特許第6347761号(P6347761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347761
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】使い捨てエプロン
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/04 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   A41D13/04
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-80250(P2015-80250)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-199819(P2016-199819A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514174903
【氏名又は名称】株式会社ガルツ
(74)【代理人】
【識別番号】100148437
【弁理士】
【氏名又は名称】中出 朝夫
(72)【発明者】
【氏名】宮元 武壽
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−106534(JP,U)
【文献】 実開昭58−045317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体(1)における上端縁部において、両側縁部が連結した状態で内側に向けて切り込まれて、この連結部を基端とする所定幅の帯部(2)が胸覆い部(3)の上部に一体に形成されている一方、
この帯部(2)の縁部には、対向する外側切込(21)が当該帯部(2)の軸線に向けて所定間隔で設けられており、かつ、これら隣接する外側切込(21)の中間部位における帯部表面にはそれぞれ開口部(22)が形成されているとともに、
この帯部(2)の一部が幅方向に切断されて各先端が形成され、この先端に係合凸部(23)が形成されて構成されており、
前記帯部(2)は、外側切込(21)および開口部(22)が拡開して長手方向に伸長可能であって、かつ、前記係合凸部(23)が複数の開口部(22)の何れかに挿入されて係合可能である一方、
この帯部(2)が係合後に収縮方向に弾性復元することによって、前記胸覆い部(3)が首回りに接近してフィットできることを特徴とする使い捨てエプロン。
【請求項2】
帯部(2)の係合凸部(23)を構成する外側切込(21)が、基端に向けて斜め方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載の使い捨てエプロン。
【請求項3】
シート本体(1)と帯部(2)との一部が点状に連結されており、使用時に切断できることを特徴とする請求項1または2の何れか一つに記載の使い捨てエプロン。
【請求項4】
胸覆い部(3)の下端縁部が折り返されて側縁で止着され、ポケット(32)が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の使い捨てエプロン。
【請求項5】
胸覆い部(3)の上部に凹部(31)が形成されており、着用者の首回りに曲線的にフィットできることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の使い捨てエプロン。
【請求項6】
胸覆い部(3)の凹部(31)に対応する帯部(2)の先端側において外側切込(21)および開口部(22)が設けられていることを特徴とする請求項5記載の使い捨てエプロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てエプロンの改良、更に詳しくは、止着の位置決めが容易で、着用者の首回りに良好にフィットして確実に止着することができ、しかも、廃棄作業も頗る容易な使い捨てエプロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児や病人、老人などの食事や、外食において鉄板の油などが飛び散るような食事の際には、衣服が汚れないようにエプロンを着用することがあるが、洗濯の手間がかかることから、使い捨て式のものが多く用いられている。
【0003】
従来、使い捨て式のエプロンは、プラスチックや紙、不織布などのシート材で成形されており、単純構造のものでは、このエプロンを装着するために、エプロンの上部に設けられた紐部の端部同士を結ぶ必要があった。
【0004】
しかしながら、特にプラスチック製の場合は、素材が滑り易くて結び目が緩んでしまうという問題があり、かと言って、二回結んでしまうと強固に固定されてしまい、首元に締め過ぎたり緩め過ぎたりした場合に、再調節が困難になるという問題がある。
【0005】
また、使用後に廃棄する際にも、この結び目は固結びになっていて解くのに手間がかかるし、紐部を引きちぎろうとしても、素材が延伸してしまって中々思うように引きちぎれないという問題があった。
【0006】
更にまた、使い捨て式のエプロンによく採用されている構造としては、紐部の端部に粘着テープを配設して、端部同士をこの粘着テープで止着するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、かかる構造は、粘着テープの材料および設置にコストがかかるとともに、使用時に剥がした小さい剥離紙がゴミになって煩わしいという不満があり、また、粘着テープを一度貼り付けてしまうと剥がすことができず貼り直しが困難であるという問題もあった。
【0008】
このように、従来の使い捨てエプロンにおける紐部の止着構造にあっては、位置決めが困難であるために、狭く締め過ぎて着用者に不快感を与える場合があるし、逆に、緩くなり過ぎて首とエプロンとの間に隙間ができてしまい、そこに誤って食べ物が入り込んでしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−266816号公報
【特許文献2】特開平10−18112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の使い捨てエプロンに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、止着の位置決めが容易で、着用者の首回りに良好にフィットして確実に止着することができ、しかも、廃棄作業も頗る容易な使い捨てエプロンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、シート本体1における上端縁部において、両側縁部が連結した状態で内側に向けて切り込んで、この連結部を基端とする所定幅の帯部2を胸覆い部3の上部に一体に形成する一方、
