の内容器底部における底板および底板に対する電装部取り付け金具の取付状態を示す内容器全体の側面図である。
図9】同電気湯沸器の内容器底面部における湯沸しヒータの配設パターンと位置関係を容器本体の湯注出口(下口部)および把手位置との関係で示す底面図である。
図10】同電気湯沸器の第1の変形例に係る内容器底面部における湯沸しヒータ配設パターンと空焚き検知用バイメタルの温度感知面との対応関係を示す底面図である。
図11】同電気湯沸器の第2の変形例に係る内容器底面部における湯沸しヒータ配設パターンと空焚き検知用バイメタルの温度感知面との対応関係を示す底面図である。
図12】同電気湯沸器の第3の変形例に係る内容器底面部における湯沸しヒータ配設パターンと空焚き検知用バイメタルの温度感知面との対応関係を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の電気湯沸器を実施するための一つの形態について詳細に説明する。
【0022】
先ず図1図9には、同本願発明の電気湯沸かし器を実施するための形態にかかる電気湯沸器本体の全体的な構成およびその内容器底部の湯沸しヒータ部を含む電装品部分の構成が示されている。
(電気湯沸器本体の構成)
すなわち、この実施の形態の電気湯沸器は、例えば図1および図2に示すように、内側に貯湯用の内容器3、上部に蓋体4、後部に把手8を備えた容器本体1と、該容器本体1が着脱可能に載置され、該載置状態で当該容器本体1の電装品部の電源回路に電源を供給する電源台2とからなっている。
【0023】
そして、容器本体1は、例えば外装体である金属製の円筒状ケース1aと、該円筒状ケース1aの底部に嵌合一体化された合成樹脂製の皿状の底部材1bと、上記円筒状ケース1aの上端側開口部に嵌合固定された合成樹脂製の環状の肩部材1cと、該環状の肩部材1cの内側に設けた係合段部1dを介して、開口部外周側のフランジ部3aを吊設支持することにより、上記円筒状ケース1aおよび底部材1bの内側に収納一体化された上記内容器3と、上記環状の肩部材1cの内側に着脱自在に嵌合され、上気内容器3の開口部を開閉する上下方向に相当の厚みのある上記蓋体4と、上記内容器3の底面部に設けられ、上記内容器3を湯沸し時において加熱する湯沸しヒータ5と、該湯沸しヒータ5を駆動制御する電源回路を備えた電装部6と、上記肩部材1cの前端部(図1の左側部)に設けられた上記内容器3内の湯を外部へ注出するための湯注出口(下口部)7と、上記円筒状ケース1aの後端部(図1の右側部)にあって、上記肩部材1cから上記円筒状ケース1aの下端部に延びる状態で成形または取り付けられた側面コの字形の湯注出操作用の把手8とを備えて構成されている。
(内容器の構成)
内容器3は、例えば図5図8に示すように、1枚板構造の略等径のステンレス製(合成樹脂製も可)の筒体部31と、該筒体部31の底部側開口部に同開口部を閉じるように外周囲を閉蓋状態で溶接一体化された同じくステンレス製の底板(少し厚め)32とからなっており、該底板32の底面部に上記湯沸しヒータ5が設けられている。底板32は、上記筒体部31の底部側開口部内周に設けた所定の幅の接合用フランジ部に対応する所定の幅の外周側環状のフラット部32aと、その内側の少し段下がりして上方に向けて緩やかな凹球面形状となった球面部32bとからなっており、上記フラット部32aが上記筒体部31の接合用フランジ部に溶接されて筒体部31と一体になり、当該内容器3の底壁部を形成している。そして、同一体化状態において、該内容器3の内周面全体には、例えば粒子状の土鍋粉末やセラミック粉末を混入したフッ素樹脂がコーティングされる。
【0024】
そして、以上のような底板32の上記球面部32bが上記湯沸しヒータ5の設置面とされ、該湯沸しヒータ設置面に対して上記湯沸しヒータ5が設置されている。
(湯沸しヒータの構成)
