(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン系樹脂中空成形体の中空部にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填し、加熱媒体を供給して該発泡粒子を相互に融着させてなる、ポリオレフィン系樹脂中空成形体からなる表皮材と、該表皮材の内部のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体とを有する、表皮材被覆発泡粒子成形体において、該表皮材の平均厚みが0.5mm以上2.5mm未満であり、該表皮材は意匠面を有しており、該発泡粒子成形体全体の見掛け密度が30〜90kg/m3であると共に、該発泡粒子成形体全体の見掛け密度(AD1)に対する、発泡粒子成形体における意匠面側の表皮材との界面から内方に5mmまでの表層部分の見掛け密度(AD2)の比(AD2/AD1)が、1.10〜1.30であることを特徴とする表皮材被覆発泡粒子成形体。
前記ポリオレフィン系樹脂中空成形体を構成するポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、該表皮材と前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体との剥離強度が3N/cm2以上20N/cm2以下である、請求項1または2に記載の表皮材被覆発泡粒子成形体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体(以下、単に成形体ともいう。)について詳細に説明する。本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体は、ポリオレフィン系樹脂中空成形体(以下、単に中空成形体ともいう。)の中空部にポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)を充填し、加熱媒体を供給して該発泡粒子を相互に融着させてなる、ポリオレフィン系樹脂中空成形体からなる表皮材と、該表皮材の内部のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体ともいう。)とを有するものである。具体的には、該表皮材被覆発泡粒子成形体は、ポリオレフィン系樹脂をダイから押出してパリソンを形成し、軟化状態のパリソンを金型キャビティ内でブロー成形して中空成形体を形成し、得られた中空成形体内にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填し、中空成形体内に挿入された加熱媒体供給排出ピン(以下、スチームピンともいう)から発泡粒子群の中にスチームなどの加熱媒体を供給し、発泡粒子を加熱、発泡、融着させてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を形成することにより得ることができる。
【0016】
本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体を構成する発泡粒子成形体は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を中空成形体内で型内成形することにより得られるものである。該発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体が挙げられる。該プロピレン系共重合体としては、プロピレンとエチレン又は/及び炭素数4〜20の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ブテンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体が例示され、具体的には、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の2元共重合体やプロピレン−エチレン−ブテン共重合体等の3元共重合体が好ましく例示される。また、プロピレン系共重合体中のプロピレン以外のコモノマー成分の割合は特に制限されるものではないが、該共重合体中のプロピレンに由来する構造単位が50重量%以上、更に70重量%以上、特に80重量%以上含有するものであることが好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂の中では、発泡粒子の二次発泡力を比較的コントロールし易いという観点からは、プロピレン−エチレン共重合体発泡粒子が好ましく、該共重合体中のエチレン含有量は1〜10重量%であることが特に好ましい。なお、該発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分構造単位が50重量%以上存在するものであり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上存在するものである。
【0017】
本発明の成形体が有するポリオレフィン系樹脂中空成形体(表皮材)は、ポリオレフィン系樹脂により構成されるものである。
該ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン成分構造単位が50重量%以上存在するものであり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上存在するものをいう。具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、その他に、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のオレフィンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体等も使用することができる。
