(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、前記非送信RFパルスの前記パルス特徴を実現するために前記音響光学ビーム偏向器におけるRFパワーをモニタリングするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、前記非送信RFパルスの前記パルス特徴を実現するために前記音響光学ビーム偏向器における熱負荷をモニタリングするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、前記非送信RFパルスの前記パルス特徴を実現するために前記音響光学ビーム偏向器の温度をモニタリングするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
これらの図は、専ら例示的な目的で示されるに過ぎない。
【0017】
音響光学ビーム偏向器デバイスおよび音響光学変調器デバイスは、本発明の様々な実施形態によれば、例えばリンク加工のためなどのパルスを選択するためにレーザ加工システムにおいて使用され得る。例えば、
図1は、例えばQスイッチレーザなどのパルスレーザ10からのレーザパルスの繰り返しシーケンスが、所定の繰り返し率でパルスバーストのシーケンスまたは成形パルスのシーケンスからのパルスを提供する、レーザ加工システムを示す。特徴的な間隔dを有する一群のリンク20(
図2に示すような)が、制御コンピュータまたは論理デバイス14の制御下でステージ12を移動することにより、所定の速度Vで加工ヘッドに対して動かされる。パルスは、エネルギー制御/エネルギーパルス選択システム16により選択的に遮断される。
【0018】
一般的には、変調器は、単一のRF周波数または小さな範囲のRF周波数にて高効率で動作し、偏向器は、より大きな範囲の周波数にわたる最適化された効率で動作するが、これらのタイプの音響光学デバイスはいずれも、偏向および変調を行う。便宜上の理由により、偏向器およびAOBDという用語は、大きな偏向範囲が好ましい場合に使用されるが、以下に論じる一般的な態様は、AOMまたはAOBDにより実現されるビーム偏向およびビーム変調に該当する。本発明の実施形態は、米国特許出願公開第2008/0164240号、米国特許出願公開第2009/0095722号、米国特許出願公開第2011/0297851号、米国特許出願公開第2011/0210105号、米国仮特許出願第61/352,316号、および米国仮特許出願第61/446,943号に開示されているレーザ加工システムを含むがそれらに限定されない、多様なレーザ加工用途において利用され得る。これらの出願公開および仮特許出願の開示は、その全体を本願に引用して援用する。
【0019】
例えば、
図3は、加工用のレーザパルスを供給するレーザ30を備えるシステムを概略的に示す。これらのパルスは、オプションのAOM38によりゲート制御され、次いで第1のAOBDデバイス42の像平面40へと伝搬する。AOBD42のゼロ次ビームにおけるパルスエネルギーが、図示するようにビームストップ46へと送られ、第1の軸において偏向されたパルスが、第2のAOBDデバイス50の像平面48へと伝搬する。AOBDデバイス50のゼロ次ビームにおけるパルスエネルギーは、ビームストップ52へ送られ、第2の軸(図示せず)において偏向されたパルスは、加工用に選択されて、工作物基板72の方向に伝搬する。
【0020】
図3のシステムは、リンク切断用の多軸無慣性偏向器ベースのレーザ加工システムを提供する。したがって、このシステムは、とりわけ、レーザ源、多軸無慣性偏向器および付随する駆動装置、リレー光学部品、ビーム拡大光学部品、スポット形成光学部品、ならびに機械的位置決めシステムを備える。特に、レーザ30は、第1のリレーレンズ32を通してレーザパルスを出力する。これらのレーザパルスは、加工期間34の間に生じ得る。音響光学変調器38(AOM)は、出力されたパルスの一部を選択的に遮断するために加工出力36にてレーザパルスを受領し得る。少なくともいくつかの実施形態においては、このAOM38は、システム内のオプションの構成要素である。第1のビーム偏向器42(AOBD1)は、以下においてさらに説明するように、第1の軸に沿って受領したレーザパルスを偏向および/または分割し得る。リレー光学部品には、リレーレンズ44と、システムの光学経路に沿ってレーザを反射させるためのミラーとが含まれ得る。ストップ46は、第1の偏向器42の不要なエネルギーが、第2の偏向器50(AOBD2)に伝搬するのを防止し、第2の偏向器50は、以下においてさらに説明するように、別の軸に沿ってレーザビームを偏向および/または分割し得る。
【0021】
