(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、飛行装置が保持者から離れた時点の状態、例えば投擲者により飛行装置の投擲が行われた時点の状態に基づいて、その時点以降の撮像部の撮影形態を決定し、その決定した撮影形態で撮像部を制御するものである。より具体的には例えば、投擲が行われた時点以降、飛行装置の駆動推進部を駆動推進させて飛行を行わせるとともに、飛行装置における撮像部の撮影形態をコントロールできるようにするものである。更に具体的には、投げられたことを認識し、投げた時の状態をセンサデータから算出して取得し、それぞれのパラメータを閾値と比較することにより、ユーザがどのような投げ方をしたかを推定し、それに応じた撮影形態へ移行し、それぞれの撮影形態に応じた撮影を行うようにするものである。
【0010】
図1は、本実施形態による飛行装置100の外観例を示す図である。
【0011】
メインフレーム101に4つの円形のモータフレーム102(支持部)が取り付けられている。モータフレーム102は、モータ104を支持できるようになっていて、モータ104のモータ軸にはロータブレード103が固定されている。4組のモータ104とロータブレード103は、駆動推進部を構成している。
【0012】
メインフレーム101の内部の回路ボックス105には、モータ104を駆動するためのモータドライバや、コントローラ、センサ類等が収められている。メインフレーム101の下部には、撮像部であるカメラ106が取り付けられている。
【0013】
図2は、
図1に示される構造を有する実施形態による飛行装置100のシステム構成例を示す図である。コントローラ201には、カメラ106(
図1参照)を含むカメラシステム202、例えば加速度センサ、ジャイロ、GPS(全地球測位システム)センサなどから構成されるフライトセンサ203、タッチセンサ204(接触検知センサ部)、それぞれ#1から#4の各モータ104(
図1参照)を駆動する#1から#4のモータドライバ205、バッテリ207の電圧をモニタしながら各モータドライバ205に電力を供給するパワーセンサ206が接続される。ここでタッチセンサ204は接触を検知できれば押しボタン等でもよい。なお、特には図示しないが、バッテリ207の電力は、201〜206の各制御ユニットにも供給される。コントローラ201は、フライトセンサ203から、飛行装置100の機体の姿勢に関する情報をリアルタイムで取得する。また、コントローラ201は、パワーセンサ206を介して、バッテリ207の電圧をモニタしながら、#1から#4の各モータドライバ205に、それぞれパルス幅変調に基づくデューティ比による電力指示信号を送信する。これにより、#1から#4のモータドライバ205はそれぞれ、#1から#4のモータ104の回転速度を制御する。また、コントローラ201は、カメラシステム202を制御して、カメラ106(
図1)による撮影動作を制御する。本実施形態において、コントローラ201は、保持者から離れた時点の状態、すなわち保持者により投擲が行われた時点の状態を取得する取得手段、取得手段により取得された状態に基いて、飛行装置100が保持者から離れた(保持者により投擲が行われた)時点以降の、撮像部であるカメラシステム202及びカメラ106の撮影形態を決定する決定手段、そして、決定手段により決定した撮影形態でカメラシステム202を介してカメラ106を制御する撮像制御手段として機能する。
【0014】
図2のコントローラ201、カメラシステム202、フライトセンサ203、モータドライバ205、パワーセンサ206、及びバッテリ207は、
図1のメインフレーム101内の回路ボックス107に格納される。また、
図1には明示していないが、タッチセンサ204は、
図1のメインフレーム101及び/又はモータフレーム102に貼付され、投擲者の指等がメインフレーム101又はモータフレーム102にタッチしているときとタッチしていないときの電気的な物理量の差を検出する。
【0015】
以上の構成を有する飛行装置100の動作につき、以下に説明する。まず、本実施例での撮影形態のうちの撮影モード、及びそれに対応する投擲方法の例につき、以下に列挙する。撮影モードとは、旋回撮影、自転撮影、セルフタイマー撮影、自動追尾撮影、通常撮影をいう。なお、撮影モードとして、撮影禁止を含んでもよい。
