(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1〜
図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示すポンプ装置は、内接ギヤポンプ10を有している。
内接ギヤポンプ10は、ギヤケース11と、アウターロータ12と、インナーロータ13を備えている。
図1において、符号14はポンプハウジングであり、符号15はポンプ下部エンドプレート(以下、「エンドプレート」と略記する)である。インナーロータ13は、図示しないキーにより回転軸5に固定されている。
アウターロータ12と、インナーロータ13の噛合いによる作動流体の昇圧の態様が
図2に示されている。
【0018】
図2において、実施形態の内接ギヤポンプ10は、アウターロータ12の7枚の内歯12tと、インナーロータ13の6枚の外歯13tとが噛合いながら、同一方向に回転(矢印R)している。
アウターロータ12の7枚の内歯12tと、インナーロータ13の6枚の外歯13tとの噛合いにより、作動流体は昇圧される。
【0019】
図2において、ハッチングを施した領域E1の作動流体が昇圧される。
領域E1(
図2)で昇圧された作動流体は、ロータ12、13側の端面に形成された吐出ポート140(
図2では、破線で示す)から、ポンプハウジング14(
図1)の吐出流路141を経由して1、吐出口142から吐出される。
【0020】
図1において、ポンプ装置100は、サイクロンケーシング45に一次サイクロン40を設け、一次サイクロン40の半径方向外方に複数の二次サイクロン50を設けている。一次サイクロン40と二次サイクロン50は、下端(異物排出口42、52)が縮径するテーパー状の部材である。サイクロンケーシング45の下端近傍には、作動流体を取り込むための流入口45iが形成されている。
さらにポンプ装置100は、インペラーハウジング31内部に収容されたインペラー30(サイクロン中継インペラー)を有している。
【0021】
一次サイクロン40の下方にはテーパー状ガイド部材55が配置され、さらに下方には、異物排出用インペラー60が設けられている。
インナーロータ13、サイクロン中継インペラー30、異物排出用インペラー60は回転軸5に固定され、図示しない電動モータによって回転駆動される。
【0022】
ポンプ装置100の流入口45iから取り込まれた作動流体の流れ(F1〜F11:Fc1〜Fc4)を説明する。
流入口45iから取り込まれた作動流体F1は、サイクロンケーシング45内を上昇して(矢印F2)、ガイド部材312の天井部で折り返して、一次サイクロン40に流入する(矢印F3)。
【0023】
一次サイクロン40に流入した作動流体は回転軸5に引きずられ渦流状に下降し(矢印F4)、比重の大きい異物(例えば、クーラントに含まれる切粉等の異物)は異物排出口42から排出され(点線で示す矢印Fc1)、清浄な作動流体はサイクロン中継インペラー30の位置まで上昇する(矢印F5)。
サイクロン中継インペラー30の回転により、作動流体は昇圧されて2次インペラー50内に流入する(矢印F6)。
【0024】
二次サイクロン50に流入した作動流体は渦流状に下降し(矢印F7)、比重の大きい異物は下降して異物排出口52から排出され、テーパー状ガイド部材55を滑り落ち(点線で示す矢印Fc2)、2段階に清浄化された作動流体は上昇して吸入プレート20に設けた吸入パイプ21内を流過する(矢印F8)。
作動流体は、吸入プレート20の流路22を通過して、エンドプレート15の吸入ポート150から内接ギヤポンプ10内部に吸入される(矢印F9)。そして内接ギヤポンプ10によって昇圧され、ポンプハウジング14の吐出ポート140、吐出流路141を経由して、ポンプハウジング14の吐出口142から吐出される(矢印F10、矢印F11)。詳細は後述するが、内接ギヤポンプ10によって昇圧された作動流体の一部(矢印F10Rで示す)は、バランスプレート7に形成された吐出圧導入孔73(
図3)内に流入する。
なお、一次サイクロン40の異物排出口42及び二次サイクロン50の異物排出口52から排出された異物を包含する作動流体(矢印Fc1、Fc2)は、異物排出用インペラー60で動圧が与えられ(矢印Fc3)、異物吐出口63からポンプ外に排出される(矢印Fc4)。
【0025】
図1で示すポンプ装置100は、内接ギヤポンプ10の回転軸5方向(
図1では上下方向)について、作動流体の吸入側(エンドプレート15側)と吐出側(ポンプハウジング14側)が異なる側に配置されているタイプのポンプである。
発明者が把握している経験則として、係るタイプのポンプ装置においては、内接ギヤポンプ10のロータ12、13は、エンドプレート15側(吸入側:
