【実施例1】
【0018】
図1(a)は、実施例1に係る電気回路装置の回路図、
図1(b)は、平面図、
図1(c)は、断面図である。
図2(a)は、
図1(c)のヒューズ付近の拡大図である。
図1(b)において、筐体30の上面および消弧剤40の図示を省略している。
図1(c)において、消弧剤40以外の部材が見やすいように、消弧剤40の密度を減らして図示している。実施例2以降の図も同様である。
図1(a)に示すように、外部端子18aと18bとの間にコンデンサ20とヒューズ24とが直列に電気的に接続されている。
図1(b)および
図1(c)に示すように、実施例1に係る電気回路装置100において、基板10上にコンデンサ20が設けられている。コンデンサ20は接続端子22aおよび22bを介し基板10に接続されている。接続端子22aの一部にヒューズ24が設けられている。基板10、コンデンサ20およびヒューズ24を囲むように筐体30が設けられている。
【0019】
外部端子18aおよび18bは筐体30から突出している.筐体30内には粉体状の消弧剤40が封入されている。
図2(a)に示すように、消弧剤40は、コンデンサ20およびヒユーズ24を覆っている。消弧剤40は、コンデンサ20およびヒューズ24に接し、粉体状の消弧剤40同士も接している。
図2(b)は、接続端子22aの側面図である。接続端子22aは幅広部23aおよび23cと溶断部23bとを備えている。溶断部23bは幅広部23aと23cの間に設けられており、幅広部23aおよび23cより幅が狭い。幅広部23aはコンデンサ20の外部電極に接続され、幅広部23cは基板10に接続されている。接続端子22aに大きな電流が流れると、溶断部23bの電流密度が高くなり、溶断部23bにおいて接続端子22aは溶断する。
【0020】
図3は、実施例1の変形例に係る電気回路装置の断面図である。
図3に示すように、実施例1の変形例に係る電気回路装置102において、基板10上にヒューズ24が設けられている。ヒューズ24は、例えば
図2(b)のように溶断部23bである。ヒューズ24は、接続端子22aと外部端子18aとの間に直列に接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0021】
実施例1およびその変形例において、基板10は、例えば絶縁層と絶縁層上または中に設けられた配線層を備える。絶縁層は、例えば絶縁性樹脂層である。配線層は例えば銅層等の金属層である。接続端子22aおよび22bは配線層に電気的に接続される。接続端子22aおよび22bと外部端子18aおよび18bとは配線層を介し電気的に接続される。コンデンサ20は、例えばチタン酸バリウム等を誘電体とする積層セラミックコンデンサである。コンデンサ20は他のコンデンサでもよい。接続端子22aおよび22bは、例えば銅等の金属端子である。接続端子22aおよび22bの材料としては、銅以外にニッケル、金、銀、アルミニウム等、またはこれらの混合物でもよい。
【0022】
幅広部23a、23cおよび溶断部23bは同じ材料から形成されていてもよい。この場合、溶断部23bは、幅広部23aおよび23cより断面積が小さい。溶断部23bは、幅広部23aおよび23cの材料より溶断しやすい材料から形成されていてもよい。この場合、溶断部23bは、幅広部23aおよび23cと同じ断面積でもよい。
【0023】
消弧剤40としては、有機材料または無機材料を用いることができる。消弧特性を向上させるため、消弧剤40は融点の高い材料が好ましい。この観点から金属酸化物または炭酸塩等の無機材料が好ましい。無機材料として、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、または珪砂を用いることができる。酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、または炭酸カルシウムは珪砂より融点が高くより好ましい。消弧剤40の粉体の平均粒径は、例えば10μmから200μmとすることができる。また粉体の個々の粒形状は球状であれば流動性があって好ましい。
【0024】
