(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記直列接続されたモジュールの少なくとも2つと、前記一連のモジュールのうち最終モジュールと呼ばれる終端モジュールおよび最後から2番目のモジュールと呼ばれる前記最終モジュールの近位モジュールに接続された中子とを含み、前記中子が
− 各前記モジュール内の縦走繊維と同数の剛性且つ非延伸連結部を有するピラミッド型構造であって、各前記連結部が互いに垂直且つ前記連結部の方向に垂直な各軸の回りの2つの回転自由度で前記最後から2番目のモジュールの各縦走繊維に接続された第1終端、および3つの回転自由度で前記ピラミッドの最上部に接続された第2終端を有するピラミッド型構造と、
− 各前記モジュール内の縦走繊維と同数の連結部を有する星型構造であって、各前記連結部が、前記繊維に並行な軸の回りに1つの回転自由度および前記軸に沿って摺動自由度で前記最終モジュールの各縦走繊維に接続された第1終端、および前記星型の中心に堅牢に接続された第2終端を有し、各前記連結部が延伸可能であって前記第1終端を担持する第1セグメントおよび前記第2終端を担持する第2セグメントを有し、前記2つのセグメントが第1軸および第2軸それぞれの回りの2つの回転自由度で相互接続されていて、前記第1軸が前記第1または前記第2セグメントのいずれかに平行であって、前記第2軸が前記第1軸および前記モジュールの縦方向に垂直である星型構造と、
− 前記ピラミッドの最上部に3つの回転自由度で取り付けられ、前記星型の中心に堅牢に取り付けられたシャフトとを含む、請求項1に記載の機構。
前記横方向連結部または少なくとも1つの前記横方向連結部の前記第2終端が、前記第2の縦走繊維に平行に延在してその遠位端の近傍で固定されたカンチレバーに摺動可能に接続されている、請求項1に記載の機構。
各前記縦方向連結部が、その長さを変えるアクチュエータ、および前記アクチュエータを互いに独立に制御するプロセッサを備えている請求項1〜7のいずれか1項に記載の機構を含む装置。
請求項4に記載の機構を用いてエネルギーを変換する方法であって、前記縦方向連結部の少なくとも1つが、前記連結部の縦方向の長さの変化を可能にし、且つそのような変化の結果として電力を発生させる発電トランスデューサを備える方法。
【背景技術】
【0003】
「蛇」および「魚」型ロボットは通常、2つの多関節電動プラットフォームで区切られた一連の独立モジュールにより構成される。C.Wright他による論文「Design and Architecture of the Unified Modular Snake Robot」、2012 International Conference on Robotics and Automation(ICRA 2012),pp.4347−54を参照されたい。各モジュールは、2つの自由度を有し、2つのプラットフォームを接続する自在継手により画定される自由度に従い2本の垂直な平面内で曲がる。このアーキテクチャは、一切のねじれ動作を許さない。必要ならば、ねじれ自由度は専用の可動要素により提供され、洗練度が向上する。このような構造を用いて遊泳および這行型無人機、更にある種の産業用ロボット、例えば産業分野における塗装ロボットを駆動する。
【0004】
代替的な解決策は、一連のStewartプラットフォームの使用に基づくものであり、前記プラットフォームの各々が曲げ、ねじり、および並進を許す6つの自由度を有している。しかし、多くの用途では並進は必要でないこともある。そのような場合、並進自由度が利用可能であることは短所になる。これらのシステムの更に不利な点は、各プラットフォームのアクチュエータが、当該一連における他のプラットフォームおよびそれらの負荷の重量を支持できなければならない点である。また、その荷重積載能力は、そのカンチレバー構造に起因して低い。第1のプラットフォームのアクチュエータに掛かるストレス荷重は極めて大きく、構造は全負荷重量の下で垂れ下がる傾向がある。
【0005】
