(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347176
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】吊り搬送用パレット
(51)【国際特許分類】
B65D 19/38 20060101AFI20180618BHJP
B65D 19/10 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
B65D19/38 C
B65D19/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-167130(P2014-167130)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-43932(P2016-43932A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100087527
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100106921
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 裕之
(72)【発明者】
【氏名】塙 裕彰
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智亮
(72)【発明者】
【氏名】三井 崇
(72)【発明者】
【氏名】岸本 学
(72)【発明者】
【氏名】衣川 洋史
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−086825(JP,U)
【文献】
特開2005−170443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/38
B65D 19/10
B65D 23/00
B65D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線環境下で搬送対象物を載置させて吊上げ装置で遠隔操作により吊って搬送させるための吊り搬送用パレットであって、
前記搬送対象物を載置させるパレット本体と、
前記パレット本体の一方の相対向する両側壁部に切り欠いて形成された開口と、
前記パレット本体の前記一方の相対向する両側壁部とは直交する方向に相対向する両側壁部の中央部外側に設けられた係合用軸と、
前記パレット本体に設けられた各係合用軸に、両端の根元部を係合させて、該各係合用軸を中心に起立姿勢と倒伏姿勢との間で回動できるようにしてある吊ベイルと、
前記吊ベイルの各根元部に長手方向に沿い設けられて、前記パレット本体の各係合用軸に嵌合させると、該根元部と係合用軸が該根元部の長手方向に相対変位させられるようにする長孔と、
前記吊ベイルの各根元部の内側に設けられたキーと、
前記パレット本体の前記各係合用軸がある両側壁部の外側の前記各係合用軸の上方位置に設けられたキー溝とを有し、
前記吊ベイルを起立姿勢にして前記長孔に沿い吊り上げたときに、前記キーを前記キー溝に係合させてロックされるようにした構成を有すること
を特徴とする吊り搬送用パレット。
【請求項2】
前記キー溝は、2つの停止板よりなり、1つの停止板は、前記係合用軸を中心とする円弧状のガイド面を有し、前記吊ベイルを前記起立姿勢と倒伏姿勢との間で回動させるときに前記キーが前記ガイド面に沿うようにした
請求項1記載の吊り搬送用パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線環境下で搬送対象物を載置させてクレーン等にて遠隔操作により吊って搬送させるために用いる吊り搬送用パレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線環境下で機器その他の搬送対象物を搬送する場合は、作業員が近付けないため、遠隔操作による場合が多い。
【0003】
かかる遠隔操作により搬送対象物を搬送する場合において、搬送対象物に吊ベイルが付設されているときは、この吊ベイルにクレーン等の吊上げ装置のフックを掛け、搬送対象物を直接吊って搬送することが行われている。
【0004】
搬送対象物に、このような吊ベイルが付いていない場合は、吊ベイルの付いたパレットに、搬送対象物を載置させ、パレットを吊って搬送させることが行われている。
【0005】
一方、放射線環境下で用いられるパレットは、載置された搬送対象物の取り出しの容易化、軽量化、載置物の外部からの視認の容易化、等の工夫がなされている。
【0006】
そのために、前記パレットは、比較的横方向に広くして高さを低くした扁平形状で蓋のない上方開放形のものとされている。
