特許第6347793号(P6347793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6347793Bcl−2/Bcl−xL阻害薬およびそれを使用した治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347793
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】Bcl−2/Bcl−xL阻害薬およびそれを使用した治療方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6509 20060101AFI20180618BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20180618BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C07F9/6509 ZCSP
   A61K31/662
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】23
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2015-553788(P2015-553788)
(86)(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公表番号】特表2016-506916(P2016-506916A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2014011571
(87)【国際公開番号】WO2014113413
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年12月9日
(31)【優先権主張番号】61/753,066
(32)【優先日】2013年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512255103
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオメン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジエンファン
(72)【発明者】
【氏名】マッカカーン,ドナ
(72)【発明者】
【氏名】バイ,ロンチュアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,リュー
(72)【発明者】
【氏名】サン,ドキシン
(72)【発明者】
【氏名】リー,シャオチン
(72)【発明者】
【氏名】アギラール,アンジェロ
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−502727(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/103059(WO,A1)
【文献】 Nature Reviews. Drug Discovery,2008年,Vol.7, No.3,p.255-270
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2012年,Vol.55, No.19,p.8502-8514
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6509
A61K 31/662
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】

【化2】
、もしくは
【化3】
(式中、
環Aは、
【化4】
であり;
Xは、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、およびヘテロシクロアルキレンからなる群から選択され、置換基を有していてもよく;
Yは、化合物(I)の場合、(CH−N(R)および
【化5】
からなる群から選択され、化合物(III)の場合、
【化6】
であり;
Qは、O(CH1〜3、NR、NR(C1〜3アルキレン)、OC(=O)(C1〜3アルキレン)、C(=O)O(C1〜3アルキレン)、NHC(=O)(C1〜3アルキレン)、C(=O)NH、およびC(=O)NH(C1〜3アルキレン)からなる群から選択され;
Zは、OまたはNRであり;
およびRは独立して、H、CN、NO、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、SR’、NR’R’’、COR’,COR’、OCOR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、NR’COR’’、NR’CONR’’R’’’、NR’C=SNR’’R’’’、NR’SOR’’、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、NR’R’’、OCOR’、COR’、COR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、C1〜3アルキレンCH(OH)CHOH、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
R’、R’’、およびR’’’は独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C1〜3アルキレンヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
R’とR’’、またはR’’とR’’’は、互いに結合して、それらが結合している原子とともに3〜7員の環を形成していてもよく;
は、水素、ハロ、C1〜3アルキル、CF、またはCNであり;
は、水素、ハロ、C1〜3アルキル、置換基を有するC1〜3アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、または置換基を有するアルコキシであり;
は、H、CN、NO、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、SR’、NR’R’’、COR’、OCOR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、NR’COR’’、NR’CONR’’R’’’、NR’C=SNR’’R’’’、NR’SOR’’、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、(CH0〜3シクロアルキル、(CH0〜3シクロアルケニル、(CH0〜3ヘテロシクロアルキル、(CH0〜3アリール、および(CH0〜3ヘテロアリールからなる群から選択され、置換基を有していてもよく;
は、水素、ハロ、NO、CN、CFSO、およびCFからなる群から選択され;
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、置換基を有するアルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
は、水素またはアルキルであり;
は、水素、アルキル、置換基を有するアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、および置換基を有するアルコキシからなる群から選択され;
n、r、およびsは独立して、1、2、3、4、5、または6である)
を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Xがアルキレンである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが
【化7】
である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
nが1〜3である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が水素またはC1〜3アルキルである請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
QがO(CH1〜3、C(=O)O(CH1〜3、OC(=O)(CH1〜3、またはC(=O)O(C1〜3である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
ZがO、NH、またはN(C1〜3アルキル)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
がSOR’、SONR’R’’、H、またはアルキルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
がH、C1〜3アルキル、シクロアルキル、またはハロである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
がH、C1〜3アルキル、またはシクロアルキルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
がHまたはハロである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
がH、ハロ、またはC1〜3アルキルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
がH、ハロ、C1〜3アルキル、またはシクロアルキルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
が、−OHで置換されていてもよい(CH0〜3シクロアルキルである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
がCFSOまたはCFである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
およびRが独立してHまたはC1〜3アルキルである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
【化8】
、または
の構造を有する化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される担体またはビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項19】
Bcl−2またはBcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患または病態を治療するための薬剤を製造するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項20】
前記疾患または病態の治療に有用な第2の治療薬を治療有効量で含むことをさらに含む、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記疾患または病態ががんである、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記疾患ががんであり、前記第2の治療薬が化学療法薬である、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記がんが、ヒト小細胞肺がん、ヒト結腸がん、ヒト乳がん、ヒト前立腺がん、及びヒト胃がんから選択される、請求項21に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bcl−2/Bcl−xL阻害薬、ならびにBcl−2/Bcl−xLを抑制することによって利益が得られる病態および疾患を治療するための治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシス抵抗性はヒトがんの顕著な特徴である(1〜3)。DNA損傷、癌遺伝子活性化、細胞周期進行の異常、過酷な微小環境などの細胞ストレスによる継続的なダメージによって、正常細胞であればアポトーシスが引き起こされるが、がん細胞はこれらの細胞ストレスに打ち勝つ必要がある。がん細胞は、主な手段の一つとして、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質をアップレギュレートすることによりアポトーシスを回避している。したがって、主要なアポトーシス調節因子を標的として、アポトーシス抵抗性を解除し、かつ腫瘍細胞のアポトーシスを促進させることによって、新規のがん治療戦略を提供することができる(4,5)
【0003】
Bcl−2タンパク質は、がん細胞や正常細胞においてアポトーシス調節因子として重要な役割を果たしている(6〜10)。Bcl−2タンパク質はアポトーシスを抑制し、健常で有用な細胞の生存を可能とする。このタンパク質ファミリーには、Bcl−2、Bcl−xL、Mcl−1などの抗アポトーシスタンパク質と、Bid、Bim、Bad、Bak、Baxなどのアポトーシス促進性分子とが含まれる(6〜10)。抗アポトーシスタンパク質であるBcl−2およびBcl−xLは、正常細胞においては低レベルで発現しているが、様々なヒト腫瘍では高度に過剰発現されていることが分かっている(6〜10)。これらのタンパク質の過剰発現は、いくつかの種類のがんにおける予後不良や、化学療法薬および放射線療法に対する臨床耐性と関連していることが指摘されている(6〜10)。臨床的知見と一致して、基礎研究では、Bcl−2やBcl−xLの過剰発現によって、化学療法薬に対するがん細胞の耐性がインビトロおよびインビボで高まることが確認された(6〜10)。Bcl−2がアポトーシスを抑制することによって、細胞死が抑制され、がんが引き起こされる。これらを踏まえて、Bcl−2および/またはBcl−xLへのターゲティングは、がんの治療戦略として研究が進められている(11〜34)。がん細胞においてBcl−2活性を抑制することによって、化学療法薬に対する耐性を低減させ、がん細胞の死滅を促進することができる。
【0004】
Bcl−2タンパク質およびBcl−xLタンパク質は、Bak、Bax、Bim、Bid、Puma、Badなどのアポトーシス促進性Bcl−2ファミリータンパク質とヘテロ二量体を形成することによってアポトーシスを抑制する(6〜10)。実験により決定されたBcl−xLおよびBcl−2の三次元構造では、これらのタンパク質は明確な溝を持ち、この溝を介してアポトーシス促進性Bcl−2タンパク質のBH3(Bcl−2ホモロジー3)領域と相互作用することが示された(38〜42)。Bcl−2/Bcl−xLタンパク質とこれらのアポトーシス促進性結合パートナーとのヘテロ二量体形成を阻害するように設計された非ペプチド小分子が、Bcl−2/Bcl−xLのアンタゴニストとして有効である可能性が示唆されており、また、そのような小分子阻害薬を使用することによって、Bcl−2および/またはBcl−xLが高発現しているヒトがんに対して大きな治療効果が得られる可能性が示唆されている(18〜37)
【0005】
Bcl−2/Bcl−xLの非ペプチド小分子阻害薬がいくつか報告されているが、これらの阻害薬の大部分はBcl−2/Bcl−xLに対して弱〜中程度の親和性しか持たず、その細胞活性は明確な作用機序を有していない(18〜37)。例外として、ABT−737、ABT−263、およびこれらのアナログがある(26〜34)。ABT−737およびABT−263は、Bcl−2、Bcl−xL、およびBcl−wと極めて高い親和性(K<1nM)で結合し、Bcl−2ファミリーの他の2つの抗アポトーシスタンパク質であるMcl−1およびA1に対して高い特異性を有する(26,32,34)。ABT−263は、第I/II相臨床試験に進んでおり、臨床において抗腫瘍活性を発揮することが期待されている(45)
【0006】
ABT−737やABT−263が見出されたものの、Bcl−2/Bcl−xLの強力な非ペプチド阻害薬の設計は、現在の創薬研究において依然として重要な課題の一つである。したがって、治療用途に使用することができるような物理学的特性や薬理学的特性を有するBcl−2/Bcl−xL阻害薬が、当技術分野において今なお必要とされている。本発明は、Bcl−2/Bcl−xLに結合してBcl−2/Bcl−xL活性を抑制するように設計された化合物を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、Bcl−2/Bcl−xLの阻害薬、該阻害薬を含む組成物、ならびにBcl−2/Bcl−xL活性を抑制することによって利益が得られる病態および疾患の治療において該阻害薬を使用する方法に関する。本発明の化合物は、Bcl−2/Bcl−xLの活性化に対する強力な阻害薬であり、Bcl−2および/またはBcl−xLを発現しているがん細胞のアポトーシスを誘導する。
【0008】
より具体的には、本発明は、構造式(I):
【化1】
構造式(II):
【化2】
構造式(III):
【化3】
(式中、
環Aは、
【化4】
であり;
Xは、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、およびヘテロシクロアルキレンからなる群から選択され、置換基を有していてもよく;
Yは、(CH−N(Rおよび
【化5】
からなる群から選択され;
Qは、O、O(CH1〜3、NR、NR(C1〜3アルキレン)、OC(=O)(C1〜3アルキレン)、C(=O)O、C(=O)O(C1〜3アルキレン)、NHC(=O)(C1〜3アルキレン)、C(=O)NH、およびC(=O)NH(C1〜3アルキレン)からなる群から選択され;
Zは、OまたはNRであり;