近年、蛇/魚型ロボットと同じ動力学(ねじれ無しでの曲げ)を有する象の鼻を模したロボットを実装すべく空気圧システムが提案されている。これらの機械は、本質的に受動的であり、これはある種の用途では受け入れられない特性である。M.RoflおよびJ.Steilによる論文「Constant curvature continuum kinematics as fast approximate model for the Bionic Handling Assistant」IEEE/RSJ Int.Conf.Intelligent Robot and Systems(IROS),ポルトガル,ヴィラモウラ(Vilamoura):3440−3446を参照されたい。
【0006】
本発明は、上述の従来技術の短所が克服された、例えば「蛇」、「魚」または「象の鼻」型ロボットを駆動させることに適した曲げおよびねじり機構の提供を目的とする。より具体的には、堅牢且つ高い荷重積載能力を有する機構に3つの駆動自由度(2つの曲げ自由度および1つのねじれ自由度)を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の機構はまた、人型ロボットおよび/またはエネルギー変換装置の脊椎の区間を構成する等、他の用途にも適している。
【0008】
本発明の機構は、生物を模倣している。より具体的には、「3+0軸糸」として知られる真核細胞の繊毛および鞭毛の動作を司る特定の種類の細胞骨格構造を模倣している。Prensier、G.Vivier、E.、Goldstein、S.およびSchrevel、J(1980)による論文「Motile flagellum with a “3+0”ultrastructure」Science、207(4438)、1493−1494を参照されたい。軸糸が微視的構造であって公知の巨視的等価物が存在しないことを強調する価値がある。これは、巨視的生物構造を模倣する(例、骨格筋状のアクチュエータを用いる)生物模倣型ロボット工学で用いられている従来のアプローチとは好対照をなす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は従って、少なくとも3つの面を有する管状構造を有する少なくとも1つのモジュールを含む機構であって、前記面の各々が以下の要素、すなわち各々が近位端と呼ばれる第1終端および遠位端と呼ばれる第2終端を有する剛性且つ非延伸の2本の平行な縦走繊維であって、各前記繊維が当該モジュールの2つの隣接する面に共通であり、且つ各前記繊維の近位端が近位モジュールと呼ばれる別のモジュールの相同な繊維の遠位端または基台に3つの回転自由度で接続された2本の平行な縦走繊維と、前記2本の縦走繊維を接続する横方向の非延伸連結部であって、当該モジュールの各繊維が横方向連結部の第1終端および別の横方向連結部の第2終端に接続されるように、前記第1繊維に堅牢に接続された第1終端および、前記繊維に沿って1つの摺動自由度およびその回りの1つの回転自由度で前記第2繊維に接続された第2終端を有し、各前記横方向連結部が前記第1終端を担持する第1セグメントおよび前記第2終端を担持する第2セグメントを含み、前記2つのセグメントが各軸の回りに2つの回転自由度で相互接続されていて、前記軸の一方が前記第1または前記第2セグメントのいずれかに平行であって、前記軸の他方が前記第1軸および当該モジュールの縦方向の両方に垂直である横方向の非延伸連結部と、前記横方向連結部を、互いに垂直且つ前記縦方向連結部に垂直な各軸回りの3つの回転自由度を有する第1の接続および2つの回転自由度だけを有する第2の接続を介して前記近位モジュールの同種の横方向連結部または前記基台に接続する縦方向連結部と、前記縦方向連結部の長さを変えるアクチュエータ、角柱継手、および前記縦方向連結部の長さの変化を可能にし、且つそのような変化の結果として電力を発生させる発電トランスデューサから選択された装置とを含んでいる。
【0010】
