(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端工具に打撃力が伝達される一方、回転力は伝達されない第1動作モードと、前記先端工具に少なくとも回転力が伝達される第2動作モードと、を含む2つ以上の動作モードを有する打撃工具であって、動力源であるモータと、前記モータを停止させる停止制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、所定条件に応じて2つ以上の前記停止制御のいずれか1つを実行し、
前記停止制御には、前記モータに対する制動力が大きい停止制御と、前記モータに対する制動力が小さい停止制御と、が含まれ、
前記制御部は、前記モータの回転中に動作モードの切り替えが行われると、前記制動力が大きい停止制御を実行する、打撃工具。
前記制動力が大きい停止制御は、前記モータの回転を積極的に停止させるブレーキ工程を含む積極停止制御であり、前記制動力が小さい停止制御は、前記ブレーキ工程を含まない自然停止制御である、請求項1に記載の打撃工具。
前記モータは、複数のコイルを備えるステータと、極性が異なる磁石を備えるロータと、を有するブラシレスモータであり、前記制御部は、前記複数のコイルへの通電を制御する複数のスイッチング素子を制御し、前記制御部は、前記制動力が小さい停止制御においては、前記コイルへの通電が遮断されるように前記スイッチング素子を制御し、前記制御部は、前記制動力が大きい停止制御においては、前記コイルを含む閉回路が形成され、前記ロータに回生ブレーキが作用するように前記スイッチング素子を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の打撃工具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の打撃工具の第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る打撃工具は、先端工具の一例であるドリルビットを着脱可能なハンマドリルである。本実施形態に係るハンマドリルの用途は特に限定されないが、コンクリート壁や石材などの対象物に穴を開けたり、対象物を破砕したりする作業に適している。また、本実施形態に係るハンマドリルは、ドリルビットに打撃力が伝達される一方、回転力は伝達されない第1動作モードと、ドリルビットに少なくとも回転力が伝達される第2動作モードと、を有する。さらに本実施形態における第2動作モードでは、回転力に加えて打撃力がドリルビットに伝達される。そこで、以下の説明では、第1動作モードを“ハンマモード”と呼び、第2動作モードを“ハンマドリルモード”と呼ぶ。
【0017】
図1に示されるように、ハンマドリル1は、シリンダハウジング2と、中間ハウジング3と、モータハウジング4と、ハンドル5と、を有し、これらは相互に固定されて一体化している。シリンダハウジング2は全体として円筒形であり、シリンダハウジング2の長手方向一端(後端)とハンドル5との間に、中間ハウジング3及びモータハウジング4が配置されている。中間ハウジング3とモータハウジング4は上下に重なっており、ハンドル5の一端(下端)がモータハウジング4に連結され、ハンドル5の他端(上端)が中間ハウジング3に連結されている。尚、ハンドル5と中間ハウジング3及びモータハウジング4とは防振機構を介してそれぞれ連結されている。
【0018】
シリンダハウジング2の内部には、円筒形のシリンダ10及びリテーナスリーブ11が収容されている。シリンダ10及びリテーナスリーブ11は同心であり、リテーナスリーブ11の一部はシリンダハウジング2の先端から突出している。シリンダ10及びリテーナスリーブ11は相対回転不能に係合しており、シリンダ10に回転力が伝達されると、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が中心軸を回転軸として一体回転する。また、不図示のドリルビットの一部がリテーナスリーブ11に挿入される。リテーナスリーブ11に挿入されたドリルビットは、リテーナスリーブ11に対して、回転方向には移動不能、かつ、軸方向には所定範囲で移動可能に係合する。よって、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が回転すると、ドリルビットに回転力が伝達され、ドリルビットが回転する。また、ドリルビットに打撃力が伝達されると、ドリルビットは軸方向に所定範囲で往復動する。シリンダ10,リテーナスリーブ11及びドリルビットの動きの詳細については後述する。
【0019】
