(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347789
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】周囲環境内を光学的に走査及び計測するシステム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-547161(P2015-547161)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公表番号】特表2015-537228(P2015-537228A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】IB2013003072
(87)【国際公開番号】WO2014091306
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】102012112321.7
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/740,681
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/767,154
(32)【優先日】2013年2月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064510
【氏名又は名称】ファロ テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイデマン ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】オシッヒ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー ラインハルト
【審査官】
櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−530071(JP,A)
【文献】
特開2010−091491(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/153127(WO,A1)
【文献】
特開2008−164491(JP,A)
【文献】
特開平11−183136(JP,A)
【文献】
特開2008−216199(JP,A)
【文献】
特開平04−220510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
21/00−21/32
G01C 3/06
9/00− 9/10
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲環境内の物体を光学的に走査及び計測するシステムにおいて、
プロジェクタと、第1カメラと、第2カメラとを含むスキャナ装置であって、
前記プロジェクタは、プロジェクタ面から第1の光パターンを投射するように構成され、前記第1の光パターンは、非符号化されて構造化された第1の多値性光パターンであり、照明点の集合を含み、前記プロジェクタがプロジェクタ光軸を有し、前記集合の各照明点が同一形状を有する、プロジェクタであり、
前記第1カメラは、第1時間インスタンスにおいて当該第1カメラの第1像面上に、前記物体に投射された前記第1の多値性光パターンの第1像を記録するように構成され、且つ、第1カメラ光軸を有する第1カメラであり、
前記第2カメラは、前記第1時間インスタンスにおいて当該第2カメラの第2像面上に、前記物体に投射された前記第1の多値性光パターンの第2像を記録するように構成され、且つ、第2カメラ光軸を有する第2カメラであり、
前記プロジェクタ光軸、前記第1カメラ光軸、及び前記第2カメラ光軸が非共線状の三角形配置で方向決めされ、
前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面の上の各照明点が、前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面のうちの他の2つの面それぞれのエピポーラ線に対応し、且つ、前記エピポーラ線上に存在し、3つの前記面のエピポーラ線と前記第1の光パターンの照明点の対応関係が、前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面の幾何学的エピポーラ関係によって特定される、スキャナ装置と、
前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面の上の各照明点の対応関係を特定するように構成されたプロセッサであって、前記対応関係が、3つの前記面の幾何学的エピポーラ関係によって少なくとも部分的に特定され、前記第1の多値性光パターンの前記照明点と、前記物体上の前記第1の多値性光パターンの前記第1像と、前記物体上の前記第1の多値性光パターンの前記第2像と、前記三角形の幾何形状とに少なくとも部分的に基づいて、前記第1時間インスタンスにおける前記物体上の前記照明点それぞれの三次元座標を特定するように更に構成されたプロセッサと、
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記照明点の集合が少なくとも3つの照明スポットを含み、前記照明スポットのうちの各照明スポットは、暗領域に囲まれた明領域を含み、且つ、他の照明スポットのいずれとも接触しない照明スポットである、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記照明点の集合が、連続した線状の照明領域を有する照明線を更に含む、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記照明点の集合が、前記プロジェクタ面内に規則的なグリッドパターンを構成する照明スポットの集合を含む、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記プロジェクタが、前記第1の光パターンを生成する第1波長で発光するレーザを含み、