そのような機構の独立な、または互いに組み合せた異なる実施形態によれば、
− 前記モジュールまたは各前記モジュールは厳密に3つの面を有していてよい。
− 前記縦方向連結部または各前記縦方向連結部は自身の第2終端の近傍で前記横方向連結部または各前記横方向連結部に接続されている。
− 当該機構は、縦走繊維の終端を介して互いに接続された前記一連のモジュールを含んでいてよい。
− 前記直列接続されたモジュールは、当該機構が周期的構造を有するように、互いにほぼ同一であってよい。
− 当該機構は、前記直列接続されたモジュールの少なくとも2つと、前記一連のモジュールのうち最終モジュールと呼ばれる終端モジュールおよび最後から2番目のモジュールと呼ばれる前記最終モジュールの近位モジュールに接続された中子とを含んでいてよく、前記中子は以下の要素、すなわち、各前記モジュール内の縦走繊維と同数の剛性且つ非延伸連結部を有するピラミッド型構造であって、各前記連結部が互いに垂直且つ前記連結部の方向に垂直な各軸の回りの2つの回転自由度で前記最後から2番目のモジュールの各縦走繊維に接続された第1終端、および3つの回転自由度で前記ピラミッドの最上部に接続された第2終端を有するピラミッド型構造と、各前記モジュール内の縦走繊維と同数の連結部を有する星型構造であって、各前記連結部が、前記繊維に並行な軸の回りに1つの回転自由度および前記軸に沿って摺動自由度で前記最終モジュールの各縦走繊に接続された第1終端、および前記星型の中心に堅牢に接続された第2終端を有し、各前記連結部が延伸可能であって前記第1終端を担持する第1セグメントおよび前記第2終端を担持する第2セグメントを有し、前記2つのセグメントが各軸回りの2つの回転自由度で相互接続されていて、前記軸の一方が前記第1または前記第2セグメントのいずれかに平行であって、前記軸の他方が前記第1軸および当該モジュールの縦方向に垂直である星型構造と、前記ピラミッドの最上部に3つの回転自由度で取り付けられ、前記星型の中心に堅牢に取り付けられたシャフトとを含んでいる。
− 前記横方向連結部または少なくとも1つの前記横方向連結部の前記第2終端は、前記第2の縦走繊維に平行に延在してその遠位端の近傍で固定されたカンチレバーに摺動可能に接続されていてよい。
【0011】
本発明の別の目的は、そのような機構を含む装置であり、各前記縦方向連結部が、その長さを変えるアクチュエータ、および前記アクチュエータを互いに独立に制御するプロセッサを備えている。
【0012】
本発明の更に別の目的は、そのような装置を含む脊柱を有する人型ロボットである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、そのような機構を用いてエネルギーを変換する方法であり、前記縦方向連結部の少なくとも1つが、前記連結部の長さの変化を可能にし、且つそのような変化の結果として電力を発生させる発電トランスデューサを備えている。
【0014】
本発明の追加的な特徴および利点は、添付の図面と共に以下の記述から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本発明による機構は一般に、断面が多角形(
図1の場合は三角形)の管状構造を有する一連のN個のモジュールM
1、...、M
i、M
i+1、...、M
Nの形式である。第1モジュールM
1は基台0(例:接地点、プラットフォーム、より複雑なロボットの異なる部分等)に接続されているのに対し、最終モジュールM
Nは自由遠位端を有している。一般的なモジュールM
iに対し、基台に隣接するモジュールM
i−1を「近位」と呼ばれる一方、基台から遠い隣接モジュールM
i+1は「遠位」と呼ばれる。2つの最終(基台から数えて)モジュールM
N−1およびM
N(
図3参照)にシャフト90が接続され、機構の自由端から突き出ている。シャフト90と、これを最後から2番目および最終モジュールM
N−1およびM
Nに接続する連結部は、「中子」9と呼ばれる部材を形成する。上述のように、また以下に詳述するように、中子により曲げおよびねじり動作を外部物体に伝達することが可能になる。