シリンダ10内にはピストン20及び打撃子21が往復動可能に収容されている。また、シリンダ10とリテーナスリーブ11とに跨って中間子22が往復動可能に収容されている。これらピストン20,打撃子21及び中間子22は、シリンダ10の後方から前方に向かってこの順で一列に並んでいる。さらに、シリンダ10内であってピストン20と打撃子21との間には空気室23が設けられている。
【0020】
モータハウジング4内には、動力源であるモータ30が収容されている。モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータであって、筒形状のステータ31と、ステータ31の内側に配置されたロータ32と、ロータ32の内側に配置された出力軸33と、を有する。出力軸33はロータ32に固定されており、ロータ32を貫通して上下に伸びている。出力軸33の中心軸とシリンダ10及びリテーナスリーブ11の中心軸とは直交している。
【0021】
ロータ32から突出している出力軸33の上部は、モータハウジング4と中間ハウジング3との間の隔壁を貫通して中間ハウジング3の内側に進入している。中間ハウジング3内に突出している出力軸33の上端にはピニオンギヤ34が設けられている。中間ハウジング3内であって、出力軸33の近傍には、第1駆動軸40が回転自在に配置され、第1駆動軸40の近傍には第2駆動軸50が回転自在に配置されている。これら出力軸33,第1駆動軸40及び第2駆動軸50は互いに平行である。
【0022】
第1駆動軸40の下部にはピニオンギヤ34と噛合う第1ギヤ41が設けられており、第1駆動軸40の上部には偏心ピン42が設けられており、この偏心ピン42がコンロッド43を介してピストン20に連結されている。
【0023】
第2駆動軸50の下部には第1ギヤ41と噛合う第2ギヤ51が設けられており、第2駆動軸50の上部にはベベルギヤ52が設けられており、このベベルギヤ52がシリンダの周囲に配置されているリングギヤ53と噛合っている。リングギヤ53は滑り軸受(メタル)を介してシリンダ10の外周面に装着されており、シリンダ10に対して自由に回転する。
【0024】
シリンダ10の外周面には、リングギヤ53に加えてスリーブ54が設けられている。スリーブ54は、シリンダ10と一体回転し、かつ、単独でシリンダ10の軸方向に往復スライドする。スリーブ54はスプリングによってリングギヤ53に近接する方向に常に付勢されている。
【0025】
中間ハウジング3の上面にはモード切替ダイヤル60が設けられている。モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマモードとハンマドリルモードとが切り替えられる。換言すれば、モード切替ダイヤル60の回転操作によって、ドリルビットに打撃力のみが伝達される動力伝達経路と、ドリルビットに打撃力及び回転力が伝達される動力伝達経路と、が選択的に形成される。動力伝達経路の詳細については後述する。
【0026】
図1に示されているモード切替ダイヤル60を第1方向に180度回転させると、
図2に示されるように、操作アーム61がシリンダ10の軸方向前方に移動する。すると、前進する操作アーム61によってスリーブ54が押され、スリーブ54がスプリングの付勢に抗して前方にスライドする。この結果、リングギヤ53とスリーブ54との係合が解除される。このようにしてリングギヤ53とスリーブ54との係合が解除されると、シリンダ10への回転力の伝達が遮断される。
【0027】
一方、
図2に示されているモード切替ダイヤル60を第2方向に180度回転させると、
図1に示されるように操作アーム61が後退する。すると、操作アーム61とスリーブ54との接触が解除され、スリーブ54がスプリングの付勢によって後方にスライドする。この結果、リングギヤ53とスリーブ54とが係合する。このようにしてリングギヤ53とスリーブ54とが係合すると、シリンダ10に回転力が伝達される。
【0028】
図1,
図2に示されるように、ハンドル5には作業者によって操作される第1操作部としてのトリガレバー70と、作業者によって操作される第2操作部としてのオンロックボタン80とが設けられている。また、ハンドル5の内部には、トリガレバー70の操作に基づいてオン・オフされるメインスイッチ71が設けられている。オンロックボタン80には所定条件に従って点灯及び消灯する点灯部(本実施形態ではLED)が内蔵されている。さらに、ハンドル5には、回転数設定ボタンや複数のLEDを含む操作パネル90も設けられている。操作パネル90上の回転数設定ボタンが押されると、その回数に応じてブラシレスモータ30の目標回転数が段階的に切り替わる。また、設定された目標回転数に応じて点灯するLEDの数が変化し、設定された目標回転数が報知される。
【0029】
次に、ハンマドリル1における動力伝達経路について説明する。
図1,
