(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルム幅方向の物性分布に関し、40℃における単位断面積当たり収縮応力のフィルム幅方向成分の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が1.00〜1.30に設定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸微多孔フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の自動車用や家庭用のリチウムイオン電池の開発において、電池の大型化や生産量の増加に伴い、そのセパレータであるポリエチレン微多孔フィルムも幅方向および長手方向の大面積化が求められている。そこで、フィルムを不均一にさせる原因を究明し、幅方向や長手方向に大きなフィルムにおいても各種物性の均一性や、平面性に優れるポリエチレン微多孔フィルムを開発することが強く望まれていた。
【0006】
そこで本発明の課題は、大面積のフィルムにおいても電池のセパレータに求められる物性の均一性および平面性に優れるポリエチレン微多孔フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る二軸延伸微多孔フィルムは、300mm以上のフィルム幅を有する帯状ポリエチレン素材からなり、フィルム幅方向の物性分布に関し、厚みのムラが1.00μm未満に設定され、透気度のムラが50秒/100mL以下に設定されていることを特徴とするものからなる。
【0008】
このような本発明の二軸延伸微多孔フィルムは、フィルム長手方向に緩和処理された帯状ポリエチレン素材からなることが好ましい。具体的には、帯状ポリエチレン素材が工程全体で例えば0.5%〜8.0%、好ましくは1.0%〜5.0%、最も好ましくは1.5〜4.0%の緩和率にてフィルム長手方向に緩和処理されてなることが好ましい。また、緩和速度は、例えば0〜2.0%/秒、好ましくは0〜1.0%/秒である。このような緩和処理を施すことにより、広範囲にわたって物性が均一化され、平面性に優れた二軸延伸微多孔フィルムを得ることができる。
【0009】
特に、平面性に優れる本発明の二軸延伸微多孔フィルムは、自動車用や家庭用のリチウムイオン電池用途のセパレータに要望される、少なくとも片面への耐熱層の形成における加工性に優れる。すなわち、コーティング、蒸着やスパッタリングにより耐熱層を形成する際、平面性に優れるフィルムの使用により、耐熱層形成時の歩留まり率や生産性を向上させることができる。
【0010】
本発明の二軸延伸微多孔フィルムは、温度勾配に沿って移動しながら加熱されつつ延伸処理された帯状ポリエチレン素材からなることが好ましい。とくに、このような温度勾配に沿った移動加熱とフィルム長手方向への緩和処理を組み合わせることで、フィルム物性の均一化をより効果的に実現することが可能となる。温度勾配はフィルムへの熱伝達を均一化しやすくする。温度勾配は、延伸ゾーンが予熱ゾーンよりも少なくとも5℃高くなるように設定されることが好ましい。ここで予熱ゾーンとは、加熱されたオーブンの中でフィルムがMD方向およびTD方向のいずれにも延伸されない場所をいう。また、延伸ゾーンとは、加熱されたオーブンの中でフィルムがMD方向またはTD方向のうち少なくとも一方向に延伸される場所をいう。
【0011】
フィルム幅方向の物性分布に関し、40℃における単位断面積当たり収縮応力のフィルム幅方向成分の最大値と最小値の比(最大値/最小値=ムラ比率)が1.00〜1.30に設定されていることが好ましい。幅方向の収縮応力のムラ比率が上記範囲内であることにより、フィルム製造後に当該収縮応力が時間とともに解放された際、フィルムの平面性や物性の均一性を目標範囲に保持しやすくなる。幅方向の収縮応力のムラ比率は、さらに好ましくは、1.00〜1.25、最も好ましくは1.00〜1.20である。
【0012】
また、本発明の二軸延伸微多孔フィルムにおいて、40℃における単位断面積当たり収縮応力のフィルム幅方向成分が、1.20N/mm