前記第1カメラ及び前記第2カメラが、前記第1波長を透過する帯域フィルタを有する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記スキャナ装置が第3カメラを更に含み、前記第3カメラは、可視波長域における前記物体の像を記録するカラーカメラであり、前記スキャナ装置に固定されている、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記スキャナ装置が第2の光パターンを生成し、前記第2の光パターンは、前記第1の光パターンとは異なるものであり、且つ、非符号化されて構造化された第2の多値性光パターンである、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロジェクタが、回折性光学素子、マイクロレンズの集まり、複数個の単体レーザ、及び投射マスク(projected mask)のなかから選定された素子を含む、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロセッサが、複数個の光パターンのなかから前記第1の光パターンを選択するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、
前記スキャナ装置が第2の光パターンを投射するように更に構成され、前記第2の光パターンが前記第1の光パターンに対して時間的にオフセットし、前記第2の光パターンが非符号化された第2のパターンである、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1の光パターンが第2の光パターンを更に含み、前記第1の光パターンが第1光波長を有し、前記第2の光パターンが、前記第1光波長とは異なる第2光波長を有し、前記第2の光パターンは非符号化された第2のパターンである、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、
前記スキャナ装置が第2プロジェクタを更に含み、
第2プロジェクタが、前記第1の光パターンとは異なる第2の光パターンを投射するように構成され、前記第2の光パターンは、非符号化されて構造化された第2の多値性光パターンである、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記スキャナ装置がハンドヘルド装置である、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記スキャナ装置が、更に、
前記プロジェクタがその内部に配置されているベース部材(base member)と、
前記ベース部材から突出しているグリップ部材(grip member)と、
前記グリップ部材上に配設されたトリガスイッチと、
前記グリップ部材の、前記ベース部材とは逆側の端部に位置し、前記第1カメラ及び前記第2カメラが配置されるヘッドエンドと、
を含む、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロセッサが前記スキャナ装置と一体の部品である、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムであって、前記照明点の集合が、第1強度を持つ第1光点群と、前記第1強度とは異なる第2強度を持つ第2光点群を有する第2の光パターンとを含み、前記第1光点群及び前記第2光点群が、非符号化されて構造化された多値性光パターンをそれぞれ規定する、システム。
【請求項17】
周囲環境内の物体を光学的に走査及び計測するシステムにおいて、
プロジェクタと、第1カメラと、第2カメラとを含むスキャナ装置であって、
前記プロジェクタは、プロジェクタ面から第1の光パターンを投射するように構成され、前記第1の光パターンは、非符号化されて構造化された第1の多値性光パターンであり、照明点の集合を含み、前記プロジェクタがプロジェクタ光軸を有するプロジェクタであり、
前記第1カメラは、第1時間インスタンスにおいて当該第1カメラの第1像面上に、前記物体に投射された前記第1の多値性光パターンの第1像を記録するように構成され、且つ、第1カメラ光軸を有する第1カメラであり、
前記第2カメラは、前記第1時間インスタンスにおいて当該第2カメラの第2像面上に、前記物体に投射された前記第1の多値性光パターンの第2像を記録するように構成され、且つ、第2カメラ光軸を有する第2カメラであり、
前記プロジェクタ光軸、前記第1カメラ光軸、及び前記第2カメラ光軸が非共線状の三角形配置で方向決めされ、
前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面の上の各照明点が、前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面のうちの他の2つの面それぞれのエピポーラ線に対応し、且つ、前記エピポーラ線上に存在し、3つの前記面のエピポーラ線と前記第1の光パターンの照明点の対応関係が、前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面の幾何学的エピポーラ関係によって特定される、スキャナ装置と、