【0007】
かかるパレットを吊ベイルで2点吊り式とするときは、吊ベイルの支点(根元部)と搬送対象物重心の高さ方向距離が近い場合に安定せず、搬送時のパレットがふらつきや周辺機器との干渉により容易に傾き、搬送対象物を落下させるおそれがある。
【0008】
そこで、従来のパレットでは、一端側の2つのコーナ部と他端側の2つのコーナ部に別々の吊ベイルの支点を設けて、4点吊り式としたものが採用されていた。しかし、搬送対象物をパレットに出し入れする際には、2組の吊ベイルを横に展開させるが、そのとき、吊ベイルがパレットの側方に大きくはみ出すことになるため、広い占有スペースが必要とされている。
【0009】
放射線環境下では、スペースを十分にとれない場合があり、このようなところでは、吊ベイルの4点吊り式による搬送はできないという問題がある。
【0010】
このような観点から、従来では、搬送対象物をパレットに出し入れするところのスペースを十分にとれないところであっても、吊ベイルのための大きい占有スペースは必要とせず、且つ搬送の安定性が図れる2点吊り式のパレットが望まれているのが実状である。
【0011】
従来、2点吊り式で搬送の安定化を図るようにしたものとしては、飯盒を吊持するものがある。すなわち、飯盒本体は、両端側の側面に耳部が突設されている。金属線材が用いられている吊持用把手は、耳部に嵌めるもので、U字状に折り曲げられている。折り曲げられた吊持用把手の両端部は、それぞれ折り返されることによって長孔部を形成して、該長孔部に、飯盒本体両端部の耳部を遊嵌状態に嵌合させるようにしてある。前記長孔部の端部となる折り返し部には、長孔部よりも狭い幅としてある狭縮孔部が形成されていて、吊持用把手で飯盒本体を吊り上げたときに、前記狭縮孔部を耳部に係止させることで飯盒本体をぐらぐらさせることなく安定した状態で吊持するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0012】
しかし、特許文献1に記載されたものは、飯盒を対象としているもので、放射線環境下で使用されるものではなく、クレーン等の吊上げ装置で吊られるものではない。更に、特許文献1に記載されたものは、吊持用把手の両端部の長孔部を飯盒本体の両端側の耳部に嵌合させ、吊持するときに、長孔部を引き上げることにより耳部を狭縮孔部に係止させるものであるが、挟持による係止のみで、耳部と狭縮孔部の回転方向の相対変位を抑える停止手段はない。そのため、吊持中に、飯盒本体に外力が作用したときには、耳部と狭縮孔部が回転方向に相対変位するおそれがあり、飯盒本体が傾動するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭61−179926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、搬送対象物の出し入れのときに広いスペースを必要としない2点吊りとしても、吊ったときにパレット本体が傾くことがないようにする吊り搬送用パレットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決するために、請求項1に記載されているように、
放射線環境下で搬送対象物を載置させて吊上げ装置で遠隔操作により吊って搬送させるための吊り搬送用パレットであって、前記搬送対象物を載置させるパレット本体と、
前記パレット本体の一方の相対向する両側壁部に切り欠いて形成された開口と、前記パレット本体の
前記一方の相対向する両側壁部とは直交する方向に相対向する両側壁部
の中央部外側に設けられた係合用軸と、前記パレット本
体に設けられた
各係合用軸に、両端の根元部を係合させて、該
各係合用軸を中心に起立姿勢と倒
伏姿勢との間で回動できるようにしてある吊ベイルと、前記吊ベイルの各根元部に長手方向に沿い設けられ
て、前記パレット本体の
各係合用軸に嵌合させると、該根元部と係合用軸が該根元部の長手方向に相対変位させられるようにする長孔と、前記吊ベイルの各根元部の内側に設けられたキーと、前記パレット本体の
前記各係合用軸がある両側壁部の外側の前記
各係合用軸の上方位置に設けられたキー溝とを有し、前記吊ベイルを起立
姿勢にして前記長孔に沿い
吊り上げたときに、前記キーを前記キー溝に係合させてロックされるようにした構成とする。
【0016】
又、前記構成において、請求項2に記載されているように、前記キー溝は、2つの停止板よりなり、1つの停止板は、前記係合用軸を中心とする円弧状のガイド面を有し、前記吊ベイルを前記起立姿勢と倒
伏姿勢との間で回動させるときに前記キーが前記ガイド面に沿うようにした構成としてある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吊り搬送用パレットによれば、次の如き優れた効果を発揮する。
