特許第6347796号(P6347796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マルホウの特許一覧

<>
  • 特許6347796-剥離塗材回収システム 図000002
  • 特許6347796-剥離塗材回収システム 図000003
  • 特許6347796-剥離塗材回収システム 図000004
  • 特許6347796-剥離塗材回収システム 図000005
  • 特許6347796-剥離塗材回収システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347796
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】剥離塗材回収システム
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/14 20060101AFI20180618BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20180618BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20180618BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B08B3/14
   E04G23/02 ZESW
   B01D23/02 Z
   B08B3/02 E
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-27597(P2016-27597)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-144384(P2017-144384A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2016年9月14日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−193444(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3044559(JP,U)
【文献】 特開2006−305468(JP,A)
【文献】 特開2006−142128(JP,A)
【文献】 特開2004−275849(JP,A)
【文献】 特開2009−263860(JP,A)
【文献】 特開2008−150774(JP,A)
【文献】 特開2013−133636(JP,A)
【文献】 特開2011−062585(JP,A)
【文献】 特開2012−239414(JP,A)
【文献】 特開2012−132227(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3192776(JP,U)
【文献】 特開2005−126922(JP,A)
【文献】 特開平05−192695(JP,A)
【文献】 特開平01−239262(JP,A)
【文献】 特開平01−094156(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0016205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00− 3/14
B21D 21/00
B01D 23/00−35/04
B01D 35/08−37/08
E04G 23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の水道から給水された水を取り入れ、その取り入れた水を加圧することにより高圧水を供給する高圧水供給装置と、
前記高圧水供給装置から供給された高圧水を構造物に噴射することにより、前記構造物に塗装された塗材を剥離する剥離装置と、
前記構造物に噴射された高圧水と、前記構造物から剥離された塗材とが混合した混合水から前記塗材を濾過するための濾過槽と、
前記濾過槽の内部を負圧状態にする減圧装置と、
前記剥離装置と連結されており、負圧状態の前記濾過槽へ前記混合水を送出する混合水送出ホースと、
前記濾過槽の内部において前記混合水送出ホースの出口方向に配置されており、前記混合水に含まれる塗材を濾過する素材により形成されており、かつ、その濾過された塗材を蓄積しながら収容する上面が開口した形状に形成されるフレキシブルコンテナバッグ(登録商標)と、
前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出し、前記濾過槽に貯留した水を前記濾過槽の外部へ排水するグラウトポンプと、
前記グラウトポンプにより排水された水を濾過するとともに中和することにより、環境基準に適合した水に変化させ、その変化した水を排水する水処理装置と、を備えており、

前記濾過槽は、
その底面から所定の高さに配置される網目状の上面を有する底板であって、前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)が載置される底板と、
前記濾過槽の底部に近い位置であって、かつ、前記底板の高さよりも低い位置に形成される排水口とを備え、
