特許第6347799号(P6347799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347799
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】ダイヤル式南京錠の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 37/02 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   E05B37/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-85443(P2016-85443)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-193892(P2017-193892A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】516278562
【氏名又は名称】鈴木 文子
(74)【代理人】
【識別番号】100099254
【弁理士】
【氏名又は名称】役 昌明
(74)【代理人】
【識別番号】100139675
【弁理士】
【氏名又は名称】役 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚次
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3169285(JP,U)
【文献】 特開平06−073928(JP,A)
【文献】 特表2015−501895(JP,A)
【文献】 実開昭59−021363(JP,U)
【文献】 米国特許第03410121(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 37/00−37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に軸線方向に摺動可能で回動不可に設けられ、外周に複数の突起が形成されたパイプ部材に、かんぬき部材の一端部を挿通する第1の工程と、
内周に上記パイプ部材の突起を通過させる切欠溝を形成した内側輪と、外周に数字が刻印された外側輪とを同心状に回動可能に嵌め込んでダイヤル輪を形成する第2の工程と、
上記ダイヤル輪の内側輪の切欠溝と上記パイプ部材の突起とを解錠可能な状態に設定して、本体より外側輪の一部が露出するように、上記ダイヤル輪を本体内に組み込む第3の工程と、
上記ダイヤル輪の外側輪の数字と上記内側輪の内周の切欠溝との角度関係を設定する第4の工程と、
上記ダイヤル輪の外側輪の内周と内側輪の外周との隙間に流動性がよい接着剤を垂らして、上記外側輪と内側輪とを固定して一体化する第5の工程とを経ることを特徴とするダイヤル式南京錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個のダイヤルを操作することによって、複数の数字列を予め設定された数字列に一致させることにより解錠可能となるダイヤル式南京錠に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な窓は、アルミニウムの枠材を矩形に形成した窓枠と、この窓枠に横方向に開閉自在に嵌め込まれた内側窓および外側窓とよりなり、これら両窓にガラス板を嵌め込んだものであって、外側窓の縦框に取り付けた受金と、内側窓の縦框に取り付けた操作レバーによって回動させられる掛け金とよりなるクレセント錠が施錠手段として用いられている。
【0003】
泥棒などの侵入者が、引き違い窓のクレセント錠の部分のガラスを破壊し、操作レバーを回してクレセント錠を解錠し、引き違い窓を開けて侵入さられることがあった。
【0004】
そこで、クレセント錠にダイヤル式南京錠を適用したロック装置を設けたダイヤル式クレセント錠が下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2576000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のダイヤル式南京錠には、製造時に設定した数字列に固定され、その数字列に一致させた場合のみに解錠でき、この数字列が変更できないものと、製造後に、解錠可能な数字列を変更できるものとが従来より知られている。
【0007】
ロック装置を有するクレセント錠を住居の複数の窓に適用する場合、特に複数人の家族が居住する場合には、全てのクレセント錠の数字列が同じであること、および、それらの数字列が変更できないことが望まれる。