【0016】
●旋回撮影モードの決定例:
このモードは、投擲したユーザの周辺を旋回しながら撮影するモードである。投擲方法は、
図3に示されるように、x軸、y軸、z軸からなる3次元空間を、x軸、y軸を地面に対して平行な平面内の軸、z軸を地面に対して空の方向に垂直な軸としたときに、
図3の301として示されるように、x軸周り又はy軸周り又はxy両軸回りの回転をさせながら投擲する。
【0017】
●自転撮影モードの決定例:
このモードは、飛行装置100自身がz軸回りに自転しながら撮影するモードである。投擲方法は、
図3の302として示されるように、z軸周りの回転をさせながら投擲する。
【0018】
●セルフタイマー撮影モードの決定例:
飛行開始後セルフタイマーで撮影するモードである。投擲方法は、投げずに手を離す、又は上にそっと投げ上げる。閾値を超える回転はさせない。このモードは基本的に投擲者を撮影するもので、顔検出並びに自動焦点調節等を行う。またこのモードでは、重力により落下を始めるので、これに対抗するようにホバリングして定位置を保持する。
【0019】
●自動追尾撮影モードの決定例:
投擲したユーザを自動で追尾し撮影するモードである。投擲方法は、端末を上下逆さまにして手を離す、又は
図3の304として示されるように、z軸に平行に上に強めに投げ上げる。閾値を超える回転はさせない。
【0020】
●通常撮影モードの決定例:
投擲された位置にて静止しながら撮影するモードである。投擲方法は、上記各撮影モード以外の投擲を行う。例えば特には図示しないが、回転させずに水平方向へ投げる。なお、投げる速度に応じて連写間隔を変えるようにしてもよい。
【0021】
シャッタ速度、絞り、撮影間隔、静止画又は動画の撮影タイミング等の各種撮影条件の決定は、モードごとに適宜設定してもよいし、フルオートでも良い。また、撮影条件を撮影モードの1つとして設定し、投擲され保持者から離れた時点の状態に応じて決定するようにしても良い。
【0022】
図4は、投擲方法によって上述の5種類の撮影モードの何れかを指示できるようにするための、本実施形態による飛行装置100の撮影モード制御処理例を示すフローチャートである。この処理は、
図2のコントローラ201において、それが内蔵するCPU(中央演算処理装置)が、同じく内蔵する特には図示しないメモリに記憶された制御プログラムを実行する処理として実現することができる。
【0023】
コントローラ201はまず、タッチセンサ204の電圧変化を監視すること等により、飛行装置100がユーザの手から離れた(投げられた)か否かを監視する(ステップS401の判定がNOの繰返し)。
【0024】
ステップS401の判定がYESになると、コントローラ201は、フライトセンサ203の各出力に基づいて、投げた時の状態を取得、算出する(ステップS402)。具体的には、コントローラ201はまず、フライトセンサ203を構成するジャイロセンサの各座標軸方向の各出力値として、xyz軸絶対座標系における投擲時のx軸周り、y軸周り、及びz軸周りの各角速度ωx 、ωy 、及びωz [rad/s:ラジアン/秒]を取得する。そして、コントローラ201は、下記数1式及び数2式と等価な演算処理に基づき、x軸周り、y軸周り、又はxy両軸周り、即ち
図3の301の方向の角速度ωini_horと、z軸周り、即ち
図3の302の方向の角度速度ωini_vertを、それぞれ算出する。
【0027】
次に、コントローラ201は、投擲が行われた時点のxyz軸絶対座標系におけるx軸、y軸、z軸)方向の各速度Vx、Vy、Vz[m/s:メートル/秒]を算出する。ここで、コントローラ201は、投擲が行われた時点において
図2のフライトセンサ203を構成する加速度センサが出力する各座標軸方向の加速度値に基づき、上記各速度Vx、Vy、Vzを算出する。今、加速度センサが出力する上記xyz軸絶対座標系におけるx軸、y軸、z軸方向の加速度をそれぞれ、ax、ay、az[m/s
2 ]とすれば、コントローラ201は、これらの加速度値の何れかが所定の閾値を超えた投擲動作開始時の時点ts から、