前記剥離装置および前記減圧装置が稼働している状態において、前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出した水が前記底板の網目を通過して前記濾過槽の底部に貯留され、かつ、前記濾過槽の底部に貯留した水が前記グラウトポンプにより前記排水口から排出されることにより、前記濾過槽内が目標の真空圧に維持されながら同濾過槽における水位が前記底板の上面よりも低い水位に維持されるように構成されており、

加えて、前記濾過槽は、
前記濾過槽内の側板に固定される係止部材と、
前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)を前記濾過槽の外部へ取出すための開閉可能な天板と、を備え、
前記底板に前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)を載置するときには、前記係止部材に同バッグが係止されることにより、前記濾過槽の内部に同バッグが固定される一方、
前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)を前記濾過槽の外部へ取出すときには、前記天板が開放されることにより、前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)が作業車両に吊り下げられるように構成されたことを特徴とする剥離塗材回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物、たとえば、コンクリート製の壁面などに塗装された塗材を剥離して回収する剥離塗材回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の剥離塗材回収システムとして、例えば、特許文献1に記載のシステムが知られている。このシステムは、構造物に塗装されたアスベストに水および研掃材を加圧噴射する噴射ノズルと、この噴射ノズルから噴射された水および研掃材により剥離されたアスベストが混合したアスベスト汚泥を吸引するアスベスト吸引器と、このアスベスト吸引器により吸引されたアスベスト汚泥からアスベスト固形分を分離回収するアスベスト分離装置と、このアスベスト分離装置から排出されたアスベスト混濁水に凝集剤を混合した後にフィルタによりアスベストを濾過するアスベスト濾過装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−291747号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の剥離塗材回収システムは、アスベスト吸引器から回収されたアスベスト汚泥に含まれる水をアスベスト濾過装置にて回収し、その回収した水を再度噴射ノズルから噴射する構成、つまり、アスベストの剥離に使用した水を再利用する構成である。
したがって、従来の剥離塗材回収システムは、再利用する水の汚れがひどくなった場合は、アスベスト濾過装置に貯まった水を廃棄し、新しい水と入れ替える必要があるため、その入替えを行っている間、アスベストの剥離および回収作業を行うことができない。
【0005】
また、従来の剥離塗材回収システムに備えられたアスベスト分離装置は、吸引したアスベストを分離する分離板と、この分離板の目詰まりを防止するための複数のシャワーノズルと、底部に蓄積したアスベスト片や繊維塊をケーシングの外部へ排出するためのスクリューコンベアとを備え、その排出されたアスベストを袋に回収する構成である。
【0006】
さらに、従来の剥離塗材回収システムは、アスベスト濾過装置に貯まったアスベスト混濁水を環境基準に適合した水に変える構成を備えていないため、アスベスト混濁水を作業現場にて自然環境へ排水することができないので、アスベスト混濁水の廃棄処理を専門の業者に依頼しなければならないという問題もある。
つまり、従来の剥離塗材回収システムは、アスベストの剥離作業および剥離したアスベストの回収作業の効率が悪く、かつ、コストがかかるという問題がある。
【0007】
そこで本出願に係る発明の目的は、構造物に塗装された塗材の剥離作業および剥離された塗材の回収作業の効率を高めることができ、かつ、コストを低減することができる剥離塗材回収システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1に係る発明)
前述した各目的を達成するため、本出願の請求項1に係る発明では、
作業現場の水道(4)から給水された水を取り入れ、その取り入れた水を加圧することにより高圧水を供給する高圧水供給装置(3)と、
前記高圧水供給装置から供給された高圧水を構造物(B)に噴射することにより、前記構造物に塗装された塗材を剥離する剥離装置(2)と、
前記構造物に噴射された高圧水と、前記構造物から剥離された塗材とが混合した混合水から前記塗材を濾過するための濾過槽(7)と、
前記濾過槽の内部を負圧状態にする減圧装置(13)と、
前記剥離装置と連結されており、負圧状態の前記濾過槽へ前記混合水を送出する混合水送出ホース(6)と、
前記濾過槽の内部において前記混合水送出ホースの出口方向に配置されており、前記混合水に含まれる塗材(10)を濾過する素材により形成されており、かつ、その濾過された塗材を蓄積しながら収容する上面が開口した形状に形成されるフレキシブルコンテナバッグ(登録商標)(8)と、
前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)(8)から滲出し、前記濾過槽に貯留した水を前記濾過槽の外部へ排水するグラウトポンプ(15)と、
