特許第6347687号(P6347687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6347687レジスト組成物及びそれを用いた透明導電性パターンシートの製造方法、並びに透明導電性パターンシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347687
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びそれを用いた透明導電性パターンシートの製造方法、並びに透明導電性パターンシート
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/08 20060101AFI20180618BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20180618BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20180618BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20180618BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20180618BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20180618BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20180618BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20180618BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20180618BHJP
   C09D 127/16 20060101ALI20180618BHJP
   C09D 181/00 20060101ALI20180618BHJP
   C09D 125/06 20060101ALI20180618BHJP
   H05K 3/02 20060101ALI20180618BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180618BHJP
   B32B 7/02 20060101ALN20180618BHJP
【FI】
   C09D201/08
   C09D201/02
   H01B13/00 503B
   H01B13/00 503D
   H01B1/20 A
   H01B1/12 F
   H01B5/14 A
   C09D7/43
   C09D7/20
   C09D5/24
   C09D127/16
   C09D181/00
   C09D125/06
   H05K3/02 Z
   B32B27/30 D
   H01B5/14 B
   !B32B7/02 104
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-143664(P2014-143664)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-20408(P2016-20408A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】野村 涼
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−239680(JP,A)
【文献】 特開平01−200695(JP,A)
【文献】 特開2013−245255(JP,A)
【文献】 特開昭57−162124(JP,A)
【文献】 特開昭49−111943(JP,A)
【文献】 特開昭51−077402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
B32B 27/30
H01B 1/12
H01B 1/20
H01B 5/14
H01B 13/00
H05K 3/02
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、樹脂と、溶媒とを含むレジスト組成物であって、
前記無機粒子は、前記レジスト組成物にチキソトロピー性を付与するものであり、
前記樹脂は、カルボキシル基又はアルキル基を含む熱可塑性樹脂であり、
前記溶媒は、無極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を含み、
前記無機粒子の含有量は、前記レジスト組成物に含まれる全固形成分の質量に対して30質量%以上50質量%以下であり、
前記レジスト組成物に含まれる全固形成分の含有量は、前記レジスト組成物の全質量に対して30質量%以上50質量%以下であること特徴とするレジスト組成物。
【請求項2】
前記無機粒子の平均粒子径は、0.05μm以下である請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
透明な基材上に導電パターンを形成する透明導電性パターンシートの製造方法であって、
前記基材の一方の主面に、導電性高分子とポリフッ化ビニリデンと溶媒とを含む透明導電性コーティング組成物を塗布して透明導電性膜を形成する工程と、
前記透明導電性膜上の導電パターンを形成する位置に、請求項1又は2に記載のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
導電性を失活させる不活性剤を用いて、前記レジスト膜をマスクとして、前記透明導電性膜の露出部の導電性を失活させて非導電部を形成する工程と、
前記レジスト膜を、無極性溶媒を用いて除去して導電パターン部を形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性パターンシートの製造方法。
【請求項4】
前記導電性高分子は、ポリチオフェン系化合物とポリスチレンスルホン酸とを含む請求項3に記載の透明導電性パターンシートの製造方法。
【請求項5】