図2に示されるブラシレスモータ30が作動すると、出力軸33の回転がピニオンギヤ34及び第1ギヤ41を介して第1駆動軸40に伝達され、第1駆動軸40が回転する。また、出力軸33の回転がピニオンギヤ34,第1ギヤ41及び第2ギヤ51を介して第2駆動軸50に伝達され、第2駆動軸50が回転する。
【0030】
第1駆動軸40が回転すると、第1駆動軸40の上端に設けられている偏心ピン42が第1駆動軸40の中心軸を回転軸として回転する。すなわち、第1駆動軸40の中心軸の周囲を偏心ピン42が旋回する。この結果、コンロッド43を介して偏心ピン42と連結されているピストン20がシリンダ10内で往復動する。ピストン20が打撃子21から離反する方向に移動すると、つまりピストン20が後退すると、空気室23内の圧力が低下し、打撃子21が後退する。一方、ピストン20が打撃子21に近接する方向に移動すると、つまりピストン20が前進すると、空気室23内の圧力が上昇し、打撃子21が前進する。打撃子21が前進すると、該打撃子21によって中間子22が打撃され、中間子22によってドリルビット(不図示)が打撃される。このようにしてドリルビットに断続的に打撃力が伝達される。
【0031】
第2駆動軸50が回転すると、第2駆動軸50の上端に設けられているベベルギヤ52が回転し、ベベルギヤ52と噛合っているリングギヤ53が回転する。このとき、モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマモードが選択されていると、すなわち、
図2に示されるように、リングギヤ53とスリーブ54との係合が解除されていると、リングギヤ53の回転はシリンダ10に伝達されず、リングギヤ53はシリンダ10上で空転する。よって、ドリルビットに回転力は伝達されず、打撃力のみが伝達される。
【0032】
一方、モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマドリルモードが選択されていると、すなわち、
図1に示されるように、リングギヤ53とスリーブ54とが係合していると、リングギヤ53の回転がスリーブ54を介してシリンダ10に伝達され、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が一体回転する。よって、リテーナスリーブ11に保持されているドリルビットには、断続的に打撃力が伝達され、かつ、連続的に回転力が伝達される。
【0033】
次に、本実施形態に係るハンマドリル1が備える各種回路やブラシレスモータ30の回路構成などについて
図3を参照しながら説明する。
図1,
図2に示されるように、ブラシレスモータ30とハンドル5との間に制御基板100が設けられている。
図3に示されるように、上記ブラシレスモータ30,メインスイッチ71,オンロックボタン80,操作パネル90等は制御基板100と電気的に接続されている。また、制御基板100には、後述するスイッチング回路102,整流回路103,力率改善回路104,コントローラ106等を含むモータ制御ユニット105が搭載されている。
【0034】
図3に示されるように、ブラシレスモータ30(
図1,
図2)のステータ31は、U相,V相,W相に対応するコイルU1,V1,W1を備えている。一方、ブラシレスモータ30のロータ32(
図1,
図2)には、極性が異なる2種類の永久磁石が4つ設けられている。これら4つの永久磁石は、ロータ32の回転方向に沿って等間隔で配置されている。
図3に示されるように、ロータ32の近傍には3つの磁気センサS1,S2,S3が配置されている。これら磁気センサS1,S2,S3は、ロータ32の回転に伴う磁力変化を検出して電気信号をロータ位置検出回路101に出力する。本実施形態における磁気センサS1,S2,S3にはホール素子が用いられている。
【0035】
図3に示されるスイッチング回路102は、ステータ31のコイルU1,V1,W1への通電を制御する。スイッチング回路102の手前には、交流電流を直流電流に変換する整流回路103と、整流回路103から出力される直流電流の電圧を昇圧してスイッチング回路102に供給する力率改善回路104と、が配置されている。整流回路103は、4つのダイオード素子が互いに接続されたブリッジ回路である。力率改善回路104は、電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタに対してPWM(Pulse Width Modulation)制御信号を出力する集積回路と、コンデンサと、を有し、スイッチング回路102において発生する高周波電流を制限値以下に抑制する。
【0036】
