(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347497
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】広範な入力電流レンジを伴うトランスインピーダンス増幅器のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H03F 3/08 20060101AFI20180618BHJP
H03F 3/34 20060101ALN20180618BHJP
H03G 3/30 20060101ALN20180618BHJP
【FI】
H03F3/08
!H03F3/34 A
!H03G3/30 D
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-509087(P2016-509087)
(86)(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公表番号】特表2016-515791(P2016-515791A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】US2014034433
(87)【国際公開番号】WO2014172505
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】13/863,429
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ピーペンストック
(72)【発明者】
【氏名】ゲルド シュペナー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ゲルハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ シャフト
【審査官】
齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−527205(JP,A)
【文献】
特開2011−091688(JP,A)
【文献】
特表2010−508732(JP,A)
【文献】
特開2006−261866(JP,A)
【文献】
米国特許第8319553(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0050333(US,A1)
【文献】
米国特許第5343160(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/08
H03F 3/34
H03G 3/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電流を出力電圧に変換するための前置増幅器回路であって、
前記入力電流を表す入力信号を受信し、第1の電圧出力信号を提供する、第1のトランスインピーダンス増幅器と、
前記第1のトランスインピーダンス増幅器に整合され、第2の電圧出力信号を提供する、第2のトランスインピーダンス増幅器と、
基準電流に少なくとも部分的に従って、前記それぞれの第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器に第1及び第2のバイアス電流を提供する、バイアス回路と、
オフセット信号に少なくとも部分的に従って、前記バイアス回路に提供される前記基準電流を制御する、基準回路と、
前記第1及び第2の電圧出力信号から導出される差動電圧出力信号に従って、前記基準回路に前記オフセット信号を提供する、オフセット回路と、
を含む、前置増幅器回路。
【請求項2】
請求項1に記載の前置増幅器回路であって、
前記オフセット信号に従って、前記入力信号のDC成分の少なくとも一部を選択的に除去するためDC相殺回路を更に含む、前置増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載の前置増幅器回路であって、
前記第1及び第2の電圧出力信号から導出される前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って、前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器のゲインを制御する、自動ゲイン制御回路を更に含む、前置増幅器回路。
【請求項4】
請求項3に記載の前置増幅器回路であって、
前記第1のトランスインピーダンス増幅器が、
前記入力信号を受信するためのベース端子と、第1のレジスタを介して前記バイアス回路に結合されるコレクタ端子と、回路接地ノードに結合されるエミッタ端子とを含む、第1の入力トランジスタであって、前記第1の入力トランジスタの前記コレクタ端子が前記第1の電圧出力信号を提供する、前記第1の入力トランジスタと、
前記第1の入力トランジスタの前記コレクタ端子に接続されるベース端子と、電圧供給ノードに接続されるコレクタ端子とを備える、第1の出力トランジスタと、
前記第1の出力トランジスタのエミッタ端子と前記第1の入力トランジスタの前記ベース端子との間に接続される、第1のフィードバックレジスタと、
前記第1のフィードバックレジスタに並列に接続される第1のゲイン制御電界効果トランジスタと、
を含み、
前記第2のトランスインピーダンス増幅器が、
第2のレジスタを介して前記バイアス回路に結合されるコレクタ端子と、前記回路接地ノードに結合されるエミッタ端子とを含む、第2の入力トランジスタと、
前記第2の入力トランジスタの前記コレクタ端子に接続されるベース端子と、前記電圧供給ノードに接続されるコレクタ端子とを備える、第2の出力トランジスタと、
前記第2の出力トランジスタのエミッタ端子と前記第2の入力トランジスタのベース端子との間に接続される、第2のフィードバックレジスタと、
