(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1フィールドプレートと前記トレンチの内側の側壁との距離は、前記半導体基板の第2主面側で前記第1フィールドプレートの幅よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記第1フィールドプレートの深さは、前記半導体基板の第1主面から前記pn接合よりも深く、かつ前記トレンチよりも浅いことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
前記第2フィールドプレートは、前記半導体基板の第1主面から深くなるにしたがって前記トレンチの外側の側壁から離れるように湾曲していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置。
前記第5工程では、さらに、前記第1フィールドプレートと離して、前記金属膜の残部を第2フィールドプレートとして前記溝の外側の側壁に残すことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、デバイス端部(チップ端部)での電界集中を抑制するために、活性領域の周囲を囲むエッジ終端領域に、フローティング(電位的に浮遊)のp型領域であるフィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)を複数配置した耐圧構造が公知である。また、FLRに接するフローティングのポリシリコン(poly−Si)電極または金属電極であるフィールドプレート(FP:Field Plate)を配置した耐圧構造が知られている。FPは、空乏層の伸びかたを制御して耐圧劣化を防止するとともに、表面電荷分布を制御して表面電荷による特性変動を抑制する機能を有する。
【0003】
従来の半導体装置のエッジ終端領域の構造について説明する。
図35は、従来の半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
図35に示す従来の半導体装置は、活性領域111の周囲を囲むエッジ終端領域112に、FLR103およびFP106からなる耐圧構造を備える。活性領域111は、オン状態のときに電流が流れる領域である。エッジ終端領域112は、n
-型ドリフト領域101の基板おもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する領域である。FLR103は、n
-型ドリフト領域101となるn
-型半導体基板(半導体チップ)110のおもて面の表面層に、活性領域111の周囲を囲む同心円状に複数設けられている。
【0004】
エッジ終端領域112において、n
-型半導体基板110のおもて面は層間絶縁膜107で覆われている。FP106は、層間絶縁膜107を深さ方向に貫通するコンタクトホールを介してFLR103に接する。FP106は、FLR103ごとに配置される。また、FP106は、層間絶縁膜107上を内側(活性領域111側)または外側(チップ端部側)もしくは両側に延在している。符号102は、活性領域111においてn
-型ドリフト領域101との間のpn接合(主接合)を構成するp型領域である。符号104,105,108は、それぞれp型チャネルストップ領域、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)およびパッシベーション膜である。
【0005】
FLR103を設けたエッジ終端領域112での動作原理について説明する。
図36は従来の半導体装置のエッジ終端領域での動作原理を示す説明図である。
図36(a),36(b)には、それぞれ
図36(c)に対応する電界分布および電荷分布の推移を左側から時系列順に示す。
図36(c)には、半導体装置のオフ時に外側に伸びる空乏層121の端部位置を時系列順に符号121a,121bを付した破線で示す。
図36の横軸は、内側から外側へ向かう方向の各部の位置関係をあらわす距離rである。
図36(a)の縦軸は電界強度Eである。
図36(b)の縦軸は電荷qであり、横軸を挟んで上側の象限を負電荷N
Dとし、下側の象限を正電荷N
Aとしている。
図36(c)の縦軸は、n
-型半導体基板110のおもて面からの深さdである。
【0006】
半導体装置のオフ時、活性領域111のp型領域102とn
-型ドリフト領域101との間のpn接合(以下、主接合とする)120が逆バイアスされると、主接合120に沿って空乏層121が形成され、逆バイアスの増加に伴って外側に伸びる。また、逆バイアスの増加に伴って、活性領域111の端部付近(p型領域102の端部102a付近)で電界強度が大きくなるが(
図36(a))、活性領域111の端部付近でアバランシェ降伏が起こる前に空乏層121が最内周のFLR103に到達する(
図36(c)の破線121a)。これによって、p型領域102と最内周のFLR103とがパンチスルーし、p型領域102の端部102aでの最大電界が抑えられる。
【0007】
空乏層121が最内周のFLR103に到達すると、当該FLR103内のホール(正孔)が活性領域111側に流れ、正電荷N
Aが失われる(
図36(b)の符号131で示す部分)。最内周のFLR103の失った正電荷N
Aを補償するために、さらに外側に空乏層121が伸びる(
図36(c)の破線121b)。さらに、逆バイアスが増加すると、最内周のFLR103の外側端部103a付近で電界強度が大きくなるが、当該FLR103の外側端部103a付近でアバランシェ降伏が起こる前に、さらに外側のFLR103(
図36(c)には不図示)に空乏層121が到達する。これによって、FLR103同士がパンチスルーし、最内周のFLR103の外側端部103aでの最大電界が抑えられる。
【0008】
このように、最大電界強度となる部分を順次外側のFLR103の外側端部103aに移動させて、最外周のFLR103でアバランシェ降伏するようにすることで、活性領域111の端部付近の電界を緩和して高耐圧(耐電圧)を実現している。最外周のFLR103でのアバランシェ降伏が起きる印加電圧で半導体装置の耐圧が決まる。また、上述したように各FLR103の電荷qのバランスで空乏層121の伸びかたが決まるため、層間絶縁膜107の表面や、層間絶縁膜107とn
-型半導体基板110との界面に存在する電荷(以下、表面電荷とする)の悪影響を著しく受ける。このため、各FLR103にそれぞれFP106を接続し、表面電荷の悪影響を小さくしている。
【0009】
FPを備えた別の半導体装置として、エッジ終端領域に設けたトレンチ内を絶縁膜で充填し、この絶縁膜に設けた凹部にFPを埋め込んだ装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、絶縁膜内のFPの深さを適宜調整することで、実使用時の環境下で許容される表面電荷量の範囲に設定し、かつ理想耐圧に近い耐圧(表面電荷がない理想的な状態である場合においてアバランシェ降伏が起きる電圧)に設定している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置のエッジ終端領域の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