前記基材は、プラスチック、ゴム、ガラス又はセラミックスである請求項3又は4に記載の透明導電性パターンシートの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の透明導電性パターンシートの製造方法により形成され、導電パターン部と非導電部とを含む透明導電性パターンシートであって、
前記導電パターン部の表面抵抗値と前記非導電部の表面抵抗値とを用いて下記式により算出される表面抵抗値差が、6以上であり、
表面抵抗値差=Log(非導電部の表面抵抗値)−Log(導電パターン部の表面抵抗値)
前記導電パターン部のヘイズと前記非導電部のヘイズとが、それぞれ1.0%以下であることを特徴とする透明導電性パターンシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物及びそれを用いた透明導電性パターンシートの製造方法、並びに透明導電性パターンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の各種デバイスに用いられる透明電極には、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の酸化物系の導電性材料が多く使用されている。例えば、基材上にITO膜を成膜し、ITO膜を所望の形状にパターニングすることにより形成される導電パターンを透明電極として用いる。ITO膜のパターニング方法としては、エッチング方式が主流となっているが、エッチング方式の問題点は、製造コストが高い点と、基材とITO膜との屈折率差が大きいことにより、パターニングが見える点にある。また、ITO膜は、スパッタリングを用いて成膜されるため、製造コストが高くなる。
【0003】
そこで、導電性材料として、ITOに代えて、優れた安定性及び導電性を有するチオフェン系やアニリン系の高分子にドーパントを付加した導電性高分子が注目されている。
【0004】
導電性高分子を導電性材料として用いた導電パターン形成方法としては、導電性高分子を含むコーティング組成物を用いて基材上に導電性膜を形成し、導電性膜の導電パターン形成位置以外の部分をエッチング液により溶解・除去することにより、残った導電性膜を導電パターンとする方法が知られている。しかし、この方法は、エッチング方式を利用するため、前述したような問題がある。
【0005】
一方、エッチング方式を用いずに、導電性膜の導電パターン形成位置以外の部分の導電性を極端に下げる(抵抗を上げる)不活性化を行い、不活性化された部分(非導電部)と不活性化されていない部分(導電部)との表面抵抗値の差をつけることで、導電パターンを形成する方法も知られている。この方法の利点は、非導電部をエッチングにより除去する必要がないので、パターニングが見えない(骨見えがない)点と、導電パターン形成面に凹凸がないため、十分な硬度が得られる点にある。
【0006】
ここで言う不活性化とは、導電性膜をある処理液(不活性化剤)に接触反応させることで、導電に関与する導電性高分子の二重結合を切断することにより、導電性高分子の導電性を失活させることをいう。
【0007】
例えば、特許文献1には、基材上に不活性化剤を用いて膜パターンを形成し、その基材を、導電性膜へ接触させることにより、上記膜パターンに対応する部分の導電性を失活させて非導電部を形成し、残りの導電部を配線部とする導電パターン形成方法が提案されている。この特許文献1によれば、導電性膜の導電性を選択的に失活させて、所望の形状の導電パターンを、安価、簡便、且つ確実に形成することができ、各種デバイスの低廉化及び安定化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−054617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、導電部と非導電部との表面抵抗値の差が十分ではなく、回路として機能させるには、導電部と非導電部との表面抵抗値の差をより大きなものとする必要がある。
【0010】
また、レジスト膜を用いて導電性膜の導電性を選択的に失活させて、所望の形状の導電パターンを形成する方法では、レジスト膜の形成精度を高める検討が必要である。即ち、レジスト膜の形成精度が低いと、形成した導電パターンの形成精度も悪くなるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、高い精度でレジスト膜を形成可能なレジスト組成物を提供するとともに、高精度の導電パターンを形成可能な透明導電性パターンシートの製造方法、及び、電気特性及び光学特性に優れた透明導電性パターンシートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のレジスト組成物は、無機粒子と、樹脂と、溶媒とを含むレジスト組成物であって、前記無機粒子は、前記レジスト組成物にチキソトロピー性を付与するものであり、前記樹脂は、カルボキシル基又はアルキル基を含む熱可塑性樹脂であり、前記溶媒は、無極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を含み、前記無機粒子の含有量は、前記レジスト組成物に含まれる全固形成分の質量に対して30質量%以上50質量%以下であり、前記レジスト組成物に含まれる全固形成分の含有量は、前記レジスト組成物の全質量に対して30質量%以上50質量%以下であること特徴とする。

【0013】
本発明の透明導電性パターンシートの製造方法は、透明な基材上に導電パターンを形成する透明導電性パターンシートの製造方法であって、前記基材の一方の主面に、導電性高分子とポリフッ化ビニリデンと溶媒とを含む透明導電性コーティング組成物を塗布して透明導電性膜を形成する工程と、前記透明導電性膜上の導電パターンを形成する位置に、上記本発明のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程と、導電性を失活させる不活性剤を用いて、前記レジスト膜をマスクとして、前記透明導電性膜の露出部の導電性を失活させて非導電部を形成する工程と、前記レジスト膜を、無極性溶媒を用いて除去して導電パターン部を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の透明導電性パターンシートは、上記本発明の透明導電性パターンシートの製造方法により形成され、導電パターン部と非導電部とを含む透明導電性パターンシートであって、前記導電パターン部の表面抵抗値と前記非導電部の表面抵抗値とを用いて下記式により算出される表面抵抗値差が、6以上であり、
