(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題点がある。
すなわち、操作者がX線画像を参照して最適な画像処理方法を判別するためには熟練を要するので、操作者によっては最適な画像処理方法を判別できない場合がある。さらに、X線透視により多数のX線画像を断続的に生成する場合、多数のX線画像に対してそれぞれ最適な画像処理方法を判別する必要がある。その結果、操作者に対する作業負担が極めて大きくなる。
【0006】
このような場合、X線画像の各々に応じた最適な画像処理を実行できないので、精度の高い診断を行うことが困難となる。また、最適な画像処理方法が判別される場合であっても、操作者が画像処理方法を判別して手動で適切な画像処理方法を実行するためには時間を要する。その結果、X線撮影の所要時間が長くなるので、X線撮影装置のワークフローが低下するという問題も懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、取得されたX線画像に対して、取得条件に応じて効率的に最適な画像処理を行うことのできるX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射されて前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段が出力する検出信号に基づいて学習用のX線画像を学習用画像として生成する学習用画像生成手段と、前記X線検出手段が出力する検出信号に基づいて、前記被検体に対する検査に用いるX線画像を検査用画像として生成する検査用画像生成手段と、前記被検体に対する検査の情報を検査情報として入力する検査情報入力手段と、前記X線源および前記X線検出手段を含む複数のユニットに関する、位置および傾斜角度などの物理的情報を装置情報として検出する装置情報検出手段と、前記X線画像の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段が前記学習用画像から抽出する前記特徴量を、前記学習用画像に対して実行される画像処理方法と関連づけて記憶する特徴量記憶手段と、前記検査情報および前記装置情報からなる組み合わせ情報が同一である条件の下で生成された、前記学習用画像の各々から抽出される前記特徴量を教師データとする学習によって、入力される前記検査用画像の特徴量に最も近似する前記学習用画像の特徴量を出力する識別器を生成する識別器生成手段と、前記識別器の学習に用いられた前記学習用画像を生成する際における、前記組み合わせ情報を前記識別器と関連づけて記憶する識別器記憶手段と、前記識別器記憶手段が記憶している前記組み合わせ情報のうち、前記検査用画像を生成する際における前記組み合わせ情報に最も近似する前記組み合わせ情報を探索し、探索した前記組み合わせ情報と関連づけて前記識別器記憶手段が記憶する前記識別器を選択する識別器選択手段と、前記識別器選択手段によって選択された前記識別器が出力する前記学習用画像の特徴量と関連づけて、前記特徴量記憶手段に記憶されている前記画像処理方法を抽出する処理方法抽出手段と、前記処理方法抽出手段が抽出する前記画像処理方法を前記検査用画像に対して実行する画像処理実行手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るX線撮影装置によれば、組み合わせ情報が同一である条件の下で生成された学習用画像の各々から抽出される特徴量を教師データとする学習により、識別器が生成される。識別器は検査用画像から抽出された特徴量の入力に対して、学習用画像の特徴量のうち、入力された検査用画像の特徴量に最も近似する学習用画像の特徴量を識別する構成を有している。学習用画像の特徴量の各々は、当該特徴量が抽出された学習用画像に最適な画像処理方法と関連づけて記憶されている。そして処理方法抽出部は識別器が出力する学習用画像の特徴量と関連づけられている画像処理方法を、検査用画像の特徴量に対応する画像処理方法として抽出する。
【0010】
この場合、識別器に入力される検査用画像の特徴量と、識別器が判別して出力する学習用画像の特徴量とは近似している。そのため、処理方法抽出部が抽出する画像処理方法を用いて検査用画像を処理することにより、検査用画像は診断に適するX線画像となる。すなわち検査用画像が生成される際に特徴量に応じて、当該検査用画像に最適な画像処理方法が自動的に抽出される。そのため操作者は生成される検査用画像に適する画像処理方法を自身で判別する必要がない。従って、画像処理方法の判別に要する時間を短縮し、かつ操作者が受ける負担を軽減できる。また操作者の技量に左右されることなく、画像処理後のX線画像の品質を一定に保つことができる。
【0011】
識別器記憶手段は、学習によって生成された識別器と、学習用画像に係る組み合わせ情報と関連づけて記憶する。そして識別器選択手段は、検査用画像の生成時における組み合わせ情報の入力に対して、最も近似する記憶済みの学習用画像の組み合わせ情報を探索し、探索された学習用画像の組み合わせ情報と関連づけられた識別器を選択する。そして選択された識別器を用いて、検査用画像に最も適する画像処理方法を抽出する。
【0012】
このような構成を有することにより、入力される組み合わせ情報が学習済みの組み合わせ情報のいずれにも一致しない場合であっても、識別器選択部は検査用画像の生成時における組み合わせ情報に対応する適切な識別器を選択できる。そのため、全く新しい組み合わせ情報の条件下で検査用画像を生成した場合であっても、当該検査用画像に適する画像処理方法を自動的に抽出できる。従って、あらゆる撮影条件の下で、X線画像に対して最適な画像処理を迅速に施すことができる。
【0013】
また、本発明に係るX線撮影装置は、識別器はサポートベクタマシンまたはニューラルネットワークによって構成されることが好ましい。
【0014】
