(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両前後方向にスライド可能なスライドテーブルと、前記スライドテーブル上で水平回転可能な回転テーブルと、前記回転テーブル上で車室内から車室外までシート本体をシート前後方向にスライド可能に支持するシートスライド機構と備え、前記シート本体を車両前向きの着座位置と車両横向きの乗降位置間で移動できるように構成された車両用シートであって、
前記スライドテーブル、あるいは車両フロア上の固定ベースに設けられた被係合部と、
前記シート本体、あるいはシートスライド機構に設けられ、前記シート本体が車両前向きの着座位置にあるときに前記被係合部に対して前記シート本体の前進方向において係合する係合部と、
前記係合部と被係合部との係合を解除する係合解除機構とを備えており、
前記係合解除機構は、前記スライドテーブルがシート原位置から所定位置まで後退することで前記係合部を係合解除位置まで移動させる車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した車両用シート100では、シート本体102が原位置にある状態では、フック部124の鉤部124kがシートフレーム103の開口部122に挿入された状態に保持されている。そして、車両前方衝突時にシート本体102が車両前方に移動すると、フック部124の鉤部124kがシートフレーム103の開口部122の周縁と係合する。即ち、車両前方衝突時にフック部124の鉤部124kがシートフレーム103の開口部122の周縁と係合するまでの間、シート本体102は車両前方に移動するようになる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両衝突時におけるシート本体の前方移動量を最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、車両前後方向にスライド可能なスライドテーブルと、前記スライドテーブル上で水平回転可能な回転テーブルと、前記回転テーブル上で車室内から車室外までシート本体をシート前後方向にスライド可能に支持するシートスライド機構と備え、前記シート本体を車両前向きの着座位置と車両横向きの乗降位置間で移動できるように構成された車両用シートであって、前記スライドテーブル、あるいは車両フロア上の固定ベースに設けられた被係合部と、前記シート本体、あるいはシートスライド機構に設けられ、前記シート本体が車両前向きの着座位置にあるときに前記被係合部に対して前記シート本体の前進方向において係合する係合部と、前記係合部と被係合部との係合を解除する係合解除機構とを備えており、前記係合解除機構は、前記スライドテーブルがシート原位置から所定位置まで後退することで前記係合部を係合解除位置まで移動させる。
【0009】
本発明によると、シート本体が車両前向きの着座位置にあるときに、シート本体等の係合部は、スライドテーブル、あるいは固定ベースに設けられた被係合部に対して前記シート本体の前進方向において係合している。即ち、車両の衝突前であってもシート本体の係合部がスライドテーブルの被係合部と係合している。このため、車両衝突時の荷重がシート本体に加わると、シート本体が前方にほとんど移動しなくてもその衝突荷重が係合部からスライドテーブル等の被係合部に伝達され、スライドテーブル等から車両フロアに伝達される。これにより、車両衝突時におけるシート本体の前方移動量が最小限に抑えられる。また、スライドテーブルがシート原位置から所定位置まで後退することで、係合解除機構の働きによりシート本体の係合部が係合解除位置まで移動する。このため、シート本体が着座位置から乗降位置まで移動する際に、前記係合部等がシート本体の移動を妨げることがない。
【0010】
請求項2の発明によると、被係合部は、スライドテーブルに設けられており、係合部は、前記シート本体に設けられている。
【0011】
請求項3の発明によると、係合部は、先端に鉤部を備えるフックで、そのフックの基端部がシート本体に対して上下回動可能な状態で連結されており、被係合部は、スライドテーブルに設けられた横軸状のストライカであり、前記フックが弾性力により前記シート本体に対して係合方向に回動することで、前記鉤部の掛かり面の先端が前記ストライカの外周面の後端位置から前記外周面に沿って前方に移動し、前記フックは、前記ストライカと前記シート本体の前進方向において係合する。このため、フックの鉤部の掛かり面とストライカの外周面間の隙間を最小限にできる。
【0012】
請求項4の発明によると、係合解除機構は、バネ力で被係合部との係合位置に保持された係合部をスライドテーブルの後退に連動して前記バネ力に抗して係合解除位置まで移動させる。
