(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347737
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】ガス含有液状被包装物の充填包装方法
(51)【国際特許分類】
B65B 31/04 20060101AFI20180618BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20180618BHJP
B65D 81/20 20060101ALI20180618BHJP
B65B 9/08 20120101ALI20180618BHJP
B65B 7/06 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
B65B31/04 A
B65D33/38
B65D81/20 F
B65B9/08
B65B7/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-256755(P2014-256755)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-143131(P2015-143131A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-271392(P2013-271392)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−077046(JP,A)
【文献】
特開昭56−074417(JP,A)
【文献】
特開2006−219142(JP,A)
【文献】
特開2005−015029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/00−31/10
B65B 7/00− 7/28
B65B 9/00− 9/24
B65B 47/00−47/10
B65D 30/00−33/38
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋本体と、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを基端辺を除く周縁部分で融着接合して中央部分に注出通路を区画してなるセルフシール機能を有するフィルム状逆止注出ノズルとを具えてなり、前記包装袋本体の内表面に、前記逆止注出ノズルの基端部分の外表面を融着接合させて、該逆止注出ノズルを、包装袋本体の側部または上部へ突出させてなる包装袋内に、液状被包装物と複数種のガスのいずれか1種以上とを外気を侵入させることなく充填包装する方法であって、
前記ガスを直径1μm以上、50μm以下のマイクロバブルからなる微小気泡の状態にして液状被包装物中に分散させ、前記包装袋内への該微小気泡を含む液状被包装物の充填に当たって、包装袋内へ前記微小気泡を含む液状被包装物を充填しながら1対のヒートシールロールによって該包装袋を挟み込み、かつ該ヒートシールロール間の前記液状被包装物および微小気泡を絞り出しながらヒートシールする、液中シール充填により前記液状被包装物およびガスを外気を侵入させることなく包装袋内に充填包装することを特徴とするガス含有液状被包装物の充填包装方法。
【請求項2】
前記ガスは、窒素ガス、炭酸ガスおよびアルゴンガスのいずれか1種以上からなる不活性ガス、または酸素および希釈空気のいずれか1種以上からなる活性ガスであることを特徴とする請求項1に記載のガス含有液状被包装物の充填包装方法。
【請求項3】
前記気泡からなるガスの量は、大気圧下で包装袋内に充填した液状被包装物の体積の2〜30vol%であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス含有液状被包装物の充填包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状被包装物と、不活性ガスや滅菌ガス等のガスとを外気を侵入させることなく包装袋内に充填包装する方法に関するものであり、とくには、包装袋内への外気の進入を阻止するセルフシール機能を発揮するフィルム状逆止注出ノズルを具える包装袋に好適に用いられるガス含有液状被包装物の充填方法を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
液状被包装物を充填包装してなる包装用積層フィルムからなる包装袋については、袋内に被包装物と共に外気(空気)や塵埃等が封入されていると、袋内被包装物が酸化等されて、被包装物の食味が低下したり、袋内で菌類が繁殖等するおそれがある。そのため、液状被包装物を包装袋内へ空気等を封入させることなく充填する方法として、特許文献1のように被包装物を充填した後、袋内の空気を窒素にて置換する方法や、特許文献2に記載のように、被包装物を包装袋内に満杯に充填させ、この状態で横方向のシールロールにより余分の被包装物を押し出しながら横シールを施して封止する方法(以下、「液中シール充填」と言う。)が用いられている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、窒素ガスを包装袋内へ噴射した際に、該噴射に起因して、空気や塵埃が包装袋内や被包装物中に巻き込まれ、そのまま残留するおそれが高く、袋内に所望とするガスのみを封入することが不可能であり、そのため、充填包装機を設置する部屋全体を窒素ガス雰囲気等にするなど、設備が大掛かりになることや、ガスの使用量も多くコストが高くなるという問題点があった。
