(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように接続先基地局を決定する際に通信フレームのRSSIを用いる技術によれば、複数の基地局のうちの特定の基地局に多くの端末が接続することが生じ得る。その場合、特定の基地局又は特定の通信チャネルの通信負荷が集中し、通信のボトルネックが生じる。
【0008】
また、複数の基地局の間で制御情報をやりとりして端末の接続先基地局を切り替える技術は、当該機能を備えている基地局及び端末でないと実現しないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、より良好に無線通信することができる基地局を決定する無線通信端末等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信端末は、前記無線通信端末との通信リンクを確立可能な複数の基地局を示す基地局情報を取得する基地局情報取得部と、電波の状況を示す状況情報を取得する状況取得部と、前記複数の基地局のうち前記無線通信端末が通信リンクを確立する接続先基地局を決定する決定部とを備え、前記決定部は、前記状況取得部が取得した前記状況情報に基づいて、確立する前記通信リンクにおける無線通信の品質がより高いと推定される基地局を、より優先的に、前記接続先基地局として決定する。
【0011】
これによれば、無線通信端末は、電波の状況を取得した上で、取得した電波の状況から推定される品質が高い通信リンクを決定する。このように、無線通信端末が取得した電波の状況を用いることで、他の無線通信装置の通信の状況、又は、無線通信ではない電波の状況を考慮して、無線通信端末が通信リンクを決定する。よって、無線通信端末は、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0012】
また、前記無線通信端末は、さらに、電波を受信する無線通信部を備え、前記状況取得部は、前記無線通信部が受信した電波である受信電波を解析することで前記状況情報を取得するとしてもよい。
【0013】
これによれば、無線通信端末は、自装置が備える無線通信部により電波を取得する。これにより、より正確に、無線通信端末における電波の状況を取得することができ、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0014】
また、前記状況取得部は、前記受信電波における通信チャネルごとの帯域使用率を、前記状況情報に含まれる情報として算出し、前記決定部は、前記帯域使用率がより小さい通信チャネルで通信リンクを確立可能な基地局を、より優先的に、前記接続先基地局として決定するとしてもよい。
【0015】
これによれば、無線通信端末は、通信チャネルの帯域使用率を用いて、より具体的に、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。通信帯域の使用率がより小さい通信チャネルで新たな通信リンクを確立すれば、より多くの通信帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されるからである。
【0016】
また、前記状況取得部は、前記受信電波のスペクトル解析を行うことで、通信チャネルごとの受信電波強度を、前記状況情報に含まれる情報として算出し、前記決定部は、前記スペクトル解析の結果に基づいて、受信電波強度がより小さいチャンネルで通信リンクを確立可能な基地局を、より優先的に、前記接続先基地局として決定するとしてもよい。
【0017】
これによれば、無線通信端末は、受信電波のスペクトル解析結果を用いて、より具体的に、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。スペクトル解析結果における受信電波強度がより小さい通信チャネルで新たな通信リンクを確立すれば、よりノイズが少ない無線通信を行うことができ、より高い品質の無線通信ができると推定されるからである。
【0018】
また、前記状況取得部は、前記受信電波に含まれる通信フレームのヘッダを解析することで、前記複数の基地局のそれぞれと、当該基地局と無線通信している端末との対応付けを、前記状況情報に含まれる情報として算出し、前記決定部は、無線通信している端末数がより少ない基地局を、より優先的に、前記接続先基地局として決定するとしてもよい。
【0019】
これによれば、無線通信端末は、基地局の端末接続台数を用いて、より具体的に、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。無線通信している端末数がより少ない基地局との間で新たな通信リンクを確立すれば、より多くの帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されるからである。
【0020】
また、前記決定部は、前記状況情報が複数の情報を含む場合には、前記複数の情報のそれぞれに所定の重みをつけて、前記複数の情報のそれぞれから総合的に、前記接続先基地局を決定するとしてもよい。
【0021】
これによれば、無線通信端末は、複数の情報を総合的に判断して、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。
【0022】
また、前記無線通信端末は、さらに、前記決定部が決定した前記接続先基地局と前記通信リンクを確立し、確立した前記通信リンクを維持する通信制御部を備え、前記基地局情報取得部は、さらに、前記通信制御部が前記通信リンクを維持しているときに、新たな基地局情報を取得し、前記状況取得部は、さらに、前記通信制御部が前記通信リンクを維持しているときに、新たな状況情報を取得し、前記決定部は、さらに、前記新たな基地局情報と、前記新たな状況情報とを用いて、新たな接続先基地局を決定し、前記通信制御部は、さらに、確立した前記通信リンクを切断し、かつ、前記新たな接続先基地局と通信リンクを確立するとしてもよい。
【0023】