湯沸しヒータ5は、上記底板32の球面部32bに対して所定の絶縁層(絶縁ガラス層など)51を介して印刷された所定の厚さ、所定の幅の面状ヒータ(帯状ヒータ)よりなり、例えば図3および図9に示すように、上記球面部32bの中心部側に位置し、A−A´軸(図9参照)を挟んで左右対称に設けられている一対の給電部(給電用電源端子部)52a、52bを始点(および終点)として、上記球面部32bの一部扇形部分(A−A´軸上の前端側に位置)のみを残して、上記球面部32bの全体に亘り所定の隣接間隔をおいて、決して相互にクロスさせることなく、所望に屈曲させながら、一筆書き状に連続させて、可能な限り均一に配設した相互に軸対称な左右一対(2組)のウイングパターン(蝶が羽根を広げた形状)のものよりなっている。そして、その下面側(表面側)にも、上記球面部32b側と同様の絶縁層51が印刷されている。
【0025】
この左右対称な一対のウイングパターンの湯沸しヒータ5は、例えば図9に詳細に示されているように、その左右対称軸A−A´を基準として左右対称に配設されているとともに、同状態において、上記球面部32bの中心Oから前方側方向(湯注出口7方向)に上記扇形のヒータ非設置面(湯沸しヒータ5および絶縁層51の設けられていない部分)32Sを設けて形成されている。このヒータ非設置面32Sの後部側(把手8側)球面部32bの中心O部分には、例えば図5図7図8に示すように、後述する電装部6を取り付けるための略三角形状の電装部取り付け金具10が取り付けられている。
【0026】
この電装部取付金具10の金具本体10a部分は、例えば3本の脚部10b、10c、10dにより、上気球面部32bとの間に所定の空間(隙間)を保って取り付けられており、加熱部である底板32からの熱の影響を受けないように構成されている。
【0027】
また、上記底板32の上記フラット部32a部分には、上述した円筒状ケース1aの底部に上述した底部材1bを螺合固定するための支持金具12a、12bと、後述する安全用のサーモスタット(ワンショットサーモ)15を取り付けるための支持金具12cが設けられている。これら各支持金具12a〜12cには、例えば図7に示すように、それぞれ取付用のネジを螺合するためのネジ溝13が設けられている。
【0028】
上記のように構成された湯沸しヒータ5は、例えば図9に示すように、その中心となる上記左右対称軸A−A´の位置を、内容器3の上記容器本体1内への組み込み状態(図1の状態)において、上記容器本体1の前端側湯注出口7と後端側把手8とを結ぶ前後方向の直線X−X´の位置から、底面視右方向に所定角θだけ斜めに回転させた状態で設けられており、上記左右対称な一対のウイングパターンの左右ウイング部を横切る左右方向のウイング軸B−B´も上記容器本体1の左右方向中心軸Y−Y´(X−X´軸に直角)から右方向に同所定の回転角θだけ回転した位置に設けられている。
【0029】
これにより、上記球面部32b上における上記扇形のヒータ非設置部32Sは、例えば図9から明らかなように、当該内容器3を上記容器本体1に組み込んだ状態において、上記容器本体1の底部の前後方向部分を1/2に分割するY−Y´軸よりも前部側のX−O−Y´領域部分に位置することになり、上記湯沸しヒータ5の面状ヒータ部分は、上記容器本体1の底部の前後方向部分を1/2に分割するY−Y´軸よりも後半部分において、全体の略2/3の量のヒータが配設された状態となるように構成されている。
【0030】
この結果、この実施の形態では、内容器3底部の加熱能力が全体に均一ではなく、湯注出口7側(前部側)よりも把手8側(後部側)の方が大きく、内容器3内の湯も上記湯注出口7側よりも同把手8側に近い部分の湯の方が相対的に早く沸騰し始めることになる。そこで、これに対応して、後述するように、蓋体4側の沸騰検知用蒸気導入通路44も、把手8側後端寄りに設けており、それによって可能な限り速やかに沸騰を検知し、少しでも無駄な蒸気を出すことなく、湯沸しを完了させるようになっている。
【0031】
なお、このようなヒータの配列パターンに関連して、以下に述べる空焚き検出用のバイメタル25A、25Bも、その内の一つ25Bは、上記Y−Y´軸よりも後端側に位置して設置されるようになっている(例えば、図2および図9を参照)。
(電装部の構成)
上記電装部6は、例えば図4に示されるように、耐熱性のある合成樹脂成形体よりなる電装用基体(基板兼用の筐体)を中心とし、同電装用基体に形成した各種電装品設置部に、例えば電源端子、スイッチ機構、空焚き検知手段等の各種電装品を設けて構成されている。この実施の形態の場合、上記空焚き検知手段としては所定面積を有する温度感知手段が用いられ、具体的には、例えば円盤構造のバイメタルが採用されている。
