(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚さ0.5mm以上の嵩高繊維シート層間に、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材であり、前記摩擦帯電不織布層構成繊維が嵩高繊維シート層に進入しているとともに、いずれの嵩高繊維シート層も、構成繊維として限界酸素指数が20以上の繊維を含み、かつ、摩擦帯電不織布層の目付の0.5倍以上の目付を有することを特徴とする、三層濾過材。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の三層濾過材は、厚さが0.5mm以上の嵩高繊維シート層を二層有するため、剛性を有するものであるとともに、三層濾過材の搬送時、加工時、或いは使用時に、嵩高繊維シート層が変形(特に、厚さ方向に変形)することによって、嵩高繊維シート層に進入している摩擦帯電不織布層構成繊維同士が摩擦によって帯電しやすいため、帯電量が減少しにくく、捕集効率の低下しにくい三層濾過材である。
【0021】
このように、剛性及び変形性に優れているように、いずれの嵩高繊維シート層も厚さが0.5mm以上であるが、厚さが厚い程、前記効果に優れているため、0.6mm以上であるのが好ましく、0.7mm以上であるのがより好ましく、0.8mm以上であるのが更に好ましく、1mm以上であるのが更に好ましい。一方で、厚さが100mmを超えると、形態安定性が悪くなりやすく、また、厚過ぎて汎用性に劣るため100mm以下であるのが好ましく、50mm以下であるのがより好ましく、30mm以下であるのが更に好ましく、10mm以下であるのがより好ましく、5mm以下であるのが更に好ましい。本発明における「厚さ」は、0.098kPa荷重時における厚さを意味する。
【0022】
このような嵩高繊維シート層は、ある程度の剛性と変形性に優れるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、繊維融着、ニードルパンチ、水流絡合、バインダボンドなどの結合手段を1つ、又は2つ以上適用した不織布を挙げることができる。これらの中でも繊維融着不織布又はバインダボンド不織布は剛性と変形性に優れているため好適であり、特に繊維融着不織布は繊維表面全体を濾過に関与させることができるため、より好適である。
【0023】
本発明においては、後述の摩擦帯電不織布層が可燃性の繊維を主体として構成されていたとしても、二層の嵩高繊維シート層で摩擦帯電不織布層を挟み込んでいることによって、三層濾過材に難燃性を付与できるように、いずれの嵩高繊維シート層も、構成する繊維として、限界酸素指数が20以上の繊維を含んでいる。この限界酸素指数が20以上の繊維量が多ければ多い程、難燃性に優れているため、限界酸素指数が20以上の繊維は、いずれの嵩高繊維シート層においても、70mass%以上を占めているのが好ましく、80mass%以上を占めているのがより好ましく、90mass%以上を占めているのが更に好ましく、100mass%を占めているのが最も好ましい。なお、この限界酸素指数は、JIS K 7201により測定した値をいう。
【0024】
より具体的には、限界酸素指数が20以上の繊維として、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維などの合成繊維、ガラス繊維などの無機繊維、羊毛、絹などの動物繊維、などを挙げることができる。これらの中でも、合成繊維であると、後述の摩擦帯電不織布層構成繊維と摩擦することによって、摩擦帯電不織布層の帯電量を維持、向上させやすいため好適である。これら合成繊維の中でも、ポリエステル繊維は剛性に優れているため好適である。
【0025】
なお、嵩高繊維シート層を構成できる、限界酸素指数が20未満の繊維として、例えば、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維などの合成繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、綿や麻などの植物繊維、などを挙げることができる。
【0026】
前述の通り、嵩高繊維シート層は繊維融着不織布からなるのが好ましいが、このような繊維融着不織布とする場合には、融着可能な樹脂を繊維表面に有する融着繊維を含み、融着繊維が融着しているのが好ましい。このような融着繊維も限界酸素指数が20以上の繊維であるのが好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂を繊維表面に有する融着繊維であるのが好ましい。前述の通り、剛性に優れるポリエステル繊維が好ましいため、融着繊維はポリエステル系樹脂を繊維表面に有する融着繊維が好ましい。
【0027】
この融着繊維は前述のような樹脂を繊維表面に有していれば良く、1種類の樹脂から構成されていても良いが、融着しても繊維形態を維持し、剛性の優れる繊維融着不織布、つまり嵩高繊維シート層であることができるように、融着に関与する繊維表面の樹脂に加えて、融着に関与しない樹脂の2種類以上の樹脂からなる融着繊維であるのが好ましい。例えば、融着繊維が2種類の樹脂から構成されている場合、高融点の樹脂を低融点の樹脂で被覆した芯鞘型融着繊維、高融点の樹脂と低融点の樹脂とを貼り合せたサイドバイサイド型融着繊維、を挙げることができる。特に、芯鞘型融着繊維であると、剛性の優れる嵩高繊維シート層であることができるため好適である。
【0028】
前述の通り、融着繊維として、ポリエステル系樹脂を繊維表面に有する融着繊維が好適であるため、樹脂の組合せが、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの組合せからなるのが好ましく、特に、前記樹脂の組合せが芯成分/鞘成分であるのが好ましい。
【0029】
なお、嵩高繊維シート層を構成する繊維の繊度は特に限定するものではないが、嵩高繊維シート層によって三層濾過材の剛性に優れているように、繊度15dtex以上の繊維を含んでいるのが好ましく、繊度18dtex以上の繊維を含んでいるのがより好ましく、繊度20dtex以上の繊維を含んでいるのが更に好ましい。一方で、繊度が大き過ぎると、メカニカルな捕集効率が減少する傾向があるため、50dtex以下であるのが好ましい。このような繊度15dtex以上の繊維が多ければ多い程、三層濾過材の剛性を高めることができるため、嵩高繊維シート層中、30mass%以上含まれているのが好ましく、45mass%以上含まれているのがより好ましく、65mass%以上含まれているのが更に好ましい。一方で、メカニカルな捕集効率を向上させる観点から、15dtex未満の繊維も含んでいるのが好ましく、12dtex以下の繊維も含んでいるのがより好ましく、10dtex以下の繊維を含んでいるのが更に好ましく、8dtex以下の繊維を含んでいるのが更に好ましい。
【0030】
なお、本発明における「繊度」はJIS L 1015:2010、8.5.1(正量繊度)に規定されているA法により得られる値を意味する。
【0031】
また、嵩高繊維シート層を構成する繊維の繊維長は特に限定するものではないが、嵩高繊維シート層によって三層濾過材の剛性に優れているように、30mm以上であるのが好ましく、40mm以上であるのがより好ましく、50mm以上であるのが更に好ましい。一方で、繊維長が長すぎると、繊維が均一に分散することが困難になる傾向があり、結果として、捕集効率が悪くなる傾向があるため、150mm以下であるのが好ましく、110mm以下であるのがより好ましい。本発明における「繊維長」は、JIS L 1015:2010、8.4.1[補正ステープルダイヤグラム法(B法)]により得られる値を意味する。
