(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347139
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】中空成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 49/02 20060101AFI20180618BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20180618BHJP
B29C 51/02 20060101ALI20180618BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20180618BHJP
B29C 51/30 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
B29C49/02
B29C49/48
B29C51/02
B29C51/10
B29C51/30
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-78706(P2014-78706)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-199241(P2015-199241A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大木 良介
【審査官】
中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−502405(JP,A)
【文献】
特表2013−521910(JP,A)
【文献】
特開2006−130306(JP,A)
【文献】
特開2013−049196(JP,A)
【文献】
特表2012−524557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00−51/46
A61M1/00−1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂シートと第2樹脂シートが部分的に溶着されてなる中空成形品であって、
第1樹脂シートと第2樹脂シートの間には流路が設けられ、
前記流路は、前記中空成形品の側面から突出し且つ先端に開口部を有する突出筒に連通されており、
前記突出筒は、第1樹脂シートと第2樹脂シートによって形成されている、中空成形品。
【請求項2】
前記流路は、大径部と、前記大径部よりも径が小さい小径部とが長手方向に沿って交互に設けられる撹拌促進部を備える、請求項1に記載の中空成形品。
【請求項3】
前記中空成形品を折曲げ可能にするヒンジ部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の中空成形品。
【請求項4】
前記流路は、機能部品を収容可能な機能部品収容部を備える、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の中空成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溝を形成した2枚の樹脂シートを貼り合わせることによって、流路を有する中空成形品を製造する方法が開示されている。この流路は、中空成形品の側面に設けられた開口部に連通されている。この開口部内には、注水管などの先端が挿入されるために、接続部での液漏れを防ぐために、開口部の内径を高精度に規制することが要求される。そして、特許文献1では、真空成形によって中空成形品を製造する際に、2枚の樹脂シートの間の、中空成形品の開口部に相当する位置にコアを配置することによって、中空成形品の開口部の内径を高精度に規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−49196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、中空成形品の開口部の内径を高精度に規制することが可能であるが、成形時に2枚の樹脂シートの間にコアを配置することが必要であるので、その分だけ、中空成形品の製造工程が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、流路に連通する開口部を有する中空成形品の製造工程の単純化を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば第1樹脂シートと第2樹脂シートが部分的に溶着されてなる中空成形品であって、第1樹脂シートと第2樹脂シートの間には流路が設けられ、前記流路は、前記中空成形品の側面から突出し且つ先端に開口部を有する突出筒に連通されており、前記突出筒は、第1樹脂シートと第2樹脂シートによって形成されている、中空成形品が提供される。
【0007】
本発明者は、前述の目的を達成するために、種々検討を重ねてきた。その結果、2枚の樹脂シートからなる中空成形品において、2枚の樹脂シートによって、流路に連通する開口部を有する突出筒を形成することを思い付いた。この突出筒の内径は高精度には規制されていないが、突出筒の外径は成形用の金型によって高精度に規制されるので、この突出筒を注水管などのチューブ内に挿入することによって、連結部での液漏れを防ぐことを可能にし、本発明の完成に到った。本発明の中空成形品を製造する際には、2枚の樹脂シートの間にコアを配置することが必要ではないので、製造工程を単純化することが可能である。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記流路は、大径部と、前記大径部よりも径が小さい小径部とが長手方向に沿って交互に設けられる撹拌促進部を備える。