スイッチング回路102は、3相フルブリッジインバータ回路であり、並列接続された2つのスイッチング素子Tr1,Tr2と、並列接続された2つのスイッチング素子Tr3,Tr4と、並列接続された2つのスイッチング素子Tr5,Tr6と、を有する。それぞれのスイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子Tr1,Tr2はコイルU1に接続され、コイルU1に供給される電流を制御する。スイッチング素子Tr3,Tr4はコイルV1に接続され、コイルV1に供給される電流を制御する。スイッチング素子Tr5,Tr6はコイルW1に接続され、コイルW1に供給される電流を制御する。
【0037】
スイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5は、力率改善回路104の正極側出力端子に接続されており、スイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6は、力率改善回路104の負極側出力端子に接続されている。すなわち、スイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5はハイサイド側であり、スイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6はローサイド側である。
【0038】
尚、本実施形態では、コイルU1,V1,W1がスター結線されている。しかし、コイルU1,V1,W1の結線方式はスター結線に限られず、例えば、デルタ結線であってもよい。
【0039】
図3に示されているモータ制御ユニット105は、制御部としてのコントローラ106と、制御信号出力回路107と、ロータ位置検出回路101と、モータ回転数検出回路108と、を含んでいる。コントローラ106は、ブラシレスモータ30を制御するための信号を演算し、出力する。コントローラ106から出力される制御信号は、制御信号出力回路107を経てスイッチング回路102に入力される。ロータ位置検出回路101は、磁気センサS1,S2,S3から出力される電気信号に基づいてロータ32(
図1,
図2)の回転位置を検出し、ロータ32の回転位置を示す信号を出力する。ロータ位置検出回路101から出力される位置検出信号は、コントローラ106及びモータ回転数検出回路108に入力される。モータ回転数検出回路108は、ロータ32の回転数つまりモータ回転数を検出し、モータ回転数を示す信号を出力する。モータ回転数検出回路108から出力される回転数検出信号は、コントローラ106に入力される。コントローラ106は、モータ回転数が目標回転数に維持されるように、回転数検出信号に基づくフィードバック制御を実行する。
【0040】
図3に示されるコントローラ106には、
図1,
図2に示されるトリガレバー70の操作に伴ってメインスイッチ71から出力されるオン信号及びオフ信号が入力される。
図1,
図2に示されるトリガレバー70が作業者によって操作されると、その操作に応じてメインスイッチ71からオン信号又はオフ信号が出力される。具体的には、トリガレバー70が引かれるとメインスイッチ71からオン信号が出力され、トリガレバー70の引きが解除されるとメインスイッチ71からオフ信号が出力され、又はオン信号の出力が停止される。コントローラ106は、メインスイッチ71から出力されたオン信号を受信すると、メインスイッチ71がオンされたと判断する。一方、コントローラ106は、メインスイッチ71から出力されたオフ信号を受信するか、又はオン信号の受信が途絶えると、メインスイッチ71がオフされたと判断する。
【0041】
図3に示されるコントローラ106には、
図1,
図2に示されるオンロックボタン80から出力されるオンロック信号が入力される。本実施形態におけるオンロックボタン80は、操作される度に信号を出力(送信)するタクタイルスイッチである。よって、
図3に示されるコントローラ106には、オンロックボタン80が操作される度にオンロック信号が入力される。言い換えれば、コントローラ106は、オンロックボタン80が押される度にオンロック信号を受信する。
【0042】
再び
図1,
図2を参照する。中間ハウジング3には、モード検出部としてのセンサ62が設けられている。このセンサ62は、モード切替ダイヤル60が所定位置に回転操作されると電気信号(モード検出信号)を出力(送信)する。センサ62から出力されたモード検出信号は、
図3に示されるコントローラ106に入力される。
図1,
図2に示されるモード切替ダイヤル60には永久磁石60aが内蔵されている。モード切替ダイヤル60が
図2に示される位置に回転操作されると、つまりハンマモードが選択されると、モード切替ダイヤル60に内蔵されている永久磁石60aがセンサ62の近傍(本実施形態では、センサ62の真上)に位置する。すると、永久磁石60aの磁力がセンサ62によって検出され、センサ62からモード検出信号が出力される。一方、モード切替ダイヤル60が