これによれば、無線通信端末は、基地局との通信リンクを確立し維持しているときに、新たな基地局との新たな通信リンクであって、取得した電波の状況から推定される品質が高い通信リンクを決定する。これにより、無線通信端末は、通信リンクを確立中に、より良好に無線通信することができる基地局を決定し、決定した基地局への切り替え(ハンドオーバ)をすることができる。
【0024】
また、前記状況取得部は、他の無線通信端末から通信により前記状況情報を取得するとしてもよい。
【0025】
これによれば、無線通信端末は、他の無線通信端末が備える無線通信部により取得した電波の状況を取得する。これにより、状況取得部による解析処理のように処理負荷の高い処理を行う機能を搭載しない無線通信端末が、他の無線通信端末の電波の状況を用いて、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0026】
また、前記無線通信端末は、さらに、前記無線通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、前記状況取得部は、他の無線通信端末から通信により前記状況情報とともに、前記他の無線通信端末の位置情報を取得し、前記決定部は、前記状況取得部が、複数の前記他の無線通信端末から前記状況情報を取得した場合には、(i)前記位置情報取得部が取得した位置情報と前記他の無線通信端末の位置情報とを比較し、(ii)複数の前記他の無線通信端末のうち前記無線通信端末に、より近い無線通信端末から取得した前記状況情報をより優先的に用いて、前記接続先基地局を決定するとしてもよい。
【0027】
これによれば、無線通信端末は、複数の他の無線通信端末から電波の状況を取得する場合に、複数の他の無線通信端末のうち無線通信端末により近い位置に存在する無線通信端末からの状況情報を用いる。よって、無線通信端末は、自装置に近い電波の状況を用いて、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る無線通信端末は、前記無線通信端末との通信リンクを確立可能な複数の基地局を示す基地局情報を取得する基地局情報取得部と、電波の状況を示す状況情報を取得する状況取得部と、前記状況取得部が取得した前記状況情報を他の無線通信端末に提供する状況提供部とを備える。
【0029】
これによれば、無線通信端末は、他の無線通信端末に電波の状況を提供することで、当該他の無線通信端末による基地局の決定をさせることができる。
【0030】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、無線通信端末の制御方法であって、前記無線通信端末との通信リンクを確立可能な複数の基地局を示す基地局情報を取得する基地局情報取得ステップと、電波の状況を示す状況情報を取得する状況取得ステップと、前記複数の基地局のうち前記無線通信端末が通信リンクを確立する接続先基地局を決定する決定ステップとを含み、前記決定ステップでは、前記状況取得ステップで取得した前記状況情報に基づいて、確立する前記通信リンクにおける無線通信の品質がより高いと推定される基地局を、より優先的に、前記接続先基地局として決定する。
【0031】
これによれば、上記無線通信端末と同様の効果を奏する。
【0032】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上記の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0033】
これによれば、上記無線通信端末と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る無線通信端末は、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0037】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0038】
なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態において、より良好に無線通信することができる基地局を決定する端末について説明する。より具体的には、本実施の形態に係る端末は、自装置が受信する電波の状況に基づいて、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。
【0040】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システム40の構成図である。
【0041】
図1に示されるように、無線通信システム40は、基地局A1及びA2と、LAN30(Local Area Network)と、端末1とを備える。
【0042】
基地局A1は、無線通信インタフェース(以降、「無線IF」ともいう)を有する無線基地局装置(いわゆるアクセスポイント)である。基地局A1は、無線IFを利用して所定の通信チャネルで端末1との間で通信リンクL1を確立し、無線通信を行うことができる。また、基地局A1は、有線通信インタフェース(以降、「有線IF」ともいう)を有し、当該有線IFを利用してLAN30と接続されている。基地局A1は、LAN30と端末1との間でやりとりされる通信フレームを相互に転送する。
【0043】
具体的には、基地局A1は、LAN30に接続された通信装置等から送信された、端末1宛の通信フレームを有線IFにより受信し、受信した通信フレームを無線IFにより端末1に送信する。また、基地局A1は、端末1から送信された、LAN30に接続された通信装置等宛の通信フレームを無線IFにより受信し、受信した通信フレームを有線IFによりLAN30に送信する。なお、無線通信は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格などに適合する無線LANにより実現される。
【0044】
なお、基地局A1は、上記有線IFの代わりに、上記無線IFとは別の無線IFを有し、上記有線IFの代わりに用いることも可能である。また、基地局A1は、上記有線IFの機能を上記無線IFの一機能として実現する、つまり、有線IFの機能を含めた無線IFとして実現することも可能である。
【0045】