図1では下方)が、ポンプハウジング14側(吐出側:
図1では上方)よりも摩耗量が大きくなる現象が発生する。
【0026】
ロータ12、13における係る摩耗によって生じる段差を抑制するために、ポンプ装置100のギヤポンプ10には、エンドプレート15側(吸入側:
図1では下側)にバランスプレート7(
図3参照)が配置されている。バランスプレート7は硬度が高い材料で構成されている。
図1において、エンドプレート15のロータ12、13と接する面15fには、バランスプレート装着穴15hが形成されており、バランスプレート装着穴15hの深さ寸法はバランスプレート7の厚み寸法よりも僅かに大きい。そしてバランスプレート7は、バランスプレート装着穴15hに装着されている。
【0027】
図3で示すように、バランスプレート7は、半径の異なる二つの半円7oa(大きな半円)、7ob(小さな半円)が、互いの底辺を接続させるような平面形状を有している。
半円7oa、7obが接続する部分においては、半円7oa、7obは、半径方向寸法が小さな円弧rを介して滑らかに接続している。
図3において、大きな半円7oaの曲率中心を符号C1で示し、小さな半円7obの曲率中心を符号C2で示されている。
図3において、二つの曲率中心C1、C2は、(
図3における上下方向に)オフセットしている。
【0028】
バランスプレート7の平面上にはO−リング溝71、72が形成されており、O−リング溝71、72は平面的には円環状に形成されており、その断面形状は矩形である。
(半径方向寸法が)小さい方のO−リング溝72の中心C3は、前記曲率中心C1を通る水平線Lh(
図3において左右方向に延在する一点鎖線)上に位置しており、曲率中心C1に対して
図3で左方にオフセットして位置している。
小さなO−リング溝72の半径方向内方には貫通孔7iが形成されている。貫通孔7iはO−リング溝72と同心であり、貫通孔7iの半径は小さなO−リング溝72の曲率半径よりも小さい。そして貫通孔7iに回転軸5(
図1)が挿通されている。
【0029】
図1、
図3では図示を省略しているが、O−リング溝71、72内にO−リング(作動流体に対して耐性がある弾性部材:例えばゴム製)が嵌入されている。
バランスプレート装着穴15h(
図1参照)の底部においては、図示を省略した当該2つのO−リングにより、
図3で示す二つのO−リング溝71、72で囲われた領域E2(
図3においてハッチングを施した領域)はシールされた空間(密封空間)となる。
当該密封空間(
図3において、O−リング溝71、72で囲われた領域E2:
図3においてハッチングを施した領域)には、バランスプレート7の厚み方向に延在する2箇所の貫通孔(吐出圧導入孔)73が形成されており、貫通孔73を介して作動流体(矢印F10Rで示す作動流体)が侵入する。前記密封空間(
図3においてハッチングを施した領域E2)に侵入した作動流体は、バランスプレート7を
図1の上方に移動する押圧力を付加して、バランスプレート7をロータ12、13に押圧する。
なお、バランスプレート7の2箇所の吐出圧導入孔73は、インナーロータ13で一方が塞がれても、他方は塞がれないように配置されている。
【0030】
図3における符号74は、図示しない回り止めピンを挿入するためのピン穴である。図示しない回り止めピンにより、バランスプレート7の回転(回転軸5の回転による連れ回り)を防止している。
なお、ピン穴74は盲穴であり、O−リング溝71、72が形成されている側に開口している。
【0031】
図1において、ロータ12、13の上側(バランスプレート7の反対側)には、ロータ12、13に接するように固定プレート8を配置している。固定プレート8は、ロータ12、13よりも硬度が高い材料で構成されている。さらに、クーラント中に混合する恐れがある異物よりも硬度が高いことが好ましい。
図5は、当該固定プレート8の詳細を示している。
図5では、固定プレート8に吸入ポート82及び吐出ポート81を形成している。しかし、固定プレート8の吸入ポート82は形成していなくても良い。なお、固定プレート8の吸入ポート82が形成されていない場合には、シール圧抜き穴(図示せず)が吸入室に連通している必要がある。
【0032】
図5の固定プレート(第1実施形態における固定プレート)8は、作動流体の吸入側と吐出側が、インナーロータの回転軸方向について、同じ側に配置されているタイプのポンプ(
図11〜
図15)における固定プレートとの共通化(部品の共通化)を図るために、吸入ポート82及び吐出ポート81の双方を形成したものを例示しているに過ぎない。ここで、回転方向が異なる場合には、ポンプ(
図11〜
図15)における固定プレートを裏返して使用する。
図5における符号84は、周り止めピンの装着穴であり、符号8iは回転軸5の挿通孔である。