【0032】
この実施の形態の場合、上記電装用基体は、例えば上記扇形のヒータ非設置部32Sを有し、上記容器本体1の前後方向軸X−X´よりも所定角θ右方向に回転したA−A´軸を介して左右に対称な左右一対のウイング構造に配設された上記湯沸しヒータ5のレイアウトに対応して、同じくA−A´を介して左右に対称な左右一対のウイング構造(蝶翼構造)のものに形成されている。そして、同電装用基体部分が上記電装品取り付け金具10を介して上記底板32の球面部32a下面側中心部に取り付けられる。
【0033】
先ず符号21は、ガイド筒21a、筒状電極21b、棒状電極21cよりなる全体として筒状の受電カプラであり、同受電カプラ21部分の左右両側前部にバイメタル設置部23A、23B、後部に電源端子設置部24A、24Bが一体成形により設けられている。そして、上記バイメタル設置部23A、23Bには、その上部側に位置して空焚き検知用の円盤状のバイメタル25A、25Bが設けられ、この円盤状のバイメタル25A、25Bによって、上下に対応して設けられた第1、第2の電源接点19a、20a、19b、20bをON、OFFするようになっている。
【0034】
すなわち、円盤状のバイメタル25A、25Bは、上記バイメタル設置部23A、23Bの開口枠部分に一体に樹脂成形されたバイメタル支持部27a、27bの上部側に位置して上方に直角に折り曲げられた板状のバネ部材26a、26bにより上方側に押圧付勢された状態で、上下方向に昇降可能に弾性的に支持されており、通常の温度状態では、その外周縁部(感熱変形部)を上記底板32の球面部32bにおける湯沸しヒータ5の設置面に所定の接触圧を有して接触させている。
【0035】
すなわち、該円盤状バイメタル25A、25Bの上記外周縁部(感熱変形部)は、通常の温度状態では、湯沸しヒータ5の設置面側にスカート状に絞られた形で周縁部全体が当接しているが、湯沸しヒータ5設置面側の温度が所定の作動基準温度(例えば140℃)以上になると、逆方向(下方)に反り返り、逆方向に傾斜した状態となる。
【0036】
一方、上記円盤状のバイメタル25A、25Bは、同外周縁部の下面側に、上記第2の電源接点(可動側接点)20a、20bの上部側に位置して上下方向に弾性変形可能に設けられた第2の電源接点作動部材(レバー片)18a、18b先端の所定長さ上方に延びる軸部材部分が当接可能に対応せしめられている(例えば図4および図5の符号18a、18b部分を参照)。
【0037】
そして、上記円盤状のバイメタル25A、25Bの上記外周縁部(感熱変形部)が、上記湯沸しヒータ5設置面部分の作動基準温度(140℃)以上の温度上昇によって作動状態になると、その外周縁側を下方に反り返させることにより、上記軸部材部分を下方に押し下げ、上記電源接点作動部材18a、18bのレバー動作により上記第2の電源接点20a、20bを下方に押し下げるので、同第2の電源接点20a、20bの先端20c、20dと上記上部側第1の電源接点(固定側接点)19a、19bの先端側接点部19c、19dとが離間されて、上記湯沸しヒータ5への電源の供給が停止される。
【0038】
この状態は、上記円盤状のバイメタル25A、25Bの上記外周縁部(感熱変形部)が元の状態に復帰するまで維持される。
【0039】
そして、この実施の形態の構成の場合、例えば図3および図9に示すように、上記円盤状のバイメタル25A、25Bを、上記面状ヒータの局部加熱による泡の合体を生じにくい、複数本(2本)並列する状態で帯状に延びる面状ヒータが相互に外周側方向に曲成して離間し、相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間が形成される5A、5B部分に対応させて設けることにより、また同円盤状のバイメタル25A、25Bを設置しようとする5A、5B部分において、複数本(2本)並列に延びる帯状の面状ヒータを相互に外周側方向に曲成させることによって離間させ、それら相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間を形成することによって、対応する面状ヒータ部分を隣り合う面状ヒータによる泡の合体を生じにくい構造のものにすることにより、上記各面状ヒータ部分で生じた多数の泡が相互に合体することを回避し、当該泡の合体によって部分的に大きな空洞部ができ、当該空洞部によって内容器3の底面と水との接触が断たれて、局部加熱が発生し、同局部加熱発生部分で部分的な空焚き状態が発生するのを回避し、上記空焚き検知用の円盤状のバイメタル25A、25Bが誤作動、誤検知を生じるのを防止するようにしている。
