特許第6347650号(P6347650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347650
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】プリズムシート
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/04 20060101AFI20180618BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20180618BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20180618BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20180618BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20180618BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20180618BHJP
【FI】
   G02B5/04 A
   G02B5/02 C
   G02F1/13357
   F21S2/00 431
   F21V5/02 100
   F21V3/00 530
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-80644(P2014-80644)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-200836(P2015-200836A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今川 一兵
(72)【発明者】
【氏名】武蔵 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三村 育夫
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−345513(JP,A)
【文献】 国際公開第97/017631(WO,A1)
【文献】 特開2008−134631(JP,A)
【文献】 特開2000−231103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/136
G02F 1/1335−1/13363
F21V 5/02
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略三角柱形状の単位プリズムを複数並列したプリズム層を入光側に有するプリズムシートであって、
各々の前記単位プリズムは、前記プリズムシートを前記単位プリズムの並列方向と平行に切断した断面において、光が入射する第1プリズム面と、入射した光を反射する第2プリズム面とを有し、
前記第1プリズム面は、
前記単位プリズムの頂点を端部とする先端平面と、
前記先端平面に連続して配置され、前記先端平面より傾斜角が大きい中間平面と、
前記単位プリズムの底部を端部とし、前記先端平面と前記中間平面とより傾斜角が小さい(ただし、0°の場合を除く)底部平面と
を有し、
前記第2プリズム面は、1つの平面である
ことを特徴とするプリズムシート。
【請求項2】
前記プリズム層において、隣接する前記単位プリズムの底部同士の間に、平坦面を有することを特徴とする請求項1に記載のプリズムシート。
【請求項3】
前記プリズム層の出光側に、透光性微粒子が透光性樹脂中に分散されてなる光拡散層が積層される請求項1又は2に記載のプリズムシート。
【請求項4】
光源と、前記光源から発せられる光を入射する入光面及び入射した光を導光して出射する出光面とを有する導光体と、前記導光体の前記出光面とは反対側に配置される反射体と、前記導光体の出光面と対向して配置される請求項1〜3に記載のプリズムシートとを備える面光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライト部に用いられるプリズムシートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、バックライト部と液晶表示素子部とから主に構成されている。バックライト部としては、液晶表示装置のコンパクト化の観点から、導光体の側端面に光源を配置したエッジライト方式が多く用いられている。
【0003】
一般的なエッジライト方式のバックライト部は、光源と、側端面に光源を配置し、光源からの光を導光して出射する導光体と、導光体の裏面側に配置され、導光体から漏れた光を反射する反射体と、導光体の出光面側に配置され、導光体から出射した光を集光するプリズムシートと、プリズムシートの出光面側に配置され、プリズムシートから出射した光を拡散する光拡散シートとを備えている。
【0004】
プリズムシートは、導光体から出射した光を、プリズムにより屈折又は反射させて、液晶表示素子部の液晶パネル側へ光を集光し、液晶パネルの面に垂直な方向(以下、「正面方向」とする。)の輝度を高めている。
【0005】
このようなプリズムシートとして、三角柱形状の単位プリズムを平行に複数配列したプリズム列を光入射面に有するプリズムシートが、特許文献1で開示されている。このプリズムシートの単位プリズムは、光が入射する第1斜面と、傾斜角が異なる複数の平面からなり、入射した光を反射する第2斜面と、から構成されている。そして、第2斜面を構成する複数の平面は、単位プリズムの底面に向かうにつれて、傾斜角が大きくなるように形成されている。
【特許文献1】特開2012−234117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のプリズムシートは、反射面が複数の平面から構成されるため、正面方向の輝度が不十分となる場合がある。
【0007】