図2のタッチセンサ204の出力に基づいて投擲者の身体から飛行装置100が離れたことを検知したリリース時点tr まで、上記各加速度ax、ay、azに対してそれぞれ、下記数3式、数4式、及び数5式と等価な積分演算処理を実行することにより、投擲が行われた時点の各座標軸方向の速度Vx、Vy、Vzを算出する。
【0031】
次に、コントローラ201は、以下の数6及び数7式と等価な演算処理に基づいて、x軸周り、y軸周り、即ち
図3の303の水平方向の初速度Vini_hor と、z軸周り、即ち
図3の304の垂直方向の初速度Vini_vertを、それぞれ算出する。
【0034】
以上のステップS402の処理の後、コントローラ201は、ステップS402で算出した
図3の301の方向の角速度ωini_hor が、予め後述する
図5のフローチャートの閾値設定処理により設定されている閾値ωTHini_hor よりも大きいか否かを判定する(ステップS403)。
【0035】
ステップS403の判定がYESならば、コントローラ201は、撮影モードを前述した旋回撮影モードに設定し(ステップS404)、その後、ステップS412での撮影処理に移行する。
【0036】
ステップS403の判定がNOならば、コントローラ201は次に、ステップS402で算出した
図3の302の方向の角速度ωini_vertが、予め後述する
図5のフローチャートの閾値設定処理により設定されている閾値ωTHini_vertよりも大きいか否かを判定する(ステップS405)。
【0037】
ステップS405の判定がYESならば、コントローラ201は、撮影モードを前述した自転撮影モードに設定し(ステップS406)、その後、ステップS412での撮影処理に移行する。
【0038】
ステップS405の判定がNOならば、コントローラ201は次に、ステップS402で算出した
図3の303の水平方向の初速度Vini_hor が、予め後述する
図5のフローチャートの閾値設定処理により設定されている閾値VTHini_hor よりも大きいか否かを判定する(ステップS407)。
【0039】
ステップS407の判定がYESならば、コントローラ201は、撮影モードを前述した通常撮影モードに設定し(ステップS408)、その後、ステップS412での撮影処理に移行する。通常撮影モードでは、静止画又は連写、若しくは動画を撮影する。
【0040】
ステップS407の判定がNOならば、コントローラ201は次に、ステップS402で算出した
図3の304の垂直方向の初速度Vini_vertが0(又は0より少し大きな閾値)よりも大きいか否かを判定する(ステップS409)。
【0041】
ステップS409の判定がYESならば、コントローラ201は、撮影モードを前述したセルフタイマー撮影モードに設定し(ステップS410)、その後、ステップS412での撮影処理に移行する。
【0042】
ステップS409の判定がNOならば、コントローラ201は、撮影モードを前述した自動追尾撮影モードに設定し(ステップS411)、その後、ステップS412での撮影処理に移行する。
【0043】
ステップS412の撮影処理では、コントローラ201は、設定された各撮影モードでの飛行動作を行うように#1〜#4のモータドライバ204を制御し、その後、カメラシステム202を制御して撮影を行う。
【0044】
その後、特には図示しないが、コントローラ201は、一定時間又は一定回数、あるいはユーザからの指示により撮影が終了すると、投げ上げを行ったユーザ(所有者)の位置を探索する。この探索方法は、既存の技術を採用できる。所有者の位置が見つかると、コントローラ201は、GPSデータ等により所有者との距離が一定距離以下になったと判定するまで、#1から#4のモータドライバ205を制御することにより、所有者の方向への飛行を行う。そして、コントローラ201は、#1から#4のモータドライバ205を制御することにより、その場でのホバリング動作又は投擲者の手等への着陸動作を実行し、着陸動作時には#1から#4のモータを停止させて、制御動作を終了する。
【0045】
図5は、本実施形態による撮影モード毎の閾値設定処理例を示すフローチャートである。コントローラ201はまず、ユーザによる所定のスイッチ操作等を受け付けることにより(ステップS501)、閾値設定モードに移行する(ステップS502)。
【0046】