前記プロジェクタ面、前記第1像面、及び前記第2像面の上の各照明点の対応関係を特定するように構成されたプロセッサであって、前記対応関係が、3つの前記面の幾何学的エピポーラ関係によって少なくとも部分的に特定され、前記第1の多値性光パターンの前記照明点と、前記物体上の前記第1の多値性光パターンの前記第1像と、前記物体上の前記第1の多値性光パターンの前記第2像と、前記三角形の幾何形状とに少なくとも部分的に基づいて、前記第1時間インスタンスにおける前記物体上の前記照明点それぞれの三次元座標を特定するように更に構成されたプロセッサと、
前記スキャナ装置から離れて配置される独立した第2プロジェクタであって、前記物体に静的光パターンを投射するように構成された第2プロジェクタと、を含み、
前記第1カメラは、前記スキャナ装置が前記第2プロジェクタに対して移動したときに、複数の第1像を記録するように構成され、
前記第2カメラは、前記スキャナ装置が前記第2プロジェクタに対して移動したときに、複数の第2像を記録するように構成され、
前記プロセッサは、前記静的光パターンに少なくとも部分的に基づいて、前記複数の第1像内の各像を互いに位置合わせすると共に、前記複数の第2像内の各像を互いに位置合わせするように更に構成される、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記第2プロジェクタが、赤外域又は紫外域の波長で前記静的光パターンを生成するように構成される、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムであって、前記静的光パターンは、前記第1の光パターンとは異なるパターンである、システム。
【請求項20】
請求項17に記載のシステムであって、前記静的光パターンが、光点パターン、線パターン、及び点・線パターンのなかから選択される、システム。
【請求項21】
請求項17に記載のシステムであって、前記静的光パターンの構成要素が、幾何又は時間又はスペクトラムの面でそれぞれ異なり得る、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の総論部分の諸構成を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は特許文献1によって既知とされている。走査対象物体の表面上にはプロジェクタにより光パターン群が投射される。プロジェクタのポジションは被投射符号化パターンによって特定される。その相対ポジション及び配置が既知又は特定済である2個(又はより多数)のカメラによって、別のパターンたる非符号化パターンで表面像を記録することができる。(パターンを構成する諸点の)三次元座標は、本質的に既知の数学的手法、例えばエピポーラ幾何によって特定することができる。
【0003】
ゲームセクタではスキャナがトラッキング(追跡)装置として知られている;この装置では、プロジェクタが符号化光パターンを追跡対象標的上、好ましくはプレイ中のユーザ上に投射し、次いでその符号化光パターンをカメラで記録してそのユーザの座標を特定する。
【0004】
特許文献2には、距離計測を伴うシーン走査システムが示されている。このシステムは、最も単純な形態では、標的領域を立体的に位置合わせすべくカメラ例えばフィルタ付のカメラを2個有するカメラユニットと、その標的領域内のパターンを好ましくは回折性光学素子により生成する照明ユニットと、照明ユニットとカメラユニットを同期させる同期ユニットと、を備える。カメラユニット及び照明ユニットの相対ポジションは可選択的に設定できる。場合によっては、カメラユニットや照明ユニットを2個用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6826299号明細書(B2)
【特許文献2】米国特許第8238611号明細書(B2)
【特許文献3】独国特許第10 2009 010 465号明細書(B3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基本的な目的は、背景技術の欄で言及したタイプの装置を改良することにある。本発明によれば、この目的が、請求項1の諸特徴を有する装置によって達成される。従属形式請求項は有益な構成に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
非符号化パターンは、符号化パターンと比べ容易に生成すること、例えば規則的な光点パターンとして生成することができる。更に、そのパターンによってもたらされる物体像を記録するため、並びにそのパターンを構成する光点間の対応関係を曖昧さなく求めるため、2個(又はより多数)のカメラが使用される。それら2個のカメラ及びプロジェクタは、共線状(co-linear)にではなく三角形配置に従い配置される。従って、3個のエピポーラ幾何関係を使用しカメラ像内パターン間の対応関係を特定することができる。それら対応関係が判明すれば、点クラウド即ち3Dスキャンの三次元座標を特定することができる。
【0008】
そのパターンは、可視波長域内ではなく赤外域(700nm〜1mm)内で生成するのが望ましい。前記2個のカメラはこの波長域内でそれなりの感度を呈するものであり、また散乱光その他の干渉光は可視波長域内でフィルタアウト(阻止)することができる。色情報用の第3カメラとしてカラーカメラを準備すれば、そのカメラでも走査対象物体の像を記録することができる。3Dスキャンは、こうして得られた色情報に従い着色することができる。
【0009】