図1に示される位置に回転操作されると、つまりハンマドリルモードが選択されると、モード切替ダイヤル60に内蔵されている永久磁石60aがセンサ62から離反する。すると、永久磁石60aの磁力がセンサ62によって検出されなくなり、センサ62からのモード検出信号の出力が途絶える。よって、
図3に示されるコントローラ106は、モード検出信号の入力の有無によって、選択されている動作モードがハンマモードであるか否かを判別することができる。
【0043】
(第1の制御フロー) 次に、
図3に示されるコントローラ106によって実行されるブラシレスモータ30の制御(オン・オフ制御)の一例について主に
図3,
図4を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、ブラシレスモータ30を“モータ30”と略称する。
【0044】
電源ケーブルが電源に接続されると、コントローラ106による制御が開始される。コントローラ106は、まず選択されている動作モードがハンマモードであるか否かを判別する(S1)。動作モードがハンマモードである場合(S1:Yes)、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S2)。すなわち、トリガレバー70(
図1,
図2)が引かれているか否かを判別する。メインスイッチ71がオンされている場合(S2:Yes)、コントローラ106は、モータ30をオンする(S3)。以後、コントローラ106はステップS1〜S3を繰り返し、モータ30の作動状態を維持する。但し、ステップS1〜S3を繰り返している間にメインスイッチ71がオフされると(S2:No)、コントローラ106は、自然停止制御を実行する。具体的には、コントローラ106はモータ30をオフする(S4)。より具体的には、コントローラ106は、スイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4,Tr5,Tr6をオフさせ、ステータ31が備えるコイルV1,U1,W1への通電を遮断する。
【0045】
以上のように、選択されている動作モードがハンマモードである場合、
図1,
図2に示されるトリガレバー70の操作によってモータ30が起動される。また、トリガレバー70の操作に基づいてモータ30のオン・オフが制御される。さらには、トリガレバー70の操作が解除されると、ブレーキ工程を含まない自然停止制御によってモータ30が停止される。よって、トリガレバー70の操作が解除された直後にトリガレバー70が再び操作された場合であっても、モータ30の回転数がスムーズに立ち上がる。
【0046】
一方、選択されている動作モードがハンマドリルモードである場合(S1:No)、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S5)。すなわち、トリガレバー70(
図1,
図2)が引かれているか否かを判別する。メインスイッチ71がオンされている場合(S5:Yes)、コントローラ106は、モータ30をオンする(S6)。以後、コントローラ106はステップS1,S5,S6を繰り返し、モータ30の作動状態を維持する。但し、ステップS1,S5,S6を繰り返している間にメインスイッチ71がオフされると(S5:No)、コントローラ106は、積極停止制御を実行する。具体的には、コントローラ106は、モータ30をオフし、さらにモータ30にブレーキを掛ける(S7)。より具体的には、コントローラ106は、スイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4,Tr5,Tr6を選択的にオン・オフさせ、ステータ31が備えるコイルV1,U1,W1の少なくとも1つを含む閉回路を形成する。これにより、ロータ32(
図1,
図2)が回転すると、該ロータ32に回生ブレーキが作用する。このように、積極停止制御には、モータ30(ロータ32)の回転を積極的に停止させるブレーキ工程が含まれる。
【0047】
以上のように、選択されている動作モードがハンマドリルモードである場合、
図1,
図2に示されるトリガレバー70の操作によってモータ30が起動される。また、トリガレバー70の操作に基づいてモータ30のオン・オフが制御される。さらには、トリガレバー70の操作が解除されると、ブレーキ工程を含む積極停止制御によってモータ30が停止される。よって、トリガレバー70の操作が解除された後にモータ30が慣性で回り続けることがないか、慣性で回り続ける時間が極めて短時間に抑制される。尚、ハンマモードの際にトリガレバー(
図1,
図2)の操作が解除されると、ブレーキ工程を含まない自然停止制御によってモータ30が停止されることは既述のとおりである。すなわち、コントローラ106によって実行される停止制御には、モータ30に対する制動力が異なる少なくとも2つの停止制御(積極停止制御,自然停止制御)が含まれ、コントローラ106は、所定条件に応じて、これら2つの停止制御のいずれか一方を実行する。