【0008】
マンションの各居住区画の各窓にロック装置を備えたクレセント錠を取り付ける場合には、各居住区画ごとに数字列が異なること、各居住区画内においては、それぞれ複数の窓の数字列が同じでなければならない。
【0009】
このような数字列を変更できないクレセント錠を受注する場合には、受注後に居住者が希望する数字列のものを組み立てなければならなかった。
【0010】
特に、居住区画が多いマンションにおいて、各居住区画ごとに異なる数字列で、かつ、それぞれ各居住区画内において同じ数字列のクレセント錠を複数組受注した場合には、数字0〜9の10種類のダイヤル輪の中から選んで組み立てなければならなかった。
【0011】
このように顧客が希望する数字列のクレセント錠は、受注後に組み立てるので、予め作り置きすることができないという問題があった。そこで、この発明は、このような問題を解決するために考えられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のダイヤル式南京錠の製造方法は、本体内に軸線方向に摺動可能で回動不可に設けられ、外周に複数の突起が形成されたパイプ部材に、かんぬき部材の一端部を挿通する第1の工程と、内周に上記パイプ部材の突起を通過させる切欠溝を形成した内側輪と、外周に数字が刻印された外側輪とを同心状に回動可能に嵌め込んでダイヤル輪を形成する第2の工程と、上記ダイヤル輪の内側輪の切欠溝と上記パイプ部材の突起とを解錠可能な状態に設定して、本体より外側輪の一部が露出するように、上記ダイヤル輪を本体内に組み込む第3の工程と、上記ダイヤル輪の外側輪の数字と上記内側輪の内周の切欠溝との角度関係を設定する第4の工程と、上記ダイヤル輪の外側輪の内周と内側輪の外周との隙間に流動性がよい接着剤を垂らして、上記外側輪と内側輪とを固定して一体化する第5の工程とを経ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のダイヤル式南京錠によると、ダイヤル輪を同心状に外側輪と内側輪とに分割して回動可能に嵌め合わせ、外側輪の外周の数字と内側輪の内周の切欠溝との角度関係を、組立後に設定し得るように構成されているので、手数のかかる組立工程を経た多量の半製品を予め作り置きし、出荷前の設定工程において、ダイヤル輪の数字と切欠溝との角度関係を設定するので、多種類の数字列を多量に受注しても対応することができる。
【0014】
また、ダイヤル輪は、刻印された数字と切欠溝との位置関係を任意に設定できるので、従来の南京錠のように、数字0〜9の10種類のダイヤル輪を多量に用意することなく、一種類だけ用意すればよいので、部品の在庫管理にも便利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明のダイヤル式南京錠で用いるダイヤル輪および部品の斜視図、
図2図1に示すダイヤル輪および部品の断面図、
図3図1に示すダイヤル輪の平面図、断面図および底面図、
図4】他の実施形態を示すダイヤル輪および部品の断面図、
図5】この発明のダイヤル式南京錠の番号設定工程を説明するために用いる斜視図、
図6】ダイヤル式南京錠を適用したロック装置を有する従来のクレセント錠を示す斜視図、
図7】ダイヤル式南京錠の縦断面図、
図8】ダイヤル式南京錠における主要部品の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記特許文献1に開示されているクレセント錠にダイヤル式南京錠を適用した従来のダイヤル式クレセント錠は、図6の斜視図に示すように、アルミニウムの枠材を矩形に形成した窓枠と、この窓枠に横方向に開閉自在に嵌め込まれた内側窓および外側窓とからなり、これら両窓にガラス板95を嵌め込んだものであって、外側窓の縦框92に取り付けた受金94と、内側窓の縦框91に取り付けた掛け金93とを備えている。
【0017】
ダイヤル式クレセント錠においては、掛け金93は、基台96を介して縦框91に取り付けたダイヤル式南京錠1と一体化され、軸97を中心にして回動させられるもので、防犯用の施錠・解錠手段として用いられている。
【0018】
この従来のダイヤル式南京錠1は、図7の断面図および図8の組立図に示すように、本体の円筒状の中空部22a、22bにパイプ部材2がその軸線方向に摺動可能に挿嵌されており、このパイプ部材2の外周には軸線方向に溝条23が形成され、この溝条23に本体に形成された突起24が係合して、パイプ部材2は軸線方向に移動するが、回動しないように構成されている。