【0032】
嵩高繊維シート層の目付は三層濾過材に難燃性を付与することができるように、いずれの嵩高繊維シート層も後述の摩擦帯電不織布層の目付の0.5倍以上の目付を有する。嵩高繊維シート層の目付が高い、つまり、限界酸素指数が20以上の繊維量が多い方が難燃性に優れているため、いずれの嵩高繊維シート層も、目付は摩擦帯電不織布層の目付の0.6倍以上であるのが好ましく、0.7倍以上であるのがより好ましく、0.8倍以上であるのが更に好ましく、0.9倍以上であるのが更に好ましく、1倍以上であるのが更に好ましい。一方で、嵩高繊維シート層の目付が高すぎると、厚さが厚くなり過ぎて襞折りしにくいなど、汎用性に劣る傾向があるため、摩擦帯電不織布層の目付の4倍以下であるのが好ましく、3倍以下であるのがより好ましい。なお、目付は1m
2あたりの質量であり、JIS L 1085:1998 6.2「単位面積当たりの質量」に規定する方法により得られる値をいう。
【0033】
また、嵩高繊維シート層の見掛密度は、厚さが0.5mm以上である限り、特に限定するものではないが、変形しやすいように、いずれの嵩高繊維シート層も0.02〜0.10g/m
2であるのが好ましく、0.04〜0.08g/m
2であるのがより好ましく、0.05〜0.07g/m
2であるのが更に好ましい。なお、本発明における「見掛密度」は、目付を厚さで除した計算値である。
【0034】
なお、本発明の三層濾過材は嵩高繊維シート層を二層有するが、これら嵩高繊維シート層は全く同じであっても良いし、限界酸素指数が20以上の繊維の樹脂組成、繊度、繊維長;嵩高繊維シート層の構造、繊維配合、目付、厚さ、見掛密度;の中から選ばれる、少なくとも一点で異なる嵩高繊維シート層であっても良い。
【0035】
本発明の三層濾過材は前述のような嵩高繊維シート層に加えて、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した摩擦帯電不織布層を有しており、摩擦帯電不織布層構成繊維が嵩高繊維シート層に進入しているため、帯電量が減少しにくく、捕集効率の低下しにくい三層濾過材である。つまり、本発明の三層濾過材は、搬送時、加工時、或いは使用時に嵩高繊維シート層が変形しやすく、変形した際に、進入した摩擦帯電不織布層構成繊維同士が摩擦によって帯電しやすいため、帯電量が減少しにくく、捕集効率の低下しにくい三層濾過材である。
【0036】
本発明の摩擦帯電不織布層は構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在し、摩擦によって帯電した不織布からなるが、この構成繊維は構成樹脂が異なれば、摩擦帯電するが、十分な帯電量であるように、帯電列の離れた樹脂から構成された繊維が混在しているのが好ましい。例えば、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維の組合せ;フッ素系繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;ウレタン繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;塩化ビニル繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;ポリオレフィン系繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;アクリル繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;ビニロン繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;ポリエステル繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;アセテート繊維とポリアミド繊維、羊毛、ガラス繊維、絹又はレーヨン繊維の組合せ;などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維の組合せは帯電量が多いため好適な組合せである。
【0037】
なお、「構成樹脂が異なる」とは、繊維表面(両端部を除く)を構成する樹脂が異なることを意味し、仮に、繊維内部を構成する樹脂が他の繊維の構成樹脂と同じであったとしても、繊維表面(両端部を除く)を構成する樹脂が異なっていれば、構成樹脂の異なる繊維であるとみなす。
【0038】
前述の通り、摩擦帯電不織布層構成繊維はポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維の組合せが好ましいが、ポリオレフィン系繊維構成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、又は、これら樹脂の一部をシアノ基やハロゲンで置換した樹脂などを挙げることができ、ポリオレフィン系繊維はこれら構成樹脂1種類、又は2種類以上からなる複合繊維であることができる。例えば、芯鞘型複合繊維であり、鞘成分がポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系繊維であっても良い。
【0039】
また、好適であるポリオレフィン系繊維の場合、リン系添加剤とイオウ系添加剤を含有しているのが好ましい。リン系添加剤とイオウ系添加剤を含有していることによって、初期捕集効率が向上するためである。なお、リン系添加剤とイオウ系添加剤に加えて、更に、フェノール系、アミン系などの他の添加剤が含まれていても良い。
【0040】
このリン系添加剤はポリオレフィン系繊維中、0.01mass%以上含有しているのが好ましく、0.2mass%以上含有しているのがより好ましく、0.3mass%以上含有しているのが更に好ましく、0.6mass%以上含有しているのが更に好ましい。
【0041】
このリン系添加剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6,ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)などのリン系酸化防止剤を挙げることができる。
【0042】
イオウ系添加剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスなどのイオウ系酸化防止剤などが好適に使用できる。このイオウ系添加剤はポリオレフィン系繊維中、0.01mass%以上含まれているのが好ましく、0.1mass%以上含まれているのがより好ましい。
【0043】
なお、リン系添加剤とイオウ系添加剤の合計量が多くなると、紡糸性が悪くなる傾向があるため、リン系添加剤とイオウ系添加剤の合計量がポリオレフィン系繊維の5mass%以下であるのが好ましく、2mass%以下であるのがより好ましく、1mass%以下であるのが更に好ましい。
【0044】
一方、アクリル繊維としては、アクリロニトリルを主成分(85%以上)とするポリアクリロニトリル系と、アクリロニトリルを35%以上85%未満含むモダクリル系のいずれであっても使用することができる。また、ポリアクリロニトリル系繊維は有機系溶媒を用いて紡糸したものと、無機系溶媒を用いて紡糸したものの2種類があるが、いずれのポリアクリロニトリル系繊維であっても良い。