2以下に設定されていることが好ましい。収縮応力のフィルム幅方向成分が当該範囲内に保持されることによって、フィルム幅方向の収縮変形が抑制されるので、いったん確保されたフィルム物性の均一性がフィルムの変形によって失われることが防止される。
【0013】
さらに、本発明の二軸延伸微多孔フィルムにおいて、フィルム幅方向の物性分布に関し、40℃における単位断面積当たり収縮応力のフィルム幅方向成分またはフィルム長手方向成分のムラが0.10N/mm
2未満に設定されていることが好ましい。例えば、製造された二軸延伸微多孔フィルムに残留する収縮応力を十分に除去することが難しい場合であっても、収縮応力の大きさをフィルム幅方向に沿ってムラなく均一な値に設定することで、フィルム物性の均一性を保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、厚みが均一であり、幅方向の収縮応力のムラが小さく、平面性に優れる二軸延伸微多孔フィルムを提供することが可能となる。従って、本発明に係る二軸延伸微多孔フィルムをセパレータの基材に使用してなる電池の製造工程において、コーティング層や蒸着層等の加工層を形成する際、基材が加熱されたり、外部応力がかかっても、収縮のムラを小さく抑えることができ、幅方向または長手方向の各位置での変形量が同一となる。そのため、加工性に優れ、形成した加工層の層厚みのムラや連弾状塗布筋等の欠点を生じにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施例に基づいて説明する。なお、所望の厚みのポリエチレン微多孔フィルムを得るために、特に断りのない限り、ポリマーの押出量を所定の値に調節した。
【0017】
(実施例1)
Mwが2.0×10
6、Mw/Mnが5であり、135℃の融点を有し、90℃付近にて粘弾性緩和現象が観測される超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)40重量%と、重量平均分子量(Mw)が5.6×10
5、分子量分布(Mw/Mn)が4.1であり、135℃の融点を有し、90℃付近にて粘弾性緩和現象が観測される、末端ビニル基が10000個の炭素原子当たり0.1個の高密度ポリエチレン(HDPE)60重量%とからなるポリエチレン組成物2を調製した。ポリエチレンの組成物2の融点Tmは135℃であり、90℃において粘弾性緩和現象が観測された。
【0018】
本実施態様の微多孔フィルムは、超高分子量ポリエチレンの含有量が大きい場合に有効である。超高分子量ポリエチレンの含有量は好ましくは2〜50重量%であり、より好ましくは5〜47重量%であり、さらに好ましくは10〜44重量%であり、最も好ましくは15〜40重量%である。本実施態様の製法により得られた微多孔フィルムは、優れた二次加工特性を有しながら、リチウムイオン電池のセパレータとして用いられた際に、当該電池に優れた安全性を付与することができる。
【0019】
なお、UHMWPEおよびHDPEのMwおよびMw/Mnは、Macromolecules,Vol.34,No.19,pp.6812−6820(2001)に記載の方法に従い、以下の条件でゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた(以下同じ)。
【0020】
・測定装置 :Polymer Laboratories製 PL−GPC220
・カラム :Polymer Laboratories製 Three PLgel Mixed−B Columns
・カラム温度 :145℃
・溶媒(移動相) :1,2,4−トリクロロロベンゼン(アルドリッチ社製、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエンを含む)
・溶媒流速 :0.5mL/分
・試料濃度 :0.25〜0.75mg/mL (溶解条件:160℃/2時間)
・インジェクション量 :300μL
・検出器 :ディファレンシャルリフラクトメーター