(1)
放射線環境下で搬送対象物を載置させて吊上げ装置で遠隔操作により吊って搬送させるための吊り搬送用パレットであって、パレット本体の一方の相対向する両側壁部に切り欠いて形成された開口があり、該パレット本体の前記一方の相対向する両側壁部とした直交する方向の相対向する両側壁部の
中央部外側に、係合用軸と、該係合用軸の上方位置にキー溝があり、吊ベイルの両端部の根元部には、前記係合用軸に係合する長孔と、前記キー溝に係合するキーが設けてあるので、吊ベイルによる2点吊りであっても、吊ベイルを起立させて長孔に沿い上方へ引き上げることにより、吊ベイルの根元部のキーを、パレット本体の側壁部のキー溝にロックでき、パレット本体が吊り上げられた状態で周辺機器との干渉があっても、パレット本体がバランスを崩して傾くことは皆無となる。
(2)上記(1)により、搬送中に搬送対象物を落下させることはなく、遠隔操作による搬送に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の吊り搬送用パレットの実施の一形態を示す斜視図である。
【
図4】
図3のB−B方向から見た状態の組付け前の説明用平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1乃至
図4は本発明の吊り搬送用パレットの実施の一形態を示すものである。
【0021】
本発明の吊り搬送用パレットIは、パレット本体1の2つの対向する側壁部に吊ベイル17の両端の根元部を回動可能に取り付け、且つ吊ベイル17を起立して引き上げたときに、吊ベイル17の根元部が横方向に移動できないようにロックされるようにしてある。
【0022】
パレット本体1は、平面形状が方形状とされていて、蓋のない上方開放型とされている。パレット本体1の金属製の底部2には、解体が容易なように、床板3は載せられているだけとされている。
【0023】
パレット本体1の底部2の辺縁部上には、床板3上に載置させた物品の見易さと軽量化のために骨組構造とされた高さの低い一対の側壁部4と5が相対向して組み立てられている。相対向する一対の側壁部5は、中央部分を切り欠いて開口6が形成されている。この開口6は、床板3上に載置させられている物品の取り出しを容易にするためのものである。
【0024】
骨組構造とされている側壁部4と5の金属製の支柱7と金属製の桟8は、底部2と金属製の横梁9に対してボルト締結とされている。
【0025】
このように、パレット本体1は、金属製で強度を有し、搬送中に周辺機器と干渉しても損傷しないようにしてあり、又、解体が容易にできるようにしてある。
【0026】
一対の側壁部4の各中央部、すなわち、横梁9の中央部の外側には、吊ベイル17を回転させ且つロックさせるベース板10が垂直状態に取り付けられている。
【0027】
各ベース板10の外側面には、中央部のやや下側に、先端部にねじ部12を有する係合用軸である円柱状の固定軸11が、直角方向に外方へ向けて固定されている。又、各ベース板10の外側面の上側には、固定軸11の直上方に固定軸11の径よりも大きい幅寸法のキー溝13を形成するように停止板14と15が外方へ突設されている。一方の停止板14は、直線状に上下方向に延びている。他方の停止板15は、停止板14との間でキー溝13を形成する上端部は上下方向に直線状に延びているが、途中位置から下端部までは固定軸11の軸心を中心とする円弧形状のガイド面16が形成されている。
【0028】
吊ベイル17は、倒れたときにパレット本体1の一対の側壁部4と他の側壁部5に沿ってこれらの外側に位置させられるように屈曲形成されている。
【0029】
吊ベイル17の根元部18には、長孔19とキー20が設けられている。
【0030】
長孔19は、根元部18の端部の長手方向に形成されており、長孔19がパレット本体1側の固定軸11に嵌合させられることにより吊ベイル17の根元部18がパレット本体1に装置されるようになっている。
【0031】
キー20は、円柱状のもので、キー溝13で停止板14と15でロックされる大きさとしてあり、根元部18の内側に内向きに取り付けられている。キー20の取付け位置は、根元部18の長孔19よりも反先端側とされている。これにより、キー20は、根元部18の長孔19の反先端側端部に固定軸11が位置するときに、停止板15のガイド面16に係合されるようになっている。又、キー20は、根元部18の長孔19の先端側端部に固定軸11が位置するときに、停止板14と15の間のキー溝13に係合されてロックされるようになっている。
【0032】