本発明に係るX線撮影装置によれば、識別器はサポートベクタマシンまたはニューラルネットワークによって構成される。この場合、識別器は入力された特徴量の情報に応じて、適切な学習済みの特徴量を迅速に識別できる。従って、生成される検査用画像に対して迅速に適切な画像処理方法を実行し、検査に適するX線画像を取得することができる。
【0015】
また、本発明に係るX線撮影装置は、前記検査用画像から抽出された前記特徴量を前記識別器生成手段にフィードバックし、前記識別器に追加学習を行わせるフィードバック手段を備えることが好ましい。
【0016】
本発明に係るX線撮影装置によれば、フィードバック手段は検査用画像から抽出された特徴量を識別器生成手段にフィードバックし、識別器に追加学習を行わせる。この場合、検査用のX線画像を生成するたびに追加学習が行われる。そのため実施例に係るX線撮影装置の使用回数が多くなるに従って、識別器は入力される特徴量に対してより近似した特徴量を識別できるようになる。その結果、X線撮影装置の使用回数に応じて、より診断に適した処理後画像を取得することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るX線撮影装置は、前記検査情報は前記被検体を特定する情報、前記被検体に対する検査を特定する情報、および前記被検体に対する検査を行う操作者を特定する情報によって構成されることが好ましい。
【0018】
本発明に係るX線撮影装置によれば、検査情報は被検体を特定する情報、被検体に対する検査を特定する情報、および被検体に対する検査を行う操作者を特定する情報によって構成される。この場合、被検体のみならず、検査を特定する情報や操作者を特定する情報が検査情報として包含されるので、検査や操作者の違いごとに異なる識別器が生成される。従って、検査や操作者の相違に応じて検査用画像に適した画像処理方法を施し、診断に適するX線画像を生成することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係るX線撮影装置は、前記識別器選択手段は前記検査用画像を生成する際における前記組み合わせ情報を入力とする、サポートベクタマシンまたはニューラルネットワークによって構成されることが好ましい。
【0020】
本発明に係るX線撮影装置によれば、識別器選択手段は検査用画像を生成する際における組み合わせ情報を入力とする、サポートベクタマシンまたはニューラルネットワークによって構成される。この場合、識別器は学習済みの組み合わせ情報のうち、入力された検査用画像に係る組み合わせ情報に最も近似する組み合わせ情報を迅速に識別できる。従って、生成される検査用画像に対して迅速に適切な画像処理方法を実行し、検査に適するX線画像を取得することができる。
【0021】
また、本発明に係るX線撮影装置は、前記画像処理実行手段が画像処理方法を実行した前記検査用画像を表示する表示手段と、前記表示手段が表示する前記検査用画像に対して、前記画像処理方法の各パラメータを修正する処理方法修正手段を備え、前記画像処理実行手段は前記処理方法修正手段によって修正された画像処理方法を前記検査用画像に対して再度実行することが好ましい。
【0022】
本発明に係るX線撮影装置によれば、画像処理実行手段が画像処理方法を実行した検査用画像を表示する表示手段を備えている。処理方法修正手段は、表示手段が表示する画像処理済みの検査用画像に対して、画像処理方法の各パラメータを修正する。この場合、操作者は表示される検査用画像を参照し、画像処理方法の各パラメータをより適したパラメータに適宜修正できる。
【0023】
画像処理実行手段は処理方法修正手段によって修正された画像処理方法を用いて、検査用画像に対する画像処理を再度実行する。従って、検査用画像に対し、より適したパラメータによる画像処理が実行される。その結果、より精度の高い診断を可能とする検査用画像を取得できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るX線撮影装置によれば、組み合わせ情報が同一である条件の下で生成された学習用画像の各々から抽出される特徴量を教師データとする学習により、識別器が生成される。識別器は検査用画像から抽出された特徴量の入力に対して、学習用画像の特徴量のうち、入力された検査用画像の特徴量に最も近似する学習用画像の特徴量を識別する構成を有している。学習用画像の特徴量の各々は、当該特徴量が抽出された学習用画像に最適な画像処理方法と関連づけて記憶されている。そして処理方法抽出部は識別器が出力する学習用画像の特徴量と関連づけられている画像処理方法を、検査用画像の特徴量に対応する画像処理方法として抽出する。
【0025】
この場合、識別器に入力される検査用画像の特徴量と、識別器が判別して出力する学習用画像の特徴量とは近似している。そのため、処理方法抽出部が抽出する画像処理方法を用いて検査用画像を処理することにより、検査用画像は診断に適するX線画像となる。すなわち検査用画像が生成される際に特徴量に応じて、当該検査用画像に最適な画像処理方法が自動的に抽出される。そのため操作者は生成される検査用画像に適する画像処理方法を自身で判別する必要がない。従って、画像処理方法の判別に要する時間を短縮し、かつ操作者が受ける負担を軽減できる。また操作者の技量に左右されることなく、画像処理後のX線画像の品質を一定に保つことができる。
【0026】
識別器記憶手段は、学習によって生成された識別器と、学習用画像に係る組み合わせ情報と関連づけて記憶する。そして識別器選択手段は、検査用画像の生成時における組み合わせ情報の入力に対して、最も近似する記憶済みの学習用画像の組み合わせ情報を探索し、探索された学習用画像の組み合わせ情報と関連づけられた識別器を選択する。そして選択された識別器を用いて、検査用画像に最も適する画像処理方法を抽出する。
【0027】
このような構成を有することにより、入力される組み合わせ情報が学習済みの組み合わせ情報のいずれにも一致しない場合であっても、識別器選択部は検査用画像の生成時における組み合わせ情報に対応する適切な識別器を選択できる。そのため、全く新しい組み合わせ情報の条件下で検査用画像を生成した場合であっても、当該検査用画像に適する画像処理方法を自動的に抽出できる。従って、あらゆる撮影条件の下で、X線画像に対して最適な画像処理を迅速に施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0030】