【0045】
なお、摩擦帯電不織布層構成繊維として融着繊維を含み、融着繊維が融着していると、剛性の優れる三層濾過材であることができるため、摩擦帯電不織布層構成繊維として融着繊維を含んでいるのが好ましい。
【0046】
この摩擦帯電不織布層を構成できる融着繊維は、嵩高繊維シート層を構成できる融着繊維と同様の融着繊維であることができる。つまり、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を繊維表面に有する融着繊維を挙げることができ、剛性の優れるポリエステル系樹脂を繊維表面に有する融着繊維が好ましい。
【0047】
また、摩擦帯電不織布層を構成する融着繊維は前述のような樹脂を繊維表面に有していれば良く、1種類の樹脂から構成されていても良いが、剛性の優れる摩擦帯電不織布層であるように、融着に関与する繊維表面の樹脂に加えて、融着に関与しない樹脂の2種類以上の樹脂からなる融着繊維であるのが好ましい。例えば、2種類の樹脂から構成されている場合、高融点の樹脂を低融点の樹脂で被覆した芯鞘型融着繊維、高融点の樹脂と低融点の樹脂とを貼り合せたサイドバイサイド型融着繊維、を挙げることができる。特に、芯鞘型融着繊維であると、剛性の優れる摩擦帯電不織布層であることができるため好適である。
【0048】
前述の通り、融着繊維として、ポリエステル系樹脂を繊維表面に有する融着繊維が好適であるため、樹脂の組合せが、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの組合せからなるのが好ましく、特に、前記樹脂の組合せが芯成分/鞘成分であるのが好ましい。
【0049】
なお、いずれか又は両方の嵩高繊維シート層が融着繊維を含んでいる場合、摩擦帯電不織布層を構成する融着繊維はいずれか又は両方の嵩高繊維シート層を構成する融着繊維と同じであっても良いし、異なっていても良いが、いずれか又は両方の融着繊維と同じであると、嵩高繊維シート層と摩擦帯電不織布層とが強固に融着しており、層間剥離しにくいため好適である。
【0050】
また、本発明の摩擦帯電不織布層においては、前述の通り、ポリオレフィン系繊維とアクリル繊維とを含んでいるのが好ましいが、融着繊維を含んでいる場合、ポリオレフィン系繊維とアクリル繊維に加えて融着繊維を含んでいても良いし、アクリル繊維に替えて融着繊維を使用し、融着繊維とポリオレフィン系繊維とを含んでいても良い。
【0051】
なお、摩擦帯電不織布層を構成する繊維の繊度は特に限定するものではないが、繊維の表面積が広いと、繊維同士が擦れやすく、帯電量が多くなって、帯電による捕集効率の向上が望めるため、10dtex以下であるのが好ましく、7dtex以下であるのがより好ましく、5dtex以下であるのが更に好ましく、3dtex以下であるのが更に好ましい。一方で、繊維が細くなり過ぎると、圧力損失が上昇しやすくなる傾向があるため、0.1dtex以上であるのが好ましく、0.5dtex以上であるのがより好ましく、1dtex以上であるのが更に好ましい。
【0052】
また、摩擦帯電不織布層を構成する繊維の繊維長は特に限定するものではないが、嵩高繊維シート層に進入し、嵩高繊維シート層変形時に摩擦帯電しやすいように、20mm以上であるのが好ましく、35mm以上であるのがより好ましく、50mm以上であるのが更に好ましい。一方で、繊維長が長すぎると、繊維が均一に分散することが困難になる傾向があり、結果として、捕集効率が悪くなる傾向があるため、150mm以下であるのが好ましく、110mm以下であるのがより好ましい。
【0053】
本発明の摩擦帯電不織布層は、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した層であるが、構成樹脂の異なる繊維の混合比率は効率的に摩擦帯電する比率であれば良く、繊維の組合せによって異なるため、特に限定するものではないが、繊維同士の摩擦によって帯電しやすいように、正に帯電する繊維本数と、負に帯電する繊維本数との比率が、1:0.5〜2であるのが好ましく、1:0.75〜1.5であるのがより好ましく、1:0.8〜1.2であるのが更に好ましい。例えば、好適であるポリオレフィン系繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、密度:0.9g/cm
3)と、アクリル系繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、密度:1.14g/cm
3)とが混在する場合、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維は質量比で、およそ39:61〜72:28であるのが好ましく、およそ46:54〜63:37であるのがより好ましく、およそ51:49〜62:38であるのが更に好ましい。
【0054】
なお、摩擦帯電不織布層が融着繊維を含んでいる場合であっても、繊維同士の摩擦によって帯電しやすいように、正に帯電する繊維本数と、負に帯電する繊維本数との比率が前記比率であるように、融着繊維が混在しているのが好ましい。一般的に、摩擦帯電不織布層の剛性を高めるには、摩擦帯電不織布層の15mass%以上を融着繊維が占めているのが好ましく、20mass%以上を融着繊維が占めているのがより好ましい。一方で、融着繊維量が多くなると、摩擦帯電に関与する繊維量が少なくなり、充分に帯電できない傾向があるため、融着繊維は摩擦帯電不織布層の60mass%以下であるのが好ましく、50mass%以下であるのがより好ましく、40mass%以下であるのが更に好ましい。
【0055】
本発明の摩擦帯電不織布層の目付は特に限定するものではないが、帯電量が多いように、ある程度の繊維量があるのが好ましいため、20g/m
2以上であるのが好ましく、30g/m
2以上であるのがより好ましく、40g/m
2以上であるのが更に好ましい。一方で、目付が高過ぎると、圧力損失が高くなる傾向があるため、200g/m
2以下であるのが好ましく、180g/m
2以下であるのがより好ましく、150g/m
2以下であるのが更に好ましい。特に、帯電量が多いように、摩擦帯電不織布層における、摩擦帯電に関与する繊維量は20g/m
2以上であるのが好ましく、30g/m
2以上であるのがより好ましく、35g/m
2以上であるのが更に好ましく、40g/m
2以上であるのが更に好ましく、45g/m
2以上であるのが更に好ましい。一方、摩擦帯電不織布層における、摩擦帯電に関与する繊維量は圧力損失が上昇しにくいように、200g/m
2以下であるのが好ましく、180g/m
2以下であるのがより好ましく、150g/m
2以下であるのが更に好ましい。
【0056】
また、摩擦帯電不織布層の厚さも特に限定するものではないが、嵩高繊維シート層だけではなく、摩擦帯電不織布層自体も厚さ方向に変形することによって、嵩高繊維シート層に進入していない摩擦帯電不織布層構成繊維同士も摩擦して帯電し、帯電量が多くなりやすいように、0.3mm以上であるのが好ましく、0.5mm以上であるのがより好ましく、0.7mm以上であるのが更に好ましく、1mm以上であるのが更に好ましい。一方で、形態安定性に優れ、汎用性に優れる三層濾過材であるように、3mm以下であるのが好ましい。
【0057】