第2のストップ52は、第2の偏向器50からの不要なエネルギーが、このビーム経路に沿って進むのを防止し得る。これらのビームは、図示するようにリレー光学部品を通り進み得る。これらのリレー光学部品には、リレーレンズ54と、偏向軸を配向するためのビーム回転用のオプションのKミラー56と、リレーレンズ60とが含まれてもよく、中間像平面58が、概略的に図示されるように形成され得る。リレーレンズ60は、前エキスパンダレンズとして形成されてもよい。液晶可変リターダ(LCVR)デバイス62が、これらのパルスの偏光を制御する。これらのビームは、対物レンズ(レンズシステム)68により焦点を合わせられる標的におけるレーザスポットサイズを設定するために使用される、ズームエキスパンダ66の像平面64まで進み得る。対物レンズ68は、機械的位置決めシステム74上に取り付けられた基板72にこれらのビームの焦点を合わせ得る。
【0022】
基板72にビームの焦点を合わせ、収差および非点収差を低減し、光学システムをよりコンパクトにするために、他のリレー光学部品およびリレーレンズを使用し得ることが、当業者には認識されよう。対物レンズは、加工標的に対するレーザスポットを位置決めするために対物レンズの軸に対してほぼ垂直な面内において機械的位置決めシステム74上を移動される基板72に対する焦点高さを設定するために、調節可能な空気軸受70を使用して位置決めされてもよい。
図3は、単一のシステムの実施形態を示すが、レーザビーム生成、AOBDデバイスへのおよびAOBDデバイスからのレーザビームの伝搬、ならびにレーザビーム送達システムの他のルーチン態様における、周知のバリエーションが、熱的に安定化されたAOBDデバイスと共に利用されてもよい。
【0023】
AOBDデバイス42および50は、RF変換器から光透過性バルク音響材料に印加される音響周波数を変更することにより可変的な回折格子を発生させるブラッグセルである。例えば、この材料は、ガラスまたはTeO
2であってもよく、この材料に対して装着される圧電変換器を備えてもよい。この圧電変換器は25〜400MHzの周波数範囲で音波を発生させる。適切な市販のデバイスは、種々の性能特性を有する多様なモデルにおいて容易に入手可能である。各モデルは、通常は、中心周波数および周波数帯域幅範囲により特徴づけられる。音響材料の音響速度および印加されるRF周波数の結果が、その音響材料における音波を形成する。RF周波数が変化すると、音波が変更されて、可変的な回折格子周期および可変的な回折角をもたらす。
【0024】
RFドライバから変換器に印加されるRF信号周波数を制御することにより、制御可能なビーム偏向角は、デバイスの帯域幅内となることが可能となる。デバイス帯域幅外においては、印加される周波数は、デバイスの動作許容範囲内において効率的には偏向しなくなり得る。
図4は、パルストリガ信号84を介してレーザシステム30からパルスをトリガするためにシステム制御装置82と通信する制御プログラム80を備える制御システムを示す。システム制御装置82は、1つ以上のチャネルを介して第1のRFドライバ86を制御し、このRFドライバ86は、第1のRF信号88を介してAOBDデバイス42を駆動する。また、システム制御装置82は、1つ以上のさらなるチャネルを介して第2のRFドライバ90を制御し、RFドライバ90は、第2のRF信号92を介してAOBDデバイス50を駆動する。また、システム制御装置82は、機械的位置決めシステム74のx位置およびy位置を制御するために機械的位置決めシステム23と通信し、機械的位置決めシステム74から位置フィードバック情報を受領する。
図3および
図4は、複数のAOBDデバイスを示すが、単一軸偏向または複数軸偏向のいずれかを利用する場合には、単一のAOBDシステムにおいて様々な実施形態を実施することができる。
【0025】
典型的には、AOBD送信は、RF振幅が固定の場合でも、RF周波数と共に変化する。例えば、中心フィールド偏向周波数は、最外フィールド角への偏向を引き起こす周波数よりも比較的高い送信度を有し得る。この効果は、偏向角と共に変化するAOBDの回折効率が変化することにより引き起こされ得るものであり、回折効率は、最大偏向角にて低下する。RFドライバから変換器に印加されるRF信号振幅を制御することにより、AOBDの回折効率は、およびその結果として加工のためにAOBDにより送信されるレーザパワーは、所望の偏向されたレーザパルスエネルギーを維持するように制御可能に変調され得る。
【0026】
所望のレベルにおける正確なレーザ出力エネルギーの不変的な目標とされる送達を行うために、効率低下を補正するためのレーザパルスエネルギー変調の補償は、種々の周波数でRF振幅を制御することにより適用され得る。例えば、RF振幅は、測定される光透過曲線に逆比例して変化することにより、加工フィールド中のレーザエネルギーを偏向させる周波数範囲にわたる送信応答の平坦化をもたらし得る。