前記第2のフィードバックレジスタに並列に接続される第2のゲイン制御電界効果トランジスタと、
を含み、
前記自動ゲイン制御回路が、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って、前記第1及び第2のゲイン制御電界効果トランジスタにゲート制御信号を提供する、前置増幅器回路。
【請求項5】
請求項4に記載の前置増幅器回路であって、
前記オフセット信号に従って、前記入力信号のDC成分の少なくとも一部を選択的に除去するためDC相殺回路を更に含む、前置増幅器。
【請求項6】
請求項5に記載の前置増幅器回路であって、
前記基準回路が、前記第1及び第2のバイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記オフセット信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って前記基準電流を制御する、前置増幅器回路。
【請求項7】
請求項3に記載の前置増幅器回路であって、
前記オフセット信号に従って、前記入力信号のDC成分の少なくとも一部を選択的に除去するためDC相殺回路を更に含む、前置増幅器。
【請求項8】
請求項3に記載の前置増幅器回路であって、
前記基準回路が、前記第1及び第2のバイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記オフセット信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って前記基準電流を制御する、前置増幅器回路。
【請求項9】
請求項1に記載の前置増幅器回路であって、
前記第1のトランスインピーダンス増幅器が、
前記入力信号を受信するためのベース端子と、第1のレジスタを介して前記バイアス回路に結合されるコレクタ端子と、回路接地ノードに結合されるエミッタ端子とを含む、第1の入力トランジスタであって、前記第1の入力トランジスタの前記コレクタ端子が前記第1の電圧出力信号を提供する、前記第1の入力トランジスタと、
前記第1の入力トランジスタの前記コレクタ端子に接続されるベース端子と、電圧供給ノードに接続されるコレクタ端子とを備える、第1の出力トランジスタと、
前記第1の出力トランジスタのエミッタ端子と前記第1の入力トランジスタの前記ベース端子との間に接続される、第1のフィードバックレジスタと、
を含み、
前記第2のトランスインピーダンス増幅器が、
第2のレジスタを介して前記バイアス回路に結合されるコレクタ端子と、前記回路接地ノードに結合されるエミッタ端子とを含む、第2の入力トランジスタと、
前記第2の入力トランジスタの前記コレクタ端子に接続されるベース端子と、前記電圧供給ノードに接続されるコレクタ端子とを備える、第2の出力トランジスタと、
前記第2の出力トランジスタのエミッタ端子と前記第2の入力トランジスタのベース端子との間に接続される、第2のフィードバックレジスタと、
を含む、前置増幅器回路。
【請求項10】
請求項1に記載の前置増幅器回路であって、
前記基準回路が、前記第1及び第2のバイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器のゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記オフセット信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って前記基準電流を制御する、前置増幅器回路。
【請求項11】
集積回路装置であって、
互いに結合されるゲート端子と、電圧供給ノードに結合されるソース端子と、前記ゲート端子の制御電圧に従って第1及び第2のバイアス電流をそれぞれ提供するドレイン端子とを備える第1及び第2のPチャネルFETを含むバイアス回路と、
第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器であって、前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器が、
対応するレジスタを介して前記バイアス回路から前記第1及び第2のバイアス電流を受信するように結合されるコレクタ端子と、回路接地ノードに結合されるエミッタ端子とを含むNPN入力トランジスタであって、前記入力トランジスタの前記コレクタ端子が差動電圧出力信号を提供する、前記NPN入力トランジスタと、
前記入力トランジスタの前記コレクタ端子に接続されるベース端子と、前記電圧供給ノードに接続されるコレクタ端子とを備える、NPN出力トランジスタと、
前記出力トランジスタのエミッタ端子と前記入力トランジスタのベース端子との間に接続されるフィードバックレジスタと、
を個別に含む、前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器と、
少なくとも部分的に、前記差動電圧出力信号に従い、前記集積回路において生成される基準電流に従って、前記第1及び第2のバイアス電流を制御するように前記バイアス回路に提供される前記制御電圧を改変するため基準電流出力を提供する基準回路と、
を含み、
前記第1のトランスインピーダンス増幅器の前記入力トランジスタの前記ベース端子が、入力信号を受信するように接続され、前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器が、前記入力信号の振幅を表す前記差動電圧出力信号を提供する、集積回路装置。
【請求項12】
請求項11に記載の集積回路装置であって、
前記第1のトランスインピーダンス増幅器の前記入力トランジスタの前記ベース端子と前記回路接地ノードとの間に結合され、前記入力信号のDC成分の少なくとも一部を選択的に除去するために前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って制御されるゲート端子を有する、NチャネルFETを更に含む、集積回路装置。