およびRは独立して、H、CN、NO、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、SR’、NR’R’’、COR’,COR’、OCOR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、NR’COR’’、NR’CONR’’R’’’、NR’C=SNR’’R’’’、NR’SOR’’、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、NR’R’’、OCOR’、COR’、COR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、C1〜3アルキレンCH(OH)CHOH、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
R’、R’’、およびR’’’は独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C1〜3アルキレンヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
R’とR’’、またはR’’とR’’’は、互いに結合して、それらが結合している原子とともに3〜7員の環を形成していてもよく;
は、水素、ハロ、C1〜3アルキル、CF、またはCNであり;
は、水素、ハロ、C1〜3アルキル、置換基を有するC1〜3アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、または置換基を有するアルコキシであり;
は、H、CN、NO、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、SR’、NR’R’’、COR’、OCOR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、NR’COR’’、NR’CONR’’R’’’、NR’C=SNR’’R’’’、NR’SOR’’、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、(CH0〜3シクロアルキル、(CH0〜3シクロアルケニル、(CH0〜3ヘテロシクロアルキル、(CH0〜3アリール、および(CH0〜3ヘテロアリールからなる群から選択され、置換基を有していてもよく;
は、水素、ハロ、NO、CN、CFSO、およびCFからなる群から選択され;
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、置換基を有するアルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
は、水素またはアルキルであり;
は、水素、アルキル、置換基を有するアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、および置換基を有するアルコキシからなる群から選択され;
n、r、およびsは独立して、1、2、3、4、5、または6である)
を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0009】
実施形態のいくつかにおいて、RとR、またはRとRは、互いに結合して環を形成していてもよい。別の実施形態において、R’とR’’、またはR’’とR’’’は、互いに結合して、それらが結合している原子とともに3〜7員の環を形成していてもよい。
【0010】
一実施形態において、本発明は、ある特定の病態または疾患の治療を必要とする個体に治療有効量の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を投与することによって、該病態または疾患を治療する方法を提供する。標的とする疾患または病態は、Bcl−2および/またはBcl−xLを抑制することによって治療可能な疾患または病態(たとえば、がんなど)である。
【0011】
本発明の別の一実施形態では、Bcl−2および/またはBcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患または病態の治療に有用な組成物であって、(a)構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬と、(b)賦形剤および/または薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の一実施形態では、Bcl−2および/またはBcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患または病態の治療を個体に施す方法において、構造式(I)、(II)または(III)の化合物と治療活性を示す第2の薬物とを含む組成物を使用する。
【0013】
さらなる一実施形態では、本発明は、標的とする疾患または病態(たとえば、がんなど)を治療するための薬剤を製造するための、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬と必要に応じて第2の治療薬とを含む組成物の使用を提供する。
【0014】
本発明のさらにまた別の一実施形態では、ヒトにおける医薬用途のためのキットであって、
(a)容器、
(b1)構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬を含む包装された組成物、
(b2)任意で該キットに含まれ、標的とする疾患または病態の治療に有用な第2の治療薬を含む包装された組成物、および
(c)上記疾患または病態の治療における、上記の単一の組成物または同時にもしくは連続して投与される上記の複数の組成物の使用方法を含む添付文書
を含むキットが提供される。
【0015】
構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬および第2の治療薬は、単一の単位用量として一緒に投与することも、あるいは複数の単位用量として別々に投与することもでき、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬の投与は、第2の治療薬を投与する前であっても、第2の治療薬を投与した後であってもよい。構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬および/または第2の治療薬をそれぞれ1回以上投与することも想定される。
【0016】
一実施形態では、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬および第2の治療薬は同時に投与される。これに関連する実施形態では、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬および第2の治療薬は、単一の組成物としてあるいは別々の組成物として投与される。さらなる一実施形態では、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬および第2の治療薬は連続して投与される。本発明において使用される構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬は、1回の投与あたり約0.005〜約500mg、1回の投与あたり約0.05〜約250mg、または1回の投与あたり約0.5〜約100mgの用量で投与することができる。
【0017】
本発明のこれらの実施形態および特徴、ならびにその他の実施形態および特徴は、以下に記載される好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を好ましい実施形態に関連して説明する。しかしながら、本発明は開示される実施形態に限定されない。当業者であれば、本明細書中の実施形態の記載に基づき様々な変更が可能であることは理解されるであろう。そのような変更も後掲の特許請求の範囲に包含される。
【0019】
本明細書において「Bcl−2/Bcl−xL」は、Bcl−2、Bcl−xL、またはBcl−2とBcl−xL、すなわち、Bcl−2および/またはBcl−xLを意味する。
【0020】
「Bcl−2および/またはBcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患または病態」は、疾患もしくは病態の発症、進行、発現などにBcl−2および/もしくはBcl−xL自体、ならびに/もしくはBcl−2および/もしくはBcl−xLの作用が重要もしくは必要である病態、またはABT−737やABT−263などのBcl−2/Bcl−xL阻害薬により治療が行われることが知られている疾患もしくは病態に関連する。このような病態としては、がんが挙げられるがこれに限定されない。当業者であれば、たとえば特定の化合物の活性を簡便に評価することが可能なアッセイなどを使用して、特定の化合物が任意の細胞種においてBcl−2/Bcl−xL媒介性疾患または病態を治療できるかどうかを容易に判断することができる。
【0021】
「第2の治療薬」は、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬とは異なる治療薬であって、標的とする疾患または病態を治療できることが知られている治療薬を指す。たとえば、標的とする疾患または病態ががんである場合、第2の治療薬は、たとえば、タキソールのような公知の化学療法薬であってもよく、放射線療法であってもよい。
【0022】
「疾患」または「病態」は、一般に病的な状態または病的な機能であるとみなされ、特定の徴候、症状および/または機能不全の形で現れうる障害および/または異常を指す。後述するように、構造式(I)、(II)または(III)の化合物はBcl−2/Bcl−xLの強力な阻害薬であり、Bcl−2/Bcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患および病態の治療に使用することができる。
【0023】
本明細書において「治療する」、「治療の」、「治療」などは、疾患もしくは病態、および/またはそれに関連する症状を除去、軽減、または改善することを指す。疾患または病態の「治療」は、疾患、病態、またはそれに関連する症状を完全に取り除くこともできるが、必ずしもこれらを完全に取り除く必要はない。本明細書において「治療する」、「治療の」、「治療」などは、「予防的治療」を含んでいてもよく、「予防的治療」とは、疾患もしくは病態を再発または再燃していないがその恐れまたはその傾向がある対象において、疾患もしくは病態の再発の可能性、または以前は制御されていた疾患もしくは病態の再燃の可能性を減らすことを意味する。「治療する」およびその類義語は、そのような治療を必要とする個体に治療有効量の本発明の化合物を投与することを意図する。
【0024】
本発明が意図する範囲内で「治療」はさらに、再発予防または病相予防、ならびに急性期または慢性期の徴候、症状および/または機能不全の治療も包含する。このような治療は、症状の改善を目的としていてもよく、たとえば症状を抑えるために行ってもよい。治療は、短期間で行ってもよく、中期間で行うことを意図していてもよく、たとえば維持療法の範疇に含まれるような長期間の治療であってもよい。
【0025】
本明細書において「治療有効量」または「有効投与量」は、本発明の方法により有効成分を投与した場合に、標的とする病態または疾患の治療を必要とする個体に有効成分を効果的に送達して該病態または疾患を治療するのに十分な有効成分の量を指す。がんまたは他の増殖性疾患の場合、治療有効量の有効成分によって、望ましくない細胞増殖を抑制してもよく(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止めてもよい);がん細胞の数を低減してもよく;腫瘍の大きさを縮小させてもよく;がん細胞の周辺臓器への浸潤を抑制してもよく(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止めてもよい);腫瘍転移を抑制してもよく(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止めてもよい);腫瘍の成長をある程度抑制してもよく;標的細胞におけるBcl−2/Bcl−xLのシグナル伝達を抑制してもよく;かつ/またはがんに関連した1以上の症状をある程度緩和してもよい。投与した化合物または組成物は、体内に存在するがん細胞の増殖防止および/または殺傷がなされる程度の細胞増殖抑制性および/または細胞障害性を有していてもよい。
【0026】
「容器」は、医薬品の貯蔵、輸送、投薬、および/または取扱いに適した任意の容器とその密封手段とを意味する。
【0027】
「添付文書」は、医薬品の投与方法の説明と、医薬品の使用に関して十分な情報を得た上で決定を行うために医師、薬剤師および患者が必要とする安全性および効能についてのデータとを提供する目的で医薬品に添付されている情報を意味する。添付文書は、一般に、医薬品の「ラベル」と見なされている。
【0028】
「併用投与」、「組み合わせ投与」、「同時投与」、およびこれらの類語は、治療を受けている対象に2種以上の薬物を併用して投与することを意味する。「併用」とは、それぞれの薬物を同時にまたは異なる時点において任意の順序で連続して投与することを意味する。しかしながら、同時に投与しない場合は、それぞれの薬物が所望の治療効果をもたらし、かつ協力的に働くように、それぞれの薬物を十分に近接した時点において連続して個体に投与することを意味する。たとえば、構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬は、第2の治療薬と同時にまたは異なる時点において任意の順序で連続して投与することができる。また、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬と第2の治療薬とを任意の適切な経路を介して任意の適切な形態で別々に投与することもできる。本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬と第2の治療薬とを同時に投与しない場合、それぞれの薬物はこれらの投与を必要とする対象に任意の順序で投与することができる。たとえば、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬は、第2の治療薬による治療(たとえば、放射線療法)を行う前(たとえば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前、または12週間前)、第2の治療薬による治療と同時に、または第2の治療薬による治療を行った後(たとえば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後、または12週間後)に、これらの投与を必要とする個体に投与することができる。様々な実施形態において、構造式(I)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬の投与と第2の治療薬の投与は、1分の間隔、10分の間隔、30分の間隔、1時間未満の間隔、1時間の間隔、1時間〜2時間の間隔、2時間〜3時間の間隔、3時間〜4時間の間隔、4時間〜5時間の間隔、5時間〜6時間の間隔、6時間〜7時間の間隔、7時間〜8時間の間隔、8時間〜9時間の間隔、9時間〜10時間の間隔、10時間〜11時間の間隔、11時間〜12時間の間隔、24時間以下の間隔、または48時間以下の間隔を空けて行われる。一実施形態では、併用療法のそれぞれ成分は1分間〜24時間の間隔を空けて投与される。
【0029】
本発明の説明において(特に特許請求の範囲において)「a」、「an」、「the」、およびこれらに類似の指示語が使用されている場合、特に記載がない限り、単数のもの、複数のものの両方を包含すると解釈される。本明細書に記載の数値範囲は、特に記載がない限り、その範囲内に含まれる個々の数値を簡便に示すことのみを意図しており、このような個々の数値は、本明細書にそれぞれ記載されているものとして本明細書に組み込まれている。本明細書に記載のすべての例示、または例示であることを示す語句(たとえば「など」)は、本発明をより詳しく説明することを意図しており、特に記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載のいかなる語句も、特許請求の範囲に記載されていない要素を本発明の実施に必須のものとして示すものであると解釈されるべきではない。
【0030】
過去10年間にわたるアポトーシスの研究から、小分子阻害薬を用いたBcl−2および/またはBcl−xLのターゲティングは、がんの治療戦略として実施可能であることが証明された(35〜37)。また、ABT−737やABT−263の発見、およびABT−263に関する早期臨床データから、Bcl−2および/またはBcl−xLの非ペプチド小分子阻害薬は、Bcl−2および/またはBcl−xLの過剰発現が見られ、かつ現在の抗がん剤の大部分が効果を示さない様々な種類のヒトがんを治療するための治療薬として使用できる可能性が高いことが実証された(26〜36)
【0031】
ABT−737やABT−263が発見されたものの、ABT−737やABT−263によってもたらされるものに近いBcl−2/Bcl−xLに対する親和性や細胞に対する有効性を有する非常に強力なBcl−2/Bcl−xL小分子阻害薬としては、新たな種類のものはほとんど報告されていない。その理由として、Bcl−2/Bcl−xLの小分子阻害薬の設計が、Bcl−2/Bcl−xLタンパク質とそれらのアポトーシス促進性結合パートナーとの相互作用を標的とし、この相互作用を阻害することに基づいていることが挙げられる。このような設計は少なくとも以下の3つの要因により極めて困難であることが分かっている。第1の要因は、酵素や受容体における典型的な結合部位と比べて、Bcl−2またはBcl−xLとそれらの結合パートナーとの間の界面が非常に大きいことである(38〜42)。Bcl−2/Bcl−xLとその結合パートナー(たとえばBADタンパク質やBimタンパク質など)との相互作用は、BADやBimが有する20〜25残基のBH3ドメインと、Bcl−2/Bcl−xLが有する大きな結合溝とを介して行われる。第2の要因は、Bcl−2/Bcl−xLが有する結合溝は本質的に疎水性が高いため、薬物様小分子の設計が困難となることである(26,38〜42)。第3の要因は、Bcl−2およびBcl−xLのコンフォメーションが極めて柔軟であり、リガンドが結合していない状態や様々なリガンドと結合した場合に全く別のコンフォメーションをとることである(26,38〜42)。BAD(41)、Bim(43)またはABT−737(44)とBcl−xLとの複合体の結晶構造中に見られる結合ポケットのいくつかはリガンドの結合によって誘導され、リガンドが結合していない状態の結晶構造中には存在しない(38)。これらの3つの要因から、Bcl−2/Bcl−xLの強力な薬物様小分子阻害薬の設計は、現在の創薬研究において困難な課題となっている。