【0004】
また、特許文献2に記載の方法において、被包装物と所要のガスとの双方を充填しながら液中シール充填を行うと、ガスが液状の被包装物の上部に浮上し、包装袋内に所要量のガス又は液状被包装物を充填することができないおそれや、シール部分にガスが噛み込まれ、該ガスが、ヒートシールロールによる加熱によって膨張して大きな気泡となってひぶくれを起こし、シール部分が剥離したり、被包装物が漏れ出す等のおそれがあった。
【0005】
ところで、
特許文献3および4に開示されているように、近年、被包装物の充填時のみならず、包装袋の開封後においても袋内への空気等の侵入を阻止し、被包装物の酸化や汚損等を長期間にわたって抑制することのできる、逆止機能付きの注出ノズルを有する包装袋が提案されている。
【0006】
このような包装袋では、注出口が逆止機能を有するため、被包装物を繰り返し注出しても、袋内に外気が取り込まれることがなく、包装袋本体は、被包装物の吐出に伴って、被包装物の注出量に相当する体積分だけ収縮変形することになる。そのため、袋内被包装物の残量が多いときには、該被包装物の大きな水頭圧の作用下で、包装袋本体の包装用積層フィルムが表裏の方向に十分大きく離隔して注出通路が比較的迅速に開放され、包装体の傾動によって、注出ノズルの先端開口から被包装物をスムーズに注出することができるが、袋内の被包装物の残量が、当初の1/3以下程度にまで減少した場合には、包装袋本体の収縮ないしは潰れ変形に伴って、表裏の包装用積層フィルムどうしが強く密着して袋内の被包装物の自由な流れが阻止されてしまう。そのため、ドレッシングのように、使用に際して初期攪拌が必要な被包装物に使用するときは、包装体それ自体を揉みだすことが必要になって、迅速な注出ができないため、必然的に、被包装物が注出ノズルの先端開口から注出されるまでのタイムラグが大きくなると共に、収縮した袋内に残留する被包装物の全量を吐出させることが困難になるという問題点があった。
【0007】
このような包装袋本体の表裏の積層プラスチックフィルム同士の相互の密着力を緩和する方法としては、包装袋内へ液状の被包装物と共に、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の、被包装物に影響を与えないような不活性ガス、その他のガスを封入することが好適であるが、上記したように、従来の特許文献1および特許文献2に記載の方法では、外気を侵入させることなく、所要量の被包装物とガスとの双方を袋内に封入させることが非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−328601号公報
【特許文献2】特開平1−153410号公報
【特許文献3】特開2005−15029号公報
【特許文献4】特開2005−59958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、従来技術の抱える上記問題点を解決することを課題とするものであり、包装袋内へ所要量の液状被包装物と共に所要量のガスを、外気の侵入を完全に阻止しながら封入する方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、
包装袋本体と、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを基端辺を除く周縁部分で融着接合して中央部分に注出通路を区画してなるセルフシール機能を有するフィルム状逆止注出ノズルとを具えてなり、前記包装袋本体の内表面に、前記逆止注出ノズルの基端部分の外表面を融着接合させて、該逆止注出ノズルを、包装袋本体の側部または上部へ突出させてなる包装袋内に、液状被包装物と複数種のガスのいずれか1種以上とを外気を侵入させることなく充填包装する方法であって、
前記ガスを
直径1μm以上、50μm以下のマイクロバブルからなる微小気泡の状態にして液状被包装物中に分散させ、前記包装袋内への該
微小気泡を含む液状被包装物の充填に当たって、
包装袋内へ前記気泡を含む液状被包装物を充填しながら1対のヒートシールロールによって該包装袋を挟み込み、かつ該ヒートシールロール間の前記液状被包装物および微小気泡を絞り出しながらヒートシールする、液中シール充填
により前記液状被包装物およびガスを、外気を侵入させることなく包装袋内に充填包装することを特徴とするガス含有液状被包装物の充填包装方法を提案するものである。
【0011】
本発明のより好ましい解決手段は、
(1)
前記ガスは、窒素ガス、炭酸ガスおよびアルゴンガスのいずれか1種以上からなる不活性ガス、または酸素および希釈空気のいずれか1種以上からなる活性ガスであること、