【0040】
また、この場合、少なくとも当該円盤状のバイメタル25A、25Bの円形の感知面である上記外周縁部(感熱変形部)に対応する温度検知領域(図3図9中に2点鎖線で示す領域)における面状ヒータの幅は、その他の領域におけるものよりも所定寸法以上幅を小さくして印刷するなど、面状ヒータ部で発生する泡の発生量自体を少なくし、より泡の合体による部分的な空焚きを生じさせないような構成が採用される(後述)。
【0041】
他方、上記電装用基体の上記電源端子設置部24A、24Bには、例えば図4に示すように、上記受電カプラ21の筒状電極21b、棒状電極21cを介して供給される電源を上記湯沸しヒータ5の給電部52a、52bに給電する弾性接触構造の給電端子(同図4のスタッド部22a、22bの上端側部分に設けられている)や後述する把手8側電源スイッチ部47への電源供給端子T1、サーモスタット15の一端側接続端子16bとの接続端子T2、後述する把手8側沸騰検知部46との信号線接続端子T3等の各種接続端子が設けられており、それぞれ図示のような所定のリード線を介して接続されている。
【0042】
上記把手8側電源スイッチ部47への電源供給端子T1は、電源配線である電源リード線を介して、図1に示す把手8内の配線空間8aを介して把手8上端側の操作電源スイッチ47の開閉接点および沸騰検知部46の沸騰検知用バイメタル開閉接点46aとそれぞれ直列な関係で接続され、同沸騰検知用バイメタル開閉接点46a部分から電源配線であるリード線を介して再び把手8内の配線空間8a内をユーターンして上記安全用サーモスタット15の他端側接続端子16a部分に接続されている。
【0043】
安全用サーモスタット15は、例えば上記球面部32bの扇形のヒータ非設置面32S左側の面状ヒータ部分に対応して設けられており、同部分が特別な異常温度(例えば270℃以上の高温)になったようなときに作動して、上記湯沸しヒータ5その他への全ての電源の供給を停止する。この安全用サーモスタット15は、例えば図3および図6に示されるように、上記底板32のフラット部32aのサーモスタット支持金具12cに取り付けられ、上下方向に延びる支持ケース15a内に押圧付勢用のコイルバネ15cを介して感熱センサー15bを収納し、同感熱センサー15bの先端を上記扇形のヒータ非設置面32S左側の面状ヒータ部分に押圧状態で接触させ、外周側に設けた取り付けブラケット部15dを介して上記支持金具12cに固定されている。
(電源台の構成)
さらに、図1において、符号2は卓上型の電源台であり、その中央部には、上記筒体構造の受電カプラ21のガイド筒21a内に嵌合される同じく筒体構造の給電カプラ11が所定の高さ上方に突出して設けられている一方、裏面側には電源コードの収納空間が設けられている。
【0044】
給電カプラ11は、上記受電カプラ21のガイド筒21aに対応して、その内側に摺動可能に嵌合されるガイド筒11aと、該ガイド筒11aの内周側にあって、上記筒状電極21bの内側にブラシ構造の電極を介して嵌合される筒状電極11bとからなり、該筒状電極11bの内側に上記受電カプラ21側の棒状電極21cが挿入されるようになっており、上記電源コード収納空間内の図示しない電源コードがAC電源に接続されると、上記電源台2側給電カプラ11を介して上記容器本体1側の受電カプラ21にAC電源が供給され、さらに同受電カプラ21を介して上述の各電源回路に電源が供給される。
【0045】
その結果、同電源回路を介して、上記湯沸しヒータ5、空焚き検知用のバイメタル25A、25B、安全用サーモスタット15、電源スイッチ部47、沸騰検知部46などに電源が供給されることになる。なお、電源スイッチ部47内には照明用のネオンランプ47aが設けられている。
(蓋体部分の構成)
