(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347600
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】高効率発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 33/40 20100101AFI20180618BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20180618BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20180618BHJP
【FI】
H01L33/40
H01L33/38
H01L33/32
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-255499(P2013-255499)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-120774(P2014-120774A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年7月14日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0148361
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イム, チャン イク
(72)【発明者】
【氏名】イ, ミ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク, チョ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, スン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム, チャン ヨン
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−205475(JP,A)
【文献】
特開2009−038063(JP,A)
【文献】
特開2009−016370(JP,A)
【文献】
特開2008−135441(JP,A)
【文献】
特開2013−135224(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0253975(US,A1)
【文献】
特開2010−187062(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0141799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型化合物半導体層、活性層及びn型化合物半導体層を含む半導体積層構造体と、
前記半導体積層構造体の上に位置する第1の電極と、
前記第1の電極と前記半導体積層構造体との間に少なくとも部分的に位置するグラフェン―メタ物質積層構造とを含み、
前記メタ物質は、負の屈折率を有し、前記活性層から放出される光の波長より小さなサイズのパターンに形成されることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記グラフェン―メタ物質積層構造は、その上に位置する第1の電極の幅より大きな幅を有することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記グラフェン―メタ物質は、前記第1の電極の側面に延長して前記第1の電極の側面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記グラフェン―メタ物質は前記第1の電極を取り囲むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記第1の電極は、電極パッドと、前記電極パッドから延長した延長部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記グラフェン―メタ物質は、前記延長部と前記半導体積層構造体との間に部分的に位置することを特徴とする請求項5に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記グラフェン―メタ物質はn型化合物半導体層の上に位置することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記n型化合物半導体層はn型窒化ガリウム層であることを特徴とする請求項7に記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記メタ物質はAu又は誘電物質で形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項10】
前記グラフェン―メタ物質積層構造の厚さは1nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードに関し、より詳細には、メタ物質を用いて電極による光損失を防止できる窒化ガリウム系の高効率発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)などのIII族元素の窒化物は熱的安定性に優れ、直接遷移型のエネルギーバンド構造を有するので、近年、可視光線及び紫外線領域の発光素子用物質として多くの脚光を浴びている。特に、窒化インジウムガリウム(InGaN)を用いた青色及び緑色発光素子は、大規模な天然色の平板表示装置、信号灯、室内照明、高密度光源、高解像度出力システム及び光通信などの多様な応用分野に活用されている。
【0003】
このようなIII族元素の窒化物半導体層は、それを成長させ得る同種の基板を製作することが難いので、類似する結晶構造を有する異種基板で金属有機化学気相蒸着法(MOCVD)又は分子線蒸着法(molecular beam epitaxy;MBE)などの工程によって成長させる。異種基板としては、六方晶系の構造を有するサファイア基板が主に使用される。しかし、サファイアは、電気的に不導体であるので、発光ダイオード構造を制限する。これによって、最近は、サファイアなどの異種基板の上に窒化物半導体層などの各エピ層を成長させ、各エピ層に支持基板をボンディングした後、レーザーリフトオフ技術などを用いて異種基板を分離し、垂直型構造の高効率発光ダイオードを製造する技術が開発されている。
【0004】
