【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1は、従来技術のフレキシブル基板の構成およびパッケージとの接続方法を説明する図である。
図1の(a)は、フレキシブル基板の構成を示す図である。
図1の(a)に示すように、フレキシブル基板1は、一端にコネクタ3を備え、反対側のもう一端に、光伝送モジュールのパッケージ上の電極と半田接続される複数の接続電極2を持っている。既に述べたように、フレキシブル基板の本体はフィルム状の絶縁体をベースとして導体箔を形成して構成され、折り曲げ時の曲率半径に制限があるものの、その範囲内で折り曲げ湾曲させることができる。フレキシブル基板の本体は、
図1の(a)に示したような矩形状に限られず、光伝送モジュールとの接続形態に合わせて、様々な形状とすることができる。
図1の(a)では複数の電極2の各々には、半田付け性を向上するためにスルーホールが形成されている。したがって、
図1の(a)で見える面の反対側の面にも同じ形状の電極があり、スルーホールを通じて半田が、両面に行き渡る。スルーホールは必須ではないものの、光伝送モジュールなどの高信頼性が求められる場合には、半田付け部分の信頼性向上のために、スルーホールがあることが望ましい。
【0010】
上述のROSAモジュールでは、パッケージが小型化し、その一方で電気信号配線の数が増えてくると、1つのフレキシブル基板では足りず、2つのフレキシブル基板を使用して、光伝送モジュールの内外の電気接続を行う必要がある。
【0011】
図1の(b)は、2つのフレキシブル基板が接続された光伝送モジュールを側面から見た図である。2つのフレキシブル基板12、13が、光伝送モジュール10から突き出たテラス状の基板11の両面の導体層16、17上に、半田14、15によって半田付けされている。2つのフレキシブル基板12、13はそれぞれ
図1の(a)に示したような構造を持っており、各々のフレキシブル基板の複数の接続電極2を、テラス状の基板11の両面の各導体層16、17の上に順次半田付けすることによって
図1の(b)に示した構造が得られる。ここで半田付けの工程の詳細については述べないが、基板11の両面の電極上に半田を塗布し、瞬間加熱方式によりホットバー(ヒータチップ)を使って、順次、基板11の表裏の電極上にフレキシブル基板を実装する方法、手作業による半田付け方法などを利用できる。
【0012】
2つのフレキシブル基板を使って
図1の(b)のような構造を作製する場合、フレキシブル基板の数とともにコネクタの数が増える。これに加えて、半田付けによる電極の接続は基板11の両面の2箇所となり、構造が複雑となり実装工程も煩雑なものとなる。この問題を改善するために、1つのコネクタおよび分岐した2つの本体部を備えた分岐構造を持つフレキシブル基板を使用することができる。
【0013】
図2は、分岐構造を持つ従来技術のフレキシブル基板の構造を説明する図である。
図2の(a)は、分岐構造を持つフレキシブル基板の構造を展開したままの状態で示した図である。
図2の(b)は、分岐構造を持つフレキシブル基板をプリント基板上に実装するために折り畳んだ状態で示した図である。
図2の(c)は、折り畳んだ状態でC―C´線を通る断面をコネクタ側から見た図である。いずれの図でも、このフレキシブル基板が半田付け接続されるプリント基板は描かれていない。
【0014】
図2の(a)を参照すれば、分岐構造を持つ従来技術のフレキシブル基板は、一端に接続用のピンを搭載したコネクタ部23を備え、コネクタ部23からフレキシブル基板の本体部21が接続されている。本体部21は、
図1に示したフレキシブル基板と同様に、フィルム状の絶縁体をベースとして導体箔を形成して構成されている。第2の本体部22は、分岐部分22bと、折り畳んだときに本体部21と重ね合わせることができる重複部分22aとを備え、概ねL字型の形状を持つ。すなわち、本体部21の途中から、本体部21から連続的に形成され、概ね垂直に分岐した分岐部分22bと、分岐部分22bから連続して90度曲がり、本体部21と平行であって折り畳んだときに本体部21と重ね合わせることができる重複部分22aを有する。2つの本体部21、22は、コネクタ部23とは反対側の一端に複数の電極部29、28aをそれぞれ備えている。フィルム状の絶縁体をベースにした2つの本体部21、22の内部(内層)には、導体による配線およびGND部などが構成され、コネクタ部23の接続ピンと、半田付けされる複数の電極部29、28aの各々の端子との間を電気的に接続している。本体部21上において第2の本体部22aに分岐する場所には、接着領域25があり、接着領域25上にエポキシ系の接着剤を塗布したり、両面テープを張り付けたりする。