基地局A2は、無線IFを有する無線基地局装置である。基地局A2は、無線IFを利用して所定の通信チャネルで端末1との間で通信リンクL2を確立し、無線通信を行う。また、基地局A2は、有線IFを有し、当該有線IFを利用してLAN30と接続されている。基地局A2は、基地局A1同様、LAN30と端末1との間でやりとりされる通信フレームを相互に転送する。
【0046】
なお、基地局A1の無線IFと、基地局A2の無線IFとは、使用する通信チャネルが同一であってもよいし、異なるものであってもよい。以降では、基地局A1の無線IFの通信チャネルがチャネル1であり、基地局A2の無線IFの通信チャネルがチャネル6であるというように、使用する通信チャネルが異なる場合を例として説明する。
【0047】
LAN30は、基地局A1と基地局A2との通信に用いられる通信ネットワーク(ローカルエリアネットワーク)である。LAN30には、さらに、他の通信装置、及び、他のネットワークが接続されてもよい。なお、LAN30は、例えば、IEEE802.3規格などに適合する有線LANにより実現される。
【0048】
端末1は、無線IFを有する通信装置である無線通信端末である。端末1は、基地局A1との間で通信リンクL1を確立し、又は、基地局A2との間で通信リンクL2を確立し、通信リンクL1又はL2、及び、基地局A1又はA2を介してLAN30に接続された通信装置などと通信する。また、端末1は、1つの無線IFを有しており、基地局A1又はA2のいずれか一方との間で通信リンクを確立する。端末1は、例えば、PC(Personal Computer)、携帯電話端末、スマートフォン(高機能携帯電話端末)、タブレット等である。
【0049】
本実施の形態において、端末1が基地局A1又はA2の通信状況を取得し、取得した通信状況に基づいて、基地局A1又はA2のどちらと通信リンクを確立するかを決定する方法について説明する。なお、上記のように通信リンクを確立することは、例えば、端末1が基地局A1又はA2のいずれとも通信リンクを確立していない状態に行われる。また、端末1が基地局A1又はA2のいずれかと通信リンクを確立している状態において、当該通信リンクを維持したまま行われる場合もある。このように通信リンクを維持したまま新たな基地局を決定することで、端末1は、接続先基地局を切り替える(ハンドオーバする)ことができる。
【0050】
図2は、本実施の形態に係る端末1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0051】
図2に示されるように、端末1は、CPU101(Central Processing Unit)と、ROM102(Read Only Memory)と、メインメモリ103と、ストレージ104と、WNIC105(Wireless Network Interface Card)とを備える。
【0052】
CPU101は、ROM102に格納された制御プログラムを実行するプロセッサである。
【0053】
ROM102は、制御プログラム等を保持する読み出し専用記憶領域である。
【0054】
メインメモリ103は、CPU101が制御プログラムを実行するときに使用するワークエリアとして用いられる揮発性の記憶領域である。
【0055】
ストレージ104は、制御プログラム、又は、画像データなどを保持する不揮発性の記憶領域である。
【0056】
WNIC105は、基地局A1又はA2との間で無線通信を行う無線通信インタフェースである。なお、WNIC105は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格等に適合する無線LANの通信インタフェースである。
【0057】
図3は、本実施の形態に係る端末1の機能構成を示すブロック図である。
【0058】
図3に示されるように、端末1は、無線通信部111と、通信制御部112と、基地局情報取得部113と、状況取得部114と、決定部115とを備える。
【0059】
無線通信部111は、電波の送受信を行うアンテナ回路及びその周辺回路であり、物理層(PHY)の処理を行う処理部(又は回路)である。無線通信部111は、周囲に伝搬している電波を受信し、受信した電波(以降、「受信電波」ともいう)の振幅の変化を受信信号として取得する。また、無線通信部111は、通信制御部112から通信フレームを受信した場合には、受信した通信フレームを含む送信信号を生成し、生成した送信信号を電波として出力する。無線通信部111は、WNIC105の一機能として実現される。
【0060】
通信制御部112は、端末1による無線通信に関わる通信フレームの送受信、及び、その制御を行う処理部であり、データリンク層又はMAC(Media Access Control)層の処理を行う処理部である。通信制御部112は、無線通信部111が通信フレームを含む電波を受信した場合に、受信した電波から生成される受信信号を取得し、取得した受信信号から通信フレームを復元する。また、端末1が生成する他の通信装置宛の通信データを、端末1の処理部(不図示)から取得した場合には、当該通信データを含む通信フレームを生成し、無線通信部111に送信する。また、通信制御部112は、送信する通信フレームの送信タイミングを制御する。通信制御部112は、WNIC105の一機能として実現される。
【0061】
なお、通信制御部112は、無線通信部111を介して受信する通信フレーム又は当該通信フレームに関する情報の、一部又は全部を、フレームキャプチャログ(以降、「キャプチャログ」ともいう)としてストレージ104に記憶してもよい。そして、上記通信フレームが、後に、基地局情報取得部113及び状況取得部114に利用される際には、ストレージ104に記憶された通信フレームが利用されるようにしてもよい。ここで、通信フレームに関する情報とは、当該通信フレームの受信時刻、送信元アドレス、宛先アドレス、通信チャネル、RSSI、フレーム長などの情報を含む。また、ストレージ104に記憶される一部とは、通信フレームのうち、送信元等について特定の条件に適合する通信フレームを抽出したもののことである。
【0062】