ハンドヘルドスキャナは、様々なポジションから同一シーンの3Dスキャンを都合複数通り生成する。それら様々な3Dスキャン同士の共通座標系内位置合わせは、どの3Dスキャンでも捕捉可能な静的パターンによって実現される。この静的パターンは、ハンドヘルドスキャナが動かされそのポジションが変わっても前記物体に対し動かない。物体表面の自然テキスチャ及びその他の構造例えば縁を静的パターンとして使用することができる;そうしたテキスチャは第3カメラたるカラーカメラで捕捉することができる;或いは別(外部)のプロジェクタによって生成された投射パターンが(それに加え又は代え)使用される。こうした静的パターンは、幾何的、時間的又はスペクトラム的に、ハンドヘルドスキャナによって生成されたパターンから区別することができる。
【0010】
3個(又はより多数)のカメラ及び複数個のプロジェクタを伴う多モジュール構成であって、その点密度及び横解像度が異なる複数通りのパターンを投射すること及びその像を記録することによって用途依存諸条件が充足されるものは、考慮に値する。
【0011】
パターン生成は、回折性光学素子若しくはマイクロレンズ(又は単体レーザ)による生成をはじめとする偏向法によって、或いはシャッタ、(スライドプロジェクタで使用されるような)トランスパレンシ(陽画)及びその他のマスクによる生成等のシェーディング法によって、実現することができる。偏向法には、あまり光が失われないので強めの強度が手に入るという長所がある。
【0012】
本発明では、ハンドヘルドスキャナが可搬型スキャナとして、即ち高速で稼働し軽量なスキャナとして構成される。但し、そうしたハンドヘルドスキャナを三脚(又はその他のスタンド)上、マニュアル可動トロリ(又はその他のカート)上、或いは自律移動ロボット上に搭載すること、即ちユーザによって…付加的には更に別のハウジング例えばグリップ部のないものを用いることによって…運搬されないようにすることも可能である。従って、「ハンドヘルドスキャナ」の語は、コンパクトなユニットとして構成されたスキャナ全般が包含されるよう、広義に解釈すべきものである。
【0013】
ビデオ又は一連のフレームにおけるハンドヘルドスキャナの動作、特に物体Oの周りを巡る際のそれはリングクロージャを伴いうる。好ましくは、このリングクロージャを自動認識して潜在的計測誤差の補正に使用する。そのためには、複数個あるフレームのうち任意のものに関し1個ずつ円錐台を形成するのが望ましい;即ち、三次元点クラウドを構成する諸点のうち、そのフレームから特定されそれに割り当てられる3Dスキャンを表す幾ばくかの部分が含まれる円錐台である。最新フレームの円錐台と複数個ある過去フレームの円錐台との間の交差を形成し、大きな交差を呈する過去円錐台を選択する。リングクロージャは、図形を探索、比較及び識別することで認識することができる。
【0014】
ハンドヘルドスキャナによって保存及び/又は転送されるデータの量を減らすため、隣接フレームに対し(後処理にて)平均化を施すのが望ましい;これは、データの二次元構造化量を、幾つかのフレームを含む複数個のグループへと分割し、そのグループを構成するフレームで平均化することにより行うのが望ましい。
【0015】
以下、別紙図面に記載の例示的実施形態をもとに本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】回折性光学素子によるパターン生成の模式図である。
【
図3】パターン及びそれとは別のパターンを示す図である。
【
図4】プロジェクタ面、像面及びエピポーラ線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ハンドヘルドスキャナ100は、そのハンドヘルドスキャナ100の周囲環境を光学的に走査及び計測する装置の可搬部分として提供されている。このハンドヘルドスキャナ100は、ベース部(base part)104と、適切に使用されたときに上を指すようベース部104から突出しているグリップ部(grip part)106と、適切に使用されたときにグリップ部上端に来るようグリップ部106上に設けられたヘッドエンド108とを有している。ハンドヘルドスキャナ100のユーザは、グリップ部106にてそのハンドヘルドスキャナ100を手に取ることができる;グリップ部は、ハンドヘルドスキャナ100を周囲環境内で存分に動かすことで、そのハンドヘルドスキャナ100を周囲環境内物体Oに対し整列させうるように、構成されている。
【0018】
ヘッドエンド108内には、互いに所定の距離を隔て第1カメラ111及び第2カメラ112が配置されている。第1カメラ111及び第2カメラ112相互の位置関係(アライメント)は、それらの視野が重なり物体Oの立体像が見えるよう調整済又は調整可能である。その位置関係が固定なら用途次第で最適な重複範囲がある。精度面では、プロジェクタ・カメラ間距離に似通った重複範囲が望ましかろう。典型的な環境状況次第では数dm又は数mの範囲も好まれよう。或いは、カメラ111及び112をグリップ部106に対し平行な回動軸周りで逆向きに枢動させること等によって、ユーザが位置関係を調整するようにしてもよい。ハンドスキャナ100側ではいつでも位置関係を知ることができる;ユーザによる調整プロセスを追跡してもよいし、初期的にはランダム(且つ未知)な位置関係を校正によりハンドヘルドスキャナ100に知らせてもよい。
【0019】
第1カメラ111及び第2カメラ112は単色性であること、即ちある狭い波長域に対し有感(sensitive)なことが望ましい;例えば、相応なフィルタと共に設け、それらのフィルタにより散乱光を含めその他の波長域がフィルタアウトされるようにすればよい。当該狭い波長域は赤外域内とするのが望ましい。それでもなお物体Oに関する色情報が得られるようにするには、ヘッドエンド108内にカラーカメラ113を配置すればよい;このカラーカメラは、第1カメラ111及び第2カメラ112に対し対称的に整列させ、それらの中央に配置するのが望ましい。更に、このカラーカメラ113は可視波長域内で有感とする。