(2)
前記気泡からなるガスの量は、大気圧下で包装袋内に充填した液状被包装物の体積の2〜30vol%であること、
である。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、ガスを気泡の状態にして液状被包装物中に分散させ、この状態で該液状被包装物を、液中シール充填によって包装袋内に充填包装することにより、外気の侵入を阻止しながら、液状被包装物と所要量のガスとを同時に包装袋内へ充填することができる。しかも、気泡からなるガスは、液状被包装物中に分散された状態にあるため、シールロールによって、液状被包装物とともに気泡もまた絞り出されることになるため、シール部内に気泡が噛み込まれることがない。
【0013】
なお、気泡の直径は、液状被包装物の粘度によって違いがあるが、15000μm以下とすることで、液状被包装物を、自動充填機を用いて液中シール充填する場合においても、気泡の浮上速度と液状被包装物の充填速度との相対速度差を利用して、気泡の浮上を、液状被包装物の充填よりも遅らせることができるので、所要量のガスを包装袋内に確実に封入することができる。
【0014】
その上、包装袋内に液状被包装物と共に充填された気泡からなるガスは、浮力によって次第に上昇し、最終的には液状被包装物の上部に溜まることになる。そのため、包装袋の注出口が、外気の袋内への侵入を阻止する逆止機能を有する場合においても、液状被包装物の上部に滞留したガスが、包装袋本体の表裏の包装用積層フィルムの相互の密着力を緩和し、表側の包装用積層フィルムと裏側の包装用積層フィルムとを大きく離隔変位させるとともに、袋内の被包装物の注出に当たって、前記ガスが、その占有スペース内への被包装物の流入を誘導(置換)し、被包装物の注出を円滑なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によって形成される包装体の一実施形態を起立姿勢で示す斜視図である。
【
図2】包装袋本体への逆止注出ノズルの取り付け方法を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る方法によって液状被包装物を充填包装するための液体充填装置の一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の一実施形態を、図面に示すところに基づいて説明する。
図1に示す包装袋1は、ベースフィルム層とシーラント層とを具える、二層もしくは三層以上の積層構造からなる包装用積層フィルムからなる包装袋本体2と、ベースフィルム層を挟んで両面にシーラント層を具える三層以上の積層構造の軟質積層フィルムからなる逆止注出ノズル3とから構成されてなり、包装袋本体2の側部内表面のシーラント層に、逆止注出ノズル3の基端部分の外表面を融着接合させることで、逆止注出ノズル3が、包装袋本体2の、図では上端部分の一側部から側方へ突出して設けられてなる。
この実施形態の包装袋1は、包装袋本体2と逆止注出ノズル3とから構成されているが、本発明の充填包装方法は、これに限定されるものではなく、包装袋本体部分のみからなる三方シールや四方シール形の包装袋や小袋、スパウト付の包装袋など、液状被包装物の液中シール充填による充填包装が可能な包装袋であれば好適に利用することができる。
【0017】
なお、逆止注出ノズル3は、一枚の平坦な軟質積層フィルムを折り返した状態、または、二枚の平坦な軟質積層フィルムを、シーラント層の対向姿勢で重ね合わせた状態で、基端辺を除く周辺部分で融着接合することで、中央部分に注出通路4を区画してなるものであり、このような逆止注出ノズル3は、先端部の融着接合部分5を引裂き除去して、注出通路4を開口させ、包装袋本体2内の液状被包装物の所要に応じた注出を、包装袋本体2の潰れ変形等に基づき、包装袋本体2内へ外気を吸い込むことなく許容する一方で、包装袋本体2の起立変位に基づく、包装袋1からの注出の停止に当たっては、逆止注出ノズル3の注出通路4内面を、液状の被包装物の毛細管現象等による濡れに伴う被包装物の薄膜の介在下で直ちに密閉して、包装袋本体2内への外気の侵入を阻止する、セルフシール機能を有していることが好ましい。
【0018】
ところで、この逆止注出ノズル3は、袋内被包装物のその後の注出に際しては、包装袋本体2を、逆止注出ノズル3が下方に向くように傾動させて、該注出ノズル3の注出通路4を液状被包装物の水頭圧等によって開放し、袋内被包装物を所要に応じて注出させることができるが、上記したように逆止注出ノズル3の先端開口は、そのセルフシール機能によって、自動的に密閉封止するため、袋内被包装物を繰り返し注出したとしても、包装袋1内へ逆止注出ノズル3を経て外気が入り込むおそれがないという特徴を有している。
【0019】
包装袋本体2への逆止注出ノズル3の取付け方法、および包装袋の製造方法としては、たとえば、
図2に示すような特開2008−55739号公報に記載されたと同様の装置や、既存の製袋機を使用することができる。
【0020】