基地局情報取得部113は、端末1が通信リンクを確立することができる基地局を示す情報を取得する処理部である。基地局情報取得部113は、通信制御部112が受信した通信フレームの送信元MACアドレス又は宛先MACアドレスに基づいて、基地局のそれぞれを示す情報である基地局情報を取得する。基地局情報取得部113は、CPU101、ROM102及びメインメモリ103等により実現される。
【0063】
以降、MACアドレスのことを単にMACということもある。なお、MACアドレスとは、一般に、12桁の16進数で、「11:22:33:aa:bb:cc」というように表現されるものである。
【0064】
基地局情報取得部113は、通信制御部112が受信する複数の通信フレームに基づいて基地局情報を取得する。その取得方法は、さまざまな方法があり得る。例えば、基地局情報取得部113は、通信制御部112が受信する複数の通信フレームの送信元MACと宛先MACとに基づいて基地局情報を取得する。また、基地局情報取得部113は、予めストレージ104が記憶している基地局情報を読み出す、又は、他の装置が保有している基地局情報を取得することで、基地局情報を取得する。
【0065】
状況取得部114は、端末1が受信する電波の状況(以降、電波状況ともいう)を示す状況情報を取得する処理部である。状況取得部114が取得する状況情報は、端末1と通信可能な基地局である基地局A1及びA2による無線通信の状況を含む。また、状況情報は、無線通信の電波ではない、他の電波の状況をも示す情報である。他の電波とは、基地局A1及びA2による無線通信とは異なる無線通信による電波、電子レンジ等から発生する電波、又は、その他の装置など周囲から到来する電波のことである。状況取得部114は、無線通信部111及び通信制御部112から各種情報を取得し、取得した各種情報に基づいて状況情報を生成することで取得する。状況情報の詳細については、後で詳しく説明する。状況取得部114は、CPU101、ROM102及びメインメモリ103等により実現される。
【0066】
状況取得部114は、信号解析部121と、通信解析部122とを有する。
【0067】
信号解析部121は、無線通信部111が受信した電波に基づいて生成された受信信号を取得し、取得した受信信号を解析する処理部である。信号解析部121は、具体的には、無線通信部111から取得した受信信号をスペクトル解析することで、受信信号の周波数ごとの受信電波強度を示すスペクトル解析結果を導出する。スペクトル解析結果の例について後で説明する。
【0068】
上記周波数は、無線通信に対応する周波数帯域に含まれる周波数とする。例えば、無線通信がIEEE802.11b又はg等に従うものであれば、2.4GHz帯を周波数帯域とし、無線通信がIEEE802.11a等に従うものであれば、5GHz帯を周波数帯域とする。スペクトル解析結果は、状況情報に含まれる情報の1つである。
【0069】
通信解析部122は、通信制御部112が受信する複数の通信フレーム又は当該複数の通信フレームに関する情報を解析することで、基地局による無線通信の状況を調査し取得する処理部である。通信解析部122は、具体的には、通信制御部112からキャプチャログを取得し、当該キャプチャログに基づいて、各チャンネルの帯域使用率、及び、各基地局の端末接続台数、平均通信量、受信電波強度並びに通信チャネルを取得する。上記の情報のそれぞれについて、後で例を示して説明する。
【0070】
決定部115は、状況取得部114が取得した状況情報に基づいて、複数の基地局のうち端末1が無線通信リンクを確立する接続先基地局を決定する処理部である。決定部115は、基地局情報取得部113が取得した基地局情報が複数である場合に、これらにより示される複数の基地局のうち、端末1が通信リンクを確立する相手となる基地局である接続先基地局を決定する。決定の際には、状況取得部114が取得した状況情報に基づいて総合的に判断する。また、状況情報が複数の種別の情報を含む場合には、各種別の情報に重みをつけて、前記複数の情報のそれぞれから総合的に、前記接続先基地局を決定する。決定部115は、CPU101、ROM102及びメインメモリ103等により実現される。
【0071】
なお、状況情報の詳細については、後で詳しく説明する。
【0072】
図4は、本実施の形態に係る通信制御部112が取得した通信フレームのキャプチャログの一例を示す説明図である。
【0073】
図4に示されるキャプチャログは、通信制御部112が受信する複数の通信フレームに関する情報を示したものであり、複数の通信フレームのそれぞれについて、時刻401、送信元アドレス402、宛先アドレス403、通信チャネル404、RSSI405、及び、フレーム長406の各情報を含む。
【0074】
時刻401は、当該通信フレームを通信制御部112が受信した時刻を示す情報である。時刻401は、上記時刻を絶対的に示すものでもよいし、時刻を相対的に示すものであってもよい。時刻401は、例えば、キャプチャログ上の最も古い通信フレームの時刻を基準とし、基準とした最も古い通信フレームの時刻から当該通信フレームの受信時刻までの時間、つまり、基準とした時刻からの相対的な時刻とする。なお、時刻401が計測される際の時刻の最小単位は、1マイクロ秒〜1ミリ秒程度である。
【0075】
送信元アドレス402は、当該通信フレームの送信元MACを示す情報である。
図4において、「MAC(A1)」とは、基地局A1のMACアドレスを意味する。また、S1〜S4は、基地局A1又はA2と通信リンクを確立して通信する通信装置のことである。
【0076】
宛先アドレス403は、当該通信フレームの宛先MACを示す情報である。
【0077】
通信チャネル404は、当該通信フレームが受信される通信チャネルを示す情報である。
【0078】
RSSI405は、当該通信フレームを含む受信電波の受信電波強度を示す情報である。
【0079】
フレーム長406は、当該通信フレームのフレーム長を示す情報である。
【0080】
送信元アドレス402及び宛先アドレス403は、基地局情報取得部113が基地局情報を取得する際に利用され得る。つまり、基地局情報取得部113は、キャプチャログにおける複数の通信フレームにおいて、各通信フレームの送信元アドレス402と宛先アドレス403とをペアとして対応付けて保持し、この対応付けに基づいて基地局のMACを取得する。
【0081】