図1には、活性領域11とエッジ終端領域12との境界付近からチップ端部までの構造を示す(
図2〜9,14〜25,29〜34においても同様)。
図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、活性領域11の周囲を囲むエッジ終端領域12に、トレンチ22の内部に埋め込んだ絶縁膜(以下、埋め込み絶縁膜とする)23と、当該埋め込み絶縁膜23の内部に埋め込んだFP(フィールドプレート)25と、からなる耐圧構造を備える。活性領域11は、オン状態のときに電流が流れる領域である。
【0031】
具体的には、活性領域11において、半導体基体(半導体基板(半導体チップ))10のおもて面側には、p型領域3が選択的に設けられている。半導体基体10は、n
+型支持基板1のおもて面上にn
-型ドリフト領域2となるn
-型半導体層をエピタキシャル成長させてなるエピタキシャル基板である。半導体基体10の、n
-型ドリフト領域2側の面をおもて面(基体おもて面)とし、n
+型支持基板1側の面(n
+型支持基板1の裏面)を裏面(基体裏面)とする。半導体基体10のおもて面は、層間絶縁膜5に覆われている。おもて面電極4は、層間絶縁膜5を深さ方向に貫通するコンタクトホールを介してp型領域3に接する。おもて面電極4は、層間絶縁膜5および埋め込み絶縁膜23上を外側(チップ端部側)に延在している。半導体基体10の裏面全体に、裏面電極6が設けられている。
【0032】
活性領域11に例えばダイオードが形成される場合、n
+型支持基板1、p型領域3、おもて面電極4および裏面電極6は、それぞれカソード領域、アノード領域、アノード電極およびカソード電極である。また、活性領域11に例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が形成される場合、n
+型支持基板1、p型領域3、おもて面電極4および裏面電極6は、それぞれドレイン領域、ベース領域、ソース電極およびドレイン電極である。
図1には、半導体基体10に配置される1つ以上の単位セル(素子の機能単位)のうち、最も外側の単位セルを構成するp型領域3を示す。
【0033】
エッジ終端領域12には、チップ端部において、半導体基体10のおもて面の表面層にn型チャネルストッパー領域21が設けられている。n型チャネルストッパー領域21は、チップ側面、および、後述するトレンチ22の外側の側壁22bに露出する。また、n型チャネルストッパー領域21は、層間絶縁膜5で覆われている。層間絶縁膜5は,例えばLTO(低温酸化(LTO:Low Temperature Oxide)膜などである。n型チャネルストッパー領域21は、例えば窒化シリコン(SiNx)膜などのパッシベーション膜(不図示)に覆われていてもよい。
【0034】
基体おもて面から深さ方向にn
+型支持基板1に達しない深さD1でトレンチ22が設けられている。トレンチ22は、活性領域11との境界に近い位置に配置されることが好ましい。また、トレンチ22は、活性領域11の周囲を囲む平面レイアウトに配置されている。トレンチ22の内側(活性領域11側)の側壁22aには活性領域11から延在するp型領域3が露出し、埋め込み絶縁膜23に接する。すなわち、活性領域11の最も外側のp型領域3とn
-型ドリフト領域2との間のpn接合(以下、主接合とする)20の外側端部はトレンチ22で終端され、ほぼ湾曲していない。このため、活性領域11の主接合20の外側端部で電界集中は起こらない。トレンチ22の深さD1および幅w1を最適化すれば、活性領域11の主接合20により得られる最大耐圧(最大耐電圧)の理論値と同程度の耐圧が得られる。
【0035】
トレンチ22の深さD1は、例えば、n
-型ドリフト領域2の厚さDrの30%以上であることがよく(30%≦D1/Dr<100%)、好ましくはn
-型ドリフト領域2の厚さDrの50%以上80%以下とすることでより高耐圧化が可能である(50%≦D1/Dr≦80%)。トレンチ22の幅w1は、耐圧クラスに依らず、トレンチ22の深さD1の30%以上60%以下程度とすることでより高耐圧化が可能である(30%≦w1/D1≦60%)。トレンチ22の深さD1とは、半導体基体10のおもて面からの深さである。n
-型ドリフト領域2の厚さDrとは、p型領域3とn
-型ドリフト領域2との界面から、n
-型ドリフト領域2とn
+型支持基板1との界面までの長さである。
【0036】
具体的には、例えば耐圧600Vクラスである場合、n
-型ドリフト領域2の厚さDrは50μm程度である。このため、トレンチ22の深さD1は35μm程度となり(D1/Dr=70%)、トレンチ22の幅w1は15μm程度となる(w1/D1≒43%)。例えば耐圧1200Vクラスである場合、n
-型ドリフト領域2の厚さDrは140μm程度である。このため、トレンチ22の深さD1は70μm程度となり(D1/Dr=50%)、トレンチ22の幅w1は31μm程度となる(w1/D1≒44%)。
【0037】
トレンチ22の内部には、絶縁膜(埋め込み絶縁膜)23が埋め込まれている。埋め込み絶縁膜23の絶縁材料は、例えば、SOG(スピン・オン・ガラス:Spin on Glass)やBCB(ベンゾシクロブテン:Benzocyclobutene)であってもよい。埋め込み絶縁膜23の内部には、基体おもて面から深さ方向に、トレンチ22の底面22cに達しない深さD2で溝24が設けられている。溝24は、例えばトレンチ22の幅w1の略1/2の位置(以下、トレンチ22の中心位置とする)22dに、活性領域11の周囲を囲む平面レイアウトに配置されている。溝24の内部には、FP25が埋め込まれている。すなわち、埋め込み絶縁膜23の内部に深さ方向(縦方向)に長さを有するFP25が設けられている。
【0038】
溝24の深さD2(後述するFP25の深さ)は、p型領域3の深さよりも深い。また、溝24の深さD2は、例えば、トレンチ22の深さD1の30%以上70%以下程度であることがよく(30%≦D2/D1≦70%)、好ましくはトレンチ22の深さD1の40%以上60%以下とすることでより高耐圧化が可能である(40%≦D2/D1≦60%)。具体的には、例えば耐圧600Vクラスである場合、上述したようにトレンチ22の深さD1は35μm程度であるため、溝24の深さD2は15μm程度となる(D2/D1≒43%)。例えば耐圧1200Vクラスである場合、上述したようにトレンチ22の深さD1は70μm程度であるため、溝24の深さD2は40μm程度となる(D2/D1=57%)。溝24の深さD2とは、半導体基体10のおもて面から溝24の底面までの深さである。
【0039】