前記グラウトポンプにより排水された水を濾過するとともに中和することにより、環境基準に適合した水に変化させ、その変化した水を排水する水処理装置(17,18,19)と、を備えており、

前記濾過槽(7)は、
その底面から所定の高さに配置される網目状の上面を有する底板であって、前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)が載置される底板(9)と、
前記濾過槽の底部に近い位置であって、かつ、前記底板の高さよりも低い位置に形成される排水口(7h)とを備え、
前記剥離装置および前記減圧装置が稼働している状態において、前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出した水が前記底板の網目を通過して前記濾過槽の底部に貯留され、かつ、前記濾過槽の底部に貯留した水が前記グラウトポンプにより前記排水口から排出されることにより、前記濾過槽内が目標の真空圧に維持されながら同濾過槽における水位が前記底板の上面よりも低い水位に維持されるように構成されており、

加えて、前記濾過槽(7)は、
前記濾過槽内の側板に固定される係止部材(7i)と、
前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)を前記濾過槽の外部へ取出すための開閉可能な天板(7a)と、を備え、
前記底板に前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)を載置するときには、前記係止部材に同バッグが係止されることにより、前記濾過槽の内部に同バッグが固定される一方、
前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)を前記濾過槽の外部へ取出すときには、前記天板が開放されることにより、前記フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)が作業車両に吊り下げられるように構成された剥離塗材回収システムという技術的手段を用いる。
【0010】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1に係る発明)
高圧水供給装置は、作業現場の水道から給水された水を取り入れ、その取り入れた水を加圧した高圧水を剥離装置へ供給し、剥離装置は、その供給された高圧水を構造物に噴射することにより、構造物に塗装された塗材を剥離する。
減圧装置は、濾過槽の内部を負圧状態にするため、剥離装置と濾過槽とを連結する混合水送出ホースの内部と、剥離装置の内部とが負圧状態になる。そして、構造物に噴射された高圧水と、構造物から剥離された塗材とが混合した混合水は、混合水送出ホースにより、濾過槽へ送出される。混合水に含まれる塗材は、剥離塗材収容体であるフレキシブルコンテナバッグ(登録商標)によって濾過され、同バッグに蓄積される。
フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出した水は、排水装置であるグラウトポンプにより排出される。このとき、グラウトポンプは、剥離装置および減圧装置が稼働している状態において、同バッグから滲出した水の濾過槽における水位が、所定の水位以下となるように動作する。排水装置により排出された水は、水処理装置により濾過されるとともに中和され、環境基準に適合した水に変化した後に排水される。
【0012】
つまり、請求項1に係る発明を実施すれば、剥離装置が使用する高圧水は作業現場の水道から給水された水を取り入れる高圧水供給装置から供給されるため、剥離作業の進行に伴って高圧水が汚れることがない。しかも、フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)が濾過槽の外部へ取出し可能であるため、同バッグに蓄積された剥離塗材が所定量に達したときに同バッグを濾過槽の外部へ取出すことにより、同バッグごと処分することができる。
【0013】
さらに、請求項1に係る発明を実施すれば、剥離装置から排出された混合水を環境基準に適合した水に変化させ、作業現場において自然環境へ排水することができる。
したがって、剥離装置から排出された水をバキュームカーなどで回収してから廃棄するシステムと比較すると、バキュームカーが不要であるし、バキュームカーに貯まった水を廃棄業者に依頼して処理する必要がない。
したがって、請求項1に係る発明を実施すれば、構造物に塗装された塗材の剥離作業および剥離された塗材の回収作業の効率を高めることができ、かつ、コストを低減することができる剥離塗材回収システムを実現することができる。

さらに、請求項1に係る発明を実施すれば、排水装置としてグラウトポンプを用いるため、濾過槽の内部が所定の真空圧になっても、濾過槽に貯留した水を排水することができるので、フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出した水によって濾過槽が満杯になることがない。
したがって、濾過槽が貯留水で満杯になる毎に剥離作業を中断し、濾過槽を交換する必要がない。
つまり、剥離装置が使用する水量に関係なく、塗材の剥離作業を連続して行うことができるため、塗材の剥離作業効率を高めることができる。
しかも、グラウトポンプには弁構造が存在しないため、濾過槽に貯留した水に混入している剥離塗材やコンクリート片などが弁に詰まって排水できなくなってしまうおそれもない。