【0018】
該中空成形体(表皮材)を構成する前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー系樹脂、或いはそれらの混合物等が挙げられる。
【0019】
該中空成形体(表皮材)を構成する前記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、或いはそれらの混合物等が挙げられる。
なお、該共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
【0020】
前記ポリオレフィン系樹脂の中では、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子と接着可能で、強度に優れる表皮材被覆発泡成形体を得ることができることから、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂の中でも、エチレン−プロピレンブロック共重合体が好ましい。なお、該エチレン−プロピレンブロック共重合体には、プロピレンの重合後期にエチレンを重合系に添加するなどして得られる、ポリプロピレンマトリックス中にエチレン・ポリプロピレンラバー(EPR)を介してポリエチレンのドメインが分散しているものや、ポリプロピレンマトリックス中にEPRのドメインが分散しているものも含まれる。
【0021】
また、前記ポリオレフィン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲において、その他の混合樹脂として、ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS)などのポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;ビスフェノール型ポリカーボネート(PC)などのポリカーボネート系樹脂や、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー等を含んでいても良い。その配合量としては、表皮材を構成する全樹脂中に20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0022】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、融点が120〜170℃で、メルトフローレイト(MFR)が、0.01〜10g/10分のものが、ブロー成形性の観点から好ましく使用される。
【0023】
なお、融点の測定は次のように行うものとする。
JIS K7121(1987)に基づき、試験片の状態調節(2)一定の熱処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。また、最も面積の大きな融解ピークが複数存在する場合は、それら複数の融解ピークの内、最も高温側の融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0024】
メルトフローレイト(MFR)の測定は、JIS K7210−1:2014に基づいて行うものとする。なお、ポリプロピレン系樹脂については試験条件(温度230℃、荷重2.16kg)、ポリエチレン系樹脂については試験条件(温度190℃、荷重2.16kg)に基づいて行う。
【0025】
前記ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂には、結晶化促進剤を配合することが好ましい。結晶化促進剤を添加することにより、ブロー成形時に中空成形体の賦形後冷却が十分に進んでいない状態であっても、後述するスチームピンを打ち込んで、発泡粒子成形体の型内成形ができるようになるので、成形サイクルを短くすることが可能となり、さらに金型形状再現性をより向上させることが可能となるため好ましい。
【0026】
該結晶化促進剤としては、芳香族リン酸エステル金属塩化合物及びソルビトール化合物が挙げられる。
【0027】
該芳香族リン酸エステル金属塩化物としては、例えばADEKA社から「アデカスタブNA−11」、「アデカスタブNA−27」、「アデカスタブNA−71」などの商品名で市販されているものが挙げられる。該ソルビトール化合物としては、例えば、Milliken社から商品名「Millad3988」として、三井化学株式会社から商品名「NC4」として、また新日本理化株式会社から商品名「ゲルオールMD」として市販されているものが挙げられる。
【0028】
これらの結晶化促進剤は2種以上の混合物として使用することもできる。また、その配合量は、中空成形体を形成するポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは、0.02〜0.7重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0029】
前記中空成形体を形成するポリオレフィン系樹脂には、前記結晶化促進剤の他に必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、導電性付与剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線防止剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、電磁波遮蔽剤、ガスバリヤー剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、その目的、効果が発揮し得る範囲で添加され、その添加量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、概ね10重量部以下が好ましく、より好ましくは5重量部以下、更に好ましくは3重量部以下である。