更に、摩擦帯電不織布層の見掛密度は特に限定するものではないが、ある程度の繊維が存在しており、また、繊維同士の摩擦によって帯電する融通性を有するように、0.02〜0.20g/m
2であるのが好ましく、0.05〜0.10g/m
2であるのがより好ましい。
【0058】
このような摩擦帯電不織布層を構成する繊維は嵩高繊維シート層に進入しており、嵩高繊維シート層変形時(特に厚さ方向変形時)に、摩擦帯電するため、帯電量が減少しにくく、捕集効率の低下しにくい三層濾過材である。つまり、摩擦帯電不織布層と嵩高繊維シート層とを単に積層した場合のように、摩擦帯電不織布層を構成する繊維が嵩高繊維シート層に進入していない場合には、嵩高繊維シート層が変形したとしても、摩擦帯電不織布層を構成する繊維同士が摩擦により帯電しにくいのに対して、摩擦帯電不織布層を構成する繊維が嵩高繊維シート層に進入しているということは、摩擦帯電不織布層を構成する繊維が三層濾過材の厚さ方向に配向しているため、嵩高繊維シート層変形時に、摩擦帯電不織布層を構成する繊維同士が摩擦により帯電しやすい。
【0059】
なお、摩擦帯電不織布層を構成する繊維が嵩高繊維シート層に進入し、摩擦帯電不織布層構成繊維が嵩高繊維シート層構成繊維と絡合していると、摩擦帯電不織布層と嵩高繊維シート層とが剥離しにくいため好適な態様である。
【0060】
また、摩擦帯電不織布層を構成する繊維はいずれか一方の嵩高繊維シート層に進入していれば良いが、両方の嵩高繊維シート層に進入していても良い。更に、摩擦帯電不織布層を構成する繊維が嵩高繊維シート層に進入、及び/又はいずれか一方の嵩高繊維シート構成繊維が摩擦帯電不織布層に進入し、繊維同士が絡合していると、層間剥離が生じにくいため、好適な態様である。
【0061】
本発明の三層濾過材の目付は特に限定するものではないが、40〜400g/m
2であるのが好ましく、60〜360g/m
2であるのがより好ましく、80〜300g/m
2であるのが更に好ましく、90〜250g/m
2であるのが更に好ましく、100〜200g/m
2であるのが更に好ましい。
【0062】
更に、三層濾過材の厚さも特に限定するものではないが、厚さ方向に変形しやすく、帯電量が多くなりやすいように、1.1〜203mmであるのが好ましく、1.5〜50mmであるのがより好ましく、2〜30mmであるのが更に好ましく、2.5〜20mmであるのが更に好ましく、3〜10mmであるのが更に好ましく、3〜5mmであるのが更に好ましい。
【0063】
また、本発明の三層濾過材は、濾過面積が広く、圧力損失の上昇を抑制できるように、襞折りしてフィルタエレメントを形成するのが好ましいため、ある程度の剛性を有しているのが好ましい。より具体的には、JIS L 1913:2010の6.7.4に規定するガーレ法によって測定した剛軟度が1mN以上であるのが好ましく、2.5mN以上であるのがより好ましく、4mN以上であるのが更に好ましい。なお、試験片は30mm×40mmの大きさの長方形とし、30mmの辺をチャックに固定して測定する。
【0064】
本発明のフィルタエレメントは前述のような三層濾過材を襞折りした状態で備えたものである。そのため、剛性を有するとともに、摩擦帯電不織布層構成繊維同士が摩擦によって帯電しやすいため、帯電量が減少しにくく、捕集効率の低下しにくいフィルタエレメントである。なお、本発明の三層濾過材は剛性のあるものであるため、良好に襞折り加工を実施して製造できるフィルタエレメントである。更には、前述の三層濾過材は難燃性にも優れているため、難燃性に優れるフィルタエレメントである。
【0065】
本発明のフィルタエレメントは上述のような三層濾過材を使用していること以外は、従来のフィルタエレメントと全く同様であることができる。
【0066】
例えば、襞折り加工は、ジグザグ形状に折って、襞を形成できる限り限定されず、例えば、レシプロ式やロータリー式などのプリーツ加工機、ジグザグ形状に成形された押型でプレスする方法により実施することができる。
【0067】
また、襞折りした三層濾過材の外枠による固定は、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのホットメルト樹脂を外枠と三層濾過材との間に介在させることにより行うことができる。なお、外枠としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、各種樹脂、紙、或いは不織布(例えば、本発明の三層濾過材)からなる外枠を使用することができる。
【0068】
本発明の三層濾過材は、例えば、(1)構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した混在繊維ウエブを準備する工程、(2)限界酸素指数が20以上の繊維を含み、厚さ0.5mm以上、かつ前記混在繊維ウエブの目付の0.5倍以上の目付を有する嵩高繊維シートを2枚準備する工程、(3)前記混在繊維ウエブを嵩高繊維シート間に挟み込んで、三層シートを形成する工程、(4)前記混在繊維ウエブ構成繊維を嵩高繊維シートに進入させ、嵩高繊維シート層間に混在不織布層を有する、一体化三層シートを形成する工程、(5)前記一体化三層シートを洗浄し、油剤を取り除いた洗浄三層シートを形成する工程、及び(6)前記洗浄三層シートを厚さ方向に変形させ、摩擦によって前記混在不織布層を帯電させ、嵩高繊維シート層間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材を形成する工程、により製造することができる。このような製造方法は、一体化三層シートを形成した後に、油剤を取り除き、摩擦帯電しやすい状態とした後に、厚さ方向に変形させ、摩擦によって帯電させる方法であり、嵩高繊維シートと摩擦帯電不織布とを一体化させる際の熱や水分の影響を受けることなく製造することができ、しかも、搬送時等に厚さ方向に変形させることによって、帯電させることができるため、帯電量が減少しにくく、捕集効率の低下しにくい三層濾過材を製造することができる。また、2枚の嵩高繊維シートを使用しているため、剛性のある三層濾過材を製造することができる。更には、限界酸素指数が20以上の繊維を含む2枚の嵩高繊維シートで、混在繊維ウエブを挟み込んでいるため、難燃性に優れる三層濾過材を製造することができる。
【0069】
より具体的には、まず、(1)構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した混在繊維ウエブを準備する工程を実施する。このような混在繊維ウエブは、例えば、前述のような繊維を使用して、カード法、エアレイ法などの乾式法により形成することができる。なお、本発明の三層濾過材を構成する摩擦帯電不織布層は、前述のような繊維から構成することができるが、摩擦によって帯電しやすいように、ポリオレフィン系繊維とアクリル繊維とを含んでいるのが好ましいため、混在繊維ウエブ中に、ポリオレフィン系繊維とアクリル繊維とを含んでいるのが好ましい。また、摩擦帯電不織布層が融着繊維(以下、「帯電層用融着繊維」ということがある)を含んでいる場合には、ポリオレフィン系繊維又はアクリル繊維に替えて、又はポリオレフィン系繊維とアクリル繊維に加えて、帯電層用融着繊維を含んでいるのが好ましい。
【0070】