【0032】
本発明は、Bcl−2/Bcl−xLの強力かつ特異的な新たな種類の阻害薬に関する。本発明の化合物は、Bcl−2および/またはBcl−xLと10nMよりも低いK値で結合し、無細胞機能アッセイにおいてBcl−2およびBcl−xLの強力なアンタゴニストとして機能することができる。本発明の化合物は、がん細胞においてアポトーシスを強力に誘導し、Bcl−2およびBcl−xLのターゲティングとよく合致した作用機序を有する。試験化合物は、インビボにおける腫瘍組織に対してアポトーシスを強力に誘導し、H146異種移植片腫瘍においては強い抗腫瘍活性を示す。
【0033】
したがって、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬は、がん、前がん状態などの望ましくない増殖性細胞の治療を必要とする対象におけるこれらの増殖性細胞の治療に有用である。また、本発明は、望ましくない増殖性細胞を有する対象を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。本発明はさらに、がん、前がん状態などの望ましくない増殖性細胞の増殖を対象において予防する方法であって、望ましくない増殖性細胞を特徴とする病態を発症する恐れのある対象に治療有効量の構造式(I)の化合物を投与する工程を含む方法を提供する。実施形態のいくつかでは、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、望ましくない細胞においてアポトーシスを誘導することによってこれらの細胞の増殖を抑制した。
【0034】
本発明は、構造式(I):
【化6】
構造式(II):
【化7】
構造式(III):
【化8】
(式中、
環Aは、
【化9】
であり;
Xは、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、およびヘテロシクロアルキレンからなる群から選択され、置換基を有していてもよく;
Yは、(CH−N(Rおよび
【化10】
からなる群から選択され;
Qは、O、O(CH1〜3、NR、NR(C1〜3アルキレン)、OC(=O)(C1〜3アルキレン)、C(=O)O、C(=O)O(C1〜3アルキレン)、NHC(=O)(C1〜3アルキレン)、C(=O)NH、およびC(=O)NH(C1〜3アルキレン)からなる群から選択され;
Zは、OまたはNRであり;
およびRは独立して、H、CN、NO、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、SR’、NR’R’’、COR’,COR’、OCOR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、NR’COR’’、NR’CONR’’R’’’、NR’C=SNR’’R’’’、NR’SOR’’、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、NR’R’’、OCOR’、COR’、COR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、C1〜3アルキレンCH(OH)CHOH、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
R’、R’’、およびR’’’は独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C1〜3アルキレンヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
R’とR’’、またはR’’とR’’’は、互いに結合して、それらが結合している原子とともに3〜7員の環を形成していてもよく;
は、水素、ハロ、C1〜3アルキル、CF、またはCNであり;
は、水素、ハロ、C1〜3アルキル、置換基を有するC1〜3アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、または置換基を有するアルコキシであり;
は、H、CN、NO、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、OR’、SR’、NR’R’’、COR’、OCOR’、CONR’R’’、CONR’SOR’’、NR’COR’’、NR’CONR’’R’’’、NR’C=SNR’’R’’’、NR’SOR’’、SOR’、およびSONR’R’’からなる群から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、(CH0〜3シクロアルキル、(CH0〜3シクロアルケニル、(CH0〜3ヘテロシクロアルキル、(CH0〜3アリール、および(CH0〜3ヘテロアリールからなる群から選択され、置換基を有していてもよく;
は、水素、ハロ、NO、CN、CFSO、およびCFからなる群から選択され;
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、置換基を有するアルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
は、水素またはアルキルであり;
は、水素、アルキル、置換基を有するアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、および置換基を有するアルコキシからなる群から選択され;
n、r、およびsは独立して、1、2、3、4、5、または6である)
を有するBcl−2/Bcl−xL阻害薬、または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0035】
構造式(I)、(II)または(III)の化合物はBcl−2/Bcl−xLを抑制し、様々な疾患および病態の治療に有用である。具体的には、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、Bcl−2/Bcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患または病態、たとえば、がんなどの治療方法に使用される。この方法は、上記の治療を必要とする個体に治療有効量の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を投与することを含む。さらに、本発明の上記方法は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物に加えて、第2の治療薬を上記個体に投与することを包含する。第2の治療薬は、上記治療を必要とする上記個体が罹患している疾患または病態の治療に有用なことが知られている薬物から選択され、このような薬物としては、たとえば、特定のがんの治療に有用であることが知られている化学療法薬および/または放射線が挙げられる。
【0036】
本明細書において「アルキル」は、直鎖状または分岐鎖状の飽和C1〜10炭化水素基を指し、たとえば、メチル基、エチル基、ならびに直鎖状または分岐鎖状の、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられるが、これらに限定されない。「C」は、アルキル基が「n」個の炭素原子を有していることを意味する。「Cn〜p」は、アルキル基が「n」個〜「p」個の炭素原子を含んでいることを意味する。「アルキレン」は、置換基を有するアルキル基を指す。メチル基などのアルキル基または−CH−基などのアルキレン基は、非置換であってもよく、あるいはハロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルアミノ基、アミノ基などで置換されていてもよい。
【0037】
「アルケニル」は、炭素−炭素二重結合を1つ含むこと以外は「アルキル」と同様であると定義され、たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニルが挙げられる。「アルケニレン」は、炭素−炭素二重結合を1つ含むこと以外は「アルキレン」と同様であると定義される。「アルキニル」および「アルキニレン」は、炭素−炭素三重結合を1つ含むこと以外は「アルキル」および「アルキレン」と同様であると定義される。
【0038】
本明細書において「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードと定義される。
【0039】
「ヒドロキシ」は−OHと定義される。
【0040】
「アルコキシ」は−ORと定義され、Rはアルキルである。
【0041】
「アミノ」は−NHと定義される。「アルキルアミノ」は−NRと定義され、少なくとも1つのRはアルキルであり、第2のRはアルキルまたは水素である。
【0042】
「ニトロ」は−NOと定義される。
【0043】
「シアノ」は−CNと定義される。
【0044】
「トリフルオロメチル」は−CFと定義される。
【0045】
「トリフルオロメトキシ」は−OCFと定義される。
【0046】
本明細書において、
【化11】
などの基は、
【化12】
を省略したものである。
【0047】
本明細書において「アリール」は、単環または多環の芳香族基を指し、単環または二環の芳香族基、たとえば、フェニルまたはナフチルであることが好ましい。特に記載がない限り、アリール基は、非置換であってもよく、1個以上の置換基で置換されていてもよく、より具体的には、1〜4個の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、たとえば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF、−CF、−NO、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、−COH、−COアルキル、−OCOアルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される。
【0048】
本明細書において「ヘテロアリール」は、1個または2個の芳香環を含み、該芳香環内に少なくとも1個の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含む、単環構造または二環構造を指す。特に記載がない限り、ヘテロアリール基は、非置換であってもよく、1個以上の置換基で置換されていてもよく、より具体的には、1〜4個の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、たとえば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF、−CF、−NO、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、−COH、−COアルキル、−OCOアルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される。
【0049】
本明細書において「シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を含む単環脂肪族環を指す。「ヘテロシクロアルキル」は、環構造内に少なくとも1個の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含む単環構造または二環構造を指す。「ヘテロアリール」および「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個の酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含む環構造を包含し、酸素原子と窒素原子とを含む環構造、酸素原子と硫黄原子とを含む環構造、窒素原子と硫黄原子とを含む環構造、および窒素原子と酸素原子と硫黄原子とを含む環構造を包含する。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、Xはアルキレンであり、好ましい実施形態において、XはC1〜3アルキレンである。
【0050】
実施形態のいくつかにおいて、Yは、
【化13】
である。
【0051】
好ましい実施形態において、nは2である。別の好ましい実施形態において、Rは水素またはC1〜3アルキルである。
【0052】
さらに別の好ましい実施形態において、Qは、O、O(CH1〜3、C(=O)O(CH1〜3、OC(=O)(CH1〜3またはC(=O)O(C1〜3である。実施形態のいくつかでは、Qは、O、OCH、C(=O)OCH、C(=O)O(CH、C(=O)O(CH、OC(=O)CHまたはC(=O)O(CH(CH)CH)である。
【0053】
実施形態のいくつかにおいて、Zは、O、NHまたはN(C1〜3アルキル)である。好ましい実施形態では、Zは、O、NHまたはNCHである。
【0054】
実施形態のいくつかにおいて、Rは、SOR’、SONR’R’’、NR’SOR’’、H、またはアルキルである。好ましい実施形態のいくつかでは、Rは、SO(C1〜3アルキル)、SON(C1〜3アルキル)、NHSO(C1〜3アルキル)、H、またはC1〜3アルキルである。好ましい一実施形態では、RはSOCHである。
【0055】
実施形態のいくつかにおいて、RおよびRは独立して、H、C1〜3アルキルまたはシクロアルキルである。Rはハロであってもよい。好ましい実施形態のいくつかでは、RおよびRは独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。RはCl、Fのいずれであってもよい。
【0056】
実施形態のいくつかにおいて、Rは、H、ClまたはFである。別の実施形態において、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、F、またはClである。別の実施形態において、Rは、H、ハロ、アルキルまたはシクロアルキルである。好ましい実施形態のいくつかでは、Rは、H、F、Cl、C1〜3アルキル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。
【0057】
実施形態のいくつかにおいて、Rは、(CH0〜3シクロアルキルまたは(CH0〜3ヘテロシクロアルキルである。好ましい一実施形態では、Rは、−OHで置換されていてもよい(CH0〜3シクロアルキルである。一実施形態では、Rは、
【化14】
である。
【0058】
実施形態のいくつかにおいて、RはCFSOまたはCFである。様々な実施形態において、R、RおよびRは独立して、HまたはC1〜3アルキルである。
【0059】
さらに、本発明の化合物の塩、水和物および溶媒和物も本発明に包含され、これらも本明細書で開示した方法に使用することができる。本発明はさらに、構造式(I)、(II)または(III)の化合物の存在しうるあらゆる立体異性体および幾何異性体を包含する。本発明は、ラセミ化合物および光学活性異性体を包含する。構造式(I)、(II)または(III)の化合物を単一のエナンチオマーとして得たい場合、最終生成物を光学分割するか、あるいは光学的に純粋な出発原料から立体特異的合成を行うか、またはキラル補助剤を使用して立体特異的合成を行うことによって得ることができる。これに関しては、たとえばZ. Ma et al., Tetrahedron: Asymmetry, 8(6), pages 883-888 (1997)を参照されたい。最終生成物、中間体または出発原料の光学分割は、当技術分野で知られている任意の適切な方法によって行うことができる。さらに、構造式(I)、(II)または(III)の化合物の互変異性体が存在しうる場合、本発明は本発明の化合物のあらゆる互変異性体を包含すると意図される。
【0060】
本発明の化合物は塩として存在することができる。本発明の方法においては、多くの場合、本発明の化合物の薬学的に許容される塩が好ましい。本明細書において「薬学的に許容される塩」は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物の塩または両性イオン形態を指す。構造式(I)、(II)または(III)の化合物の塩は、該化合物の最終単離精製工程において調製することができ、あるいは別法として、該化合物を適切な陽イオンを有する酸と反応させることによって調製することもできる。構造式(I)、(II)または(III)の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸により形成された酸付加塩であってもよい。薬学的に許容される塩を形成するために使用することができる酸としては、硝酸、ホウ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。本発明の化合物の塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロールリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、イセチオン酸塩、サリチル酸塩、メタンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp−トルエンスルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明の化合物中に存在する利用可能なアミノ基を四級化することができ、具体的には、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、もしくは塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、もしくは臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、もしくはヨウ化ブチル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、もしくは硫酸ジアミル;塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、もしくは塩化ステリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、もしくは臭化ステリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチル、もしくはヨウ化ステリル;または臭化ベンジルもしくは臭化フェネチルを用いて四級化することができる。上記を踏まえ、本明細書における本発明の化合物に関する記載は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物、および薬学的に許容されるその塩、水和物または溶媒和物を包含するものとする。