【0033】
内接ギヤポンプ10において、アウターロータ12とインナーロータ13の隙間は、吸入側(
図1の下側)から吐出側(
図1の上側)まで連続している。従って、内接ギヤポンプ10の吐出圧は、ポンプ回転軸方向(
図1の上下方向)について、アウターロータ12とインナーロータ13の隙間(矢印F10R)と、バランスプレート7に形成された吐出圧導入孔73とを経由して、バランスプレート7の
図1における下端面(バランスプレート装着穴15hの底部)まで導入され、前記密封空間(
図3においてハッチングを施した領域E2)に供給(印加)される。そして、バランスプレート7をロータ12、13に(
図1の上方へ)押圧する。
一方、
図2において、ハッチングを施した領域E1は、或る瞬間におけるアウターロータ12とインナーロータ13の隙間であり、吐出圧が作用する領域を示している。そして、ハッチングを施した領域E1の吐出圧は、バランスプレート7を
図1の下方(ロータ12、13から離隔する方向)へ押圧するように作用する。
図2、
図3から明らかなように、
E1の面積<E2の面積
となる様に設定されているので、面積が大きいE2側(
図1におけるバランスプレート7の下側)に印加される圧力の方が、面積が小さいE1側(
図1におけるバランスプレート7の上側)に印加される圧力よりも強くなる。その結果、バランスプレート7は吐出側(
図1の上側:ロータ12、13側)に押圧される。
【0034】
ここで、バランスプレート7を吐出側(
図1の上側)に押圧する力が強すぎると、領域E2側に印加される圧力はロータ12、13の回転を妨げてしまう。一方、バランスプレート7をロータ12、13側(
図1の上側)に押圧する力が弱すぎると、ロータ12、13の端部における摩耗に起因して、容積効率が低下してしまう。
係る問題が生じないように、第1実施形態では、O−リングの位置(すなわち、O−リング溝71、72の位置)が決定されている。換言すれば、O−リング溝71、72の位置は、領域E2側に印加される圧力によりロータ12、13の回転を妨げることなく、且つ、バランスプレート7がロータ12、13側(
図1の上側)に確実に押圧されて、ロータ12、13の端部における摩耗による容積効率が低下を防止出来る位置に設定されている。
なお、実機においては、領域E1からアウターロータ12外周とインナーロータ13内周に漏れ出る吐出圧の圧力勾配の影響を受けるため、領域E2の面積は実験により決定される。
【0035】
図3において、二つのO−リング溝71、72で囲われた領域E2は、吸込ポート(
図3では破線Liで境界を示した領域)側(
図3の下側)が極めて小さく、吐出ポート140(
図3では2点鎖線で囲われた領域Lo)側が大きい様に設定されている。ポンプ吐出圧の方が吸入圧よりも高圧であるため、バランスプレート7の吐出圧が作用するポンプ吐出側領域Loを大きな圧力でロータ12、13側に押し付けるためである。すなわち、2つのO−リング溝71、72は、バランスプレート7において、吐出圧が作用する領域であるポンプ吐出側領域Loを、ロータ12、13側に大きな圧力で押し付け、バランスプレート7がロータ12、13を押圧する量を均等にする様に設定されている。
一方、バランスプレート7は、吸入ポート150(
図3では符号Li)側を閉塞しない形状となっており、内接ギヤポンプ10に作動流体が吸入されるのを妨げない形状である。換言すれば、吸入側(
図1では下側)において、バランスプレート7で閉塞されない領域が内接ギヤポンプ10の吸入ポート150を構成するのである。
【0036】
係る構造を有するバランスプレート7は、内接ギヤポンプ10の吐出圧により、ロータ12、13の吸入側(
図1の下側)端面を吐出側(
図1の上側)に押し付ける。
上述した様に、バランスプレート7は硬度が高い材料で構成されているので摩耗せず、平坦な状態を保持する。そのため、バランスプレート7に押圧されるロータ12、13の側面が凹凸に摩耗してしまうことはない。そして、ロータ12、13が摩耗した分については、バランスプレート7がロータ12、13側に移動して、摩耗によるクリアランス(隙間)を減少する。そのため、内接ギヤポンプ10の容積効率が向上する。
【0037】
上述した様に、バランスプレート7をロータ12、13の吸入側(
図1の下側)端面に押し付ける力は、内接ギヤポンプ10の吐出圧から得ている。そのため、内接ギヤポンプ10の起動時には吐出圧がバランスプレートに作用しない。
それに対して第1実施形態では、断面の直径寸法がO−リング溝71、72の深さ寸法よりも大きなO−リングがO−リング溝71、72内に装着されているので、
図4で示すように、O−リングORの弾性反撥力FrがO−リング溝71、72に対して作用して、当該弾性反撥力Fr(
