【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に述べる。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0065】
(実施例1)
<透明導電性コーティング液の調製>
先ず、以下の成分を添加、混合して透明導電性コーティング液を調製した。調製した下記透明導電性コーティング液に含まれるPVDFの分散粒子径は0.3μm以下であった。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“PH−500”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.0質量%、溶媒:水):2.5部
(2)樹脂分散液(樹脂:PVDF、PVDFの平均分散粒子径:0.2μm、固形分濃度:20質量%、溶媒:水):2.4部
(3)プロトン性極性溶媒(エタノール):1.2部
(4)非プロトン性極性溶媒(エチレングリコール):3.9部
【0066】
<透明導電性シートの形成>
次に、厚さ0.7mmの10cm角の無アルカリガラス(全光線透過率:91.2%)を基板として用い、基板の一方の主面に上記透明導電性コーティング液をスピンコーティング法により回転速度800rpmで、30秒間塗布し、その後100℃で5分間加熱した。これにより、一方の主面に透明導電性膜が形成された実施例1の透明導電性シートを作製した。上記透明導電性膜の膜厚は、0.5μmであった。
【0067】
<レジスト液の調製>
次に、以下の成分を添加、混合してレジスト液を調製した。
(1)無機粒子(日本アエロジル社製のヒュームドシリカ:商品名“AEROSIL RX200”):4.0部
(2)カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル樹脂:商品名“ダイヤナールBR−113”):6.0部
(3)溶媒(非プロトン性極性溶媒:イソホロン):15.0部
【0068】
<レジスト膜の形成>
続いて、
図2に示すように、上記で作製した透明導電性シート21の透明導電性膜22の上の4.5cm角の4つの領域に、スクリーン印刷法により上記で調製したレジスト液をステンレス鋼製の♯500のメッシュ版を用いてスクリーン印刷し、その後90℃で5分間加熱した。これにより、透明導電性膜22の上にレジスト膜23を形成して、レジスト膜を備えた仮積層体を作製した。このようにしてスクリーン印刷により仮積層体をそれぞれ10枚作製した後に、同様にしてスクリーン印刷によりレジスト膜を備えた積層体を作製し、この11枚目の積層体を実施例1のレジスト膜を備えた積層体とした。
【0069】
(実施例2)
レジスト液の溶媒を非プロトン性極性溶媒であるシクロヘキサノン:15.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0070】
(実施例3)
レジスト液の溶媒を無極性溶媒であるターピオネール(日本テルペン化学社製、商品名“ターピオネールC”):15.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0071】
(実施例4)
レジスト液の溶媒を無極性溶媒であるトルエン:15.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0072】
(実施例5)
レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を三菱レイヨン社製のアクリル樹脂(商品名“ダイヤナールBR−83”):6.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0073】
(実施例6)
レジスト液の無機粒子を日本アエロジル社製のヒュームドシリカ(商品名“AEROSIL RY200”):4.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例6のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0074】
(実施例7)
レジスト液の無機粒子を日本アエロジル社製のヒュームドシリカ(商品名“AEROSIL 200”):4.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例7のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0075】
(実施例8)
レジスト液の無機粒子の量を3.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を6.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例8のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0076】
(実施例9)
レジスト液の無機粒子の量を4.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を5.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例9のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0077】
(実施例10)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を18.6部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例10のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0078】
(実施例11)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を12.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例11のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0079】
(実施例12)
レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を、アルキル基を有する熱可塑性樹脂(日進化成社製のエチルセルロース:商品名“エトセル STD 4 CPS”):6.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例12のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0080】
(比較例1)
レジスト液の無機粒子の量を2.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を7.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0081】
(比較例2)
レジスト液の無機粒子の量を5.5部に変更し、レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の量を4.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0082】
(比較例3)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を30.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0083】
(比較例4)
レジスト液の溶媒(イソホロン)の量を8.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4のレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0084】
(実施例13)
先ず、実施例1と同様にしてレジスト膜を備えた積層体を作製した。
【0085】
<透明導電性パターンシートの形成>
次に、レジスト膜を形成した積層体を、不活性剤であるジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの10%水溶液に、20℃の液温で30分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、100℃で5分間乾燥した。これにより、透明導電性膜の上にレジスト膜が形成されていない部分の導電性を低下させた。
【0086】
続いて、レジスト膜が形成された透明導電性膜を無極性溶媒であるトルエンに20分間浸漬した後、100℃で5分間乾燥した。これにより、レジスト膜が除去され、レジスト膜が形成されていた部分が導電パターン部となり、レジスト膜が形成されていなかった部分が非導電部となった実施例13の透明導電性パターンシートを作製した。
【0087】
(実施例14)
レジスト膜を形成した積層体をジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの10%水溶液に20℃の液温で10分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして実施例14の透明導電性パターンシートを作製した。
【0088】
(実施例15)
レジスト液のカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂を、アルキル基を有する熱可塑性樹脂(日進化成社製のエチルセルロース:商品名“エトセル STD 4 CPS”):6.0部に変更した以外は、実施例13と同様にして実施例15の透明導電性パターンシートを作製した。
【0089】
(比較例5)
レジスト膜が形成された透明導電性膜を、トルエンに代えて非プロトン性極性溶媒であるシクロヘキサノンに20分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして比較例5の透明導電性パターンシートを作製した。
【0090】
(比較例6)
レジスト膜が形成された透明導電性膜を、トルエンに代えてプロトン性極性溶媒であるイソプロピルアルコールに20分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして比較例6の透明導電性パターンシートを作製した。
【0091】
(比較例7)
透明導電性コーティング液の樹脂分散液の分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更した以外は、実施例13と同様にして比較例7の透明導電性パターンシートを作製した。
【0092】
(比較例8)
透明導電性コーティング液の樹脂分散液の分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更し、レジスト膜を形成した積層体をジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの10%水溶液に20℃の液温で10分間浸漬した以外は、実施例13と同様にして比較例8の透明導電性パターンシートを作製した。
【0093】
表1に、実施例1〜15及び比較例1〜8で用いた透明導電性コーティング液に含まれる導電性高分子の全固形成分に対する質量割合(導電性高分子/全固形成分)及び上記透明導電性コーティング液に用いた溶媒に含まれる非プロトン性極性溶媒の全溶媒に対する質量割合(非プロトン性極性溶媒/全溶媒)を示した。
【0094】
【表1】
【0095】
また、表2に、実施例1〜15及び比較例1〜8で用いたレジスト液に含まれる無機粒子の全固形成分に対する質量割合(無機粒子/全固形成分)及び上記レジスト液に含まれる全固形成分のレジスト液の全質量に対する質量割合(固形成分濃度)を示した。
【0096】
【表2】
【0097】
次に、上記で得られた透明導電性シートについて、下記に示す各評価を行った。
【0098】
<電気特性>
透明導電性シートの電気特性は、下記のように透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を測定することで評価した。
【0099】
透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Loresta−GP”(MCP−T610型)とLSPプローブを用いて測定した。また、その測定の結果、上記抵抗率測定装置の表面抵抗値が“OVER”と表示された場合には、上記表面抵抗値を三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Hiresta−UP”(MCP−HT450型)とURSPプローブを用いて測定した。