【0061】
本発明の化合物として、具体的には、以下に示す構造を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明は、Bcl−2および/またはBcl−xLの抑制によって有益な効果が得られる様々な疾患および病態を治療するための、構造式(I)、(II)または(III)の化合物によって例示されるBcl−2/Bcl−xL阻害薬を提供する。一実施形態では、本発明は、Bcl−2/Bcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患および病態に罹患している個体の治療方法であって、該疾患および病態の治療を必要とする個体に治療有効量の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0064】
本発明の上記の方法は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物を無溶媒の化合物として、または医薬組成物として投与することによって達成される。構造式(I)、(II)または(III)の医薬組成物または無溶媒化合物は、標的とする疾患または病態の発症時または発症後に投与することができる。通常、上記の医薬組成物は滅菌されており、投与した場合に有害反応を引き起こす毒性化合物、発がん性化合物、または突然変異誘発性化合物を含有していない。さらに、本発明は、キットであって、構造式(I)、(II)または(III)の化合物と、任意で該キットに含まれ、構造式(I)、(II)または(III)の化合物と別々または一緒に包装された、Bcl−2/Bcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患および病態の治療に有用な第2の治療薬と、これらの活性薬物を使用する際の注意事項が記載された添付文書とを含むキットを提供する。
【0065】
実施形態の多くにおいて、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、Bcl−2/Bcl−xLの抑制によって利益が得られる疾患または病態の治療に有用な第2の治療薬と併用投与される。この第2の治療薬は構造式(I)、(II)または(III)の化合物とは異なるものである。構造式(I)、(II)または(III)の化合物および第2の治療薬は、所望の効果を達成するために同時にまたは連続して投与することができる。さらに、構造式(I)、(II)または(III)の化合物および第2の治療薬は、単一の組成物として投与することができ、あるいは2種の組成物として別々に投与することもできる。
【0066】
第2の治療薬は、該治療薬による所望の治療効果が得られる量で投与される。個々の第2の治療薬の有効用量範囲は当技術分野で知られており、第2の治療薬はそのような確立された有効用量範囲内で該治療効果を必要とする個体に投与される。
【0067】
構造式(I)、(II)または(III)の化合物および第2の治療薬は、単一の単位用量として一緒に投与することも、あるいは複数の単位用量として別々に投与することもできる。複数の単位用量として別々に投与する場合、構造式(I)、(II)または(III)の化合物の投与は、第2の治療薬を投与する前であっても、第2の治療薬を投与した後であってもよい。構造式(I)、(II)もしくは(III)の化合物および/または第2の治療薬をそれぞれ1回以上投与することもできる。したがって、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、1以上の第2の治療薬と併用することができ、第2の治療薬としては、たとえば抗がん薬が挙げられるが、これに限定されない。
【0068】
本発明に従って治療することができる疾患および病態としては、たとえば、がんが挙げられる。様々ながんを治療することができ、該がんとしては、膀胱がん(進行性膀胱がんおよび転移性膀胱がんを含む)、乳がん、結腸がん(結腸直腸がんを含む)、腎臓がん、肝がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、および肺腺癌を含む)、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、尿路性器がん、リンパ系がん、直腸がん、喉頭がん、膵臓がん(膵外分泌腺癌を含む)、食道がん、胃がん、胆嚢がん、子宮頸がん、甲状腺がん、腎臓がん、皮膚がん(扁平上皮細胞癌を含む)などの癌腫;白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、バーキットリンパ腫などのリンパ系造血器腫瘍;急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、前骨髄球性白血病などの骨髄系造血器腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、神経鞘腫などの中枢神経系および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの間葉系由来腫瘍;ならびに悪性黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺がん、奇形癌、腎細胞癌(RCC)、膵臓がん、骨髄腫、骨髄性白血病、リンパ芽球性白血病、神経芽腫、神経膠芽腫などの他の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
さらに、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬によって治療可能ながんとしては、たとえば、成人がんおよび小児がん、充実性腫瘍/悪性腫瘍の成長、粘液様肉腫および円形細胞肉腫、局所進行性腫瘍、転移性がん、ヒト軟部肉腫(ユーイング肉腫を含む)、がん転移(リンパ行性転移を含む)、扁平上皮細胞癌(特に頭頸部扁平上皮癌)、食道扁平上皮細胞癌、口腔癌、血液細胞の悪性腫瘍(多発性骨髄腫を含む)、白血病(急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、および毛様細胞白血病を含む)、滲出液リンパ腫(体腔性リンパ腫)、胸腺リンパ腫、肺がん(小細胞癌を含む)、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、副腎皮質がん、ACTH産生腫瘍、非小細胞がん、乳がん(小細胞癌および乳管癌を含む)、胃腸がん(胃がん、結腸がん、結腸直腸がん、および結腸直腸新生物に関連するポリープを含む)、膵臓がん、肝がん、泌尿器がん(原発性表在性膀胱腫瘍、浸潤性膀胱移行上皮癌、筋肉浸潤性膀胱がんなどの膀胱がん含む)、前立腺がん、女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、原発性腹膜上皮新生物、子宮頸癌、子宮内膜癌、膣がん、外陰部がん、子宮がん、および卵胞の固形腫瘍を含む)、男性生殖管の悪性腫瘍(精巣がんおよび陰茎がんを含む)、腎臓がん(腎細胞癌を含む)、脳がん(内因性脳腫瘍、神経芽腫、星状細胞脳腫瘍、神経膠腫、および中枢神経系における転移性腫瘍細胞の浸潤を含む)、骨がん(骨腫および骨肉腫を含む)、皮膚がん(悪性黒色腫、ヒト皮膚角化細胞の腫瘍進行、および扁平上皮細胞がんを含む)、甲状腺がん、網膜芽細胞腫、神経芽腫、腹水、悪性胸水、中皮腫、ウィルムス腫瘍、胆嚢がん、絨毛性新生物、血管外皮腫、ならびにカポジ肉腫が挙げられる。
【0070】
本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬の投与によって治療することができる他の疾患および病態(がんを包含する)は、米国特許公開第2007/0027135号;米国特許第7,432,304号;米国特許公開第2010/0278921号;および米国指定のWO2012/017251に開示されており、これらの文献はその全体が本明細書に援用される。
【0071】
本発明の方法では、一般に薬学実務に従って製剤化される治療有効量の1以上の化合物(I)、(II)または(III)をその投与を必要とするヒトに投与する。そのような治療が必要かどうかは個々の事例によって異なり、観察される徴候、症状および/または機能不全、特定の徴候、症状および/または機能不全を発症するリスク、ならびに他の要因を考慮に入れた医学的評価(診断)を行った上で決定される。
【0072】
構造式(I)、(II)または(III)の化合物は任意の適切な経路により投与することができ、たとえば、経口投与、頬側投与、吸入投与、舌下投与、直腸投与、経膣投与、腰椎穿刺による大槽内投与もしくは鞘内投与、経尿道投与、鼻腔内投与、経皮投与、または非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、冠動脈内投与、皮内投与、乳房内投与、腹腔内投与、関節内投与、鞘内投与、球後投与、肺内注射、および/または特定部位への外科移植を含む)により投与することができる。非経口投与は、注射針と注射器とを用いて、または高圧技術を用いて行うことができる。
【0073】
医薬組成物には、構造式(I)、(II)または(III)の化合物を有効量で投与することによって所期の目的を達成できる医薬組成物が包含される。正確な処方、投与経路および用量は、診断された病態または疾患を考慮して個々の医師によって決定される。投与量および投与間隔は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物が、治療効果を十分に持続できるレベルで提供されるように個別に調整することができる。
【0074】
構造式(I)、(II)または(III)の化合物の毒性および治療効力は、たとえば、化合物の最大耐量(MTD)(動物において毒性が認められない最大用量と定義される)を決定することなどを目的とした、細胞培養または実験動物を用いた標準的な薬学的手法によって決定することができる。最大耐量と治療効果(たとえば腫瘍増殖の抑制)を得られる量との用量比が治療係数である。用量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じてこの範囲内で変動させることができる。治療有効量は、当業者であれば容易に決定することができるが、特に本明細書に開示された詳細な説明を参照することによって、より容易に決定できるであろう。
【0075】
治療に必要とされる構造式(I)、(II)または(III)の化合物の治療有効量は、治療される病態の特徴、所望される活性持続時間、ならびに患者の年齢および病態によって異なり、最終的には主治医によって決定される。用量および投与間隔は、所望の治療効果を持続するのに十分なBcl−2/Bcl−xL阻害薬の血漿中レベルが得られるように個別に調整することができる。所望の用量は、状況に応じて、単回投与することができ、あるいは適切な間隔を空けて複数回投与することもでき、たとえば、1日に1回、2回、3回、または4回以上に投与量を分割して投与することができる。多くの場合、複数回投与が望ましいか、あるいは必要とされる。たとえば、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬の投与頻度は、1日1回2日間連日投与、その後5日間休薬を2週間実施;1日1回3日間連日投与、その後4日間休薬を3週間実施;週1回の2週間投与;週1回の4週間投与のいずれであってもよく、あるいは状況に応じて決定された任意の投薬計画に従ってもよい。
【0076】
本発明の方法において使用される構造式(I)、(II)または(III)の化合物の投与量は、1回の投与あたり約0.005〜約500mg、1回の投与あたり約0.05〜約250mg、1回の投与あたり約0.5〜約100mgのいずれであってもよい。たとえば、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、1回の投与あたり、約0.005mg、約0.05mg、約0.5mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、または約500mgの量で投与することができ、0.005〜500mgの範囲内の任意の投与量で投与することができる。
【0077】
構造式(I)、(II)または(III)のBcl−2/Bcl−xL阻害薬を含有する組成物、またはそれを含有する組成物の用量は、約1ng/kg〜約200mg/kg、約1μg/kg〜約100mg/kg、約1mg/kg〜約50mg/kgのいずれであってもよい。組成物の用量は、約1μg/kgの用量を包含するが、これに限定されない任意の用量であってよい。組成物の用量は、約1μg/kg、約10μg/kg、約25μg/kg、約50μg/kg、約75μg/kg、約100μg/kg、約125μg/kg、約150μg/kg、約175μg/kg、約200μg/kg、約225μg/kg、約250μg/kg、約275μg/kg、約300μg/kg、約325μg/kg、約350μg/kg、約375μg/kg、約400μg/kg、約425μg/kg、約450μg/kg、約475μg/kg、約500μg/kg、約525μg/kg、約550μg/kg、約575μg/kg、約600μg/kg、約625μg/kg、約650μg/kg、約675μg/kg、約700μg/kg、約725μg/kg、約750μg/kg、約775μg/kg、約800μg/kg、約825μg/kg、約850μg/kg、約875μg/kg、約900μg/kg、約925μg/kg、約950μg/kg、約975μg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、約175mg/kg、および約200mg/kgを包含するが、これらに限定されない任意の用量であってよい。上記の用量は平均的な事例における例示であり、これらよりも高いまたは低い用量が有益である個々の事例も考えられ、そのような事例も本発明の範囲内に含まれる。臨床においては、患者の年齢、体重、および応答性により変動しうる、個々の患者に最も適した実際の投与計画が医師によって決定される。
【0078】
がんの治療において、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、化学療法薬および/または放射線と併用投与することができる。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、γ線(10−20〜10−13m)、X線(10−12〜10−9m)、紫外線(10nm〜400nm)、可視光線(400nm〜700nm)、赤外線(700nm〜1mm)、マイクロ波(1mm〜30cm)などの電磁放射線を使用する。
【0080】
現在、多くのがん治療プロトコルにおいて、電磁放射線(たとえばX線)によって活性化される放射線増感剤が使用されている。X線で活性化される放射線増感剤としては、メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、EO9、RB 6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ならびに治療に有効なこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
がんの光力学治療法(PDT)では、増感剤の放射線活性化因子として可視光線を使用する。光力学放射線増感剤としては、ヘマトポルフィリン誘導体、PHOTOFRIN(登録商標)、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、エチオポルフィリンスズ(SnET2)、フェオボルビド−a、細菌クロロフィル−a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、フタロシアニン亜鉛、ならびに治療に有効なこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
放射線増感剤は、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬の他にも、治療有効量の1以上の化合物を組み合わせて投与することができ、このような化合物としては、標的細胞への放射線増感剤の取り込みを促進させる化合物、標的細胞への治療薬、栄養素、および/または酸素の移動を制御する化合物、放射線照射の有無に関係なく腫瘍に作用する化学療法薬、ならびにがんまたは他の疾患を治療するための治療に有効な他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。放射線増感剤と併用可能なさらなる治療薬としては、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、酸素、カーボゲン、赤血球輸液、パーフルオロカーボン(たとえば、FLUOSOLW(登録商標)−DA)、2,3−DPG、BW12C、カルシウムチャネル遮断薬、ペントキシフィリン、抗血管新生化合物、ヒドララジン、およびL−BSOが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