【0020】
ハンドヘルドスキャナ100は表示及び制御ユニット115、好ましくはタッチスクリーンとして構成されたものを有している。この表示及び制御ユニット115は、カメラ111,112又は更に113に対しそっぽを向くようヘッドエンド108に配置するのが望ましい。表示及び制御ユニット115は、取り外せるよう構成可能である。カメラ111,112又は更に113並びに表示及び制御ユニット115は制御及び評価ユニット118、好ましくはヘッドエンド108内に配置されたそれに接続されている。制御及び評価ユニット118では、好適にも、カメラ111,112又は更に113のデータを前処理することができる;場合によっては、3Dスキャンをも生成し、表示及び制御ユニット115上に好適なビュー(眺望)を発現させることができる。或いは、表示及び制御ユニット115を全く設けずに、リモートコントロールによってハンドヘルドスキャナ100を操作するようにしてもよい;例えば、制御及び評価ユニット118と(有線又は無線により)常時接続された据置型又は可搬型コンピュータ(PC、タブレット、スマートホン等)からのリモートコントロールである。
【0021】
制御及び評価ユニット118が無線通信(例えば据置型コンピュータにつながるWLAN)によって3Dスキャン又はカメラ111,112又は更に113のデータを転送する場合を除き、ハンドヘルドスキャナ100にはデータ接続手段が付設される;これは、ベース部104上に設けるのが望ましい(或いはこれに代えハンドヘルドスキャナ100の他の点に設けてもよい)。このデータ接続手段は、例えば、LAN、USB等向けの汎用インタフェースであってもよいし、或いは専用インタフェースであってもよい;特許文献3に記載の通りである。差し支えないなら、可搬型ストレージ媒体(SDカード、USBスティック等)を差し込めるようデータ接続手段を構成してもよい。電源供給のため、ベース部104内に蓄電器を設けるのが望ましい。これを充電できるよう、更に電源アウトレットを例えばベース部104上に設けるのが望ましい。或いは、蓄電池を可換型としてもよい。
【0022】
総じて、第1カメラ111により記録された像及び第2カメラ112により記録された像からは、既に三次元となっているデータを(制御及び評価ユニット118内で)特定することが可能である;即ち、例えば写真測量によって物体Oの3Dスキャンを得ることができる。しかしながら、物体Oにほとんど構造がなくその表面の多くが滑らかであることが多いので、物体Oの散乱光から3Dスキャンを生成するのは難しい。
【0023】
そこで、(第1)プロジェクタ121が設けられている:これは、ベース部104内(或いはそれに代えヘッドエンド108内)に配置するのが望ましいものであり、2個のカメラ111及び112に照応して整列される。その相対距離及び相対配列は、予め設定しても、ユーザが設定可能としてもよい。(第1)プロジェクタ121は走査対象物体O上にパターンXを投射する。このパターンXは、符号化されている(即ち単値である)必要はない;逆に、いわば多値となるよう例えば周期的に非符号化されているのが望ましい。この多値性は2個のカメラ111及び112の使用によって解決される。
【0024】
この非符号化パターンXは、グリッド形態で規則的に配置された諸点を含む点パターンであるのが望ましい。本発明では、例えば、約0.5m〜5mの距離まで約50°の角度で、100×100個の点が投射される。パターンXは、また、その配置が密な光点群により形成された線パターンであってもよいし、同じく密配置光点群により形成された点・線結合パターンであってもよい。2個あるカメラ111及び112は、このパターンXを、パターンXを記録すべく各1個のホトセンサ(例えばCMOS又はCCD)が配置されている像面B
111及びB
112のうち自身に対応するものに投射する。
【0025】
点密度と、(第1)プロジェクタ121・物体間距離と、生成されたパターンXで得ることができる解像度と、の間には関係がある。像を1個しか利用できない場合、点密度が高めなら物体Oの微構造を調べうるものの、低めならば粗構造しか調べることができない。従って、パターンXに加え少なくとも1個の他のパターンX’を生成できることが、有用であることが窺える。パターンX,X’の生成次第では、それらパターン及び/又は空間的混在の間での動的遷移が可能であり、それにより点密度を物体Oの構造に適合させることができる。
【0026】
そのため、特殊調査向けの実施形態では、(第1)プロジェクタ121に加え、相応に整列しており且つ前記他のパターンX’を生成可能な第2プロジェクタ122が設けられる。或いは、(第1)プロジェクタ121にて、パターンXに加え前記他のパターンX’を発生させてもよい;例えば、互いに時間的にずれており及び/又は別の波長域内にあるパターンとする。前記他のパターンX’は、本発明では非符号化パターンであるところのパターンXから乖離したパターンとするのが望ましい;本発明では、互いに別の距離(グリッド長)を以て諸点が規則的に配置された点パターンとする。
【0027】
また、前記他のパターンX’をパターンXと例えば異なる強度で絶えず干渉させることも考慮に値する。その場合、生成されるパターンXは、例えば、高強度・大距離の光点群と、その間にあり低強度・小距離の光点群と、を有するものとなる。異なる強度を有するパターンXによれば、カメラダイナミクス(露出時間が所与なら光点群はある限られた距離・反射率組合せ域内でのみ露出過剰/露出不足無しで可視である)の限界を克服することができ、また深さ及び強度に関し広めのダイナミックレンジをカバーすることができる。前記パターンXの周期性がより高いことは確かであるが、それでもなお本発明の意味では非符号化されている。