表面抵抗値差=Log(非導電部の表面抵抗値)−Log(導電パターン部の表面抵抗値)
前記導電パターン部のヘイズと前記非導電部のヘイズとが、それぞれ1.0%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレジスト組成物を用いることにより、高精度の導電パターンを有し、電気特性及び光学特性に優れた透明導電性パターンシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の透明導電性パターンシートの製造方法の一例を示す模式断面図である。
図2図2は、透明導電性シートの透明導電性膜の上にレジスト膜を形成した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(レジスト組成物)
本発明のレジスト組成物は、無機粒子と、樹脂と、溶媒とを含んでいる。また、上記樹脂は、カルボキシル基又はアルキル基を含む熱可塑性樹脂であり、上記溶媒は、無極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を含み、上記無機粒子の含有量は、上記レジスト組成物に含まれる全固形成分の質量に対して30質量%以上50質量%以下であり、上記レジスト組成物に含まれる全固形成分の含有量は、上記レジスト組成物の全質量に対して30質量%以上50質量%以下であること特徴とする。
【0018】
本発明のレジスト組成物を用いることにより、高精度の導電パターンを有し、電気特性及び光学特性に優れた透明導電性パターンシートを提供できる。
【0019】
<無機粒子>
上記無機粒子としては特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア等を用いることができる。上記無機粒子は、その粒子表面に官能基として、例えば、ヒドロキシル基、アルキル基、パーフルオロ基等を有していてもよい。但し、後述する不活性剤が水溶性の場合には、上記無機粒子は、その表面の官能基としてアルキル基やパーフルオロ基等の疎水性官能基を有することが好ましい。上記官能基が親水性であると水溶性の不活性剤との親和性が高くなり、レジストの効果が消失してしまう可能性があるためである。
【0020】
上記無機粒子の平均粒子径は、0.05μm以下であることが好ましい。上記無機粒子の平均粒子径が0.05μmを超えるとチキソトロピー性が低下し、本発明のレジスト組成物の塗布時に液広がりが発生しやすくなり、ファインパターンが形成できない傾向にあるからである。本発明において無機粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により粒子像を撮影し、粒子100個の直径の算術平均値として算出するものとする。
【0021】
上記無機粒子の含有量は、上記レジスト組成物に含まれる全固形成分の質量に対して30質量%以上50質量%以下であることが必要である。上記無機粒子の含有量の範囲内であれば、レジスト膜の形成精度を高めることができる。
【0022】
<カルボキシル基又はアルキル基を含む熱可塑性樹脂>
上記カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、カルボキシル基を有する、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることができる。
【0023】
上記アルキル基を有する熱可塑性樹脂としても特に限定されないが、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール系樹脂等を用いることができる。
【0024】
また、上記樹脂以外にも、カルボキシル基とアルキル基とを両方有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0025】
上記カルボキシル基又はアルキル基を含む熱可塑性樹脂を用いることにより、形成するレジスト膜と導電性膜との密着性が高まり、導電性膜とレジスト膜との間に後述する不活性剤が浸入することがなく、導電パターンを精度よく形成することができる。
【0026】
<溶媒>
上記溶媒としては、無極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒のいずれかを含んでいればよい。上記無極性溶媒としては特に限定されないが、例えば、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、テルペン系溶媒(例えば、ターピネオール)、酢酸エチル等を用いることができる。
【0027】
上記非プロトン性極性溶媒としては特に限定されないが、例えば、イソホロン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン等を用いることができる。
【0028】
<全固形成分の含有量>
上記レジスト組成物に含まれる全固形成分の含有量は、上記レジスト組成物の全質量に対して30質量%以上50質量%以下であることが必要である。上記全固形成分の含有量の範囲内であれば、レジスト膜の形成精度を高めることができる。
【0029】
(透明導電性パターンシートの製造方法)
本発明の透明導電性パターンシートの製造方法は、透明な基材の一方の主面に、導電性高分子とポリフッ化ビニリデンと溶媒とを含む透明導電性コーティング組成物を塗布して透明導電性膜を形成する工程と、上記透明導電性膜上の導電パターンを形成する位置に、前述の本発明のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程と、導電性を失活させる不活性剤を用いて、上記レジスト膜をマスクとして、上記透明導電性膜の露出部の導電性を失活させて非導電部を形成する工程と、上記レジスト膜を、無極性溶媒を用いて除去して導電パターン部を形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0030】