<全体構成の説明>
実施例1に係るX線撮影装置1は
図1(a)に示すように、水平姿勢をとる被検体Mを載置させる天板3と、被検体Mに対してX線焦点5aからX線5bを照射するX線管5と、被検体Mに照射されて透過したX線を検出するX線検出器7とを備えている。X線管5が照射するX線5bの中心軸を符号5cで示す。X線管5とX線検出器7は、天板3を挟んで対向配置されている。X線検出器7はX線を検出する検出面を備えており、検出面にはX線検出素子が二次元的に配列されている。実施例ではX線検出器7としてフラットパネル型検出器(FPD)を用いる。
【0031】
X線管5の下方にはコリメータ9が設けられている。コリメータ9は2対の遮蔽板を備えており、遮蔽板の各々によって、X線管5から照射されるX線を角錐となっているコーン状に制限する。X線管5は本発明におけるX線源に相当し、X線検出器7は本発明におけるX線検出手段に相当する。
【0032】
X線撮影装置1は
図1(b)に示すように、X線照射制御部11と、X線管移動部13と、検出器移動部15と、天板移動部17と、コリメータ制御部19と、装置情報検出部21と、画像処理部23とを備えている。X線照射制御部11はX線管5に接続されており、X線照射時間やX線管5に印加される管電圧などを制御することによって、X線管5から照射されるX線の線量、およびX線を照射させるタイミングなどを制御する。
【0033】
X線管移動部13はX線管5に接続されており、X線管5をx方向、y方向、およびz方向の各々へ移動させるとともに、X線管5を各方向の軸周りに回転させる。なお、x方向は天板3の長手方向であり、y方向は天板3の短手方向であり、z方向は鉛直方向である。
【0034】
検出器移動部15はX線検出器7に接続されており、X線検出器7をx方向、y方向、およびz方向の各々へ移動させるとともに、X線検出器7を水平面に対して傾斜させる。すなわち、X線管移動部13および検出器移動部15によって、X線管5およびX線検出器7からなる撮像系の三次元的な位置と、X線管5からX線検出器7へ照射されるX線の照射角度とが制御される。
【0035】
天板移動部17は天板3に接続されており、天板3をx方向、y方向、およびz方向の各々へ移動させるとともに、天板3を水平面に対して傾斜させる。コリメータ制御部19は、コリメータ9に設けられている遮蔽板の各々の開閉移動を制御することにより、X線管5から照射されるX線の照射野を調節する。
【0036】
装置情報検出部21はX線撮影装置1を構成する天板3、X線管5、X線検出器7、コリメータ9などの各ユニットについて、状態を示す情報を装置情報として検出する。天板3、X線管5、X線検出器7、コリメータ9の各ユニットには図示しないセンサが設けられており、各センサは装置情報を検出して装置情報検出部21へ送信する。装置情報として検出される情報の例としては
図2(a)に示すように、各ユニットの三次元座標、温度、または傾斜角度などが挙げられる。装置情報検出部21は本発明における装置情報検出手段に相当する。
【0037】
画像処理部23は画像生成部25と、特徴量抽出部27と、識別器Cと、処理方法判定部29と、画像処理実行部31と、処理方法検出部33と、識別器生成部35と、識別器選択部37と、フィードバック部39とを備えている。画像生成部25はX線検出器7の後段に設けられており、X線検出器7から出力されるX線検出信号に基づいて、被検体MのX線画像を生成する。画像生成部25が生成するX線画像は、被検体Mの検査に用いるX線画像(以下、「検査用画像」とする)や、後述する識別器の学習に用いるX線画像(以下、「学習用画像」とする)が含まれる。画像生成部25は本発明における検査用画像生成手段および学習用画像生成手段に相当する。
【0038】
特徴量抽出部27は画像生成部25の後段に設けられており、対象となる画像から特徴量を抽出する。特徴量抽出部27が特徴量を抽出する画像には、画像生成部25が生成する検査用画像の他に、学習用画像が含まれる。
【0039】
識別器Cは特徴量抽出部27の後段に設けられており、学習段階において複数の特徴量情報を学習することによって生成される。識別器Cには、特徴量抽出部27が検査用画像または学習用画像から抽出する特徴量が入力される。そして識別器Cは学習用画像の特徴量のうち、入力された検査用画像の特徴量に最も近似する学習用画像の特徴量を識別し、識別した特徴量のデータを出力する。識別器Cが特徴量を識別して出力する構成の例としては、サポートベクタマシンやニューラルネットワークなどが挙げられる。実施例において、識別器Cはサポートベクタマシンによって構成されているものとする。
【0040】
処理方法抽出部29は識別器Cの後段に設けられており、識別器Cが出力する特徴量と関連づけて記憶されている画像処理方法を抽出する。画像処理実行部31は処理方法抽出部29の後段に設けられており、処理方法抽出部29が抽出する画像処理方法を用いて、画像生成部25が生成する検査用画像に対して画像処理を実行する。処理方法抽出部29は本発明における処理方法抽出手段に相当する。画像処理実行部31は画像処理実行手段に相当する。
【0041】
処理方法検出部33は特徴量抽出部27の後段に設けられており、学習用画像の特徴量に基づいて、最適な画像処理方法を検出する。識別器生成部35は処理方法検出部33の後段に設けられている。識別器生成部35は、特徴量抽出部27が学習用画像から抽出する特徴量に基づいて、識別器Cを生成する。識別器Cを生成する工程の詳細は後述する。識別器生成部35は本発明における識別器生成手段に相当する。
【0042】