【請求項13】
請求項12に記載の集積回路装置であって、
前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って、前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器のゲインを制御する、自動ゲイン制御回路を更に含む、集積回路装置。
【請求項14】
請求項13に記載の集積回路装置であって、
前記個別のトランスインピーダンス増幅器が、前記対応するフィードバックレジスタに並列に接続されるゲイン制御電界効果トランジスタを含み、
前記自動ゲイン制御回路が、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って、前記ゲイン制御電界効果トランジスタにゲート制御信号を提供する、集積回路装置。
【請求項15】
請求項14に記載の集積回路装置であって、
前記基準回路が、前記第1及び第2のバイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記差動電圧出力信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って前記基準電流出力を制御する、集積回路装置。
【請求項16】
請求項11に記載の集積回路装置であって、
前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器のゲインを制御する、自動ゲイン制御回路を更に含み、
前記個別のトランスインピーダンス増幅器が、前記対応するフィードバックレジスタに並列に接続されるゲイン制御電界効果トランジスタを含み、
前記自動ゲイン制御回路が、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って、前記ゲイン制御電界効果トランジスタにゲート制御信号を提供する、集積回路装置。
【請求項17】
請求項16に記載の集積回路装置であって、
前記基準回路が、前記第1及び第2のバイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記差動電圧出力信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って前記基準電流出力を制御する、集積回路装置。
【請求項18】
請求項11に記載の集積回路装置であって、
前記基準回路が、前記第1及び第2のバイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるために前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器の前記ゲインを減少させるため、及びその逆のために、前記差動電圧出力信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って前記基準電流出力を制御する、集積回路装置。
【請求項19】
請求項11に記載の集積回路装置であって、
前記第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器が整合される、集積回路装置。
【請求項20】
シングルエンド入力電流信号を差動出力電圧信号に変換するための前置増幅器であって、
前記シングルエンド入力電流信号を受信するベース端子を備える第1の入力トランジスタと、第1の出力トランジスタとを含む、信号トランスインピーダンス増幅器と、
前記信号トランスインピーダンス増幅器に整合され、入力信号を受信しない第2の入力トランジスタと第2の出力トランジスタとを含む、ダミートランスインピーダンス増幅器と、
を含み、
前記信号トランスインピーダンス増幅器と前記ダミートランスインピーダンス増幅器とが、少なくとも部分的に、前記シングルエンド入力電流信号に従い、また、前置増幅器内に実装される基準電流源から導出されるバイアス電流源と自動ゲイン制御回路出力信号とに従って、前記差動出力電圧信号を提供する、前置増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、前置増幅器又は前置増幅器回路要素に関係し、より具体的に言えば、入力電流信号を出力電圧信号に変換するための前置増幅器に関係する。
【背景技術】
【0002】
前置増幅器は様々な応用例において、例えば、フォトダイオードからの信号電流入力を、光ファイバ受信器システムなどにおける後続の処理のための電圧信号に変換するために用いられる。これらのような前置増幅器回路は、1つ又は複数のトランスインピーダンス増幅器又はTIAを提供し、2つのTIAを用いて、シングルエンド入力電流信号を差動出力電圧信号に変換することができる。所与の応用例及び関連付けられる入力電流感度レベルについて、トランスインピーダンス増幅器は、帯域幅、ゲイン、ゲインピーキング(gain-peaking)、群遅延(group delay)、及び入力換算ノイズ(input referred noise)を含む、様々な性能パラメータに関連して設計される。しかしながら、より広いレンジの入力電流を必要とする応用例が、1つ又は複数の性能パラメータの大幅な劣化につながる可能性のある飽和効果、並びに、信号経路出力における高パルス幅歪み(PWD)及び決定論的ジッタ(DJ)などを被る恐れがある。従って、入力電流信号振幅の広範なレンジにわたって許容し得る性能パラメータで動作し得る、改善された前置増幅器及び集積回路が依然として求められている。
【発明の概要】
【0003】