次に、コントローラ201は、前述した撮影モードのうち閾値を未設定のモードを設定する(ステップS503)。
【0047】
次に、コントローラ201は、ユーザに、ステップS503で設定された撮影モードに対応する投擲方法で、投擲を行わせる(ステップS504)。
【0048】
コントローラ201は、ステップS504での投擲の結果、前述した
図4のステップS402の場合と同様の処理(数1式〜数7式と等価な演算処理)に基づき、
図3の301の方向の角速度ωini_hor と、
図3の302の方向の角度速度ωini_vertと、
図3の303の水平方向の初速度Vini_hor と、
図3の304の垂直方向の初速度Vini_vertをそれぞれ算出する。そして、コントローラ201は、これらの各値をそれぞれ所定量だけ変更した各値を、各閾値ωTHini_hor 、ωTHini_vert、VTHini_hor 、及びVTHini_vertとして自動設定する(ステップS505)。
【0049】
その後、コントローラ201は、全ての撮影モードについて上述のステップS503からS505の一連の処理を終えたか否かを判定する(ステップS506)。
【0050】
ステップS506の判定がNOならば、コントローラ201は、ステップS503の処理に戻って、次の未処理の撮影モードに対する処理に移行する。
【0051】
ステップS506の判定がYESならば、コントローラ201は、
図5のフローチャートで示される撮影モード毎の閾値設定処理を終了する。
【0052】
以上説明した実施形態により、投擲者が投擲時に簡単に意図したように撮影形態を決定することが可能となる。
【0053】
次に、撮影形態のうちの撮影条件、及びそれに対応する投擲方法の例を示す実施形態について説明する。ここで、撮影条件とは、シャッタ速度、絞り、撮影間隔、静止画又は動画の撮影タイミング等である。前述した実施形態では、撮影条件はすべてオートで決まることを前提とし記載していたが、本実施形態では、保持者から飛行装置100が離れた時点の状態を
図2のフライトセンサ203内の各種センサから取得して、その取得した状態に基づいて、飛行装置100が保持者の手から離れた時点以降、又は投擲者が飛行装置100を投擲した時点以降の撮影条件が決定される。
【0054】
本実施形態において、前述した実施形態同様、
図3に示されるように、x軸、y軸、z軸からなる3次元空間を、x軸、y軸を地面に対して平行な平面内の軸、z軸を地面に対して空の方向に垂直な軸としたときに、コントローラ201は、投擲が行われた時点のxyz軸絶対座標系におけるx軸、y軸、z軸方向の各速度Vx、Vy、Vz[m/s:メートル/秒]を算出する。ここで、コントローラ201は、
図2のフライトセンサ203を構成する加速度センサが出力する各座標軸方向の加速度値ax、ay、azの何れかが所定の閾値を超えた投擲動作開始時の時点ts から、
図2のタッチセンサ204の出力に基づいて投擲者の身体から飛行装置100が離れたことを検知したリリース時点tr まで、上記各加速度ax、ay、azに対してそれぞれ、前述した数3式、数4式、及び数5式と等価な積分演算処理を実行することにより、上記各速度Vx、Vy、Vzを算出する。本実施形態では、これらの各速度に基づいて、撮影条件が以下のようにして決定される。
【0055】
●シャッタ速度に関する撮影条件の決定例:
例えば、投擲の後に、できるだけピントの合った画像を撮影したいときは、シャッタ速度を速くしたい。逆に、流れるような画像を撮影したいときは、シャッタ速度を遅くしたい。これを制御するための投擲方法としては、下記数8式に基づいて各方向の速度Vx,Vy,Vzの二乗和の平方根として算出される速度値Vが大きいほどシャッタ速度が速く設定される。すなわち、どの方向へ向けてでも、速く(強く)投擲するほどシャッタ速度が速くなる。このシャッタ速度の制御は、後述する絞りとn連動させられてもよい。
【0057】
●絞りに関する撮影条件の決定例:
例えば、投擲の後に、できるだけシャープな画像を撮影したいときは、絞りを絞りたい。逆に、ソフトな画像を撮影したいときは、絞りを開きたい。これを制御するための投擲方法としては、上述のシャッタ速度の場合と同様に、数8式に基づいて各方向の速度Vx,Vy,Vzの二乗和の平方根として算出される速度値Vが大きいほど絞りが絞られる。すなわち、どの方向へ向けてでも、速く(強く)投擲するほど絞りが絞られる。この絞りの制御は、前述したシャッタ速度と連動させられてもよい。