【0019】
そして、このパイプ部材2の中には、J字状に成型された棒状のかんぬき部材3の長い棒材31が回転自在に挿通されており、その下端部と中間部に、パイプ部材2を両端から挟むように段部34と鍔部35とを設けて、パイプ部材2からJ字状のかんぬき部材3が抜け出さないように構成されており、かんぬき部材3はパイプ部材2に回動自在に保持されている。さらに、パイプ部材2の外周には、3ケ所に突起部21a、21b、21cが形成されている。
【0020】
ダイヤル式南京錠1の本体には3ケ所に切欠窓11a、11b、11c(図6参照)が等間隔にあけられ、この切欠窓11a、11b、11cから、外周の一部を露出させるように3個のダイヤル輪5a、5b、5cがパイプ部材2に挿通されている。
【0021】
ダイヤル輪5a、5b、5cの外周には、数字0〜9が等角度間隔刻印されている。このダイヤル輪5a、5b、5cの内孔56a、56b、56cにはパイプ部材2の突起部21a、21b、21cが通過可能な形の切欠溝58a、58b、58cが形成されている。これら切欠溝58a、58b、58cの位置は、外周に刻印された解錠可能な数字の位置と関連付けられいる。
【0022】
また、かんぬき部材3は、ダイヤル式南京錠1に設けられた穴27から外部に突出し、J字状に曲げられた短い棒材32の先端部33は、縦框91に固定される基台96設けられた穴90に抜き挿し可能となっている。
【0023】
このように構成されたダイヤル式南京錠は、ダイヤル輪5a、5b、5cの露出した外周部を指先で操作して回転させ、予め設定された番号に、即ち,ダイヤル輪5a、5b、5cの切欠溝58a、58b、58cをそれぞれパイプ部材2の突起部21a、21b、21cの位置に合わせる。
【0024】
このように内孔56a、56b、56cの切欠溝58a、58b、58cの全部をパイプ部材2の突起部21a、21b、21cの位置に合わせると、パイプ部材2はその軸線方向に移動可能となってロックが外れるので、かんぬき部材3を引くと、パイプ部材2とともに移動し、パイプ部材2の突起部21a、21b、21cがダイヤル輪の切欠溝58a、58b、58cに入る。
【0025】
かんぬき部材3は、パイプ部材2に対して回転自在に挿入されているので、ロックを解錠した状態では、かんぬき部材3の短い棒材32の先端33が孔27および孔90から抜け出ているので、かんぬき部材3を回すことができる。このとき、パイプ部材2の溝23(図7および図8のB参照)に本体の突起24が係合し、パイプ部材2は本体内において回転不可に構成されているので、かんぬき部材3を回してもパイプ部材2は回転しない。
【0026】
通常のダイヤル式南京錠1として使用する場合は、ロックを解除した状態でかんぬき部材3を回して先端部33を本体1の穴27に合わせ、かんぬき部材3を押し込んで先端部33を穴27に挿入すると、かんぬき部材3とともにパイプ部材2も移動し、パイプ部材2の突起部21a、21b、21cは、ダイヤル輪5の切欠溝58a、58b、58cの外に位置する。
【0027】
そこで、ダイヤル輪5a、5b、5cを任意の出鱈目な数字列に回転させ、切欠溝58a、58b、58cを突起部21a、21b、21cよりずらことにより、かんぬき部材3を引いても、パイプ部材2の突起部21a、21b、21cがダイヤル輪5a、5b、5cの側面に当たり、かんぬき部材3を引くことができず、ロック状態となる。
【0028】
なお、パイプ部材2は、本体の突起24とパイプ部材2の溝条23が係合して回転ができなくなっているので、かんぬき部材3を回してもパイプ部材2は回転せず、ダイヤル輪5a、5b、5cも回転しない。即ち、パイプ部材2の突起部21a、21b、21cの回転方向の位置は不動であるから、かんぬき部材3を回しても、予めダイヤル輪5a、5b、5cで設定した解錠番号が変わることはない。
【0029】
以上で説明した従来のダイヤル式南京錠においては、所望の数字列を形成するように予めダイヤル輪を選んで組み立てている。従って、組立てた後に、数字列を変更することはできなかった。
【0030】
そこで、この発明のダイヤル式南京錠においては、図1の斜視図、図2の断面図および図3の平面図A、底面図Cに示すように、ダイヤル輪4を同心状に外側輪41と内側輪45とに分割している。外側輪41の貫通孔42の内周には、同心円状に段部43が形成されており、この貫通孔42に内側輪45が回転可能に嵌め込まれる。さらに、内側輪45の底部の外周には、同心円状に段部47が形成されている。
【0031】
