(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347729
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20180618BHJP
H02B 1/28 20060101ALI20180618BHJP
H02B 1/38 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H02B1/28 B
H02B1/38 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-239475(P2014-239475)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-103498(P2016-103498A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚原 正浩
【審査官】
征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−36454(JP,A)
【文献】
特開2008−218677(JP,A)
【文献】
特開平9−266607(JP,A)
【文献】
実開昭54−141803(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K5/00−5/06
H02B1/00−1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を上向きとして設置された箱本体と、
該箱本体に蝶番によって取付けられ、前記開口部を覆う上開き式の扉とからなり、
前記箱本体は、前記開口部の周縁を内側に折り曲げた水平辺と立上辺とからなる水切部を備え、
前記扉は、その四辺を垂直下方に折り曲げてなる垂下辺を備えた電気機器収納用箱であって、
前記蝶番とは反対側の垂下辺に、他の垂下辺の端部よりさらに垂直下方に延びる延設辺を形成するとともに、
該延設辺と前記水平辺との間に塞ぎ部材を設けたことを特徴とする電気機器収納用箱。
【請求項2】
前記延設辺の先端から、前記水平辺と平行に折り返された折返辺を形成し、
該折返辺と前記水平辺との間に、前記塞ぎ部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱。
【請求項3】
前記扉の閉塞時に、
前記延設辺と前記水平辺との隙間が、前記立上辺と前記扉の裏面との隙間よりも狭いことを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器収納用箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上開き式の扉を備えた電気機器収納用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器収納用箱には、太陽光システムの集電装置のように家屋の屋根上に設置されるものがある。このような電気機器収納用箱は、箱本体の開口部が上向きとなるよう寝かせて設置され、さらにこの開口部を覆う上開き式の扉が蝶番によって取付けられている。また、
図7に示すように、箱本体51には、その開口部の周縁を内側に折り曲げた水平辺53と、この水平辺53から垂直上方に立ち上がる立上辺54と、さらに立上辺54から外側に折り曲げた折曲辺55とからなる水切部56が設けられている。そして、折曲辺55と扉52の裏面との間に防水パッキン57を設けることにより、扉52の閉塞時に雨水の浸入を防止することができるものとしている。
【0003】
また、扉52にはその四辺を垂直下方に折り曲げてなる垂下辺58が形成されている。さらに、扉52の強度を向上させるために、蝶番と反対側の垂下辺58を内側に折り返して折返辺59を形成することが通常である。
【0004】
以上のような電気機器収納用箱においては、扉52の閉塞時に雨水が箱本体51内に浸入する恐れはない。しかしながら、扉52に形成した折返辺59と箱本体51に形成した水平辺53との間に雨水が浸入して、これにより扉52を開けた際に水滴が箱本体51内に落下する問題がある。この問題を解決するために、特許文献1及び