【0028】
更に、2個以上のパターンX,X’を使用すること、例えば時間的に引き続いて生成された複数個のパターンからなる所定のシーケンス等を使用することも考慮に値する。
【0029】
この…好ましくは単色的な…パターンX(及びX’)は、2個のカメラ111及び112の波長域(赤外)にてレーザにより生成された光ビームをパターンXに応じ且つ強度を失うこと無しに分割する回折性光学素子124によって、生成するのが望ましい。この場合、横解像度はビーム直径即ち諸点のサイズによってのみ制限される。パターンX(及びX’)が赤外域内で生成されるので、カラーカメラ113の像を干渉無しで記録すること並びに目等を保護する安全化手段を省くことが、いずれも可能である。同じ目的で、パターンX(及びX’)を紫外域内で生成してもよい。
【0030】
2個のパターンX及びX’は2個の回折性光学素子で生成することができる;それらは別々の時点又は別々の波長でスクリーニングされる。時変性の回折性光学素子によれば、パターンX及びX’間で迅速に(即ちほぼフレーム毎に)又は緩慢に(例えばマニュアル制御で)変化させることが可能である;或いは、(光点密度及び被投射パターンXのリーチに関し)変化する事実に対し、パターンXを動的に適合させることができる。パターンX及びX’間の緩慢遷移も同様に考慮に値する(フェードオーバ)。回折性光学素子に代え、マイクロレンズのアレイや単体レーザのアレイを使用することもできる。必須ではないが、マスク特にトランスパレンシによる古典的イメージングも可能である。
【0031】
(第1)プロジェクタ121は、エネルギ効率及び眼安全性(アイセーフティ)に鑑み物体O上のみにパターンXを発生させる;このとき、カメラ111及び112(又は更に113)は、パターンXを伴う物体Oの像を記録する。これがため、2個のカメラ111,112及びプロジェクタ121(又は更に第2プロジェクタ122)が同期される;即ち、時間及び被使用パターンX(又は更にX’)の双方に関し互いに内部的に協調する。個々の記録プロセスは、写真におけるフラッシュに倣い(第1)プロジェクタ121がパターンXを生成することにより始まり、カメラ111及び112(又は更に113)による記録、より厳密には各レコード(フレーム)対の記録が続く;レコード(フレーム)とは、2個のカメラ111,112それぞれから得られた画像それぞれのことである。記録プロセスは、ある単一のフレーム(ショット)で構成されることもあるし、一連になった複数個のフレーム(ビデオ)で構成されることもある。トリガスイッチ126は、そうしたショット又はそうしたビデオをトリガできるものであり、グリップ部106に設けるのが望ましい。データの処理後には、それらフレームそれぞれにより、ハンドヘルドスキャナ100の相対座標内で3Dスキャン、即ち三次元空間内点クラウドが形成される。トリガスイッチ126に代え、ハンドヘルドスキャナ100の前述したリモートコントロールにより記録プロセスをトリガしてもよい。
【0032】
(第1)プロジェクタ121、並びに付加的に利用可能であるところの第2プロジェクタ122は、2個のカメラ121及び122に対し共線状に配置されるのではなく、三角形配置で配置される。2個のカメラ111及び112並びに(第1)プロジェクタ121(又は更に第2プロジェクタ122)がこうした配置であるので、本質的に既知な数学的光学手法の使用、特にエピポーラ幾何の使用が可能である;この手法によれば、第2カメラ112の像面B
112内の1点を第1カメラ111の像面B
111内の(既知)線即ちエピポーラ線e上で観測でき、その逆も然りであり、及び/又は、プロジェクタレベルP
121から(第1)プロジェクタ121により生成された1点を2個のカメラ111及び112の像面B
111,B
112内でそれぞれ1個のエピポーラ線e上で観測できる。
【0033】
本発明では、(少なくとも)3個のユニット(プロジェクタ121並びに2個のカメラ111及び112)が関与する;即ち、それらユニットそれぞれから延び、(それぞれ多数のエピポーラ線eを伴う)2個の立体幾何それぞれが、他の2個のユニットで規定されうる。従って、そこから2個の画像レベルB
111,B
112におけるパターンX(又は更にX’)の投射の対応関係を特定できるような、点及びエピポーラ線eの非曖昧な三角形関係が、現在の配置に関し求まることとなる。(カメラが一対である場合に比べ)立体幾何の個数が多いので、そうでなければ弁別できないはずの、非常に多くのパターン構成点をエピポーラ線e上で識別することができる。従って、諸図形の密度を同時に高くすることができ、且つその図形のサイズを非常に小さく保つことができる。(例えば複数個の点から構成される諸図形を有する)符号化パターンを伴う別の手法では、図形のサイズに下限があり、それにより横解像度が制約される。前述の対応関係が特定されたなら、物体Oの表面上の諸点の三次元座標が、三角測量によりその3Dスキャンに関し特定される。
【0034】
そのカメラポジションが異なる幾つかのフレーム、例えばカラーカメラ113で得られるもの或いはカメラ111及び112の信号のうち環境光に由来しひいては周囲環境の自然テキスチャに由来する部分から得られるものに基づく写真測量によって、更なる三次元データを得ることができる。これもまた有益なことに、ハンドヘルドスキャナ100又は他のユニットで物体O或いは更に背景を例えば白色光又は赤外光で照明することができるなら、物体OのうちパターンOによって照明される諸部分或いは更にその背景が可視となるほか、それらの間の領域も可視となる。こうした照明がとりわけふさわしいのは、カラーカメラ113のデータが、(その着色だけでなく)3Dスキャンの作成向け及びカメラ111及び112の校正向けにやがて使用されることとなる場合であって、ある限られたスペクトル域のみがフィルタを透過しうる場合である。