図4では上方に作用)により、バランスプレート7はロータ12、13(
図4では図示を省略)の下端面に押し付けられる。
換言すれば、第1実施形態では、例えば起動時にバランスプレート7をロータ12、13の下端面に押し付ける初期圧力を、O−リングの弾性反撥力Frによって得ている。そのため、内接ギヤポンプ10の吐出圧がバランスプレート7に作用しない起動時においても、バランスプレート7はロータ12、13の
図4における下端面に押し付けられる。ここで、硬度が高い材料で構成されているバランスプレート7は摩耗せず、平坦な状態を保持するため、バランスプレート7に押圧されるロータ12、13の側面が凹凸に摩耗してしまうことはなく、ロータ12、13の側面における段差の形成が抑制される。そして、ロータ12、13が摩耗した分は、バランスプレート7がロータ12、13側に移動して摩耗によるクリアランス(隙間)を減少する。その結果、内接ギヤポンプ10の容積効率が向上する。
【0038】
次に
図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図6において、ポンプ装置は全体を符号100Aで示されている。
図1〜
図5で示す第1実施形態では、内接ギヤポンプ10の吐出側(
図1ではロータ12、13の上方)に固定プレート8(
図5)を設けている。
それに対して、
図6の第2実施形態では、固定プレートを設けていない。発明者の実験から、ロータ12、13において、ポンプハウジング14側(吐出側:
図6ではロータ12、13の上方)の摩耗は大きくないことが判明している。そのため、要求仕様によっては、固定プレートを省略することが可能である。
図6の第2実施形態におけるその他の構成、作用効果は、
図1〜
図5の第1実施形態と同様である。
【0039】
図7〜
図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図7において、ポンプ装置は全体に符号100Bで示されている。
図1〜
図6の第1実施形態及び第2実施形態では、
図4で示すように、内接ギヤポンプ10の起動時において、バランスプレート7を吐出側(
図1では上側)に押し付ける初期圧力((例えば起動時に、バランスプレート7をロータ12、13の端面に押圧する力:
図4の上方に向かう力)を、O−リングの弾性反撥力Frにより得ている。
これに対して、
図7〜
図9の第3実施形態では、O−リングの弾性反撥力ではなくて、スプリング(コイルスプリング)9の弾性反撥力により、内接ギヤポンプ10の起動時において、バランスプレート7Aを吐出側(
図7では上側)に押し付ける初期圧力(バランスプレート7Aをロータ12、13の端面に押圧する力:
図9では上方に向かう力)を得ている。
【0040】
図9と
図4を比較すれば明らかなように、第3実施形態では、バランスプレート7AにおけるO−リング溝71A、72AあるいはO−リングORの位置(
図9参照)が、第1実施形態、第2実施形態(
図4参照)とは異なっている。
図4(第1実施形態、第2実施形態)において、バランスプレート7におけるO−リング溝71、72あるいはO−リングORは、バランスプレート7の吸入側(
図4の下方)端面に形成されている。
それに対して、
図9(第3実施形態)において、バランスプレート7AにおけるO−リング溝71A、72AあるいはO−リングORは、回転軸方向(
図9の上下方向)について、バランスプレート7Aの吸入側(
図9の下方)端面と吐出側(
図9の上方)端面との間の領域で、且つバランスプレート7Aの外周面及び内周面に沿った位置に配置されている。そして内側O−リング72Aは、エンドプレート15に嵌合固定されたブッシュBSと対面している。
【0041】
図9(および
図7)で示すように、バランスプレート7Aの吸入側(
図7の下側)端面には盲孔BHが形成されており、当該盲孔BH内にはスプリング9が収容されている。このスプリング9は圧縮された状態で収容されており、スプリング9が伸長する方向に弾性反撥力が作用する。
その結果、スプリング9の弾性反撥力(スプリング9が伸長する力)により、バランスプレート7Aは吐出側(
図7、
図9では上側)に押し付けられ、内接ギヤポンプ10起動時の初期圧力(例えば起動時に、バランスプレート7Aをロータ12、13の端面に押圧する力)を得ている。
【0042】
図8において、符号73Aは吐出圧導入孔73を示し、符号74Aは周り止めピンの装着穴を示す。
また、
図8における左右両端において符号Gで示す円(一点鎖線)は、バランスプレート装着穴15hにセットされた2本のスプリング9の当接位置を示している。
なお、第3実施形態における固定プレートは、第1実施形態と共通の固定プレート8が用いられる。