蓋体4は、例えば合成樹脂製の上板41と該上板41に対して外周縁が結合された合成樹脂製の下板42と、その下方側の金属製の内カバー43とからなっており、上記肩部材1c内側の開口部に対して上下方向に着脱自在に嵌合されている。上記上板41および下板42間の空間は、必要に応じて断熱材を充填した断熱構造体に形成されるとともに、下板42の一部には、下方から上方に向けて沸騰検知用の蒸気導入通路44が設けられている。
【0046】
この蒸気導入通路44は、上記内カバー43の後端側把手8に近い位置に設けられており、その下端側蒸気導入口部分から上記把手部8の上端側前部に設けた沸騰検知用バイメタル46aを有する沸騰検知用の蒸気通路に向けて連通している。そして、同沸騰検知用蒸気通路部分におけるバイメタル46aの作用で沸騰が検知される。
【0047】
そして、それにより上記内容器3内の湯の沸騰が検知されると、同バイメタル46a部分で上記湯沸しヒータ5への電源の供給が遮断される。
【0048】
この場合、この実施の形態の構成では、上述のように内容器3底部の加熱能力が全体に均一ではなく、湯注出口7側(前部側)よりも把手8側(後部側)の方が大きく構成されており、内容器3内の湯も上記湯注出口7側よりも同把手8側に近い部分の湯の方が相対的に早く沸騰し始めることになる。そこで、これに対応して、上記のように蓋体4側の沸騰検知用蒸気導入通路44も、把手8側後端寄りに位置させて設けており、それによって可能な限り速やかに沸騰蒸気を導入、検知し、少しでも無駄な蒸気を出すことなく、湯沸しを完了させるようになっている。
【0049】
また、この蓋体4の前端側には、下部側内カバー43の湯導入口部から上部前面側の湯導出口部に至る給湯通路9が設けられている。そして、この給湯通路9の途中には、ロック・アンロック用の操作ボタン45によって出湯状態を制御する開閉弁機構が設けられている。符号45aは同開閉機構の開閉弁、45bは同開閉弁45aおよび上記操作ボタン45を上方側(閉弁状態)に上昇付勢しているコイルスプリングである。
(空焚き検知用バイメタルの誤検知対策)
ところで、上述のように、内容器3加熱用の湯沸しヒータ5として、以上のような面状ヒータ構造を採用した場合、ヒータ部の加熱効率が高く、きわめて迅速な湯沸しを行なえる反面、内容器3のヒータ部に対応した部分のみが局部的に加熱され、内容器3内面のヒータ部に対応した部分に局部的に多数の泡の発生が生じる。そして、この多数の泡が、やがて合体し、大きな泡となる。この場合、複数本の面状ヒータが相互に隣接していると、それら隣り合って生じる泡が合体して、さらに大きな泡となる。
【0050】
そして、そのような大きな泡が生じると、当該泡部分が空洞となり、同空洞によって内容器3と水との接触が断たれて、上記ヒータ部に対応する内容器3の底板32部分が局部的に加熱され、部分的な空焚き状態となって、同部分の温度が異常に上昇する。
【0051】
その結果、当該ヒータ部に対応して設けられている上記空焚き検知用の円盤状バイメタル25A、25Bが誤作動し、湯沸しヒータ5への電源を遮断してしまう。また、面状ヒータの変形が生じる。さらに、上記内容器3内周面のフッ素樹脂に悪影響を与える(変色、撥水性の低下)。
【0052】
そこで、この実施の形態では、上述の様に、空焚き検知用の円盤状のバイメタル25A、25B(それらの温度感知面)を、上記面状ヒータの局部加熱による泡の合体を生じにくい部分、例えば図3および図9に示すように、隣接し、相互に並設状態で延びる複数本(2本)の帯状の面状ヒータが相互に外周側方向に曲成して離間し、相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間が形成され、相互の発生した泡の合体が生じにくい配設パターン部分5A、5Bに対応させて設けることにより、また同空焚き検知用のバイメタル25A、25Bを設置しようとする温度検知領域5A、5B部分において、隣接し、相互に並設状態で延びる複数本(2本)の帯状の面状ヒータを相互に外周側方向に曲成させることによって離間させ、相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間を形成することによって、対応する面状ヒータ部分を局部加熱による泡の合体を生じにくい構造のものにすることにより、それら面状ヒータ部分で生じた泡の合体を可能な限り回避し、空焚き検知用バイメタル25A、25Bの誤作動、誤検知を防止するようにしている。