本願は、広範な入力電流レンジにわたる設計パラメータの達成を促進するために、入力電流信号の振幅又は大きさに基づくトランスインピーダンス増幅器動作状態の調節を提供する、前置増幅器トポロジに関係する。従来の設計とは異なり、本開示の様々な概念は、帯域幅、ゲイン、ゲインピーキング、群遅延、及び入力換算ノイズの大幅な劣化なしに、並びに高パルス幅歪み又は決定論的ジッタなしに、入力信号が大きく変化し得る状況において、1つ又は複数のトランスインピーダンス増幅器を用いる所与の前置増幅器設計の応用例を可能にするためにうまく用いられ得る。
【0004】
前置増幅器回路が提供され、前置増幅器回路は、入力信号を受信し、第1の電圧出力信号を提供する第1のトランスインピーダンス増幅器と、第2の電圧出力信号を提供する、第1のトランスインピーダンス増幅器に整合される第2のトランスインピーダンス増幅器とを含む。バイアス回路が、基準電流に少なくとも部分的に基づいて、それぞれのトランスインピーダンス増幅器に第1及び第2のバイアス電流を提供する。前置増幅器回路は更に、オフセット信号に少なくとも部分的に基づいてバイアス回路に提供される基準電流を制御する基準回路を含み、オフセット回路が、第1及び第2の電圧出力信号から導出される差動電圧出力信号に従って、オフセット信号を提供する。トランスインピーダンス増幅器バイアス電流を制御するためにオフセット信号を用いることは、許容し得る性能パラメータを維持しながら、広範な入力電流レンジにわたる動作を有利に促進するためにうまく用いられ得、そのため、従来の前置増幅器設計に勝る大幅な進歩を示す。
【0005】
ある実施形態が更に、オフセット信号に基づいて入力信号のDC成分のすべて又は一部を選択的に除去するように動作可能なDC相殺回路を含む。差動出力電圧信号に少なくとも部分的に従ってトランスインピーダンス増幅器ゲインを制御するために、ある実施形態において自動ゲイン制御(AGC)回路が含まれ得る。トランスインピーダンス増幅器は、フィードバックレジスタと、フィードバックレジスタに並列に接続されるゲイン制御トランジスタとを含み得、AGC回路が、差動電圧出力信号振幅を増加させるためにトランスインピーダンス増幅器ゲインを減少させるため、及びその逆のために、ゲイン制御トランジスタにゲート制御信号を提供する。また、ある実施形態において、基準回路は、トランスインピーダンス増幅器バイアス電流を減少させるため、及びそれによって、差動電圧出力信号振幅を増加させるためにトランスインピーダンス増幅器ゲインを減少させるため、及びその逆のために、オフセット信号振幅の逆数に少なくとも部分的に従って基準電流を制御する。
【0006】
本開示の更なる態様に従って集積回路装置が提供され、集積回路装置は、互いに結合されるゲート端子と、電圧供給ノードに結合されるソース端子と、ゲート端子の制御電圧に従って第1及び第2のバイアス電流をそれぞれ提供するドレイン端子とを有する、第1及び第2のMOSFETを備えるバイアス回路を含む。この集積回路装置は更に、第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器を含み、第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器は、対応するレジスタを介して対応するバイアス電流を受信する入力トランジスタ、並びにエミッタフォロワトランジスタ、及びエミッタフォロワトランジスタエミッタと入力トランジスタベース端子との間に接続されるフィードバックレジスタを個別に含む。第1のトランスインピーダンス増幅器の入力トランジスタのベースは、入力信号を受信するために接続され、トランスインピーダンス増幅器は、入力信号の振幅を表す差動電圧出力を提供する。ある実施形態において、第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器は、互いに整合される。この集積回路装置は更に、差動電圧出力に少なくとも部分的に基づき及び集積回路において生成される基準電流に従って、第1及び第2のバイアス電流を制御するために、バイアス回路制御電圧を改変するために基準電流出力を提供する基準回路を含む。本アーキテクチャは、有利なことに差動電圧出力を用いてトランスインピーダンス増幅器バイアスを適宜変更し、それによって、高入力信号レベルに対する電力消費の削減を促進するために、PWD及びDJ値を低く保ちながら、入力信号レベルにおける変更のための動作を前述の設計パラメータに合うように自己調節する。
【0007】
ある実施形態において、MOSFETが、第1の増幅器入力トランジスタベース端子と回路接地との間に結合され、入力信号のDC成分の少なくとも一部を選択的に除去するために、差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って制御される。集積回路装置のある実施形態が、差動電圧出力信号に少なくとも部分的に従って第1及び第2のトランスインピーダンス増幅器のゲインを制御するAGC回路を含む。また、ある実施形態において、基準回路は、トランスインピーダンス増幅器バイアス電流を減少させ、従って差動電圧出力信号振幅を増加させるためにトランスインピーダンス増幅器ゲインを減少させるため、及びその逆のために、差動電圧出力信号の振幅の逆数に少なくとも部分的に従って基準電流出力を制御する。
【0008】
本開示の更なる態様に従い、シングルエンド入力電流信号を差動出力電圧信号に変換するために前置増幅器が提供される。前置増幅器は、シングルエンド入力電流信号を受信する信号トランスインピーダンス増幅器、並びに、信号トランスインピーダンス増幅器に整合され、入力信号を受信しない、ダミートランスインピーダンス増幅器を含む。信号及びダミートランスインピーダンス増幅器は、少なくとも部分的に入力電流信号に従って、及び、前置増幅器内に実装される基準電流源から導出されるバイアス電流源に従って、及び、自動ゲイン制御回路信号に従って、差動出力電圧信号を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のある態様に従い、増幅された差動電圧出力信号に従って出力を提供する自動ゲイン制御回路及びオフセット相殺回路、並びに、差動電圧出力に少なくとも部分的に従ってTIAバイアス電流を制御する基準回路を備える、2つのトランスインピーダンス増幅器うちの一方がシングルエンド入力電流信号を受信する、2つのトランスインピーダンス増幅器を備える例示の前置増幅器を図示する概略図である。
