特許第6347722号(P6347722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347722
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】微物採取用具及び微物の採取・鑑定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20180618BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   G01N1/04 H
   G01N1/04 B
   G01N1/28 U
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-223858(P2014-223858)
(22)【出願日】2014年11月3日
(65)【公開番号】特開2016-90351(P2016-90351A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】594206244
【氏名又は名称】株式会社エクシール
(74)【代理人】
【識別番号】100109597
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 章
(72)【発明者】
【氏名】大野 幸栄
(72)【発明者】
【氏名】宮木 香代
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113820(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0008536(US,A1)
【文献】 特開2015−068660(JP,A)
【文献】 特開2011−117915(JP,A)
【文献】 特開2007−139599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
犯罪現場等に存在する微物を粘着して採取する微物採取用具であって、
粘着樹脂のゲルシートが取着され、微物の採取前には前記粘着樹脂のゲルシートの上面に保護シートが被覆される採取部と、当該採取部の両端を起点に折り曲げて前記採取部を操作できる前記採取部の両側の操作部とからなる平板の本体部と、
前記採取部に被せられ、前記採取部に固定するための固定手段を有する蓋部と、
を備えることを特徴とする微物採取用具。
【請求項2】
蓋部は、下部に開口部を有する箱状体であって、開口部の両側に逆L字状の固定部が形成され、当該固定部の内側には、固定突起が形成され、また、固定部の下部の両側には突片が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の微物採取用具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微物採取用具を用いる微物の採取・鑑定方法であって、(1)採取部の両端を起点に操作部を折り曲げる過程と、(2)折り曲げられた前記操作部を操作して前記採取部の粘着樹脂のゲルシート上面で微物を粘着して採取する過程と、(3)微物の採取後に前記操作部を折り戻し、前記採取部に蓋部を被せ固定する過程又は微物の採取後に前記採取部に前記蓋部を被せ固定し、前記操作部を折り戻す過程と、(4)前記採取部から前記蓋部を取り外し、前記採取部を被検体として顕微鏡観察する過程又は前記採取部から前記粘着樹脂のゲルシートを取り外しDNA型鑑定をする過程と、を含むことを特徴とする微物の採取・鑑定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品点数が少なく簡単な構成で、簡易迅速に犯罪現場等に存在する微物を採取できる安価な微物採取用具及びこれを用いる微物の採取・鑑定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犯罪は悪質化、巧妙化してきており、犯罪現場等に存在する微物を採取し、これを鑑定する微物鑑識は犯人の特定や犯罪を立証する上で重要な鑑識活動と位置づけられる。また、個々人のDNAに異なる部分があることを利用し、DNA多型領域を検査するDNA型鑑定は技術の進歩により高い精度で個人鑑別が可能となった。そのため、犯罪を解決する証拠としてますますその重要性が増し、実施状況も年々増加の状況にあり、犯罪現場等におけるDNA型鑑定の資料の採取は重要となっている。
ところが、微物鑑識を行う場合、微物の採取量が十分でないと鑑定が困難となることがある。また、微物を採取する際に異物が混入すると正しい鑑定結果が得られないことや鑑定が困難となることがある。特に、DNA型鑑定は、採取対象の資料に他人の資料が混入すると判定が困難となる。したがって、微物の採取は十分な採取量の微物を採取し、また異物が混入することを防止して行うことが求められる。
【0003】
そのため、本願の出願人は、微物の採取箇所の形態に左右されず十分な採取量の微物を異物の混入を防止して簡易で容易かつ迅速に採取できる、粘着樹脂のゲルシートで微物を採取する微物採取用具及び微物の採取・鑑定方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−202797