さらに、濾過槽の底面から所定の高さには、上面が網目状の底板が配置されており、フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)は、底板の上面に載置されている。また、グラウトポンプは、剥離装置および減圧装置が稼働している状態において、フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出した水の濾過槽における水位が、底板の上面よりも低い水位を維持するように動作する。
つまり、請求項1に係る発明を実施すれば、フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)から滲出した水の水位が、同バッグが載置されている底板の上面よりも低い水位に維持されるため、同バッグが濾過槽に貯留された水に浸水するおそれがない。また、同バッグが載置されている底板の上面が網目状であるため、同バッグに蓄積されている剥離塗材の水切りを行うことができる。
したがって、請求項1に係る発明を実施すれば、フレキシブルコンテナバッグ(登録商標)に蓄積される剥離塗材の水切りを効率良く行うことができ、かつ、剥離塗材が蓄積された剥離塗材収容体の重量を軽くして作業車両で吊り下げることができるので、同バッグを濾過槽から取出す際の労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態である剥離塗材回収システム1の構成を模式的に示す説明図である。
図2図1に示す剥離塗材回収システム1に備えられた剥離装置2が、構造物Bに塗装された塗材を剥離する様子を模式的に示す説明図である。
図3】剥離装置2の正面図である。
図4図3に示す剥離装置2の裏面図である。
図5】濾過槽7から剥離塗材収容体8を取出した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[主要構成]
最初に、本発明の実施形態である剥離塗材回収システムの主要構成について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態の剥離塗材回収システム1の構成を模式的に示す説明図である。
【0018】
本実施形態の剥離塗材回収システム1は、高圧水供給装置3と、給水ホース5,5と、剥離装置2,2と、混合水送出ホース6,6と、濾過槽7と、底板9と、剥離塗材収容体8と、吸引ホース12と、減圧装置13と、排水ホース14と、排水装置15と、排水ホース16と、濾過装置17と、タンク18と、中和装置19とを備える。濾過装置17、タンク18および中和装置19が、本出願の請求項1に記載の水処理装置に対応する。なお、図1では、2台の剥離装置2を示すが、塗材の剥離作業の効率を高めるために、3台、4台あるいはそれ以上の台数の剥離装置2を用いる場合がある。
【0019】
高圧水供給装置3は、作業現場の水道などの給水源4から給水された水を取り入れ、その取り入れた水を加圧し、高圧水として各給水ホース5を介して各剥離装置2へ供給する。各剥離装置2は、それぞれ高圧水供給装置3から供給された高圧水を構造物に噴射することにより、構造物に塗装された塗材を剥離する。各剥離装置2および濾過槽7は、それぞれ混合水送出ホース6により連結されている。各混合水送出ホース6は、構造物から剥離された塗材やコンクリート粒などのゴミと、各剥離装置2から構造物に噴射された高圧水とが混合した混合水を濾過槽7へ送出する。
【0020】
密閉された濾過槽7の底部には、底板9が配置されており、その底板9の上面には、剥離塗材収容体8が載置されている。剥離塗材収容体8は、各混合水送出ホース6の出口方向に配置されている。剥離塗材収容体8は、各混合水送出ホース6から送出される混合水に含まれる剥離塗材やコンクリート粒などのゴミを濾過する素材により形成されており、かつ、その濾過されたゴミを蓄積しながら収容する形状に形成されている。
【0021】
濾過槽7には、濾過槽7の内部の空気を吸引することにより負圧状態にする減圧装置13が、吸引ホース12を介して接続されている。また、濾過槽7には、剥離塗材収容体8から滲出して濾過槽7に貯留した水を濾過槽7から濾過装置17へ排水する排水装置15が、排水ホース14を介して接続されている。排水装置15は、各剥離装置2および減圧装置13が稼働している状態において、剥離塗材収容体8から滲出した水の濾過槽7における水位が、底板9よりも低い水位を維持するように動作する。
【0022】
排水装置15の排水側には、濾過装置17が排水ホース16を介して接続されており、濾過装置17の排水側には、タンク18が接続されており、タンク18には中和装置19が接続されている。濾過装置17は、排水装置15から排水された水を濾過し、その濾過した水をタンク18へ排出する。中和装置19は、タンク18に貯留した水を中和するための材料をタンク18に注入する。タンク18には、排水口を開閉するコックが設けられており、タンク18に貯留した水の水質検査を行い、環境基準に適合した水に変化したことを確認した後、上記のコックを開き、自然環境へ排水する。
【0023】
[剥離装置の構造]
次に、剥離装置2の構造について、図3および図4を参照して説明する。図3は、剥離装置2の正面図であり、図4は、図3に示す剥離装置2の裏面図である。
【0024】
図3に示すように、剥離装置2は、フレーム2aと、給水用接続パイプ2bと、排水用接続パイプ2cと、ハンドル2dと、操作レバー2e,2eと、4個の部材2fとを備える。また、図4に示すように、剥離装置2は、4個の球体コロ2gと、4個の球体コロ受け2mと、回転軸部材2hと、回転体2iと、6個の噴射ノズル2jと、ブラシ2kとを備える。