また、(2)限界酸素指数が20以上の繊維を含み、厚さ0.5mm以上、かつ前記混在繊維ウエブの目付の0.5倍以上の目付を有する嵩高繊維シートを2枚準備する工程を実施する。このような嵩高繊維シートは、例えば、前述のような限界酸素指数が20以上の繊維を使用して、カード法、エアレイ法などの乾式法により形成することができる。なお、本発明の三層濾過材を構成する嵩高繊維シート層は、繊維融着不織布からなるのが好ましいため、嵩高繊維シートは融着繊維を含む繊維ウエブ(以下、「嵩高用繊維ウエブ」と表記することがある)であるのが好ましい。
【0071】
なお、嵩高用繊維シートは2枚形成するが、これら嵩高用繊維シートは全く同じであっても良いし、限界酸素指数が20以上の繊維の樹脂組成、繊度、繊維長;嵩高用繊維シートの形成方法、繊維配合、目付、厚さ、見掛密度;の中から選ばれる、少なくとも一点で異なる嵩高用繊維シートであっても良い。
【0072】
次いで、(3)混在繊維ウエブを嵩高繊維シート間に挟み込んで、三層シートを形成する工程を実施する。このように、混在繊維ウエブを嵩高繊維シート間に挟み込むことによって、剛性に優れるとともに、難燃性に優れる三層濾過材を製造することができる。
【0073】
次いで、(4)混在繊維ウエブ構成繊維を嵩高繊維シートに進入させ、嵩高繊維シート層間に混在不織布層を有する、一体化三層シートを形成する工程を実施する。この混在繊維ウエブ構成繊維を嵩高繊維シートに進入させる方法は特に限定するものではないが、例えば、ニードル又は水流を作用させる方法を挙げることができる。これらの中でも、ニードルを作用させる方法であると、混在繊維ウエブ構成繊維を、摩擦帯電しやすい厚さ方向に、確実に配向させることができるとともに、嵩高繊維シートの嵩高さを損ないにくいため好適である。
【0074】
なお、ニードル又は水流を作用させることによって、一方の嵩高繊維シート構成繊維が混在繊維ウエブに進入し、絡合するとともに、混在繊維ウエブ構成繊維が他方の嵩高繊維シートに進入し、絡合するため、層間剥離しにくい三層濾過材を製造しやすい、という特長もある。
【0075】
また、一方の嵩高繊維シート側からニードル又は水流を作用させるだけではなく、他方の嵩高繊維シート側からニードル又は水流を作用させると、混在繊維ウエブ構成繊維が両方の嵩高繊維シートに進入し、絡合するため、両方の嵩高繊維シート層の変形によって摩擦帯電しやすく、また、層間剥離がより生じにくい。
【0076】
この好適であるニードル条件は特に限定するものではないが、混在繊維ウエブ構成繊維がいずれかの嵩高繊維シートに進入し、厚さ方向に配向するように、針密度30本/cm
2以上で作用させるのが好ましく、40本/cm
2以上で作用させるのがより好ましい。一方で、針密度が高すぎると、剛性が低下する傾向があるため、100本/cm
2以下で作用させるのが好ましい。
【0077】
なお、混在繊維ウエブ自体もニードルや水流等の作用によって絡合するなど、繊維同士が結合する場合が多いため、一体化後の一体化三層シートにおける、混在繊維ウエブに由来する層を混在不織布層と表現している。
【0078】
続いて、(5)一体化三層シートを洗浄し、油剤を取り除いた洗浄三層シートを形成する工程を実施する。この工程を実施することにより、後述の洗浄三層シートの厚さ方向への変形によって、効率良く、摩擦帯電させることができる。このように、一体化三層シートを形成した後に油剤を取り除いているため、油剤の付着した繊維を使用して混在繊維ウエブを形成できることから、油剤を取り除いた繊維を使用して混在繊維ウエブを形成する場合と比較して、繊維の開繊性に優れているため生産安定性に寄与するとともに、開繊機に対して除電器等の設置の必要がなくなるなど、装置構成を簡潔にできるという効果を奏する。
【0079】
この一体化三層シートの洗浄方法は特に限定するものではなく、例えば、アルカリ性水溶液、アルコール、水(温水又は熱水を含む)、又はこれらの混合溶液で一体化三層シートを洗浄することによって、油剤を取り除いて、洗浄三層シートとすることができる。なお、これら溶液を用いて、2回以上洗浄しても良い。その場合には、同じ溶液であっても良いし、異なる溶液であっても良い。
【0080】
そして、(6)洗浄三層シートを厚さ方向に変形させ、摩擦によって混在不織布層を帯電させ、嵩高繊維シート層間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材を形成する工程を実施して、本発明の三層濾過材を製造することができる。つまり、洗浄三層シートは混在不織布層構成繊維が進入した嵩高繊維シート層を有しており、この嵩高繊維シート層は嵩高であるが故に、厚さ方向に変形しやすいため、洗浄三層シートを厚さ方向に変形させると、嵩高繊維シート層が変形するが、この嵩高繊維シート層には、混在不織布層を構成する構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が進入しており、嵩高繊維シート層が変形する際に、進入した混在不織布構成繊維同士が摩擦帯電して、嵩高繊維シート層間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材を製造することができる。なお、両方の嵩高繊維シートに混在不織布層構成繊維が進入している場合には、嵩高繊維シートに進入した、いずれの混在不織布構成繊維も、摩擦によって帯電する。
【0081】
この洗浄三層シートを厚さ方向に変形させる方法は、混在不織布層構成繊維が摩擦帯電する限り、特に限定するものではないが、例えば、洗浄三層シートの厚さよりも狭い間隙を通過させる方法、洗浄三層シートの搬送方向を急激に変化させる方法、などを挙げることができる。
【0082】
より具体的には、洗浄三層シートの厚さよりも狭い間隙を通過させる方法として、
図1に模式的断面図を示すように、洗浄三層シートSの厚さよりも狭い間隙を有するように、若しくは間隙がない(ゲージ:0)ように配置された、一対のローラR
1、R
2間を通過させる方法、
図2に模式的断面図を示すように、洗浄三層シートSの厚さよりも狭い間隙を有するように、若しくは間隙がないように配置された、一対のプレートP
1、P
2間を通過させる方法、
図3に模式的断面図を示すように、洗浄三層シートSの厚さよりも狭い間隙を有するように、若しくは間隙がないように配置された、プレートP
1とローラR
2との間を通過させる方法、
図4に模式的断面図を示すように、洗浄三層シートSの厚さよりも狭い間隙を有するように、若しくは間隙がないように配置された、ローラR
1、R
2間、及びローラR
2、R
3間を通過させる方法、などを挙げることができる。これらの中でも
図1、4に示すようなローラのみを使用する方法であると、洗浄三層シートを損傷しにくいため好適である。
【0083】
なお、これらローラR
1〜R
2等によって形成される間隙は、洗浄三層シートの厚さよりも狭ければ良く、特に限定するものではないが、0.1mm以下であるのが好ましい。
【0084】
また、ローラR
1〜R
3の表面、プレートP
1〜P
2の表面は、洗浄三層シートにおける嵩高繊維シート層全体を厚さ方向に変形させることができるように、凹凸のない平滑面であるのが好ましい。
【0085】
なお、ローラR
1〜R
3として、表面に多数の針を有するローラを用いると、嵩高繊維シート層を厚さ方向へ変形させることができることに加えて、針が混在不織布層に進入し、混在不織布層構成繊維を効率的に動かし、繊維同士を擦らせることによって、帯電量の多い摩擦帯電不織布層を形成しやすいため好適である。
【0086】