【0010】
【
図2】オフセット相殺入力信号に従って、制御された基準電流を介してバイアス回路制御電圧を制御する基準回路を備え、及び、差動電圧出力に従って導出されるAGC入力信号に従ってトランスインピーダンス増幅器ゲインを制御するゲイン制御電界効果トランジスタを備える、例示の前置増幅器回路実装の更なる細部を図示する概略図である。
【0011】
【
図3】
図1及び
図2の前置増幅器における、例示の自動ゲイン制御及びオフセット相殺回路を図示する概略図である。
【0012】
【
図4】
図1及び
図2の前置増幅器における基準回路の更なる細部を図示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願は、性能パラメータを許容し得る限度内に維持しつつ、入力信号振幅の広範なレンジにわたる動作を提供するために実装され得る、出力電圧フィードバックに基づく自動ゲイン制御及びオフセット調節を有利に用いつつ入力電流信号を出力電圧信号に変換するための、前置増幅器トポロジ及び装置を提供する。本願は、従来の前置増幅器回路設計に勝る大幅な改善を提供し、その例は、全体が参照により本明細書に組み込まれ、本開示の譲受人に譲渡された、米国特許番号第7,233,209号に例示及び説明されている。
【特許文献1】米国特許番号第7,233,209号
【0014】
図1は、可能な一応用例における前置増幅器回路装置10を示し、本応用例において、前置増幅器入力端子12とバイアス源BIASとの間に接続されるフォトダイオード2から入力電流信号IANが受信される。この図は、フォトダイオード2のキャパシタンスを、入力端子12におけるフォトダイオード2のアノードと接地との間に接続されるキャパシタC1として表す。非限定的な一例において、前置増幅器回路10は、フォトダイオード2を介して光信号を受信する光ファイバ通信システム受信器の一部であり、前置増幅器10は、ホストシステム(図示せず)による更なる処理のためにフォトダイオード2から受信される電流信号を表す差動電圧出力を提供する。
【0015】
図1に見られるように、前置増幅器10は、端子12を介して入力信号を受信する第1又は信号のトランスインピーダンス増幅器すなわちTIA10aと、入力信号を受信しない第2又は「ダミー」のトランスインピーダンス増幅器10bとを含む、増幅器16として表されるデュアルトランスインピーダンス増幅器アーキテクチャを備えるシングルエンド入力12を有する。トランスインピーダンス増幅器10a及び10bは、フォトダイオード2からの受信した入力電流信号の振幅を表す、ノード14a及び14bにおける差動出力電圧信号を提供する。更に、この例において、電圧増幅器4がノード14a及び14bから差動出力電圧信号を受信し、増幅された差動電圧をノード4a及び4bで50Ω出力バッファ6への入力として提供する。バッファ6の出力は、ノード8a及び8bにおける全体的な前置増幅器差動出力として提供され、これは光ファイバ受信器(図示せず)などのホストシステムによって用いられ得る。ある実施形態において、前置増幅器10は単一集積回路(IC)として構成され、単一ICは、電圧増幅器4及び/又は出力バッファ6を含み得るが、必ずしも含む必要はない。他の実装において、前置増幅器10は、別々に実装される電圧増幅器4及びバッファ6を備えるスタンドアロン集積回路として実装される。また、前置増幅器10は、例えばトランシーバICなど、システムオンシリコン内に機能ブロックとして実装され得る。
【0016】
電圧増幅器4の出力は、自動ゲイン制御(AGC)及びオフセット相殺(OC)回路30への差動電圧入力としても提供される。回路30は、第1及び第2のTIA10a及び10bの自動ゲイン制御のためにノード34でAGC出力を提供する。
図1に示されるように、AGC信号34は、信号34がそれぞれTIA10a及び10bのゲインを改変するように、TIAフィードバックレジスタRF1及びRF2に並列に結合される、Nチャネルゲイン制御MOSFET MRF1及びMRF2へのゲート駆動信号として用いられる。
【0017】
加えて、回路30は、ノード36においてオフセット相殺又はOC出力を提供し、これは、電流信号入力端子12と回路接地ノードVSSとの間に結合されるNチャネルMOSFETトランジスタMS1を含むDC相殺回路によって、入力として用いられる。動作において、相殺回路トランジスタMS1は、OC出力36に少なくとも部分的に従ったオフセット信号36に従い、そのため電圧増幅器4からの差動電圧出力信号14a、14bに従い、端子12における入力信号のDC成分のうちの少なくとも一部を選択的に除去する。このように、入力電流信号のDCコンテンツ(content)は、AGC/OC回路30からのフィードバックを介して減少又は相殺される。
【0018】
加えて、
図1に見られるように、オフセット信号36(OC)は、電流信号28(Ioc)として、電圧電流(VtoI)回路29を介して基準回路20にも提供される。基準回路20は、受信した電流信号28、並びにBIAS電流入力24(Iin)、及び入力22で受信した基準電流Irefに基づいて、トランスインピーダンス増幅器10a及び10bのバイアスを制御するために用いられる基準電流I4(Iout)を制御する。加えて、入力22に提供される基準電流Irefは、任意のプロセス、電圧、及び/又は温度(PVT)変化を追跡するように、前置増幅器10の集積回路(図示せず)において生成される。また、