【0013】
請求項5の発明によると、
係合部は、先端に鉤部を備えるフックで、そのフックの基端部が前記シート本体に対して上下回動可能な状態で連結されており、係合解除機構は、スライドテーブルに上下回動可能な状態で設けられており、フックを係合解除方向に回動させる係合解除ブラケットと、前記係合解除ブラケットに設けられたカムフォロアと、前記車両フロア側に設けられており、前記係合解除ブラケットのカムフォロアが摺動可能なカム面を備えるカムプレートとを有しており、前記スライドテーブルが所定位置まで後退する際に、前記係合解除ブラケットのカムフォロアが前記カムプレートのカム面に沿って摺動することで、前記係合解除ブラケットが回動して前記フックを係合解除位置まで移動させる。
【0014】
請求項6の発明によると、回転テーブル上のシートスライド機構は、シート本体を昇降させる四節リンク機構を前記回転テーブルに対してシート前後方向にスライドさせる昇降スライド機構と、前記四節リンク機構の先端位置に設けられた昇降ベース上で、前記シート本体を前記昇降ベースに対してシート前後方向にスライドさせる外スライド機構とを備えている。このため、シート本体に設けられた係合部(フック)は、外スライド機構、昇降ベース、四節リンク機構、昇降スライド機構、及び回転テーブルを跨いでスライドテーブルの被係合部(ストライカ)と係合するようになる。このため、シート本体に加わる衝突荷重を速やかに車両フロアに伝達できるようになる。
【0015】
請求項7の発明によると、係合部は、シート本体においてシートベルトの基端部が連結されるベルト用ブラケットに上下回動可能な状態で連結されている。このため、車両衝突時にシートベルトに加わる荷重を確実に係合部(フック)に伝達できるようになる。
【0016】
請求項8の発明によると、
係合部は、先端に鉤部を備えるフックで、そのフックの基端部が前記シート本体に対して上下回動可能な状態で連結されており、フックの鉤部の先端側には傾斜面が形成されており、シート本体が車両前向きの着座位置まで後退する際、前記フックの鉤部の傾斜面が前記スライドテーブルのストライカの外周面に当接して摺動することで、前記フックが係合解除方向に回動し、前記フックの鉤部の傾斜面が前記ストライカを通過することで、前記フックが弾性力で係合方向に回動し、前記フックの鉤部が前記ストライカと係合する。即ち、シート本体が着座位置まで戻ることで、シート本体のフックが自動的にスライドテーブルのストライカと係合するようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、車両衝突時におけるシート本体の前方移動量を最小限にできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1〜
図16に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シートの説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート10は、
図1に示すように、車両の助手席に使用されるシートであり、シート本体60を車室内の着座位置から車室外の乗降位置まで移動できるように構成されている。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、車両用シート10を備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0020】
<車両用シート10の概要について>
車両用シート10は、
図2〜
図5に示すように、車両フロアF上の固定ベース12と、固定ベース12上のスライドテーブル20と、スライドテーブル20上の回転テーブル30とを備えている。また、車両用シート10は、回転テーブル30上に昇降スライド装置40を備えており、昇降スライド装置40の昇降ベース50上にシート本体60が外スライド機構55を介して設置されている。そして、シート本体60とスライドテーブル20間に、
図2等に示すように、スライドロック機構70が設けられている。また、スライドテーブル20と固定ベース12とには、スライドロック機構70のロック状態(係合状態)を解除する係合解除機構80が設けられている。なお、
図3〜
図5では、スライドロック機構70と係合解除機構80とは省略されている。
【0021】
<固定ベース12について>
固定ベース12は、
図2〜
図5に示すように、車両フロアF上に固定されるベースであり、スライドテーブル20を前後スライド可能に支持できるように構成されている。固定ベース12は、