【0017】
参照符号Pは、モジュールのアクチュエータを駆動するプロセッサ(例:外部コンピュータまたは搭載プロセッサ)に対応する。以下で議論するように、各モジュールの各々の面が1つのアクチュエータ(または発電トランスデューサ)を含んでいてよい。アクチュエータまたはトランスデューサのいくつかは、好適には摺動への機械的抵抗に対抗する受動的摺動継手(角柱の対)で代替できる。
【0018】
特定の実施形態において、当該機構は単一のモジュール(N=1)を含んでいてよい。
【0019】
有利には、全てのモジュールが互いに同一であってよく、その場合、当該機構は周期的構造を有している。代替的な実施形態において、これのモジュールは縦方向の長さだけが異なっていてよい(「準周期的構造」)。
【0020】
図1に示すように、各モジュールは3つの(より一般的にはM≧3)平坦な面を有している。これらの面は、
図2A、2Bに示す共通のアーキテクチャを有している。有利には、同一モジュールの全ての面(および有利には周期的構造を有する機構の全ての面)は互いに同一である。
【0021】
図2Aに、
図1の機構の第1モジュールM
1の面の機械的アーキテクチャを示す。
【0022】
当該面は、基台0から遠位モジュールM
2まで延在する剛性且つ非延伸の2本の縦走繊維1および4を含んでいる。これらの繊維は、当該面を横方向に区切り、その各々は同一モジュールの一対の隣接する面に共通である。当該繊維は、例えばロッド、梁または管により構成され、考慮する特定の用途に応じて金属または他の材料で作られていてよい。
【0023】
各繊維は、基台0へ向けられた近位端、および遠位モジュールM
2へ向けられた遠位端を有している。各繊維の近位端は、3つの回転自由度(d.o.f)を有する継手0−1、0−4により基台0に接続されている。同様に、各繊維の遠位端は、遠位モジュールM
2の相同な繊維1’、4’へ継手1−1’、4−4’(同じく3つの回転自由度を有する)により近位モジュールM
2に接続されている。継手は異なる形式、例えばボール継手または弾性継手として実装されていてよい。
【0024】
2本の繊維は、好適にはこれらの遠位端の近傍で、前記繊維のうちの一方(1)に堅牢に接続された第1終端、および前記繊維に沿って摺動(並進)自由度およびその回りの回転自由度(円筒継手3−4)で前記繊維の他方(4)に接続された第2終端を有する横方向連結部2により接続されている。上で説明したように、繊維は2つの隣接する面に属しており、従って2つの横方向連結部に接続されている。各繊維が、前記横方向連結部の一方に堅牢に、および前記連結部を繊維に沿って摺動可能且つその回りを回転可能にする継手(円筒継手3−4)を介して他方に接続されていることが有利である。
【0025】
円筒継手3−4が繊維4にではなく、前記繊維に平行であって前記繊維にその遠位端の近傍で固定されたカンチレバー40に直接接続されている点に注意されたい。この技術的選択(必須ではないが極めて有利である)の理由については後で説明する。
【0026】
横方向連結部2は非延伸であるが、剛性ではない。実際、両終端を担持する少なくとも2つのセグメントを含み、前記2つのセグメントは2つの回転自由度、すなわち堅牢に接続された終端を担持するセグメントに平行な第1軸回りの自由度と、前記第1軸および当該モジュールの縦方向の両方に垂直な第2軸回りの自由度を有する(換言すれば、第2軸は、自身が属するモジュールの面にほぼ垂直である)ように相互接続されている。代替的に、第1軸は第2セグメントに平行であってもよい。
図2Aの実施形態において、これら2つの自由度は、2つのピボット(回転)継手および連結部の中間セグメントを用いて実装されているが、例えば、必要な自由度を有する単一の専用継手または弾性継手(後者の選択は、不要な追加的並進および回転自由度をもたらすため、さほど好適ではない)を用いる他の実装方式も可能である。
【0027】