識別器選択部37は装置情報および検査情報に基づいて、識別器生成部35が生成した識別器Cの各々から、最適な識別器Cを選択する。フィードバック部39は画像処理実行部31が実行した画像処理方法と、画像処理の対象となった検査用画像の特徴量との情報を識別器生成部35にフィードバックする。識別器生成部35はフィードバックされた情報に基づいて追加学習を行う。識別器選択部37は本発明における識別器選択手段に相当する。フィードバック部39は本発明におけるフィードバック手段に相当する。
【0043】
X線撮影装置1はさらに、入力部41と、記憶部43と、モニタ45と、主制御部47とを備えている。入力部41は操作者の指示や検査情報を入力するものであり、その例として、キーボード入力式のパネルやタッチ入力式のパネルなどが挙げられる。検査情報とは、被検体に関する情報を始めとする、検査に関連する情報群を意味する。また、操作者は入力部41を操作することにより、検査用画像に対して行う画像処理の各パラメータをさらに適宜修正することが可能である。入力部41は本発明における処理方法修正手段に相当する。
【0044】
記憶部43は、画像生成部25が生成する学習用画像および検査用画像の各々から抽出される特徴量、および識別器Cの各々などの情報を記憶する。モニタ45は画像生成部25が生成する検査用画像、および画像処理実行部31によって画像処理が行われたX線画像(以下、「処理後画像」とする)を表示する。主制御部47は、X線照射制御部11、X線管移動部13、検出器移動部15、天板移動部17、コリメータ制御部19、画像処理部23、記憶部43、モニタ45の各々を統括制御する。記憶部43は本発明における特徴量記憶手段および識別器記憶手段に相当する。
【0045】
<動作の説明>
次に、実施例に係るX線撮影装置1の動作について説明する。
図3は実施例に係るX線撮影装置1の動作の工程を説明するフローチャートである。実施例では胃部X線検査におけるX線画像を取得する場合を例にとって説明する。
【0046】
X線撮影装置による動作の工程は、
図3(a)に示す学習段階と、
図3(b)に示す実施段階とに分けられる。学習段階とは、実施段階で用いる識別器を学習により生成する段階であり、まず識別器の生成に用いる学習用画像を取得する(A1)。次に、取得された学習用画像から特徴量を抽出し(A2)、抽出された特徴量に基づいて、学習用画像に対して最適な画像処理方法を検出する(A3)。そして学習用画像の特徴量を多数学習することによって識別器を生成する(A4)。
【0047】
実施段階では、まずX線撮影の準備を行い、装置情報および検査情報を取得する(S1)。装置情報および検査情報の組み合わせに基づいて、学習段階で生成された一連の識別器から、検査用画像に対して最適な識別器の選択を行う(S2)。そして装置情報および検査情報の下で検査用画像を取得する(S3)。取得された検査用画像から、特徴量を抽出する(S4)。選択された識別器に検査用画像の特徴量を入力することにより、検査用画像に最適な画像処理方法を抽出する(S5)。抽出された画像処理方法を用いて検査用画像に画像処理を行い、診断に適した処理後画像を取得する(S6)。最後に、検査用画像の特徴量と実行された画像処理方法とを追加学習する(S7)ここで
図4および
図5を用いて、まず学習段階におけるX線撮影装置1の動作の工程を説明する。
【0048】
ステップA1(学習用画像の取得)
学習段階において、まず学習用画像Nを複数枚取得する。実施例1では学習用画像Nとして、予め画像生成部25によって生成され、記憶部43に記憶されているX線画像(サンプル画像)を用いる。なお、あらためてX線管5からX線を被検体に照射し、画像生成部25が生成したX線画像を学習用画像Nとして用いてもよい。
【0049】
学習用画像Nの各々をあらためて生成する場合、操作者は入力部41を操作して検査情報Sを入力し、装置情報検出部21は装置情報Mを検出する。装置情報Mは、天板3、X線管5、X線検出器7、コリメータ9の各ユニットについて、
図2(a)に例示するような、三次元座標や傾斜角度、温度といった物理的要素に関連する情報群によって構成される。三次元座標とは各ユニットのx方向、y方向、およびz方向の各々における座標を意味する。傾斜角度とは、例として水平面に対する傾斜角度を意味する。なお、装置情報として
図2(a)に挙げられている情報は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0050】
検査情報Sは、検査に関連する情報群によって構成される。検査情報Sを構成する情報の例としては
図2(b)に示すように、被検体情報、オーダ情報、および操作者情報などが挙げられる。被検体情報は、年齢、性別、体格など、検査の対象である被検体Mに関する情報である。オーダ情報は、X線を照射する関心部位や実行する術式の種類など、検査の内容を特定する情報である。操作者情報は、氏名や術式の実施回数など、検査を行う操作者に関する情報である。
【0051】
装置情報検出部21は検査情報Sを構成する情報群の相違に基づいて、検査情報Sの各々を区別する。すなわち、情報群の組み合わせがh通りある場合、検査情報Sの各々は検査情報S1〜Shとして区別される。また装置情報Mを構成する情報群の組み合わせがj通りある場合、装置情報検出部21は装置情報Mを構成する情報群の相違に基づいて、装置情報Mの各々を装置情報M1〜Mjとして区別する。
【0052】
記憶部43は、学習用画像Nの各々を検査情報Sおよび装置情報Mと関連づけて分類し、記憶する。一例として
図4に示すように、検査情報Sa、装置情報Mbの条件において生成されるk枚の学習用画像Nの各々は、学習用画像Nab−1〜Nab−kとして分類される。サンプル画像を学習用画像Nとして用いる場合、サンプル画像に既に関連づけされている検査情報Sおよび装置情報Mに基づいて学習用画像Nを分類する。分類された学習用画像Nの各々は特徴量抽出部27へ送信される。
【0053】
ステップA2(特徴量の抽出)
特徴量抽出部27は送信された学習用画像から特徴量を抽出する。特徴量は複数の学習用画像について、各々の学習用画像を判別・分類するための情報であり、1枚の学習用画像Nに対して1つの特徴量Fが抽出される。特徴量抽出部27が抽出する特徴量の例としては、学習用画像に映る胃壁のX線像の情報の頻度や、輝度値の分布などが挙げられる。