このような垂直型構造の発光ダイオードは、メタル基板を支持基板として使用するので、垂直方向への電流分散機能に優れる。また、成長基板が分離された後で露出したN面窒化ガリウム層は、PECなどのエッチングを通して表面に粗面を形成しやすいので、光抽出効率に優れる。
【0005】
しかし、従来の垂直型発光ダイオードは、光放出面にN電極を配置するので、N電極によって光が損失される。光放出面を増加させるためにはN電極の面積を減少させなければならないが、接着力や電流分散の必要性によってN電極の面積減少は制限される。
【0006】
このような問題を解決するために、N電極の下部に反射金属層を配置し、N電極に入射する光を反射させる技術が適用されることもある。しかし、反射された光は、再び各エピ層内に進入した後で放出されるので、各エピ層内の相当な量の光が損失される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電極物質による光吸収によって光が損失されることを防止できる発光ダイオードを提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする他の課題は、電極に入射する光をエピ層の内部に再び反射させる必要なく外部に放出できる発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各実施例に係る発光ダイオードは、p型化合物半導体層、活性層及びn型化合物半導体層を含む半導体積層構造体と、半導体積層構造体の上に位置する第1の電極と、第1の電極と半導体積層構造体との間に少なくとも部分的に位置するグラフェン―メタ物質積層構造とを含む。
【0010】
グラフェン―メタ物質積層構造は、その屈折率特性によって光をグラフェン―メタ物質の表面に沿って進行させることによって、半導体積層構造体においてグラフェン―メタ物質積層構造に入射した光を外部に放出する。したがって、第1の電極の光吸収を防止又は減少させることができ、光効率を増加させることができる。
【0011】
グラフェン―メタ物質積層構造は、その上に位置する第1の電極の幅より大きな幅を有してもよい。これによって、グラフェン―メタ物質積層構造の表面に沿って進行した光が第1の電極に吸収されることをさらに減少させることができる。
【0012】
いくつかの実施例において、グラフェン―メタ物質は、第1の電極の側面に延長して第1の電極の側面を覆うものでもよい。さらに、グラフェン―メタ物質は第1の電極を取り囲むものでもよい。
【0013】
一方、第1の電極は、電極パッドと、電極パッドから延長した延長部とを含んでもよい。このとき、グラフェン―メタ物質は、延長部と半導体積層構造体との間に部分的に位置してもよい。
【0014】
グラフェン―メタ物質は、n型化合物半導体層の上に位置してもよく、n型化合物半導体層はn型窒化ガリウム層であってもよい。
【0015】
また、メタ物質はAu又は誘電物質で形成されてもよい。例えば、メタ物質は、Auを蜂の巣状に形成したものであってもよい。
【0016】
メタ物質は、活性層から放出される光の波長より小さなサイズのパターンに形成される。したがって、メタ物質は、光バンドギャップを有する光結晶構造と区別される。さらに、グラフェン―メタ物質積層構造の厚さは1nm以下であってもよい。
【0017】
上記では、グラフェン―メタ物質積層構造が半導体積層構造体と第1の電極との間に位置する場合について説明したが、グラフェンを他の物質に置換したり、又はグラフェンを省略したりしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の各実施例によると、負の屈折率を有するメタ物質を電極と半導体積層構造体との間に配置することによって、半導体積層構造体から電極に入射する光を外部に放出することができる。したがって、光が電極に吸収されて損失されることを防止することができ、また、半導体積層構造体のなかで再び光を反射させる必要がないので、光効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】グラフェン―メタ物質構造の光透過特性を説明するための概略図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る発光ダイオードを説明するための斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る発光ダイオードを説明するための断面図である。
【
図4】本発明の他の実施例に係る発光ダイオードを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の各図面を参照して本発明の各実施例を詳細に説明する。次に紹介する各実施例は、当業者に本発明の思想を十分に説明するために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下で説明する各実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。そして、各図面において、同一の参照符号は同一の構成要素を示し、構成要素の幅、長さ、厚さなどは、説明の便宜のために誇張して表現されることがある。
【0021】
図1は、グラフェン―メタ物質構造50の光透過特性を説明するための概略図である。
【0022】
メタ物質53は、負の屈折率を有する物質であって、人工的に製造されたものである。このようなメタ物質53は、それに入射する光Lが表面に沿って進行した後、反対側から外部に放出されるようにする。
【0023】
メタ物質53は、Auや誘電物質を光の波長より小さなパターンに形成することによって人工的に製造される。例えば、メタ物質53は、Auを蜂の巣状に形成して製造されてもよい。
【0024】
特に、グラフェン51の上にメタ物質53を積層することによってグラフェン―メタ物質積層構造50が形成され、グラフェン―メタ物質積層構造は、可視光線領域の光に対する透過特性が良好である。グラフェン―メタ物質積層構造50は、約1nm以下の厚さに形成されてもよい。
【0025】
図2及び
図3は、本発明の一実施例に係る発光ダイオードを説明するための断面図及び斜視図である。
【0026】
図2及び
図3を参照すると、発光ダイオードは、支持基板21、ボンディング金属23、反射金属層31、障壁金属層33、半導体積層構造体30、第1の電極60、及びグラフェン―メタ物質積層構造50を含む。
【0027】
支持基板21は、各化合物半導体層を成長させるための成長基板とは区別され、既に成長させた各化合物半導体層に付着する2次基板である。支持基板21はサファイア基板であってもよいが、これに限定されることはなく、他の種類の絶縁又は導電基板であってもよい。特に、支持基板21は金属基板であり、支持基板2を第2の電極として使用してもよい。