当該面はまた、互いに垂直且つ前記縦方向連結部(自在継手3−32)の方向に垂直な各軸回りの3つの回転自由度(ボールまたは弾性継手32−0)で基台0に、および2つの回転自由度で横方向連結部2に接続された縦方向(すなわち繊維1、4に平行な)連結部32を含んでいる。逆(縦方向連結部と基台の間の自在継手または等価物、および縦方向と横方向連結部間のボール継手または等価物)もまた可能である。自在継手および/またはボール継手は弾性継手で代替することができる。これらには、追加的並進自由度をもたらす短所があるが、前記追加的自由度がもたらす受動的変形は大多数の用途では無視できよう。更に、弾性継手を用いる場合、アクチュエータはそれらを変形させる何らかの追加的な力を出さなければならない。
【0028】
縦方向連結部は、縦方向に整列配置され、並進自由度を許して結果的に連結部の長さを変化させる(角柱の対としてモデル化された)アクチュエータまたはトランスデューサAを介して相互接続された2つのセグメントを含むため、非可撓性ではあるが伸長可能である。アクチュエータは「能動」実施形態で用いられ、例えばロボットに用いられるのに対し、2つのセグメントの外部的に誘発された並進の結果として電力を発生させる発電トランスデューサはエネルギー変換用途に用いられる。ある場合は、同一装置(例:直流電気モータ)がアクチュエータおよび発電トランスデューサの両方に用いることができる点に留意されたい。エネルギー変換に用いる機構において、発電トランスデューサは、動作の最大振幅が機構の長さとうねりの波長の比率に依存する遠位モジュールの縦方向連結部だけで用いることができる。実際、基台に最も近いモジュールの動作は、効率的な発電が不可能な低い振幅を有している。従って、コスト削減のために、これらのモジュールは、摺動が機構に沿って累積的であるため、互いに沿って自由に摺動するセグメントを含む縦方向連結部を備えていてよい。
【0029】
アクチュエータまたはトランスデューサの機械的利点を最大化すべく、縦方向連結部が横方向連結部に、後者の第2(摺動)終端のなるべく近傍に接続されている。
【0030】
図2Bに、モジュールM
2の面の構造を示す。モジュールM
1のアーキテクチャとの唯一の差異は、縦走繊維1’、4’の近位端が基台ではなく第1モジュールの相同な縦走繊維1、4の遠位端に接続されていること、および縦方向連結部32’の近位端が基台ではなくM
1の横方向連結部に接続されていることである。
図2Bにおいて、機構の異なる要素は、M
2の要素にはプライム(’)記号が付され、遠位モジュールM
3の要素には2重プライム(’’)記号が付されていることを除いて、
図2Aと同一の参照番号で示す。
【0031】
モジュールM
3〜M
N−1の面は同一アーキテクチャを有している。最終モジュールM
Nの面も、縦走繊維の遠位端が自由である点を除いて同様である。
【0032】
モジュールの面の縁は非延伸繊維により構成されている。従って、
図1の機構が曲げられた際に、その遠位端(すなわち最終モジュールの繊維の遠位端)が基台0とほぼ平行なままの平面に存在することが容易に理解できる。これは、
図5に見られ、
図4B、4Cにより明確に見られる。この理由のため、一連のモジュールの終端における曲げおよびねじれ動作の外部物体への伝達を容易にすべく(「中子」と呼ばれる)特定の装置(図の参照番号9)が設けられていてよい。本装置の機械的アーキテクチャを
図1に極めて模式的に示し、
図3に詳細に示す。
【0033】
図3に示すように、中子は、機構の遠位端から突き出たシャフト90を含み、当該シャフトは、各前記モジュール内の縦走繊維と同数(本実施形態では3つ)の剛性且つ非延伸連結部を有するピラミッド型構造91を介して最後から2番目のモジュールM
N−1、および各前記モジュールの縦走繊維と同数(同じく3つ)の剛性且つ伸長可能な連結部を有する星型構造92を介して最終モジュールM
Nに接続されている。
【0034】
ピラミッド型構造91において、非延伸連結部911、912および913は、互いに垂直且つ前記連結部(自在継手J
911、J