【0054】
特徴量Fを抽出する具体的な方法としては、学習用画像の領域を所定の画素数からなる複数の領域に分割し、分割した各領域における胃壁のX線像の情報の頻度などを特徴量Fとして抽出する方法などが挙げられる。またORB特徴量や正規化したヒストグラムに基づいて、学習用画像の各々について、類似するX線像をそれぞれ判別することが可能である。
【0055】
特徴量抽出部27は抽出した特徴量Fの各々を、学習用画像Nに応じて分類する。例えば学習用画像Nab−1〜Nab−kのうち、学習用画像Nab−cについて抽出された特徴量Fは、特徴量抽出部27によって特徴量Fab−cとして分類される。特徴量Fが抽出された学習用画像Nの各々は、特徴量Fの情報と共に処理方法検出部33へ送信される。
【0056】
ステップA3(画像処理方法の検出)
処理方法検出部33は学習用画像Nの各々に対して、最適な画像処理方法Pを検出する。画像処理方法の例としては、学習用画像の各領域に応じた輝度調整、コントラスト調整、およびノイズ除去補正値などからなるパラメータ群が挙げられる。具体的な画像処理方法Pの例としては、γカーブ、エッジ強調、コントラストなど、画像の調整に関する各種パラメータの組み合わせが挙げられる。
【0057】
各学習用画像Nの特徴量Fに応じて、最適な画像処理方法Pはそれぞれ相違する。一例として、学習用画像を複数の領域に分割し、分割された領域の各々において、輝度値に応じた輝度調整、コントラスト調整の最適パラメータが設定される。そして各領域において設定されるパラメータの各々の組み合わせとして、最適な画像処理方法Pが検出される。
【0058】
過去に作成済みのサンプル画像を学習用画像Nとする場合、処理方法検出部33は、サンプル画像に対して既に実行されている画像処理方法を、最適な画像処理方法Pとして検出する。新たに学習用画像としてX線画像を生成する場合、操作者が新たに生成されたX線画像を確認し、例えば手動で当該X線画像の階調、輝度、およびコントラストなどの各種パラメータを調整する。そして当該X線画像を最も読影しやすい画像とする、各種パラメータ群を特定する。処理方法検出部33は特定された各種パラメータ群を、当該学習用画像に対する最適な画像処理方法Pとして検出する。
【0059】
処理方法検出部33は学習用画像Nab−cについて検出された最適な画像処理方法Pを、画像処理方法Pab−cとして分類する。処理方法検出部33は同一の学習用画像Nに基づいて検出された、特徴量Fの情報と画像処理方法Pの情報とを関連づけ、特徴量Fと画像処理方法Pとの結合情報Dを生成する(
図4、一点鎖線)。例として、画像処理方法Pab−cの情報と特徴量Fab−cの情報とは、処理方法検出部33によって関連づけがなされて結合情報Dとなる。
【0060】
このように、検査情報Saおよび装置情報Mbの条件下においてk枚の学習用画像Nab−1〜Nab−kが生成され、各学習用画像Nに基づいて特徴量Fab−1〜Fab−kおよび画像処理方法Pab−1〜Pab−kが検出される。そして同一の学習用画像Nから検出された特徴量Fと画像処理方法Pとは関連づけられ、結合情報Dがk組生成される。結合情報Dの各々は、記憶部43に記憶される。特徴量Fab−1〜Fab−kの情報は、処理方法検出部33から識別器生成部35へ送信される。
【0061】
ステップA4(識別器の生成)
識別器生成部35は、送信されたk種類の特徴量に基づいて識別器Cの生成を行う。なお、検査情報Saおよび装置情報Mbの条件下で生成される識別器Cは、識別器Cabとして分類される。
【0062】
識別器Cabは、検査用画像の特徴量の情報を入力することにより、入力された検査用画像の特徴量Fxの情報に最も近似する学習用画像の特徴量を識別し、識別した学習用画像の特徴量の情報を出力するものである。識別器Cabはk種類の特徴量F、すなわち特徴量Fab−1〜Fab−kを学習することにより、特徴量Fが属する空間全体はk個のカテゴリ(領域)に区分けされる。すなわちあらゆる特徴量Fは、特徴量Fab−1を含む第1のカテゴリから、Fab−kを含む第kのカテゴリのうち、いずれか1つのカテゴリに属することとなる。識別器Cはサポートベクタマシンによって構成されるので、各カテゴリの境界についてのマージンが最大になるように、各々の特徴量のパラメータを学習する。
【0063】
識別器Cabはまず特徴量Fxの各成分に基づいて、学習済みの特徴量Fab−1〜Fab−kのうち、特徴量Fxに最も近似する特徴量Fを識別する。すなわち識別器Cabは特徴量Fab−1を含む第1のカテゴリから、Fab−kを含む第kのカテゴリまでのうち、特徴量Fxが属するカテゴリを識別する。
【0064】
そして識別器Cabは識別されたカテゴリに含まれている学習済みの特徴量Fを、入力された特徴量Fxに最も近似する特徴量Fとして出力する。例として、特徴量Fab−1〜Fab−kのうち、特徴量Fxの成分が特徴量Fab−cに最も近似している場合、識別器Cabは特徴量Fxの入力に対して、特徴量Fab−cの情報を出力する。このように、識別器Cabはあらゆる特徴量の入力に対して、予め学習したk種類の特徴量Fab−1〜Fab−kのいずれかを出力する構成を有している。
【0065】
このようにステップA4において、識別器生成部35は学習用画像Nを教師データとする学習により、検査情報Saおよび装置情報Mbの組み合わせに対応する識別器Cabを生成する。なおステップA1〜A4の各工程は
図5に示すように、検査情報Sおよび装置情報Mの組み合わせのそれぞれについて行われる。すなわち、h通りの検査情報S1〜Sh、およびj通りの装置情報M1〜Mjのそれぞれの組み合わせに応じて、識別器生成部35は(h×j)通りの識別器C11〜Chjを生成する。
【0066】
記憶部43は、生成された識別器C11〜Chjの各々と、検査情報Sおよび装置情報Mからなる組み合わせ情報Eとを関連づけて記憶する。例として識別器Chjは、検査情報Shおよび装置情報Mjからなる組み合わせ情報Eと関連づけて記憶される。このように検査情報S1〜Sh、および装置情報M1〜Mjのそれぞれの組み合わせについて、学習による識別器C11〜Chjの生成が行われる。ステップA1〜A4の各工程を学習用画像Nの全てについて行うことにより、学習用画像Nを教師データとする学習が行われ、学習段階は終了する。