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の微物採取用具は、微物を簡易で容易かつ迅速に採取するものであるものの、部品点数が多く構成が複雑であるため採取現場での作業工程が多くなるということがあった。また、部品点数が多いため、コストが高くなるということがあった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、部品点数が少なく簡単な構成で少ない作業工程で簡易迅速に微物を採取でき、また、部品点数が少なくコスト面でも有利な微物採取用具を提供すること及び当該微物採取用具を用いる微物の採取・鑑定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために種々検討を重ね本発明に想到した。
すなわち、本発明は、犯罪現場等に存在する微物を粘着して採取する微物採取用具であって、粘着樹脂のゲルシートが取着され、微物の採取前には前記粘着樹脂のゲルシートの上面に保護シートが被覆される採取部と、当該採取部の両端を起点に折り曲げて前記採取部を操作できる前記採取部の両側の操作部とからなる平板の本体部と、前記採取部に被せられ、前記採取部に固定するための固定手段を有する蓋部と、を備えることを特徴とする微物採取用具に関する。
【0008】
上記の発明は、採取部と操作部が平板に形成されているので、保管袋に収容する際に嵩張ることがなく持ち運びに都合良く、また、操作部の折り曲げが可能であるので、操作部を折り曲げて操作することにより平板のままで微物を採取する場合に比べ採取部の操作性がよく、微物を効率的かつ確実に採取できる。また、微物の採取後は採取部に固定手段を有する蓋が被せられ強固に固定されるので、微物の鑑定を行うまで採取部に異物が混入することを確実に防止できる。
ここで、微物とは、犯罪現場、その他犯罪に関連すると認められる場所、人及び物等に存在する微少、微細、微量なもので、例えば、繊維くず、塗膜片、ガラス片、土壌、花粉、種子等の資料や唾液、血液、血痕、体液、骨、組織片、爪、毛髪等のDNA型鑑定の資料となるものをいう。
【0009】
上記の発明において、蓋部は、下部に開口部を有する箱状体であって、開口部の両側に逆L字状の固定部が形成され、当該固定部の内側には、固定突起が形成され、また、固定部の下部の両側には突片が形成されてなることを特徴とする微物採取用具に関する。この発明は、突片を開口部側と反対の方向に引っ張り上げることにより、固定突起を採取部の裏側に強固に固定することができる。
【0010】
本発明は、上記の微物採取用具を用いる微物の採取・鑑定方法であって、(1)採取部の両端を起点に操作部を折り曲げる過程と、(2)折り曲げられた前記操作部を操作して前記採取部の粘着樹脂のゲルシート上面で微物を粘着して採取する過程と、(3)微物の採取後に前記操作部を折り戻し、前記採取部に蓋部を被せ固定する過程又は微物の採取後に前記採取部に前記蓋部を被せ固定し、前記操作部を折り戻す過程と、(4)前記採取部から前記蓋部を取り外し、前記採取部を被検体として顕微鏡観察する過程又は前記採取部から前記粘着樹脂のゲルシートを取り外しDNA型鑑定をする過程と、を含むことを特徴とする微物の採取・鑑定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微物採取用具によれば、部品点数が少なく簡単な構成で少ない作業工程で簡易迅速に微物を採取できるので、効率的な微物鑑識に寄与することができる。また、部品点数が少ないので安価に製造でき、微物鑑識の低コスト化に寄与することができる。さらに、粘着樹脂のゲルシートが粘着性及び微物の採取箇所の凹凸面への追随性に優れるので、微物の採取箇所の形態に左右されず、従来、微物の採取が困難であった箇所からも十分な採取量の微物を採取でき、微物鑑識の利用性を高めることに寄与することができる。
【0012】
本発明の微物の採取・鑑定方法によれば、操作部の折り曲げが可能であるので、操作部を折り曲げて操作することにより微物を効率的かつ確実に採取でき、微物鑑識の精度の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る微物採取用具の本体部の平面図である。
図2】本実施形態に係る微物採取用具の本体部の正面図である。
図3】本実施形態に係る微物採取用具の蓋部の下部斜視図である。
図4】本実施形態に係る微物採取用具の蓋部の上部斜視図である。
図5】本実施形態に係る微物採取用具の蓋部の底面図である。
図6】本実施形態に係る微物採取用具の本体部を折り曲げた状態を示す正面図である。
図7】本実施形態に係る微物採取用具の本体部に蓋部が被せられた状態を示す下部斜視図である。
図8】本実施形態に係る微物採取用具の本体部に蓋部が被せられた状態を示す上部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次いで、本発明を実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本実施形態に係る微物採取用具70は、採取部20と操作部30、31とからなる本体部10と、採取部20に被せられる蓋部50とを備えている。
【0016】
本体部10は、図1及び図2に示すように、合成樹脂で一体に形成された細長矩形の平板から構成され、中央に採取部20が形成されている。採取部20は、段部21が形成され、段部21の上部に粘着樹脂のゲルシートである透明なポリウレタンゲルシート25(株式会社エクシールコーポレーション社製(ゲルタックシート))が粘着により取着されている。なお、採取部20は、段部21を形成することなく、本体部10の平板の上に直接ポリウレタンゲルシート25を取り付ける構成としてもよい。
【0017】