図1に見られるように、基準電流I4は、電圧増幅器4をバイアスするためにも用いられ得るが、これは本開示の厳密な要件ではない。
【0019】
図2は、前置増幅器回路10の可能な非限定的一実施形態を示し、この実施形態は、第1及び第2のTIA10a及び10b、並びに、第1及び第2のバイアス電流I1及びI2をそれぞれのTIA10a及び10bに提供するバイアス回路10cを含む。この実装において、第1の(信号)TIA10aは第1の入力トランジスタQ1を含み、第1の入力トランジスタQ1は、入力信号12を受信するベース端子、並びに、第1のレジスタRL1を介してバイアス回路10cに結合されるコレクタ、及びVSSに結合されるエミッタ端子を備え、Q1のコレクタはノード14aで第1の出力電圧信号を提供する。加えて、第1のTIA10aは、Q1のコレクタに接続されるベース端子と、供給電圧ノードVDDに接続されるコレクタとを備えるエミッタフォロワトランジスタQ3、並びに、Q3のエミッタとQ1のベースとの間に接続されるフィードバックレジスタRF1を含む。加えて、第1の電流源IDC1が、Q3のエミッタとVSSとの間に接続される。動作において、Q1の共通エミッタ構成及び共通コレクタ出力トランジスタQ3は、Q1のベースにおける受信された入力電流信号に基づいてノード14aで出力を提供し、フィードバックレジスタRF1はトランスインピーダンスゲインを設定する。加えて、
図1において上記のように、ゲイン制御MOSFET MRF1が、Q3のエミッタとQ1のベースとの間のインピーダンスを選択的に改変するようにAGC制御信号34に従って動作し、それによって、RF1の並列フィードバックインピーダンス及びMRF1のソースドレインレジスタンスを介して、第1のトランスインピーダンス増幅器10aのゲインを選択的に改変する。
【0020】
この構成において、入力電流なしに、Q3のエミッタにおける電流はQ1のベースエミッタ電圧に等しく、Q1のコレクタはQ3のエミッタの電圧のほぼ2倍であり、これによって、フィードバックレジスタRF1を通した電圧はほぼゼロである。この状態において、Q1を介するコレクタエミッタ電流I1は、バイアス回路FET M1及びM2のドレインにおける電圧マイナス2VbeをRL1の抵抗で割ったものであり、Q3のコレクタ電流はDC電流源IDC1によって設定される。このようにして、回路は、バイアス回路10c(PVT)の動作によって改変される、プロセス(Vbe、RL1)、温度(Vbeへの温度効果)、及び供給電圧VDDに応じて自己バイアスする。しかしながら、入力22及び24を提供するオンチップ基準電流に従って基準回路20を用いる差動出力電圧14a及び14bに従った、バイアス回路10cの動作及びその制御は、こうしたPVT効果の存在下で許容し得るレンジの動作パラメータを維持するようにバイアス電流I1を調整することができる。従って、動作において、信号TIA10aは、ノード12で受信された入力電流信号の振幅を表すノード14aにおける電圧出力を提供する。
【0021】
更に
図2に示されるように、第2又はダミーのTIA10bは、入力トランジスタQ2、及びエミッタフォロワトランジスタQ4を含む。入力トランジスタQ2は、第2のレジスタRL2を介してバイアス回路10cからバイアス電流I2を受信するように結合されるコレクタを備え、VSSに結合されるエミッタを備える。エミッタフォロワトランジスタQ4は、VDDに結合されるコレクタと、Q2のコレクタで第2の出力ノード14bに結合されるベースと、第2のDC電流源IDC2を介してVSSに結合されるエミッタとを含む。また、Q4のエミッタとQ2のベースとの間に結合される第2のフィードバックレジスタRF2、及び関連付けられるゲイン制御MOSFET MRF2を備える。従って、接続された場合、第2のTIA10bは入力信号を受信しないが、デュアルTIA構成10a、10bは、シングルエンド入力電流信号を受信し、それに応じてノード14a及び14bで差動電圧出力を提供する。また、信号TIA10aは反転し、それによって出力端子14aは負(−)の出力であり、第2の出力端子14bは正(+)の出力である。第2の出力端子14bはまた、キャパシタC2を介してQ2のベースに容量性結合される。
【0022】
バイアス回路10cは、一対のPチャネルMOSFETデバイスM1及びM2を含み、それらのゲート端子は互いに接続され、それらのドレイン端子はゲート電圧VREGに従った動作のために共に接続される。M1及びM2のゲートはキャパシタC3を介して供給電圧VDDに接続され、それによってバイアス回路制御電圧VREGが、キャパシタC3を通した電圧に従って設定される。M1及びM2は並列に接続されるように図示されているが、代わりに、単一のFETが用いられ、ゲートが電圧VREGに従って制御される、他の実施形態も可能である。動作において、トランジスタQ1のコレクタ電流I1及びQ2のコレクタ電流I2は、トランジスタQ1及びQ2の相対的なサイズに従って互いにスケーリングされる。図示された例では、コレクタ電流I1及びI2のこのスケーリングは、これ以降に更に説明するように比N:Mに対応する。
【0023】
バイアス回路制御電圧VREGは基準回路20の動作によって改変され、基準回路20は、バイアスFETゲート端子から基準回路20を介して基準回路20の電流出力端子Iout 26へ、更にVSS又は接地へ流れる基準電流I4を制御する。動作において、基準回路20は、
図4に関してこれ以降に更に説明するように、電流入力信号28並びに基準電流入力22及び24に従って、基準電流I4の振幅を制御する。また、
図2に見られるように、前置増幅器10は、PチャネルMOSFET M3及びM4によって形成される電流ミラーも含み、M4のドレインが、M3及びレジスタR3を介してトランジスタQ5のコレクタへ流れる電流I3に従って電流I4を提供し、図示されるように、トランジスタQ5のベース端子はQ2のベースに接続され、トランジスタQ5のエミッタはVSSに接続される。