実施例1およびその変形例によれば、筐体30が基板10、コンデンサ20およびヒューズ24を囲む。粉体状の消弧剤40が筐体30内に封入されヒューズ24に接してこれを覆う。このように、基板10、コンデンサ20およびヒューズ24を保護するための筐体30を消弧剤40の容器として用いる。これにより、粉体状の消弧材40が直接ヒューズ24に接してこれを覆う。このため、溶断したときの消弧を確実におこなうことができる。また消弧材40が個別に封入されたヒューズ24を接続端子22aに接続しなくともよい。よって、電気回路装置を小型化できる。ヒューズ24が複数になると小型化の効果は大きい。また、消弧剤40が粉体状のため、消弧剤40を筐体30の隅々まで簡単に封入できる。また、消弧剤40は空気よりも熱伝導がよく、これが筐体30内の空間を埋めるため、放熱性を向上できる。さらに、ヒューズ24が溶断するときの音をほとんど消すことができる。粉体状の消弧材40は、筐体30内のすべてに封入されていなくともよい、上記のようにヒューズ24に接してこれを覆う状態であればよい。さらにコンデンサ20や基板10に接していれば、その部分の放熱性がよくなる。
【0025】
金属酸化物または炭酸塩等の無機材料は絶縁樹脂等の有機材料に比べ、融点が高い。このため、消弧剤40を粉体状の無機材料とすることで、消弧特性を向上できる。可燃性である有機材料に対し、無機材料は不燃性である。このため、大電流が流れた場合にも消弧剤40が発煙したり、燃焼することを抑制できる。よって、絶縁樹脂の内部に消弧材の粉体が分散された封止材料と比較しても消弧剤40はより大電流に対応できる。
【0026】
実施例1のように、ヒューズ24を接続端子22aの部品領域内の少なくとも一部分に設ける。これにより、実施例1の変形例に比べ、外部端子18aとコンデンサ20との間の電流経路を短くできる。これにより、寄生インダクタンスを低減できる。
【0027】
実施例1では、接続端子22aにヒューズ24を設ける例を説明したが、ヒューズ24は接続端子22aおよび22bの少なくとも一方に設ければよい。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、電源間に接続される平滑コンデンサとして用いられる電気回路装置の例である。
図4は、実施例2に係る電気回路装置の回路図である。
図4に示すように、外部端子18aと18bとの間に並列に複数のコンデンサ20が接続されている。各コンデンサ20と外部端子18aとの間に並列に複数のヒューズ24が接続されている。外部端子18aと18bの間には、例えば直流電圧が印加される。外部端子18aおよび18bは、例えばそれぞれ正側および負側の端子である。
【0029】
図5(a)は、実施例2に係る電気回路装置の平面図、
図5(b)は、
図5(a)のA−A断面図である。
図5(a)は、上面の筐体を透過して図示している。
図5(a)および
図5(b)に示すように、電気回路装置104において、基板10は、絶縁層14とバスバー12aおよび12bを備える。バスバー12aおよび12bは、平板状であり絶縁層14の上下にそれぞれ設けられている。基板10の上下にコンデンサ20が接着剤26を介し搭載されている。バスバー12aおよび絶縁層14を貫通する孔16aとバスバー12bおよび絶縁層14とを貫通する孔16bとが設けられている。接続端子22aはコンデンサ20とバスバー12aとを電気的に接続する、接続端子22bはコンデンサ20とバスバー12bとを電気的に接続する。基板10の上側では、接続端子22bは孔16aを介しバスバー12bに接続される。基板10の下側では、接続端子22aは孔16bを介しバスバー12aに接続される。接続端子22aの一部にヒューズ(
図8(a)参照)が設けられている。
【0030】
基板10、コンデンサ20およびヒューズ24を囲むように箱状の筐体30が設けられている。外部端子18aおよび18bが筐体30の一面に設けられている。外部端子18aおよび18bはそれぞれバスバー12aおよび12bと電気的に接続されている。コンデンサ20間に仕切板36が設けられている。筐体30内に消弧剤40が封入されている。
【0031】
図6は、実施例2に係る電気回路装置の斜視図である。
図6に示すように、筐体30に孔38が形成されている。孔38は消弧剤40を筐体30内に封入するための孔である。外部端子18aおよび18bには孔19が形成されている。孔19は、外部端子18aおよび18bを外部とボルトで接続するための孔である。
【0032】
基板10上にコンデンサ20を接着材で固定した後、外部電極25aおよび25bとバスバー12aおよび12bとを接続端子22aおよび22bによって接続する。その後、
図6のように筐体30に外部端子18aおよび18bを差し込むように組み入れて、筐体30裏面のふたを
図6の下側から封止する。筐体30の材質は、たとえばポリカーボネートやポリアセタールや変性ポリフェニレンエーテルである。孔38から消弧材40を入れたのち、筐体30と同じ材料で孔38をふさぎ、孔38の周囲を封止する。