【0028】
一方、ボンディング金属23は、支持基板21と障壁金属層33との間に位置し、半導体積層構造体30と支持基板21とを結合する。ボンディング金属23は、例えば、Au―Snで共晶ボンディングを用いて形成されてもよい。
【0029】
半導体積層構造体30は、支持基板21の上に位置し、p型化合物半導体層29、活性層27及びn型化合物半導体層25を含む。ここで、半導体積層構造体30は、一般的な垂直型発光ダイオードと同様に、p型化合物半導体層29がn型化合物半導体層25に比べて支持基板21側の近くに位置する。
【0030】
n型化合物半導体層25、活性層27及びp型化合物半導体層29は、III―N系の化合物半導体、例えば(Al,Ga,In)N半導体で形成されてもよい。n型化合物半導体層25及びp型化合物半導体層29は、それぞれ単一層又は多重層であってもよい。例えば、n型化合物半導体層25及び/又はp型化合物半導体層29は、コンタクト層及びクラッド層を含んでもよく、また、超格子層を含んでもよい。また、活性層27は、単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造であってもよい。抵抗が相対的に小さいn型化合物半導体層25が支持基板21の反対側に位置することによって、n型化合物半導体層25の上面に粗面Rを容易に形成することができ、粗面Rは、活性層27で生成された光の抽出効率を向上させる。
【0031】
反射金属層31及び障壁金属層33は、p型化合物半導体層29と支持基板21との間に位置し、p型化合物半導体層29にオーミック接触する。反射金属層31が半導体積層構造体30と支持基板21との間に埋め込まれるように、障壁金属層33が反射金属層31を取り囲んでもよい。反射金属層31は、例えば、Agなどの反射金属で形成されてもよく、障壁金属層33は、例えば、Niを含んでもよい。
【0032】
一方、第1の電極60は、半導体積層構造体30の上に位置し、n型化合物半導体層25に電気的に接続する。第1の電極60は、電極パッド61と、電極パッド61から延長する延長部63とを含んでもよい。電極パッド61は、ワイヤをボンディングするために形成され、延長部63は、電流を広い領域にわたって均一に分散させるために形成される。第1の電極60は、多様な形状に形成されてもよく、
図2は、その一例を示したものである。
【0033】
グラフェン―メタ物質積層構造50は、第1の電極60と半導体積層構造体30との間に位置する。グラフェン―メタ物質積層構造50は、
図1を参照して説明したように、グラフェン51とメタ物質53の積層構造を有する。グラフェン―メタ物質積層構造50は、n型化合物半導体層25にオーミック接触してもよい。図示していないが、必要であれば、グラフェン―メタ物質積層構造50と半導体積層構造体との間にオーミック接触のための透明電極層を配置してもよい。
【0034】
グラフェン―メタ物質積層構造50は、
図2に示したように、延長部63と半導体積層構造体30との間に部分的に配置しても良い。したがって、延長部63を半導体積層構造体30に電気的に直接接続させてもよい。これと異なり、グラフェン―メタ物質積層構造50を延長部63と半導体積層構造体との間の全領域に配置してもよい。さらに、グラフェン―メタ物質積層構造50は、電極パッド61と半導体積層構造体30との間に配置してもよい。
【0035】
グラフェン―メタ物質50は、その上に位置する電極60部分に比べて相対的に広い幅を有してもよい。これによって、グラフェン―メタ物質50の表面に沿って進行する光が反対側で第1の電極60に吸収されて損失されることを減少させることができる。
【0036】
本実施例によると、第1の電極60に向かって進行する光がグラフェン―メタ物質積層構造50の表面に沿って進行して外部に放出される。これによって、第1の電極60によって光が吸収されて損失されることを防止することができ、さらに、光を半導体積層構造体30のなかで再び反射させず外部に放出することができる。
【0037】
図4は、本発明の他の実施例に係る発光ダイオードを説明するための断面図である。
【0038】
図4を参照すると、本実施例に係る発光ダイオードは、
図2及び
図3を参照して説明した発光ダイオードとほぼ類似するが、グラフェン―メタ物質積層構造70が第1の電極60を取り囲む点において差がある。
【0039】
すなわち、グラフェン―メタ物質積層構造70が第1の電極60を取り囲んでいる。グラフェン―メタ物質積層構造70は、
図2に示した積層構造50と同様に、延長部63を部分的に取り囲んでもよく、電極60全体を取り囲んでもよい。
【0040】
グラフェン―メタ物質積層構造70は、第1の電極60と半導体積層構造体30との間に位置する部分と、第1の電極60の側面を覆う部分と、第1の電極60の上面を覆う部分とを含み、これらの各部分は、互いに異なる工程によって形成されてもよい。例えば、
図3のようなグラフェン―メタ物質積層構造50を半導体積層構造体30の上に形成し、その上に第1の電極60を形成し、第1の電極60の側面及び上面を覆うグラフェン―メタ物質積層構造を形成することによって、第1の電極60を取り囲むグラフェン―メタ物質積層構造70を形成してもよい。
【0041】
本実施例によると、グラフェン―メタ物質積層構造70が第1の電極60を取り囲むので、グラフェン―メタ物質積層構造70の表面に沿って進行する光が第1の電極60に吸収されることを防止し、光効率をさらに増加させることができる。
【0042】
本実施例においては、グラフェン―メタ物質積層構造70が第1の電極60を取り囲む場合を説明したが、第1の電極60の上部面を露出させてもよい。すなわち、グラフェンメタ物質積層構造70は、第1の電極60の下面側から延長して側面のみを覆ってもよい。
【0043】
以上では、垂直型構造の発光ダイオードを例に挙げて説明したが、本発明は、垂直型構造の発光ダイオードに限定されるものではなく、光放出面側に電極を有する他の構造の発光ダイオードに適用されてもよい。
【0044】
また、本実施例においては、グラフェン―メタ物質積層構造50及び70が、電極60と半導体積層構造体30との間に位置する場合を説明したが、グラフェン51が省略されてもよく、グラフェン51の代わりに他の物質をメタ物質53と共に使用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
21:支持基板、23:ボンディング金属、31:反射金属層、33:障壁金属層、30:半導体積層構造体、50、70:グラフェン―メタ物質積層構造、60:第1の電極