本発明の透明導電性パターンシートの製造方法により、電気特性及び光学特性に優れた透明導電性パターンシートを提供できる。
【0031】
先ず、本発明の透明導電性パターンシートの製造方法で用いる透明導電性コーティング組成物について説明する。
【0032】
上記透明導電性コーティング組成物は、導電性高分子と、ポリフッ化ビニリデンと、溶媒とを含んでいる。また、上記溶媒は、プロトン性極性溶媒と、非プロトン性極性溶媒とを含み、上記コーティング組成物中における上記ポリフッ化ビニリデンの分散粒子径は、0.3μm以下であり、上記導電性高分子の含有量は、上記コーティング組成物に含まれる全固形成分の質量に対して3質量%以上45質量%以下であり、上記非プロトン性極性溶媒の含有量は、上記溶媒の全質量に対して25質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0033】
上記透明導電性コーティング組成物を用いることにより、電気特性、光学特性、耐熱性及び耐湿性に優れた透明導電性膜を形成できる。
【0034】
<導電性高分子>
導電性高分子とは、Conductive Polymers(CPs)と呼ばれる高分子であり、ドーパントによるドーピングによって、ポリラジカルカチオニック塩又はポリラジカルアニオニック塩が形成された状態で、それ自体が導電性を発揮し得る高分子をいう。
【0035】
本発明では、上記導電性高分子として、ポリチオフェン系化合物とドーパントとを含むものを用いる。本発明における導電性高分子としては、ポリチオフェン系化合物としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸とを含む混合物(PEDOT/PSSともいう。)を用いることができる。
【0036】
上記導電性高分子の含有量は、上記コーティング組成物に含まれる全固形成分の質量に対して3質量%以上45質量%以下であることが好ましい。上記導電性高分子の含有量が、上記コーティング組成物に含まれる全固形成分の質量に対して3質量%を下回ると透明導電性膜の導電性が低下する傾向にあり、45質量%を超えると透明導電性膜の耐湿性が低下する傾向にある。
【0037】
<ポリフッ化ビニリデン>
上記透明導電性コーティング組成物にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)が含まれる。上記PVDFは、バインダとしての役割を果たすものであり、これにより透明導電性膜と基材との密着性を向上できる。上記PVDFは、上記透明導電性コーティング組成物を用いて形成される透明導電性膜中に均一に分散させて透光性を向上させるため、上記コーティング組成物中における分散粒子径は0.3μm以下が好ましい。上記PVDFを乳化重合により形成することにより、その分散粒子径を0.3μm以下にすることができる。本発明において、PVDFの分散粒子径は、動的光散乱法を用いた粒度分布測定装置により測定することができる。例えば、コールター社製の粒度分布測定装置“N4 Plus”(商品名)を用い、希釈溶媒として蒸留水を使用して測定することができる。
【0038】
上記PVDFの含有量は、上記コーティング組成物に含まれる全固形成分に対して55質量%以上97質量%以下であることが好ましい。上記PVDFの含有量が少なすぎると、形成した透明導電性膜の基材への密着性が低下し、また透明導電性膜に亀裂が発生しやすい傾向にある。また、上記PVDFの含有量が多すぎると電気特性が悪化する傾向にある。
【0039】
<溶媒>
上記透明導電性コーティング組成物を構成する溶媒には、プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを含んでいることが好ましい。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを併用することにより、比較的低い乾燥温度で透明性に優れた透明導電膜を得ることができる。
【0040】
上記プロトン性極性溶媒としては、例えば、水、エタノール、酢酸等が挙げられ、上記非プロトン性極性溶媒としては、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0041】
上記非プロトン性極性溶媒の含有量は、上記溶媒の全質量に対して25質量%以上50質量%以下が好ましい。上記非プロトン性極性溶媒の含有量が、上記溶媒の全質量に対して25質量%を下回ると透明導電性膜の光学特性が低下する傾向があり、50質量%を超えると透明導電性膜の耐湿性が低下する傾向がある。
【0042】
上記溶媒の含有量は特に限定されないが、本発明の透明導電性コーティング組成物の全質量に対して、70質量%以上99.5質量%以下とすればよい。また、上記溶媒には、無極性溶媒を含んでいてもよい。
【0043】
上記透明導電性コーティング組成物の調製方法は、特に限定されず、上記導電性高分子、上記PVDF、上記溶媒を公知の手法により適宜混合すればよい。
【0044】
次に、本発明の透明導電性パターンシートの製造方法について図1を用いて説明する。図1は、本発明の透明導電性パターンシートの製造方法の一例を示す模式断面図である。
【0045】
<透明導電性膜の形成>
先ず、図1Aに示すように、透明な基材11の一方の主面(図1では上面)に上記透明導電性コーティング組成物を塗布して乾燥することにより、透明導電性膜12を形成する。
【0046】
上記透明導電性コーティング組成物の塗布方法には、例えば、バーコート法、リバース法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法等の公知の塗布方法を用いることができる。
【0047】
上記透明導電性コーティング組成物の乾燥方法としては、コーティング組成物中の溶媒を除去できれば、特に限定されず、例えば、加熱乾燥、真空乾燥、自然乾燥等により行うことができる。
【0048】
上記基材には、例えば、プラスチック、ゴム、ガラス又はセラミックス等の種々のものを使用できる。
【0049】