プリズムシートの集光性能は、反射面となる単位プリズムの第2斜面の寸法精度が主に影響する。そのため、反射面が複数の平面から構成されると、各々の平面に対して所定の寸法精度がそれぞれ要求されるため、たった一つの平面が所定の寸法精度の範囲外となってしまうだけで、所望の集光性能が得られず、正面方向の輝度向上が図れない可能性がある。
【0008】
また、上記特許文献1のプリズムシートでは、第1斜面や第2斜面のうち単位プリズムの底部側に位置する部分が集光にあまり寄与していないため、正面方向の輝度向上に改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、正面方向の輝度を向上することができるプリズムシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のプリズムシートは、略三角柱形状の単位プリズムを複数並列されたプリズム層を入光側に有するプリズムシートであって、各々の前記単位プリズムは、前記プリズムシートを前記単位プリズムの並列方向と平行に切断した断面において、光が入射する第1プリズム面と、入射した光を反射する第2プリズム面とを有し、前記第1プリズム面は、前記単位プリズムの頂点を端部とする先端平面と、前記先端平面に連続して配置され、前記先端平面より傾斜角が大きい中間平面と、前記単位プリズムの底部を端部とし、前記先端平面及び前記中間平面より傾斜角が小さい底部平面とを有し、前記第2プリズム面は、1つの平面であることを特徴とする。
【0011】
このように、反射面となる第2プリズム面を1つの平面で構成する事により、寸法精度に優れる反射面とすることができる。
従って、入射面となる第1プリズム面を3つ以上の平面で構成すると共に、第2プリズム面を1つの平面で構成することにより、入射光を第1プリズム面で効率よく屈折・集光し、高精度な第2プリズム面で反射するため、正面方向の輝度向上を図ることができる。
また、底部平面の傾斜角を、先端平面及び中間平面の傾斜角より小さくすることで、これまで集光が困難であったプリズムシートに垂直方向に入射する光を、集光できるようになるため、正面方向の輝度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、正面方向の輝度を向上することができるプリズムシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のプリズムシートの一実施形態を示す部分断面図。
図2】本発明の面光源装置の一実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明のプリズムシート及び面光源装置に係る実施形態について説明する。図1は本発明のプリズムシートの一実施形態を示す部分断面図、図2は本発明の面光源装置の一実施形態を示す断面図である。
尚、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
(面光源装置5)
図2に示すように、本発明の面光源装置5は、少なくとも一つの側端面を入光面3aとし、これと略直交する一つの表面を出光面3bとする導光体3と、この導光体3の入光面3aに対向して配置される光源2と、導光体3の出光面3bの裏面(出光面3bとは反対側の面)と対向して配置される反射体4と、導光体3の出光面3bと対向して配置されるプリズムシート1、とから構成される。
【0016】
(光源2)
光源2は、線状の光源であり、例えば、蛍光ランプやLED照明を用いることができる。
【0017】
(導光体3)
導光体3は、板状であり、4つの側端面を有する。4つの側端面のうち少なくとも1つの側端面を入光面3aとする。入光面3aは光源2と対向して配置されており、光源2から発せられた光は入光面3aから導光体3内へと入射する。そして、導光体3の入光面3aに略直交した2つの主面は互いに対向しており、いずれか一方の面が出光面3bとなる。そして、出光面3bや裏面の少なくとも一方の面に、導光体3の入光面3aと平行方向に延びるレンズ列を並列に形成したり、これらの面を粗面にすることによって、出光面3bから指向性のある光を出射させる。
【0018】
導光体3は、図2に示したような板状に限定されるものではなく、くさび状、船型状等の種々の形状のものを用いることができる。
【0019】
導光体3は、光透過率の高い透光性樹脂から構成することができる。このような透光性樹脂としては、例えば、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0020】
(反射体4)
反射体4は、導光体3の裏面で反射せずに導光体3から漏れた光を反射させ、再び裏面から導光体3内に入射させるもので、導光板3の裏面と対向するように配置される。反射体4としては、表面に金属蒸着反射層を有するプラスチックシート、拡散材含有プラスッチックシート等を用いることができる。
また、反射体4として、図2に示したような反射シートに代えて、導光体3の裏面に金属蒸着などにより反射層を形成したものであってもよい。
【0021】
(プリズムシート1)
プリズムシート1は、導光板3の出光面3bから出射した光を、液晶パネル側へ光を集光し、正面方向の輝度を高めるもので、導光板3の出光面3bと対向するように配置される。プリズムシート1は、導光板3の出光面3b側に配置されるプリズム層11と、プリズム層11の出光側の界面に積層される光拡散層12とから構成される。
【0022】
(プリズム層11)
図1に示すように、プリズム層11は、プリズムシート1における入光側に配置される層で、略三角柱形状の単位プリズム20を複数並列した層である。各々の単位プリズム20は、プリズムシート1を単位プリズム20の並列方向と平行に切断した断面において、光が入射する第1プリズム面30と、入射した光を反射する第2プリズム面40とから構成される。
第1プリズム面30は、単位プリズム20の頂点21を端部とする先端平面31と、先端平面31に連続して配置され、先端平面31より傾斜角θ2が大きい中間平面32と、単位プリズム20の底部22を端部とし、先端平面31及び中間平面32より傾斜角θ3が小さい底部平面33とから構成される。
また、第2プリズム面は、1つの平面から構成される。