【0030】
本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体の形状に制限はなく、トラクター等の農業用機械、フォークリフト等の産業用機械、建設用機械等に用いられる外装部材などの種々の形状を採用することができる。
【0031】
本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体を構成する表皮材(中空成形体)の平均厚みは、0.5mm以上2.5mm未満である。該平均厚みがこの範囲内であれば、軽量性と機械的強度のバランスがとれた成形体となる。該平均厚みが薄すぎると厚みの均一性の調整が困難になるとともに、発泡粒子の凹凸が表皮材の表面に発生し易くなり、所望される美麗な意匠面が得られなくなる。かかる観点から、該平均厚みは0.7mm以上2.5mm未満が好ましく、1mm以上2mm以下がより好ましい。
【0032】
なお、該表皮材の平均厚みは、表皮材被覆発泡粒子成形体から少なくとも10箇所における表皮材の厚みを測定し、その算術平均値とする。但し、リブ部や角部などの大きく変形した部分は測定点としない。表皮材の平均厚みの測定方法としては、表皮被覆発泡成形体を切断してその表皮断面を厚みゲージなどにより直接計測して求める方法や、成形体を破壊せずに超音波厚み計などにより測定する方法などの従来公知の測定方法を採用することができる。
【0033】
本発明における中空成形体(表皮材)は、意匠面を有するものである。該意匠面は美感に優れていることから、該意匠面を有する表皮材被覆発泡粒子成形体が外装部材として用いられた機械等は、美感に優れたものとなる。なお、本発明において、意匠面とは、外装部材として使用される場合に、人の目に触れる面であって、美感に優れていることが望まれる表皮材の部分をいう。
【0034】
該意匠面は、金型表面転写性、金型形状再現性に優れていることが要求される。
本発明における金型表面転写性とは、金型の表面が有する意匠性(即ち、美感)が表皮材に転写されている程度をいう。金型表面転写性が阻害された成形体表面の具体例としては、例えば鏡面仕上げが施された金型で表皮材被覆発泡粒子成形体を製造した場合、金型表面転写性が低下すると表皮材の意匠面への鏡面転写が不十分となり、その鏡面仕上げが施された意匠面に蛍光灯などの映像を映すと、映像がぼやけて見えてしまう現象が挙げられる。
【0035】
本発明における金型形状再現性とは、成形時において金型形状が成形体の外形形状へ厳密に再現されている程度をいう。金型形状再現性が阻害された成形体表面の具体例としては、得られた成形体の表面に起伏するうねりが現れることが挙げられる。例えば鏡面に仕上げられた意匠面にうねりが現れると、蛍光灯などを映した際に、映像が湾曲して見えるので意匠性に劣ったものとなる。また、意匠面以外の金型形状再現性が低下する問題点としては、構造部材として使用する際に寸法に僅かなズレが生じることによって、他の構造部材との嵌め込みが不十分になったり、所望される位置に嵌めこむことができなくなったりすることが挙げられる。
【0036】
金型形状再現性は、金型形状の寸法に対して、得られた表皮材被覆発泡粒子成形体の寸法ズレを3D寸法測定を行うことによって評価される。3D寸法測定機器としては、例えばGOM社製ATOSIIITripleScan等が挙げられる。
【0037】
本発明の成形体を構造部材として用いる場合、金型形状再現性の低さが目視で捉えることができる程度に現れているものはもとより、寸法公差を3D測定して初めてわかる程度のものであっても問題が発生するおそれがある。
【0038】
本発明における意匠面の態様としては、鏡面に仕上げられたり、シボ形状に仕上げられたものが挙げられる。また、該意匠面には塗装が施されることが多く、塗装の種類としては、吹き付け塗装、ロールコーター塗装、焼き付け塗装、カーテン塗装、浸漬塗り、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、紫外線硬化塗装等が挙げられる。さらに、塗布後の乾燥・塗膜化の方法については、自然乾燥、焼き付け等の方法を用いることができ、塗料性状等によって適宜選択される。また、該意匠面には、フィルムインサート加飾、研磨加工、めっきなどの金属化加工が施されていてもよい。
【0039】
なお、塗装が施されて鏡面に仕上げられた意匠面の場合、金型形状再現性や金型表面転写性は、蛍光灯の光をあてることで容易に評価することができる。
【0040】
前記意匠面の最大高さ粗さ(Rz)は、10μm以下であることが好ましい。最大高さ粗さ(Rz)の下限に制限はなく、0μmが好ましいが、加工精度を考慮すると、通常5μm程度である。
【0041】
該最大高さ粗さ(Rz)は、JIS B0601:2013に準拠して、粗さ曲線要素の最大高さ粗さRz(μm)として測定される。測定装置としては、例えば株式会社小坂研究所製サーフコーダのSE1700αを使用することができる。
【0042】
本発明の成形体においては、発泡粒子成形体全体の見掛け密度(AD1)は30〜90kg/m
3であり、かつ、発泡粒子成形体全体の見掛け密度(AD1)に対する、発泡粒子成形体の意匠面を構成する表皮材と発泡粒子成形体との界面から内方に5mmまでの表層部分の見掛け密度(AD2)の比(AD2/AD1)が、1.10〜1.30である。見掛け密度(AD1)と比(AD2/AD1)が、これらの範囲内に調整されることにより、金型形状再現性と金型表面転写性とに優れる成形体となる。
【0043】
該見掛け密度(AD1)が小さすぎると、表皮材内部に発泡粒子を充填して型内成形を行う際のスチームにより、発泡粒子成形体が過度に収縮してしまい金型形状再現性、金型表面転写性が低下するおそれがある。一方、該見掛け密度(AD1)が大きすぎると、軽量性が損なわれる。かかる観点から、該見掛け密度(AD1)の下限は、35kg/m