【0058】
●撮影間隔に関する撮影条件の決定例:
所定時間ごと、又は所定距離ごとに撮影したいときの撮影間隔を決定したい。これを制御するための投擲方法としては、
図3の302として示されるように、前述した自転撮影モードと同じく、z軸周りの回転をさせながら投擲し、各方向の速度Vx,Vyの積が大きいほど撮影間隔が長く設定される。つまり、遅く投擲されるほど、多数の画像が撮影され、速く投擲されると、少ない画像が撮影されることになる。z軸方向の速度は考慮しない。もちろん速さと撮影間隔の関係は逆でもよい。
【0059】
●撮影タイミングに関する撮影条件の決定例:
一番高くなった地点で撮影したい場合は、z軸方向、すなわち真上にゆっくり投げ上げる。
ユーザが画角に入ったときに撮影したい場合は、前述した旋回撮影モードと同じく、
図3の301として示されるように、x軸周り又はy軸周り又はxy両軸回りの回転をさせながら投擲する。
所望の被写体が画角に入ったときに撮影したい場合は、その被写体に向けて放物線を描くように投擲する。その場合はx軸、y軸、z軸どの方向へ進むか不明であるが、コントローラ201は、飛行の軌跡が少なくとも放物線であることを検出すると、その放物線の軌跡方向にある画角内の主要被写体を判断し、その主要被写体に焦点を合わせて1枚又は複数枚の撮影を実行する。
【0060】
コントローラ201は、例えば以下の数式と等価な演算により、放物線の軌跡を計算することにより、その計算した放物線の軌跡方向にある画角内の主要被写体を判断する。
【0061】
まず、初速度をV
0 [m/s]、重力加速度をg[m/s
2 ]とし、また、斜方投射の場合に、初速度の仰角をθ[ラジアン]、投擲開始時点からの時間をtとする。この場合、水平xy方向の速度V
xy及び変位xyは、下記数9式及び数10式により算出される。
【0064】
また、垂直方向の速度及び変位は、下記数11式及び数12式により算出される。
【0067】
本実施形態では、コントローラ201は、初速度V
0 による投擲の仰角θが所定範囲内にあることを判定することにより、放物線を描く投擲が行われたと判断し、上記数9式から数12式により放物線の軌跡を計算することにより、その計算した放物線の軌跡方向にある画角内の主要被写体を判断する。
【0068】
図6は、投擲方法によって上述の4種類の撮影条件の何れかを指示できるようにするための、本実施形態による飛行装置100の撮影条件制御処理例を示すフローチャートである。この処理は、
図2のコントローラ201において、それが内蔵するCPUが、同じく内蔵する特には図示しないメモリに記憶された制御プログラムを実行する処理として実現することができる。
【0069】
コントローラ201はまず、タッチセンサ204の電圧変化を監視すること等により、飛行装置100がユーザの手から離れた(投げられた)か否かを監視する(ステップS601の判定がNOの繰返し)。
【0070】
ステップS601の判定がYESになると、コントローラ201は、フライトセンサ203の各出力に基づいて、投げた時の状態を取得、算出する(ステップS602)。具体的には、ステップS602において、コントローラ201は、フライトセンサ203を構成するジャイロセンサの各座標軸方向の各出力値として、xyz軸絶対座標系における投擲時のx軸周り、y軸周り、及びz軸周りの各角速度ωx 、ωy 、及びωz [rad/s:ラジアン/秒]を取得する。そして、コントローラ201は、前述した数1式及び数2式と等価な演算処理に基づき、x軸周り、y軸周り、又はxy両軸周り、即ち
図3の301の方向の角速度ωini_horと、z軸周り、即ち
図3の302の方向の角度速度ωini_vertを、それぞれ算出する。
【0071】
続いて、ステップS602において、コントローラ201は、前述した数3式、数4式、及び数5式と等価な積分演算処理を実行することにより、投擲が行われた時点のxyz軸絶対座標系におけるx軸、y軸、z軸)方向の各速度Vx、Vy、Vz[m/s:メートル/秒]を算出する。
【0072】