例えば、基地局情報取得部113は、LAN30に接続している他の通信装置と端末との間でやりとりされる通信フレームを基地局A1及びA2が相互に転送するので、基地局A1及びA2のMACが上記ペアの一方に含まれる頻度が自ずと高くなることを利用して、基地局のMACを取得する。すなわち、
図4に示されるキャプチャログにおいて、MAC(A1)及びMAC(A2)がペアの一方に含まれるフレーム数は、それぞれ、3である。一方、他の通信装置のMACであるMAC(S1)等がペアの一方に含まれるフレーム数は、1又は2である。このように、基地局A1及びA2のMACがペアの一方に含まれる頻度が比較的高いことを利用して、基地局情報取得部113は、当該MACが基地局のMACであると判定する。なお、上記において、頻度が高いか否かを判定する際には、当該頻度と所定値とを比較した結果に基づいて判定してもよい。また、頻度の分布に基づいて基地局とその他の通信装置を区別できる適切な値を上記所定値として定めてもよい。
【0082】
図5は、本実施の形態に係る通信解析部122による解析結果である通信チャネルごとの帯域使用率の一例を示す説明図である。
【0083】
図5に示される調査項目である帯域使用率501は、通信帯域の使用率を通信チャネルごとに示したものであり、通信解析部122がキャプチャログを解析することで得られるものである。通信解析部122は、例えば、キャプチャログにおいて特定の通信チャネル404の単位時間当たりの通信量を、時刻401及びフレーム長406から算出し、算出した通信量と、当該通信チャネルで理論的に通信可能な最大通信量との比率を算出することで帯域使用率501を求める。例えば、チャネル1の帯域使用率が60%、チャネル6の帯域使用率が20%というように算出される。
【0084】
帯域使用率501を用いることで、決定部115は、通信帯域の使用率がより小さい通信チャネルで通信リンクを確立可能な基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。通信帯域の使用率がより小さい通信チャネルで新たな通信リンクを確立すれば、より多くの通信帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されることから、決定部115が上記のように接続先基地局を決定する。
【0085】
図6は、本実施の形態に係る通信解析部122による解析結果である基地局ごとの端末接続台数等の一例を示す説明図である。
図6には、具体的には、通信解析部122による解析結果である基地局ごとの端末接続台数601、平均通信量602、RSSI603、及び、通信チャネル604が調査項目として示されている。これらは、通信解析部122がキャプチャログを解析することで得られるものである。
【0086】
端末接続台数601は、当該基地局との間で通信リンクを確立している端末(通信装置)の数を示す情報である。通信解析部122は、例えば、キャプチャログにおいて、送信元MAC402又は宛先MAC403に当該基地局のMACを含む通信フレームを抽出し、当該通信フレームにおいて特定の基地局の通信相手の端末を特定し、当該基地局の通信相手の端末の数を算出することで、当該基地局の端末接続台数601を算出する。
【0087】
端末接続台数601を用いることで、決定部115は、無線通信している端末数がより少ない基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。無線通信している端末数がより少ない基地局との間で新たな通信リンクを確立すれば、より多くの帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されることから、決定部115が上記のように接続先基地局を決定する。
【0088】
平均通信量602は、単位時間当たりに当該基地局が送受信している通信データ量を示す情報である。平均通信量602は、例えば、Mbpsの単位で表現される。通信解析部122は、例えば、端末接続台数601の算出と同様に、キャプチャログから特定の基地局を含む通信フレームを抽出し、抽出した通信フレームの時刻401とフレーム長406とに基づいて単位時間当たりの通信データ量を算出する。
【0089】
平均通信量602を用いることで、決定部115は、通信データ量がより少ない基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。通信データ量がより少ない基地局との間で新たな通信リンクを確立すれば、より多くの帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されることから、決定部115が上記のように接続先基地局を決定する。
【0090】
RSSI603は、当該基地局が送信する通信フレームを端末1が受信したときに計測された当該通信フレームのRSSIである。RSSI603は、例えば、dBmの単位で表現される。通信解析部122は、例えば、キャプチャログにおいて、送信元MAC402に特定の基地局を含む通信フレームを抽出し、当該通信フレームのRSSI405を取得することで、RSSI603を算出する。なお、該当する通信フレームが複数ある場合には、複数の通信フレームのRSSIから求められる統計値(例えば、平均値、中央値又は最頻値)をとるようにしてもよい。なお、RSSI603は無線通信部111が正常に受信した通信フレームに基づいて算出されるものであるので、無線通信部111により正常に受信されなかった通信フレーム、又は、電波におけるノイズ等の影響は含まれない。
【0091】
RSSI603を用いることで、決定部115は、通信フレームのRSSIがより大きい基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。通信フレームのRSSIがより大きい基地局との間で新たな通信リンクを確立すれば、より強い電波強度で無線通信の電波を受信することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されることから、決定部115が上記のように接続先基地局を決定する。
【0092】