3が好ましく、より好ましくは40kg/m
3、更に好ましくは45kg/m
3である。また、その上限は、80kg/m
3が好ましく、より好ましくは70kg/m
3、更に好ましくは60kg/m
3である。
【0044】
比(AD2/AD1)が前記範囲内であることは、表層部分の見掛け密度が発泡粒子成形体全体の見掛け密度より大きいこと、即ち、表層部分に対するスチームの供給量を少なくすることにより、表層部分の二次発泡が型内成形時に抑えられていることを意味する。比(AD2/AD1)が小さすぎる場合には、表層部分が多すぎるスチーム量で型内成形されたものであることから、発泡粒子の凹凸が成形体の表面に現れ易くなったり、表層部分の発泡粒子が発泡し過ぎて冷却後に収縮しやすくなったりして、意匠面の美感が損なわれるおそれがある。一方、比(AD2/AD1)が大きすぎる場合には、表層の発泡粒子の二次発泡性が低すぎて、型内成形時に発泡粒子により表皮材が金型に押し付けられる力が低くなりすぎて金型形状再現性、金型表面転写性に劣る意匠面となるおそれがある。
【0045】
また、該見掛け密度(AD2)は、33kg/m
3以上であることが好ましい。見掛け密度(AD2)が該範囲内であると、金型再現性及び機械的強度に優れる成形体となるので好ましい。一方、見掛け密度(AD2)の上限は、特に制限は無いが、概ね85kg/m
3程度である。
【0046】
本発明において、前記見掛け密度(AD1)、見掛け密度(AD2)の測定は次のように行う。発泡粒子成形体からそれぞれ測定試料を採取し、その重量W(g)を測定してから、水を入れたメスシリンダー内に金網を使用して試料を沈め、水位の上昇分の目盛から発泡粒子成形体の体積:V(L)を求め、発泡粒子成形体の重量:Wを体積:Vで除した値(W/V)を[kg/m
3]に単位換算することにより求める。
【0047】
なお、比(AD2/AD1)を前記範囲内とする方法としては、発泡粒子を中空成形体内に充填する際に圧縮充填を行うことと、スチームピンの蒸気吹出し口(以下、スチームピンスリットともいう。)の位置を調整することとを組合わせることが挙げられる。これについては、本発明成形体の製造方法の説明において詳述する。
【0048】
表皮材を構成するポリオレフィン系樹脂は、前記の通りポリプロピレン系樹脂が好ましく、その場合、該表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度は、表皮材被覆発泡粒子成形体としての強度に優れることから、3N/cm
2以上であることが好ましく、より好ましくは5N/cm
2以上である。剥離強度が、この範囲内であれば、表皮と発泡粒子成形体との接着度が適正であり、得られる表皮材被覆発泡粒子成形体の表面にうねりがなく、金型形状再現性、金型表面転写性に優れ、曲げ剛性にも優れる表皮材被覆発泡粒子成形体となる。また、剥離強度が20N/cm
2以下となるように発泡粒子が加熱されることによって、より金型形状再現性、金型表面転写性に優れる成形体とすることができる。かかる観点から、該剥離強度の上限は、15N/cm
2がより好ましく、10N/cm
2が更に好ましい。
【0049】
本発明において、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度の測定は次のように行う。表皮被覆発泡成形体から、直方体形状の発泡粒子成形体試験片(縦50mm、横50mm、成形体の厚み)を切り出し、その上下面(表皮面)を接着剤にて剥離強度測定用冶具に接着させ、テンシロンにて2mm/分の引張速度にて引張試験を行ない、最大の応力が示された値を剥離強度(N/cm
2)とする。
【0050】
次に、本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体の製造方法について詳しく説明する。該成形体は、前記の通り、軟化状態のパリソンを金型キャビティ内でブロー成形して中空成形体を形成し、得られた中空成形体内に発泡粒子を充填し、スチームなどの加熱媒体を供給し、型内成形を行うことにより得ることができる。
該方法において、中空発泡成形体を作製する場合、
図1に示すように、押出機(図示せず。)に付設されたアキュムレータ(図示せず。)を介してダイ3から、溶融させた前記ポリオレフィン系樹脂を筒状に押出してパリソン1を形成し、該パリソン1を対向して稼動可能な一対の分割金型2、2間に垂下させたのち、金型を矢印方向に移動して型締めし、空気導入管4からパリソン内へ空気を導入して金型形状が賦形された中空成形体を形成する。なお、賦形する際に空気導入管4からパリソン内へ空気を導入するとともに管5、5からパリソンと金型との間の空気を吸引することが好ましい。
【0051】
なお、分割金型の温度は高めに設定することが好ましい。具体的には、金型温度を70〜100℃に設定することが好ましく、75〜95℃とすることがより好ましい。金型温度が該範囲内であると、金型の表面形状を表皮材に転写させ易くなる。また、表皮がポリプロピレン系樹脂からなる場合には、発泡粒子と表皮材の接着が良好なものとなる。さらに、金型の表面が鏡面処理されている場合には、表皮材意匠面の最大高さ粗さ(Rz)を小さくすることができる。
【0052】
前記中空成形体の形成が終了したら、次いで、該中空成形体内にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を圧縮充填する。圧縮充填することにより、スチーム加熱時の発泡粒子の二次発泡力を大きくし、中空成形体を金型へ密着させる力を増大させることによって、中空成形体の金型表面転写性、金型形状再現性を大きく向上させることができ、外装部材として使用可能な表皮材被覆発泡粒子成形体が得られやすくなる。更に、該圧縮充填と、後述するスチームピンスリットの位置の設定とを組合わせることにより、前記比(AD2/AD1)を1.10〜1.30にすることができる。