【0033】
図7は、実施例2における基板10に搭載されたコンデンサの平面図である。
図8(a)から
図8(c)は、それぞれ
図7のA−A断面図、B−B断面図およびC−C断面図である。
図7から
図8(c)では、基板10の上側のコンデンサ20を図示し、基板10の下側のコンデンサ20の図示を省略している。
図7から
図8(c)に示すように、コンデンサ20の一面に形成された外部電極25aに6本の接続端子22aが接続され、他面に形成された外部電極25bに6本の接続端子22bが接続されている。外部電極25aおよび25bは、コンデンサ20の側面のほぼ全面に形成されている。外部電極25aおよび25bは銅膜またはニッケル膜等の金属膜である。接続端子22aはバスバー12aに半田等を用い接続されている。接続端子22bは3本ずつ孔16aを介しバスバー12bに半田等を用い接続されている。接続端子22aには溶断部が形成されている。溶断部がヒューズ24として機能する。コンデンサ20は、積層セラミックコンデンサである。複数の接続端子22a同士は接続配線で接続されていてもよい。複数の接続端子22b同士は接続配線で接続されていてもよい。
【0034】
図4から
図8(c)のように、外部端子18aは、バスバー12aおよび接続端子22aを介し複数のコンデンサ20の一端に電気的に接続される。外部端子18bは、バスバー12bおよび接続端子22bを介し複数のコンデンサ20の一端に電気的に接続される。これにより、外部端子18aと18bとの間に複数のコンデンサ20が並列に接続される。バスバー12aおよび12bは複数の接続端子22aおよび22bを共通に接続する。バスバー12aおよび12bにより、外部端子18aと18bと複数のコンデンサ20との間に形成される寄生インダクタンスを抑制できる。さらに、1つのコンデンサ20に複数の接続端子22aおよび複数の接続端子22bが接続されている。これにより、バスバー12aおよび12bを流れる電流が分散するため、接続端子22aおよび22bとして各々単一の接続端子を設けた場合に比べて、寄生インダクタンスを抑制できる。1つのコンデンサ20に対し複数の孔16aまたは複数の孔16bを設ける。これにより、バスバー12aおよび12bを流れる電流の経路を確保できる。1つのコンデンサ20に対し1つの孔16aまたは1つの孔16bを設け、接続端子22aまたは22bの数を増やしてもよい。これにより、バスバー12aまたは12bとコンデンサ20との間の寄生インダクタンスを抑制できる。
【0035】
図9(a)および
図9(b)は、実施例2の変形例1におけるA−A断面図およびB−B断面図である。
図9(a)および
図9(b)に示すように、接続端子22bにヒューズ24が設けられている。接続端子22aにはヒューズ24は設けられていない。
【0036】
図10(a)および
図10(b)は、実施例2の変形例2におけるA−A断面図およびB−B断面図である。
図10(a)および
図10(b)に示すように、接続端子22aおよび22bにヒューズ24が設けられている。実施例2およびその変形例のように、ヒューズ24は接続端子22aおよび22bの少なくとも一方に設けられていればよい。
【0037】
実施例2およびその変形例の電気回路装置は、例えば電気自動車の駆動用モータの用いるインバータの一次側平滑コンデンサに用いる。電気回路装置の仕様は、例えば動作電圧が200V、定格電圧が400V、静電容量が240μF、最大リップル電流が300Aおよび短絡故障時電流が1200Aである。動作電圧を例えば48V以上かつ720V以下、静電容量を例えば47μF以上かつ630μFとすることができる。このように、実施例2およびその変形例の電気回路装置は、インバータまたはコンバータ等の電源回路の一次側平滑コンデンサに用いることができる。
【0038】
絶縁層14としては、例えばエポキシ樹脂またはポリミド樹脂等の耐熱性の高い絶縁樹脂を用いることができる。バスバー12aおよび12bとして、例えば銅板等の金属板を用いることができる。接続端子22aおよび22bとして、例えば銅板等の金属板を用いることができる。1本の接続端子22aおよび22bの抵抗は例えば1mΩ程度である。筐体30および仕切板36は、難燃性樹脂、セラミックスまたは絶縁塗装した金属などの絶縁性である。筐体30と、バスバー12aおよび12b並びに外部端子18aおよび18bと、の間にはシリコーン樹脂等の耐熱性の高い絶縁層を設けてもよい。
【0039】
消弧剤40として、珪砂、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)または炭酸カルシウム(CaCO