・検量線 :単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算係数を用いて作成した。
【0021】
図1に示す二軸延伸微多孔フィルムの製造工程に従って、原料としてのポリエチレン組成物2をポリエチレン溶液全重量に対して25重量%となるように二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50cst(40℃)]を75重量%となるように供給し、210℃および350rpmの条件で溶融混練して、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を二軸押出機に設けたTダイから押し出し、30℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。
【0022】
ここで、Tダイから押し出した溶融状態のポリマーを冷却ロールに接触させる際のドラフト比は2.0であった。ドラフト比とは、溶融状態におけるフィルムの変形率を意味し、下記の式1で求められる。
〔式1〕
ドラフト比=冷却ロールの速度/Tダイからの吐出直前のポリマー流速
【0023】
ドラフト比が高くなると、幅の変動が起こり、長手方向の厚みムラを引き起こす場合がある。本実施態様の微多孔フィルムにおいて、ドラフト比は1.0〜5.0であることが重要である。好ましくは1.5〜3.0であり、最も好ましくは1.7〜2.7である。
【0024】
得られたゲル状シートを、テンター延伸機により120℃で長手方向および幅方向ともに5倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸機内でフィルム幅を固定し、120℃の温度で10秒間、熱固定処理した(延伸処理工程21(1段目))。
【0025】
ここで、テンター延伸機のオーブンとして長手方向に等間隔に区切られた6ゾーンからなるオーブンを使用した。前段の二軸押出機側の2ゾーン(ゾーンNo.1、2)を110℃、次の2ゾーン(ゾーンNo.3,4)を115℃、後段の巻き取り機側の2ゾーン(ゾーンNo.5,6)を120℃とした。長手方向および幅方向の延伸処理はゾーン3〜4にて実施した。
【0026】
次いで延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、洗浄して得られたポリエチレン微多孔フィルム1を得た。
【0027】
図2に示すように、得られた洗浄直後のポリエチレン微多孔フィルム1を、加熱した2本のロール8、9で搬送する。その際に、2本目のロール9の周速を1本目のロール8の周速よりも1.5%低下させた。搬送された微多孔フィルム1を長手方向に1.5%緩和させながら、洗浄溶媒の塩化メチレンを乾燥させた(長手方向緩和処理工程22(1段目))。
【0028】
長手方向緩和処理工程22(1段目)までの各種条件を表1に示す。
【0030】
得られたポリエチレン微多孔フィルム1を、テンター延伸機により幅方向に1.4倍に延伸した後、そのままテンター延伸機内でフィルム幅を固定し、130℃の温度で20秒間熱固定処理した(延伸処理工程23(2段目))。
【0031】
ここで、テンター延伸機のオーブンとして長手方向に等間隔に区切られた8ゾーンからなるオーブンを使用した。前段の二軸押出機側の1ゾーン(ゾーンNo.7)を115℃、次の2ゾーン(ゾーンNo.8,9)を125℃、後段の巻き取り機側の5ゾーン(ゾーンNo.10〜14)を130℃とした。幅方向の延伸処理はゾーンNo.8〜9にて、固定処理はゾーンNo.10〜12にて実施した。
【0032】
さらに、ゾーンNo.13〜14のオーブン内では、微多孔フィルム1をクリップで把持した状態で、幅方向に3%弛緩させる緩和処理を施した(幅方向緩和処理工程)。
【0033】
図3に示すように、延伸処理工程23(2段目)の後にポリエチレン微多孔フィルム1を90℃に加熱された2本以上のロール(18、19、20)で搬送し、ロール19、20間の周速差を利用して熱緩和処理を施した。ロール19、20による熱緩和処理は、巻き取り機側のロール20の周速を二軸押出機側のロール19の周速に比べて遅くすることで、ロール間で微多孔フィルム1を長手方向の緩和率1.5%、長手方向の緩和速度0.8%/秒で緩和させた(長手方向緩和処理工程24(2段目))。