図6に示すように、車両前後方向に延びる左右のレール支持架台13を備えており、左右のレール支持架台13上に同じく車両前後方向に延びるスライドレール14が設けられている。左右のスライドレール14上には、前後一対の摺動子14sがスライドレール14に沿って摺動自在な状態で嵌合している。そして、前後左右の摺動子14sが、
図2等に示すように、スライドテーブル20の下面に固定されている。
【0022】
固定ベース12の左右のレール支持架台13は、
図6に示すように、中央部と後部とが車幅方向に延びる横梁部15によって連結されている。また、右側のレール支持架台13の車幅方向内側には、スライド駆動機構16(
図2参照)の収納部17が設けられている。スライド駆動機構16は、台形ネジ16wとナット16nとの螺合作用を利用してスライドテーブル20を前後スライドさせる機構である。スライド駆動機構16は、
図2に示すように、ナット16nがスライドテーブル20の下面に固定されており、台形ネジ16wが固定ベース12の収納部17の軸受部17j(
図6参照)に回転自在な状態で支持されている。
【0023】
固定ベース12の収納部17の右側内壁面には、
図6に示すように、車両前後方向における所定位置に係合解除機構80(後記する)のカムプレート82が前記右側内壁面に沿って固定されている。ここで、
図2の模式図では、車両用シート10の全体構成を分かり易く表示するため、係合解除機構80のカムプレート82を固定ベース12の車幅方向外側に記載している。しかし、実際には、カムプレート82は、
図6に示すように、固定ベース12の収納部17の右側内壁面に固定されている。
【0024】
<スライドテーブル20について>
スライドテーブル20は、車両前後方向にスライド可能に構成されたテーブルである。スライドテーブル20上には、
図2〜
図5、及び
図7に示すように、回転テーブル30を車両前向き位置から車両横向き位置(左向き位置)まで約90°水平回転させる回転機構23が設けられている。回転機構23は、
図7に示すように、相対回転可能に構成された内輪23eと外輪23rとを備えており、外輪23rの外周面に歯車が形成されている。回転機構23の内輪23eは、スライドテーブル20に固定されており、外輪23rは回転テーブル30に固定されている。スライドテーブル20の上面には、回転機構23の駆動源となるモータ及び歯車機構(図示省略)が設けられており、前記歯車機構の歯車が外輪23rの歯車と噛合している。
【0025】
スライドテーブル20の右端位置には、
図7に示すように、スライドロック機構70(後記する)のストライカ72が設けられている。ストライカ72は、車幅方向(左右方向)に延びる横軸状のストライカ本体部72jと、ストライカ本体部72jの軸方向における一端側と他端側とを後端位置で支持する軸受架台72bとから構成されている。また、ストライカ72の軸受架台72bの車両前後方向における中央部には、係合解除機構80(後記する)の係合解除ブラケット85(
図8参照)の回転中心軸85jが通される貫通孔72hが形成されている。
【0026】
<回転テーブル30について>
回転テーブル30は、前記シート本体60を昇降スライドさせる昇降スライド装置40とを支持するテーブルであり、上記したように、車両前向き位置から車両横向き位置まで約90°水平回転できるように構成されている。
【0027】
<昇降スライド装置40について>
昇降スライド装置40は、
図3〜
図5に示すように、スライド部材41と、昇降スライド機構43と、左右一対の四節リンク機構45と、昇降ベース50とを備えている。スライド部材41は、シート前後方向にスライド可能な状態で回転テーブル30上に設置されており、昇降スライド機構43の動作を受けてシート前後方向にスライドできるように構成されている。昇降スライド機構43は、
図2に示すように、台形ネジ43wとナット43nとの螺合作用を利用した駆動機構であり、台形ネジ43wが回転テーブル30側に支持され、ナット43nがスライド部材41側に固定されている。
【0028】
スライド部材41には、
図3〜
図5に示すように、左右一対の四節リンク機構45の基端部が上下回動可能なように連結されている。また、左右一対の四節リンク機構45の先端部が昇降ベース50に上下回動可能な状態で連結されている。そして、昇降ベース50上に外スライド機構55を介してシート本体60が設置されている。上記構成により、
図5に示すように、スライド部材41が昇降スライド機構43の動作によりシート前方向にスライドすると、左右一対の四節リンク機構45がシート本体60等の重量で下方に回動し、昇降ベース50とシート本体60は前進しつつ下降する。また、