更に、ステップS602において、コントローラ201は、前述した数7式と等価な演算処理に基づいて、z軸周り、即ち
図3の304の垂直方向の初速度Vini_vertを算出する。
【0073】
その後、コントローラ201は、前述した数8式と等価な演算処理を実行することにより、各速度の二乗和の平方根の速度を算出し、この速度の大きさに基づいて、シャッタ速度及び絞りの両方又は予め設定した片方を設定する(ステップS603)。
【0074】
次に、ステップS602で算出した
図3の302の方向の角速度ωini_vertが、予め前述する
図5のフローチャートの閾値設定処理により設定されている閾値ωTHini_vertよりも大きいか否かを判定する(ステップS604)。
【0075】
ステップS604の判定がYESならば、コントローラ201は、ステップS602で算出した速度VxとVyの積の値応じた長さの撮影間隔を設定する(ステップS605)。ステップS604の判定がYESならば、コントローラ201は、ステップS605の処理はスキップする。
【0076】
その後、コントローラ201は、ステップS602で算出した
図3の301の方向の角速度ωini_hor が、予め前述した
図5のフローチャートの閾値設定処理により設定されている閾値ωTHini_hor よりも大きいか否かを判定する(ステップS606)。
【0077】
ステップS606の判定がYESならば、コントローラ201は、ユーザが画角に入ったときに撮影する撮影タイミングを設定する(ステップS607)。ユーザが画角に入ったか否かは、例えば、
図2のカメラシステム202から得られる画像情報を用いた顔認識処理の認識結果に基づいて判定する。或いは、ユーザがビーコンの発信機能を持つリモコンを装着し、そのビーコンを捉えることにより、ユーザが画角に入ったか否かが判定されてもよい。その後、コントローラ201は、
図6のフローチャートで示される撮影条件制御処理を終了する。
【0078】
ステップS606の判定がNOならば、コントローラ201は、初速度V
0 による投擲の仰角θが所定範囲内にあるか否かを判定することにより、飛行軌跡が放物線か否かを判定する(ステップS608)。
【0079】
ステップS608の判定がYESならば、コントローラ201は、所望被写体が画角に入ったときに撮影する撮影タイミングを設定する(ステップS609)。この場合、コントローラ201は、例えば、前述した数9式から数12式と等価な演算に基づいて放物線の軌跡を計算することにより、その計算した放物線の軌跡方向にある画角内の主要被写体を判断する。主要被写体の判断は、例えば、
図2のカメラシステム202から得られる画像情報の上記画角内での画像認識処理により行う。その後、コントローラ201は、
図6のフローチャートで示される撮影条件制御処理を終了する。
【0080】
ステップS608の判定がNOならば、コントローラ201は、ステップS602で算出した
図3の304の垂直方向の初速度Vini_vertが0(又は0より少し大きな閾値)よりも大きいか否かを判定する(ステップS610)。
【0081】
ステップS610の判定がYESならば、コントローラ201は、最高地点で撮影する撮影タイミングを設定する。その後、コントローラ201は、
図6のフローチャートで示される撮影条件制御処理を終了する。
【0082】
ステップS610の判定がNOならば、コントローラ201は、
図6のフローチャートで示される撮影条件制御処理を終了する。
【0083】
コントローラ201は、
図6のフローチャートで示される撮影条件制御処理を終了した後は、前述した
図4のフローチャートで示される冊目委モード制御処理を実行し、更にその後に、
図4のステップS412で撮影処理に移行することができる。
【0084】
撮影条件制御処理の他の実施形態について以下に説明する。他の実施形態では、ユーザは、予め放物線を描くように様々な初速度(強さ)で投擲を試技し、各初速度(強さ)とシャッタ速度、及びそのシャッタ速度に対応して適正露出になるように自動設定される絞りとの関係を初速度−シャッタ速度対応テーブルとして記憶しておく。その後、ユーザは、好みの初速度で放物線を描くように投擲を行うことにより、好みのシャッタ速度及びそれに対応して自動設定される絞りで撮影を行うことができる。
【0085】