【0035】
その走査プロセスは時間の側面も呈する。固定デバイスでパターンのシーケンス全体を投射すること及び像を記録して単一の3Dスキャンを特定することも可能であるが、本発明のハンドヘルドスキャナ100では各ショットで1個の3Dスキャンが生成される。第2プロジェクタ122か、更なる回折性光学素子124か、或いはパターンXに加え少なくとも1個の第2パターンX’か、が特別な調査向けに提供されるのであれば、相応な切替によって、異なるパターンX及びX’での像を1ショットで連続的に記録することも可能となり、その場合、3Dスキャンの解像度がより高いものとなろう。
【0036】
シーン全体を捉えるには、そのショットで生成される3Dスキャン同士を位置合わせすること、即ち各フレームの三次元点クラウドを共通座標系内に挿入することが必要である。位置合わせは、例えばビデオグラメトリ、即ちSFM(structure from motion)又はSLAM(simultaneous localisation and mapping)等によって行うことができる。物体Oの自然テキスチャを共通の基準点代わりに使用してもよいし、或いは静的パターンYを生成してもよい。その自然テキスチャはカラーカメラ113によって捉えることができ、それによって(色情報取得に加え)第2の関数が得られる。とはいえ、ハンドヘルドスキャナ100の周囲環境を光学的に走査及び計測するための装置の付加的な部分として、少なくとも1個の別のプロジェクタ130を設けるのが望ましい。
【0037】
当該別のプロジェクタ130は、静的パターンY、即ちパターンX(又は更にX’)に似ているが弁別可能であり且つ好ましくは同様の手法で生成されたパターンを、走査対象物体上に投射する。パターンX又は更にX’がハンドヘルドスキャナ100と共に動いている間、その静的パターンYは共通座標系内で静止している;ハンドヘルドスキャナ100が動いている場合及び複数のショットが別々のポジションから生成されている場合もそうである。この場合、カメラ111及び112の複数個の像(フレーム)内で静的パターンYが可視となるので、その特定済3Dスキャンを静的パターンYによって互いに関連付けることができる。静的パターンYは、幾何又は時間又はスペクトラム(或いはそれらの組合せ)の面でパターンX又は更にX’と異なる。時間に関し異なる場合、静的パターンYは、少なくとも、パターンX又は更にX’が生成されない(交番する又は重複する)期間に生成される。スペクトラムに関し異なる場合、静的パターンYはパターンX又は更にX’と異なる波長域内にあるので、カメラ111及び112がその波長域についても有感でなければならない;即ち、それらカメラが相応なフィルタと共に設けられねばならない。当該別のプロジェクタ130をハンドヘルドスキャナ100と同期させること、即ち被投射静的パターンYの種類及び時間をハンドヘルドスキャナ100にとり既知にすることもできる。
【0038】
走査対象物体O次第では、複数の3Dスキャンが生成された後に、その表面上に静的パターンYを投射すべく当該別のプロジェクタ130を物体Oの別の側に持ってくることが適切となろう。これによりシェーディングを排除することができる。当該別のプロジェクタ130は、従って、可搬又は可動であること、並びに例えば三脚又はトロリ(又はその他のカート)上に相応に搭載されること又はそこに搭載可能であることが望ましい。或いは、別のプロジェクタ130を複数個使用してもシェーディングが排除される。対応するビルディングブロックシステムが考えられる。
【0039】
基本的には自動化も可能である:即ち、ハンドヘルドスキャナ100をマニュアル可動トロリ(若しくはその他のカート)上又は自律移動ロボット上に搭載してもよいし、或いはその上に搭載可能にしてもよい。もはやユーザによって運搬されていないこのハンドヘルドスキャナ100は、その周囲環境を所定の手法で、好ましくは一連のショットを生成することによってではなくビデオを生成することによって走査する。カメラ及びプロジェクタは共線状の形態では配置されない。
【0040】
ハンドヘルドスキャナ100は、ビデオを高フレーム密度例えば70フレーム毎秒で生成することができる。しかしながら、ヘルドスキャナ100は2個のフレーム間でほとんど動かないので、ビデオには非常に多くの冗長情報が含まれる:時間的に隣り合っている2個のフレーム間にはごく僅かな相違しかない。保存及び/又は転送されるデータの量を減らすためには、従って、後処理時の相応な平均化がお奨めである(
図5)。まず第1に、第1平均化ステップでは、各1個のキーフレームFiを挟む複数個のフレームが各グループ[F]iに属することとなるよう、幾つかのフレームFが幾つかのグループ[F]iに分けられる。
【0041】
3Dコンピュータグラフィクスの分野では、その集合により空間が完全に満たされる個別体積要素即ちボクセルが知られている。こうした構造は、しばしば、1個の点クラウド内で様々なパースペクティブから三次元データを統合する目的で使用される。表面データを記録する際の難点は数多くの空白ボクセルが残ること、ひいては何らかの手法でそれらをデータ処理することが必要なことである。
【0042】
本発明では、この問題向けに順応及び最適化されたデータ構造を使用する。フレームF間に多大な重複があるグループ[F]i内では、それでも、個別計測点群を共通の二次元データ構造(グリッド構造)内で非常に申し分なく且つ効率的に概括することができる;即ち、表面データ向けに最適化すること及び二次元像に非常によく似たものにすることができる。必要なストレージ容量が小さめであるので、捉えた計測値全てを二次元データ構造内ベクトルとして、即ちグループ[F]iを構成するフレームFのピクセル毎のハンドヘルドスキャナ100までの距離及びグレイトーン値/色として初期保存することができる。