通信チャネル604は、当該基地局が無線通信している通信チャネルを示す情報である。通信解析部122は、例えば、キャプチャログにおいて、送信元MAC402に特定の基地局を含む通信フレームを抽出し、当該通信フレームの通信チャネル404を取得することで、通信チャネル604を特定する。
【0093】
通信チャネル604と帯域使用率501(
図5)とを用いることで、決定部115は、通信帯域の使用率がより小さい通信チャネルで通信リンクを確立可能な基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。
【0094】
図7は、本実施の形態に係る通信解析部122による解析結果である認証方式等の一例を示す説明図である。
図7には、具体的には、通信解析部122による解析結果である基地局ごとの認証方式701及び暗号方式702が調査項目として示されている。これらは、通信解析部122がキャプチャログを解析することで得られるものである。
【0095】
認証方式701は、当該基地局が端末との間で行うことができる認証方式を示す情報である。暗号方式702は、当該基地局が端末との通信において使用することができる暗号方式を示す情報である。通信解析部122は、例えば、キャプチャログにおいて、当該基地局が送信するビーコン信号を抽出し、当該ビーコン信号に含まれる認証方式及び暗号方式を示す情報から、認証方式701及び暗号方式702それぞれを取得する。
【0096】
認証方式701及び暗号方式702を用いて、決定部115は、セキュリティリスクがより小さい無線通信ができる通信リンクを確立可能な基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。
【0097】
図8は、本実施の形態に係る信号解析部121による解析結果であるスペクトル解析結果の一例を示す説明図である。
【0098】
図8において、横軸が周波数を示し、縦軸が受信信号の当該周波数の受信電波強度を示している。
【0099】
信号解析部121は、無線通信部111から取得した受信信号をスペクトル解析することで、受信信号の周波数ごとの受信電波強度を示すスペクトル解析結果を導出する。スペクトル解析結果には、基地局A1及びA2による無線通信の電波の受信電波強度が含まれる他、当該周波数を有する他の電波も含まれる。他の電波とは、例えば、基地局A1及びA2による無線通信とは異なる無線通信(Bluetooth(登録商標)、ZigBee等)による電波、電子レンジ等から発生する電波、又は、その他の装置など周囲から到来する電波が含まれる。ISM(Industry−Science−Medical)帯を用いるIEEE802.11b、g等では、一般に、上記のような他の電波の影響が比較的大きい。
【0100】
図8に示される受信電波強度を用いて、決定部115は、スペクトル解析の結果に基づいて、受信電波強度がより小さいチャンネルで通信リンクを確立可能な基地局を、より優先的に、接続先基地局として決定する。スペクトル解析結果における受信電波強度がより小さい通信チャネルで新たな通信リンクを確立すれば、他の電波による影響が少ない無線通信を行うことができ、より高い品質の無線通信ができると推定されることから、決定部115が上記のように接続先基地局を決定する。
【0101】
以上、
図4の説明から始まって、接続先基地局を決定するための判断要因を個別に説明したが、実際の決定に当たっては、これらの判断要因を総合的に判断する、または重みづけを行ったうえで判断することとなる。
【0102】
図9は、本実施の形態に係る端末1による接続先基地局を決定する処理のフロー図である。
【0103】
ステップS101において、無線通信部111は、電波を受信する。無線通信部111が受信する電波には、基地局A1及びA2による無線通信の電波、及び、その他の電波が含まれている。
【0104】
ステップS102において、通信制御部112は、ステップS101で無線通信部111が受信した電波から通信フレームを取得する。なお、無線通信部111が受信した電波が、無線通信による電波でない場合には、通信制御部112が当該電波から通信フレームを取得することはない。
【0105】
ステップS103において、基地局情報取得部113は、ステップS102で通信制御部112が取得した通信フレームに基づいて、基地局情報を取得する。例えば、端末1との無線通信リンクを確立可能な位置に基地局A1及びA2が存在する場合、基地局情報取得部113は、基地局A1のMAC、及び、基地局A2のMACを取得する。
【0106】
ステップS104において、状況取得部114は、ステップS101で無線通信部111が受信した電波、及び、ステップS102で通信制御部112が取得した通信フレームに基づいて、基地局ごと、又は、通信チャネルごとの状況情報を取得する。具体的には、信号解析部121がスペクトル解析を行うことで、スペクトル解析結果を取得する。また、通信解析部122がキャプチャログを解析することで、無線通信の状況を取得する。
【0107】
ステップS105において、決定部115は、ステップS104で取得された無線通信の状況に基づいて、接続先基地局を決定する。端末1は、ステップS105で決定した接続先基地局との間で通信リンクを確立し、当該通信リンクを通じて無線通信を行う。
【0108】
以上の一連の処理により、端末1は、受信電波の電波状況に基づいて、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0109】
なお、端末1は、上記のように接続先基地局を決定することを、基地局A1又はA2のいずれとも通信リンクを確立していない状態で実行してもよいし、端末1が基地局A1又はA2のいずれかと通信リンクを確立している状態において、当該通信リンクを維持したまま実行してもよい。また、繰り返し複数回実行してもよく、これらの実行が、所定の時間間隔で周期的に繰り返されてもよい。当該通信リンクを維持したまま接続先基地局を決定し、当該接続先基地局との通信リンクを確立する場合、確立している通信リンクを切断した後に、当該接続先基地局との通信リンクを確立する。
【0110】