【0015】
図2の(b)は、
図2の(a)に示した展開した状態の分岐構造を持つ2つの本体部の内、第2の本体部22を図面上の右側から左側に手前に折り返して、2つの本体部の複数の電極29、28bが重なる位置関係となる状態にした図である。したがって、
図2の(b)では、
図2の(a)に示した展開した状態では見えていない第2の本体部22の裏面が現れている。
図2の(a)に展開した状態おいて第2の本体部22の先端にある複数の電極28aは、(b)の折り畳んだ状態では裏面の電極28bが見えていることになる。第2の本体部22は、本体部21から垂直に分岐した部分22bの途中で、フレキシブル基板の割れや損傷などが生じないように緩やかな湾曲部24を作りながら折り畳まれる。例えば、湾曲部24の曲率半径を0.6〜3.0mm程度に保った状態で折り曲げる必要がある。
図2の(c)は、
図2の(b)におけるc−c´線を通る断面をコネクタ部23の側から見た図である。湾曲部24は概ね円形をしており、本体部21と折り畳んだ状態の第2の本体部22が接着領域25において固定されている。接着領域25は、接着剤や両面テープの材料で充たされている。
図2の(b)には示されていないが、折り畳んだ状態の2つの本体部の先端部の間には、光伝送モジュールの基板11が挟み込まれることになる。
【0016】
図2に示した分岐構造を持つ従来技術のフレキシブル基板によれば、
図1に示した単純な形状のフレキシブル基板を2つ使用する場合と比べて、フレキシブル基板は1つで済むのでコストや取り扱いの面で有利である。しかし、2つの本体部の一方を折り畳んで
図2の(c)に示したような形態に固定する工程が必要となる。
【0017】
図2に示したような形態の分岐構造を持つフレキシブル基板を固定する場合に、さらなる小型化への対応や、固定機構の形状の制御性およびその信頼性の点で解決すべき問題があった。フレキシブル基板のベースとなる絶縁体は比較的柔軟なものであるが、フレキシブル基板の半田付け時の熱や、曲げによるストレスに対して信頼性を上げる必要がある。このため、フレキシブル基板の両面の表面には、かなりの剛性を持つ材料であるポリイミドのカバーレイ層(フィルム)を備えている。フレキシブル基板の基板材料として、この比較的固いポリイミドも用いられているため、その剛性により、折り畳んだ時に曲げを戻して開く力が強い。例えば
図2の(b)において、本体部21および第2の本体部22の向かい合う面同士を両面テープによって接続した場合、高温高湿の環境下に長時間おかれると両面テープの接着剤の接着力が次第に低下してゆく。
【0018】
図3は、分岐構造を持つ従来技術のフレキシブル基板における接着部の劣化の様子を説明する図である。
図3の上の図は、2つの本体部を折り畳んで接着領域25において接着固定をした状態を示している。接着領域25を固定した直後には、湾曲部24は、固定をした当初の概ね円形の断面形状を持つ。しかしながら、湾曲部24における曲げを戻して開く力のために、接着力の低下が進めば、
図3の下の拡大した図に示したように両面テープの端部が剥がれてギャップ26が生じてしまう。接着領域25の接着状態がさらに緩くなれば、ギャップ26が開いて折り畳み構造の湾曲部24が予め決めた範囲より広がってしまう。高密度で部品を実装した状況では、フレキシブル基板の湾曲部24の近傍が周囲部品に長時間接触することになり、部品を破損する恐れがある。
【0019】
100Gb/s ROSAモジュールのような小型化および高密度実装が要求される光伝送モジュールでは、フレキシブル基板の周囲のスペースをできる限り少なくする必要がある。フレキシブル基板の周囲にある部品との干渉を避けるためには、折り畳んで固定したフレキシブル基板が開かないように強く接着固定する必要がある。さらに、単に分岐した本体部を折り畳むだけでなく、折り畳んだ後でできる湾曲部の空間形状を周囲の部品にぶつからないような形状に制御することも求められている。
【0020】
また、