更に、このような洗浄三層シートを厚さ方向に変形させることのできる装置は一組である必要はなく、更に帯電量を多くするために、二組以上を利用して、摩擦帯電させるのが好ましい。なお、二組以上の摩擦帯電装置を有する場合、同じ装置である必要はない。また、二組以上の摩擦帯電装置を有する場合、搬送方向の下流側に位置する摩擦帯電装置ほど、狭い間隙を有する装置とすると、より摩擦帯電量を多くすることができるため好適である。
【0087】
更に、ローラR
1〜R
3及び/又はプレートP
1〜P
2を体積固有抵抗値が10
12以上であるような絶縁体から構成すると、ローラR
1〜R
3及び/又はプレートP
1〜P
2と、嵩高繊維シート層に進入した混在不織布層構成繊維との摩擦によっても帯電するため、ローラR
1〜R
3及び/又はプレートP
1〜P
2は前記のような絶縁体から構成されているのが好ましい。
【0088】
他方、洗浄三層シートの搬送方向を急激に変化させる方法として、
図5に模式的断面図を示すように、ローラR
1に沿って、洗浄三層シートの搬送方向を90°変化させることによって、洗浄三層シートの厚さ方向に変形させる方法、図示していないが、
図5のローラR
1に替えてプレートを使用し、プレートに沿って、洗浄三層シートの搬送方向を90°変化させることによって、洗浄三層シートの厚さ方向に変形させる方法を挙げることができる。
【0089】
図5においては、洗浄三層シートの搬送方向を90°変化させることによって、摩擦帯電させているが、摩擦帯電する限り、90°の変化である必要はないが、搬送方向を変化させることによって、搬送方向変化前の洗浄三層シートの見掛け上の厚さ(無荷重下における厚さ)の50%以下の厚さに洗浄三層シートを変形させて、摩擦帯電させることのできる変化であるのが好ましい。
【0090】
このように搬送方向を変化させる支点として作用するローラ等の表面は、洗浄三層シートにおける嵩高繊維シート層全体を厚さ方向に変形させることができるように、凹凸のない平滑面であるのが好ましい。また、支点として作用するローラ等として、表面に多数の針を有するローラを用いると、嵩高繊維シート層を厚さ方向へ変形させることができることに加えて、針が混在不織布層に進入し、混在不織布層構成繊維を効率的に動かし、繊維同士を擦らせることによって、帯電量の多い摩擦帯電不織布層を形成しやすいため好適である。
【0091】
また、搬送方向を急激に変化させて洗浄三層シートを厚さ方向に変形させることのできる装置は一組である必要はなく、更に帯電量を多くするために、二組以上を利用して、摩擦帯電させるのが好ましい。なお、二組以上の摩擦帯電装置を有する場合、二組とも搬送方向を急激に変化させる装置である必要はなく、前述のような、洗浄三層シートの厚さよりも狭い間隙を通過させる装置と併用することもできる。また、二組以上の搬送方向を急激に変化させる装置を有する場合、搬送方向の下流側に位置する摩擦帯電装置ほど、厚さ方向における変形量を大きくすると、より摩擦帯電量を多くすることができるため好適である。
【0092】
更に、搬送方向を変化させる支点として作用するローラ等を、体積固有抵抗値が10
12以上であるような絶縁体から構成すると、ローラ等と嵩高繊維シート層に進入した混在不織布層構成繊維との摩擦によっても帯電するため、支点として作用するローラ等は前記のような絶縁体から構成されているのが好ましい。
【0093】
以上は、本発明の三層濾過材の基本的な製造方法であるが、前述の通り、嵩高繊維シート層は繊維融着不織布層からなるのが好ましいため、少なくとも一方の嵩高繊維シートとして融着繊維(以下、「嵩高用融着繊維」ということがある)を含む繊維ウエブ(嵩高用繊維ウエブ)を使用して一体化三層シートを形成した後、かつ摩擦により混在不織布層を帯電させて摩擦帯電不織布層とする前に、嵩高用融着繊維を融着させて、繊維融着不織布層からなる嵩高繊維シート層を形成するのが好ましい。つまり、一体化三層シートを形成する前に嵩高用融着繊維を融着させてしまうと、混在繊維ウエブ構成繊維を嵩高繊維シートに進入させた際の、混在繊維ウエブ構成繊維と嵩高繊維シート構成繊維との絡みが弱く、洗浄三層シートを変形させた際に帯電しにくくなる傾向があるとともに、混在不織布層と嵩高繊維シート層との剥離が生じやすくなる傾向があるためである。一方で、摩擦により混在不織布層を帯電させて摩擦帯電不織布層とした後に嵩高用融着繊維を融着させてしまうと、融着させる際の熱によって帯電量が少なくなる傾向があるためである。特に、洗浄する前の一体化三層シートの段階で嵩高用融着繊維を融着させると、一体化三層シートを洗浄した場合に、洗浄による負荷に耐え、形態を維持しやすいため好適である。
【0094】
この嵩高用融着繊維を融着させて繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層)とする方法は、嵩高用融着繊維が融着し、厚さ0.5mm以上の繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層)を形成できれば良く、融着条件は嵩高用融着繊維によって、その条件は異なるため、特に限定するものではない。この条件は嵩高用融着繊維に応じて、実験的に適宜設定できる。なお、加熱手段は、例えば、熱風ドライヤー、赤外線ランプ、加熱ロールなどで実施することができるが、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどの、固体による圧力が作用しない加熱手段であると、繊維融着不織布層の嵩高性を損なわないため好適である。
【0095】
なお、両方の嵩高繊維シートが嵩高用融着繊維を含んでいる場合、一方の嵩高繊維シートを構成する嵩高用融着繊維の融着に関与する樹脂と、他方の嵩高繊維シートを構成する嵩高用融着繊維の融着に関与する樹脂との融点差が10℃以内にあると、同時に両方の嵩高用融着繊維を融着させることができるため好適であり、融点差が0℃、又は融着に関与する樹脂が同じであるのが更に好ましい。
【0096】
更に、前述の通り、剛性に優れているように、摩擦帯電不織布層構成繊維として帯電層用融着繊維を含み、融着しているのが好ましいが、混在繊維ウエブが帯電層用融着繊維を含んでいる場合には、帯電層用融着繊維を含む混在繊維ウエブを使用して一体化三層シートを形成した後、かつ摩擦により混在不織布層を帯電させて摩擦帯電不織布層とする前に、帯電層用融着繊維を融着させて、混在不織布層を形成するのが好ましい。つまり、一体化三層シートを形成する前に帯電層用融着繊維を融着させてしまうと、混在繊維ウエブ構成繊維を嵩高繊維シートに進入させる際に、帯電層用融着繊維の融着が破壊されてしまい、帯電層用融着繊維を融着させたことによる剛性向上効果が半減してしまう傾向があるためである。一方で、摩擦により混在不織布層を帯電させて摩擦帯電不織布層とした後に帯電層用融着繊維を融着させると、融着させる際の熱によって帯電量が少なくなる傾向があるためである。特に、洗浄する前の一体化三層シートの段階で帯電層用融着繊維を融着させると、一体化三層シートを洗浄した場合に、洗浄による負荷に耐え、形態を維持しやすいため好適である。
【0097】
なお、帯電層用融着繊維を融着させて混在不織布層とする方法は、帯電層用融着繊維が融着すれば良く、融着条件は帯電層用融着繊維によって、その条件は異なるため、特に限定するものではない。この条件は帯電層用融着繊維に応じて、実験的に適宜設定できる。なお、加熱手段は、例えば、熱風ドライヤー、赤外線ランプ、加熱ロールなどで実施することができるが、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどの、固体による圧力が作用しない加熱手段であると、混在不織布層の嵩高性を損なわず、結果的に、嵩高な摩擦帯電不織布層を形成することができ、摩擦帯電不織布層の変形による帯電も利用しやすいため、好適である。