溝24の幅w2は、トレンチ22の幅w1に対して十分に狭く、例えば1μm程度である。FP25とトレンチ22の内側の側壁22aとの距離w3は、溝24の幅w2よりも広い(w3>w2)。FP25とトレンチ22の内側の側壁22aとの距離w3を広くするほど、埋め込み絶縁膜23の、トレンチ22の内側の側壁22aとFP25とに挟まれた部分での電界負担を増やすことができる。これにより、活性領域11の端部(活性領域11とエッジ終端領域12との境界)付近の電界を緩和させることができ、耐圧を向上させることができる。
【0040】
このように埋め込み絶縁膜23の内部にFP25を設けることで、FP25付近の電界分布が変調される。これによって、超接合(SJ:Super Junction)構造とした場合と同様に、逆バイアス時に耐圧を保持する効果が得られる。このため、活性領域11の主接合20に対してさらに高い耐圧を実現することができる。超接合構造とは、ドリフト層を、n型領域とp型領域とを横方向(基板主面に平行な方向)に交互に繰り返し配置した並列pn層とした構造である。また、FP25により、層間絶縁膜5の表面や、層間絶縁膜5と半導体基体10との界面に存在する電荷(表面電荷)が遮蔽されるため、表面電荷に対する特性変動が小さくなる。
【0041】
また、縦方向に長いFP25を設けることで、FLR103を備えた従来構造(
図36参照)に比べてエッジ終端領域12の長さ(幅)L1を大幅に短くすることができる。例えば耐圧600Vクラスである場合、従来構造のエッジ終端領域112の長さL100が250μm程度であるのに対して、本発明のエッジ終端領域12の長さL1は30μm程度となる。例えば耐圧1200Vクラスである場合、従来構造のエッジ終端領域112の長さL100が500μm程度であるのに対して、本発明のエッジ終端領域12の長さL1は60μm程度となる。
【0042】
FP25は、埋め込み絶縁膜23上に延在するおもて面電極4に接続されている。具体的には、おもて面電極4は、FP25の上端部(基体おもて面側の端部)全体を覆うように外側に延在している。好ましくは、おもて面電極4は、FP25の上端部全体を覆い、かつさらに若干外側に延在していることがよい。その理由は、おもて面電極4のパターニング時に、FP25の上端部がエッチングにより除去されることを防止することができるからである。
【0043】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について、例えばダイオードを作製(製造)する場合を例に説明する。
図2〜9は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、
図2に示すように、カソード領域となるn
+型支持基板1のおもて面に、n
-型ドリフト領域2となるn
-型半導体層をエピタキシャル成長させる。これにより、n
+型支持基板1上にn
-型ドリフト領域2をエピタキシャル成長させた半導体基体(半導体ウエハ)10が形成される。
【0044】
次に、フォトリソグラフィ、不純物のイオン注入およびレジストマスク除去を1組とする工程を異なる条件で繰り返し行い、半導体基体10のおもて面(n
-型ドリフト領域2側の面)側に所定領域を選択的に形成する。所定領域とは、活性領域11の素子構造を構成するアノード領域(p型領域3)や、n型チャネルストッパー領域21である。次に、半導体基体10のおもて面全体に、層間絶縁膜5として例えばLTO膜を形成する。次に、半導体基体10の内部に注入した不純物を、熱処理により活性化させる。
【0045】
図3に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、トレンチ22の形成領域に対応する部分を開口したレジストマスク(不図示)を形成する。次に、このレジストマスクをマスクとして、層間絶縁膜5をパターニングする。次に、レジストマスクを除去した後、層間絶縁膜5をマスクとしてエッチングを行い、深さD1および幅w1でトレンチ22を形成する。このとき、最も外側のp型領域3の外側端部3a(
図2参照)、および、n型チャネルストッパー領域21内側端部21a(
図2参照)を深さ方向に貫通するようにトレンチ22を形成する。
【0046】
次に、
図4に示すように、トレンチ22の内壁に沿って犠牲酸化膜31を形成した後、犠牲酸化膜31を除去する。これにより、トレンチ22の内壁に犠牲酸化後に露出する半導体領域と、後の工程で形成されるLTO膜32と、の間の界面準位を低くすることができる。次に、
図5に示すように、基体おもて面およびトレンチ22の内壁に沿って例えばLTO膜32を堆積(形成)する。次に、熱処理により、LTO膜32中の欠陥を低減させる。LTO膜32を堆積することにより、層間絶縁膜5の厚さが厚くなる。
【0047】
層間絶縁膜5を厚くすることで、半導体装置の動作時に、表面電荷の悪影響を低減させることができる。表面電荷とは、層間絶縁膜5の表面や、層間絶縁膜5と半導体基体10との界面に存在する電荷である。また、層間絶縁膜5は、後の工程で形成される埋め込み絶縁膜23を研磨して平坦化する際に、当該研磨を停止するための研磨ストッパ膜となる。このため、層間絶縁膜5を厚くすることで、埋め込み絶縁膜23を研磨する際のプロセスマージンを増やすことができ、埋め込み絶縁膜23が所定の厚さよりも薄くなることを防止することができる。
【0048】
次に、
図6に示すように、基体おもて面およびトレンチ22の内壁に沿って埋め込み絶縁膜23を堆積する。このとき、トレンチ22の内部を埋め込み絶縁膜23で完全に埋め込まずに、トレンチ22の内部に略直線状の断面形状に深さD2および幅w2の溝24が残るように埋め込み絶縁膜23を埋め込む。具体的には、例えば堆積法やスピンコート法により、基体おもて面に埋め込み絶縁膜23の絶縁材料を塗布すればよい。次に、熱処理(キュア)により、埋め込み絶縁膜23を硬化する。
【0049】
次に、
図7に示すように、溝24の内部に埋め込むように、埋め込み絶縁膜23上に例えばアルミニウム(Al)膜からなるFP25を堆積する。次に、
図8に示すように、層間絶縁膜5が露出されるまで、FP25および埋め込み絶縁膜23を研磨する。これにより、埋め込み絶縁膜23の溝24の内部にのみFP25が残る。次に、
図9に示すように、層間絶縁膜5をパターニングしてコンタクトホールを形成し、コンタクトホールにp型領域3を露出させる。
【0050】
次に、コンタクトホールに埋め込むように基体おもて面全体にアルミニウム膜からなるおもて面電極4を形成した後、おもて面電極4をパターニングする。このとき、活性領域11全体を覆い、かつ外側に延在する部分で少なくともFP25の上端部全体を覆うように、おもて面電極4を残す。半導体基体10の裏面(n
+型支持基板1の裏面)全体に裏面電極6を形成する。その後、半導体ウエハをチップ状に切断(ダイシング)して個片化することで、
図1に示す半導体装置が完成する。
【0051】
トレンチ22の深さD1と耐圧との関係について検証した。
図10は、実施例1のトレンチの深さと耐圧との関係を示す特性図である。