図7は、飛行装置100の撮影条件制御処理の他の実施形態における初速度−シャッタ速度対応テーブルの作成処理を示すフローチャートである。この処理は、
図6の場合と同様に、
図2のコントローラ201において、それが内蔵するCPUが、同じく内蔵する特には図示しないメモリに記憶された制御プログラムを実行する処理として実現することができる。
【0086】
まず、コントローラ201は、ユーザ操作を受け付け(ステップS701)、閾値設定モードに移行する(ステップS702)。
【0087】
次に、コントローラ201は、ユーザに、放物線を描くように投擲を行わせる(ステップS703)。
【0088】
コントローラ201は、投擲時の初速度V
0 を取得する(ステップS704)。
【0089】
コントローラ201は、現在の投擲による飛行装置100の飛行の間、EV(露出)値が同じになるように絞りを調整しながら、変更しうる全てのシャッタ速度で、カメラシステム202に撮影を行わせ、それをコントローラ201内のメモリに記録する(ステップS705)。
図8は、コントローラ201内のROM(Read Only Memory)に予め記憶されている、EV値とシャッタ速度と絞りの関係テーブルの例を示す図である。例えば、EV値が13であれば、シャッタ速度が1/8秒から1/2000秒まで変化する間に、絞りは32から2.0まで変化する。コントローラ201は、ステップS705において、例えばEV値を13に自動設定した後、シャッタ速度を1/8秒から1/2000秒まで段階的に変化させながら、ROMに記憶されている上述の関係テーブルを参照することにより、そのシャッタ速度に対応する絞りを決定し、決定した各シャッタ速度と絞りの組合せで、カメラシステム202にそれぞれ撮影を実行させ、得られた画像データをコントローラ201内のRAM(Random Access Memory)に記録してゆく。
【0090】
その後、コントローラ201は、規定回数の投擲を終えたか否かを判定する(ステップS706)。
【0091】
ステップS706の判定がNOならば、ユーザに、前回と異なる初速度(強さ)で放物線を描くように投擲を行わせる(ステップS707)。その後、コントローラ201は、ステップS704とS705の処理を再度実行させる。
【0092】
以上の動作を繰り返した後、ステップS706の判定がYESになると、コントローラ201は、ユーザ選択状態へ移行させる(ステップS708)。
【0093】
コントローラ201は、特には図示しないスマートフォン又はリモートコントローラのディスプレイに、ステップS705でコントローラ201内のRAMに記録した全写真を転送し、表示する(ステップS709)。
【0094】
コントローラ201は、投擲毎に、ユーザに好みの写真を選択させる(ステップS710)。
【0095】
コントローラ201は、各投擲の初速度V
0 と、その投擲に対してユーザが選択した写真のシャッタ速度との関係を内部のRAMに保存し(ステップS711)、その保存した関係に基づいて、例えば
図9に示されるような、初速度−シャッタ速度対応テーブルを作成してRAMに記憶する。その後、コントローラ201は、
図7のフローチャートで示される閾値設定処理を終了する。
【0096】
以上の閾値設定処理の終了後、ユーザは、好みの初速度で放物線を描くように投擲を行うことにより、好みのシャッタ速度及びそれに対応して自動設定される絞りで撮影を行うことができる。
【0097】
以上説明した実施形態では、角速度と速度によって撮影モードが決定されたが、加速度によっても撮影モードが決定されてもよい。
【0098】
以上説明した実施形態において、飛行装置100が撮影する静止画の枚数は任意である。また、飛行装置100が撮影を行うのは、静止画に限らず、動画でもよい。その場合の動画の撮影時間も任意である。
【0099】
飛行装置100は、例えば投擲者が保持する端末と通信を行い、撮影の映像を送り、映像を見ながら撮影できてもよい。
【0100】
飛行装置100による撮影のタイミングなどは、例えば投擲者が保持する端末等から無線操作できてもよい。
【0101】
飛行装置100に持ち運び用のモータフレーム102の折り畳み機構を採用した場合には、投擲開始直後にモータフレーム102を飛行可能状態へ変形する処理が実行されてもよい。