【0098】
以上のように、嵩高用繊維ウエブが嵩高用融着繊維を含んでいる場合、混在繊維ウエブが帯電層用融着繊維を含んでいる場合のいずれの場合であっても、一体化三層シートを形成した後で、摩擦により混在不織布層を帯電させる前に、嵩高用融着繊維及び/又は帯電層用融着繊維を融着させるのが好ましいため、一方の嵩高用繊維ウエブを構成する嵩高用融着繊維、他方の嵩高用繊維ウエブを構成する嵩高用融着繊維、帯電層用融着繊維の中から選ばれる2以上の融着繊維を含んでいる場合には、同時に融着させるのが、製造工程上、好適である。そのため、温度設定が容易であるように、含まれている2以上の融着繊維の融着に関与する樹脂の融点差が10℃以内であるのが好ましく、同じ融点を有するのがより好ましい。
【実施例】
【0099】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
【0100】
(芯鞘型融着繊維A)
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、共重合ポリエステル(融点:110℃)を鞘成分とする芯鞘型融着繊維A(繊度:22dtex、繊維長:64mm、限界酸素指数:20、ユニチカエステルT−4080)を用意した。
【0101】
(芯鞘型融着繊維B)
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、共重合ポリエステル(融点:110℃)を鞘成分とする芯鞘型融着繊維B(繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:20、ユニチカエステルT−4080)を用意した。
【0102】
(芯鞘型融着繊維C)
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、共重合ポリエステル(融点:110℃)を鞘成分とする芯鞘型融着繊維C(繊度:17dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:20、HUVIS社製、商品名:LMF)を用意した。
【0103】
(芯鞘型融着繊維D)
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、共重合ポリエステル(融点:110℃)を鞘成分とする芯鞘型融着繊維C(繊度:6dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:20、HUVIS社製、商品名:LMF)を用意した。
【0104】
(アクリル繊維)
アクリル繊維として、有機溶媒に溶解させた紡糸液を湿式紡糸したポリアクリロニトリル系アクリル繊維[ボンネル(登録商標)H815、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:18、三菱レイヨン製、密度:1.15g/cm
3]を用意した。
【0105】
(ポリプロピレン繊維)
ポリプロピレン繊維として、ウベニットウPP−NM(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:18、宇部日東化成株式会社製、密度:0.89g/cm
3)を用意した。
【0106】
(スパンボンド不織布)
スパンボンド不織布として、ポリエステルスパンボンド不織布であるマリックス(登録商標、ユニチカ製、目付:20g/m
2、厚さ:0.14mm)を用意した。
【0107】
(実施例1)
(1)アクリル繊維60mass%とポリプロピレン繊維40mass%とを混綿し(アクリル繊維本数:ポリプロピレン繊維本数=1.16:1)、カード機により開繊して、混在繊維ウエブ(目付:50g/m
2)を形成した。
【0108】
(2)芯鞘型融着繊維A(嵩高用融着繊維)65mass%と芯鞘型融着繊維B(嵩高用融着繊維)35mass%とを混綿し、カード機により開繊して、嵩高用繊維ウエブA(目付:50g/m
2)及び嵩高用繊維ウエブB(目付:50g/m
2)を形成した。
【0109】
(3)前記混在繊維ウエブを、嵩高用繊維ウエブA、B間に挟み込んで、三層シートを形成した。
【0110】
(4)前記三層シートの嵩高用繊維ウエブB側から、針密度40本/cm
2でニードルを作用させることにより、混在繊維ウエブを構成するアクリル繊維とポリプロピレン繊維の一部を嵩高用繊維ウエブAへ進入させるとともに絡合し、嵩高用繊維ウエブ層A、B間に混在不織布層を有する一体化三層シートを形成した。なお、嵩高用繊維ウエブBの構成繊維の一部が混在不織布層へ進入して絡合していた。
【0111】
(4’)前記一体化三層シートを温度150℃に設定した熱風ドライヤで、上部から熱風を通過させることにより、両表面の嵩高用繊維ウエブ層A、Bを構成する芯鞘型融着繊維A及びBの鞘成分のみを融着させ、続いて、熱ロール間(ゲージ:3mm)を通して、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A、B)間に混在不織布層を有する融着一体化三層シート(厚さ:3mm)を形成した。
【0112】
(5)前記融着一体化三層シートを温度70℃の温水で6秒洗浄した後、自然乾燥して、油剤を取り除いた洗浄三層シートを形成した。
【0113】
(6)前記洗浄三層シートを搬送しながら、ゲージ0の平滑なゴムロール間を通過させ、厚さ方向に変形させることにより、摩擦によって混在不織布層を帯電させ、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A、B)間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:150g/m
2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は嵩高繊維シート層Aに進入)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0114】
(実施例2)
芯鞘型融着繊維C85mass%と芯鞘型融着繊維D15mass%とを混綿し、カード機により開繊した繊維ウエブ(目付:50g/m
2)を、嵩高用繊維ウエブA、Bとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A、B)間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:150g/m
2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は嵩高繊維シート層Aに進入)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0115】
(実施例3)
芯鞘型融着繊維A65mass%と芯鞘型融着繊維B35mass%とを混綿し、カード機により開繊した繊維ウエブ(目付:30g/m
2)を、嵩高用繊維ウエブA、Bとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A、B)間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:110g/m