好ましくは、前記中空成形品を折曲げ可能にするヒンジ部をさらに備える。
好ましくは、前記流路は、機能部品を収容可能な機能部品収容部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の中空成形品1の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2の中空成形品1の(a)左側面図、(b)右側面図、(c)A−A断面図である。
【
図4】
図2の中空成形品1の(a)底面図、(b)F−F断面図、(c)B−B拡大断面図、(d)C−C拡大断面図、(e)D−D拡大断面図、(f)E−E拡大断面図である。
【
図5】(a)〜(c)は、
図1の中空成形品1の製造工程を示し、(a)〜(b)は、樹脂シート3,4を金型11,12に密着させる前及び後の状態を示し、(c)は、金型の型締め後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の中空成形品について説明する。本実施形態の中空成形品の用途は特に限定されず、中空成形品内に液体を流通させる種々の用途に適用可能である。用途の一例は、集熱器や温水パネルである。以下に示す中空成形品の流路や突出筒の構成は一例であって、その数、配置、形状などは適宜変更可能である。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態の中空成形品1は、第1樹脂シート3と第2樹脂シート4が部分的に溶着されてなる。樹脂シート3,4の境界に形成されるパーティングラインPLは、本実施形態では、中空成形品1の厚さ方向の略中央に設けられる。樹脂シート3,4の間には液体が流通可能な流路5a,5b,5cが設けられている。
【0012】
中空成形品1には、中空成形品1を折曲げ可能にするヒンジ部13が2箇所設けられている。2つのヒンジ部13は、近接して略平行に設けられている。中空成形品1は、2つのヒンジ部13を挟む第1及び第2セクション1a,1bと、2つのヒンジ部13によって挟まれる第3セクション1cに区分される。流路5a,5bは、第1セクション1aに設けられ、流路5cは、第2セクション1bに設けられる。ヒンジ部13は、ヒンジ部13以外の部位よりも薄厚になっており、
図5に示す金型11,12を用いて樹脂シート3,4を成形する際に、金型11,12の対向する突起間の距離をヒンジ部13以外の部位よりも短く(好ましくは、成形前の樹脂シート3,4の合計厚さよりも短く)することによって形成することができる。ヒンジ部13で中空成形品1を折り畳むことによって中空成形品1をコンパクトにすることができる。また、ヒーターなどの熱交換対象物を挟んで中空成形品1を折り畳むことによって、熱交換効率を向上させることができる。
【0013】
流路5aは、中空成形品1の側面から突出する突出筒7a,7bに連通されている。突出筒7a,7bの先端には開口部が設けられている。このため、流路5a内への液体を供給するための供給チューブ(図示せず)と流路5aから液体を排出するための排出チューブ(図示せず)を、突出筒7a,7bに連結させることによって、流路5a内に液体を流通させることができる。供給チューブ及び排出チューブは、突出筒7a,7bを供給チューブ及び排出チューブの開口内に挿入することによって、突出筒7a,7bに連結させることができる。供給チューブ及び排出チューブを精度良く突出筒7a,7bに連結して液漏れを防ぐには、突出筒7a,7bの外径の寸法精度を高くする必要があるところ、突出筒7a,7bは、
図5に示す金型11,12を用いて樹脂シート3,4を成形して形成されるので、特別な操作を行うことなく、突出筒7a,7bの外径の寸法精度を高くすることができる。突出筒7a,7bの形状は、特に限定されず、供給チューブ及び排出チューブに連結可能な形状であればよい。一例では、
図4(c)に示すように、突出筒7aは、円筒部7a1の略先端の外面に突起7a2が設けられた構成であり、この突起7a2によってチューブが突出筒7aから抜けることが抑制される。また、
図4(d)に示すように、突出筒7bは、円筒部7b1の略先端の外面に段状突起7b2が設けられた構成である。段状突起7b2の段の高さは、突出筒7bの先端から離れるにつれて高くなっている。このような構成によれば、突出筒7bの外径が突出筒7bの先端から離れるにつれて大きくなるので、突出筒7bを挿入するチューブの内径が変化しても、突出筒7bを確実にチューブに取り付けることができる。
【0014】
流路5aは、第1セクション1a内で蛇行しており、流路5aの少なくとも一部には、流路5a内を流れる液体の撹拌を促進する撹拌促進部6が設けられる。撹拌促進部6は、大径部6aと、大径部6aよりも径が小さい小径部6bとが長手方向に沿って交互に設けられて構成されている。このような構成によって撹拌促進部6を流れる液体の流速が変動して撹拌が促進される。また、流路5aの側縁に沿って薄厚溶着部5dが設けられる。薄厚溶着部5dは、