図2では、多数の逆止注出ノズル3を予め形成したノズルフィルム6を、たとえば、それの巻回ロール7から、所要の速度で連続的もしくは間欠的に、好ましくは連続的に走行される包装袋本体用フィルム8に対して繰り出し走行させて、両フィルム6、8の等速走行下で、各個の逆止注出ノズル3の基端部外表面の一方のシーラント層を、包装袋本体用フィルム8の内表面のシーラント層に融着接合させ、次いで、ノズルフィルム6の不要部分を、逆止注出ノズル3から切り離して除去する。
それに続き、逆止注出ノズル3が融着接合された包装袋本体用フィルム8を、例えば、
図3に示す自動充填機に送る。この自動充填機は、原反ロールから間欠的もしくは連続的に繰り出された包装袋本体用フィルム8の走行を案内する複数本のガイドローラ9と、ガイドローラ9を通過した包装袋本体用フィルム8を、幅方向の中央部で、シーラント層が相互に対向するように半折りするフィルム折り返し部11と、このフィルム折り返し部11によって折り返された包装袋本体用フィルム8のそれぞれの遊端部分に、たとえば連続的に縦方向の融着接合部14を形成する縦シール機構12と、融着接合部14が形成された筒状の包装袋本体用フィルム8の内側へ、液状被包装物を間欠的もしくは連続的に充填する充填手段、図では充填ノズル13と、液状被包装物が充填された筒状の包装袋本体用フィルム8に、底部および頂部の横方向融着接合部のための融着接合部15を形成する横シール機構16とを具える。
なお、上記自動充填機は、横シール機構16(一対の横ヒートシールロール)によって、液状被包装物を絞り出しながら横方向に横シールして包装袋1の底部および頂部となる融着接合部15を形成することで(液中シール充填)、包装袋1内に液状被包装物を外気の侵入を阻止しながら充填してなる包装体18を製造することができるものである。
【0021】
また、図示の自動充填機では、上述したところに加え、一対の横シールローラからなる横シール機構16によって形成された融着接合部15を、再度挟持してその融着接合強度を高めるべく機能する第2の横シール機構16aと、間欠的もしくは連続的に製造されて連続する包装体18を一体ずつ、もしくは所要の複数体ずつに切断分離するカッター手段17とを具えてなる。
【0022】
このような包装体18においては、所要量の液状被包装物とともに、液状被包装物に影響を与えることのない窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスや静菌または滅菌効果を有するガスを、好ましくは、袋内被包装物の充填量(体積)の2vol%以上封入(以下、「封入ガス」と言う。)した場合、封入ガスが、包装体18内において液状被包装物の上方に溜まって、包装袋1の、逆止注出ノズル3の逆止機能によって密着した表裏の包装用積層フィルムを相互に離隔させるべく作用し、袋内被包装物の注出に当たって、前記封入ガスの占有スペース内へ袋内被包装物が流入して、該封入ガスと置換されることで、袋内被包装物の注出を円滑なものとすることができるという効果が期待できる。
【0023】
そこで、本発明では、
図3に示したように、包装袋本体用フィルム8を幅方向の中央部で、シーラント層が相互に対向する姿勢に半折りにし、遊端部を縦シール機構12によって縦シールしてなる筒状体内に、液状被包装物と共に、封入ガスの気泡を充填し、該気泡を液状被包装物中に分散させた状態で、横シール機構16(一対の横ヒートシールロール)によって、液状被包装物および微小気泡を絞り出しながら、横方向に横シールすることで、外気の侵入を阻止しながら、所定量の封入ガスを液状被包装物と共に包装袋1内へ充填包装することを提案するものである。
【0024】
なお、封入ガスの気泡は、充填ノズル13を介して供給された液状被包装物に対して、
図3に示すようにガス充填ノズル20から封入ガスを吹き込むことで液状被包装物中に発生させることができる。この場合、気泡の大きさは、ガス充填ノズル20の口径や吹き込み圧力を変更すること等により調整することができる。
また、気泡の発生方法としては、上記の他、充填ノズル13の前段に、アスピレーターなどの気泡発生装置(図示しない)を設け、予め液状被包装物中に封入ガスの気泡を発生させておき、該気泡を含んだ液状被包装物を充填ノズル13から包装袋1内へ充填してもよい。
【0025】
ところで、液状被包装物中における気泡の浮上速度は、ストークスの法則から求めることができ、例えば、液状被包装物が水である場合、直径が1mmの気泡では、1分間に数m浮上するのに対し、直径が10μmの微小気泡では、1分間に数mmしか浮上しないことがわかっている。そのため、封入ガスを、例えば、50μm以下の微小気泡として液状被包装物中に発生させた場合には、包装袋1内への充填に際し、気泡は発生位置からほとんど動くことがなく(浮上することがなく)、小さい状態のままに、液状被包装物中に分散した状態にある。そのため、この方法によれば、所要量のガスと液状被包装物とを同時に、シール部内に発泡を発生させることなく、包装袋1内へ充填包装することができる。
【0026】
また、