なお、傾斜角度とは、各平面と単位プリズム20の底面又は底面と平行な面となす角とする。
【0023】
このように、反射面となる第2プリズム面40を1つの平面で構成する事により、寸法精度に優れる反射面とすることができる。
従って、入射面となる第1プリズム面30を3つ以上の平面で構成すると共に、第2プリズム面40を1つの平面で構成することにより、入射光を第1プリズム面30で効率よく屈折・集光し、高精度な第2プリズム面40で反射するため、正面方向の輝度向上を図ることができる。
また、底部平面33の傾斜角θ3を、先端平面31の傾斜角θ1及び中間平面32の傾斜角θ2より小さくすることで、これまで集光が困難であった、プリズムシート1に垂直方向(厚み方向)に入射する光を集光できるようになるため、正面方向の輝度向上を図ることができる。
【0024】
尚、第1プリズム面は、必要に応じて、4つ以上の平面で構成してもよく、その場合、中間平面32と底部平面33との間に、別の新たな平面を設けることできる。
また、隣接する単位プリズム20の底部2同士の間に、平坦面を新たに設けることもできる。
【0025】
プリズム層11は、光透過率の高い透光性樹脂から構成することができる。このような透光性樹脂としては、例えば、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0026】
(光拡散層12)
また、光拡散層12は、光を拡散するための層で、プリズムシート1における出光側に配置される。光拡散層12は、透光性微粒子が透光性樹脂中に分散された状態で、プリズム層11に積層される。
【0027】
光拡散層12を構成する透光性樹脂としては、プリズム層11に用いられる樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
透光性微粒子としては、一般的に光拡散シートに用いられる透光性微粒子が用いられ、例えば、メタクリル系樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ポリカーボネート系ビーズ、ポリウレタン系ビーズ、ポリスチレン系ビーズ、アミノ系樹脂ビーズ、炭酸カルシウム系ビーズ及びシリカ系ビーズ等が挙げられる。
【0028】
光拡散層12の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、プリズム層11に、透光性微粒子が分散された樹脂液を塗布し乾燥させた後、樹脂液からなる層を熱硬化させることにより、光拡散層12を形成する方法が挙げられる。
【0029】
尚、光拡散層12は、プリズムシートと一体化せずに、プリズムシートとは別部材である光拡散シートにしてもよい。
【0030】
(プリズムシート1の製造方法)
本発明のプリズムシートの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、単位プリズム形状を反転させた形状を有する金型を、プリズムシート形成用樹脂シートに押し当てて熱プレスすることにより、形状パターンを転写賦形した後冷却し、金型を剥離することで、プリズムシートを得る方法が挙げられる。
また、単位プリズム形状を反転させた形状を有する金型に、紫外線硬化性樹脂等の単位プリズム形成用樹脂材料を入れ、そこに光透過性基材シートを重ね、ラミネーター等を用いて光透過性基材シートを単位プリズム形成用樹脂材料に圧着し、紫外線等で単位プリズム形成用樹脂材料を硬化させ、金型を剥離することで、プリズムシートを得る方法が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
― プリズムシートの作製 ―
実施例のプリズムシートを以下の手順で作製した。
(1)屈折率1.49のアクリル系樹脂(三菱レイヨン社製:ダイヤナールLR275)の固形分100重量部に対して、透光性微粒子として平均粒子径が1.78μm、屈折率1.66のアミノ樹脂系粒子(日本触媒社製エポスターMS ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物)を30重量部添加し、固形分率が20重量%になるように、メチルエチルケトンおよびイソプロピルアルコールが同じ重量である混合溶媒で希釈し、ハイスピードミキサーで60分間分散して塗布液を調製した。
(2)次に、この塗布液を、ポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名:ユーピロンFE−2000B、厚み:75μm)に2ミルのアプリケーターを用いて塗工し、100℃で5分間乾燥させ、膜厚10μmの光拡散層とポリカーボネート層からなる2層フィルムを得た。
(3)さらに、成形用金型を用いて、成形温度170℃、成形圧力9.8MPaの条件で、上記2層フィルムを圧縮成形し、このフィルムを加圧下で70℃にまで冷却した後に取り出して、光拡散層とプリズム層とからなる、図2に示す構造のプリズムシートを得た。
【0033】
<プリズムシートの寸法>
・プリズムシートの厚み :80.70μm
・光拡散層の厚み : 8.00μm
・単位プリズム20の高さH :11.40μm
・単位プリズム20のピッチP :15.52μm
・先端平面31の高さh1 : 2.0μm
・中間平面32の高さh2 : 6.4μm
・底部平面33の高さh3 : 3.0μm
・先端平面31の角度β1 :33.25°
・中間平面32の角度β2 :30.25°
・底部平面33の角度β3 :45.00°
・第2プリズム面40の角度α :33.25°
【0034】
実施例のプリズムシートについて、正面輝度と傷(光学欠陥)の見え難さを測定・評価したところ、正面方向の輝度を向上することができ、かつ傷を見えにくくすることができた。
【符号の説明】
【0035】
1・・・プリズムシート
2・・・光源
3・・・導光体
4・・・反射体
5・・・面光源装置
11・・・プリズム層
12・・・拡散層
20・・・単位プリズム
30・・・第1プリズム面
31・・・先端平面
32・・・中間平面
33・・・底部平面
40・・・第2プリズム面
図1
図2