【0048】
(第2の制御フロー) 次に、
図3に示されるコントローラ106によって実行されるブラシレスモータ30の制御(オン・オフ制御)の他の一例について主に
図3,
図5を参照しながら説明する。
【0049】
電源ケーブルが電源に接続されると、コントローラ106による制御が開始される。コントローラ106は、まず選択されている動作モードがハンマモードであるか否かを判別する(S1)。動作モードがハンマモードではない場合(S1:No)、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S2)。すなわち、トリガレバー70(
図1,
図2)が引かれているか否かを判別する。メインスイッチ71がオンされている場合(S2:Yes)、コントローラ106は、モータ30をオンする(S3)。以後、コントローラ106はステップS1〜S3を繰り返し、モータ30の作動状態を維持する。但し、ステップS1〜S3を繰り返している間にメインスイッチ71がオフされると(S2:No)、コントローラ106は、積極停止制御を実行する。
【0050】
以上のように、選択されている動作モードがハンマドリルモードである場合、
図1,
図2に示されるトリガレバー70の操作によってモータ30が起動される。また、トリガレバー70の操作に基づいてモータ30のオン・オフが制御される。さらには、トリガレバー70の操作が解除されると、ブレーキ工程を含む積極停止制御によってモータ30が停止される。よって、トリガレバー70の操作が解除された後にモータ30が慣性で回り続けることがないか、慣性で回り続ける時間が極めて短時間に抑制される。
【0051】
一方、選択されている動作モードがハンマモードである場合(S1:Yes)、コントローラ106は、オンロック信号の受信の有無を判別する(S5)。すなわち、オンロックボタン80(
図1,
図2)が押されたか否かを判別する。オンロック信号を受信すると(S5:Yes)、コントローラ106は、オンロックボタン80に内蔵されているLEDを点灯させ(S6)、モータ30をオンする(S7)。
【0052】
次に、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S8)。すなわち、トリガレバー70(
図1,
図2)が引かれているか否かを判別する。メインスイッチ71がオンされていない場合(S8:No)、コントローラ106は、オンロック信号の受信の有無を判別する(S9)。オンロック信号を受信しない場合(S9:No)、コントローラ106は、モード検出信号の受信の有無を判別する(S10)。すなわち、モード切替ダイヤル60(
図1,
図2)の操作の有無を判別する。モード検出信号を受信しており、モード切替が行われていないと判断すると(S10:No)、コントローラ106は、ステップS8に戻る。以後、コントローラ106は、ステップS8〜S10を繰り返し、モータ30を作動状態に維持する。換言すれば、コントローラ106は、トリガレバー70(
図1,
図2)が操作されていなくともモータ30を作動状態に維持するオンロック制御を実行する。
【0053】
但し、オンロック制御の実行中に(ステップS8〜S10を繰り返している間に)モード検出信号を受信しなくなり、モード切替が行われたと判断すると(S10:Yes)、コントローラ106は、オンロックボタン80に内蔵されているLEDを消灯させ(S11)、積極停止制御を実行する(S12)。すなわち、オンロック制御の実行中に動作モードの切り替えが行われると、ブレーキ工程を含む積極停止制御によってモータ30が停止される。
【0054】
また、オンロック制御の実行中に(ステップS8〜S10を繰り返している間に)メインスイッチ71がオンされるか(S8:Yes)、又はオンロック信号を受信すると(S9:Yes)、コントローラ106は、オンロックボタン80に内蔵されているLEDを消灯させ(S13)、自然停止制御を実行する。すなわち、オンロック制御の実行中にトリガレバー70(
図1,
図2)が引かれ、又はオンロックボタン80(
図1,
図2)が押されると、ブレーキ工程を含まない自然停止制御によってモータ30が停止される。尚、オンロック制御の実行中に動作モードの切り替えが行われると、ブレーキ工程を含む積極停止制御によってモータ30が停止されることは既述のとおりである。すなわち、コントローラ106によって実行される停止制御には、モータ30に対する制動力が異なる少なくとも2つの停止制御(積極停止制御,自然停止制御)が含まれ、コントローラ106は、所定条件に応じて、これら2つの停止制御のいずれか一方を実行する。