【0034】
延伸処理工程23(2段目)から長手方向緩和処理工程24(2段目)までの各種条件を表2に示す。
【0036】
次いで、ポリエチレン微多孔フィルム1を室温まで冷却して、巻き取り機のロールに巻き取り、厚さ9μmのポリエチレン微多孔フィルムを製造した。
【0037】
得られたポリエチレン微多孔フィルムのロールを500mm幅に裁断し、幅方向のサイズが500mm、長手方向の巻き長が1000mのポリエチレン微多孔フィルムのロールを得た。
【0038】
得られた微多孔フィルムは、平面性、寸法安定性および形状安定性に優れていた。微多孔フィルムをさらに加工する際に、微多孔フィルムにコーティング層を形成した場合に、塗布ムラの欠点による製品の不良率が小さかった。
【0039】
得られた微多孔フィルムの各種物性を表3に示す。
【0041】
(実施例2〜10)
表1、2に記載したように製造条件を変化させて、表3に記載したようにフィルム物性を変化させた点以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン微多孔フィルムを製造し、評価した。
【0042】
(比較例1)
表1、2に記載したように、テンター延伸機のオーブンのゾーン間で温度勾配が無い点以外は実施例1と同様の方法により、ポリエチレン微多孔フィルムを製造し、評価した。
【0043】
(比較例2)
表1、2に記載したように、1段目および2段目の長手方向緩和処理を実施しなかった点以外は実施例1と同様の方法によりポリエチレン微多孔フィルムを製造し、評価した。
【0044】
[物性値の測定方法]
次に、微多孔フィルムの物性値の測定方法を説明する。
【0045】
(a)ガーレー透気度
ガーレー透気度は、JIS P 8117(1998)に準拠して、23℃、65%RHにて測定した(単位:秒/100mL)。同じ試験片について同様の測定を5回行い、得られたガーレー透気度の平均値を当該試験片のガーレー透気度とした。この際、ガーレー透気度の平均値が1000秒/100mLを超えるものについては実質的に透過性を有さないものとみなし、無限大(∞)秒/100mLとした。
【0046】
測定対象の微多孔フィルムについて、フィルム幅方向の最端部の位置から幅方向に6cmおきに測定し、その平均値を当該微多孔フィルムのガーレー透気度とした。また、幅方向における透気度の測定結果の最大値と最小値の差を透気度のムラとした。
【0047】
(e)微多孔フィルムの厚み(μm)
微多孔フィルムの任意の位置から長手方向5cm、幅方向5cmの正方形に切り出し試験片を作製する。試験片の任意の5点を厚み測定機により測定し、平均することにより、当該試験片の厚みとした。同一のポリエチレン微多孔フィルムについて、10個の試験片を用意し、測定を行った。試験片10個の全ての平均値を微多孔フィルムの厚みとした。
厚み測定機はミツトヨ(Mitsutoyo)製ライトマチックVL−50Aを用いた。
【0048】
(幅方向厚みムラ)
微多孔フィルムの幅方向について、フィルムの片方の端部から他方の端部までを測定ピッチ1cmでミツトヨ(Mitsutoyo)製ライトマチックVL−50Aによりポリエチレン微多孔フィルムの厚みを測定した。測定結果の(最大値)−(最小値)の値を幅方向厚みムラとした。
【0049】
(長手方向の厚みムラ)
微多孔フィルムの長手方向の50mについて、長手方向の片側端部から他方の端部までを測定ピッチ1cmでミツトヨ(Mitsutoyo)製ライトマチックVL−50Aによりポリエチレン微多孔フィルムの厚みを測定した。測定結果の(最大値)−(最小値)の値を長手方向厚みムラとした。
【0050】
(f)実効延伸倍率
スリット状ダイから押し出し、金属ドラムにキャストしてシート状に冷却固化した未延伸のポリエチレン微多孔フィルムに、長さ1cm四方の升目をそれぞれの辺が微多孔フィルムの長手方向、幅方向に平行になるように刻印した後、延伸・巻き取りを行い、得られたポリエチレン微多孔フィルムの升目の長さ(cm)を長手方向に10升目分、幅方向に10升目分測定し、これらの平均値をそれぞれ長手方向・幅方向の実行延伸倍率とした。