この帯部2の縁部には、対向する外側切込21を当該帯部2の軸線に向けて所定間隔で設け、かつ、これら隣接する外側切込21の中間部位における帯部表面にはそれぞれ開口部22を形成するとともに、
この帯部2の一部を幅方向に切断して各先端を形成され、この先端に係合凸部23を形成して構成し、
前記帯部2は、外側切込21および開口部22が拡開して長手方向に伸長可能であって、かつ、前記係合凸部23が複数の開口部22の何れかに挿入されて係合可能である一方、
この帯部2が係合後に収縮方向に弾性復元することによって、前記胸覆い部3が首回りに接近してフィットできるようにするという技術的手段を採用したことによって、使い捨てエプロンを完成させた。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、帯部2の係合凸部23を構成する外側切込21を、基端に向けて斜め方向に形成するという技術的手段を採用することもできる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート本体1と帯部2との一部を点状に連結して、使用時に切断できるようにするという技術的手段を採用することもできる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、胸覆い部3の下端縁部を折り返して側縁で止着して、ポケット32を形成するという技術的手段を採用することもできる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、胸覆い部3の上部に凹部31を形成して、着用者の首回りに曲線的にフィットできるようにするという技術的手段を採用することもできる。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、胸覆い部3の凹部31に対応する帯部2の先端側において外側切込21および開口部22を設けるという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、シート本体における上端縁部において、両側縁部が連結した状態で内側に向けて切り込んで、この連結部を基端とする所定幅の帯部を胸覆い部の上部に一体に形成する一方、この帯部の縁部には、対向する外側切込を当該帯部の軸線に向けて所定間隔で設け、かつ、これら隣接する外側切込の中間部位における帯部表面にはそれぞれ開口部を形成するとともに、この帯部の一部を幅方向に切断して各先端を形成され、この先端に係合凸部を形成して構成したことによって、
前記帯部は、外側切込および開口部が拡開して長手方向に伸長可能であって、かつ、前記係合凸部が複数の開口部の何れかに挿入されて係合可能である一方、この帯部が係合後に収縮方向に弾性復元することによって、前記胸覆い部が首回りに接近してフィットさせることができる。
【0019】
したがって、本発明の使い捨てエプロンによれば、止着の位置決めが容易で、着用者の首回りに良好にフィットして確実に止着することができる。
【0020】
また、本発明の使い捨てエプロンは、係合凸部を開口部の何れかに挿入するだけで良いので、紐部を結ぶ必要がなく、誰でも簡単に着用することができる。
【0021】
更にまた、別部材を使用せずに係合止着できるので、粘着テープ式のように、使用時に剥がした小さい剥離紙がゴミになって煩わしいということがない。
【0022】
しかも、使用後には、多数形成されている外側切込21を切り口として帯部を簡単に切断して取り外すことができるため、廃棄作業が頗る容易であることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンを表わす全体正面図である。
図2】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンの使用状態を表わす部分正面図である。
図3】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンの使用状態を表わす部分正面説明図である。
図4】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンの変形例を表わす部分正面図である。
図5】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンの変形例を表わす部分正面図である。
図6】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンの変形例を表わす部分正面図である。
図7】本発明の第1実施形態の使い捨てエプロンの変形例を表わす部分正面図である。
図8】本発明の第2実施形態の使い捨てエプロンを表わす全体正面図である。
図9】本発明の第2実施形態の使い捨てエプロンの使用状態を表わす部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図7に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものはシート本体であり、このシート本体1は、薄手のシート状部材であって、プラスチックや紙、不織布などの材質を選択することができる。本実施形態では、成形性の良さからプラスチック(特に、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂)を採用し、また、略矩形のものを採用する。
【0025】
また、符号2で指示するものは帯部であり、符号3で指示するものは胸覆い部であって、帯部2は前記シート本体1に上部に形成される部位である一方、胸覆い部3は前記シート本体1に下部に形成される部位である。本実施形態では、この胸覆い部3の下端縁部を折り返して側縁で止着して、ポケット32を形成することができる。このポケット32は使用時に裏側から前面側にめくって折り返すことにより、前面で拡がって受け部分が形成されるように構成されている。
【0026】