【0025】
フレーム2aは、周壁の高さが低い有底の筒状、換言すると、底の浅い鍋状に形成されており、正面視円板形状に形成されている。図3に示すように、フレーム2aの表面には、給水ホース(図1)を接続するための給水用接続パイプ2bが取付けられている。
図4に示すように、フレーム2aの裏面であって、フレーム2aの円環状の周壁により囲まれた内部空間の中央には、横長の回転体2iが配置されている。回転体2iの中心は、回転軸部材hに回転自在に軸支されている。
【0026】
回転体2iには、高圧水を噴射する6個の噴射ノズル2jが開口形成されている。回転体2iの一端から回転中心までの範囲には、3個の噴射ノズル2jが形成されており、回転体2iの他端から回転中心までの範囲には、3個の噴射ノズル2jが形成されている。また、各噴射ノズル2jは、回転中心から半径方向に対してオフセットした方向に配置されている。さらに、回転体2iが水平姿勢になった場合に、回転中心から左側に配置された3個の噴射ノズル2jは半径方向から上方へオフセットしており、回転中心から右側に配置された3個の噴射ノズル2jは半径方向から下方へオフセットしている。このため、各噴射ノズル2jから噴射される高圧水の反作用により、回転体2iが回転軸部材2hを回転中心にして回転する。
【0027】
また、フレーム2aには、混合水送出ホース6(図1)を接続するための排水用接続パイプ2cが取付けられている。排水用接続パイプ2cの一端は、フレーム2aの周壁に開口しており、各噴射ノズル2jから構造物に噴射された水と、その噴射により構造物から剥離された塗材などが混合した混合水は、排水用接続パイプ2cから混合水送出ホース6を介して濾過槽7へ送出される。
【0028】
図3に示すように、フレーム2aの表面には、剥離装置2を使用する作業者が手で掴むためのハンドル2dが固定されている。ハンドル2dは、フレーム2aの上下方向の中心線に対して線対称に形成されており、左右のハの字部分と、そのハの字部分の上端同士を連結するように形成された連結部分とを有する。作業者は、左手でハの字部分の左側を掴み、右手でハの字部分の右側を掴んで塗材の剥離作業を行う。
また、ハンドル2dのハの字部分の各裏面には、操作レバー2eがそれぞれ設けられている。各操作レバー2eの上端は、ハの字部分の上端近傍にそれぞれ回動可能に軸支されている。また、各操作レバー2eとハの字部分との間には、引いた操作レバー2eを元の位置へ戻すためのバネなどの弾性部材が介在されている。両方の操作レバー2eを引くと、各噴射ノズル2jからの高圧水の噴射が開始され、引いた両方または片方の操作レバー2eを離すと噴射が停止する。
【0029】
図4に示すように、フレーム2aの周壁の外面には、4個の球体コロ2gが配置されている。各球体コロ2gは、剥離装置2を構造物の表面にて摺動させるときの摩擦抵抗を軽減する役割をしており、この実施形態では、フレーム2aの周壁の外面をフレーム2aの中心を基準にして90度で四等分する位置に配置されている。各球体コロ2gは、それぞれ球体コロ受け2mによって支持されており、各球体コロ受け2mは、フレーム2aの表面外周から張り出した部材2fにそれぞれ取付けられている。
【0030】
図4に示すように、フレーム2aの周壁の先端には、その先端に沿ってブラシ2kが取付けられている。ブラシ2kは合成樹脂により形成されており、ブラシ2kを構成する複数の毛は、フレーム2aの周壁の先端から起立する姿勢に配置されている。ブラシ2kは、フレーム2aの内部空間と外部とを遮蔽し、塗材の剥離に使用した水や剥離された塗材などがフレーム2aの外部に飛散しないようにする役割をしている。
【0031】
[高圧水供給装置]
図1に示す高圧水供給装置3は、各剥離装置2へ高圧水を供給するための装置であるが、塗材の剥離作業効率を高めるためには、噴射する圧力が高く、かつ、噴射量が多い水を供給する必要がある。本出願の発明者の実験によれば、塗材の剥離作業効率を高めるためには、4台の剥離装置2を使用する場合、1台の剥離装置2に対して少なくとも245MPaの圧力の水を少なくとも9リットル/分、供給する能力の高圧水供給装置を用いることが好ましいということが判明した。
【0032】
[濾過槽]
次に、濾過槽7の構造について、図5を参照して説明する。図5は、濾過槽7から剥離塗材収容体8を取出した状態を示す説明図である。
【0033】
濾過槽7は直方体の箱状に形成されている。濾過槽7の天板7aには、各混合水送出ホース6(図1)の出口を接続するための接続口7f,7fが開口形成されている。また、天板7aには、吸引ホース12(図1)の入口を接続するための接続口7gが開口形成されている。
【0034】
濾過槽7の底部7bには、剥離塗材収容体8を載置するための底板9が設けられている。底板9は、枠状部材9aと、この枠状部材9aの上面に配置された網目状部材9cとを備えており、その網目状部材9cの上に剥離塗材収容体8が載置される。また、枠状部材9aの四片には、通水用の切欠部9bがそれぞれ切欠き形成されている。側板7d,7eには、剥離収容体8を固定するための係止部材7iが2個ずつ固定されている。側板7eに固定された係止部材7iは図示を省略している。
【0035】