【0051】
(h)塗布欠点
まず、微多孔フィルムに以下のようにコーティング層を形成する。
【0052】
[スラリー1および2の作製]
ポリビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PvdF−CTFE)高分子をアセトンに5重量%加えた後、50℃の温度で12時間以上溶解させて高分子溶液を得た。この高分子溶液にBaTiO
3粉末をBaTiO
3/PvdF−CTFE=90/10(重量%)になるように加え、12時間以上ボールミル法を用いてBaTiO
3粉末を粉砕および分散させてスラリー1を得た。このようにして得られたスラリー1のBaTiO
3粒径は、ボールミル法に用いられるビーズのサイズ(粒度)、およびボールミルの適用時間で制御し、400nmにて粉砕してスラリー2を得た。
【0053】
[スラリー3の作製]
Al
2O
3粉末を10重量%ジメチルメチルホスホネート(DMMP)のアセトン溶液に入れて24時間25℃で撹拌して改質する。ポリビニレンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF−CTFE)高分子をアセトンに5重量%添加した後、50℃で12時間溶解させて高分子溶液を製造した。この高分子溶液にAl
2O
3粉末を高分子溶液:Al
2O
3=90:10(重量比)になるように添加して、15時間ボールミル法を利用して、Al
2O
3粉末を粉砕してスラリー3を製造した。
【0054】
[スラリー4の作製]
スラリー2とスラリー3をそれぞれ同体積ずつ混合し、十分撹拌してスラリー4を製造した。このようにして得られたスラリー4をディップ・コート法を用いて、ポリエチレン微多孔フィルムに塗布した。コーティングされた層の厚さは3μmであった。
【0055】
次に得られたコーティング層を有するポリエチレン微多孔フィルムから長さ1mのポリエチレン微多孔フィルムを切り出し、暗室内で垂直方向に垂らした。次に、微多孔フィルム背面の全面に光沢の無い黒色の布を配置し、片方の面から三波長昼白色蛍光灯(FL20SS EX−N/18P:パナソニック社製)を用いてポリエチレン微多孔フィルム面に対し約10°から45°の範囲で該蛍光灯の角度を変えながらポリエチレン微多孔フィルム正面から観察し、評価面積1m
2について長さ10mm以上の塗布筋欠点を検出し、マーキングを行った。なお、ポリエチレン微多孔フィルムの幅が1m未満であっても評価面積が1m
2であればよい。
【0056】
なお、筋欠点の長さは定規を用いて直接ポリエチレン微多孔フィルムに接触しない程度に近づけて測定した。さらに評価する面と反対側にブロムライト(VIDEO LIGHT VLG301 100V 300W 株式会社エル・ピー・エル製)を用いて前記と同様に約10°から45°の範囲で照射し、ブロムライト照射面側(先に評価した面と反対側)から観察し、塗布筋欠点を抽出し、マーキングを行った。この時、光沢の無い黒色の布は観察者と反対側に配置した。なお、ポリエチレン微多孔フィルムの幅方向に対し同一位置になる筋は一本と数えるが、100mm以上離れている場合は別個の筋として数えた。このマーキングした塗布筋欠点存在部分について、本明細書でいう連弾状塗布筋欠点と、塗布液中に存在する粒子凝集物が微多孔フィルム上で密集し、さらに筋状に点在した粗大塗布筋欠点とを区別するために、Micromap社製非接触3次元形状測定装置TYPE550を用い、1664×1248μmの視野の表面形状を以下の測定条件で測定した。
【0057】
[測定条件]
・測定モード :waveモード
・対物レンズの倍率:10倍
・使用レンズ:0.5倍ズームレンズ
【0058】