【0043】
第2平均化ステップでは、誤った計測結果を極簡便に排除すべく各グループ[F]i内で平均化が実行される。(グレイトーン/色及び/又は距離に関する)そうした平均化には、ソートされた計測値の中心領域内にあるベクトルの所定部分のみが使用される。当該中心領域はしきい値により弁別することができる。こうした平均化は、計測値が平均化されたキーフレームFiによるグループ[F]iの置き換えに対応するものであり、それらキーフレームFiはなおかなりの重複を呈する。そうした手法で得られた個々の計測点は、その後、三次元点クラウド全体の(三次元ベクトルに対応する)点として扱われる。
【0044】
付加的な第3ステップでは、平均化により得られた計測点が、別のグループ[F]iからのデータと例えばデカルト平均化によりまとめられうる。
【0045】
ハンドヘルドスキャナ100の動作、特に物体Oの周りを巡らせる際の動作では、リングクロージャが発生する余地がある;即ち、かなり多数のフレームを経た後に、室内を見たビデオ(又は一連のショット)のビューが元と同じものに、或いは少なくとも非常によく似たものになる。仮に、利用可能なデータ全てを見ることができるなら、点クラウド全体の生成中の任意時点で、リングクロージャを即座に認識することもできよう。しかしながら、データ量及びその帰結たる情報処理時間からしてこれは不可能である。先行するシーケンスに発するデータのうちどれがまたリングクロージャにより見られるに違いないかを、極迅速に察知できる手法が必要である。仮に、どの計測にも全く失敗がない(且つハンドヘルドスキャナ100の動きが十分に規則的である)なら、共通座標系における3Dスキャンの位置合わせにより直ちに、リングクロージャがもたらされるであろう。しかしながら、現実には、失敗が累積していき、2個のよく似たフレームF及びもたらされる3Dスキャンの間のオフセットにつながる。とはいえ、次に述べるように、リングクロージャを自動認識(及び失敗を補正)することは可能である(
図6)。
【0046】
円錐台(より厳密には視認円錐台)は、通常、像面から視認方向に沿い無限遠まで延びる先端切り落としピラミッド状空間領域である。本発明では、第1ステップにてフレーム毎に、三次元点クラウドから捉えられた点のうち(少なくともおよそ)80%を含む円錐台V、即ち被割当3Dスキャンを構成する前記空間領域の有限部分であってフレームFから特定されるものを含む円錐台が形成される。最新円錐台Vnは、最後に記録されたフレームである最新フレームFnに割り当てられる。第2ステップでは、次いで、その最新円錐台Vnが交差形成により過去円錐台Vと比較される。それら過去円錐台Vjのうち最大の交差を呈する円錐台が、より厳密な解析を実行すべく選択される。
【0047】
第3ステップでは、最新円錐台Vn及び選択された円錐台Vjそれぞれのなかで、例えば縁及び隅といった図形が本質的に既知の手法で探される。第4ステップでは、検出された図形が例えばその埋込先幾何に関し相互比較され、一致した諸図形が識別される。その一致度に応じ、第5ステップでは、リングクロージャが存在するか否かが判定される。
【0048】
一致と識別された諸図形からは、リングクロージャについての知見を役立てるべく共通図形が生成される。第6ステップでは、「バンドル調整」なる名称で知られる手法により前記計測誤差を補正することができる;これは、所定の空間内浸透深さに至るまで3Dスキャンが補正されるということである;即ち、三次元点クラウドを幾つかの場所で且つある程度まで変位させることで、本質的に同一な円錐台、3Dスキャン及びフレームにおける前掲のオフセットを排除することができる。補正に不完全さがある場合、即ち(「バンドル調整」を伴う)第6ステップの後も幾ばくかのデータ偏差ひいては幾ばくかの補正不能計測誤差が残っている場合、当該幾ばくかの偏差(即ち補正不能誤差)が好ましくも計測及びデータ全体の質を示す指標となる。
【0049】
ハンドヘルドスキャナ100の動き及び生成されたフレームの処理は、追跡としても扱うことができる;即ち、ハンドヘルドスキャナ100は、その周囲環境の相対運動を、追跡中に使用された手法と共に追跡する。追跡に失敗した場合、例えばハンドヘルドスキャナ100が速く動きすぎた場合には、単に追跡を再開すればよい。その目論見で、カラーカメラ113によってもたらされた最新ビデオ画像と、それによる追跡で得られた最新ビデオスチル画像とを、ユーザ用の表示及び制御ユニット115上に横並びに(或いは縦並びに)表示させる。その後、ユーザは、それら2個のビデオ画像が一致するまでハンドヘルドスキャナ100を動かす必要がある。それらビデオ画像の処理及びその比較による例えば音響的又は光学的なサポートは、有用であるのでこれを組み込むのが望ましい。
【符号の説明】
【0050】
100 ハンドヘルドスキャナ、104 ベース部、106 グリップ部、108 ヘッドエンド、111 第1カメラ、112 第2カメラ、113 カラーカメラ、115 表示及び制御ユニット、118 制御及び評価ユニット、121 (第1)プロジェクタ、122 第2プロジェクタ、124 回折性光学素子、126 トリガスイッチ、130 別のプロジェクタ、B
111 第1カメラの像面、B
112 第2カメラの像面、e エピポーラ線、F,Fn フレーム、Fi キーフレーム、[F]i グループ、O 物体、P
121 プロジェクタ面、V,Vj,Vn 円錐台、X,X’ パターン、Y 静的パターン。