上記透明導電性膜の膜厚は、用途に応じて適宜設定されるものであるが、通常、0.01〜10μm程度である。膜厚が薄すぎても厚すぎても、均一な透明導電性膜を形成することが困難となる。上記透明コーティング組成物中に含まれる導電性高分子の割合にもよるが、膜厚が薄いと、表面抵抗値が増加する傾向にあり、膜厚が厚すぎると、全光線透過率が低下する傾向にある。
【0050】
上記透明導電性膜の波長範囲380〜780nmにおける全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、より好ましくは88%以上である。全光線透過率が高いほど良好な光学特性を示す。上記全光線透過率は、分光光度計、例えば、日本分光社製の“V−570”により測定可能である。
【0051】
<レジスト膜の形成>
上記透明導電性膜12の形成後、図1Bに示すように、透明導電性膜12上の導電パターンを形成する位置に、前述の本発明のレジスト組成物を塗布して加熱することによりレジスト膜13を形成する。
【0052】
上記レジスト組成物の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法等を用いることができる。また、上記レジスト組成物の加熱は、レジスト組成物中の溶媒を除去できる条件であればよく、80〜120℃で、5〜30分間行えばよい。
【0053】
<導電性の低下>
上記レジスト膜13の形成後、図1Cに示すように、レジスト膜13をマスクとして、透明導電性膜12の露出部の導電性を低下させる。具体的には、透明導電性膜12の露出部に、導電性高分子の導電性を失活させる不活性剤を接触させることにより、露出部の導電性を失活(低下)させ、表面抵抗値を上昇させる。即ち、導電性高分子が不活性化された部分(非導電部)12aと、導電性高分子が不活性化されていない部分(導電部)12bとの表面抵抗値の差をつけることができる。そして、後の工程で、マスクとしてのレジスト膜13を除去すると、導電部12bが導電パターンとして機能することになる。このように本発明では、非導電部をエッチングすることなく、透明導電性膜の導電性を選択的に低下させて導電パターンを形成できるため、製造コストを抑制できる。また、導電パターン形成面が平滑であるため、骨見えの問題の発生を防止できるとともに、高硬度の透明導電性膜が得られる。
【0054】
ここで、導電部12bの表面抵抗値は、5×102Ω/スクエア以下であることが好ましい。表面抵抗値が小さいほど、導電性が高く、電気特性に優れる。導電部12bの表面抵抗値は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Loresta−GP”(MCP−T610型)等の表面抵抗率測定装置によって測定可能である。
【0055】
非導電部12aの表面抵抗値は、導電部12bの表面抵抗値よりも1×106Ω/スクエア以上大きいことが好ましい。この場合、回路として機能するくらいに、導電部12bと非導電部12aとの表面抵抗値の差をつけて、良好な電気的コントラストが得られる。非導電部12aの表面抵抗値は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Hiresta−UP”(MCP−HT450型)等の表面抵抗率測定装置によって測定可能である。
【0056】
上記不活性剤としては、導電性高分子を失活できるものであればよく、例えば、酸化性化合物、塩基性化合物が挙げられるが、酸化性化合物がより好ましい。酸化性化合物は、塩基性化合物に比べて表面抵抗値の増加が大きく、また、失活処理後の表面抵抗値の変動が少ないからである。
【0057】
上記酸化性化合物としては、例えば、過酸化水素系化合物、過塩素酸系化合物、次亜塩素酸系化合物、過酢酸系化合物、メタクロロ安息香酸系化合物、亜硫酸系化合物等が挙げられる。
【0058】
上記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−メチルピリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0059】
<レジスト膜の除去>
上記透明導電性膜12の導電性を選択的に低下させた後、無極性溶媒を用いてレジスト膜13を溶解・除去する。具体的には、レジスト膜13を無極性溶媒に5〜60分間浸漬すればよい。無極性溶媒を用いるのは、レジスト膜中の熱可塑性樹脂を容易に溶解可能とし、更に、透明導電性膜を劣化させないためである。上記無極性溶媒としては、前述のレジスト組成物に使用できる無極性溶媒と同じものが使用できる。
【0060】
上記のようにレジスト膜13を除去することにより、透明導電性膜12のレジスト膜13が形成されていた位置に(図1C)、図1Dに示すように導電部12bからなる導電パターン部が形成され、基材11の上に導電パターン部を備えた透明導電性パターンシート14が得られる。
【0061】
(透明導電性パターンシート)
本発明の透明導電性パターンシートは、上記本発明の透明導電性パターンシートの製造方法により形成され、導電パターン部と非導電部とを備えている。また、上記導電パターン部の表面抵抗値と上記非導電部の表面抵抗値とを用いて下記式(1)により算出される表面抵抗値差は、6以上であり、上記導電パターン部のヘイズと上記非導電部のヘイズとは、それぞれ1.0%以下であることを特徴とする。即ち、本発明の透明導電性パターンシートは、電気特性及び光学特性に優れている。
【0062】
表面抵抗値差=Log(非導電部の表面抵抗値)−Log(導電パターン部の表面抵抗値) (1)
【0063】
上記表面抵抗値は、前述の表面抵抗率測定装置により測定できる。また、上記ヘイズは、日本分光社製の分光光度計"V−570"等により測定できる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に述べる。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0065】
(実施例1)
<透明導電性コーティング液の調製>
先ず、以下の成分を添加、混合して透明導電性コーティング液を調製した。調製した下記透明導電性コーティング液に含まれるPVDFの分散粒子径は0.3μm以下であった。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“PH−500”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.0質量%、溶媒:水):2.5部