図10の横軸にはトレンチ22の深さ(トレンチ深さ)D1を示し、縦軸には活性領域11の主接合20が逆バイアスされたときの半導体装置の耐圧を示す。上述した実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、トレンチ22の深さD1が異なる複数の試料を作製した(以下、実施例1とする)。各実施例1において、トレンチ22の幅(トレンチ幅)w1は15μmとした。溝24の深さD2(
図10には、FP深さD2と示す)は15μmとした。
【0052】
これら各実施例1においてそれぞれ半導体装置の耐圧を測定した結果を
図10に示す。また、
図10には、実施例1の活性領域11の主接合20により得られる最大耐圧の理論値(=683V)、および、当該理論値の95%の耐圧(≒649V)をそれぞれ横一点鎖線で示す。
図10に示す結果より、トレンチ22の深さD1を深くするほど、耐圧を高くすることができることが確認された。また、トレンチ22の深さD1を35μm以上とすることで、活性領域11の主接合20で得られる理論上の最大耐圧以上に高耐圧化が可能であることが確認された。
【0053】
次に、トレンチ22の幅w1と耐圧との関係について検証した。
図11は、実施例2のトレンチの幅と耐圧との関係を示す特性図である。
図11の横軸にはトレンチ22の幅(トレンチ幅)w1を示し、縦軸には活性領域11の主接合20が逆バイアスされたときの半導体装置の耐圧を示す。上述した実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、トレンチ22の幅w1が異なる複数の試料を作製した(以下、実施例2とする)。各実施例2において、トレンチ22の深さ(トレンチ深さ)D1は35μmとした。溝24の深さD2(
図11には、FP深さD2と示す)は15μmとした。
【0054】
これら各実施例2においてそれぞれ半導体装置の耐圧を測定した結果を
図11に示す。また、
図11には、実施例2の活性領域11の主接合20により得られる最大耐圧の理論値(=683V)、および、当該理論値の95%の耐圧(≒649V)をそれぞれ横一点鎖線で示す。
図11に示す結果より、トレンチ22の幅w1を広くするほど、耐圧を高くすることができることが確認された。また、トレンチ22の幅w1を15μm以上とすることで、活性領域11の主接合20で得られる理論上の最大耐圧以上に高耐圧化が可能であることが確認された。
【0055】
次に、溝24の深さD2(FP25の深さ)と耐圧との関係について検証した。
図12は、実施例3の溝の深さと耐圧との関係を示す特性図である。
図12の横軸には溝24の深さD2(
図12には、FP深さD2と示す)を示し、縦軸には活性領域11の主接合20が逆バイアスされたときの半導体装置の耐圧を示す。上述した実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、溝24の深さD2が異なる複数の試料を作製した(以下、実施例3とする)。各実施例3において、トレンチ22の幅(トレンチ幅)w1は15μmとした。トレンチ22の深さ(トレンチ深さ)D1は35μmとした。
【0056】
これら各実施例3においてそれぞれ半導体装置の耐圧を測定した結果を
図12に示す。また、
図12には、実施例3の活性領域11の主接合20により得られる最大耐圧の理論値(=683V)、および、当該理論値の95%の耐圧(≒649V)をそれぞれ横一点鎖線で示す。
図12に示す結果より、溝24の深さD2を深くするほど、耐圧を高くすることができることが確認された。また、溝24の深さD2を15μm以上とすることで、活性領域11の主接合20で得られる理論上の最大耐圧以上に高耐圧化が可能であることが確認された。
【0057】
次に、FP25の有無による耐電荷性について検証した。
図13は、実施例4の耐電荷性を示す特性図である。
図13の横軸には表面電荷密度を示し、縦軸には活性領域11の主接合20が逆バイアスされたときの半導体装置の耐圧を示す。上述した実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、複数の試料を作製した(以下、実施例4とする)。実施例4において、トレンチ22の幅(トレンチ幅)w1は17μmとした。トレンチ22の深さ(トレンチ深さ)D1は40μmとした。溝24の深さD2(
図13には、FP深さD2と示す)は17μmとした。
【0058】
この実施例4において、表面電荷密度を種々変更して半導体装置の耐圧を測定した結果を
図13に示す。また、
図13には、エッジ終端領域にFPを配置しない半導体装置(以下、比較例とする)について、表面電荷密度を種々変更したときの半導体装置の耐圧も示す。比較例のエッジ終端領域の幅は実施例4と同じとした。
図13に示す結果より、比較例では、正電荷が増えるほど耐圧が低下することが確認された。それに対して、実施例4においては、表面電荷密度に依らず、耐圧がほぼ同じであることが確認された。
【0059】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、エッジ終端領域に幅の広いトレンチを設けて埋め込み絶縁膜で埋め込み、当該トレンチの側壁で活性領域の主接合の端部を終端させることで、活性領域の端部付近の電界を緩和することができる。これにより、活性領域の主接合により得られる最大耐圧の理論値と同程度の耐圧が得られる。また、エッジ終端領域にFLRを設けないため、FLRを設けた従来構造よりもエッジ終端領域の幅を大幅に狭くすることができる。また、実施の形態1によれば、埋め込み絶縁膜の内部にトレンチの幅よりも十分に狭くかつ縦方向に長いFPを設けることで、電界集中箇所を埋め込み絶縁膜の内部におさめる方向に電界分布を変調することができる。これにより、活性領域の主接合により得られる最大耐圧以上の耐圧を得ることができる。また、実施の形態1によれば、埋め込み絶縁膜の内部に設けたFPにより過電圧に対する破壊耐量が高められる。このため、過電圧が印加されたときに、アバランシェ降伏により生じる電流を活性領域内に均等に流すことができる。また、埋め込み絶縁膜の内部に設けたFPは表面電荷を遮蔽する機能を有する。このため、表面電荷の悪影響を小さくすることができる。したがって、耐圧を向上させることができるとともに、耐電荷性を向上することができる。
【0060】
本実施の形態の半導体基体10は、n
+型支持基板1とエピタキシャル基板に限らない。例えば半導体基体10は、インゴットから切り出したバルクウェハーであってもよい。バルクウェハーは、FZ(フロートゾーン)法、CZ(チョクラルスキー)法、MCZ(磁場印加型チョクラルスキー)法で製造されてもよい。半導体基体10は、バルクウェハーの例えば裏面側を研削して薄板化してもよい。この場合、n
-型ドリフト領域2はバルクウェハーと同じ不純物濃度でもよい。n