【0102】
上述の実施形態の説明では、駆動推進部がモータ104とロータブレード103を含む例について説明したが、空気圧やエンジン出力により推進される機構により駆動推進部が実現されてもよい。また、推進駆動部を備えず自然落下でも良い。状態によっては撮影しなくても良い。更に、投擲ではなく手を離すだけでもよい。
【0103】
以上の実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
撮影部を備えた飛行装置であって、
保持者から離れた時点の状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された状態に基いて、前記離れた時点以降の前記撮像部の撮影形態を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定した撮影形態で前記撮像部を制御する撮像制御手段と、
を備えることを特徴とする飛行装置。
(付記2)
前記決定手段は、前記保持者により投擲が行われた時点の状態に基いて、前記投擲が行われた時点以降の前記撮像部の撮影形態を決定する、
ことを特徴とする付記1に記載の飛行装置。
(付記3)
前記撮影形態は、撮影モード、又は、撮影条件を含む
ことを特徴とする付記1又は2に記載の飛行装置。
(付記4)
前記撮影モードは、旋回撮影、自転撮影、セルフタイマー撮影、自動追尾撮影、通常撮影、撮影禁止の何れか1つ以上である、
ことを特徴とする付記3に記載の飛行装置。
(付記5)
前記撮影条件は、シャッタ速度、絞り、撮影間隔、静止画又は動画の撮影タイミングの何れか1つ以上である、
ことを特徴とする付記3に記載の飛行装置。
(付記6)
前記保持者から離れた時点の前記飛行装置の角速度、加速度、又は速度を検出するセンサ部を更に備え、
前記決定手段は、前記取得手段で取得された前記保持者から離れた時点の前記センサ部の各出力値に基づく各値を所定の閾値と比較することにより、その比較結果に基づいて、前記撮像部の撮影形態を決定する、
ことを特徴とする付記1〜5の何れかに記載の飛行装置。
(付記7)
前記決定手段は、前記保持者から離れた時点の状態が、前記センサ部の出力により、重力方向の加速度のみが検出された場合に、セルフタイマー撮影の撮影モードを決定する、
ことを特徴とする付記6に記載の飛行装置。
(付記8)
前記センサは、前記保持者から離れた時点の所定の絶対座標系における各座標軸方向の角速度、加速度、又は速度を算出し、
前記決定手段は、前記保持者から離れた時点の前記センサの各出力値に基づいて、又は当該各出力値からの演算処理に基づいて、地面に対して水平な座標軸方向又は垂直な座標軸方向の前記角速度、加速度、又は速度を算出し、これらの算出値を所定の閾値と比較することにより、その比較結果に基づいて、前記撮像部の撮影形態を決定する、
ことを特徴とする付記6に記載の飛行装置。
(付記9)
前記投擲者に前記撮影形態毎の投擲を予め行わせ、当該投擲が行われた時点の前記センサ部の各出力値に基づく各値をそれぞれ所定量ずつ変更した値を、前記所定の閾値として自動設定する、
ことを特徴とする付記2乃至8の何れかに記載の飛行装置。
(付記10)
前記保持者から離れた時点以降、空中を飛行するための駆動推進部を備えることを特徴とする付記1乃至9の何れかに記載の飛行装置。
(付記11)
前記取得手段により取得された状態が、その場に置く状態であったとき、前記駆動推進部はその場でホバリングする、
ことを特徴とする付記10に記載の飛行装置。
(付記12)
撮影部を備えた飛行装置の撮像方法であって、
保持者から離れた時点の状態を取得するステップと、
前記取得された状態に基いて、前記離れた時点以降の前記撮像部の撮影形態を決定するステップと、
前記決定した撮影形態で前記撮像部を制御するステップと、
を含むことを特徴とする飛行装置の撮像方法。
(付記13)
撮影部を備えた飛行装置を制御するコンピュータに、
保持者から離れた時点の状態を取得するステップと、
前記取得された状態に基いて、前記離れた時点以降の前記撮像部の撮影形態を決定するステップと、
前記決定した撮影形態で前記撮像部を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。