(2)樹脂分散液(樹脂:PVDF、PVDFの平均分散粒子径:0.2μm、固形分濃度:20質量%、溶媒:水):2.4部
(3)プロトン性極性溶媒(エタノール):1.2部
(4)非プロトン性極性溶媒(エチレングリコール):3.9部
【0066】
<透明導電性シートの形成>
次に、厚さ0.7mmの10cm角の無アルカリガラス(全光線透過率:91.2%)を基板として用い、基板の一方の主面に上記透明導電性コーティング液をスピンコーティング法により回転速度800rpmで、30秒間塗布し、その後100℃で5分間加熱した。これにより、一方の主面に透明導電性膜が形成された実施例1の透明導電性シートを作製した。上記透明導電性膜の膜厚は、0.5μmであった。
【0067】
<レジスト液の調製>
次に、以下の成分を添加、混合してレジスト液を調製した。
(1)無機粒子(日本アエロジル社製のヒュームドシリカ:商品名“AEROSIL RX200”):4.0部
(2)カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル樹脂:商品名“ダイヤナールBR−113”):6.0部
(3)溶媒(非プロトン性極性溶媒:イソホロン):15.0部
【0068】
<レジスト膜の形成>
続いて、図2に示すように、上記で作製した透明導電性シート21の透明導電性膜22の上の4.5cm角の4つの領域に、スクリーン印刷法により上記で調製したレジスト液をステンレス鋼製の♯500のメッシュ版を用いてスクリーン印刷し、その後90℃で5分間加熱した。これにより、透明導電性膜22の上にレジスト膜23を形成して、レジスト膜を備えた仮積層体を作製した。このようにしてスクリーン印刷により仮積層体をそれぞれ10枚作製した後に、同様にしてスクリーン印刷によりレジスト膜を備えた積層体を作製し、この11枚目の積層体を実施例1のレジスト膜を備えた積層体とした。
【0069】
(実施例2)
レジスト液の溶媒を非プロトン性極性溶媒であるシクロヘキサノン:15.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0070】
(実施例3)
レジスト液の溶媒を無極性溶媒であるターピオネール(日本テルペン化学社製、商品名“ターピオネールC”):15.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0071】
(実施例4)
レジスト液の溶媒を無極性溶媒であるトルエン:15.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0072】
(実施例5)
レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を三菱レイヨン社製のアクリル樹脂(商品名“ダイヤナールBR−83”):6.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0073】
(実施例6)
レジスト液の無機粒子を日本アエロジル社製のヒュームドシリカ(商品名“AEROSIL RY200”):4.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例6のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0074】
(実施例7)
レジスト液の無機粒子を日本アエロジル社製のヒュームドシリカ(商品名“AEROSIL 200”):4.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例7のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0075】
(実施例8)
レジスト液の無機粒子の量を3.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を6.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例8のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0076】
(実施例9)
レジスト液の無機粒子の量を4.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を5.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例9のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0077】
(実施例10)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を18.6部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例10のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0078】
(実施例11)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を12.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例11のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0079】
(実施例12)
レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を、アルキル基を有する熱可塑性樹脂(日進化成社製のエチルセルロース:商品名“エトセル STD 4 CPS”):6.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例12のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0080】
(比較例1)