なお、端末1が通信リンクを維持したまま新たな基地局を決定する場合には、従来の無線通信技術におけるいわゆるバックスキャンに代えて、または、バックスキャンとともに、電波状況の解析及び状況情報の取得を行うようにしてもよい。従来、例えばIEEE802.11規格におけるバックスキャンの際には、端末は、通信リンクを確立している基地局に対し、フレーム制御フィールド内のパワーマネージメントビットを利用してPowerSaveを通知し、基地局が端末へ送信すべき通信フレームをバッファする。上記のように電波状況の調査を行うことで、端末と他の通信装置との通信における通信フレームの欠落を抑制することができる。
【0111】
なお、上記のように端末が接続先基地局を決定するので、基地局には特別な機能を追加する必要がない。すなわち、本実施の形態に係る端末は、基地局に特別な機能を追加することなく、また、基地局を提供するベンダに依存せずに、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる利点がある。
【0112】
なお、上記では、端末が接続先基地局を決定する形態について説明したが、接続先基地局の代わりに、他の端末を用いることができる。この形態は、端末同士が基地局を介さずにマルチホップ通信するマルチホップネットワーク又はアドホックネットワークにおいて特に利点が大きい。
【0113】
以上のように、本実施の形態に係る無線通信端末は、電波の状況を取得した上で、取得した電波の状況から推定される品質が高い通信リンクを決定する。このように、無線通信端末が取得した電波の状況を用いることで、他の無線通信装置の通信の状況、又は、無線通信ではない電波の状況を考慮して、無線通信端末が通信リンクを決定する。よって、無線通信端末は、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0114】
また、無線通信端末は、自装置が備える無線通信部により電波を取得する。これにより、より正確に、無線通信端末における電波の状況を取得することができ、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0115】
また、無線通信端末は、通信チャネルの帯域使用率を用いて、より具体的に、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。通信帯域の使用率がより小さい通信チャネルで新たな通信リンクを確立すれば、より多くの通信帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されるからである。
【0116】
また、無線通信端末は、受信電波のスペクトル解析結果を用いて、より具体的に、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。スペクトル解析結果における受信電波強度がより小さい通信チャネルで新たな通信リンクを確立すれば、よりノイズが少ない無線通信を行うことができ、より高い品質の無線通信ができると推定されるからである。
【0117】
また、無線通信端末は、基地局の端末接続台数を用いて、より具体的に、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。無線通信している端末数がより少ない基地局との間で新たな通信リンクを確立すれば、より多くの帯域を通信に使用することができ、より高い品質の無線通信ができると推定されるからである。
【0118】
また、無線通信端末は、複数の情報を総合的に判断して、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。
【0119】
また、無線通信端末は、基地局との通信リンクを確立し維持しているときに、新たな基地局との新たな通信リンクであって、取得した電波の状況から推定される品質が高い通信リンクを決定する。これにより、無線通信端末は、通信リンクを確立中に、より良好に無線通信することができる基地局を決定し、決定した基地局への切り替え(ハンドオーバ)をすることができる。
【0120】
(実施の形態2)
本実施の形態において、より良好に無線通信することができる基地局を決定する端末について説明する。より具体的には、本実施の形態に係る端末は、自装置が受信する電波から抽出した通信可能な基地局の状況情報を他の端末に提供する。提供を受けた他の端末は、提供された状況情報に基づいて、より良好に無線通信することができる基地局を決定する。つまり、自装置内に信号解析部及び通信解析部を備えていない端末でも、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0121】
なお、実施の形態1に記載した構成及び処理ステップと同一のものについては、同一の符号を付し、詳細な説明を省略することがある。
【0122】
図10は、本実施の形態に係る無線通信システム41の構成図である。
【0123】
図10に示されるように、無線通信システム41は、提供端末2と、端末3と、基地局A1及びA2と、LAN30とを備える。基地局A1及びA2と、LAN30とは、実施の形態1におけるものと同一である。
【0124】
提供端末2は、無線IFを有する無線通信端末である。提供端末2は、基地局A1との間で通信リンクL3を確立している。提供端末2は、通信リンクL3及び基地局A1を介して、LAN30又は基地局A1に接続された他の通信装置などと通信することができる。
【0125】
端末3は、無線IFを有する無線通信端末である。端末3は、基地局A1との間で通信リンクL4を確立し、又は、基地局A2との間で通信リンクL5を確立し、通信リンクL4又はL5及び基地局A1又はA2を介してLAN30に接続された通信装置などと通信することができる。なお、端末3は、1つの無線IFを有しており、基地局A1又はA2のいずれか一方との間で通信リンクを確立する。
【0126】
本実施の形態において、端末3が基地局A1と通信リンクを確立している状態において、提供端末2が基地局A1又はA2の通信状況を取得し、取得した通信状況を端末3に提供し、この提供された通信状況に基づいて端末3が基地局A1との通信リンクを維持するか、基地局A2と通信リンクを確立するかを決定する方法について説明する。
【0127】
提供端末2及び端末3は、実施の形態1における端末1と同じハードウェア構成を有する。