【0067】
次に
図6を用いて、実施段階におけるX線撮影装置1の動作の工程を説明する。なお学習段階において、一連の識別器C11〜Chjが生成されているものとする。
【0068】
ステップS1(装置情報および検査情報の取得)
実施段階ではまずX線撮影の準備を行い、装置情報および検査情報を取得する。すなわち
図6に示すように被検体Mを天板3に載置する。そして操作者は入力部41を操作して天板3、X線管5、およびX線検出器7の各ユニットをX線撮影条件に応じて移動させ、さらに各ユニットを水平面に対して適宜傾斜させる。さらに操作者は入力部41を操作してコリメータ9に設けられる遮蔽板を移動させ、X線管5から照射されるX線の照射野を調整する。
【0069】
天板3、X線管5、X線検出器7、およびコリメータ9の各ユニットを調整した後、装置情報の検出を行う。天板3、X線管5、X線検出器7、およびコリメータ9の各ユニットには三次元的位置や温度などの情報を随時検出するセンサが設けられている。そして各々のセンサは
図2(a)に例示される、各ユニットの状態を示す情報を装置情報検出部21に随時送信する。
【0070】
装置情報検出部21は送信された情報に基づいて、現時点における各ユニットの状態を示す情報を装置情報Mとして検出する。
図6において、天板3およびX線管5の水平面(xy平面)に対する傾斜角度は、それぞれ符号θ1およびθ2を用いて示されている。装置情報Mの各々は、装置情報検出部21から識別器選択部37へ送信される。
【0071】
そして操作者は入力部41を操作して、
図2(b)に例示される検査情報Sを入力する。入力された検査情報Sは識別器選択部37へ送信される。なお実施段階において入力される検査情報Sを以下、検査情報Sxとして区別し、実施段階において検出される装置情報Mを以下、装置情報Myとして区別する。装置情報Mの検出と検査情報Sの入力により、ステップS1の工程は終了する。
【0072】
ステップS2(識別器の選択)
ステップS1の終了後、識別器選択部37は送信された検査情報Sxおよび装置情報Myに基づいて、実施段階において使用する識別器Cを選択する。学習段階において生成された識別器C11〜Chjの各々は記憶部43に記憶されており、識別器C11〜Chjの各々には検査情報Sおよび装置情報Mからなる、学習用画像生成時の組み合わせ情報Eが関連づけて記憶されている。
【0073】
識別器選択部37は、記憶部43に記憶されている学習用画像生成時の組み合わせ情報Eのうち、送信された検査用画像生成時の検査情報Sxおよび装置情報Myからなる組み合わせ情報Exyと一致する組み合わせ情報Eを探索する。学習段階において記憶部43に組み合わせ情報Exyが既に記憶されている場合(学習済みの場合)、識別器選択部37は組み合わせ情報Exyと関連づけて記憶されている識別器Cxyを実施段階で用いる識別器Cとして選択する。
【0074】
しかし、検査情報Sと装置情報Mとの組み合わせは無限に存在するので、組み合わせ情報Exyと一致する組み合わせ情報Eが記憶部43に記憶されていない場合がある。この場合、識別器選択部37は記憶部43に記憶されている学習用画像生成時の組み合わせ情報Eのうち、検査用画像生成時の組み合わせ情報Exyに最も近似するものを選択する。識別器選択部37は検査情報Sおよび装置情報Mを構成する各パラメータの照合や平均二乗誤差などによる探索を行い、検査用画像生成時の組み合わせ情報Exyに最も近似する学習用画像生成時の組み合わせ情報Eを選択する。実施例では
図7に示すように識別器Cxyは学習されておらず、識別器選択部37は組み合わせ情報Exyに基づいて、検査情報Saおよび装置情報Mbからなる組み合わせ情報Eを選択するものとする。
【0075】
識別器選択部37は、選択された組み合わせ情報Eと関連づけて記憶されている識別器Cを選択する。実施例では選択された組み合わせ情報Eと、識別器Cabとが関連づけて記憶されている。従って、識別器選択部37は実施段階で用いる識別器Cとして、識別器Cabを選択する。このように、識別器選択部37は検査用画像生成時の検査情報Sxおよび装置情報Myに基づいて、実施段階において用いる識別器Cの選択を行う。
【0076】
ステップS3(検査用画像の生成)
識別器Cの選択が行われた後、操作者は入力部41を操作してX線焦点5aからX線5bを被検体Mへ照射させる。X線検出器7は、被検体Mを透過するX線5bを検出してX線検出信号を出力する。画像生成部25はX線検出信号に基づいて、被検体MのX線画像を生成する。ステップS2において生成されるX線画像のうち、画像処理が実行される前のX線画像を以下、検査用画像Rとする。
図7に示すように、検査情報Sxおよび装置情報Myの条件下でz枚目に生成される検査用画像Rを以下、検査用画像Rxy−zとする。検査用画像Rは画像生成部25から特徴量抽出部27へ送信される。
【0077】
ステップS4(特徴量の抽出)
特徴量抽出部27は検査用画像Rから特徴量Fを抽出する。実施段階において特徴量抽出部27が抽出する特徴量Fの内容は学習段階と同様である。
図7に示すように、特徴量抽出部27が検査用画像Rxy−zから抽出する特徴量Fを以下、特徴量Fxy−zとする。実施段階において抽出される特徴量Fの情報は、ステップS2において識別器選択部37が選択した識別器Cへ送信される。
【0078】
ステップS5(画像処理方法の抽出)
識別器選択部37が選択した識別器Cすなわち識別器Cabは、送信された特徴量Fの情報に基づいて検査用画像Rに最適な画像処理方法の抽出を行う。送信された特徴量Fすなわち特徴量Fxyの情報は、識別器Cabに入力される。識別器Cabには学習段階において、k種類の特徴量Fab−1〜Fab−kの情報が学習されている。
【0079】