図2に示した分岐構造を持つ従来技術のフレキシブル基板では、フレキシブル基板の2つの本体部21、22を光伝送モジュールに半田付けする際に、別の問題も生じていた。上述の長期的な信頼性の問題に加えて、半田付けの工程において、半田付けの品質の劣化およびフレキシブル基板の電極の位置ずれの問題が生じていた。
図2に示した分岐構造を持つフレキシブル基板の場合も、2つの本体部21、22は、
図1の(b)に示したように光伝送モジュール10のテラス状の基板の両面に導体層上に半田によって半田付けされる。2つの本体部21、22の先端部にはそれぞれ複数の電極29、28aが設けられており、
図1の(a)に示したのと同様に、各々の本体部の複数の接続電極がテラス状の基板11両面の各導体層16、17の上に半田付けされる。
【0021】
この半田付け工程では、まず、一方の本体部の複数の電極がテラス状基板11の一方の面の電極と半田付けされる。その後、もう一方の本体部の複数の電極がテラス状基板の反対側の面の電極と半田付けされる。例えば、
図2の第1の本体部21の電極29をテラス状基板11の一方の面に半田付けした(工程1)後で、光伝送モジュールを前後に反転させて位置決めを行い(工程2)、テラス状基板の反対側の面に第2の本体部22の電極28aが半田付けされる(工程3)。上述の2つの半田付け工程においては、電極の位置決めのために何らかの半田付け作業用の冶具も使用される。
【0022】
上述の最初の本体部21の半田付け時(工程1)には、第2の本体部22は未だ固定されていないので半田付け作業中には何ら物理的な拘束もなく、比較的容易に位置合わせおよび半田付け作業が可能である。通常、半田付け作業は半田付けを行う基板の対象の面を上にして行うため、上述の光伝送モジュールの向きを反転させる作業(工程2)が必要である。すなわち、2番目の本体部の半田付け(工程3)を実行する前に、その準備工程が必要である。具体的には、半田付けが終り第1の本体部21がモジュールの基板の一方の面上に固定された状態で、モジュール全体を反転させ、剛性のあるフレキシブル基板の第2の本体部を緩やかに曲げながら基板11の反対側の面の電極と位置合わせを行う必要がある(工程2)。この一連の工程2〜工程3の間、最初の工程1で半田付けが既に終わった第1の本体部21の電極および接続部分(半田)には、かなりのストレスが加わる。特に、
図2に示したような分岐構造を持っている場合には折り曲げ作業の間に、第2の本体部の分岐方向であり複数の電極29、28a、28bの配列方向でもある横方向30にストレスが掛かる可能性が高い。通常、この複数の電極の配列方向30は、個々の電極についてみれば短辺方向(短手方向)となる。したがって、電極の短辺方向に掛かるストレスは、とりわけ、折り返し部分24に最も近い側の電極および半田付け部分に集中して加わることになる。
【0023】
上述のように、フレキシブル基板はカバーレイ層(フィルム)を備えている。このため、第2の本体部22の半田付け作業を行うために緩やかに曲げるだけでも、剛性によってその曲げを戻して開く力(ストレス)が生じる。このとき、半田付けが完了した第1の本体部の接続部分に対しては、接続部分を引き剥がすストレスが掛かることになる。この引き剥がしストレスは、第2の本体部の半田付けの作業中(工程3)にも常に掛かり続ける。工程3において、第2の本体部22の半田付けのために電極28a、28bが基板11と共に加熱される時、半田付けが既に終わった第1の本体部21をも同時に再加熱される。この再加熱によって、一旦は固定された半田接続部分が変形もしくは損傷したり、引き剥がしストレスのために電極位置がずれたりすることがあり、最悪の場合には第1の本体部21の半田が外れてしまう。このような引き剥がしストレスによる問題は、特に、折り返した第2の本体部の湾曲部24に近い側の電極で顕著となる。
【0024】
上述の引き剥がしストレスは、
図2の(a)に示した第2の本体部22の分岐方向、すなわち複数の電極の配列方向30に掛かり、個々の電極で見るとストレスにより弱い短辺方向に掛かることになる。通常、最初に半田付け(工程1)を行う第1の本体部21は主に高周波信号の配線のために使用される。確実に半田を溶かして半田付けを行い高周波信号の損失を減らすためには、より高い温度で先に実装する必要があるためである。2番目の半田付け作業(工程3)の再加熱時に生じる、既に固定された半田接続部分における電極の位置ずれや接続部分の変形や損傷は、フレキシブル基板を経由した高周波信号の伝送特性の劣化に繋がる。例えば、高周波信号用の電極は、繰り返し距離(ピッチ)が500μm、電極の幅が200μm程度であり、接続する位置に50μm程度のずれが生じても、高周波信号の損失が生じる。