図5に示す状態からスライド部材41がシート後方向にスライドすると、左右一対の四節リンク機構45が後退しつつ上方に回動して、昇降ベース50とシート本体60は回転テーブル30上に戻される(
図3等参照)。
【0029】
<シート本体60について>
シート本体60は、
図3、
図4に示すように、昇降スライド装置40の昇降ベース50に対してシート前後方向にスライド可能な状態で、前記昇降ベース50上に設置されている。シート本体60は、
図2等に示すように、シートフレーム62とシートクッション64とシートバック66とを備えている。シート本体60のシートフレーム62は、
図9に示すように、左右のフレーム側壁部62wと、左右のフレーム側壁部62wをつなぐ連結梁部62hとを備えている。そして、シートフレーム62の下面側で右側のフレーム側壁部62wの近傍に外スライド機構55のラック55rがシート前後方向に延びるように取付けられている。
【0030】
外スライド機構55は、シート本体60を昇降スライド装置40の昇降ベース50に対してシート前後方向にスライドさせるための機構である。外スライド機構55は、
図2に示すように、上記したシートフレーム62側のラック55rと、前記昇降ベース50上に設置されたモータにより回転させられるピニオン55pとから構成されている。シートフレーム62には、
図9に示すように、右側のフレーム側壁部62wの後部外側にシートベルト用ブラケット63が取付けられている。シートベルト用ブラケット63は、
図10に示すように、シートベルト68のアンカープレート68pがボルト止めされるブラケットであり、そのシートベルト用ブラケット63にスライドロック機構70のフック75が上下回動可能な状態で連結されている。
【0031】
<スライドロック機構70について>
スライドロック機構70は、シート本体60が車両前向きの着座位置にある状態で車両が前方衝突したときに、シート本体60が車両フロアFに対して前方へ移動するのを規制する機構である。スライドロック機構70は、
図10に示すように、シート本体60のシートフレーム62に設けられたフック75と、スライドテーブル20上に設けられ、前記フック75が係合可能に構成されたストライカ72とを備えている。
【0032】
<フック75について>
フック75は、
図9〜
図11等に示すように、シートフレーム62に沿って後方に延びる縦板状のフック本体部75mと、フック本体部75mの先端(後端)で斜め前下方に突出するように形成された片鎌状の鉤部75kとを備えている。そして、フック本体部75mの下面と、その下面から連続する鉤部75kの前面にかけて、
図11に示すように、横軸状のストライカ本体部72jに上方から掛けられる掛かり面75fが形成されている。フック75は、フック本体部75mの基端部(前端部)が連結軸76によってシートフレーム62のシートベルト用ブラケット63に上下回動可能な状態で連結されている。
【0033】
フック75(フック本体部75m)の基端部の下側には、バネ受け部75bが形成されており、そのバネ受け部75bにコイルバネ77の一端が掛けられている。コイルバネ77は、フック75を係合方向に回動(
図11において右回動)させるように付勢されており、そのコイルバネ77の他端がシートベルト用ブラケット63のバネ受け部63bに掛けられている。
【0034】
フック75(フック本体部75m)の基端部(前端部)の近傍には、
図11に示すように、フック本体部75mの側面から水平に突出する突出ピン78が設けられている。突出ピン78は、係合解除機構80(後記する)の係合解除ブラケット85からの押上力を受けられるように構成されている。また、フック75の先端部(後端部)は、矢じり状に先細となるように形成されており、鉤部75kの先端面(後面)が先端側で高くなるように傾斜した傾斜面75cとなっている。
【0035】
<ストライカ72について>
スライドロック機構70のストライカ72は、
図7、及び
図10、
図11に示すように、スライドテーブル20上の右端所定位置に設置されている。ストライカ72は、横軸状のストライカ本体部72jと、そのストライカ本体部72jを支持する軸受架台72bとから構成されている。軸受架台72bは、
図7に示すように、車両前後方向に延びる平行な一対の山形縦壁部を備えており、一対の山形縦壁部の後部間に横軸状のストライカ本体部72jが渡されている。これにより、ストライカ本体部72jは、車幅方向(左右方向)に水平に延びるように所定位置に位置決めされた状態で、軸受架台72bに支持されている。スライドロック機構70のフック75は、
図10、