レジスト液の無機粒子の量を2.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を7.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0081】
(比較例2)
レジスト液の無機粒子の量を5.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を4.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0082】
(比較例3)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を30.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0083】
(比較例4)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を8.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0084】
(実施例13)
先ず、実施例1と同様にしてレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0085】
<透明導電性パターンシートの形成>
次に、レジスト膜を形成した積層体を、不活性剤であるジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの10%水溶液に、20℃の液温で30分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、100℃で5分間乾燥した。これにより、透明導電性膜の上にレジスト膜が形成されていない部分の導電性を低下させた。
【0086】
続いて、レジスト膜が形成された透明導電性膜を無極性溶媒であるトルエンに20分間浸漬した後、100℃で5分間乾燥した。これにより、レジスト膜が除去され、レジスト膜が形成されていた部分が導電パターン部となり、レジスト膜が形成されていなかった部分が非導電部となった実施例13の透明導電性パターンシートを作製した。
【0087】
(実施例14)
レジスト膜を形成した積層体をジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの10%水溶液に20℃の液温で10分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして実施例14の透明導電性パターンシートを作製した。
【0088】
(実施例15)
レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を、アルキル基を有する熱可塑性樹脂(日進化成社製のエチルセルロース:商品名“エトセル STD 4 CPS”):6.0部に変更した以外は、実施例13と同様にして実施例15の透明導電性パターンシートを作製した。
【0089】
(比較例5)
レジスト膜が形成された透明導電性膜を、トルエンに代えて非プロトン性極性溶媒であるシクロヘキサノンに20分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして比較例5の透明導電性パターンシートを作製した。
【0090】
(比較例6)
レジスト膜が形成された透明導電性膜を、トルエンに代えてプロトン性極性溶媒であるイソプロピルアルコールに20分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして比較例6の透明導電性パターンシートを作製した。
【0091】
(比較例7)
透明導電性コーティング液の樹脂分散液の分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更した以外は、実施例13と同様にして比較例7の透明導電性パターンシートを作製した。
【0092】
(比較例8)
透明導電性コーティング液の樹脂分散液の分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更し、レジスト膜を形成した積層体をジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの10%水溶液に20℃の液温で10分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして比較例8の透明導電性パターンシートを作製した。
【0093】
表1に、実施例1〜15及び比較例1〜8で用いた透明導電性コーティング液に含まれる導電性高分子の全固形成分に対する質量割合(導電性高分子/全固形成分)及び上記透明導電性コーティング液に用いた溶媒に含まれる非プロトン性極性溶媒の全溶媒に対する質量割合(非プロトン性極性溶媒/全溶媒)を示した。
【0094】
【表1】
【0095】
また、表2に、実施例1〜15及び比較例1〜8で用いたレジスト液に含まれる無機粒子の全固形成分に対する質量割合(無機粒子/全固形成分)及び上記レジスト液に含まれる全固形成分のレジスト液の全質量に対する質量割合(固形成分濃度)を示した。
【0096】
【表2】
【0097】
次に、上記で得られた透明導電性シートについて、下記に示す各評価を行った。
【0098】
<電気特性>
透明導電性シートの電気特性は、下記のように透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を測定することで評価した。
【0099】
透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Loresta−GP”(MCP−T610型)とLSPプローブを用いて測定した。また、その測定の結果、上記抵抗率測定装置の表面抵抗値が“OVER”と表示された場合には、上記表面抵抗値を三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Hiresta−UP”(MCP−HT450型)とURSPプローブを用いて測定した。
【0100】