【0053】
このような構成によると、上述した面状ヒータよりなる湯沸しヒータの採用により、水を入れた内容器3の加熱効率が大きく向上し、湯沸し時間が大幅に短縮される。
【0054】
しかも、面状ヒータ設置面の空焚き検知用のバイメタル25A、25Bの温度感知面が対応する部分は、同面状ヒータの局部加熱による泡の合体を生じにくい構成とし、同面状ヒータの局部加熱による泡の合体を生じにくい部分に温度感知面を対応させて、空焚き検知用のバイメタル25A、25Bを設けることができるので、面状ヒータによる局部加熱が生じても、同局部加熱による泡の合体の影響は少なく、従来のような誤作動、誤検知は殆ど生じなくなる。
【0055】
また、この場合において、少なくとも上記円盤状バイメタル25A、25Bが対応する温度検知領域5A、5B内における面状ヒータの幅は、当該円盤状バイメタル25A、25Bの温度感知面である外周縁部の半径以下の幅、例えば6mm以下、より好ましくは3mm前後であることが好ましい。
【0056】
先ず、面状ヒータの上記円盤状バイメタル25A、25Bの外周縁部に対応する部分の幅が、当該円盤状バイメタル25A,25Bの外周縁部の半径以下となっていると、少なくとも上記円盤状バイメタル25A、25Bの温度検知領域に対応する部分では局部加熱による泡の合体を生じにくい十分に幅の狭い構成となり、面状ヒータ部分で或る程度の局部加熱が生じても、上記円盤状バイメタル25A、25Bの温度検知領域に対応する部分では同局部加熱による大きな泡の合体は発生せず、従来のような誤作動、誤検知は生じなくなる。
【0057】
その場合、上記円盤状バイメタル25A、25Bの温度検知領域に対応する面状ヒータ部分の幅が、さらに具体的に6mm以下、より好ましくは3mm前後であると、より泡の合体を生じにくい極めて幅の狭い構成となり、上記面状ヒータ部分で或る程度の局部加熱が生じても、上記円盤状バイメタル25A、25Bの温度検知領域に対応する部分では殆ど大きな泡の合体は発生せず、より確実に上記円盤状バイメタル25A、25Bの誤作動、誤検知が生じなくなる。
【0058】
この場合、上記のように、面状ヒータの幅を狭くするのは、空焚き検知用バイメタル25A、25Bの温度感知面に対応する部分のみで足りるが、そのようにした場合、同温度感知面部分における面状ヒータの許容電流容量が問題になるような場合には、同部分における面状ヒータの印刷厚みを大きくすることにより、断面積を等しくするなどの構成も採用することができる。このようにすると、幅が狭いので、泡の発生量は少なく、泡の合体も生じにくいが、発熱量自体は増大させることができるので、加熱量アップの効果も得られる。
【0059】
また、この実施の形態の場合、上述のように内容器3の内周面全体には、例えば粒子状の土鍋粉末やセラミック粉末を混入したフッ素樹脂がコーティングされている。
【0060】
このような構成によると、フッ素樹脂により撥水性が付与されることはもとより、フッ素樹脂層により加熱時の熱が拡散され、後述する面状ヒータによる局部的な加熱が抑制され、加熱効率も向上する。また、混入された塗膜面上の上記各粒子が沸騰石の役割を果たし、沸騰時における泡離れの起点となるので、泡離れが良くなり、泡同士が相互に合体する前に速やかに上昇するようになる。したがって、より効果的に部分的な空焚きの発生を防止することができるようになる。
(変形例)
以上のように、上記円盤状バイメタル25A、25Bの温度感知面に対応する部分の面状ヒータの幅を小さくすると、それらから生じる泡の合体は生じにくくなり、上述した部分的な空焚きによる誤検知は避けられる。
【0061】
しかし、上記空焚き検知手段である円盤状バイメタル25A、25B本来の応答性の良い空焚き検知機能を維持するためには、少なくとも、その温度感知面が一定の比率以上の面積で面状ヒータ部分に対応していることが必要であり、その上でなお、泡の合体による影響がないことが好ましい。
【0062】
このような観点から、本実施の形態においては、例えば次の変形例1〜3のような新たな構成も採用される。
【0063】