識別器Cabはまず特徴量Fxy−zの各成分に基づいて、学習済みの特徴量Fab−1〜Fab−kのうち、特徴量Fxy−zに最も近似する特徴量Fを識別する。すなわち識別器Cabは特徴量Fab−1を含む第1のカテゴリから、Fab−kを含む第kのカテゴリまでのうち、特徴量Fxy−zが属するカテゴリを識別する。識別器Cabは、特徴量Fxyが特徴量Fab−dを含むカテゴリに属していると識別した場合、特徴量Fxの入力に対して特徴量Fab−dの情報を出力する。出力された特徴量Fab−dの情報は、処理方法抽出部29へ送信される。
【0080】
処理方法抽出部29は、記憶部43に記憶されている特徴量Fのうち、送信された特徴量Fと一致するものを探索する。そして探索によって特定された特徴量Fと関連づけて記憶されている画像処理方法Pの情報を抽出する。識別器Cabが特徴量Fab−dの情報を出力した場合、処理方法抽出部29は記憶部43に記憶されている一連の特徴量に対して特徴量Fab−dの探索を行う。
【0081】
記憶部43において、特徴量Fab−dは画像処理方法Pab−dと関連づけて記憶されている。従って、処理方法抽出部29は特徴量Fab−dに基づいて、画像処理方法Pab−dの情報を検査用画像Rxy−zに最適な画像処理方法Pとして抽出する。抽出された画像処理方法Pab−dの情報は、処理方法抽出部29から画像処理実行部31へ送信される。
【0082】
ステップS6(検査用画像の画像処理)
画像処理実行部31は送信された画像処理方法Pの情報に基づいて、画像生成部25が生成した検査用画像Rに対して画像処理を行う。画像処理方法Pによる画像処理が行われた検査用画像Rを、処理後画像とする。画像処理実行部31は検査用画像Rxy−zに対して、画像処理方法Pab−dによる画像処理を実行し、処理後画像を生成する。記憶部43は特徴量Fxy−zの情報と、特徴量Fxy−zに最適な画像処理方法Pである、画像処理方法Pab−dとを関連づけて記憶する。また、特徴量Fxy−zの情報はフィードバック部39へ送信される。
【0083】
画像処理方法Pab−dは、検査用画像Rxy−zに最適な画像処理方法Pである。従って、画像処理方法Pab−dに基づく画像処理により、検査用画像Rxy−zは輝度調整やノイズ補正などが最適な条件の下で行われた、診断に適するX線画像となる。処理後画像はモニタ45に表示される。
【0084】
なお、モニタ45に表示された処理後画像を参照し、画像処理実行部31が実行した画像処理方法Pab−dを修正する必要があると操作者が判断する場合がある。このような場合、必要に応じて操作者はさらに入力部41を操作して、処理後画像に対して行われた画像処理の各パラメータを手動で適宜修正できる。画像処理方法Pab−dの修正を行った場合、記憶部43は特徴量Fxy−zの情報と、修正後の画像処理方法Pの情報とを関連づけて記憶する。
【0085】
ステップS7(識別器の追加学習)
検査用画像Rxy−zの画像処理を行った後、検査用画像Rxy−zから抽出された特徴量Fxy−zを用いて識別器の追加学習を行う。すなわちフィードバック部39は送信された特徴量Fxy−zの情報を識別器生成部35へフィードバックする。
【0086】
識別器生成部35はフィードバックされた特徴量Fxy−zの情報を用いて、識別器Cに追加学習を行わせる。追加学習を行わせる識別器Cは、フィードバックされた特徴量Fが、ステップS5において入力された識別器Cとすることが好ましい。組み合わせ情報Exyと関連づけて識別器Cxyが学習済みの場合、ステップS5において特徴量Fxy−zの情報は識別器Cxyに入力される。この場合、識別器生成部35は特徴量Fxy−zの情報を用いて、識別器Cxyに追加学習を行わせる。
【0087】
しかし、実施例では識別器Cxyが学習されておらず、組み合わせ情報Exyに対して識別器Cabが選択され、特徴量Fxy−zの情報は識別器Cabに入力されている。従って実施例の場合、フィードバック部39は特徴量Fxy−zの情報を用いて、識別器Cabに追加学習を行わせる。
【0088】
k種類の特徴量Fを既に学習している識別器Cabは、検査用画像Rxy−zから抽出された特徴量Fxy−zの情報を追加学習することにより、(k+1)種類の特徴量を学習した状態となる。すなわち追加学習後の識別器Cabにおいて、特徴量Fが属する空間全体は(k+1)個のカテゴリに区分けされる。X線撮影装置1は、以降に検査用画像Rから抽出される特徴量Fに対して、追加学習後の識別器Cを用いて最適な画像処理方法Pの特定を行う。
【0089】
例として、画像処理部25が新たに(k+1)枚目の検査用画像Rxy−(z+1)を生成した場合、検査用画像Rxy−(z+1)から抽出された特徴量Fxy−(z+1)の情報は、追加学習後の識別器Cabに入力される。特徴量Fxy−(z+1)は、特徴量Fab−1を含む第1のカテゴリから、Fxy−zを含む第(k+1)のカテゴリのいずれかに属する。
【0090】
従って、追加学習後のCabは特徴量Fxy−(z+1)の入力に対して、(k+1)種類の特徴量Fab−1〜Fxy−zのいずれかを出力する。このような識別器Cの追加学習を行うことにより、実施段階でX線画像を生成するたびに、識別器Cは入力される特徴量Fに対して、より近似している学習済みの特徴量を出力できるようになる。識別器Cに対する追加学習を行うことにより、X線撮影に関する全ての工程は終了する。
【0091】
<実施例の構成による効果>
実施例に係るX線撮影装置1では、診断に用いるX線画像を撮影する実施段階の前に、学習段階が設けられる。学習段階において、学習用画像から抽出される特徴量を教師データとする学習により、識別器が生成される。また、記憶部は学習用画像の特徴量と、当該学習用画像に最適な画像処理方法とを関連づけて記憶する。
【0092】
識別器はあらゆる特徴量の入力に対して、学習済みの特徴量のうち、入力された特徴量に最も近似する特徴量を識別し、識別した学習済みの特徴量を出力する構成を有している。そのため実施段階において、検査用画像から抽出される特徴量を識別器に入力することにより、識別器は検査用画像の特徴量に最も近似する学習済みの特徴量を識別して出力する。学習済みの特徴量の各々は、いずれも特徴量の基となる学習用画像に最適な画像処理方法と関連づけて記憶されている。そして処理方法抽出部は識別器が出力する特徴量と関連づけられている画像処理方法を、識別器に入力された特徴量に対応する画像処理方法として抽出する。