912およびJ
913)の方向に垂直な各軸回りの2つの回転自由度で最後から2番目のモジュールM
N−1の各縦走繊維に接続されている。これらは、ピラミッド最上部または頂点90−91に3つの回転自由度(ボールまたは弾性継手)に接続されている。シャフト90もまた、3つの回転自由度で同一頂点に接続されている。
【0035】
星型構造92において、伸長可能な連結部921、922、923は、
− 前記繊維に平行な軸回りの1つの回転自由度および前記軸に沿った1つの摺動自由度を有する最終(遠位)モジュールM
Nの各縦走繊維(連結部921上の円筒継手J
9212、同様の継手が星型構造の他の連結部に設けられており、横方向連結部2、2’について議論したように、これらの円筒継手は、繊維に平行に延在して前記繊維の遠位端の近傍で接続されたカンチレバーに沿って摺動可能である)、および
− 星型の中心においてシャフト90に堅牢に接続されている。
【0036】
前記連結部の各々は、縦走繊維へ向けられた第1セグメント、および星型の中心へ向けられた第2セグメントを含んでいる。当該セグメントは、前記第1セグメント(摺動または滑走自由度も提供して連結部を伸長可能にする連結部921上の円筒継手J
9212)に平行な軸回りの第1の回転自由度、および前記第1軸に垂直且つモジュール(連結部921上のピボットまたは回転継手J
9213)の縦方向に垂直な第2軸回りの第2の回転自由度で相互接続されている。同図において、モジュールの縦方向は、シャフト90の縦方向に一致している。代替的に、第1軸は第2セグメントに平行であってもよい。
図3の実施形態において、これらの2つの自由度は、2つのピボット(回転)継手および連結部の中間セグメントを用いて実装されているが、例えば、必要な自由度を有する単一の専用継手または弾性継手(後者の選択は、不要な追加的並進および回転自由度をもたらすため、さほど好適ではない)を用いる他の実装方式も可能である。
【0037】
図5に見られるように、機構が曲げられたとき、中子9のシャフト90は、最終モジュールの縦走繊維にほぼ平行である。
図6は、機構がねじられたとき、シャフトが回転する様子を示す。例えばStewartプラットフォームと比較して、本発明による機構の極めて有利な特徴は、アクチュエータAが中子に掛かる拘束力を、これらの力が主に縦走繊維に伝達されるため、支持しない点である。更に、中子のシャフトは並進自由度を有しておらず、これはある種の用途では望ましい。必要ならば、並進運動を許すべく角柱継手を中子に取り付けてもよい)。駆動された角柱継手を用いて、例えば不可避的にねじれを伴う機構長の僅かな減少を補償することができる。
【0038】
本発明による機構の動作を説明すべく、簡略化された2次元モデルを参照することとし、その機械的アーキテクチャを
図4Aに示す。当該モデルは、横方向連結部が当該連結部自身に垂直な軸回りの単一の回転自由度を有するという事実により、完全な3次元機構の面のモデルとは異なる。更に、横方向連結部の摺動終端は、
図2A、2Bのようにカンチレバー無しで、縦走繊維に直接取り付けられている。
【0039】
図4Bは、アクチュエータが2次元機構の縦方向連結部の長さを変えた際に、後者が曲がる様子を示している。連結部の1.73から2.09への任意の単位での伸長により、左側へ25.62°(第1または最も低いモジュールの外側すなわち右側の繊維の延伸と、最終モジュールの外側の繊維の延伸とで形成される角度として定義される)の曲げが生じる。同様に、1.73単位から1.38の任意の単位への連結部の収縮により、右側へ25.62°(第1または最も低いモジュールの外側すなわち左側の繊維の延伸と、最終モジュールの外側の繊維の延伸とで形成される角度として定義される)の曲げが生じる。しかし、縦走繊維の長さが一定のままであるため、繊維の遠位端同士を結ぶ線はほぼ水平のままである。より厳密には、当該線の傾きは、最終モジュールの繊維に垂直な線により形成される角度で与えられ、この角度の値は、左側への傾きに対して3.32°であり、右側への傾きに対して5.55°(機構が非対称であるため、値は互いに異なる)である。これにより中子の必要性が分かる。