また、濾過槽7の側板7cには、排水ホース14(図1)の入口を接続するための排水口7hが開口形成されている。排水口7hは、濾過槽7に貯留した水を排水するためのものであり、底部7bに近く、かつ、底板9の高さよりも低い位置に形成されている。天板7aは開閉可能に構成されており、底板9に載置されている剥離塗材収容体8を濾過槽7から取出すことができるようになっている。濾過槽7は、トラックなどの車両の荷台に載せて作業現場へ運ぶ。
【0036】
[剥離塗材収容体]
剥離塗材収容体8は、合成樹脂製繊維により袋状に形成されている。この実施形態では、剥離塗材収容体8は、上面が開口した直方体形状に形成されている。剥離塗材収容体8の各面は、網目状に形成されており、透水性を有する。つまり、その網目部分から混合水の水分が滲出し、剥離塗材などのゴミ10が濾過され、蓄積されるように形成されている。このように、各剥離装置2から送出される混合水に含まれる塗材などのゴミ10は、剥離塗材収容体8によって濾過される。
【0037】
剥離塗材収容体8は、本体8aと、4本の固定用ベルト8bと、2本の吊り上げ用ベルト8dとを備える。固定用ベルト8bは、本体8aの相対向する一対の側面にそれぞれ2本ずつ取付けられており、各固定ベルト8bの先端には、濾過槽7の係止部材7iに係止するための円環状の係止部8cがそれぞれ形成されている。剥離塗材収容体8は、濾過槽7の底板9に載置したときに、各固定用ベルト8bの係止部8cを対応する係止部材7iに係止することにより、濾過槽7の内部に固定される。つまり、剥離塗材収容体8を4点で固定することにより、蓄積されるゴミ10の重量により、剥離塗材収容体8が傾いたり倒れたりするおそれがない。
【0038】
吊り上げ用ベルト8dは、本体8aの相対向する一対の側面にそれぞれ1本ずつ取付けられており、それぞれ両端が本体8aに固定された円弧状に形成されている。剥離塗材収容体8に蓄積されたゴミ10が所定量に達したときに、クレーンまたはフォークリフトなどの吊り上げ装置を使用し、剥離塗材収容体8を吊り上げ用ベルト8dを使って吊り上げ、濾過槽7の外部へ搬出する。
この実施形態では、剥離塗材収容体8として、通称、フレコン(株式会社ナシヨナルマリンプラスチツクの登録商標で、フレキシブルコンテナバッグの略称)と呼ばれるもののうち、ポリプロピレン製またはポリエチレン製の繊維を編んで形成された、透水性に優れるとともに軽量かつ強度が高く、容量1000リットルのものを用いる。
【0039】
[減圧装置]
図1に示す減圧装置13は、濾過槽7の内部の空気を吸引して濾過槽7の内部を真空にすることにより、混合水送出ホース6,6を介して各剥離装置2の各フレーム2a内に負圧を発生させるための装置である。この実施形態では、減圧装置13としてバキュームコレクターを用いる。また、本出願の発明者の実験によれば、作業効率を高めるために4台の剥離装置2を用いた場合、吸引風量が少なくとも40m3/分以上であり、真空圧が−93kPa以下の能力を有するバキュームコレクターを用いることが好ましいことが分かった。なお、3台の剥離装置2を用いる場合は、吸引風量が少なくとも30m3/分以上であり、真空圧が−93kPa以下の能力を有するバキュームコレクターを用いることが好ましく、2台の剥離装置2を用いる場合は、吸引風量が少なくとも20m3/分以上であり、真空圧が−50kPa以下の能力を有するバキュームコレクターを用いることが好ましく、1台の剥離装置2を用いる場合は、吸引風量が少なくとも10m3/分以上であり、真空圧が−30kPa以下の能力を有するバキュームコレクターを用いることが好ましいことが分かった。
【0040】
[排水装置]
図1に示す排水装置15は、濾過槽7の底部に貯留した水を濾過装置17へ排水するための装置である。剥離塗材収容体8は、濾過槽7の底板9に載置されているため、濾過槽7に貯留した水の水位が底板9よりも高くなると、剥離塗材収容体8が浸水するので、ゴミ10の水切りが不十分になる。さらに、ゴミ10が水分を含むと、剥離塗材収容体8の重量が増加するので、剥離塗材収容体8を吊り上げる際に大きな動力が必要になる。このため、排水装置15は、濾過槽7における水位が底板9の高さよりも低い水位を維持することができるように動作する。
【0041】
一方、濾過槽7は、減圧装置13によって真空になるため、排水装置15には、その真空圧に打ち勝って水を排出することができる性能が必要になる。
そこで、本出願の発明者は、様々なポンプを用いて試行錯誤を繰り返した結果、建築現場においてコンクリートやモルタルなどの原料を作業場所へ送り出すためのグラウトポンプが適していることを見出した。つまり、グラウトポンプの原料注入側を濾過槽7に接続し、原料吐出側を濾過装置17に接続することにより、濾過槽7の内部を目標の真空圧に維持しながら、濾過槽7に貯留した水を濾過装置17へ排水することに成功した。
グラウトポンプは、チューブをローターで押し潰し、チューブ内の液状体を直接しごき出す構造であるため、供給する液状体が貯留された槽の真空圧が大きくても、チューブ内の液状体を確実に送り出すことができるからである。このため、排水装置15としてグラウトポンプを使用することにより、濾過槽7の内部が−93kPa以下の真空圧であっても、濾過槽7に貯留した水を排水することができる。しかも、グラウトポンプには弁構造が存在しないため、濾過槽7に貯留した水に混入している剥離塗材やコンクリート片などが弁に詰まって排水できなくなってしまうおそれもない。