【0043】
スプリング9の弾性反撥力により、内接ギヤポンプ起動時の初期圧力を得ている第3実施形態では、初期圧力をO−リングの弾性反撥力で得ている第1実施形態及び第2実施形態に比較して、弾性反撥力でバランスプレート7Aを押し付ける量(移動量)を第1実施形態、第2実施形態に比較して、大きく設定することが可能である。
そのため第3実施形態では、ロータ12、13の摩耗量が大きくなっても、硬度が高い材料で構成され摩耗せず平坦な状態を保持するバランスプレート7Aがロータ12、13の側面に適宜押し付けられる。そのため、ロータ12、13の側面における段差の形成が抑制される。そして、ロータ12、13が摩耗した分は、バランスプレート7がロータ12、13側に移動して摩耗によるクリアランス(隙間)を減少するので、容積効率が向上する。
図7〜
図9の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図6の実施形態と同様である。
【0044】
次に
図10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
図10において、ポンプ装置は全体を符号100Cで示されている。
図7〜
図9の第3実施形態では、内接ギヤポンプの吐出側(
図7では上側)に固定プレート8(
図5と同様)を設けている。それに対して、
図10の第4実施形態では、固定プレートを設けていない。
図10の第4実施形態におけるその他の構成、作用効果は、
図7〜
図9の第3実施形態と同様である。
【0045】
次に、
図11〜
図14を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
図11において、ポンプ装置は全体を符号200で示されている。
図1〜
図10の第1実施形態〜第4実施形態は、何れも、作動流体の吸入側と吐出側が、インナーロータ13の回転軸方向について、異なる側に配置されているタイプのポンプ装置に適用された実施形態である。
それに対して、
図11〜
図14の第5実施形態では、作動流体の吸入側と吐出側が、インナーロータ213の回転軸方向について、同じ側に配置されているタイプのポンプ装置に適用された実施形態である。
【0046】
図11及び
図12において、全体を符号200で示すポンプ装置は、回転軸205と、ギヤケース211と、アウターロータ212と、インナーロータ213と、ポンプハウジング214と、エンドキャップ215と、支持部材216を有している。支持部材216、ポンプハウジング214、ギヤケース211及びエンドキャップ215は、2本の通しボルトB1と座金付ナットNWによって1体に固定されている。そして支持部材216及びポンプハウジング214はボルトB2で締結され、エンドキャップ215、ギヤケース211、ポンプハウジング214はボルトB3で締結されている。
回転軸205はポンプハウジング214、インナーロータ213を貫通して、ポンプハウジング214に介装された軸受BG及びエンドキャップ215に介装された軸受BSによって軸支されている。
ここで、符号Kはインナーロータ213を回転軸205に固定するキー、符号SWはスラストワッシャ、符号MSはオイルシールを示す。
【0047】
図11において、エンドキャップ215におけるロータ212、213と接する側の面(
図11ではエンドキャップ215の左端面)には、バランスプレート207を装着するためのバランスプレート装着穴(盲穴)215Hが形成されている。
一方、ポンプハウジング214のロータ212、213と接する側の面(
図11ではポンプハウジング214の右端面)には、固定プレート8を装着するための固定プレート装着穴(凹部)214Hが形成されている。
【0048】
図12において、作動流体は、白抜き矢印Fiで示すようにポンプ装置200に吸入され、破線の矢印で示すようにポンプ装置200内を流過し、白抜き矢印Foで示す様にポンプ装置200から吐出される
図12において、符号Piは吸入ポートを示し、符号Poは吐出ポートを示している。
図13で示すように、第5実施形態では、回転軸方向について、吸入ポートPiは吐出ポートPoと同じ側に存在する。そのため
図12では、吸入ポートPiと吐出ポートPoが同じ側にあるものとして、両方が示されている。
図11、
図12において、アウターロータ212、インナーロータ213は同一方向に回転し、吸入ポートPiから流入した作動流体はロータ212、213の歯車間の隙間の容積が変動することにより昇圧され、吐出ポートPoを経由して、ポンプハウジング214(
図12)の吐出口214oからポンプ装置200外に吐出される。
【0049】
ポンプ装置200におけるバランスプレート207(