【0025】
このように、基板の再加熱を伴う2番目の半田付け作業時に生じる電極の位置ずれや、接続部分の変形や損傷は、高周波特性の劣化を起こし、結果として光伝送モジュールの歩留まりの低下を生じさせる問題があった。
【0026】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、分岐構造を持つフレキシブル基板において信頼性が高く安定した折り畳み構造を実現できる構造を示すことにある。さらに、フレキシブル基板の実装作業中に生じる半田接続部分の電極の位置ずれや、接続部分の変形もしくは損傷を防ぐことができるフレキシブル基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分岐構造を持つフレキシブル基板において、コネクタ部と、前記コネクタ部に接続された第1の電気配線を含み、半田付けが可能な複数の第1の電極を有する第1の本体部と、前記コネクタ部に接続された第2の電気配線を含み、前記コネクタ部から、当該フレキシブル基板の長手方向である第1の方向に伸びる少なくとも1つの辺部と、前記少なくとも1つの辺部から、前記第1の方向に概ね垂直な第2の方向に伸び、半田付けが可能な複数の第2の電極を有する横行辺部とからなり、帯状に前記第1の本体部を囲むように構成された第2の本体部とを備え、前記第1の本体部および前記第2の本体部は、少なくとも前記コネクタ部内で相互に結合されており、前記第2の方向におい
て前記複数の第1の電極の構成領域の位置および前記複数の第2の電極の構成領域の位置が概ね一致し、
並びに、前記複数の第1の電極の長手方向および前記複数の第2の電極の長手方向が前記第1の方向と一致しており、前記第2の本体部の前記少なくとも1つの辺部
が前記第1の方向に沿って折り返
され、前記複数の第1の電極の
半田で接合した半田接合面および前記複数の第2の電極の
半田で接合した半田接合面が対向する位置関係
にあって、当該半田接合面を介して電気的に接続された接続構造を形成していることを特徴とするフレキシブル基板である。
【0028】
請求項2に記載の発明は、請求項1のフレキシブル基板であって、前記第1の本体部は概ね矩形
の形状であって、前記第2の本体部は、前記第1の方向に沿って概ね平行に伸びた2つの辺部と、前記2つの辺部から伸びた横行辺部とを備え、前記矩形の3つの辺を囲むように概ねコの字型またはU字型の形状を有しているか、または、前記第1の方向に沿って伸びた1つの辺部と、前記1つの辺部から伸びた横行辺部を備え、前記矩形の2つの辺を囲むように概ねL字型の形状を有していることを特徴とする。
【0029】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のフレキシブル基板であって、前記横行辺部の両端部の少なくとも一方に、前記第1の本体部に対して前記第2の本体部の前記複数の第2の電極の位置を
合わせるための拡張部を持つことを特徴とする。
【0031】
請求項
4に記載の発明は、請求項1乃至
3いずれかのフレキシブル基板であって、前記第1の電気配線は高周波電気信号配線であり、前記第2の電気配線は電源配線であることを特徴とする。
【0032】
請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至
4いずれかのフレキシブル基板であって、前記複数の第1の電極および前記複数の第2の電極の各々の電極は、スルーホールを備えることを特徴とする。好ましくは、前記複数の第1の電極および前記複数の第2の電極の各々の電極は、前記第1の方向について逆向きに構成されている。
また、本発明の別の態様は、電気配線が構成されたテラスを有する光伝送モジュールにおいて、請求項1乃至
6いずれかのフレキシブル基板の前記複数の第1の電極は、前記テラスの一方の面上に固定され、
前記複数の第2の電極は、前記テラスの他方の面上に固定され、前記第1の本体部の前記第2の方向の幅は、前記テラスの幅よりも小さいことを特徴とする光伝送モジュールである。