【0053】
本発明における発泡粒子の圧縮充填においては、
図2に示すように複数のスチームピンを中空成形体10内に予め打込み挿入しておき、中空成形体10内に挿入された複数のスチームピン7、8からスチームを排気して、中空成形体内部の圧力を調整しながらポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填用フィーダー9から中空成形体内部へ圧縮充填する。前記ピン7、8および充填用フィーダー9はシリンダー6、6により可動する構成とされている。
【0054】
圧縮充填は、前記中空成形体の内部に発泡粒子を充填する際に、気体中の発泡粒子に通常より大きな気体圧をかけることによって行われ、これにより発泡粒子の押圧を大きくして、軟化状態の中空発泡成形体を金型内壁に強く押し付け密着させることができる。圧縮充填圧力の好ましい範囲としては、発泡粒子の見掛け密度にもよるが、好ましくは0.13〜0.30MPa(G)であり、更に好ましくは0.15〜0.25MPa(G)、特に好ましくは0.17〜0.25MPa(G)である。なお、前記(G)はゲージ圧を意味する。
【0055】
圧縮充填する際の圧縮比(発泡粒子成形体の密度/発泡粒子の嵩密度)の範囲は、1.3〜2.5が好ましく、より好ましくは1.3〜2.0である。
なお、該発泡粒子成形体の密度は、表皮を除く発泡粒子成形体から直方体試料を切り出し、該試料の重量を求めた後に該試料の外形寸法から求めた体積で除し、単位換算することによって求めることができる。
また、該発泡粒子の嵩密度は、水没法で測定された発泡粒子の見掛け密度を1.6で除したものである。発泡粒子の見掛け密度は、水を入れたメスシリンダー内に重量W(g)の発泡粒子群を投入し、該発泡粒子群の重量Wを該発泡粒子群の体積Vで除し(W/V)単位換算して求められる。
【0056】
なお、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、公知の方法によって製造することができる。例えば、オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器内の所要量の分散媒体(通常は水)中に、所望により界面活性剤を添加し、樹脂粒子を分散させ、発泡剤を圧入して加熱下に撹拌して発泡剤を樹脂粒子に含浸させ、所定時間経過後、高温高圧条件下の容器内から分散媒体とともに発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を低圧域(通常大気圧下)に放出して発泡させ、発泡粒子を得る、所謂分散媒放出発泡方法などによって製造することができる。
【0057】
中空成形体内への発泡粒子の充填が終了したら、次に、充填された発泡粒子群の中に複数のスチームピン7、8を打込み挿入し、スチームピン7、8からスチームを供給、排出することにより該発泡粒子群を加熱して発泡粒子を二次発泡させ、相互に融着させて発泡粒子成形体を形成し、冷却し、前記シリンダーを動作させて前記ピンおよびフィーダーを成形体から抜き、分割金型2を開いて成形体を取り出すことにより、表皮材被覆発泡成形体を得ることができる。
なお、本発明の成形体においては、比(AD2/AD1)を1.10〜1.30とすることが重要であり、この構成は、前記圧縮充填と、スチームピンスリットの位置の設定とを組合わせることにより達成することができる。スチームピンスリットの位置の設定については、後述する。
【0058】
前記スチームによる加熱は、挿入された複数のスチームピンの一方を供給側とし他方を排出側として、供給側からスチームを供給すると同時に、排出側を開放するか排出側から吸引を行うことによって行うことが好ましい。加熱方法としては、供給側と排出側を固定して一方向からのみ加熱を行う一方加熱法、あるいは一方を供給側とし他方を排出側として一度スチーム加熱を行った後、供給側と排出側とを交替してスチーム加熱を行う交互加熱法のどちらも採用することができる。発泡粒子成形体の各部位において均一に発泡粒子同士を融着させるためには、交互加熱法が好ましい。
【0059】
該スチームの供給は、通常、高圧のスチームをスチームチャンバーで所望の圧力に減圧調整し、この圧力を調整したスチームをスチームピンを通して中空成形体内へと供給することにより行われる。
【0060】
前記スチームピンの中空成形体内への挿入箇所及び挿入方向は特に限定されるものではないが、意匠面となる表皮材内面近傍の発泡粒子がスチームにより過度に加熱されないように、成形体の形状に応じて、中空成形体内へ挿入する箇所及び挿入方向が適宜決定される。本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体は意匠面を有することから、スチームピンの挿入跡が表皮材の意匠面に残ることを避ける必要があり、また、スチームピンの挿入数は少ないほど望ましく、スチームピンの挿入は一方向、或いは二方向から行うことが好ましい。
【0061】
図3及び
図4に、スチームピンの配置の例を説明する模式図を示す。図において、2は分割金型、11は型側面、12は成形空間部、13はスチームピンを示し、31は供給側スチームピン、32は排出側スチームピンをそれぞれ示す。成形型の一方向からスチームピンを挿入する場合には、
図3のように成形型の側面からスチームピンを挿入するか、
図4のように、分割型の一方の型面からスチームピンを挿入することができる。また、図示しないが、二方向からスチームピンを挿入する場合には、成形型の両側の側面から、スチームピン同士を対向させてスチームピンを挿入することや、両方の型面からスチームピン同士を対向させてスチームピンを挿入することもできる。
【0062】
図3は成形型の一方の側面から、スチームピンを挿入した状態を示す例であり、
図3では供給側のスチームピン31と排出側のスチームピン32とを交互に配した例を示す。