化学療法薬は、アポトーシスを誘導する任意の薬理作用物質または化合物であってもよい。薬理作用物質または化合物は、たとえば有機小分子、ペプチド、ポリペプチド、核酸、抗体のいずれであってもよい。使用可能な化学療法薬としては、アルキル化薬、代謝拮抗薬、ホルモンおよびそれらのアンタゴニスト、天然物およびそれらの誘導体、放射線同位体、抗体、天然物、ならびにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬は、抗生物質(ドキソルビシン、他のアントラサイクリンアナログなど)、ナイトロジェンマスタード類(シクロホスファミドなど)、ピリミジンアナログ(5−フルオロウラシルなど)、シスプラチン、ヒドロキシウレア、タキソールまたはその天然誘導体もしくは合成誘導体などと一緒に投与することができる。別の例として、ゴナドトロピン依存性細胞とゴナドトロピン非依存性細胞とを含む乳房腺癌などの混合腫瘍の場合には、本発明の化合物をロイプロリドまたはゴセレリン(LH−RHの合成ペプチドアナログ)と一緒に投与することができる。他の抗新生物プロトコルとしては、阻害薬化合物と別の治療法(たとえば外科手術または放射線療法;本明細書において「補助抗新生物療法」とも呼ぶ)との併用が挙げられる。本発明において有用なさらなる化学療法薬としては、ホルモンおよびそれらのアンタゴニスト、放射線同位体、抗体、天然物、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0084】
本発明の方法において有用な化学療法薬の具体例を以下の表に挙げる。
【0085】
【表2】
【0086】
微小管作用薬は細胞有糸分裂を妨害する薬物であり、その細胞傷害作用は当技術分野においてよく知られている。本発明において有用な微小管作用薬としては、アロコルヒチン(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(たとえば、NSC 33410)、ドラスタチン10(NSC 376128)、メイタンシン(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、パクリタキセル(NSC 125973)、TAXOL(登録商標)誘導体(たとえば、NSC 608832)、チオコルヒチン(NSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC 49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC 67574)、天然および合成のエポチロン(エポチロンA、エポチロンB、およびディスコデルモリドなどが挙げられるが、これらに限定されない(Service, (1996) Science, 274:2009参照))、エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4などが挙げられるが、これらに限定されない。このような薬剤の例は、Bulinski (1997) J. Cell Sci. 110:3055 3064; Panda (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10560-10564; Muhlradt (1997) Cancer Res. 57:3344-3346; Nicolaou (1997) Nature 397:268-272; Vasquez (1997) Mol. Biol. Cell. 8:973-985;およびPanda (1996) J. Biol. Chem. 271:29807-29812にも記載されている。
【0087】
使用することができる細胞増殖抑制薬としては、ホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む)が挙げられ、たとえば、17−α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、およびゾラデックスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
他の細胞増殖抑制薬としては、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬などの抗血管新生薬、抗VEGF抗体などの他のVEGF阻害薬、ならびにZD6474、SU668などの小分子が挙げられる。また、抗Her2抗体を使用してもよい。EGFR阻害薬としてはEKB−569(不可逆的阻害薬)が挙げられる。細胞増殖抑制薬としては、EGFRに対して免疫特異的なC225抗体およびSrc阻害薬も挙げられる。
【0089】
細胞増殖抑制薬としての使用に適した他の薬物としては、アンドロゲン依存性腫瘍の増殖を抑制するカソデックス(登録商標)(ビカルタミド、アストラゼネカ社)が挙げられる。細胞増殖抑制薬としてはさらに、エストロゲン依存性乳がんの増殖または成長を抑制する抗エストロゲン剤タモキシフェン(登録商標)が挙げられる。細胞増殖性シグナルの変換に対する阻害薬は細胞増殖抑制薬として機能し、代表的なものとしては、上皮成長因子阻害薬、Her−2阻害薬、MEK−1キナーゼ阻害薬、MAPKキナーゼ阻害薬、PI3阻害薬、Srcキナーゼ阻害薬、およびPDGF阻害薬が挙げられる。
【0090】
本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬とともに投与することができるさらなる第2の治療薬は、米国特許公開第2007/0027135号;米国特許第7,432,304号;米国特許公開第2010/0278921号;および米国指定のWO2012/017251に開示されており、これらの文献は参照により本明細書に援用される。
【0091】
通常、本発明の化合物は、使用される投与経路および標準的な薬学実務に従って選択される医薬担体と混合して投与される。本発明に従って使用される医薬組成物は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物の加工を容易とする賦形剤や補助剤を含む1以上の生理学的に許容される担体を用いて慣用の方法で製剤化される。
【0092】
上記の医薬組成物は、たとえば、慣用の方法に従って、混合、溶解、造粒、糖衣加工、乳化、カプセル封入、封入、または凍結乾燥を行うことによって製造することができる。適切な剤形は、選択された投与経路に依存する。治療有効量の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を経口投与する場合、医薬組成物の形態は通常、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、またはエリキシル剤である。錠剤形態で投与される場合、医薬組成物はゼラチン、アジュバントなどの固体担体をさらに含有することができる。錠剤、カプセル剤、および散剤は、約0.01%〜約95%、好ましくは約1%〜約50%の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を含有する。液体形態で投与される場合、水、ワセリン、または動物由来もしくは植物由来の油などの液体担体を加えることができる。液体形態の医薬組成物は、生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖溶液、またはグリコールをさらに含有することができる。液体形態で投与される場合、医薬組成物は約0.1重量%〜約90重量%、好ましくは約1重量%〜約50重量%の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を含有する。
【0093】
治療有効量の構造式(I)、(II)または(III)の化合物を静脈内注射、皮膚注射または皮下注射によって投与する場合、医薬組成物の形態は、発熱物質を含まない非経口的に許容される水溶液である。このような非経口的に許容される溶液をpH、等張性、安定性などを考慮して調製することは、当技術分野の範囲内である。静脈内注射用、皮膚注射用または皮下注射用の組成物は、通常、等張ビヒクルを含有することが好ましい。
【0094】
構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、当技術分野でよく知られている薬学的に許容される担体と容易に混合することができる。このような担体を使用することによって、該有効成分を、治療を受ける患者が経口摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化することができる。経口使用のための医薬製剤は、構造式(I)、(II)または(III)の化合物を固体賦形剤に加え、得られた混合物を必要に応じて摩砕し、所望に応じて適切な補助剤を加えた後に該顆粒状混合物を錠剤コアまたは糖衣錠コアへと加工することによって得ることができる。適切な賦形剤としては、たとえば充填剤およびセルロース製剤が挙げられる。所望により、崩壊剤を加えることもできる。
【0095】
構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、たとえばボーラス注射、持続点滴などの注射により非経口投与される製剤として製剤化することができる。注射用製剤は、保存剤を添加し、たとえばアンプルなどに入った単位投与形態として、または複数回投与用容器に入れて提供することができる。該組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、エマルションなどの形態とすることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。
【0096】
非経口投与用の医薬組成物としては、水溶性形態の上記有効成分の水溶液が挙げられる。さらに、構造式(I)、(II)または(III)の化合物の懸濁液は、油性注射用懸濁液として適宜調製することもできる。適切な親油性溶媒または親油性ビヒクルとしては、脂肪油および合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射用懸濁液は、該懸濁液の粘度を増加させる物質を含有することができる。また、該懸濁液は、上記化合物の溶解性を増加させ、高濃度溶液の調製を可能とする適切な安定化剤または薬剤を含有していてもよい。別法として、本発明の組成物は、使用前に適切なビヒクル、たとえば発熱物質を含まない滅菌水を用いて再構成される粉末形態であってもよい。
【0097】
さらに、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、たとえば慣用の坐剤用基剤などを含有する、坐剤、停留浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。上述した製剤に加えて、構造式(I)、(II)または(III)の化合物はデポー製剤に製剤化することもできる。そのような長時間作用性製剤は、移植(たとえば皮下移植、筋肉内移植など)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、たとえば、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、適切な高分子材料または疎水性材料を用いて(たとえば、許容される油中のエマルションとして)製剤化することができ、あるいはイオン交換樹脂を用いて製剤化することもできる。
【0098】
具体的には、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、デンプン、ラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態、該化合物単独の、もしくは賦形剤と混合したカプセル剤もしくは膣座剤の形態、または香味剤もしくは着色剤を含有するエリキシル剤もしくは懸濁剤の形態で、経口投与、頬側投与または舌下投与することができる。このような液体製剤は、懸濁化剤などの薬学的に許容される添加剤を用いて調製することができる。また、構造式(I)、(II)または(III)の化合物は、非経口注射することができ、たとえば静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、または冠動脈内注射することができる。非経口投与の場合、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬は、滅菌水溶液の形態で使用するのが最もよく、該滅菌水溶液を血液と等張にするために、たとえば塩類、単糖類(マンニトール、グルコースなど)などの他の物質を含有させることができる。
【0099】
さらなる一実施形態として、本発明は、本発明の方法を実施するために容易に使用できるように包装された1以上の化合物または組成物を含むキットを包含する。単純な一実施形態において、該キットは、密封された瓶や容器などの容器に包装された、本発明の方法の実施に有用な本明細書に記載の化合物または組成物(たとえば、構造式(I)、(II)または(III)の化合物と任意で第2の治療薬とを含む組成物)と、本発明の方法を実施するための該化合物または組成物の使用方法が記載された、容器に貼られたまたは該キット内に同梱されたラベルとを含む。該化合物または組成物は、単位用量形態で包装されていることが好ましい。該キットは、使用する投与経路による該組成物の投与に適した装置をさらに含んでいてもよい。
【0100】
治療医学における使用に加えて、構造式(I)、(II)または(III)の化合物および薬学的に許容されるその塩は、新規治療薬の探索の一端を担うものとして、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット、マウスなどの実験動物においてBcl−2/Bcl−X阻害薬の効果を評価するためのインビトロ・インビボ試験システムの開発および標準化に使用される薬理学的ツールとしても有用である。
【0101】
従来のBcl−2/Bcl−xL阻害薬には、治療薬としての開発の妨げとなる特性があった。本発明の重要な特徴に従って構造式(I)、(II)または(III)の化合物を合成し、Bcl−2/Bcl−xLに対する阻害薬としての評価を行った。たとえば、本発明の化合物は、通常、Bcl−2/Bcl−xLに対して100nM未満の結合親和性(IC50)を有する。
【実施例】
【0102】
化合物の合成
本発明の化合物は下記のように調製した。下記の合成スキームは、構造式(I)、(II)または(III)の化合物を合成するために使用される代表的な反応である。当業者であれば、本発明のBcl−2/Bcl−xL阻害薬を調製するために変更を加えたり、代替スキームを使用したりすることを容易に行うことができる。
溶媒および試薬は市販品を購入し、さらなる精製を行わずに使用した。NMRスペクトルの化学シフト(δ)は内部標準を基準にして低磁場側のδ値(ppm)を記録し、多重線は通常の方法で記録した。
【0103】
特に記載がない限り、温度はすべて摂氏で表す。
【0104】
本発明の化合物の合成において重要な特定の中間体は、以下に示すように、米国指定のWO2012/103059(この文献は参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載の方法で合成し、リン酸塩誘導体に変換することができる。
【0105】
スキーム1 化合物1の合成
【化15】
【0106】
実験:(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−イル 2−アミノアセタート(1)
BM−1197(113mg,0.10mmol)とFmoc−Gly−OSu(43mg,0.11mmol)のCHCl(2mL)溶液を、BM−1197がTLCで確認されなくなるまで室温で1時間撹拌した。該溶液を減圧下で濃縮し、化合物1の粗前駆体を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をアセトニトリル(5mL)に溶解し、ジエチルアミン(0.2mL,2mmol)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで精製して生成物1(TFA塩,83mg,2工程収率70%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
MS (ESI) m/z 1189.08 (M + H)+.
【0107】
スキーム2 化合物2の合成
【化16】
【0108】
実験:(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−イルオキシ)−2−オキソ酢酸(2)
BM−1197(113mg,0.10mmol)とDMAP(2mg,0.02mmol)とEtN(42μL,0.3mmol)のCHCl(2mL)溶液に2−クロロ−2−オキソ酢酸tert−ブチル(33mg,0.2mmol)を加えた。TLCでBM−1197が確認されなくなるまで該溶液を室温で1時間撹拌し、減圧下で濃縮した。粗残渣を5%MeOH/CHClを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して化合物2の前駆体を得た。該前駆体をCHCl(3mL)に溶解し、TFA(3mL)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで混合物を室温で1時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで精製して生成物2(TFA塩,66mg,2工程収率55%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
MS (ESI) m/z 1189.08 (M + H)+.