【0100】
上記測定の結果、表面抵抗値が500Ω/スクエア以下の場合、電気特性は良好と判断し、表面抵抗値が500Ω/スクエアより大きい場合、電気特性は不良と判断した。
【0101】
<光学特性>
透明導電性シートの光学特性は、下記のように透明導電性シートのヘイズを測定することで評価した。
【0102】
透明導電性シートのヘイズは、日本分光社製の分光光度計"V−570"を用いて測定した。具体的には、積分球“ILN−472”を組み合わせ、ヘイズ値計算モードで、レスポンスがFast、バンド幅が2.0nm、近赤外バンド幅が8.0nm、走査速度が400nm/分の条件で波長範囲380〜780nmにおける光透過スペクトルを測定し、該光透過スペクトルの測定結果を用いて、C光源、視野2度の条件でヘイズを算出した。
【0103】
上記測定の結果、ヘイズが1.0%以下の場合、光学特性は良好と判断し、ヘイズが1.0%を上回った場合、光学特性は不良と判断した。
【0104】
<耐熱性>
透明導電性シートの耐熱性は、下記のように透明導電性シートの保存試験を行うことで評価した。
【0105】
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜の初期の表面抵抗値を前述の電気特性の評価と同様にして測定した。次に、透明導電性シートを恒温槽に入れて85℃で240時間保存した。続いて、保存後の透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を上記と同様にして測定した。最後に、下記式(2)により表面抵抗値の変化度を算出した。
表面抵抗値の変化度=保存後の表面抵抗値/初期の表面抵抗値 (2)
【0106】
上記測定の結果、表面抵抗値の変化度が1.2以下の場合、耐熱性は良好と判断し、表面抵抗値の変化度が1.2を上回った場合、耐熱性は不良と判断した。
【0107】
<耐湿性>
透明導電性シートの耐湿性は、下記のように透明導電性シートの保存試験を行うことで評価した。
【0108】
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜の初期の表面抵抗値を前述の電気特性の評価と同様にして測定した。次に、透明導電性シートを恒温恒湿槽に入れて60℃、相対湿度90%で240時間保存した。続いて、保存後の透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を上記と同様にして測定した。最後に、前述の式(2)により表面抵抗値の変化度を算出した。
【0109】
上記測定の結果、表面抵抗値の変化度が1.2以下の場合、耐湿性は良好と判断し、表面抵抗値の変化度が1.2を上回った場合、耐湿性は不良と判断した。
【0110】
上記評価の結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3から、分散樹脂としてPVDFを含む透明導電性コーティング液を用いて作製した実施例1〜15及び比較例1〜6の透明導電性シートは、電気特性、光学特性、耐熱性及び耐湿性の全てで良好との評価を得たことが分かる。
【0113】
一方、透明導電性コーティング液に含まれる分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更した比較例7及び8では耐熱性が劣ることが分かる。
【0114】
次に、実施例1〜15及び比較例1〜8で作製したレジスト膜を備えた積層体について、レジスト膜の形成精度を下記のとおり評価した。
【0115】
作製した積層体について、そのレジスト膜のスペース間隔(
図2の間隔W)を顕微鏡で観察して、間隔幅を測定した。
【0116】
上記測定の結果、間隔幅が全ての位置で50〜100μmである場合、レジスト膜の形成精度は良好と判断し、間隔幅が一部でも50μmを下回った場合、レジスト膜の形成精度は不良と判断した。その結果を表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
表4から、本発明のレジスト液を用いて作製した実施例1〜15及び比較例5〜8の積層体では、レジスト膜の形成精度が高いことが分かる。
【0119】
一方、レジスト液に含まれる無機粒子の全固形成分に対する質量割合が30質量%を下回った比較例1、レジスト液に含まれる無機粒子の全固形成分に対する質量割合が50質量%を超えた比較例2、レジスト液に含まれる全固形成分の固形成分濃度が30質量%を下回った比較例3、レジスト液に含まれる全固形成分の固形成分濃度が50質量%を超えた比較例4ではレジスト膜の形成精度が低いことが分かる。
【0120】
次に、実施例13〜15及び比較例5〜8で作製した透明導電性パターンシートの電気特性及び光学特性を下記のとおり評価した。
【0121】
<電気特性>
前述した透明導電性シートの電気特性の評価と同様にして、透明導電性パターンシートの導電パターン部及び非導電部の表面電気抵抗値を測定し、下記式(1)により表面抵抗値差を算出した。
表面抵抗値差=Log(非導電部の表面抵抗値)−Log(導電パターン部の表面抵抗値) (1)
【0122】
上記測定の結果、表面抵抗値差が6以上となった場合、電気特性は良好と判断し、表面抵抗値差が6を下回った場合、電気特性は不良と判断した。
【0123】
<光学特性>
前述した透明導電性シートの光学特性の評価と同様にして、透明導電性パターンシートの導電パターン部及び非導電部のヘイズを測定した。その測定の結果、それぞれのヘイズが1.0%以下の場合、光学特性は良好と判断し、いずれかのヘイズが1.0%を上回った場合、光学特性は不良と判断した。
【0124】
以上の結果を表5に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
表5から、実施例13〜15の透明導電性パターンシートは、電気特性及び光学特性がともに優れていることが分かる。
【0127】
一方、レジスト膜の除去に無極性溶媒を使用しなかった比較例5及び6では電気特性が劣り、透明導電性コーティング液に含まれる分散樹脂をPVDFからテトラエトキシシランに変更した比較例7及び8では光学特性が劣り、更にレジスト膜の不活性剤への浸漬時間を10分とした比較例8では電気特性も低下した。