図3に示すように、ガス充填ノズル20の先端よりも上方位置に、一対の絞りロールまたは絞り板10を設けて、筒状の包装袋本体用フィルム8を絞り込み、その隙間を1〜10mm程度まで狭くすることが好ましく、これによれば、液状被包装物の送り速度を調整することができると共に、発生した気泡の浮上が抑制され、さらには気泡が筒状の包装袋本体用フィルム8の内表面に沿って包装袋1内へ充填されることになるため、気泡の浮上を効果的に抑制することができる。
【0027】
なお、気泡の大きさは、液状被包装物の粘度によって違いがあるが、発生時の気泡直径15000μm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5000μm、さらに好ましくは1〜500μm、さらにより好ましくは10〜100μmである。
一般に、発生時の気泡直径が50μm以下の微小な気泡は、マイクロバブルと呼ばれているが、このマイクロバブルは、通常の気泡が水中を急速に上昇して表面で破裂して消えるのに対し、水の表面張力によって圧縮されて縮小していき、水中で破裂して消滅すること、および表面がマイナスに帯電しているため、マイクロバブル同士は合体や吸収が起こりにくく、小さい状態のままを保ち、均一に液中に分散する、という特徴を有している。
そのため、本発明では、気泡の浮上および凝集を抑制する点で、微小気泡
は、50μm以下のマイクロバブルであ
り、それが1μm未満の極微小な気泡(ナノバブル)になると、その状態で水中に長期間(数か月にわたって)安定して存在してしまう可能性があり、気泡が浮上してガスが液状被包装物の上部に溜まるまでに長時間を要し、上記したような包装袋本体2の表裏の包装用積層フィルムの相互の密着力を緩和する効果を発揮できないおそれがあるため、気泡直径は1μm以上
とする。
【0028】
一方、気泡の大きさの上限値については、液状被包装物の充填速度(液体の送り速度)と気泡の浮上速度との相対速度差を利用して、気泡の浮上を、液状被包装物の充填よりも遅らせることができればよく、
図3に示すような自動充填機における一般的な充填速度から、気泡の大きさの上限値は15000μm以下であることが好ましいが、気泡の浮上速度は、液状被包装物の粘度や温度等によって異なってくるため、充填する液状被包装物の種類等、各種の条件によって適宜決定する。
【0029】
なお、封入ガスは、包装袋1内に充填する液状被包装物の種類によって選択することが好ましく、液状被包装物が空気によって酸化や汚損等しやすいものの場合(例えば、醤油のような調味液、油類、化粧品、医薬品等)には、窒素や炭酸ガス等の不活性ガスを用いることが好ましく、液状被包装物が一定量の活性ガスと接触することによっても品質の低下を招かないものの場合には、酸素や希釈空気等の活性ガスを用いてもよい。とくに、包装袋1が前記したような逆止注出ノズル3を有する場合には、該注出ノズル3のセルフシール機能によって包装袋内への外気の侵入が阻止されるため、包装袋3内での好気性菌の増殖を有効に抑制することができる反面、包装袋1内の溶存酸素量が少ないため、ボツリヌス菌やウエルシュ菌のような嫌気性菌が増殖するおそれがあるという問題点があった。この点に関しても、本発明によれば、液状被包装物と共に静菌効果を有する炭酸ガスや、炭酸ガスと窒素ガス等との混合ガスを封入することで液状被包装物のpHが下がり、嫌気性菌の増殖を有効に抑制することができるという効果が期待できる。
【0030】
ところで、封入ガスの充填量を、包装袋1内に充填した液状被包装物の2vol%以上とするのは、それが2vol%未満では、包装袋本体2内表面同士の密着力を緩和することができず、逆止注出ノズル3の注出通路4を十分に開放させることができないためである。一方、封入ガスを、包装袋1内に充填した液状被包装物の2vol%以上封入すれば、封入ガス量に関係なく、上記効果を有効に発揮することができる。
なお、封入ガス量が多い場合、取り扱い方や使用方法によって、逆止注出ノズル3の注出通路4から液状被包装物を注出する際に、封入ガスもまた注出通路4から流出する危険性があることから、封入ガス量の上限は、包装袋1内に充填した液状被包装物の30vol%以下とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上、この発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、これに限定されるものではなく所要に応じて適宜変更することができ、また、包装袋内に充填包装される液状被包装物としては、醤油のような調味液や、化粧品、医薬品、ホットパック食品、レトルト食品等の各種のものを好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 包装袋
2 包装袋本体
3 逆止注出ノズル
4 注出通路
5 融着接合部分
6 ノズルフィルム
7 巻回ロール
8 包装袋本体用フィルム
9 ガイロドール
10 絞りロールまたは絞り板
11 フィルム折返部
12 縦シール機構
13 充填ノズル
14、15 融着接合部
16 横シール機構
16a 第2の横シール機構
17 カッター手段
18 包装体
20 ガス充填ノズル