【0109】
スキーム3 重要な中間体Bと中間体Dの調製
【化17】
【0110】
実験:N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−4−フルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド(B)
化合物A(3.0g,4.9mmol)のメタノール(150mL)溶液にPd/C 10重量%(300mg,0.1eq.m/m)を加えた。TLCで化合物Aが確認されなくなるまで、水素雰囲気下、室温で約20分間該溶液を撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を精製することなく次の工程にそのまま使用した。得られたアニリンをピリジンに溶解し、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)ベンゼン−1−スルホニルクロリド(1.8g,5.4mmol)を0℃で加えた。TLCでアニリンが確認されなくなるまで、混合物を0℃から室温に戻しながら1時間撹拌した。水(10mL)を加え、酢酸エチル(200mL×2)で抽出した。酢酸エチル溶液を合わせ、食塩水(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。濃縮物を40%EtOA/ヘキサンを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体B(3.2g,2工程収率75%)を得た。
MS (ESI) m/z 931.75 (M + K)+.
【0111】
基本手順I (R)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル−4−オキソ−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イルカルバマート(D)
化合物C(5.0g,11.5mmol)のTHF(100mL)溶液に、トリエチルアミン(4.8mL,34.5mmol)およびクロロギ酸エチル(3.3mL,34.5mmol)をアルゴン雰囲気下、−10℃で加えた。混合物を−10℃で1時間撹拌し、NaBH(1.7g,46.1mmol)の水(60mL)溶液を−10℃で滴下した。混合物を−10℃で1時間撹拌した後、さらに室温で2時間撹拌した。1M KHSO水溶液(200mL)で反応をクエンチし、混合物をEtOAc(3×200mL)で抽出した。抽出物を食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。濃縮物を50%EtOA/ヘキサンを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して対応するアルコール(4.3g,収率90%)を得た。これとは別に、塩化オキサリル(2.6mL,31.1mmol)のDCM(100mL)溶液を−78℃に冷却し、ジメチルスルホキシド(3.7mL,51.8mmol)を加えた。該溶液を5分間かけて−40℃に昇温し、再度−78℃に冷却した後、前工程で得られたアルコール(4.3g,10.4mmol)のDCM(50mL)溶液を滴下した。該溶液をさらに40分間撹拌し、過剰量のトリエチルアミン(25mL)を加え、さらに30分間撹拌した。反応混合物を室温に昇温し、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)を加え、DCM(2×200mL)で抽出した。DCM溶液を合わせ、食塩水(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を20%EtOA/ヘキサンを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体D(3.7g,収率85%)を得た。
MS (ESI) m/z 418.25 (M + H)+.
【0112】
スキーム4 化合物3の合成
【化18】
【0113】
実験:ジ−tert−ブチル ピペリジン−4−イル ホスファート(F)
ジ−t−ブチル ジ−イソプロピル ホスホルアミダイト(832mg,3.0mmol)とテトラゾール(6.6mL,0.45Mアセトニトリル溶液)のTHF(15mL)溶液をN下、室温で約10分間撹拌した。化合物E(626mg,2.0mmol)の無水THF(2mL)溶液を15分間かけて反応に加え、化合物EがTLCで確認されなくなるまで、N下、室温で2時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、14%過酸化t−ブチル水溶液(3.0mL,4.6mmol)を加えた。温度を室温に戻し、混合物を一晩撹拌した。飽和NaHCO水溶液(2mL)で反応をクエンチした。反応混合物に水(50mL)を加え、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。酢酸エチル溶液を合わせ、食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をアセトニトリル(20mL)に溶解し、ジエチルアミン(4.1mL,40mmol)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を5%MeOH/DCMを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体F(452mg,2工程収率77%)を得た。
MS (ESI) m/z 295.17 (M + H)+.
【0114】
基本手順II (R)−1−(3−アミノ−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−イル ジ−tert−ブチル ホスファート(G)
中間体F(293mg,1.0mmol)と中間体D(500mg,1.2mmol)のDCE(10mL)溶液にNaBH(OAc)(636mg,3.0mmol)を加え、中間体FがTLCで確認されなくなるまで混合物を室温で一晩撹拌した。混合物をDCM(50mL)で希釈し、食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をアセトニトリル(10mL)に溶解し、ジエチルアミン(2.1mL,20mmol)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を10%MeOH/DCMを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体G(307mg,2工程収率65%)を得た。
MS (ESI) m/z 474.00 (M + H)+.
【0115】
基本手順III (R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−イル 二水素ホスファート(3)
中間体B(100mg,0.11mmol)と中間体G(65mg,0.14mmol)のDMF(2mL)溶液にDIPEA(1mL)を加えた。TLCで中間体Bが確認されなくなるまで該溶液を室温で4時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をDCM(5mL)に溶解し、TFA(2.5mL)を加えた。TLCで原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して、純生成物3(TFA塩,88mg,2工程収率66%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.96 (s, 1H), 7.73 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.32-7.07 (m, 13H), 6.93-6.41 (m, 4H), 4.61-4.41(m, 2H), 3.99 (s, 1H), 3.55-3.11 (m, 16H), 2.84 (s, 3H), 2.74 (s, 3H), 2.26-1.80 (m, 6H), 1.43 (d, J = 7.0 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1212.67 (M + H)+.
【0116】
スキーム5 化合物4の合成
【化19】
【0117】
実験:4−(メチルチオメトキシ)ピペリジン(H)
アルコールE(1.0g,3.1mmol)と硫化メチル(1.8mL,24.8mmol)のアセトニトリル(31mL)溶液を0℃に冷却し、過酸化ベンゾイル(3.0g,12.4mmol)を4等分し10分間かけて順次加え、化合物EがTLCで確認されなくなるまで混合物を0℃で1時間撹拌し、さらに室温で1時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、10%NaCO(100mL)、次いで食塩水(100mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をアセトニトリル(10mL)に溶解し、ジエチルアミン(6.2mL,60mmol)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を5%MeOH/DCMを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体H(270mg,2工程収率54%)を得た。
MS (ESI) m/z 162.83 (M + H)+.
【0118】
(R)−4−(4−(メチルチオメトキシ)ピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−アミン(I)
基本手順IIに準じて、中間体Hおよび中間体Dから化合物Iを調製した。
MS (ESI) m/z 341.58 (M + H)+.
【0119】
(R)−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−イルオキシ)メチル 二水素ホスファート(4)
中間体B(200mg,0.23mmol)と化合物I(86mg,0.25mmol)のDMF(4mL)溶液にDIPEA(2mL)を加えた。TLCで中間体Bが確認されなくなるまで該溶液を室温で4時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を5%MeOH/DCMを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して対応するチオエーテル(241mg,収率88%)を得た。第1の工程で得られたチオエーテル(200mg,0.17mmol)とリン酸(117mg,1.2mmol)とモレキュラーシーブ(4Å,500mg)のTHF(6mL)溶液を0℃に冷却し、N−ヨードスクシンイミド(57mg,0.26mmol)を加え、TLCで出発原料が確認されなくなるまで混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、固形物をメタノールで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して純生成物4(TFA塩,93mg,収率44%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
MS (ESI): m/z 1242.08 (M + H)+.
【0120】
スキーム6 化合物5、化合物6および化合物7の合成
【化20】
【0121】
実験:基本手順IV (R)−3−((5−(4−クロロフェニル)−1−エチル−4−(3−(4−(4−(4−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボニル)オキシ)プロパン酸(5)
化合物957(100mg,0.09mmol)とDIC(18mg,0.14mmol)とDMAP(20mg,0.14mmol)のDCM(2mL)溶液に3−ヒドロキシプロパン酸tert−ブチル(41mg,0.28mmol)を加えた。TLCでBM−957が確認されなくなるまで該溶液を室温で6時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(50mL)、食塩水(50mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をDCM(5mL)に溶解し、TFA(2.5mL)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して純生成物5(TFA塩,75mg,2工程収率70%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
MS (ESI): m/z 1238.17 (M + H)+.
【0122】
(R)−4−((5−(4−クロロフェニル)−1−エチル−4−(3−(4−(4−(4−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボニル)オキシ)安息香酸(6)
基本手順IVに準じて、BM−957および4−ヒドロキシ安息香酸tert−ブチルから化合物6を調製した。
MS (ESI): m/z 1186.00 (M + H)+.
【0123】
(R)−4−((5−(4−クロロフェニル)−1−エチル−4−(3−(4−(4−(4−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボニル)オキシ)シクロヘキサンカルボン酸(7)
基本手順IVに準じて、BM−957および4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸tert−ブチルから化合物7を調製した。
MS (ESI): m/z 1192.25 (M + H)+.
【0124】
スキーム7 化合物8および化合物9の合成
【化21】
【0125】
実験:基本手順V (R)−(((5−(4−クロロフェニル)−1−エチル−4−(3−(4−(4−(4−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボニル)オキシ)メチル)ホスホン酸(8)
BM−957(100mg,0.09mmol)とDIC(18mg,0.14mmol)とDMAP(20mg,0.14mmol)のDCM(2mL)溶液に(ヒドロキシメチル)ホスホン酸ジメチル(40mg,0.28mmol)を加えた。TLCでBM−957が確認されなくなるまで該溶液を室温で6時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(50mL)、食塩水(50mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をDCM(5mL)に溶解し、TMSBr(248μL,1.9mmol)を加えた。MSで出発原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して純生成物8(TFA塩,74mg,2工程収率68%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.92 (s, 1H), 7.73-7.70 (m, 2H), 7.34-6.82 (m, 17H), 4.28 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 4.06-3.35 (m, 14H), 3.20-2.92 (m, 5H), 2.65 (s, 3H), 2.24-1.67 (m, 6H), 1.10 (t, J = 7.0 Hz, 3H). MS (ESI): m/z 1259.50 (M + H)+.
【0126】
(R)−(2−((5−(4−クロロフェニル)−1−エチル−4−(3−(4−(4−(4−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボニル)オキシ)エチル)ホスホン酸(9)
基本手順Vに準じて、BM−957および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物9を調製した。
MS (ESI): m/z 1173.42 (M + H)+.
【0127】
スキーム8 化合物10の合成
【化22】
【0128】
((R)−4−(5−(4−クロロフェニル)−1−エチル−4−(3−(4−(4−(4−(4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イルアミノ)−3−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド)シクロヘキサンカルボン酸(10)
BM−957(100mg,0.09mmol)とEDCI(27mg,0.14mmol)とHOBT(19mg,0.14mmol)のDCM(2mL)溶液に4−アミノシクロヘキサンカルボン酸メチル(44mg,0.28mmol)を加えた。TLCでBM−957が確認されなくなるまで該溶液を室温で2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(50mL)、食塩水(50mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をHOおよびMeOH(それぞれ5mLおよび5mL)に溶解し、NaOH(76mg,1.9mmol)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して純生成物10(TFA塩,61mg,2工程収率55%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
MS (ESI): m/z 1191.17 (M + H)+.
【0129】
スキーム9 化合物11の合成
【化23】
【0130】
実験:(R)−(((5−(4−クロロフェニル)−4−(3−(4−(4−(4−((4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボニル)オキシ)メチル)ホスホン酸(11)
基本手順Vに準じて、BM−962および(ヒドロキシメチル)ホスホン酸ジメチルから化合物11を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 8.00 (s, 1H), 7.80-7.71 (m, 2H), 7.38-6.83 (m, 17H), 4.50-4.41 (m, 1H), 4.29 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.11-3.59 (m, 12H), 3.25-3.01 (m, 6H), 2.77 (s, 3H), 2.28-1.70 (m, 6H), 1.47 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1174.25 (M + H)+.
【0131】
スキーム9 化合物12の合成
【化24】
【0132】
実験:(R)−(2−((1−(3−((4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)アミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−イル)オキシ)−2−オキソエチル)ホスホン酸(12)
基本手順Vに準じて、BM−1197および2−(ジエトキシホスホリル)酢酸から化合物12を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.99 (s, 1H), 7.75 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.36-7.13 (m, 12H), 6.92-6.43 (m, 5H), 5.10 (s, 1H), 4.51-4.44 (m, 1H), 4.10 (s, 1H), 3.56-2.93 (m, 18H), 2.87 (s, 3H), 2.76 (s, 3H), 2.29-1.90 (m, 6H), 1.46 (d, J = 7.3 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1253.36 (M + H)+.