外側輪41に内側輪45を嵌め込むと、外側輪41の貫通孔42の内周と内側輪45の段部47との間にリング状の空間が形成されるので、このリング状の空間に、線材を丸く曲げたC形リング49を嵌め込む。このC形リング49の拡がろうとする弾力により、内側輪45を外側輪41から抜け落ちないように保持することができる。
【0032】
図1図3に示すように、内側輪45の貫通孔46には、パイプ部材2の突起部21a、21b、21cが通過可能な切欠溝48が形成されており、外側輪41の外周には、数字0〜9が等角度間隔に刻印されている。
【0033】
この発明のダイヤル式南京錠は、ダイヤル輪4以外の構成は、特許文献1に基づいて説明した従来のダイヤル式南京錠とほぼ同じである。
【0034】
このダイヤル式南京錠の本体1は、図7の断面図に示すように、円筒状の中空部22a、22bにパイプ部材2がその軸線方向に摺動可能に挿通されており、このパイプ部材2の外周には軸線方向に溝条23が形成され、この溝条23に本体に形成された突起24に係合して、パイプ部材2は軸線方向に移動するが、回動しないように構成されている。
【0035】
そして、パイプ部材2の中には、J字状に成型された棒状のかんぬき部材3の長い棒材31が回転自在に挿入されており、その下端部と中間部に、パイプ部材2を両端から挟むように段部34および鍔部35を設けて、パイプ部材2からJ字状のかんぬき部材3が抜け出さないように構成されて、かんぬき部材3はパイプ部材2に保持されている。また、パイプ部材2の外周には3ケ所に突起部21a、21b、21cが形成されている。
【0036】
本体1には、3ケ所に切欠窓11a、11b、11cが等間隔にあけられ、この切欠窓11a、11b、11cから、外周の一部が露出するように、3個のダイヤル輪4a、4b、4cがパイプ部材2に挿通されて保持されている。
【0037】
図5の斜視図に倒立状態を拡大して示すように、切欠窓11a、11b、11cから、ダイヤル輪4a、4b、4cの側面が露出するとともに、ダイヤル輪4a、4b、4cの上下の円形平面の一部も露出している。
【0038】
特に、この発明におけるダイヤル輪4を適用した場合には、外側輪41の内周と内側輪45の段部47との間に形成されたリング状の空間およびC形リング49も露出する。
【0039】
このように構成された3つのダイヤル輪4をパイプ部材2に嵌め込んで外側輪41を回転させると摩擦により内側輪45も連動して回転するから、外側輪41を操作して内側輪45を回転させ、各内側輪45の切欠溝48をそれぞれパイプ部材2の突起部21a、21b、21cに一致させるようにパイプ部材2を挿通すると、内側輪45の切欠溝48とパイプ部材2の突起部21a、21b、21cとの関係が、解錠可能な状態に設定される。このとき、外側輪が示す数字は不定である。
【0040】
このように、3つのダイヤル輪4a、4b、4cおよびパイプ部材2を解錠可能な状態(J字状のかんぬき部材3を引き抜いた状態)に設定して本体に組み込み、最終の設定工程を経ることなく未完成品として作り置きする。このような未完成品は、ダイヤル輪4a、4b、4cを回しても、外側輪41が回るだけで内側輪45は回ることはない。
【0041】
顧客から特定の3桁の数字を指定して、注文を受けたときには、最終の数字設定工程を行って完成させる。この数字設定工程においては、先ず、半製品のダイヤル輪4a、4b、4cを回して外側輪を顧客の指定する数字に合わせル。
【0042】
そして、図5に示すように、露出してい外側輪41とC形リング49を含むリング状の空間に、粘性が低く流動性のよい瞬間接着剤を細いチューブから一滴垂らすと、外側輪41と内側輪45との隙間に毛細管現象により瞬間接着剤が浸透し、凝固して接着するので、外側輪41と内側輪45は一体化されて完成品とすることができる。この最終の数字設定工程の作業は、組立工程に比して短時間で済ませることができる。
【0043】
(その他の実施の形態)
以上で説明した実施の形態のおいては、窓を閉めて施錠したとき、ダイヤル輪に接着剤を垂らした面が下向きになるように構成されているが、図4の断面図に示すように、C形リング49、内側輪45および外側輪41を逆さまに組み合わせて、断面図Dに示すように、構成してもよいのである。
【符号の説明】
【0044】
1 ダイヤル式南京錠
11a、11b、11c 切欠窓
2 パイプ部材
3 かんぬき部材
4 この発明におけるダイヤル輪
41 外側輪
45 内側輪
48 切欠溝
47 段部
49 C形リング
5 従来のダイヤル輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8