図3(1)は外観斜視図を示し、
図3(2)は、正面図を示す。
図3(3)は、
図3(2)におけるB−B線に沿う断面図を示し、金型の一方の側面に供給側のスチームピン31と排出側のスチームピン32が交互に配置された状態を示す。
図3(4)は、
図3(1)におけるA−A線に沿う断面図(金型のパーティング部での断面)を示す。
【0063】
図4は、分割型の一方の型面からスチームピンを挿入した状態を示す例である。
図3は供給側スチームピン31と排出側スチームピン32とを列毎に交互に配置した例であり、
図3(1)は、外観斜視図を示し、
図3(2)は、
図3(1)におけるA1−A1線に沿う断面図を示す。
図3(3)は、
図3(1)におけるB1−B1線に沿う断面図を示す。なお、図示しないが、供給側のスチームピンと排出側のスチームピンとを行毎に交互に配置してもよく、供給側のスチームピンと排出側のスチームピンとを市松模様状に交互に配置してもよい。
【0064】
スチームピンのスチーム供給排出口は、スチームピンの挿入方向が一方向である場合には、スチームピンの側面のみに設ければ良いが、スチームピンの挿入方向が相対向する二方向である場合には、側面のみではなくピンの先端にも供給排出口を設けることが好ましい。
【0065】
本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体の型内成形においては、中空成形体内の発泡粒子群に供給されるスチームの蒸気圧は、0.25MPa〜0.50MPa(G)であることが好ましく、さらに好ましくは0.30MPa〜0.45MPa(G)である。
【0066】
前記スチームピンの内径(口径)はスチーム供給量、スチーム排出量、スチーム流速が調整しやすいことから、2〜8mmが好ましく、2〜6mmがさらに好ましい。スチームピンの素材にもよるが、例えばスチームピンが鋼管である場合には、表皮被覆発泡成形体の成形時に必要な強度を確保するためには、スチームピンの肉厚は概ね2mm以上必要とされることから、スチームピンの直径は6.0mm以上であることが好ましく、8mm以上であることがより好ましい。一方、直径が大きすぎると成形体表面にスチームピンの痕跡が大きくなり、意匠性の面や耐衝撃性の面で不利になるため、スチームピンの外径は15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0067】
発泡粒子成形体の型内成形においては、予め空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガスで加圧することにより発泡粒子内圧を、0.01〜0.2MPa(G)に高めた発泡粒子を用いることが好ましい。この場合、ブタン等の有機ガスも使用できる。これらの中でも二酸化炭素を用いると内圧付与に要する時間が少なくて済むので、好ましい。内圧を高めた発泡粒子を用いることにより、成形の際、その発泡力により、表皮材を金型内面に押圧する力が大きくなるので、金型形状再現性、金型表面転写性を向上させることができる。
【0068】
発泡粒子成形体の各部位において、発泡粒子を均一に融着させるためには、供給側スチームピンと排出側スチームピンとの距離(ピッチ)を400mm以下とすることが好ましい。供給側スチームピンと排出側スチームピンとの相互間距離が小さければ小さいほど、発泡粒子成形体の部位ごとの融着率のバラツキを抑制できるので、その距離は350mm以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは300mm以下である。
【0069】
なお、スチームピン挿入跡は空隙部となるため、スチームピン間の距離が近すぎると表皮被覆発泡成形体内の空隙部が多くなり、成形体の機械的強度が低下するため好ましくない。かかる観点から、隣接する供給側スチームピンと排出側スチームピンの相互間距離の下限は150mmであることが好ましい。
【0070】
次に、スチームピンスリットの位置の設定について詳しく説明する。
本発明においては、スチームピンスリットと、意匠面となる表皮材内面との間隔が15mm以上となるようにすることが好ましい。このようにスチームピンを配置すると、意匠面を構成する表皮材近傍へのスチームの供給を、金型内部へのスチームの供給量に比較して少なくすることで発泡粒子の二次発泡を抑えることができるため、前記表層部分の見掛け密度(AD2)が小さくなりすぎることを防いで、前記比(AD2/AD1)を1.10〜1.30内にすることができる。同時に、表層部分の発泡粒子が発泡し過ぎることによる収縮を防いだり、表層部分と表皮材の界面にスチームが流れた跡が残ることによる、表面平滑性の低下を防ぐことができる。
【0071】
なお、意匠面となる表皮材内面との間隔を15mm以上とすることが好ましいことは、本発明者らが、うねりの原因が成形体製造時におけるスチーム供給にあると推察し、スチーム供給を行うスチームピンの位置を表皮材から遠ざけることによって、うねりの発生を抑制することが可能となることを見出したことに起因するものである。さらに、本発明者らは、従来の知見では、表皮からスチームピンの位置を遠ざけると表皮と発泡粒子間の接着性が低下してしまうが、発泡粒子を圧縮充填して発泡粒子の表皮への押付成形圧力を高くすることにより、表皮材がポリプロピレン系樹脂からなる場合に表皮と発泡粒子間の接着性も充分な表皮材被覆発泡粒子成形体を得ることができ、さらに、金型表面転写性、金型形状再現性を向上させることができることも見い出した。
【0072】
表層部分に供給するスチーム量を抑えると、通常は表層の発泡粒子の二次発泡性が低下し、表皮を金型内面に押圧する力が弱くなる。その結果、通常は金型形状再現性及び金型表面転写性も低下する傾向にある。しかし、表層部分の二次発泡を抑えても、前記したように、発泡粒子を圧縮充填することと、スチームピンスリットの位置を調整することとを組合わせれば、前記比(AD2/AD1)を1.10〜1.30とすることができ、金型形状再現性及び金型表面転写性を向上させることができる。また、金型温度の設定を高くすることによって、より金型形状再現性、金型表面転写性に優れる成形体とすることができる。