【0133】
スキーム10 化合物13の合成
【化25】
【0134】
実験:(R)−tert−ブチル 1−(3−アミノ−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボキシラート(K)
基本手順IIに準じて、ピペリジン−4−カルボン酸tert−ブチルおよび中間体Dから化合物Kを調製した。
MS (ESI): m/z 365.50 (M + H)+.
【0135】
(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボン酸(13)
基本手順IIIに準じて、化合物Kおよび中間体Bから化合物13を調製した。
MS (ESI): m/z 365.50 (M + H)+.
【0136】
スキーム11 化合物14、化合物15、化合物16および化合物17の合成
【化26】
【0137】
実験:(R)−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)メチルホスホン酸(14)
基本手順Vに準じて、化合物13および(2−ヒドロキシメチル)ホスホン酸ジメチルから化合物14を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.94 (s, 1H), 7.72 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.30-7.09 (m, 13H), 6.91-6.42 (m, 4H), 4.49-4.40 (m, 1H), 3.99 (s, 1H), 3.55-2.90 (m, 16H), 2.84 (s, 3H), 2.72 (s, 3H), 2.63-2.55 (m, 1H), 2.23-1.81 (m, 6H), 1.41 (d, J = 4.3 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1160.34 (M + H)+.
【0138】
(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)エチルホスホン酸(15)
基本手順Vに準じて、化合物13および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物15を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.93 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.72 (dd, J = 9.2, 1.8 Hz, 1H), 7.30-7.12 (m, 12H), 6.83-6.42 (m, 5H), 4.46-4.33 (m, 3H), 3.96 (s, 1H), 3.54-2.93 (m, 16H), 2.82 (s, 3H), 2.72 (s, 3H), 2.71-2.55 (m, 1H), 2.24-1.65 (m, 8H), 1.41 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1268.58 (M + H)+.
【0139】
(R)−3−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)プロピルホスホン酸(16)
基本手順Vに準じて、化合物13および3−ヒドロキシプロピルホスホン酸ジメチルから化合物16を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.95 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.73 (dd, J = 9.2, 2.1 Hz, 1H), 7.33-7.12 (m, 12H), 6.92-6.43 (m, 5H), 4.51-4.41 (m, 1H), 4.18-3.98 (m, 3H), 3.56-2.92 (m, 16H), 2.85 (s, 3H), 2.73 (s, 3H), 2.67-2.50 (m, 1H), 2.25-1.70 (m, 10H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1282.34 (M + H)+.
【0140】
2−(1−((R)−3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)プロピルホスホン酸(17)
基本手順Vに準じて、化合物13および2−ヒドロキシプロピルホスホン酸ジメチルから化合物17を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.97 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.36-7.08 (m, 13H), 6.85-6.43 (m, 4H), 5.26 (s, 1H), 4.54-4.44 (m, 1H), 4.01 (s, 1H), 3.58-2.92 (m, 16H), 2.87 (s, 3H), 2.76 (s, 3H), 2.70-2.55 (m, 1H), 2.26-1.85 (m, 8H), 1.46 (d, J = 7.1 Hz, 6H), 1.38 (d, J = 5.9 Hz, 3H). MS (ESI): m/z 1281.34 (M + H)+.
【0141】
スキーム12 化合物18の合成
【化27】
【0142】
実験:(R)−メチル 1−(3−アミノ−4−(フェニルチオ)ブチル)−4−メチルピペリジン−4−カルボキシラート(M)
基本手順IIに準じて、4−メチルピペリジン−4−カルボン酸メチルおよび中間体Dから化合物Mを調製した。
MS (ESI): m/z 337.55 (M + H)+.
【0143】
(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)−4−メチルピペリジン−4−カルボン酸(18)
中間体B(100mg,0.11mmol)と化合物M(47mg,0.14mmol)のDMF(2mL)溶液にDIPEA(1mL)を加えた。TLCで中間体Bが確認されなくなるまで該溶液を室温で4時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をHOおよびMeOH(それぞれ5mLおよび5mL)に溶解し、NaOH(88mg,2.2mmol)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して純生成物18(TFA塩,75mg,2工程収率58%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.99 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.76 (dd, J = 9.1, 1.9 Hz, 1H), 7.37-6.84 (m, 14H), 6.68-6.45 (m, 3H), 4.55-4.45 (m, 1H), 4.02 (s, 1H), 3.58-2.92 (m, 17H), 2.88 (s, 3H), 2.77 (s, 3H), 2.41-1.86 (m, 5H), 1.47 (d, J = 7.1 Hz, 6H), 1.31 (s, 3H). MS (ESI): m/z 1173.73 (M + H)+.
【0144】
スキーム13 化合物19の合成
【化28】
【0145】
実験:(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)−4−メチルピペリジン−4−カルボニルオキシ)エチルホスホン酸(19)
基本手順Vに準じて、化合物18および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物19を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.98 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.73 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 1H), 7.35-6.83 (m, 14H), 6.65-6.44 (m, 3H), 4.52-4.38 (m, 3H), 4.01 (s, 1H), 3.44-2.92 (m, 17H), 2.87 (s, 3H), 2.77 (s, 3H), 2.45-2.11 (m, 5H), 1.71 (t, J = 14.4 Hz, 2H), 1.46 (d, J = 7.1 Hz, 6H), 1.30 (s, 3H). MS (ESI): m/z 1281.92 (M + H)+.
【0146】
スキーム14 化合物20の合成
【化29】
【0147】
実験:(R)−3−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−4−(2−フルオロフェニルチオ)ブタン酸(O)
BuP(0.8mL,3.3mmol)とADDP(833mg,3.3mmol)のTHF(30mL)溶液を化合物N(1.2g,3.0mmol)およびチオフェノール(320μL,3.0mmol)で処理し、化合物NがTLCで確認されなくなるまで4時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、1M HCl水溶液(100mL)、食塩水(100mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をDCM(10mL)に溶解し、TFA(5mL)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を5%MeOH/DCMを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体O(840mg,2工程収率62%)を得た。
MS (ESI) m/z 452.86 (M + H)+.
【0148】
(R)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 1−(2−フルオロフェニルチオ)−4−オキソブタン−2−イルカルバマート(P)
基本手順Iに準じて、中間体Oから化合物Pを調製した。
MS (ESI) m/z 437.00 (M + H)+.
【0149】
(R)−tert−ブチル 1−(3−アミノ−4−(2−フルオロフェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボキシラート(Q)
基本手順IIに準じて、化合物Pおよび化合物Jから化合物Qを調製した。
MS (ESI) m/z 383.38 (M + H)+.
【0150】
(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(2−フルオロフェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボン酸(20)
基本手順IIIに準じて、化合物Qおよび中間体Bから化合物20を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.97 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.76 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 1H), 7.39-6.87 (m, 13H), 6.65-6.43 (m, 3H), 4.54-4.45 (m, 1H), 4.01 (s, 1H), 3.67-2.93 (m, 17H), 2.87 (s, 3H), 2.77 (s, 3H), 2.29-1.86 (m, 6H), 1.46 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1177.92 (M + H)+.
【0151】
スキーム15 化合物21の合成
【化30】
【0152】
実験:(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(2−フルオロフェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)エチルホスホン酸(21)
基本手順Vに準じて、化合物20および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物21を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.95 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.77 (dd, J = 9.0, 2.0 Hz, 1H), 7.36-6.86 (m, 13H), 6.66-6.44 (m, 3H), 4.51-4.33 (m, 3H), 4.01 (s, 1H), 3.58-2.93 (m, 16H), 2.85 (s, 3H), 2.74 (s, 3H), 2.70-2.58 (m, 1H), 2.27-1.84 (m, 8H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1286.58 (M + H)+.
【0153】
スキーム16 化合物22の合成
【化31】
【0154】
実験:(R)−tert−ブチル 1−(4−(フェニルチオ)−3−(4−スルファモイル−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)ブチル)ピペリジン−4−カルボキシラート(S)
化合物K(1.1g,3.0mmol)と化合物R(922mg,3.0mmol)のDMF(15mL)溶液にDIPEA(3mL)を加えた。TLCで化合物Kが確認されなくなるまで該溶液を室温で4時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を5%MeOH/DCMを用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して中間体S(1.7g,2工程収率88%)を得た。
MS (ESI) m/z 653.21 (M + H)+.
【0155】
(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチルシクロヘキサ−1−エンイル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボン酸(22)
化合物T(438mg,1.0mmol)とEDCI(386mg,2.0mmol)とDMAP(121mg,1.0mmol)のDCM(10mL)溶液に中間体S(718mg,1.1mmol)を加えた。TLCで化合物Tが確認されなくなるまで該溶液を室温で2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(50mL)、食塩水(50mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を得て、精製することなく次の工程に使用した。得られた残渣をDCM(10mL)に溶解し、TFA(5mL)を加えた。TLCで出発原料が確認されなくなるまで該溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をHPLCで精製して、純生成物22(TFA塩,742mg,2工程収率73%)を得た。グラジエント条件は、溶媒A:溶媒B=60%:40%から40分で溶媒A:溶媒B=20%:80%とした。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 8.30 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.02 (dd, J = 9.2, 2.5 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.40-6.88 (m, 12H), 4.04 (s, 1H), 3.67-2.82 (m, 19H), 2.58 (t, J = 14.4 Hz, 1H), 2.37-1.81 (m, 10H), 1.53 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 1.03 (s, 6H). MS (ESI): m/z 1017.50 (M + H)+.
【0156】
スキーム17 化合物23、化合物24および化合物25の合成
【化32】
【0157】
実験:(R)−(1−(3−(4−(N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチルシクロヘキサ−1−エンイル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)メチルホスホン酸(23)
基本手順Vに準じて、化合物22および(2−ヒドロキシメチル)ホスホン酸ジメチルから化合物23を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 8.35 (s, 1H), 8.09 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.44-6.82 (m, 12H), 4.30-4.10 (m, 3H), 3.74-2.73 (m, 19H), 2.43-1.44 (m, 12H), 1.10 (s, 6H). MS (ESI): m/z 1110.58 (M + H)+.
【0158】
(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチルシクロヘキサ−1−エンイル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)エチルホスホン酸(24)
基本手順Vに準じて、化合物22および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物24を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 8.29 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.02 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.37-6.84 (m, 12H), 4.34-4.30 (m, 2H), 4.03 (s, 1H), 3.66-2.88 (m, 18H), 2.62 (t, J = 14.4 Hz, 1H), 2.36-1.82 (m, 12H), 1.53 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 1.03 (s, 6H). MS (ESI): m/z 1025.64 (M + H)+.
【0159】
(R)−3−(1−(3−(4−(N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチルシクロヘキサ−1−エンイル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)プロピルホスホン酸(25)
基本手順Vに準じて、化合物22および3−ヒドロキシプロピルホスホン酸ジメチルから化合物25を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.95 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.73 (dd, J = 9.2, 2.1 Hz, 1H), 7.33-7.12 (m, 12H), 6.92-6.43 (m, 5H), 4.51-4.41 (m, 1H), 4.18-3.98 (m, 3H), 3.56-2.92 (m, 16H), 2.85 (s, 3H), 2.73 (s, 3H), 2.67-2.50 (m, 1H), 2.25-1.70 (m, 10H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1282.34 (M + H)+.
【化33】
【0160】
5−(4−クロロフェニル)−4−(3−(4−(4−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−1−イソプロピル−2−メチル−N−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−カルボキサミド(V)
化合物Bの調製について記載した手順に準じて、化合物Uから化合物Vを調製した。
【0161】
(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニルカルバモイル)−1H−ピロール−3−イル)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボン酸(26)(BM−1077)
基本手順IIIに準じて、化合物Kおよび化合物Vから化合物26を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.94 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.71 (dd, J = 2.0, 9.2 Hz, 1H), 7.39-7.28 (m, 4H), 7.26-7.14 (m, 6H), 7.09-6.96 (m, 5H), 6.93-6.85 (m, 2H), 6.81 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.41 (quintet, J = 7.0 Hz, 1H), 4.06-3.88 (m, 1H), 3.66-3.33 (m, 8H), 3.25-2.79 (m, 10H), 2.63 (s, 3H), 2.36-1.71 (m, 8H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1184.42 (M + H)+.