図11に示すように、シート本体60が車両前向きの着座位置まで戻された状態で、コイルバネ77のバネ力によりストライカ72(ストライカ本体部72j)と係合できるように構成されている。
【0036】
ここで、フック75とストライカ72(ストライカ本体部72j)との係合は、
図11に示すように、フック75がコイルバネ77のバネ力により上方所定位置から下回動(右回動)することにより行なわれる。これにより、フック75(鉤部75k)の掛かり面75fの先端は、ストライカ本体部72jの外周面の後端位置から前記外周面に沿って下前方に移動するようになる。そして、フック75(フック本体部75m)の下面がストライカ本体部72jの外周面に当接した状態でフック75がほぼ水平に保持され、フック75とストライカ72とがシート本体60の前進方向において係合する。これにより、フック75の鉤部75kの掛かり面75fとストライカ72(ストライカ本体部72j)の外周面間のシート本体60の前進方向における隙間を最小限にできる。また、シート本体60を車両前向きの着座位置から移動させる際は、スライドテーブル20が後進スライドし、係合解除機構80が動作することで、フック75とストライカ72との係合状態が解除される。
【0037】
<係合解除機構80について>
係合解除機構80は、スライドテーブル20が原位置から後退限位置まで後スライドする過程で、スライドロック機構70のフック75をバネ力に抗して上回動させ、フック75とストライカ72との係合状態を解除する機構である。係合解除機構80は、
図10等に示すように、スライドテーブル20に取付けられた係合解除ブラケット85と、固定ベース12の右側内壁面に固定されたカムプレート82とを備えている。
【0038】
<係合解除ブラケット85について>
係合解除ブラケット85は、
図8に示すように、略菱形に成形された枠状のブラケット本体部85mと、そのブラケット本体部85mの下端部でブラケット本体部85mに対してほぼ直角に設けられた回転中心軸85jとを備えている。係合解除ブラケット85の回転中心軸85jは、軸受86を介してスライドテーブル20に設けられたストライカ72(軸受架台72b)の貫通孔72hとL字支持金具87の貫通孔87hとに通されている。これにより、係合解除ブラケット85は、回転中心軸85jを中心に上下回動が可能になる。
【0039】
係合解除ブラケット85の回転中心軸85jの回りには、係合解除ブラケット85を倒伏位置、即ち、
図8、
図10等における右回動限位置に保持する保持バネ88が装着されている。保持バネ88は、
図8に示すように、一端が係合解除ブラケット85のピン状バネ受け部85bに掛けられており、他端がL字支持金具87のバネ受け部87bに掛けられている。
【0040】
係合解除ブラケット85には、
図8等に示すように、ピン状バネ受け部85bの反対側の位置に軸状のカムフォロア85fが同軸に形成されている。また、係合解除ブラケット85には、回動自由端位置にスライドロック機構70のフック75に設けられた突出ピン78を押し上げる押圧面85pが形成されている。ここで、係合解除ブラケット85は、
図8に示すように、ストライカ72(軸受架台72b)に対してシート本体60の幅方向において外側に配置されている。しかし、
図10、
図12〜
図16では、係合解除機構80の動作を分かり易くするため、係合解除ブラケット85、及びカムフォロア85fをストライカ72よりも手前側(内側)に表示している。
【0041】
<カムプレート82について>
係合解除機構80のカムプレート82は、スライドテーブル20が原位置と後退限位置間で前後スライドする際、係合解除ブラケット85のカムフォロア85fをガイドする部材である。カムプレート82は、
図6、及び
図10等に示すように、スライドテーブル20を前後スライド可能に支持する固定ベース12に取付けられている。カムプレート82は、略角形に形成されたプレートであり、スライドテーブル20のスライド方向に沿って立設されている。そして、カムプレート82には、
図10等に示すように、そのカムプレート82の前上角部にカム面82cが形成されている。カム面82cは、後側が高くなるように一定角度で傾斜した傾斜面状に形成されており、係合解除ブラケット85のカムフォロア85fが当接可能に構成されている。
【0042】
このため、スライドテーブル20が原位置から一定距離だけ後スライドすると、
図12に示すように、スライドテーブル20の係合解除ブラケット85のカムフォロア85fが固定ベース12のカムプレート82のカム面82cに当接する。そして、この状態からさらにスライドテーブル20が後スライドすると、係合解除ブラケット85のカムフォロア85fは、