【実施例1】
【0073】
次に、本発明の表皮材被覆発泡粒子成形体について、実施例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0074】
中空発泡成形体の製造に用いた、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例1
内径65mmの押出機に、表1に示すポリプロピレン系樹脂「b−PP」を押出機に供給し、210℃で加熱、混練して溶融樹脂とした。
次に、該溶融樹脂を押出機に付設された210℃に調整されたアキュムレータに充填した。次いで、ダイを通して溶融樹脂を筒状に押出してパリソンとし、軟化状態の該パリソンを、ダイ直下に配置された縦730mm、横420mm、厚さ40mmの成形空間を有する分割型平板状金型間に配置し(金型の設定温度は80℃)、金型を型締めした。ついで、空気導入管から0.60MPa(G)の加圧空気をパリソン内に吹き込むと同時にパリソン外面と金型内面との間を減圧して、金型キャビティの形状が賦形された中空成形体(中空成形体の平均厚み2.0mm)を形成した。なお、成形金型は充填フィーダー(口径15mmΦ)およびスチームピン(口径8mmΦ)が設けられた表皮材被覆発泡成形体製造用装置を用いた。スチームピンの間隔は300mmとした。スチームピンスリットと表皮との間隔は15mmとなるように設定した。
【0077】
次いで、軟化状態の中空成形体内に、スチームピンを6本挿入し、該スチームピンの周壁部に設けられたスリットより中空成形体内の気体を排気して、中空成形体内部の圧力を0.20MPa(G)に調整しながら発泡粒子を圧縮充填した。圧縮充填は、発泡粒子充填フィーダーに貯えられた発泡粒子を、表2に示す発泡粒子圧縮充填圧力で、中空成形体に形成された発泡粒子充填孔を通して中空成形体内部に充填することにより行った。
なお、該発泡粒子としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体発泡粒子[融点145℃、エチレン含有量2.5重量%、平均粒子径3.3mm]を用いた。
【0078】
発泡粒子充填後、中空成形体内に挿入された6本のスチームピンのうち3本のスチームピン(A)よりスチームを吸引しながら、他方の3本のスチームピン(B)から0.36MPa(G)のスチームを10秒間供給した。次にスチームを供給していたスチームピン(B)から吸引しながら、スチームを吸引していたスチームピン(A)から0.36MPa(G)のスチームを8秒時間供給した。次に、全てのスチームピンから0.36MPa(G)のスチームを6秒間供給して発泡粒子相互を加熱融着させると同時に、中空成形体の内面と発泡粒子とを接着させた。
次に、金型を冷却し、スチームピンを抜き取ったのちに金型を開き、目的とする表皮材被覆発泡成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0079】
実施例2
金型温度を90℃に設定して成形した以外は、実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0080】
実施例3
表2に示す嵩密度の発泡粒子を用い、中空成形体内部の圧縮充填圧力を0.17MPa(G)に調整しながら、発泡粒子を圧縮充填し、圧縮比を1.4とした以外は実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0081】
実施例4
表皮材の平均厚みを1.5mmとした以外は実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0082】
実施例5
表皮材の平均厚みを1.0mmとした以外は実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0083】
実施例6
内径65mmの押出機に、表1に示す高密度ポリエチレン「HDPE」を、210℃で加熱、混練して溶融樹脂とし、中空発泡成形体を形成した以外は実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。なお、表皮と発泡粒子の基材樹脂が異なるため、剥離試験、表皮−発泡粒子成形体間の剥離強度は評価しなかった。
【0084】
実施例7
結晶化促進剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブNA−11)を表1に示すポリプロピレン系樹脂「b−PP」に0.05重量%となるように配合したポリプロピレン系樹脂を用いた以外は実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0085】
実施例8
嵩密度が58kg/m
3のプロピレン−エチレンランダム共重合体発泡粒子を用い、圧縮比を1.16とした以外は実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0086】
比較例1
中空成形体内部の圧力を0.12MPa(G)に調整しながら中空成形体の気体を排気して、発泡粒子を圧縮充填し、圧縮比を1.20とした以外は実施例3と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0087】
比較例2
スチーム供給口を表皮から5mmの位置に配置し、表皮材付近にスチームを導入しやすくした以外は、実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0088】
比較例3