【0162】
(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニルカルバモイル)−1H−ピロール−3−イル)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン−4−カルボニルオキシ)エチルホスホン酸(27)(BM−1080)
基本手順Vに準じて、化合物26および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物27を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.95 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.69 (dd, J = 1.8, 9.3 Hz, 1H), 7.39-7.28 (m, 4H), 7.27-7.12 (m, 6H), 7.08-6.76 (m, 8H), 6.70 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 4.49-4.27 (m, 3H), 4.04-3.89 (m, 1H), 3.65-3.48 (m, 2H), 3.29-2.84 (m, 15H), 2.63 (s, 3H), 2.37-1.74 (m, 11H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1292.00 (M + H)+.
【0163】
【化34】
【0164】
(R)−メチル 1−(3−アミノ−4−(フェニルチオ)ブチル)−3−メチルアゼチジン−3−カルボキシラート(X)
基本手順IIに準じて、3−メチルアゼチジン−3−カルボン酸メチル(W)および中間体Dから化合物Xを調製した。
【0165】
(R)−1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)−3−メチルアゼチジン−3−カルボン酸(28)(BM−1082)
化合物18の調製について記載した手順に準じて、化合物Xおよび中間体Bから化合物28を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.94 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 2.1, 9.1 Hz, 1H), 7.35-7.24 (m, 4H), 7.23-7.12 (m, 5H), 7.07-6.91 (m, 4H), 6.87 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 6.63-6.47 (m, 2H), 6.41 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 4.55-4.38 (m, 2H), 3.97 (br. s., 3H), 3.29-3.08 (m, 13H), 2.84 (s, 3H), 2.74 (s, 3H), 2.12-1.81 (m, 2H), 1.56 (br. s., 3H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1144.75 (M + H)+.
【0166】
(R)−2−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)−3−メチルアゼチジン−3−カルボニルオキシ)エチルホスホン酸(29)(BM−1083)
基本手順Vに準じて、化合物28および(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチルから化合物29を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.94 (d, J =1.8 Hz, 1H), 7.72 (dd, J = 2.0, 9.1 Hz, 1H), 7.36-7.26 (m, 4H), 7.25-7.15 (m, 5H), 7.10-7.00 (m, 4H), 6.92-6.83 (m, 1H), 6.63 (s, 1H), 6.57 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 6.42 (d, J = 9.2 Hz, 1H) 4.58-4.35 (m, 5H), 4.12-3.82 (m, 3H), 3.29-3.05 (m, 11H), 2.84 (s, 3H), 2.74 (s, 3H), 2.25-1.83 (m, 5H), 1.50 (br. s., 3H), 1.43 (d, J = 7.1 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1252.83 (M + H)+.
【0167】
(R)−3−(1−(3−(4−(N−(4−(4−(3−(2−(4−クロロフェニル)−1−イソプロピル−5−メチル−4−(メチルスルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−5−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)スルファモイル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニルアミノ)−4−(フェニルチオ)ブチル)−3−メチルアゼチジン−3−カルボニルオキシ)プロピルホスホン酸(30)(BM−1084)
基本手順Vに準じて、化合物28および(3−ヒドロキシプロピル)ホスホン酸ジメチルから化合物30を調製した。
1H NMR (300 M Hz, CD3OD): δ 7.94 (s, 1H), 7.71 (dd, 1.5, 9.0 Hz, 1H), 7.36-7.26 (m, 4H), 7.24-7.15 (m, 5H), 7.08-6.97 (m, 4H), 6.90-6.79 (m, 2H), 6.62 (s, 1H), 6.56 (d, J = 11.8 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.54-4.37 (m, 3H), 4.33-4.21 (m, 2H), 3.99 (br. s., 3H), 3.28-3.05 (m, 11H), 2.84 (s, 3H), 2.74 (s, 3H), 2.15-1.71 (m, 7H), 1.57 (s, 3H), 1.43 (d, J = 7.0 Hz, 6H). MS (ESI): m/z 1266.92 (M + H)+.
【0168】
Bcl−2タンパク質、Bcl−xLタンパク質およびMcl−1タンパク質の蛍光偏光ベース結合アッセイ
高感度かつ定量的な蛍光偏光(FP)ベースの結合アッセイを開発しそれを最適化して、組換えBcl−2タンパク質、組換えBcl−xLタンパク質および組換えMcl−1タンパク質に対するBcl−2ファミリータンパク質阻害薬の結合親和性を求めた。
【0169】
タンパク質に対する蛍光プローブのK値の決定
フルオレセインで標識したBIM(81〜106)ペプチド、Bak(72〜87)ペプチド、およびBID(79〜99)ペプチド(それぞれFlu−BIM、Flu−BAKおよびFlu−BIDと命名)を作製し、これらの自家製ペプチドをそれぞれBcl−2、Bcl−xLおよびMcl−1に対するFPアッセイの蛍光プローブとして使用した。蛍光プローブの濃度を一定とし、タンパク質の濃度を完全飽和まで段階的に増加させて、蛍光プローブとタンパク質の混合物を複数調製し、それらの全蛍光偏光度をモニタリングすることによって、Bcl−2に対するFlu−BIMのK値、Bcl−xLに対するFlu−BAKのK値およびMcl−1に対するFlu−BIDのK値を求めたところ、それぞれ0.55±0.15nM、4.4±0.8nM、および6.8±1.5nMであった。蛍光偏光値は、インフィニットM-1000マルチモードプレートリーダー(Tecan U.S.社、ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)を用いて、Microfluor 2黒色96ウェル丸底プレート(サーモサイエンティフィック社)において測定した。各ウェルに1nMのFlu−BIM、2nMのFlu−BAKまたは2nMのFlu−BIDと、濃度を段階的に増加させたBcl−2、Bcl−xLまたはMcl−1とを加え、アッセイバッファー(0.01%トリトンX−100および4%DMSOを添加した、100mMリン酸カリウム、pH7.5、100μg/mLウシγ−グロブリン、0.02%アジ化ナトリウム、インビトロジェン社)中の最終容量を125μLとした。プレートを緩やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートし、平衡状態とした。偏光値は、励起波長485nm、発光波長530nmにおいてミリ偏光単位(mP)で測定した。次いで、Graphpad Prism 5.0ソフトウェア(Graphpad Software社、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、S字状の用量依存的なFP値の増加をタンパク質濃度の関数としてフィッティングすることにより平衡解離定数(K)を算出した。
【0170】
Bcl−2ファミリータンパク質阻害薬のK値の決定
Bcl−2タンパク質、Bcl−xLタンパク質およびMcl−1タンパク質に対するBcl−2ファミリータンパク質阻害薬のK値は、一定濃度のタンパク質への結合に対して、段階希釈した阻害薬と一定濃度の蛍光プローブとを競合させた阻害薬用量依存的競合結合実験により求めた。DMSO中の試験阻害薬5μLと、プレインキュベートしたアッセイバッファー中タンパク質/プローブ複合体120μLとの混合物をアッセイプレートに加え、緩やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートした。タンパク質とプローブの最終濃度は、Bcl−2アッセイではそれぞれ1.5nMおよび1nM、Bcl−xLアッセイではそれぞれ10nMおよび2nM、Mcl−1アッセイではそれぞれ20nMおよび2nMである。各アッセイプレートは、タンパク質/プローブ複合体のみを含有するネガティブコントロール(阻害率0%に相当)と、遊離のプローブのみを含有するポジティブコントロール(阻害率100%に相当)とを含んでいた。上記と同様にしてFP値を測定した。IC50値は、非直線回帰により競合曲線をフィッティングすることにより求めた。阻害薬のK値は、得られたIC50値、タンパク質に対するプローブのK値、ならびに競合アッセイにおけるタンパク質濃度およびプローブ濃度から、本発明者らが導き出した既報の式(Z. Nikolovska-Coleska et al., Analytical Biochemistry, 2004, 332, 261-273.)を用いて算出した。さらに、一般的によく使用される既報の別の式(X. Y. Huang, Journal of Biomolecular Screening, 2003, 8, 34-38)を用いてK値を再度算出し、この式から得られた結果と本発明者らが算出した結果とが極めてよく一致することを確認した。
【0171】
細胞増殖アッセイ
段階希釈した化合物とともに、RS4;11細胞およびH146細胞を10,000細胞/ウェルの密度で96ウェル細胞培養プレートに播種し、95%大気および5%COの雰囲気下、37℃で4日間インキュベートした。WST−8(2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム・一ナトリウム塩)をベースとしたCell Counting-8 Kit(Dojindo Molecular Technologies,Inc.、メリーランド州ロックビル)を製造業者の説明書に従って使用して細胞生存率を求めた。すなわち、最終濃度が10%(v/v)となるようにWST−8を各ウェルに加え、プレートを37℃で1〜2時間インキュベートして発色させた。SPECTRAmax PLUSプレートリーダー(Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベール)を用いて450nmで吸光度を測定した。GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software社、カリフォルニア州ラホヤ)を用いて半数阻害濃度(IC50)を算出した。
【0172】
細胞死アッセイ
細胞生存率を測定するためのトリパンブルー色素排除試験法を用いて細胞死アッセイを行った。100万個の細胞を6ウェルプレートに播種し、化合物の存在下または非存在下において95%大気および5%COの雰囲気下、37℃で所定の時点までインキュベートした。処理終了後、細胞を回収し、1000rpmで5分間遠心分離した。細胞ペレットをPBS中に再懸濁し、0.4%トリパンブルー(インビトロジェン社)と1:1の希釈率で混和し、オリンパスCKX41顕微鏡(オリンパス社、ペンシルベニア州センター・バレー)を用いて細胞生存率を求めた。
【0173】
アポトーシスアッセイ
アネキシン−V−FLUOSステイニングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社、インディアナ州インディアナポリス)を製造業者の説明書に従って使用してアポトーシスアッセイを行った。すなわち、所定の時点まで細胞を化合物で処理し、回収し、PBSで洗浄した。アネキシン V−FITCおよびヨウ化プロピジウムで細胞を暗所室温で15分間染色し、BDバイオサイエンスFACSCaliburs(ベクトン・ディッキンソン社)で分析した。
【0174】
ウェスタンブロット分析
プロテアーゼ阻害薬(α−コンプリート、ロシュ社)を添加した溶解バッファー(1%NP40、0.5%デオキシコール酸Naおよび0.1%SDSを含有するPBS)で細胞を溶解した。タンパク質抽出物を比色定量アッセイ(ブラッドフォード試薬)(バイオ・ラッド社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて定量した。4〜20%SDS−PAGEゲル(インビトロジェン社)上でタンパク質を電気泳動し、二フッ化ポリビニリデン膜(バイオ・ラッド社)に転写した。5%ミルクでブロッキングした後、特異的一次抗体とともに膜をインキュベートし、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(Pierce社)とともにインキュベートした。化学発光西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体検出試薬(Denville Scientific社)でシグナルを可視化した。
【0175】
シトクロムcおよびSmac放出アッセイ
H146細胞またはRS4;11細胞400万個を95%大気および5%COの雰囲気下、37℃で所定の時点まで化合物で処理し、PBSで洗浄し、ジギトニンバッファー(75mM NaCl、8mM NaHPO、1mM NaHPO、1mM EDTA、350μg/mLジギトニン、および250mMスクロース)100μL中に再懸濁した。13,000rpmで1分間遠心分離して、細胞質分画とオルガネラ膜分画とを分離した。細胞質分画を12%SDS−PAGE上で分離し、抗シトクロムc抗体(BDバイオサイエンス社)および抗Smac抗体(Cell Signaling Technology社、マサチューセッツ州ダンバース)を用いて検出した。
【0176】
詳細には、Bcl−2、Bcl−xLおよびMcl−1に対する親和性について本発明の化合物を分析した。得られた分析結果を、Bcl−2/Bcl−xLに対する公知の特許取得阻害薬であるABT−737の分析結果と比較し、さらに上記ペプチド間でも比較した。表1に結果を要約する。
【0177】
【表3】
【0178】
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