図7に示すように、折返辺59と水平辺53との間に非吸水性の塞ぎ部材60を設ける技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、塞ぎ部材60は、水滴がその表面に沿って流れ落ちることができる程度に折返辺59の外側に貼付する必要がある。加えて、特許文献1のように、従来塞ぎ部材60は厚く形成されていた。これらの理由により、塞ぎ部材60が外部から視認され易くなるため、鳥についばまれたり、または紫外線の影響を受け易くなることで、塞ぎ部材60が傷み、劣化が進んでしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−36454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、扉を持ち上げても水滴が箱本体内に落下することがなく、かつ、塞ぎ部材が傷む恐れのない電気機器収納用箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、開口部を上向きとして設置された箱本体と、該箱本体に蝶番によって取付けられ、前記開口部を覆う上開き式の扉とからなり、前記箱本体は、前記開口部の周縁を内側に折り曲げた水平辺と立上辺とからなる水切部を備え、前記扉は、その四辺を垂直下方に折り曲げてなる垂下辺を備えた電気機器収納用箱であって、前記蝶番とは反対側の垂下辺に、他の垂下辺の端部よりさらに垂直下方に延びる延設辺を形成するとともに、該延設辺と前記水平辺との間に塞ぎ部材を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気機器収納用箱において、前記延設辺の先端から、前記水平辺と平行に折り返された折返辺を形成し、該折返辺と前記水平辺との間に、前記塞ぎ部材を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の電気機器収納用箱において、前記延設辺と前記水平辺との隙間が、前記立上辺と前記扉の裏面との隙間よりも狭いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気機器収納用箱は、蝶番とは反対側の垂下辺に、他の垂下辺の端部よりさらに垂直下方に延びる延設辺を形成するものとした。さらに、この延設辺と水平辺との間に塞ぎ部材を設けた。この塞ぎ部材により、表面張力によって延設辺と水平辺との間に雨水が溜まることを防ぐことができるため、扉を持ち上げても水滴が箱本体内に落下する恐れがない。また、蝶番とは反対側の垂下辺に延設辺を形成したことにより、延設辺と水平辺との間隔が狭くなるため、両者の間に設ける塞ぎ部材を薄くすることができる。これにより、塞ぎ部材が鳥についばまれたり、紫外線の影響を受けることを防止することができ、塞ぎ部材の傷みや劣化を防ぐことができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、延設辺の先端から、水平辺と平行に折り返された折返辺を形成するものとし、この折返辺と水平辺との間に塞ぎ部材を設けるものとした。このように折返辺を形成するものとすれば、扉の強度を高めることができ、この折返辺と水平辺との間に塞ぎ部材を設けることで、請求項1と同様に、扉を持ち上げても水滴が箱本体内に落下することがなく、かつ、塞ぎ部材が傷む恐れのないものとなる。
【0013】
請求項3に係る発明は、延設辺と水平辺との隙間が、立上辺と扉の裏面との隙間よりも狭くなるものとした。これにより、延設辺と水平辺との間の雨水の浸入経路をより狭くすることができるため、扉を持ち上げても水滴が箱本体内に落下する恐れがないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態における扉閉塞時を示す全体斜視図である。
【
図2】第1の実施形態における扉開放時を示す全体斜視図である。
【
図7】従来の電気機器収納用箱の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
(第1の実施形態)
図1及び
図2において、1はその内部に電気機器を収納する箱本体、2は箱本体1に蝶番3によって取付けられた扉である。このような電気機器収納用箱は、箱本体1の開口部4が上向きとなるよう、家屋の屋根上に寝かせて設置される。扉2には取手5が設けられており、この取手5を持ち上げることで、
図2のように扉2が上向きに開かれる。
【0016】
図2のように、箱本体1には、その開口部4の周縁を内側に折り曲げた水平辺6と、この水平辺6から垂直上方に立ち上がる立上辺7と、さらに立上辺7から外側に折り曲げた折曲辺8とからなる水切部9が設けられている。そして、
図3のように、折曲辺8と扉2の裏面との間に防水パッキン10を設けることにより、扉2の閉塞時に雨水の浸入を防止することができるものとしている。この防水パッキン10としては、後述する塞ぎ部材14よりも弾性係数が小さい材質のものが好ましく、例えばEPDM等が用いられる。なお、防水パッキン10は扉2の裏面に設けるものとしたが、折曲辺8に設けても良い。また、水切部9は折曲辺8を備えたものでなくても良い。その場合には、立上辺7を防水パッキン10に密着させるものとする。