金型温度を60℃として成形した以外は、実施例1と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0089】
比較例4
中空成形体内部の圧力を0.12MPa(G)に調整しながら中空成形体の気体を排気して、発泡粒子を圧縮充填し、圧縮比を1.09とした以外は実施例8と同様に表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。成形体の製造条件を表2に、得られた成形体の物性を表3に示した。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
表中、各種物性の測定、評価は次のように行った。
(表皮材樹脂の融点)
表皮材の融点は、JIS K7121(1987)に基づき、熱流束示差走査熱量計(DSC)により測定した。具体的には、試料樹脂3〜5mgを常温から200℃まで昇温し、その後直ちに10℃/分の冷却速度で40℃まで冷却し、次いで10℃/分の加熱速度で再度200℃まで加熱して得られる吸熱曲線において、得られる吸熱曲線ピークの頂点温度を融点とした。
【0093】
(表皮材樹脂のメルトフローレイト(MFR))
表皮材のメルトフローレイト(MFR)の測定は、JIS K7210−1:2014に基づいて行った。なお、ポリプロピレン系樹脂については試験条件(温度230℃、荷重2.16kg)、ポリエチレン系樹脂については試験条件(温度190℃、荷重2.16kg)にて、それぞれ測定した。
【0094】
(表皮材の平均厚み)
表皮被覆発泡粒子成形体の平均厚みの測定は、該成形体の長手方向中央部および長手方向両端部付近の計3箇所の長手方向に対する垂直断面(但し、表皮被覆発泡成形体の特殊な形状部分は避けることとする。)において、各垂直断面の表皮周方向に沿って等間隔に6箇所の垂直断面の厚み方向の厚さを、厚みゲージで直接計測することにより行い、得られた18箇所の厚みの算術平均値を表皮の厚みとした。
【0095】
(発泡粒子の嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、水を入れたメスシリンダー内に重量W(g)の発泡粒子群を投入し、該発泡粒子群の重量Wを該発泡粒子群の体積Vで除し(W/V)単位換算して発泡粒子の見掛け密度を求め、その発泡粒子の見掛け密度を1.6で除することによって発泡粒子の嵩密度を求めた。この操作を3回行いその平均を発泡粒子の嵩密度とした。
【0096】
(発泡粒子成形体全体の見掛け密度(AD1)、発泡粒子成形体表層部の見掛け密度(AD2)
発泡粒子成形体全体の見掛け密度(AD1)、発泡粒子成形体表層部の見掛け密度(AD2)の測定は、発泡粒子成形体からそれぞれ測定試料を採取し、その重量W(g)を測定してから、水を入れたメスシリンダー内に金網を使用して試料を沈め、水位の上昇分の目盛から発泡粒子成形体の体積:V(L)を求め、発泡粒子成形体の重量:Wを体積:Vで除した値(W/V)を[kg/m
3]に単位換算することにより求めた。それぞれ前記方法による操作を5回行い、その平均をそれぞれの見掛け密度とした。
なお、見掛け密度(AD1)の測定試料としては、表皮材被覆発泡粒子成形体の意匠面の平面部分からランダムに縦横100mm、成形体全厚みのものを切り出し、表皮材を取り除いたものを用い、見掛け密度(AD2)の測定試料としては、該見掛け密度(AD1)の測定に用いた試料をそのまま利用して、表皮材と発泡粒子成形体との界面から内方に5mmまでの表層部分を切り出したものを用いた。また、これらの測定試料は、メスシリンダーに入り易い大きさに適宜切断して測定用試料とした。
【0097】
(最大高さ粗さRz)
意匠面の最大高さ粗さRzの測定においては、得られた表皮材被覆発泡成形体の意匠面の中心部、および4隅部(R部分を除く)の計5箇所から測定用試験片を切り出し、その表皮に対して最大高さ粗さの測定を行い、各測定箇所における最大高さ粗さを算術平均することにより、最大高さ粗さRzを求めた。測定装置としては株式会社小坂研究所製サーフコーダのSE1700αを使用した。具体的には、水平な台に試験片を静置し、先端曲率半径が2μmの触針の先端を試験片の表面に当接させて、試験片を0.5mm/sにて押出方向に移動させ、触針の上下変位を順次測定することで表面粗さの値を測定した。試験片の移動距離で特定される測定長さは、カットオフ値の3倍以上の所定の長さに定めた。なお、カットオフ値は8mmとし、そのほかのパラメータは、JIS B0601:2013の規定に準拠して、粗さ曲線要素の最大高さ粗さRz(μm)を得た。
【0098】
(金型形状再現性)
得られた成形体が金型形状に対してどの程度変形しているかを、3D寸法測定機( GOM社製ATOSIIITripleScan)を用いて意匠面について測定し、次の基準で評価した。なお、使用した樹脂の収縮率を加味して算出した。
◎:意匠面の全ての箇所において最大寸法公差が0.5mm未満。
○:意匠面の少なくとも一箇所の最大寸法公差が0.5〜1.5mm未満。
×:意匠面の少なくとも一箇所の最大寸法公差が1.5mm以上。
【0099】
(金型表面転写性)
得られた表皮材被覆発泡粒子成形体の意匠面に吹き付け塗装を施し、塗装された意匠面に蛍光灯の光をあてたときに移りこむ反射像を目視で確認し、塗装外観を評価した。
○:反射像が鮮明である。
×:反射像がぼやけている。
【0100】
(曲げ強さ)
表皮被覆発泡成形体から縦420mm、横200mm、厚み;成形体全厚みの試験片を切り出した。この試験片を使用して、試験速度20mm/分、支点間距離350mm、支持台先端部の半径5mm、加圧くさび先端部の半径25mmとした以外はJIS K7221−2:2006に基づいて、曲げ強さを測定した。
【0101】
(表皮-発泡粒子成形体間の剥離強度)
表皮被覆発泡成形体から、縦50mm、横50mm、厚み;成形体全厚みの測定試料を切り出し、前記方法により剥離強度を測定した(n=3)。