上記測定の結果、表面抵抗値が500Ω/スクエア以下の場合、電気特性は良好と判断し、表面抵抗値が500Ω/スクエアより大きい場合、電気特性は不良と判断した。
【0101】
<光学特性>
透明導電性シートの光学特性は、下記のように透明導電性シートのヘイズを測定することで評価した。
【0102】
透明導電性シートのヘイズは、日本分光社製の分光光度計"V−570"を用いて測定した。具体的には、積分球“ILN−472”を組み合わせ、ヘイズ値計算モードで、レスポンスがFast、バンド幅が2.0nm、近赤外バンド幅が8.0nm、走査速度が400nm/分の条件で波長範囲380〜780nmにおける光透過スペクトルを測定し、該光透過スペクトルの測定結果を用いて、C光源、視野2度の条件でヘイズを算出した。
【0103】
上記測定の結果、ヘイズが1.0%以下の場合、光学特性は良好と判断し、ヘイズが1.0%を上回った場合、光学特性は不良と判断した。
【0104】
<耐熱性>
透明導電性シートの耐熱性は、下記のように透明導電性シートの保存試験を行うことで評価した。
【0105】
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜の初期の表面抵抗値を前述の電気特性の評価と同様にして測定した。次に、透明導電性シートを恒温槽に入れて85℃で240時間保存した。続いて、保存後の透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を上記と同様にして測定した。最後に、下記式(2)により表面抵抗値の変化度を算出した。
表面抵抗値の変化度=保存後の表面抵抗値/初期の表面抵抗値 (2)
【0106】
上記測定の結果、表面抵抗値の変化度が1.2以下の場合、耐熱性は良好と判断し、表面抵抗値の変化度が1.2を上回った場合、耐熱性は不良と判断した。
【0107】
<耐湿性>
透明導電性シートの耐湿性は、下記のように透明導電性シートの保存試験を行うことで評価した。
【0108】
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜の初期の表面抵抗値を前述の電気特性の評価と同様にして測定した。次に、透明導電性シートを恒温恒湿槽に入れて60℃、相対湿度90%で240時間保存した。続いて、保存後の透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を上記と同様にして測定した。最後に、前述の式(2)により表面抵抗値の変化度を算出した。
【0109】
上記測定の結果、表面抵抗値の変化度が1.2以下の場合、耐湿性は良好と判断し、表面抵抗値の変化度が1.2を上回った場合、耐湿性は不良と判断した。
【0110】
上記評価の結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3から、分散樹脂としてPVDFを含む透明導電性コーティング液を用いて作製した実施例1〜15及び比較例1〜6の透明導電性シートは、電気特性、光学特性、耐熱性及び耐湿性の全てで良好との評価を得たことが分かる。
【0113】
一方、透明導電性コーティング液に含まれる分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更した比較例7及び8では耐熱性が劣ることが分かる。
【0114】
次に、実施例1〜15及び比較例1〜8で作製したレジスト膜を備えた積層体について、レジスト膜の形成精度を下記のとおり評価した。
【0115】
作製した積層体について、そのレジスト膜のスペース間隔(図2の間隔W)を顕微鏡で観察して、間隔幅を測定した。
【0116】
上記測定の結果、間隔幅が全ての位置で50〜100μmである場合、レジスト膜の形成精度は良好と判断し、間隔幅が一部でも50μmを下回った場合、レジスト膜の形成精度は不良と判断した。その結果を表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
表4から、本発明のレジスト液を用いて作製した実施例1〜15及び比較例5〜8の積層体では、レジスト膜の形成精度が高いことが分かる。
【0119】
一方、レジスト液に含まれる無機粒子の全固形成分に対する質量割合が30質量%を下回った比較例1、レジスト液に含まれる無機粒子の全固形成分に対する質量割合が50質量%を超えた比較例2、レジスト液に含まれる全固形成分の固形成分濃度が30質量%を下回った比較例3、レジスト液に含まれる全固形成分の固形成分濃度が50質量%を超えた比較例4ではレジスト膜の形成精度が低いことが分かる。
【0120】
次に、実施例13〜15及び比較例5〜8で作製した透明導電性パターンシートの電気特性及び光学特性を下記のとおり評価した。
【0121】
<電気特性>
前述した透明導電性シートの電気特性の評価と同様にして、透明導電性パターンシートの導電パターン部及び非導電部の表面電気抵抗値を測定し、下記式(1)により表面抵抗値差を算出した。
表面抵抗値差=Log(非導電部の表面抵抗値)−Log(導電パターン部の表面抵抗値) (1)
【0122】
上記測定の結果、表面抵抗値差が6以上となった場合、電気特性は良好と判断し、表面抵抗値差が6を下回った場合、電気特性は不良と判断した。
【0123】
<光学特性>
前述した透明導電性シートの光学特性の評価と同様にして、透明導電性パターンシートの導電パターン部及び非導電部のヘイズを測定した。その測定の結果、それぞれのヘイズが1.0%以下の場合、光学特性は良好と判断し、いずれかのヘイズが1.0%を上回った場合、光学特性は不良と判断した。
【0124】
以上の結果を表5に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
表5から、実施例13〜15の透明導電性パターンシートは、電気特性及び光学特性がともに優れていることが分かる。
【0127】
一方、レジスト膜の除去に無極性溶媒を使用しなかった比較例5及び6では電気特性が劣り、透明導電性コーティング液に含まれる分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更した比較例7及び8では光学特性が劣り、更にレジスト膜の不活性剤への浸漬時間を10分とした比較例8では電気特性も低下した。
図1
図2