【0040】
2次元機構の最大屈曲(しかし、これは3次元機構のものにも当てはまる)は、最終モジュールの横方向連結部の摺動端が縦走繊維のボール継手の1つと当接するという事実により制限される。対称な屈曲が求められる場合、機構がまっすぐなときに、横方向連結部の前記摺動端が縦走繊維の中央に位置していなければならない。
【0041】
図4Bの右側パネルは、横方向連結部の摺動継手が下向きに移動して繊維の近位端でボール継手と当接した際に問題が生じる様子を示している。この場合、最終モジュールの縦走繊維の遠位端に不具合がある。
図4Cに示すように、可能な解決策としては、縦走繊維の摺動端を当該繊維の遠位端の近傍に固定された縦方向カンチレバーに取り付けて、両者を上向き(すなわち繊維の遠位端または先端の方へ)および下向きの両方に延伸することである。
【0042】
この解決策は3次元機構(
図2A、2B)でも用いられる。
【0043】
図5に、
図1、2Aおよび2Bの3次元機構の曲げ動作を示す。そのような動作は、対応するアクチュエータを用いて曲げの外側の面の縦方向連結部を延伸し、同じく対応するアクチュエータを用いて他の面の縦方向連結部を同じ量だけ縮小させることにより得られる。
【0044】
図6に、
図1、2Aおよび2Bの3次元機構のねじれ動作を示す。そのような動作は、対応するアクチュエータを用いて全ての縦方向連結部を同じ量だけ延伸または縮小させることにより得られる。
【0045】
生体内軸糸は、細胞鞭毛および睫毛の波動を生起させる。同様に、本発明による機構の一連のモジュールに沿って伝播する2または3次元波列を得ることが可能である。これを
図7に示し、同図において、
− 曲線Dは波動機構の瞬間的な形状を示す。
− 曲線Eは機構に沿って伝播する平面波列のエンベロープに対応している。
− 曲線Sは、アクチュエータの瞬間的な変位、または透過的に、横方向連結部の第2終端の瞬間的な摺動変位に対応している。
− 曲線SEは波の一周期にわたる前記瞬間的な変位のエンベロープに対応している。
【0046】
図7は連続的近似に基づいている。すなわち、機構は無限に短いモジュールを無限個含んでいると考えられる。
【0047】
図7のような平面波列を得るために、機構のアクチュエータは、以下の法則に従い駆動される。
【数1】
ここで、Δyはアクチュエータの変位、「n」は(基台から始めて)当該一連に沿ったモジュールのランク、A、B、CおよびDは定数、および「t」は時間である。
【0048】
例えばねじれを含む、より複雑なパターンもまた可能である。
【0049】
図1に示すように、波動機構を用いて、波動または遊泳ロボットを移動させることができる。後者の場合、ロボットは精子のように「泳ぐ」。
【0050】
本発明による機構の他の可能な用途を
図8、9に示す。
【0051】
図8に、「脊椎」SPが本発明による3区間機構で構成された「腰部」区間LSおよび剛性「背部」区間DSを含む人型ロボットの部分(且つ簡略)図を示し、基台0が「骨盤」に対応し、シャフト90が「頸部」に対応していて、その上に「頭部」Hが取り付けられている。中子に垂直に固定された横方向バーSHはロボットの「肩部」を構成し、それにアームが取り付けられる。
【0052】
図9に、全く異なる用途、すなわち海波およびより具体的には外洋うねりのエネルギーの変換を示す。同図は、浮揚性で、アクチュエータの代わりに海面を浮遊する発電トランスデューサ(例:圧電または電気機械トランスデューサ)を有する本発明による機構1000を示す。外洋うねりSWは、機構の波動を生起させる。トランスデューサはこの動作の運動エネルギーを、ケーブル(図示せず)により集められる電力に変換する。
【0053】
いくつかの装置はアクチュエータおよび発電機の両方として使用可能であるため、同一機構を「能動」機械(例:ロボット)および「受動」エネルギー変換機械の両方に用いることができる。