しかして、本実施形態の使い捨てエプロンを構成するにあっては、まず、シート本体1における上端縁部において、両側縁部を連結した状態で内側に向けて切り込んで、この連結部を基端とする所定幅の帯部2を一体に形成する。本実施形態では、シート本体1における上端縁部は略直線状であり、所定間隔をおいてそれに平行した直線状の切り込みを入れることにより、一定の幅の帯部2を形成することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、着用者の首回りに曲線的にフィットさせるために、胸覆い部3の上部に凹部31を形成しているため、この場合は帯部2の先端が幅広になる。
【0028】
次に、この帯部2の縁部には、対向する外側切込21・21を当該帯部2の軸線に向けて所定間隔で設ける。本実施形態では、外側切込21を縁部に対して直角になるように形成する。そして、これら隣接する外側切込21の中間部位における帯部表面にはそれぞれ開口部22を形成する。本実施形態の外側切込21および開口部22は、略直線状に形成する。
【0029】
この際、外側切込21をできるだけ帯部2の軸線近くまで形成するとともに、開口部22も縁部近くまで形成することによって、帯部2の伸び代が作出されるのであるが、破断のおそれや強度および弾性復元力の低下が生じないようにするためには、外側切込21は帯部2における全幅の3〜4割程度の長さが好ましく、開口部22は帯部2における全幅の7〜8割程度の長さが好ましい。
【0030】
そして、この帯部2の一部を幅方向に切断することによって各先端を形成して、この先端に係合凸部23を形成する。本実施形態では、シート本体1の横幅方向の略中央を切断して形成する。なお、この係合凸部23は、先端から直近の外側切込21・21によって成形される部分である。
【0031】
これら帯部2の外側切込21および開口部22をシート本体1に成形する場合、個別の手順で成形することもできるが、コンベア等で移送されてきたシート本体1に対して所要形状のカッター体をプレスすることによって、同時成形することができる。
【0032】
こうして構成された使い捨てエプロンは、前記帯部2を引っ張ると、外側切込21および開口部22を拡開させて長手方向に伸長させることができる(図2参照)。
【0033】
また、図3(a)に示すように、一方の帯部2の先端における係合凸部23を、他方の帯部2に複数形成された開口部22の何れかに挿入して係合することができる(図3(b)参照)。
【0034】
そして、この帯部2が係合後に収縮方向に弾性復元することによって、胸覆い部3が首回りに接近して、着用者にフィットさせることができる。
【0035】
本実施形態では、前記のとおり、胸覆い部3の上部に凹部31を形成して、着用者の首回りに曲線的にフィットさせることにより、接触による違和感を軽減することができる。なお、この凹部31が形成されることにより、この凹部31に対応する帯部2側に成形される係合凸部23を相対的に大きくすることができるため、開口部22における係合時において、より抜けにくくすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、図4に示すように、外側切込21および開口部22の間隔を縮めて多数成形することにより、伸び代を大きくすることもできる。なお、外側切込21の拡開によってこの縁角部が着用者の首元に接触することによる違和感(チクチク感)を防止するために、図5に示すように、帯部2の基端近くには外側切込21(および開口部22)を形成しないようにすることもできる。
【0037】
更にまた、本実施形態では、図6に示すように、帯部2の係合凸部23を構成する外側切込21・21を、基端に向けて斜めに形成することができ、開口部22に対して引っ掛けやすく抜けにくくすることができる。なお、図示したように、他の部位における外側切込21・21も基端に向けて斜めに形成しておくことにより、係合凸部23が入り過ぎて次の外側切込21・21が係合する場合に有効である。
【0038】
更にまた、本実施形態では、図7に示すように、シート本体1と帯部2との一部(例えば図中の破線円部分)を点状に連結して(残存させて)おき、使用時に切断できるようにすることができ、未使用時にバラけずに使い勝手を向上させることができる。この連結位置および数量は適宜変更することができる。
【0039】
そして、本実施形態における使い捨てエプロンの使用後は、多数形成されている外側切込21を切り口として帯部2を簡単に切断して取り外すことができるため、廃棄作業が頗る容易である。
【0040】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態を図8および図9に基づいて説明する。本実施形態では、胸覆い部3の凹部31に対応する帯部2の先端側において外側切込21および開口部22を設けたものである(図8参照)。
【0041】
本実施形態では、胸覆い部3の凹部31を深めに設けることによって、その深さの面積分を帯部2の全長として使用することができる(図9参照)。本実施形態の使い捨てエプロンにおいても、前記帯部2を引っ張ると、外側切込21および開口部22を拡開させて長手方向に伸長させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、帯部2の係合凸部23の先端形状を尖端状にしたことによって、この係合凸部23の係合時における他方の帯部2の開口部22への挿入操作を容易にすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、帯部2の開口部22の形状をハート型に切り抜くこともでき、デザイン性を高めることができるとともに、係合凸部23を挿入し易くすることができる。
【0044】
更にまた、胸覆い部3の上部側方には、帯部2の長さが不足した場合のために、補助切込24を形成することができる。この補助切込24についても、前記同様に、一部を点状に連結して(残存させて)おき、使用時に切断できるようにすることができる。
【0045】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、シート本体1は略矩形のものに限らず、周縁に曲線を有するものであっても良く、また、帯部2の外側切込21および開口部22は、略直線状に限らず、曲線などの任意形状にすることができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0046】
1 シート本体
2 帯部
21 外側切込
22 開口部
23 係合凸部
24 補助切込
3 胸覆い部
31 凹部
32 ポケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9