図11)は、第1実施形態におけるバランスプレート7(
図3)と構造は共通している。ただし、ロータの回転方向が異なるので、バランスプレート207は、
図3のバランスプレートに対して、
図3のX−X軸と線対称な形状となっている。
バランスプレート207は半径寸法が大きいO−リング溝207aと半径方向寸法が小さいO−リング溝207bを有しており、O−リング溝207a、207bにはそれぞれO−リングが嵌合している。そしてバランスプレート207には貫通孔(
図3における吐出圧導入孔73と同様)が穿孔されており、回り止め用のピン穴(
図3におけるピン穴74と同様)が穿孔されている。
第5実施形態における固定プレート8も、第1実施形態における固定プレート8と共通した構造である。ただし、ロータ回転方向が異なる場合には、第5実施形態における固定プレート8は、第1実施形態における固定プレート8を裏返しにした構造となる。
【0050】
図11、
図12の第5実施形態においても、
図1〜、
図5の第1実施形態と同様に、バランスプレート207はロータ212、213に押し付けられる。そして、初期圧力はO−リングの弾性反撥力により得ている。
図11、
図12の第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、
図1〜
図5の第1実施形態と同様である。
【0051】
次に
図13を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。
図13において、ポンプ装置は全体を符号200Aで示されている。
図11、
図12の第5実施形態では、内接ギヤポンプの回転軸方向について、駆動源側(
図11では左側)に固定プレート8を設けている。
それに対して、
図13の第6実施形態では、固定プレートを設けていない。
図13の第6実施形態におけるその他の構成、作用効果は、
図11、
図12の第5実施形態の第5実施形態と同様である。
【0052】
次に
図14を参照して、第7実施形態について説明する。
図14において、ポンプ装置は全体を符号200Bで示されている。
図11〜
図13では、内接ギヤポンプの起動時等、吐出圧がバランスプレート207に作用しない場合に、バランスプレート207を駆動源側(
図11では左側)に押し付ける初期圧力は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、O−リングの弾性反撥力によって得ている。
それに対して
図14の第7実施形態では、内接ギヤポンプの起動時等、吐出圧がバランスプレート207Aに作用しない場合に、バランスプレート207Aを駆動源側(
図14では左側)に押し付ける初期圧力は、第3実施形態及び第4実施形態と同様に、スプリング209の弾性反撥力により得ている。
【0053】
ポンプ装置200Bにおけるバランスプレート207A(
図14)は、第3実施形態におけるバランスプレート7A(
図8、
図9)と構造は共通している。ただし、ロータの回転方向が異なるので、バランスプレート207Aは、
図8のバランスプレート7Aに対して、
図8のX−X軸と線対称な形状となっている。
そして、ポンプ装置200Bにおいても、ロータ212、213の摩耗量が大きくなっても、硬度が高い材料で構成され摩耗せず平坦な状態を保持するバランスプレート207Aがロータ212、213の側面に適宜押し付けられるため、ロータ212、213の側面における段差の形成が抑制される。そして、ロータ212、213が摩耗した分は、バランスプレート207Aがロータ212、213側に移動して摩耗によるクリアランス(隙間)を減少するので、容積効率が向上する。
図14の第7実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図11〜
図13の実施形態と同様である。
【0054】
次に
図15を参照して、本発明の第8実施形態について説明する。
図15において、ポンプ装置は全体を符号200Cで示されている。
図14の第7実施形態では、回転軸方向について、駆動源側(
図14では左側)に固定プレート8を設けている。
一方、
図15の第8実施形態では、固定プレートを設けていない。
図15の第8実施形態におけるその他の構成、作用効果は、
図14の第7実施形態と同様である。
【0055】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、バランスプレートは吸入側(
図1では右側)にのみ設けられており、吐出側(
図1では左側)には設けられていない。これに対して、バランスプレートを吐出側(
図1では左側)のみに設けることも可能である。その場合、ポートの形状を図示の実施形態とは変更する必要がある。