また、同時に使用する剥離装置2の台数が増加すると、その分、各剥離装置2から濾過槽7へ送出される混合水の水量も増加するため、その状況に適合した排水装置15を使用する必要がある。例えば、1台の剥離装置2が濾過槽7へ送出する混合水の水量が、9リットル/分であり、剥離装置2が1日当り実際に高圧水を噴射している実動時間が2.5時間(150分)であるとすると、1台の剥離装置2が濾過槽7へ送出する混合水の水量は1,350リットルである。従って、2台の剥離装置2を使用した場合は、2,700リットルであるため、2.5時間で2,700リットルを超える排水能力を有するクラウドポンプを排水装置15として使用すれば良い。また、4台の剥離装置2を使用した場合は、5,400リットルであるため、2.5時間で5,400リットルを超える排水能力を有するクラウドポンプを排水装置15として使用すれば良い。
【0042】
[水処理装置]
濾過装置17、タンク18および中和装置19から構成される水処理装置は、排水装置15から排水された水を処理し、環境基準に適合した水に変化させるための装置である。各剥離装置2から濾過槽7へ送出された混合水は、剥離塗材収容体8により、ある程度の大きさの剥離塗材やコンクリート粒などのゴミ10が濾過されるが、剥離塗材収容体8の網目を通過した微細な剥離塗材やコンクリート粒などの不純物が、剥離塗材収容体8から滲出した水と混じる。また、コンクリート粒などを含んだ混合水は、pH9以上のアルカリ性であるため、濾過槽7の底部に貯留する水は、自然環境へ排出することができる基準、つまり、環境基準に適合していない。
【0043】
そこで、濾過装置17は、排水装置15から排水された水を濾過し、その濾過した水をタンク18へ排出する。この実施形態では、濾過装置17は、100μmメッシュの濾過フィルターを有する濾過容器と、50μmメッシュの濾過フィルターを有す濾過容器と、10μmメッシュの濾過フィルターを有する濾過容器とを備える。例えば、各濾過フィルターとして、ポリプロピレン製糸巻きタイプの不純物濾過フィルターを用いることができる。
排水装置15から排水された水は、各濾過容器を順次通過し、濾過槽7において濾過できなかった10μmを超える塗材やコンクリート粒などの不純物が濾過される。
また、中和装置19は、タンク18に貯留された水を中和し、環境基準に適合した水に変化させる。この実施形態では、中和装置19として二酸化炭素を水中に注入する装置を使用し、タンク18に貯留した水に二酸化炭素を注入することにより、タンク18内の水を環境基準のpH5.8〜8.6に中和する。例えば、中和装置19として、水を攪拌する機能と、pH記録計と、pHの変化により炭酸ガスの注入量を補正する機能とを備えたpH中和処理装置を用いることができる。
そして、タンク18内の水の水質検査を行い、環境基準に適合していることを確認した後、タンク18に設けられたコックを開け、排水する。
【0044】
[剥離塗材回収システムの使用方法]
次に、剥離塗材回収システム1の使用方法について図を参照して説明する。図2は、剥離塗材回収システム1に備えられた剥離装置2が、コンクリート壁面Bに塗装された塗材を剥離する様子を模式的に示す説明図である。
【0045】
ここでは、ビルのコンクリート壁面に塗装された塗材を剥離する作業を例に挙げて説明する。図2において、コンクリート壁面Bは、吹付けアスベスト、石綿含有吹付けロックウール、石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有断熱材など、アスベスト(石綿)またはアスベストを含有した塗材が塗装されている。
【0046】
図1に示す剥離塗材回収システム1は、コンクリート壁面Bの近辺に配置されており、高圧水供給装置3は、作業現場の水道などの給水源4に接続されている。高圧水供給装置3、減圧装置13、排水装置15および中和装置19を駆動する。高圧水供給装置3が駆動すると、高圧水が各給水ホース5を介して各剥離装置2へ供給される。また、減圧装置13が駆動すると、濾過槽7内の空気が、吸引ホース12を介して吸引され、濾過槽7の内部が真空状態になる。
【0047】
そして、作業者が剥離装置2をコンクリート壁面Bに押し当て、剥離装置2の操作レバー2e(図3)を引くと、高圧水が各噴射ノズル2j(図4)からコンクリート壁面Bに噴射されるとともに、回転体2iが高速で回転する。各ノズル2jから噴射される高圧水の圧力により、コンクリート壁面Bに塗装されている塗材が剥離されるが、その塗材が塗装されている壁面の下地コンクリートも僅かに削り取られる。剥離された塗材およびコンクリート粒は、コンクリート壁面Bに噴射された水に混じって混合水となり、混合水送出ホース6を介して濾過槽7の内部に排出される。作業者が、剥離装置2をコンクリート壁面Bに押し当てながら移動させると、その移動経路に沿って塗材が剥離される。図2において符号Gは、剥離装置2によって塗材が剥離された剥離跡を示す。
【0048】
濾過槽7の内部に排出された混合水は、剥離塗材収容体8に排出され、混合水に含まれる剥離塗材やコンクリート粒などのゴミ10は、剥離塗材収容体8によって濾過され、ゴミ10が濾過された水は剥離塗材収容体8の網目から滲出し、濾過槽7の底部7bに落下する。ここで、剥離塗材収容体8は、底板9の上面に設けられた網目状部材9cに載置されているため、剥離塗材収容体8の底部から滲出した水は、網目状部材9aを通過して底部7bに落下する。
【0049】
排水口7hは、底部7bに近い位置であって、かつ、底板9の高さよりも低い位置に形成されているため、底部7bに貯留した水は、排水装置15の吸引力により、排出口7hから排水される。