【0017】
図2及び
図4のように、扉2には、その四辺を垂直下方に折り曲げてなる垂下辺11が形成されている。さらに、蝶番3とは反対側、すなわち取手5が設けられた側の垂下辺11aには、他の垂下辺11bの端部よりさらに垂直下方に延びる延設辺12を形成するものとした。この延設辺12の先端からは、水平辺6と平行に内側へ折り返された折返辺13が形成されている。そして、この折返辺13と水平辺6との間に、好ましくは防水パッキン10よりも弾性係数が大きい塞ぎ部材14を設けるものとした。
【0018】
この塞ぎ部材14は、
図3のように、水滴がその表面に沿って流れ落ちることができる程度に、折返辺13の外側位置に貼付されるものである。なお、塞ぎ部材14は、折返辺13ではなく水平辺6に貼付されるものであっても差し支えない。
【0019】
以上のような構成とすることで、塞ぎ部材14により、表面張力によって延設辺12及び折返辺13と、水平辺6との間に雨水が溜まることを防ぐことができるため、扉2を持ち上げても水滴が箱本体1内に落下する恐れがない。また、蝶番3とは反対側の垂下辺11aに延設辺12を形成したことにより、延設辺12及び折返辺13と、水平辺6との間隔を狭くすることができる。そして、この隙間に塞ぎ部材14を設けることで、塞ぎ部材14を薄くすることができる。これにより、塞ぎ部材14が厚く形成されているがために、扉2の荷重によって、塞ぎ部材14が折返辺13の外側にはみ出してしまうという従来の問題点を解決することができる。したがって、塞ぎ部材14が鳥についばまれたり、紫外線の影響を受けることを防止することができ、これにより塞ぎ部材14の傷みや劣化を防ぐことができる。また、防水パッキン10よりも弾性係数が大きい塞ぎ部材を用いたり、防水パッキン10と弾性係数が同等の塞ぎ部材であったとしても扉2の裏面と折曲辺8の隙間より扉2の折返辺13と水平辺13の隙間を小さくするなどして、扉2を閉める際に防水パッキン10よりも塞ぎ部材14の方が高い圧力を受けるようにすれば、塞ぎ部材14自体が戸当たりブッシュとして機能するため、別途戸当たりブッシュを設ける必要もない。
【0020】
また、前述のように扉2に折返辺13を形成するものとすれば、扉2の強度を高めることができることから、大型の電気機器収納用箱にも対応可能となる。なお、この折返辺13を形成しない場合については、第2の実施形態として後述する。
【0021】
図3のように、延設辺12及び折返辺13と、水平辺6との隙間は、立上辺7及び折曲辺8と、扉2の裏面との隙間よりも狭くなるものとしている。このような構成とすれば、延設辺12及び折返辺13と、水平辺6との間の雨水の浸入経路をより狭くすることができるため、扉2を持ち上げても水滴が箱本体1内に落下する恐れがないものとなる。なお、前述の通り、延設辺12は、蝶番3とは反対側、すなわち取手5が設けられた側の垂下辺11aのみに形成している。加えて、
図5のように、延設辺12は垂下辺11aの長手方向すべてに亘って形成するものではなく、扉2の角部となる箇所には形成しないものとしている。これは、他の垂下辺11bにも延設辺12を形成した場合や、垂下辺11aの長手方向すべてに亘って延設辺を形成した場合には、延設辺12及び折返辺13と、水平辺6との間に水滴が溜まり、これにより錆が発生してしまう恐れがあるためである。
【0022】
(第2の実施形態)
図6には第2の実施形態を示す。
この実施形態は、延設辺12の先端を内側に折り返さないもの、即ち折返辺13を形成しない点で第1の実施形態と異なるものである。この実施形態においては、延設辺12の先端と水平辺6との間に塞ぎ部材14を設けるものとした。このような構成とすれば、特に扉2の強度が要求されない小型の電気機器収容用箱においては、曲げ工数が少なくなるため、加工がより簡単なものとなる利点がある。また、塞ぎ部材14は、圧入により扉2に設けることもできる。
【0023】
以上のように、第1の実施形態及び第2の実施形態の何れにおいても、塞ぎ部材14は少なくとも延設辺12と水平辺6との間に設けられるものである。このような構成により、扉2を持ち上げても水滴が箱本体1内に落下することがなく、かつ、塞ぎ部材14が傷む恐れのないものとなる。
【符号の説明】
【0024】
1 箱本体
2 扉
3 蝶番
4 開口部
5 取手
6 水平辺
7 立上辺
8 折曲辺
9 水切部
10 防水パッキン
11 垂下辺
12 延設辺
13 折返辺
14 塞ぎ部材