+型支持基板1に相当するn型高不純物濃度層は、研削面にn型ドーパント(リン、砒素等)をイオン注入等により導入し、熱アニール等により形成してもよい。半導体基板10の薄板化工程は、本実施形態のトレンチ、埋め込み絶縁膜、FPといった表面構造の形成後に行ってもよい。
【0061】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。
図14A,14Bは、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、基体おもて面から深くなるにしたがって、FP45とトレンチ22の内側の側壁22aとの距離w3を広くした点である。すなわち、FP45は、基体おもて面から深くなるにしたがってトレンチ22の内側の側壁22aから離れるように外側に湾曲している。
【0062】
具体的には、FP45は、実施の形態1と同様に、埋め込み絶縁膜23に設けた溝44の内部に埋め込まれている。溝44の両側壁44a,44bは、基体おもて面から深くなるにしたがってトレンチ22の内側の側壁22aから離れるように湾曲している。少なくともFP45の下端部付近において、FP45とトレンチ22の内側の側壁22aとの距離w3が溝24の幅w2よりも広くなっている。基体おもて面から深くなるにしたがって埋め込み絶縁膜の電界強度が大きくなるが、FP45の下端部付近の電界強度が大きくなっている部分で埋め込み絶縁膜23の厚さ(横方向の幅)が厚くなり、この埋め込み絶縁膜23の厚くなった部分での電界を緩和する効果が大きくなる。
【0063】
また、FP45を設けることで、FP45の湾曲に応じて埋め込み絶縁膜23の内部のより外側に電界集中箇所が移動した電界分布が得られる。すなわち、FP45は、埋め込み絶縁膜23の内部に電界集中箇所をおさめるように電界分布を変調する機能を有する。電界集中箇所が埋め込み絶縁膜23の内部のより外側に位置するほど、n
-型ドリフト領域2の、トレンチ22の内側の側壁22aに沿った部分の電界が緩和され、耐圧が向上する。
【0064】
より具体的には、溝44の底面44cの内側のコーナー部44dを通る接線と基体おもて面との角度θ1は、0度以上90度未満である(0度≦θ1<90度)。溝44の底面44cの内側のコーナー部44dは、トレンチ22の中心位置22d(すなわちθ1=0度の場合に相当:
図14A参照)、または、トレンチ22の中心位置22dよりも内側(すなわち0度<θ1<90度の場合に相当:
図14B参照)に位置する。溝44の底面44cの内側のコーナー部44dとは、溝44の底面44cと内側の側壁44aとの交線である。
【0065】
好ましくは、n
-型ドリフト領域2の、トレンチ22の内側の側壁22aに沿った部分の電界強度を活性領域11の主接合20付近の電界強度よりも小さくすることができる程度に、FP45が外側に湾曲していることがよい。例えば、溝44の底面44cの内側のコーナー部44dを通る接線と基体おもて面との角度θ1は、20度以上70度以下であることがよく(20度≦θ1≦70度)、好ましくは30度以上60度以下であることがよい(30度≦θ1≦60度)。なお、θ1=90度は、溝の側壁が湾曲していない状態であり、実施の形態1に相当する。
【0066】
溝44の深さD2は、実施の形態1と同様である。実施の形態2において、溝44の深さD2とは、半導体基体10のおもて面から、溝44の底面44cの内側のコーナー部44dまでの縦方向の長さである。溝44の幅w2は、基体おもて面から溝44の底面44cに至るまでほぼ一定である。おもて面電極4の端部は、FP45の下端部(基体裏面側の端部)の横方向位置よりも内側に位置することが好ましい。その理由は、おもて面電極4の端部がFP45の下端部の横方向位置よりも外側に延在する場合、FP45による電界分布に悪影響が及ぶからである。FP45の下端部とは、FP45の、溝44の底面44cの内側のコーナー部44dの部分である。
【0067】
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図15〜20は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、実施の形態1と同様に、n
+型支持基板1を用意し、n
-型ドリフト領域2のエピタキシャル成長からLTO膜32の堆積までの工程を順に行う(
図2〜5参照)。次に、
図15に示すように、基体おもて面およびトレンチ22の内壁に沿って埋め込み絶縁膜23を堆積する。このとき、トレンチ22の内部を埋め込み絶縁膜23で完全に埋め込まずに、トレンチ22の内部に略U字状の断面形状の溝51が残るように埋め込み絶縁膜23を埋め込む。この溝51は、後にFP45を埋め込んだ溝44となる。このため、溝51は、p型領域3とn
-型ドリフト領域2との界面から深さD2で残す。
【0068】
具体的には、スピンコート(Spin Coat)法により、軸中心に半導体基体10を回転させながら基体おもて面に埋め込み絶縁膜23の絶縁材料を塗布する。このとき、半導体基体10を載置したステージの回転速度を調整して埋め込み絶縁膜23の厚さを調整することで、溝51の断面形状(側壁の斜度)や深さD2を調整することができる。埋め込み絶縁膜23の絶縁材料としては、上述したSOGやBCBなどのように、粘性を有し、かつ流動性の高い塗布型絶縁材料を用いる。その理由は、堆積法などによる堆積型絶縁材料では、略U字状の断面形状の溝51を残すことができないからである。
【0069】
次に、
図16に示すように、熱処理により埋め込み絶縁膜23を硬化した後、溝51の内壁に沿ってFP45となる金属膜52を堆積する。金属膜52は、例えばアルミニウム膜である。アルミニウム膜は、金属膜52のパターニングに用いるレジストマスクを形成するためのフォトリソグラフィ時に露光照射光を反射しやすい。このため、次に、反射防止のための金属膜(以下、反射防止膜とする)で金属膜52を覆う。反射防止膜は、例えば、チタン−タングステン(TiW)膜および窒化シリコン(SiN)膜を順に堆積した金属積層膜であってもよい。
【0070】
次に、例えば堆積法やスプレーコート法により、反射防止膜上にレジスト膜を塗布する。スプレーコート(Spray Coat)法によりレジスト膜を塗布することで、反射防止膜に沿ってレジスト膜を形成可能である。次に、フォトリソグラフィによりレジスト膜をパターニング(レジスト膜の露光)し、FP45の形成領域を覆うレジストマスクを形成する。レジスト膜の露光時、レジスト膜の開口部には反射防止膜が露出し、その下層の金属膜52は露出しない。したがって、金属膜52からの露光照射光の反射によりレジスト膜の意図しない部分(レジストマスクとして残したい部分)が露光されることはない。
【0071】
次に、
図17に示すように、レジストマスク(不図示)をマスクとしてエッチングを行い、金属膜52および反射防止膜(不図示)をパターニングする。例えば、金属膜52の、溝51の外側の側壁51bを覆う部分から外側の部分を除去し、溝51の内側の側壁51aを覆う部分から内側の部分を残す。この溝51の内側の側壁51aに残る金属膜52がFP45となる。次に、レジストマスクを除去する。次に、反射防止膜を除去する。反射防止膜を除去する理由は、FP45の、おもて面電極4との接触部(コンタクト)がおもて面電極4と同じ金属材料で形成されていることが好ましいからである。