また、本実施の形態における空焚き検知手段としては、必ずしも上述のようなバイメタルに限らず、例えば以下の変形例4に示すサーミスタなどの電子的な温度検知手段の採用も可能である。
(変形例1)
上記実施の形態における局部加熱による泡の合体が生じにくい部分、または同局部加熱による泡の合体が生じにくい部分の構成としては、上記実施の形態のような2本平行に延びる面状ヒータを相互に円弧状に離間させる構成の他に、例えば図10の5C、5Dに示すように、1本の面状ヒータを円弧状にカールさせた部分に温度感知面を対応させるか、または同温度感知面に対応する1本の面状ヒータ部分を円弧状にカールさせた構成にするようにしても良い。
【0064】
このような構成にすると、円盤状のバイメタル25A、25Bの温度感知面に対応して配設される面状ヒータが1本であり、局部加熱によって発生する泡の合体が生じにくい構成としながら、曲成部とすることにより、円盤状バイメタル25A、25B本来の応答性の良い空焚き検知機能を維持するために、円盤状バイメタル25A、25Bの温度感知面を一定の比率以上の面積(実質的に2本)で面状ヒータ部分に対応させることができ、上記実施の形態の場合と同様の作用を実現することができる。
【0065】
また、この場合において、同面状ヒータの幅を同様に狭くすると、上記同様の有効な作用効果を得ることができる。
(変形例2)
また、同様の理由で、円盤状のバイメタル25A、25Bの温度感知面を面状ヒータが曲成することなくストレートに横切るような配列構成の場合には、例えば図11の5E、5Fに示すように、少なくとも同感知面部分では2本並列に対応させ、また、その幅が細い場合には、必要に応じて、一部にT字形の変形部を付加するなどして対応する面積を増大させるようにしても良い。
(変形例3)
また、一対の円盤状バイメタル25A、25Bの温度感知面が対応する面状ヒータの配列構成は、上記実施の形態のように、必ずしも左右のものが各々同一である必要はなく、例えば図12の5G、5Hに示すように、一方側が上記実施の形態と同様の2本平行に延びる面状ヒータを相互に円弧状に離間させた構成、他方側が全く形状の異なる3列の構成のものでも良い。
(変形例4)
また、以上の実施の形態の構成では、上記内容器3底部の空焚き検知手段として、円盤状のバイメタル25A、25Bを採用したが、同空焚き検知手段は、例えばサーミスタに変更することもできる。
【0066】
上記実施の形態の構成における内容器3底部の空焚き検知手段は、必ずしも上述のような円盤状バイメタル25A、25Bに限られるものではなく、例えばサーミスタなどの応答性の高い温度検知手段を採用することもできる。
【0067】
このように空焚き検知手段としてサーミスタを使用すると、検知手段自体を小型のもので構成することができるとともに、温度検知性能、応答性の高いものとすることができるので、局部加熱による泡自体が発生しにくい面状ヒータ間の狭い領域や、面状ヒータの局部加熱による泡の合体が生じにくい所望の部位に任意に設置することができるようになり、面状ヒータ部分で局部加熱が生じても、同局部加熱による泡の合体の影響を受けることなく、迅速かつ正確な底板温度の検出が可能となる。
【0068】
その結果、誤動作や誤った空焚き検知を確実に回避することができるだけでなく、必ずしも面状ヒータの幅を狭くしたり、配設間隔を広くしたりする必要がなくなるので、きわめて加熱効率の高いものとすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1は容器本体、2は電源台、3は内容器、3aはフランジ部、4は蓋体、5は湯沸しヒータ、6は電装部、7は湯注出口(下口部)、8は把手、10は電装部取り付け金具、11は給電カプラ、15は安全用サーモスタット、18a、18bは電源接点作動部材、19a、19bは第1の電源接点(固定側接点)、20a、20bは第2の電源接点(可動側接点)、21は受電カプラ、23A、23Bはバイメタル設置部、24A、24Bは電源端子設置部、25A、25Bは円盤状バイメタル、26a、26bはバネ部材、27a、27bはバイメタル支持部、32は底板、32bは球面部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12