【0128】
図11は、本実施の形態に係る提供端末2の機能構成を示すブロック図である。
【0129】
図11に示されるように、提供端末2は、無線通信部111と、通信制御部112と、状況取得部114と、状況提供部116とを備える。また、提供端末2は、位置情報取得部117を備えてもよい。
【0130】
無線通信部111、通信制御部112、及び、状況取得部114は、実施の形態1における端末1が備える同名の構成要素と同じである。
【0131】
状況提供部116は、状況取得部114が取得した状況情報を端末3に提供する処理部である。状況提供部116は、例えば、WNIC105を利用して状況情報を無線通信により端末3に提供する。なお、状況提供部116が状況情報を提供する際には、端末3と通信できる方法であればどのような方法であってもよく、例えば、LAN30を介した有線通信を用いてもよい。
【0132】
また、状況提供部116は、上記状況情報とともに、位置情報取得部117が取得する位置情報を端末3に提供してもよい。
【0133】
位置情報取得部117は、提供端末2の位置情報を取得する処理部である。位置情報取得部117は、例えば、GPS(Global Positioning System)により上記位置情報を取得する。また、位置情報取得部117は、提供端末2の移動が実質的にない、つまり、位置が実質的に変化しない場合には、予め定められた提供端末2の位置情報が格納された記憶装置等から読み出すことで上記位置情報を取得してもよい。上記記憶装置は、提供端末2の内部にあってもよいし、外部にあってもよい。
【0134】
図12は、本実施の形態に係る端末3の機能構成を示すブロック図である。
【0135】
図12に示されるように、端末3は、無線通信部111と、通信制御部112と、基地局情報取得部113と、状況取得部114Aと、決定部115Aとを備える。また、端末3は、位置情報取得部117Aを備えてもよい。
【0136】
無線通信部111、通信制御部112、及び、基地局情報取得部113は、実施の形態1における端末1が備える同名の構成要素と同じである。
【0137】
状況取得部114Aは、通信制御部112による無線通信を介して、提供端末2の状況提供部116から状況情報を取得する処理部である。状況取得部114Aは、状況取得部114が備える信号解析部121及び通信解析部122に相当する機能を備えず、これを備える提供端末2からその解析結果を取得することで状況情報を取得する。つまり、状況取得部114Aは、状況情報を取得する方法が異なるだけであり、その他の機能は状況取得部114と同じである。
【0138】
なお、状況取得部114Aは、提供端末2の状況提供部116から位置情報を提供された場合には、状況情報とともに位置情報を取得する。
【0139】
位置情報取得部117Aは、端末3の位置情報を取得する処理部である。位置情報取得部117Aが位置情報を取得する方法には、提供端末2と同様の方法があり得る。
【0140】
決定部115Aは、位置情報取得部117Aが位置情報を取得し、かつ、状況取得部114Aが複数の提供端末2から位置情報を取得した場合には、(i)位置情報取得部117Aが取得した位置情報と、複数の提供端末2の位置情報とを比較し、(ii)複数の提供端末2のうち端末3に、より近い提供端末2から取得した状況情報をより優先的に用いて、接続先基地局を決定する。
【0141】
図13は、本実施の形態に係る端末による接続先基地局を決定する処理のフロー図である。
【0142】
ステップS101において、提供端末2の無線通信部111は、電波を受信する。
【0143】
ステップS102において、提供端末2の通信制御部112は、ステップS101で無線通信部111が受信した電波から通信フレームを取得する。
【0144】
ステップS103において、提供端末2の基地局情報取得部113は、ステップS102で通信制御部112が取得した通信フレームに基づいて、基地局情報を取得する。
【0145】
ステップS104において、提供端末2の状況取得部114は、ステップS101で無線通信部111が受信した電波、及び、ステップS102で通信制御部112が取得した通信フレームに基づいて、基地局ごと、又は、通信チャネルごとの状況情報を取得する。
【0146】
ステップS201において、提供端末2の状況提供部116は、ステップS104で取得した状況情報を端末3に提供する。
【0147】
ステップS104Aにおいて、端末3の状況取得部114Aは、ステップS201で提供端末2の状況提供部116が提供した状況情報を取得する。
【0148】
ステップS105において、端末3の決定部115は、ステップS104Aで取得された無線通信の状況に基づいて、接続先基地局を決定する。
【0149】
以上のように、本実施の形態に係る無線通信端末は、他の無線通信端末が備える無線通信部により取得した電波の状況を取得する。これにより、状況取得部による解析処理のように処理負荷の高い処理を行う機能を搭載しない無線通信端末が、他の無線通信端末の電波の状況を用いて、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0150】
また、無線通信端末は、複数の他の無線通信端末から電波の状況を取得する場合に、複数の他の無線通信端末のうち、本実施の形態に係る無線通信端末により近い位置に存在する無線通信端末からの状況情報を用いる。よって、本実施の形態に係る無線通信端末は、自装置に近い電波の状況を用いて、より良好に無線通信することができる基地局を決定することができる。
【0151】
また、本実施の形態に係る提供端末は、他の無線通信端末に電波の状況を提供することで、当該他の無線通信端末による基地局の決定をさせることができる。
【0152】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されてもよいし、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0153】
以上、本発明の無線通信端末について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。