【0072】
次に、
図18に示すように、トレンチ22の内部を埋め込み絶縁膜23で完全に埋め込んだ後、熱処理により埋め込み絶縁膜23を硬化する。これにより、FP45を埋め込んだ溝44が形成される。次に、
図19に示すように、層間絶縁膜5が露出されるまで、FP45および埋め込み絶縁膜23を研磨する。次に、
図20に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜5をパターニングしてコンタクトホールを形成し、p型領域3を露出させる。その後、実施の形態1と同様に、おもて面電極4の形成以降の工程を順に行うことで、
図14Aに示す半導体装置が完成する。
【0073】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、埋め込み絶縁膜内部のFPを基体おもて面から深くなるにしたがって外側に湾曲させることで、FPの下端部付近の電界を緩和することができる。このため、n
-型ドリフト領域の、トレンチの内側の側壁に沿った部分の電界集中を低減させることができ、さらに耐圧を向上させることができる。
【0074】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の構造について説明する。
図21A,21Bは、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図21Bには、
図21Aの一部を拡大して示す。実施の形態3にかかる半導体装置が実施の形態2にかかる半導体装置と異なる点は、埋め込み絶縁膜23の内部において、FP(以下、第1FPとする)45の外側にさらにFP(以下、第2FPとする)47を備える点である。第2FP47は、基体おもて面から深くなるにしたがってトレンチ22の外側の側壁22bから離れるように内側に湾曲している。第2FP47は、第1FP45とは電気的に接続せず、離間する。第2FP47は、n型チャネルストッパー領域21に電気的に接続する。
【0075】
第2FP47を設けることで、第2FP47の湾曲に応じて埋め込み絶縁膜23の内部のより内側に電界集中箇所が移動した電界分布が得られる。このため、埋め込み絶縁膜23よりも外側に電界集中箇所がはみ出して分布することが抑制される。すなわち、第2FP47は、活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層の伸びを抑制し、埋め込み絶縁膜23の内部に電界集中箇所をおさめるように電界分布を変調する機能を有する。これにより、n型チャネルストッパー領域21に電界が集中することが抑制され、n型チャネルストッパー領域21でアバランシェ降伏が起きることを防止することができる。
【0076】
具体的には、第2FP47は、埋め込み絶縁膜23に設けた溝(以下、第2溝とする)46の内部に埋め込まれている。第2溝46は、第1FP45を埋め込んだ溝(以下、第1溝とする)44の周囲を囲む平面レイアウトに配置されている。第2溝46の両側壁46a,46bは、基体おもて面から深くなるにしたがってトレンチ22の外側の側壁22bから離れるように湾曲している。第2溝46は、トレンチ22の中心位置22dを通る中心線に対して、例えば第1溝44と略線対称となるように湾曲していてもよい。
【0077】
第1溝44の底面44cの内側のコーナー部44dを通る接線と基体おもて面との角度θ1は、0度より大きく90度未満である(0度<θ1<90度)。第1溝44の底面44cの内側のコーナー部44dは、トレンチ22の中心位置22dよりも内側に位置する。溝44の底面44cの内側のコーナー部44dを通る接線と基体おもて面との角度θ1は、実施の形態2と同様である。
【0078】
第2溝46の底面46cの外側のコーナー部46dを通る接線と基体おもて面との角度θ2は、0度より大きく90度未満である(0度<θ2<90度)。第2溝46の底面46cの外側のコーナー部46dとは、第2溝46の底面46cと外側の側壁46bとの交線である。第2溝46の底面46cの外側のコーナー部46dは、トレンチ22の中心位置22dよりも外側に位置する。
【0079】
すなわち、第1溝44の底面44cと第2溝46の底面46cとは接していない。第1溝44の底面44cの内側のコーナー部44dと、第2溝46の底面46cの外側のコーナー部46dと、の間の距離w5は、例えば半導体装置の耐圧V
Bおよび埋め込み絶縁膜23の絶縁耐圧V
Cに対して、下記(1)式を満たすことが好ましい。埋め込み絶縁膜23の絶縁耐圧V
Cは、例えば2×10
6V/cm程度である。
【0080】
w5[cm]≧V
B[V]/V
C[V/cm] ・・・(1)
【0081】
上記(1)式より、半導体装置の耐圧V
Bが例えば1000Vである場合、第1溝44の底面44cの内側のコーナー部44dと、第2溝46の底面46cの外側のコーナー部46dと、の間の距離w5は5μm程度となる。第2溝46の幅w4は、基体おもて面から第2溝46の底面46cに至るまでほぼ一定である。第2溝46の幅w4は、第1溝44の幅w2とほぼ等しくてもよい(w4=w2)。
【0082】
溝44の深さD2は、実施の形態2と同様である。第2溝46の深さD3は、n型チャネルストッパー領域21でアバランシェ降伏が起きることを防止することができ、かつ活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層63(
図28参照)がチップ端部に達しない程度に電界分布を変調可能な深さであればよく、種々変更可能である。第2溝46の深さD3とは、半導体基体10のおもて面から、第2溝46の底面46cの外側のコーナー部46dまでの縦方向の長さである。
図21A,21Bには、第1溝44の深さD2と第2溝46の深さD3とがほぼ同じ場合を示す。
【0083】
第2FP47は、埋め込み絶縁膜23上に延在し、n型チャネルストッパー領域21に電気的に接続されている。具体的には、ストッパー電極4aがn型チャネルストッパー領域21に接続し、n型チャネルストッパー領域21(基体おもて面側の端部)の少なくとも一部かまたは全体を覆う。さらにストッパー電極4aは、半導体基板の外側から埋め込み絶縁膜23上の一部を覆うように内側に延在している。第2FP47は、上部でストッパー電極4aと接続する。第2FP47は、ストッパー電極4aの内側端よりも外側で接続してもよい。このようにすることで、埋め込み絶縁膜23の内部のポテンシャル分布に、外部電荷が与える影響を小さくすることができる。
【0084】
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図22〜25は、実施の形態3にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、実施の形態2と同様に、n