3)を用いることができる。珪砂の粒径は例えば250μmから600μmである。例えば、目開きが0.595mmのふるいを通過した粉体状の珪砂のうち、目開きが0.25mmのふるいを通過しない珪砂を消弧剤40として用いる。酸化アルミニウムの粒径は例えば150μm以下である。例えば、目開きが0.15mmのふるいを通過した粉体状の酸化アルミニウムを消弧剤40として用いる。酸化マグネシウムの平均粒径は例えば1μmである。酸化ジルコニウムの平均粒径は例えば10μmから15μmである。炭酸カルシウムの平均粒径は例えば12μmである。このように、消弧剤40の粒径は例えば1μmから1mmであり、適宜選択できる。また、筐体30内の消弧剤40の密度は適宜設定できる。
【0040】
消弧剤40として、上記例示した粒径の珪砂、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムおよび炭酸カルシウムを用い、ヒューズ24が溶断したときの消弧特性を測定した。酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シルコニウムおよび炭酸カルシウムを消弧剤40として用いた場合、消弧特性は良好であった。珪砂を消弧剤40として用いた場合、上記した他の消弧剤に比べ、消弧特性は若干低下するものの、実用可能な消弧特性であった。
【0041】
空気の熱伝導率は0.0241W/m・Kである。これに対し、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび珪砂の熱伝導率は、それぞれ20W/m・K、40W/m・Kおよび0.7W/m・Kである。筐体30を消弧剤40で充満させることにより、放熱性を向上できる。
【0042】
実施例2のように、複数の接続端子22aがコンデンサ20と基板10との間に並列に接続されている。これにより、複数のヒューズ24がコンデンサ20と基板10との間に並列に接続される。1本のヒューズ24が溶断するときの電流を小さくできるため、ヒューズ溶断後に発生するアーク放電を抑制できる。並列に接続するヒューズ24の数は適宜設定できる。
【0043】
また、バスバー12aおよび12bは、複数のコンデンサ20を共通に電気的に接続する。これにより、バスバー12aおよび12bの間に複数のコンデンサ20を並列に接続することができる。よって、電気回路装置の静電容量を大きくできる。また、複数のコンデンサ20それぞれにヒユーズ24を接続することができる。コンデンサ20の数は適宜設定できる。
【0044】
筐体30内に、仕切板36が設けられている。仕切板36は、複数のコンデンサ20の少なくとも1つのコンデンサ20と、少なくとも1つのコンデンサ20に隣接するコンデンサ20に対応するヒューズ24と、の間に設けられる。これにより、ヒューズ24が溶断したときに、隣のコンデンサ20に溶断したヒューズ24の金属等が飛散することを抑制できる。
【0045】
バスバー12aは、複数のコンデンサ20のそれぞれの一端を共通に電気的に接続する。バスバー12bは、複数のコンデンサ20のそれぞれの他端を共通に電気的に接続する。このように、大電流が流れる電気回路装置においては、コンデンサ20のショートによる過電流が問題となる。そこで、ヒューズ24をコンデンサ20の一端とバスバー12aとの間と、コンデンサ20の他端とバスバー12bとの間と、の少なくとも一方の間に直列に電気的に接続する。これにより、電気回路装置を大型化せずに、過電流を抑制できる。
【0046】
しかしながら、ヒューズ24が溶断するときのアーク放電等を抑制するため消弧剤40を用いると、消弧剤40を保持するための容器を設けることになる。よって、電気回路装置が大型化し、配線長が長くなるので寄生インダクタンスが増加する。電気回路装置を大型化させないため、例えば特許文献1、2のように、ヒューズの周りを有機樹脂で覆うことも考えられる。しかしながら、有機樹脂は無機材料に比べ消弧性能が悪い。一方、実施例2のように、基板10およびコンデンサ20を囲む筐体30内に消弧剤40を封入する。ヒューズが個々に消弧材を封止する構造を有さないことにより、配線長が長くなったり、電気回路装置を大型化させずに消弧剤40を用いることができる。さらに、消弧剤40が基板10およびコンデンサ20を覆うため基板10およびコンデンサ20からの放熱性を向上できる。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。