ここで、濾過槽7の内部が所定の真空圧になっても、排水装置15は、その真空圧に打ち勝つほど吸引力が高いため、濾過槽7に貯留した水を排水することができるので、剥離塗材収容体8から滲出した水によって濾過槽7が満杯になることがない。
したがって、濾過槽7が貯留水で満杯になる毎に剥離作業を中断し、濾過槽7を交換する必要がない。
つまり、各剥離装置2が使用する水量に関係なく、塗材の剥離作業を連続して行うことができるため、塗材の剥離作業効率を高めることができる。
【0050】
さらに、剥離塗材収容体8から滲出した水の水位が、剥離塗材収容体8が載置されている底板9よりも低い水位に維持されるため、剥離塗材収容体8が濾過槽7に貯留された水に浸水するおそれがない。また、剥離塗材収容体8は、底板9の上面に設けられた網目状部材9cの上に載置されているため、剥離塗材収容体8に蓄積されているゴミ10の水切りを行うことができる。
したがって、剥離塗材収容体8に蓄積されるゴミ10の水切りを効率良く行うことができるため、ゴミ10が蓄積された剥離塗材収容体8の重量を軽くすることができるので、剥離塗材収容体8を濾過槽7から取出す際の労力を軽減することができる。
【0051】
排水装置15により排水された水は、濾過装置17へ送出され、100μmメッシュの濾過フィルター、50μmメッシュの濾過フィルター、10μmメッシュの濾過フィルタを順次通過し、最終的には10μmを超える不純物が濾過され、タンク18へ排出される。タンク18に貯留されたpH8を超えるアルカリ水は、中和装置19から注入される二酸化炭素によってpH5.8〜8.6に中和される。そして、タンク18に貯留された水の水質検査を行い、環境基準に適合した水に変化したことを確認し、タンク18のコックを開け、作業現場の排水溝などを通じて自然環境へ排水する。
【0052】
そして、剥離装置2による塗材の剥離作業が継続し、剥離塗材収容体8に蓄積されたゴミ10が満杯になった時点で剥離作業を中断する。続いて、濾過槽7の天板7a(図5)を開け、クレーンまたはフォークリフトなどの作業車両を用いて、剥離塗材収容体8を吊り上げ、トラックなどの荷台に積み込む。この積み込んだ剥離塗材収容体8は、そのまま産業廃棄物として処分することもできるし、中身のゴミ10を捨てて再利用することもできる。したがって、塗材の剥離作業および剥離された塗材の回収作業の効率を高めることができる。
続いて、塗材の剥離作業を行う場合は、中身が空の新しい剥離塗材収容体8を底板9の上に載置し、各固定用ベルト8bの係止部8cを側板7d,7eの各係止部材7iに係止する。そして、天板7aを閉じ、前述した作業手順により、塗材の剥離作業を再開する。
【0053】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態の剥離塗材回収システム1を実施すれば、剥離装置2が使用する高圧水は、水道などの給水源4から水を取り入れる高圧水供給装置3から供給されるため、剥離作業の進行に伴って高圧水が汚れることがない。
(2)しかも、剥離塗材やコンクリート粒などのゴミが混合した混合水を環境基準に適合した水に変化させて、作業現場の排水溝などを通じて自然環境へ排水することができる。
したがって、剥離作業に使用した水をバキュームカーなどに回収してから廃棄するシステムと比較すると、バキュームカーが不要であるし、バキュームカーに貯まった水を廃棄業者に依頼して処理する必要がない。
(3)さらに、剥離塗材収容体8が濾過槽7の外部へ取出し可能であるため、剥離塗材収容体8に蓄積された剥離塗材やコンクリート粒などのゴミが所定量に達したときに剥離塗材収容体8を濾過槽の外部へ取出すことにより、剥離塗材収容体8ごと処分することができる。
(4)したがって、上述した実施形態の剥離塗材回収システム1を実施すれば、構造物に塗装された塗材の剥離作業および剥離された塗材の回収作業の効率を高めることができ、かつ、コストを低減することができる剥離塗材回収システムを実現することができる。
【0054】
(5)さらに、剥離塗材収容体8に蓄積される剥離塗材やコンクリート粒などのゴミの水切りを効率良く行うことができるため、そのゴミが蓄積された剥離塗材収容体8の重量を軽くすることができるので、剥離塗材収容体8を濾過槽7から取出す際の労力を軽減することができる。
【0055】
〈他の実施形態〉
(1)前述の実施形態では、剥離装置2を2台使用したが、3台以上を使用することもできる。減圧装置13の吸引力、排水装置15の排水能力および中和装置19の中和能力は、同時に使用する剥離装置2の台数を増やすほど大きくする必要があるが、各装置の出力を調整することによっては対処できない場合は、さらに大きな出力の装置を選択したり、装置の数を増やしたりすることで対処することができる。
【0056】
(2)前述の実施形態では、2台の剥離装置2から送出された混合水を1個の剥離塗材収容体8によって濾過したが、1台の剥離装置2に対して1個の剥離塗材収容体8を配置し、各剥離装置2から送出される混合水を個別に濾過するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1・・剥離塗材回収システム、2・・剥離装置、3・・高圧水供給装置、
4・・給水源、7・・濾過槽、8・・剥離塗材収容体、9・・底板、
9c・・網目状部材、10・・ゴミ、11・・混合水、13・・減圧装置、
15・・排水装置、17・・濾過装置、18・・タンク、19・・中和装置、
B・・コンクリート壁面、G・・剥離跡。
図1
図2
図3
図4
図5