上記のポリウレタンゲルシート25は、アルコール成分と有機ポリイソシアネートとを混合させたポリウレタン組成物であり、前記アルコール成分の合計量を100重量部とした時、官能基数2.4〜3.0、分子量3,000〜6,000のポリオールを99.5〜90重量部と、二級若しくは三級の高級モノアルコールを0.5〜10重量部含有するポリウレタン組成物のゴム硬度30以下の粘着性を有するポリウレタンゲルシート25である。このポリウレタンゲルシート25は、微物を採取する際の粘着性、採取後の微物の剥離性に優れ、また、柔軟であるので微物の採取箇所の凹凸面への追随性に優れている。
また、当該ポリウレタンゲルシート25は可塑剤が添加されていないので、特にDNA型鑑定において可塑剤が鑑定に及ぼす影響を回避できる。
【0018】
ポリウレタンゲルシート25を検査液に浸してDNAを抽出するDNA型鑑定の場合、ポリウレタンゲルシート25を採取部20から取り外す必要がある。この場合、ポリウレタンゲルシート25の採取部20からの取り外しが容易であれば鑑定の迅速化に資することができるので、ポリウレタンゲルシート25の下面の粘着力をポリウレタンゲルシート25の上面の粘着力より減弱させてもよい。粘着力を減弱させる方法として、例えば、ポリウレタンゲルシート25の下面に予め樹脂フィルムを貼着し、当該樹脂フイルムにポリウレタンゲルシート25より粘着力の弱い接着剤を塗布することにより行うことができる。
【0019】
採取部20に粘着される粘着樹脂のゲルシートは、上記のポリウレタンゲルシート25に限らず、粘着樹脂のゲルシートであれば特に限定がなく、シリコンゲルシート、ポリスチレンゲルシート、アクリルゲルシート、ポリ塩化ビニルゲルシートを例示できる。
【0020】
微物の採取前において、ポリウレタンゲルシート25の上面には、透明の合成樹脂フィルムで形成された保護シート26が被覆されている。保護シート26は、ポリウレタンゲルシート25の上面に被覆でき、微物を採取する際に取り外しができる限り素材には特に限定がない。合成樹脂フィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フイルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フイルム等の各種合成樹脂フイルム、ポリエチレンラミネート紙、クレコート紙、グラシン紙等の各種紙材を例示できる。
【0021】
採取部20の両側には、図1及び図2に示すように、対向して操作部30、31が形成されている。採取部20の両端に凹溝32、33が形成され薄肉になっているので、図6に示すように、操作部30、31は採取部20の両端を起点に折り曲げが可能となっている。また、操作部30、31には、滑り止め用の凸部34、35がそれぞれ形成されている。
【0022】
本体部10の素材は、上記の構成に形成できる限り特に限定がなく、合成樹脂の他、紙、金属等を例示できる。また、合成樹脂の種類についても特に限定がない。
【0023】
蓋部50は、図3図5に示すように、可撓性の合成樹脂で形成された下部に開口部51を有する箱状体から構成される。箱状体の開口部51の両側に逆L字状の固定部52、53が形成されている。固定部52、53の内側には、固定突起54、55が形成されている。また、固定部52、53の下部の両側には突片56、57が形成されている。蓋部50の素材は可撓性があれば特に限定がなく、合成樹脂に限定されない。
【0024】
蓋部50は、突片56、57を開口部51側と反対の方向に引っ張り上げれば、蓋部50は可撓性樹脂で形成されているので固定部52、53が外側方向に撓み、図7及び図8に示すように、固定突起54、55を採取部20の裏側に固定させることができる。
【0025】
上記のように構成される微物採取用具70は、異物が混入しないように予め保管袋(図示省略)に収容するのが好ましい。また、ポリウレタンゲルシート25に異物が混入することを防止するため、採取部20にポリウレタンゲルシート25を取り付ける作業及びポリウレタンゲルシート25の上面に保護シート26を被覆する作業はエアーシャワー付きのクリーンルーム内で行うことが好ましい。
【0026】
次いで、以下に本実施形態に係る微物採取用具70を用いる微物の採取・鑑定方法を説明する。採取現場において上記の保管袋から微物採取用具70を取り出し、操作部30、31を折り曲げる。次いで、折り曲げられた操作部30、31を操作して保護シート26が取り外されたポリウレタンゲルシート25を採取箇所に押し付け、ポリウレタンゲルシート25で微物を粘着して採取する。微物の採取後、操作部30、31を折り戻し、保管袋から取り出した蓋部50を採取部20に被せ固定する。次いで、本体部10の裏側の記載欄(図示省略)に立会人の署名等の立証措置を行う。そして、採取部20に蓋部50が被せられた微物採取用具70を保管袋に収容し、保管袋を封緘後、保管袋の取り出し口にシールを貼り、微物の鑑定まで開封されないことを担保する。微物鑑識を行う際、鑑識担当者は保管袋から取り出した微物採取用具70の採取部20から蓋部50を取り外し、微物が採取された採取部20を被検体として顕微鏡観察を行い、あるいは採取部20からポリウレタンゲルシート25を取り外しDNA型鑑定を行う。なお、微物の採取後、採取部20に蓋部50を被せて固定してから操作部30、31を折り戻してもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 本体部
20 採取部
25 ポリウレタンゲルシート
26 保護シート
30、31 操作部
32、33 凹溝
50 蓋部
51 開口部
52、53 固定部
54、55 固定突起
56、57 突片
70 微物採取用具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8