2、厚さ:2.4mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は嵩高繊維シート層Aに進入)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0116】
(比較例1)
(1)アクリル繊維60mass%とポリプロピレン繊維40mass%とを混綿し(アクリル繊維本数:ポリプロピレン繊維本数=1.16:1)、カード機により開繊して、混在繊維ウエブ(目付:50g/m
2)を形成した。
【0117】
(2)芯鞘型融着繊維A(嵩高用融着繊維)65mass%と芯鞘型融着繊維B(嵩高用融着繊維)35mass%とを混綿し、カード機により開繊して、嵩高用繊維ウエブA(目付:100g/m
2)を形成した。
【0118】
(3)前記混在繊維ウエブと嵩高用繊維ウエブAとを積層して、二層シートを形成した。
【0119】
(4)前記二層シートの混在繊維ウエブ側から嵩高用繊維ウエブA側に向かって、針密度40本/cm
2でニードルを作用させることにより、混在繊維ウエブを構成するアクリル繊維とポリプロピレン繊維の一部を嵩高用繊維ウエブAへ進入させるとともに絡合し、嵩高用繊維ウエブ層Aと混在不織布層とを有する一体化二層シートを形成した。
【0120】
(4’)前記一体化二層シートを温度150℃に設定した熱風ドライヤで、上部から熱風を通過させることにより、嵩高用繊維ウエブ層Aを構成する芯鞘型融着繊維A及びBの鞘成分のみを融着させ、続いて、熱ロール間(ゲージ:3mm)を通して、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A)と混在不織布層とを有する融着一体化二層シート(厚さ:3mm)を形成した。
【0121】
(5)前記融着一体化二層シートを温度70℃の温水で6秒洗浄した後、自然乾燥して、油剤を取り除いた洗浄二層シートを形成した。
【0122】
(6)前記洗浄二層シートを搬送しながら、ゲージ0の平滑なゴムロール間を通過させ、厚さ方向に変形させることにより、摩擦によって混在不織布層を帯電させ、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A)と摩擦帯電不織布層とを有する二層濾過材(目付:150g/m
2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は嵩高繊維シート層Aに進入)を形成した。この二層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0123】
(比較例2)
芯鞘型融着繊維A65mass%と芯鞘型融着繊維B35mass%とを混綿し、カード機により開繊した繊維ウエブ(目付:20g/m
2)を、嵩高用繊維ウエブA、Bとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A、B)間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:90g/m
2、厚さ:2.2mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は嵩高繊維シート層Aに進入)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0124】
(比較例3)
前記スパンボンド不織布(目付:20g/m
2、厚さ:0.14mm)を、嵩高用繊維ウエブA、Bに替えて使用したこと以外は実施例1と同様にして、スパンボンド不織布間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:90g/m
2、厚さ:1.28mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は一方のスパンボンド不織布層に進入)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0125】
(比較例4)
三層シートにニードルを作用させず、混在繊維ウエブを構成するアクリル繊維、ポリプロピレン繊維を、嵩高用繊維ウエブA、Bのいずれにも進入させなかったこと以外は、実施例1と全く同様にして、繊維融着不織布層(嵩高繊維シート層A、B)間に、摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:150g/m
2、厚さ:3mm)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0126】
(比較例5)
アクリル繊維100%をカード機により開繊した繊維ウエブ(目付:50g/m
2)を、嵩高用繊維ウエブA、Bとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、アクリル繊維不織布層(嵩高繊維シート層A、B)の間に摩擦帯電不織布層を有する三層濾過材(目付:150g/m
2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維はアクリル繊維不織布層に進入)を形成した。この三層濾過材の物性は表1に示す通りであった。
【0127】
(三層濾過材の評価)
(1)捕集効率の測定;
平板状の三層濾過材を有効間口面積0.04m
2のホルダーに、嵩高繊維シート層A側が上流側となるようにセットした後、粒径0.3〜0.5μmの大気塵(大気塵数:U)を三層濾過材の上流側に供給し、面風速10cm/sec.で空気を通過させた場合における、下流側における大気塵数(D)をパーティクルカウンタ(RION社製:形式KC−01C)で測定し、次式より算出した値を捕集効率とした。この結果は表1に示す通りであった。
捕集効率(%)=[1−(D/U)]×100
【0128】
(2)剛性の測定;
JIS L 1913:2010の6.7.4に規定するガーレ法によって、各三層濾過材又は二層濾過材の剛性を測定した。なお、試験片は30mm×40mmの大きさの長方形とし、嵩高不織布層Aが振り子Bと当接するように、30mmの辺をチャックに固定して測定した。この結果は表1に示す通りであった。
【0129】
(3)難燃性の評価;
JACA N0.11A−2003「空気清浄装置用ろ材の燃焼性試験難燃性試験」に規定する方法によって、難燃性を評価した。つまり、着炎しない又は着炎しても燃焼距離が35mm以下の場合を「○」、着炎し、燃焼距離が35mmを超える場合を「×」と評価した。なお、試験片は150mm×50mmの長方形とし、嵩高繊維シート層A側に火が当たるように設置して測定した。この結果は表1に示す通りであった。
【0130】
【表1】
【0131】
この表1の結果から、次のことがわかった。
(1)実施例3と比較例2との比較から、嵩高繊維シート層の目付が摩擦帯電不織布層の目付の0.5倍以上であれば、難燃性に優れている。
(2)実施例1と比較例1との比較から、摩擦帯電不織布層の両側に、嵩高繊維シート層が存在していると、難燃性に優れている。
(3)実施例3と比較例3との比較から、嵩高繊維シート層の厚さが0.5mm以上であると捕集効率が優れる。
(4)実施例1と比較例4との比較から、摩擦帯電不織布層を構成する繊維が嵩高繊維シート層に進入していると、捕集効率が高い。
(5)実施例1と比較例5との比較から、嵩高繊維シート層を構成する繊維として、限界酸素指数が20以上の繊維を含んでいると、難燃性に優れる。