図13に示すように、カムプレート82のカム面82cに沿って上方に移動する。これにより、係合解除ブラケット85が保持バネ88のバネ力に抗して起立方向に回動(
図13において左回動)する。この結果、係合解除ブラケット85の押圧面85pがスライドロック機構70のフック75の突出ピン78を押し上げ、フック75がコイルバネ77のバネ力に抗して上回動(
図13において左回動)する。これにより、スライドロック機構70のフック75とストライカ72との係合が解除される。
【0043】
<車両用シート10の動作について>
次に、車両用シート10の動作について説明する。車両用シート10のシート本体60が車両前向きの着座位置にある状態では、スライドテーブル20が原位置に保持されている。この状態では、
図10、
図11に示すように、シート本体60に設けられたスライドロック機構70のフック75は、スライドテーブル20上のストライカ72(ストライカ本体部72j)とシート本体60の前進方向において係合している。即ち、フック75(フック本体部75m)の下面がストライカ本体部72jの外周面に当接した状態で、フック75の鉤部75kの掛かり面75fとストライカ本体部72jの外周面間の隙間が最小限に保持されている。このため、例えば、車両前方衝突時の衝突荷重によりシート本体60が前方に移動しようとすると、衝突荷重はフック75からストライカ72に伝達され、ストライカ72からスライドテーブル20、固定ベース12を介して車両フロアFに伝達される。これにより、車両前方衝突時のシート本体60の前方移動量が最小限に抑えられる。
【0044】
シート本体60が着座位置から車室外の乗降位置まで移動する場合には、先ず、スライド駆動機構16が動作してスライドテーブル20が原位置から後スライドする。これにより、
図12に示すように、スライドテーブル20の係合解除ブラケット85のカムフォロア85fが固定ベース12に設けられたカムプレート82のカム面82cに当接する。そして、この状態からさらにスライドテーブル20が後スライドすると、係合解除ブラケット85のカムフォロア85fは、
図13に示すように、カムプレート82のカム面82cに沿って上方に移動する。これにより、係合解除ブラケット85が保持バネ88のバネ力に抗して起立方向に回動(
図13において左回動)し、係合解除ブラケット85の押圧面85pがフック75の突出ピン78を押し上げる。この結果、フック75がコイルバネ77のバネ力に抗して上回動(
図13において左回動)する。そして、スライドテーブル20が後退限位置まで後進スライドした段階で、フック75とストライカ72との係合が解除される。
【0045】
次に、スライドテーブル20が後退限位置にある状態で、昇降スライド装置40の昇降スライド機構43が動作してスライド部材41が回転テーブル30上を一定距離だけ前方にスライドする。これにより、
図14に示すように、シート本体60がスライドテーブル20に対して前進し、シート本体60側のフック75の突出ピン78が係合解除ブラケット85の押圧面85pに沿って前方に摺動する。これにより、フック75は姿勢を保持した状態でストライカ72(ストライカ本体部72j)上を前方に通過する。そして、フック75の突出ピン78が係合解除ブラケット85の押圧面85pから離れると、フック75はコイルバネ77のバネ力で水平な係合位置まで下回動する。次に、回転機構23が動作することで、回転テーブル30が水平回転し、シート本体60が徐々に左方向に向けられる。このときの、シート本体60側のフック75とスライドテーブル20側のストライカ72等の関係を表わした模式図が
図15である。
【0046】
次に、回転テーブル30の回転途中でスライドテーブル20が後退限位置から原位置まで前進スライドする。これにより、
図16に示すように、スライドテーブル20に設けられた係合解除ブラケット85のカムフォロア85fが固定ベース12のカムプレート82のカム面82cに沿って下方に移動し、係合解除ブラケット85が保持バネ88のバネ力で倒伏方向に回動(
図16で右回動)する。さらに、係合解除ブラケット85のカムフォロア85fが固定ベース12のカムプレート82のカム面82cから離れるようになる。次に、昇降スライド装置40の昇降スライド機構43がスライド部材41を回転テーブル30上の元の位置まで後方スライドさせた後、前記スライドテーブル20がスライド駆動機構16の動作により原位置から所定位置まで前進スライドする。
【0047】
そして、シート本体60が、
図3に示すように、車両横向き位置まで回動して回転機構23が停止し、前記スライドテーブル20が所定位置で停止すると、昇降スライド装置40の昇降スライド機構43が再び動作する。さらに、外スライド機構55が動作する。これにより、