次いで、等高線表示モードにて、測定面が高さによって色分けされた画像を表示させた。この時、表面形状のうねりを除去するため面補正(4次元関数補正)を行った。等高線表示モードでは、測定範囲内の平均高さを0nmとし、高さ最高値を100nm、高さ最低値を−100nmに設定し、高さ100nm以上の突起部分が赤色に表示されるように表示させた。次いで、同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが突起の最高高さ位置を通るように移動させた。プロット画面では、高さのスケールを突起全体が表示されるように調整した。プロット画面で2本のカーソルを突起の両端に合わせ、突起の大きさ(長径)を読み取った。次いで、一本のカーソルを突起の最高点に、もう一本のカーソルを高さ0nm(=測定範囲内の平均高さ)に合わせ、突起高さを求めた。さらに測定位置を、測定した筋の延長方向にずらし、同一といえる筋の判定長が10mmとなるまで、上述の測定を繰り返した。ここで、連弾状塗布筋の幅方向に対し0.5mm以内の幅に並ぶ核は同一筋の核として数えた。
【0059】
図4は、微多孔フィルム表面の非接触3次元形状測定により得られる画像であり、フィルム表面の凸凹が立体的に見えるように表示されている。円で囲った部分が核である。また
図5は、核のある部分の断面プロファイルである。微多孔フィルム表面の平均高さをとった場合に、平均高さよりも高さが高くなった部分(凸部)が存在する。具体的には、多くの場合、
図4及び
図5が示すように、凸部は、鋭いピーク形状とそのまわりに山のすそののように広がる小高い部分は主に樹脂成分からなっている。Ddで表される核の長径とは、この鋭いピーク形状のピーク幅(すなわち、微多孔フィルム表面の平均高さを基準として一つの凸部の高さを、凸部の両端から見ていった場合に、高さが急激に増大する二つの点(二つの変曲点)の間の距離)であって、かつ、その長さがその一つの凸部のピーク形状部において最大となるものとして定義される値である(
図5参照)。Dtで表される核の最大高さとは、核の高さの最大値と微多孔フィルム表面の平均高さの差によって定義される値である(
図5参照)。
【0060】
上述の測定の結果、以下の式4および式5に定義される大きさの核を有する欠点が下記式6および式7に定義される状態で連なった塗布筋欠点を「連弾状塗布筋欠点」と判定し、微多孔フィルム1m
2当たりのその数を数え、そのポリエチレン微多孔フィルムの連弾状塗布筋欠点数とした。
【0061】
〔式4〕
10μm≦Dd≦35μm
〔式5〕
100nm≦Dt≦800nm
〔式6〕
n≧2
〔式7〕
t≧10
【0062】
Dd:連弾状欠点部の一つ核の長径
Dt:連弾状欠点部の一つの核の最大高さ
n:連弾状塗布筋の欠点1mm当たりに存在する、式4および式5で定義される大きさの核の数
t:連弾状塗布筋欠点の長さ[mm]
【0063】
また、微多孔フィルムの長手方向に沿って100m間隔で1m
2当たりの連弾状筋状欠点を評価する場合は、実施例で得られた微多孔フィルムロールについて、巻出し後10mの部分、100mの部分、200mの部分・・・のように、100m間隔で10箇所について筋状欠点の抽出を行い、連弾状塗布筋欠点の数を数えた。
【0064】
10箇所の平均値として、連弾状塗布筋欠点数が50本/m
2以下の場合をA、連弾状塗布筋欠点数が50本〜80本/m
2の場合をB、連弾状塗布筋欠点数が80本より大きい場合をCとして評価した。
【0065】
(j)収縮応力
微多孔フィルムから切り出した4mm×50mmの短冊状試験片を熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 TMA/SS6000)に10mmのチャック間距離でセットし、チャック間距離を保持しながら、5℃/minの速度で昇温し、チャック間距離にかかる張力の変化を測定した。23℃における張力を0N(基準)とした。
【0066】
23℃からフィルムの融点までで加熱したときに発生する収縮力を測定し、温度に対する収縮応力の変化をプロットし、40℃における熱収縮応力の値を求めた。
【0067】
測定対象の微多孔フィルムについて、幅方向に6cmおきに測定し、その平均値を当該微多孔フィルムの収縮応力とした。
【0068】
また、幅方向における収縮応力の測定結果の最大値と最小値の差を収縮応力ムラとした。