+型支持基板1を用意し、n
-型ドリフト領域2のエピタキシャル成長から金属膜52および反射防止膜の堆積までの工程を順に行う(
図2〜5,15,16参照)。実施の形態3においては、トレンチ22の内部に形成された溝51が第1,2溝44,46となり、溝51に沿って形成された金属膜52が第1,2FP45,47となる。
【0085】
次に、
図22に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより金属膜52および反射防止膜(不図示)をパターニングし、金属膜52の、第1,2FP45,47となる部分を残す。次に、レジストマスクおよび反射防止膜を除去する。次に、
図23に示すように、トレンチ22の内部を埋め込み絶縁膜23で完全に埋め込んだ後、熱処理により埋め込み絶縁膜23を硬化する。これにより、第1,2FP45,47をそれぞれ埋め込んだ第1,2溝44,46が形成される。
【0086】
次に、
図24に示すように、層間絶縁膜5が露出されるまで、第1,2FP45、47および埋め込み絶縁膜23を研磨する。次に、
図25に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜5をパターニングしてコンタクトホールを形成し、p型領域3と、n型チャネルストッパー領域21を露出させる。その後、実施の形態2と同様に、おもて面電極4の形成以降の工程を順に行うことで、
図21A,21Bに示す半導体装置が完成する。なお、実施の形態3にかかる半導体装置においては、おもて面電極4の形成工程と同時、もしくはおもて面電極4の形成以降の工程で、ストッパー電極4aも形成する。
【0087】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3によれば、基体おもて面から深くなるにしたがって内側に湾曲した第2FPを設けることで、埋め込み絶縁膜の第1,2FPに挟まれた部分に電界集中箇所をおさめた電界分布が得られる。これにより、埋め込み絶縁膜よりも外側でアバランシェ降伏が起きることを抑制することができる。
【0088】
次に、FP45,47の動的特性について検証した。
図26は、実施例5の静的特性を示す説明図である。
図27は、実施例5の動的特性を示す説明図である。
図28は、実施例6の動的特性を示す説明図である。上述した実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、外側に湾曲したFP45を埋め込み絶縁膜23の内部に配置したダイオードを作製した(以下、実施例5とする:
図14A、14B参照)。実施例5の定常状態のときに活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層61の状態(静的な状態)を
図26に示し、高dV/dtが印加されたときに活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層62の状態(動的な状態)を
図27に示す。
【0089】
また、上述した実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、外側に湾曲した第1FP45と、内側に湾曲した第2FP47と、を内側から順に埋め込み絶縁膜23の内部に配置したダイオードを作製した(以下、実施例6とする:
図21A,21B参照)。高dV/dtが印加されたときに活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層63の状態(動的な状態)を
図28に示す。高dV/dtとは、スイッチング時に早いスイッチング速度で高電圧(ノイズ)がかかることであり、スイッチング時間に対する電圧変化量dV/dtが大きいことある。
【0090】
図26に示す結果より、実施例5の定常状態時、活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層61を、トレンチ22の外側の側壁22bに沿った状態で止めることができることが確認された。この理由は、n
-型ドリフト領域2の、トレンチ22の外側の側壁22bに沿った部分に電子が誘起され、この誘起された電子により形成されたn型領域61aが形成されるからである。このn型領域61aは、チャネルストッパーとして機能し、埋め込み絶縁膜23の内部に電界集中箇所をおさめるように電界分布を変調する機能を有する。
【0091】
図27に示す結果より、実施例5の高dV/dt印加時、活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層62が定常状態時よりもチップ端部側に広がることが確認された。この理由は、n
-型ドリフト領域2の、トレンチ22の外側の側壁22bに沿った部分にn型領域61a(
図26参照)が形成される前に、チップ端部側に空乏層62が広がってしまうからである。この場合、高dV/dtの大きさによっては、埋め込み絶縁膜23よりも外側に電界集中箇所がはみ出して分布し、n型チャネルストッパー領域21でアバランシェ降伏が起きる虞がある。
【0092】
図28に示す結果より、実施例6においては、高dV/dt印加時であっても、活性領域11の主接合20から外側に伸びる空乏層63を、トレンチ22の外側の側壁22bに沿った状態で止めることができることが確認された。これにより、実施例6の第2FP47は、定常状態時にトレンチ22の外側の側壁22bに沿った部分に誘起される電子によるn型領域61a(
図26参照)と同様の機能を有することが確認された。
【0093】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の構造について説明する。
図29は、実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態4にかかる半導体装置が実施の形態3にかかる半導体装置と異なる点は、第2FP49の深さを第1FP45の深さよりも深くした点である。すなわち、第2FP49を埋め込んだ第2溝48の深さD3は、第1FP45を埋め込んだ第1溝44の深さD2よりも深い。実施の形態4にかかる半導体装置の第2溝48の深さD3以外の構成は、実施の形態3にかかる半導体装置と同様である。
【0094】
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図30〜33は、実施の形態4にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、実施の形態1と同様に、n
+型支持基板1を用意し、n
-型ドリフト領域2のエピタキシャル成長からLTO膜32の堆積までの工程を順に行う(
図2〜5参照)。次に、
図30に示すように、基体おもて面およびトレンチ22の内壁に沿って埋め込み絶縁膜23を堆積する。このとき、トレンチ22の内部に略U字状の断面形状の溝71が残るように埋め込み絶縁膜23を埋め込む。この溝71は、後に第2FP49を埋め込んだ第2溝48となる。このため、溝71は、半導体基体10のおもて面から深さD3で残す。