【0055】
以上のように、ハンマモード選択時には、オンロックボタン80の一回の操作によってモータ30を起動させ、かつ、オンロック制御を実行させることができる。換言すれば、オンロック制御は、ハンマモード選択時にのみ実行され得る。また、オンロックボタン80(
図1,
図2)に内蔵されているLEDの点灯により、オンロック制御が実行されていることが報知される。さらに、オンロック制御の実行中に動作モードの切り替えが行われると、ブレーキ工程を含む積極停止制御が実行される。よって、突然の回転力伝達による反動の発生が回避される。一方、オンロック制御の実行中にトリガレバー70又はオンロックボタン80(
図1,
図2)が操作されると、ブレーキ工程を含まない自然停止制御が実行される。換言すれば、トリガレバー70又はオンロックボタン80の操作によってオンロック制御の実行を中止させ、モータ30を停止させることができる。よって、トリガレバー70やオンロックボタン80の操作が解除された直後にこれらが再び操作された場合であっても、モータ30の回転数がスムーズに立ち上がる。
【0056】
ステップS5においてオンロック信号を受信しない場合(S5:No)、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S15)。すなわち、トリガレバー70(
図1,
図2)が引かれているか否かを判別する。メインスイッチ71がオンされている場合(S15:Yes)、コントローラ106は、モータ30をオンする(S16)。モータ30をオンさせたコントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判別し(S17)、メインスイッチ71がオンされていない場合(S17:No)、自然停止制御によってモータ30を停止させる(S18)。一方、メインスイッチ71がオンされている場合(S17:Yes)、コントローラ106は、モード検出信号の受信の有無を判別する(S19)。すなわち、モード切替ダイヤル60(
図1,
図2)の操作の有無を判別する。モード検出信号を受信しており、モード切替が行われていないと判断すると(S19:No)、コントローラ106は、ステップS17に戻る。以後、コントローラ106は、ステップS17,S19を繰り返し、モータ30を作動状態に維持する。但し、ステップS17,S19を繰り返している間にモード検出信号を受信しなくなり、モード切替が行われたと判断すると(S19:Yes)、コントローラ106は、積極停止制御によってモータ30を停止させる(S20)。
【0057】
以上のように、ハンマモード選択時には、
図1,
図2に示されるトリガレバー70の操作によってもモータ30を起動させることができ、かつ、トリガレバー70の操作に基づいてモータ30をオン・オフさせることができる。この際、モータ30の回転中にトリガレバー70の操作が解除されるとブレーキ工程を含まない自然停止制御が実行され、動作モードの切り替えが行われるとブレーキ工程を含む積極停止制御が実行される。前者の場合、トリガレバー70の操作が解除された直後にトリガレバー70が再び操作された場合であっても、モータ30の回転数がスムーズに立ち上がる。後者の場合、モード切替に伴う突然の回転力伝達による反動の発生が回避される。
【0058】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は、レシプロ型変換機構によってモータの回転運動がピストンの往復運動に変換される打撃工具にも適用可能である。また、本発明における第1動作モードには、先端工具に打撃力のみが伝達される動作モードが含まれ、第2動作モードには、先端工具に回転力が伝達される動作モードが含まれる。前記実施の形態に係るハンマドリルは、ハンマモードとハンマドリルモードの動作モードを有する打撃工具であったが、ハンマモードとドリルモードの動作モードを有する打撃工具、ハンマモードとドリルモードとハンマドリルモードの3つの動作モードを有する打撃工具も本発明の打撃工具に含まれる。
【0059】
尚、モータの回転を積極的に停止させるブレーキ工程を含まない自然停止制御は、積極停止制御よりも制動力が小さい停止制御の一例である。換言すれば、自然停止制御と積極停止制御とは、互いに制動力が異なる2つの停止制御の一例である。
【0060】
本発明には、制動力が相対的に小さい積極停止制御と、制動力が相対的に大きな積極停止制御とが所定条件に応じて選択的に実行される実施形態が含まれ、例えばコントローラがスイッチング素子のオン・オフを制御することで、コイルの閉回路数や閉回路の形成時間を制御し、動作モードに応じて制動力を変更する実施形態が含まれる。また、本発明には、積極停止制御における制動力が一定である実施形態のみでなく、制動力が変化する実施形態も含まれる。