図5に示す金型11,12を用いて樹脂シート3,4を成形する際に、金型11,12の対向する突起間の距離を、成形前の樹脂シート3,4の合計厚さよりも短くすることによって形成することができる。このような構成によって、樹脂シート3,4が確実に溶着され、流路5aからの液漏れを防ぐことができる。
【0015】
流路5bは、中空成形品1の側面から突出する一対の突出筒7eに連通されている。突出筒7eの先端には開口部が設けられている。突出筒7eは、突出筒7a,7bと同様に、供給チューブ及び排出チューブに連結させることができる。流路5bには、機能部品収容部9が設けられている。機能部品収容部9にはフィルタやスタティックミキサなどの機能部品を収容することができる。フィルタは、流路5bを流れる液体中の異物を除去することができ、スタティックミキサは、流路5bを流れる液体を撹拌することができる。機能部品は、
図5(c)に示すように金型11,12を閉じる前に、樹脂シート3,4の間の、機能部品収容部9に相当する部分に機能部品を配置することによって、中空成形品1内に内蔵させることができる。機能部品収容部9は嵩高いので、ヒンジ部13で中空成形品1を折り畳んだ時に、機能部品収容部9が第2セクション1bに干渉しないように、第2セクション1bの、機能部品収容部9に対向する部位には開口部11が設けられている。また、流路5aと同様に、流路5bの側縁に沿って薄厚溶着部5dが設けられている。
【0016】
流路5cは、中空成形品1の側面から突出する突出筒7c,7dに連通されている。突出筒7c,7dの先端には開口部が設けられている。突出筒7c,7dは、突出筒7a,7bと同様に、供給チューブ及び排出チューブに連結させることができる。突出筒7c,7dは、
図4(e)〜(f)に示すように、略円筒状の挿入部7c1,7d1と、挿入部7c1,7d1が挿入されるチューブの先端に当接する当接部7c2,7d2を備える。このような構成によれば、当接部7c2,7d2がチューブの先端に当接するまで挿入部7c1,7d1をチューブ内に挿入することによって、突出筒7c,7dの、チューブ内への挿入量を正確に規定することができる。流路5cは、第2セクション1b内で蛇行している。また、流路5aと同様に、流路5cの側縁に沿って薄厚溶着部5dが設けられている。
【0017】
次に、本実施形態の中空成形品1の製造方法について説明する。
まず、
図5(a)に示すように、中空成形品1の形状に応じた内面形状を有する一対の分割金型11,12を用意し、溶融状態の樹脂シート(パリソン)3,4を金型11,12の間に配置する。
【0018】
次に、
図5(b)に示すように、溶融状態の樹脂シート3,4を金型11,12側から吸引することにより、樹脂シート3,4を金型11,12に密着させる。
【0019】
次に、
図5(c)に示すように、金型11,12を型締めし、樹脂シート3,4を部分的に溶着させる。樹脂シート3,4は、例えば、中空成形品1の周縁部、開口部11の周縁部、流路5a〜5cの側縁に沿った薄厚溶着部5d、ヒンジ部13において溶着させる。これ以外の部分においては、樹脂シート3,4を溶着させてもよく、樹脂シート3,4の間を中空にしてもよい。また、金型11,12には、金型11,12の内部に形成されるキャビティ15を取り囲むようにピンチオフ部11b,12bが設けられており、樹脂シート3,4がピンチオフ部11b,12bによって挟まれて潰される。樹脂シート3,4のうちキャビティ15の外側にある部分がバリ16となり、ピンチオフ部11b,12bによって挟まれた部分がバリ16の切り取り線となる。本実施形態では中空成形品1の側面から突出する突出筒7a〜7eが設けられており、突出筒7a〜7eでの樹脂シート3,4の境界上にもバリ16が形成される。また、開口部11となる部位にもバリ16が形成される。
【0020】
次に、金型11,12を開いて成形品を取り出し、バリ16を除去して、
図1に示す中空成形品1が形成される。
【0021】
(別観点の発明)
本発明は、以下のように把握することもできる。上記の実施形態中の説明は、以下の観点の発明にも適用可能である。以下の観点の発明では、突出筒は必須ではない。
本発明の別観点によれば、第1樹脂シートと第2樹脂シートが部分的に溶着されてなる中空成形品であって、第1樹脂シートと第2樹脂シートの間には流路が設けられ、前記流路は、大径部と、前記大径部よりも径が小さい小径部とが長手方向に沿って交互に設けられる撹拌促進部を備える、中空成形品が提供される。この場合、流路を流れる液体の撹拌を促進することができる。
本発明のさらに別観点によれば、第1樹脂シートと第2樹脂シートが部分的に溶着されてなる中空成形品であって、第1樹脂シートと第2樹脂シートの間には流路が設けられ、前記中空成形品を折曲げ可能にするヒンジ部を備える、中空成形品が提供される。この場合、ヒンジ部で中空成形品を折り畳むことによって中空成形品をコンパクトにすることができる。また、ヒーターなどの熱交換対象物を挟んで中空成形品を折り畳むことによって、熱交換効率を向上させることができる。
本発明のさらに別観点によれば、第1樹脂シートと第2樹脂シートが部分的に溶着されてなる中空成形品であって、第1樹脂シートと第2樹脂シートの間には流路が設けられ、前記流路は、機能部品を収容可能な機能部品収容部を備える、中空成形品が提供される。この場合、機能部品収容部にフィルタやスタティックミキサなどの機能部品を収容することができる。
【符号の説明】
【0022】
1:中空成形品、3,4:樹脂シート、5a〜5c:流路、7a〜7e:突出筒、9:機能部品収容部、13:ヒンジ部