【0093】
識別器に入力される特徴量と、識別器が識別して出力する特徴量は近似している。そのため、処理方法が抽出する画像処理方法を用いて検査用画像を処理することにより、検査用画像は診断に適するX線画像となる。このように、実施例では検査用画像が生成されるたびに、その検査用画像に最適な画像処理方法が自動的に抽出される。そのため操作者は生成される検査用画像に適する画像処理方法を自身で判別する必要がない。
【0094】
従って、画像処理方法の判別に要する時間を短縮し、かつ操作者が受ける負担を軽減できる。また操作者の技量に左右されることなく、画像処理後のX線画像の品質を一定に保つことができる。さらに、X線透視によって多数のX線画像を短時間に生成する場合であっても、多数のX線画像の各々について、それぞれ最適な画像処理方法による画像処理が迅速に実行される。そのため実施例に係るX線撮影装置は、X線透視におけるX線画像の品質とスループットとを大幅に上昇させることが可能となる。
【0095】
学習によって生成された識別器は、学習用画像に係る組み合わせ情報と関連づけて記憶される。そして識別器選択部は実施段階において、検査用画像の生成時における組み合わせ情報の入力に対して、検査用画像に対して使用する識別器を選択する。識別器選択部は、識別器と関連づけられて学習されている組み合わせ情報のうち、検査用画像の生成時における組み合わせ情報と最も近似する組み合わせ情報をパラメータ照合などによって選択する。そして選択された組み合わせ情報と関連づけられている識別器を、検査用画像に対して使用する識別器として選択する。
【0096】
このような構成を有することにより、入力される組み合わせ情報が学習済みの組み合わせ情報のいずれにも一致しない場合であっても、識別器選択部は検査用画像の生成時における組み合わせ情報に対応する適切な識別器を選択できる。選択された識別器を用いることにより、検査用画像に適する画像処理方法が抽出される。そのため、新規な検査情報および装置情報の条件下で検査用画像を生成した場合であっても、検査用画像に適する画像処理方法を自動的に抽出できる。従って、実施例に係るX線撮影装置はあらゆる撮影条件の下で、X線画像に対して最適な画像処理を迅速に施すことができる。
【0097】
また実施例に係るX線撮影装置は、実施段階で抽出された検査用画像の特徴量に基づいて、識別器に対して追加学習を行う機能を有している。この場合、実施段階でX線画像を生成するたびに追加学習が行われるので、実施例に係るX線撮影装置の使用回数が多くなるに従って、識別器は入力される特徴量Fに対して、より近似した学習済みの特徴量を判別して出力できるようになる。その結果、X線撮影装置の使用回数に応じて、より診断に適した処理後画像を取得することが可能となる。
【0098】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0099】
(1)上述した実施例では、検査情報を術者が入力部35に入力する構成を有しているが、検査情報を取得する構成はこれに限られない。すなわちX線撮影装置1はネットワークを介してHIS(Hospital Information System)やRIS(Radiology Information System)などと接続され、HISやRISを介して検査情報を取得する構成としてもよい。
【0100】
(2)上述した実施例では、識別器Cxyが学習段階において生成されていない場合、ステップS7において特徴量Fxy−zの情報を用いて、特徴量Fxy−zが入力された識別器Cabの追加学習を行う構成としたがこれに限られない。すなわち識別器生成部35は特徴量Fxy−zに基づいて、検査情報Sxおよび装置情報Myに関連づけられた、新たに識別器Cxyを生成(学習)してもよい。
【0101】
この場合、X線画像を生成するたびに、より多くの識別器Cが追加学習によって生成される。従って、識別器選択部37はより多様な組み合わせ情報Eの入力に対して、入力された組み合わせ情報Eと関連づけて記憶されている識別器Cを探索できる。すなわち、識別器選択部37は入力された組み合わせ情報Eと近似する組み合わせ情報Eを計算する必要がない。その結果、識別器Cの選択に要する時間を低減できるので、検査用画像Rに対して最適な画像処理方法Pをより迅速に抽出できる。
【0102】
(3)上述した実施例において、識別器選択部37は、サポートベクタマシンやニューラルネットワークを例とする識別器であってもよい。この場合、識別器選択部37を構成する識別器Sは、検査情報Sおよび装置情報Mからなる組み合わせ情報Eを入力することにより、学習済みの組み合わせ情報Eのうち、入力された組み合わせ情報Eと最も近似するものを識別して出力する。そのため識別器選択部37は、あらゆる組み合わせ情報Eの入力に対して、学習済みの情報のうち最も近似する組み合わせ情報Eを迅速に出力できる。
【0103】
このように組み合わせ情報Eを入力する1段目の識別器Sと、特徴量Fを入力する2段目の識別器Cとを備えることにより、新規な検査情報Sおよび装置情報Mの条件下で検査用画像Rを生成した場合であっても、より迅速に最適な画像処理方法Pが抽出される。従って、診断に適する画像処理が行われたX線画像を、あらゆる撮影条件の下で迅速に取得できる。
【0104】
(4)上述した実施例において、ステップS2に係る識別器の選択を行うタイミングは、ステップS5を開始する前であれば適宜変更してもよい。
【0105】
(5)上述した実施例において、水平姿勢をとる被検体Mに対してX線画像の撮影を行ったが、これに限られない。すなわち実施例に係るX線撮影装置の構成は、立位体勢をよる被検体Mに対してX線撮影を行う場合にも適用できる。この場合、x方向すなわち被検体Mの体軸方向は鉛直方向と平行になる。