図4、
図5に示すように、シート本体60が昇降スライド装置40の昇降ベース50に対して前進するとともに、昇降スライド装置40の左右一対の四節リンク機構45がスライド部材41と共に前進しつつ下方に回動する。この結果、シート本体60が乗降位置まで移動する。
【0048】
シート本体60が車室外の乗降位置から車室内の着座位置まで移動する場合には、昇降スライド機構43、外スライド機構55、回転機構23、及びスライド駆動機構16が上記とほぼ逆方向に動作する。ここで、着座位置の近傍では、シート本体60は、原位置のスライドテーブル20に対し、昇降スライド機構43の動作により後退する。これにより、シート本体60側に設けられたフック75の鉤部75kの傾斜面75cがスライドテーブル20側のストライカ本体部72jの外周面に当接して摺動する。これにより、フック75がコイルバネ77のバネ力に抗して上回動する。そして、シート本体60が着座位置まで後退した状態で、フック75(鉤部75k)の傾斜面75cがストライカ本体部72jを乗り越える。これにより、フック75の鉤部75kがコイルバネ77のバネ力でストライカ本体部72jに上方から掛けられ、フック75とストライカ本体部72jとはシート本体60の前進方向において係合する。
【0049】
<本実施形態に係る車両用シート10の長所について>
本実施形態に係る車両用シート10によると、シート本体60が車両前向きの着座位置にあるときに、シート本体60のフック75(係合部)は、スライドテーブル20に設けられたストライカ72(被係合部)に対してシート本体60の前進方向において係合している。即ち、車両の衝突前であってもシート本体60のフック75がスライドテーブル20のストライカ72と係合している。このため、車両衝突時の衝突荷重がシート本体60に加わると、シート本体60が前方にほとんど移動しなくてもその衝突荷重がフック75からストライカ72に伝達され、ストライカ72からスライドテーブル20、固定ベース12を介して車両フロアFに伝達される。これにより、車両衝突時におけるシート本体60の前方移動量が最小限に抑えられる。また、スライドテーブル20が後退限位置まで後退することで、シート本体60のフック75が係合解除機構80の働きで係合解除位置まで移動する。このため、シート本体60が着座位置から乗降位置まで移動する際に、フック75がシート本体60の移動を妨げることがない。
【0050】
また、フック75がコイルバネ77のバネ力(弾性力)によりシート本体60に対して下回動することで、鉤部75kの掛かり面75fの先端がストライカ本体部72jの外周面の後端位置から前記外周面に沿って下前方に移動し、フック75はストライカ本体部72jとシート本体60の前進方向において係合する。このため、フック75の鉤部75kの掛かり面75fとストライカ本体部72jの外周面間の隙間を最小限にできる。
【0051】
また、シート本体60に設けられたフック75は、外スライド機構55、昇降ベース50、四節リンク機構45、昇降スライド機構43、及び回転テーブル30を跨いでスライドテーブル20のストライカ72と係合する。このため、シート本体60に加わる衝突荷重を速やかに車両フロアFに伝達できるようになる。また、フック75は、シート本体60においてシートベルト68の基端部が連結されるシートベルト用ブラケット63に連結されている。このため、車両衝突時にシートベルト68に加わる荷重を確実にフック75に伝達できるようになる。また、シート本体60が着座位置まで戻ることで、シート本体60のフック75が自動的にスライドテーブル20のストライカ72と係合できるようになる。
【0052】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、スライドロック機構70のフック75とストライカ72との係合を解除する係合解除機構80を係合解除ブラケット85とカムプレート82とから構成する例を示した。しかし、フック75側にカムフォロアを設け、前記カムフォロアとカムプレート82とにより、スライドテーブル20の後スライド時にフック75を係合解除方向に回動させる構成でも可能である。また、本実施形態では、フック75をストライカ72に対して上方から回動させて、フック75とストライカ72とをシート本体60の前進方向において係合させる例を示した。しかし、フック75をストライカ72に対して下方から回動させて係合させる構成でも可能である。また、本実施形態では、回転テーブル30上に昇降スライド装置40を備える車両用シート10を例示したが、昇降スライド装置40を有しない車両用シートに本発明を適用することも可能である。