【0024】
また、ある非限定的な実装において、第1及び第2のTIA10a及び10bの構成要素は、スケーリング係数に従って互いに整合される。一例において、第1及び第2のTIA10a及び10bの整合のためのスケーリング係数は、電力消費を減少させるために、N:M(ここで、N>M)に設定される。しかしながら、他の実装において1:1の整合が用いられ得るか、又は他の実施形態においてMがNより大きくてもよい。AGC信号34は、デュアルTIA前置増幅器を制御するために、フィードバックレジスタRF1及びRF2を通して接続されるゲイン制御MOSFET MRF1及びMRF2を制御し、OC信号36は、入力12で受信された入力信号IANのDCコンテンツを完全に又は少なくとも部分的に相殺するために、オフセット相殺回路MS1を制御する。オフセット回路30によって提供されるOC信号36(
図3に関連してこれ以降で更に説明する)は、対応する基準電流入力信号28(Ioc)を基準回路20に提供するために、電圧電流変換器回路20によって変換される。
【0025】
図2の実施形態において、トランジスタQ5は、I2のレプリカとして電流I3をつくり、ここでI3×M=I2である。電流ミラートランジスタM3及びM4は、一例では1:1の整合比で整合され、電流I4はI3に基づいて生成され、M4は基準回路20のIoutポートに接続される。基準回路20へのIout接続は、図に示されるようにバイアス回路MOSFET M1及びM2のゲート端子に結合され、M1及びM2のゲートにおけるバイアス回路制御電圧VREGを制御するために、高ゲイン(超ミラー出力)出力ノードを表し、ここで、キャパシタC3は安定性のためこの制御電圧VREGを補償する。またこの構成において、基準電流I4はそのためIoutに等しくなるように制御される。
【0026】
前置増幅器の差動電圧出力に基づくOC信号36に従った基準回路20の動作によって、Iocはノード12で受信される小さな入力電流IANに対して非常に小さくなり得、I4は基準回路20へのBIAS入力24におけるバイアス電流入力Iinに等しくなり得る。入力電流信号IANが増加すると、Ioc 28も増加し得、バイアス回路制御電圧VREGが上昇し得、これによってバイアス電流I1及びI2が減少する。結果として、入力電流レベルの増大はTIA10a及び10bのゲインを減少させ、それによって回路10は大小両方の入力電流信号レベル又はレンジに対処することができる。また、AGCフィードバックループは、入力電流レンジ全体にわたって、TIAステージの帯域幅をほぼ一定に保つ。そのため、TIA10a及び10bの伝達関数品質(大きさ及び位相)は、入力12で受信される異なる入力電流IANと共に大幅に変化することはなく、前置増幅器ゲインは、入力信号レベルに対処するように自動的に調節される。加えて、前置増幅器10は、TIA出力振幅を適度に小さく保ち、それによって、信号経路トランジスタステージにおける深い飽和状態を回避又は緩和する。これは、有利なことに、広範な入力電流レンジにわたって、高帯域幅、低PWD及びDJを促進し、更に、過負荷状態において大量の電力を節約する。
【0027】
図3は、本明細書においてオフセット回路30と呼ぶ、自動ゲイン制御(AGC)及びオフセット相殺(OC)回路の非限定的な実装を図示する。
図3に見られるように、回路30は電圧増幅器4(
図1)からの増幅された差動電圧出力を受信するが、第1及び第2のTIA10a及び10bによって提供される差動電圧出力端子14a及び14bからオフセット回路30への入力が直接又は間接的に提供される、他の実装も可能である。また、図示される実施形態は、差動出力電圧信号振幅に対して反応するAGCトポロジを用いるが、入力電流信号、或いはそこから一層直接的に導出される信号を受信するためにAGC回路(例えば回路30)が結合される、他の実装も可能である。
【0028】
AGC出力34に加えて、オフセット回路30は、前述のように用いられるOC出力36を提供する。一例におけるオフセット回路30は、入力レジスタR4及びR5、並びに、供給電圧VDD及び接地VSSを用いて動作される演算増幅器32を備える、オフセット相殺回路30aを含む。演算増幅器32の出力は、OC信号36として提供され、図示されるようにキャパシタC4によって安定化され、また、AGC回路部分30bによって用いられる信号を提供する。
【0029】
AGC回路30bは、この信号を、演算増幅器出力からレジスタR2を介して、図示されるようにソース端子がVSSに接続されるNチャネルMOSFET M7及びM8のゲートへ提供する。M8のゲートにおける信号は、そのコレクタがレジスタR1を介してVDDに接続されるNPNトランジスタQ7のベースエミッタ電圧を制御し、Q7のコレクタにおける電圧は、M5及びM6によって形成される電流ミラーに提供される電流を設定するようにトランジスタQ6のベースエミッタ電圧を制御する。この電流は、M5及びトランジスタQ8を介して流れ、トランジスタQ8のベースエミッタ電圧は、M7のドレインソース電圧によって、及びそのため演算増幅器出力電圧によって制御され、それに応じてレジスタR0及びトランジスタ及びQ8はAGC出力電圧34を提供する。
【0030】
次に
図1、
図2、及び
図4を参照し、基準回路20の可能な一実装が