【0095】
次に、熱処理により、埋め込み絶縁膜23を硬化する。次に、溝71の内壁に沿って、第2FP49となる金属膜72を堆積する。次に、実施の形態2の第1FPの形成と同様に、金属膜72を反射防止膜(不図示)で覆った後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより金属膜72および反射防止膜をパターニングし、金属膜72の、第2FP49となる部分を残す。次に、レジストマスクおよび反射防止膜を除去する。
【0096】
次に、
図31に示すように、第2FP49を覆うように、トレンチ22の内部に埋め込み絶縁膜23を堆積する。このとき、トレンチ22の内部に略U字状の断面形状の溝73が残るように埋め込み絶縁膜23を埋め込む。この溝73は、後に第1FP45を埋め込んだ第1溝44となる。このため、溝73は、半導体基体10のおもて面から深さD2で残す。
【0097】
次に、熱処理により、埋め込み絶縁膜23を硬化する。次に、溝73の内壁に沿って、第1FP45となる金属膜74を堆積する。次に、実施の形態2と同様に、金属膜74を反射防止膜(不図示)で覆った後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより金属膜74および反射防止膜をパターニングし、金属膜74の、第1FP45となる部分を残す。次に、レジストマスクおよび反射防止膜を除去する。
【0098】
次に、
図32に示すように、トレンチ22の内部を埋め込み絶縁膜23で完全に埋め込んだ後、熱処理により埋め込み絶縁膜23を硬化する。これにより、第1,2FP45,49をそれぞれ埋め込んだ第1,2溝44,48が形成される。上述した複数回の埋め込み絶縁膜23の埋め込みには、実施の形態2と同様に、スピンコート法を用いればよい。
【0099】
次に、
図33に示すように、層間絶縁膜5が露出されるまで、第1,2FP45、49および埋め込み絶縁膜23を研磨する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜5をパターニングしてコンタクトホールを形成し、p型領域3と、n型チャネルストッパー領域21を露出させる。その後、実施の形態1と同様に、おもて面電極4の形成以降の工程を順に行うことで、
図29に示す半導体装置が完成する。なお、実施の形態4にかかる半導体装置においては、おもて面電極4の形成工程と同時、もしくはおもて面電極4の形成以降の工程で、ストッパー電極4aも形成する。
【0100】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態4によれば、第2FPの深さを深くすることで、より確実に、埋め込み絶縁膜の内部に電界集中箇所をおさめた電界分布とすることができる。
【0101】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる半導体装置の構造について説明する。
図34は、実施の形態5にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態5にかかる半導体装置が実施の形態2にかかる半導体装置と異なる点は、n
-型ドリフト領域2の、トレンチ22の外側の側壁22bに沿った部分にn型領域81を設けた点である。
【0102】
n型領域81は、トレンチ22の外側の側壁22bに露出するように配置されている。また、n型領域81は、n型チャネルストッパー領域21に接続されている。n型領域81は、実施の形態2にかかる半導体装置の定常状態に、空乏層61の端部に誘起された電子で形成されるn型領域61a(
図26参照)と同様の機能を有する。
【0103】
実施の形態5にかかる半導体装置の製造方法は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法において、例えば、トレンチ22の形成後、トレンチ22の内壁の犠牲酸化前に、斜めイオン注入により、トレンチ22の外側の側壁22bにn型領域81を形成すればよい。斜めイオン注入とは、基体おもて面に対して斜め方向からイオン注入を行うことである。
【0104】
実施の形態5の製造方法を実施の形態1に適用してもよい。
【0105】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、n
-型ドリフト領域の、トレンチの外側の側壁に沿った部分にn型領域を設けることで、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
【0106】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、たとえば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態においては、ダイオードやMOSFETを例に説明しているが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)にも適用可能である。この場合、n
+型支持基板に代えて、p
+型支持基板を用いればよい。
【0107】
また、IGBTの場合においても、半導体基体10は、インゴットから切り出したバルクウェハーであってもよい。バルクウェハーは、FZ(フロートゾーン)法、CZ(チョクラルスキー)法、MCZ(磁場印加型チョクラルスキー)法で製造されてもよい。半導体基体10は、バルクウェハーの例えば裏面側を研削して薄板化してもよい。この場合、n
-型ドリフト領域2はバルクウェハーと同じ不純物濃度でもよい。p
+型支持基板に相当するp型の高不純物濃度層は、研削面にp型ドーパント(ボロン、アルミニウム等)をイオン注入等により導入し、熱アニール等により形成してもよい。半導体基板10の薄板化工程は、本実施の形態のトレンチ、埋め込み絶縁膜、FPといった表面構造の形成後に行ってもよい。また、上述した各実施の形態においては、半導体基体はシリコンやゲルマニウムの他に、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドといったワイドバンドギャップ半導体基体であってもよい。
【0108】
また、上述した各実施の形態3,4において、第2FPを略直線状の断面形状とした場合においても、埋め込み絶縁膜の内部のより内側に電界集中箇所をおさめた電界分布に変調可能である。また、上述した各実施の形態においては、半導体基板上に半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板を用いた場合を例に説明しているが、これに限らず、例えばデバイスを構成するすべての領域を半導体基板の内部にイオン注入により形成したドーピング領域としてもよい。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。