21はパレット本体1側の固定軸11に、吊ベイル17の根元部18の長孔19が嵌合された後に固定軸11先端部のねじ部12に螺合するナットで、根元部18が固定軸11から外れるのを防止するものである。22は、床板3に設けた孔であり、汚染度が少ないところ等で作業員が床板3を外すときに手を入れるためのものである。23はベース板10の補強部材、24は根元部18の補強部材である。
【0033】
本発明の吊り搬送用パレットは、前記した構成とされているので、パレット本体1を2点吊りするために、パレット本体1に吊ベイル17の根元部18を取り付けるときは、
図4に示すようにして行えばよい。パレット本体1側のベース板10の前面には、固定軸11が突出させてあるので、この固定軸11に、吊ベイル17の根元部18の長孔19を外方から矢印で示すように接近させて嵌める。同時に、キー20を停止板15のガイド面16の内側に位置させる。次いで、吊ベイル17の根元部18の外からナット21を固定軸11のねじ部12に嵌合させて、根元部18をベース板10側へ押し付けるようにしておく。
【0034】
このようにして吊ベイル17の根元部18が取り付けられたパレット本体1内には、搬送対象物を順位載置させて収容する。この際、吊ベイル17は、
図1に示すように倒してある。吊ベイル17は、両端部の根元部18を、パレット本体1の相対向する側壁部4のベース板10に、長孔19と固定軸11を介して取り付けた2点吊り式としてあるので、
図1に示すように倒してあっても、広いスペースを必要とすることはない。又、吊ベイル17が
図1のように倒れているときには、
図3に示すように、吊ベイル17の根元部18は長孔19の反先端側位置が固定軸11に嵌合した状態になっている。
【0035】
搬送対象物が収容されたパレット本体1は、遠隔操作でクレーン等の吊上げ装置で吊られて搬送される。吊ベイル17は、吊上げ装置のフックが掛けられて吊られると、
図1に示すように倒れた状態からパレット本体1側の固定軸11を中心に回動させられる。この際、キー20は、
図3に一点鎖線で示すように、停止板15の円弧状のガイド面16に沿って変位する。この円弧状のガイド面16は、固定軸11の軸心を中心とする半径の円弧としてあるので、キー20の移動を円滑にガイドできて、吊ベイル17の回動をより円滑に行わせることができる利点がある。
【0036】
吊ベイル17は、根元部18が起立状態になると、キー20は停止板15のガイド面16との係合が解除されて、2つの停止板14と15の間のキー溝13の下方に位置していることになる。続いて、吊ベイル17は、吊上げ装置で吊り上げられると、根元部18の長孔19と固定軸11との摺動により、根元部18は固定軸11と相対変位して長孔19の長さ分だけ引き上げられる。その結果、根元部18に固定されているキー20は、根元部18とともに上昇して、
図3に二点鎖線で示すように、キー溝13に入り、2つの停止板14と15の上端部により横方向の動きがロックされる。これにより、吊ベイル17は、一旦起立状態になると、倒れることがなくなる。
【0037】
このように根元部18がロックされた吊ベイル17で吊られたパレット本体1は、搬送対象物の搬送中に、周辺機器との干渉があっても傾くことはなく、搬送対象物が落下するおそれが未然に防止される。
【0038】
搬送対象物を収容したパレット本体1は、遠隔操作で搬送させられた後、目的の場所に吊り降されて床面上等に置かれると、起立状態の吊ベイル17は、吊上げ力の解消により自身の荷重で下降する。この際、キー20は、停止板14と15の上端部間のキー溝13には遊嵌状態で位置しているので、キー20は吊ベイル17の根元部18とともに容易に且つ迅速に下降させられる。そのため、吊ベイル17は、直ちに起立状態から
図1に示すように倒すことができる。なお、吊ベイル17は、2点吊りであるため、
図1に示すように倒しても、倒れた吊ベイル17が広いスペースを占有することはない。
【0039】
このように、本発明においては、パレット本体1を吊って搬送させた後に降してから、吊ベイル17を倒すまでに多くの時間を要しないので、搬送対象物の取り出しを迅速に行うことができることになる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、たとえば、吊ベイル17の根元部18に取り付けたキー20は、固定したものでもよいが、回転体を用いるようにしてもよい。ベース板10に取り付けてある固定軸11は、吊ベイル17の根元部18の長孔19と係合できるものであれば、どのような軸構造でもよく、又、軸部は固定の軸とその軸の周りを回転する回転体とからなる回転軸形式としたものでもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 パレット本体、4,5 側壁部、10 ベース板、11 固定軸(係合用軸)、13 キー溝、14,15 停止板、16 ガイド面、17 吊ベイル、18 根元部、19 長孔、20 キー