図4に示されており、基準回路20は、端子28から電流入力信号Iocを受信し、端子22で基準電流Irefを、端子24でバイアス電流入力Iin(BIAS)を受信し、前述のように端子26を介して基準電流I4(Iout)を制御する。基準回路20は、NPNトランジスタQ9〜Q12によって形成される2象限電流乗算器(two quadrant current multiplier)を含み、Q10及びQ11は、トランジスタM23及びM24によって形成される電流源によって生成される電流Iin’を有する、共通エミッタ対を形成する。トランジスタQ12は、電流ミラーM13及びM14によって生成されるとき、端子22からの受信した基準電流に基づく定電流Irefによって供給され、トランジスタQ9は、トランジスタM11によって生成されるこの電流Irefと、第1のノードN1で合計された電流ミラーM12及びM15によって生成される可変電流Iocとによって供給される。動作において、電流I10、I11、Iin’、Iref、及びIocは、下記式(1)及び(2)に従って関連する。
I10+I11=Iin’ (1)
I10/I11=(Iref+Ioc)/Iref=K (2)
ここで、Kは定数である。式(1)及び(2)から、下記式(3)及び(4)が導出され得る。
I10=K×I11 (3)
I11=Iin’/(K+1) (4)
上記の2象限電流乗算器Q9〜Q12は、トランジスタM16及びM17によって形成される電流ミラーであり、これによって差又は減算電流Isubが生成され、これは、下記式(5)に従い、電流I10とI11との差に等しい。
Isub=I10−I11 (5)
【0031】
差電流Isubは、下記式(6)により、式(3)及び(4)に従って電流I10及びI11を式(5)に代入することによって特徴付けられ得る。
Isub=Iin’×(K−1)/(K+1) (6)
【0032】
図4において更に見られるように、電流源M22が電流Iin’を導通し、トランジスタM9及びM10によって形成される電流ミラーが、出力電流Ioutを提供するようにM18、M19、M20、及びM24によって形成される電流ミラーのための入力電流を生成し、これは、下記式(7)によって示されるように、Iin’とIsubとの差に等しい。
Iout=Iin’−Isub (7)
【0033】
式(6)に従ってIsubを式(7)に代入する結果、下記式(8)となる。
Iout=Iin’×2/(K+1);K=(Iref+Ioc)Iref (8)
【0034】
可能な一実施形態において、IocはTIA入力電流信号IAN(
図1)に対して線形に比例するが、IrefはTIA入力電流に対して一定に保たれる。結果として、上記の式(8)に示されるように、ある実施形態においてIoutはIocの逆数であり、これは、TIA入力ステージをバイアスするためにIoutを用いる場合に特に有利である。従って、上記でわかるように、TIA10a及び10bの差動出力電圧14a、14bは、ノード12(
図1)における受信した電流入力信号IANに従って、並びに、バイアス電流I1及びI2の改変によるバイアス電流源10cに従って提供される。また、基準回路20は、オフセット信号36に少なくとも部分的に従ってバイアス回路10cに提供される基準電流I4を制御する。オフセット信号OC36は、それ自体が入力電流信号レベルに比例する、差動電圧出力信号に従って提供される。加えて、
図4に見られるように、バイアス電流I1及びI2は、前置増幅器10と同じ集積回路内に実装される基準電流源Irefに少なくとも部分的に従って、また、自動ゲイン制御回路出力信号34にも従って、基準回路20の動作によって制御される。
【0035】
基準回路20は、IoutがIocの逆数であるため、オフセット信号36の振幅の逆数に従って基準電流I4を制御する。この動作によってバイアス回路制御電圧VREGが上昇し、それによってバイアス電流I1及びI2が減少し、差動電圧出力信号振幅を増大させるため(及びそのため入力電流信号レベルを増大させるため)、トランスインピーダンス増幅器10a及び10bのゲインが対応して減少する。この逆も真であり、差動出力電圧を減少させる(及びそのため入力電流信号レベルを減少させる)結果、バイアス回路制御電圧VREGが増大し、従って、バイアス電流I1及びI2が増加し、これに対応してトランスインピーダンス増幅器ゲインが増加する。
【0036】
本開示はこのように、差動電圧出力信号を介して間接的に感知されるように、電流入力信号に従ってTIAバイアス(例えば、上記のバイアス電流I1及びI2)を変更することによって、米国特許番号第7,233,209号に示されるような従来の前置増幅器トポロジに勝る進歩を提示する。そのため、AGC及びオフセット相殺回路30を用いることは、帯域幅、ゲイン、ゲインピーキング、群遅延、及び入力換算ノイズに関する回路性能を保持し、また、パルス幅歪み及び決定論的ジッタを抑制しつつ、入力電流信号のレンジを拡張する。結果として、回路10は、前述のような主要パラメータを許容し得るレンジ内に保つこと、及び、PWD及びDJ値を比較的低く保つことによって、依然として優れた回路性能を維持しつつ、広範な入力信号レンジに対処することができ、それによって高入力電流レベルに対する電力消費が削減される。
【0037】
例えば、TIAバイアス及び/又はゲインを適宜調節するための信号をつくるために、AGC回路が入力電流信号レベルをより直接的に測定する、他の実施形態も可能である。例えば、AGC回路30は、入力12とVSSとの間の電圧を感知するため、及び、それに応じてAGC及びOC出力信号34及び36を提供するために、TIAの入力12に接続され得る。他の可能な実装において、オフセット及びAGC回路30は、TIA入力信号に基づいて制御信号を生成する回路、例えば、受信信号強度インジケータ(RSSI)回路(図示せず)、に接続され得る。また、前述のように、AGC及びオフセット相殺回路30は、代替として、電圧増幅器回路4からの出力を用いる代わりに、TIA差動電圧出力信号をノード14a及び14bから直接的に受信することもできる。
【0038】
当業者であれば、本発明の特許請求の範囲内で、説明した実施形態に対し改変が成され得ること、及び多くの他の実施形態が可能であることが理解されよう。