【0027】
例えば
図5に示すように、光透過度は、光学経路に沿った様々な点において光学検出器を用いることで測定され得る。特に、第1の検出器100は、レーザ30からのビームスプリッタ102を経由したレーザ出力の一部分を受領するように位置決めされ得る。第2の検出器104は、第1のAOBDデバイス42からのビームスプリッタ106を経由した出力の一部分を受領するように位置決めされ、第3の検出器108は、第2のAOBDデバイス50からのビームスプリッタ110を経由した出力の一部分を受領するように位置決めされ得る。また、透過度検出器112が、機械的位置決めシステム74と組み合わせて使用されてもよい。
【0028】
各検出器は、レーザパルスエネルギーおよび/または平均レーザパワーを検出する。単一の検出器、または複数の検出器が使用される場合には検出器の組合せは、第2のAOBD50の前にエネルギーを測定することにより、第1のAOBD42における非線形送信を個別に較正し得る。このシステムは、検出器対の間のパルスエネルギーまたは平均パワーの差を推定するための手段を備えてもよい。第1のAOBD42の前の検出器との組合せにおいて、第1のAOBD42および第2のAOBD50は、レーザパワーのドリフトまたは他の上流の要因から個別に較正され得る。第2のAOBD50および第1のAOBD42を出るパワーの差は、複数の検出器を使用して判定され得る。これは、第1のAOBD42とは別個に第2のAOBD50の非線形送信を推定および較正するための手段を形成する。
【0029】
AOBDデバイス帯域幅の少なくとも一部分が、偏向周波数の送信範囲に一致し、レーザビームは、加工視野内の基板の標的へと偏向される。送信範囲外の他の周波数では、または他の回折次数では、ビームは、ビームストップ、ダンプ、ブロッカ、または他の非送信要素へと偏向され得る。送信範囲外の周波数は、例えば中心周波数と帯域幅の半分との和よりも大きな高周波数など、デバイス帯域幅の一部分を含むと共に、デバイス帯域幅外の周波数を含んでもよい。他の回折次数は、デバイスが1次の回折次数で動作するように設計される場合には、例えば2次以上の次数であってもよい。典型的には、ビームは、1次の回折次数で偏向され、残りのゼロ次ビームエネルギーは、ビームピックオフまたはビームダンプで遮断される。
【0030】
例えば、
図6は、AOBDデバイス120を概略的に示す。RF信号が印加されない場合には、ビーム偏向はなく、ビーム122はゼロ次方向124に沿って出力される。例えば72.50MHz〜107.5MHzなどの送信周波数範囲内のRF信号が、デバイス120に印加される場合には、ビーム122は、例えば116.8ミリラジアン(126で図示)、145ミリラジアン(128で図示)、および173.2ミリラジアン(130で図示)などに対応する送信角度で偏向される。RF信号が、例えば140MHzなどの非送信周波数である場合には、ビーム122は、例えば225.5ミリラジアン(132で図示)などに対応する非送信角度で偏向される。例えば126、128、および130で示されるビーム偏向は、標的を加工するために利用でき、ゼロ次方向ビーム(124で図示)および132で示されるビーム偏向は、遮断され得る。
【0031】
図7Aにおいて140で示すようなフィールドサイズは、xおよびyの関数として表し得るような、幅xおよび長さyを有するものとして特徴づけられ得る。ビームは、
図7Bにおいて142で示されるようなフィールド内に2次元偏向を有してもよく、ビームは、第1の位置144から第2の位置146へと偏向される。
図7Cにおいて148で示すように、ビームが拡大され、スポットサイズが縮小される場合には、偏向角は縮小され、フィールドサイズは縮小される。フィールドにわたり偏向器の範囲内で対処され得る焦点を合わせられるスポット数は、ビームエキスパンダの設定にかかわらず一定となる。そのため、小フィールドに対する小スポットと、より大きなフィールドに対するより大きなスポットとでは、スポットサイズとフィールドサイズとの間で直接的なトレードオフが存在する。加工レンズとの組合せで、米国特許第7,402,774号(その開示を本願に引用して援用する)による方法を利用することにより、フィールドに対するスポットの減損を伴うことなく、多様なフィールドサイズおよびスポットサイズを実現することが可能となる。
【0032】
AOBD最適化の一側面は、AO結晶に対して印加されるRF周波数に応じて種々の位置コマンドが偏向器にて実現され得る速度である。
図8A〜
図8Cは、印加されるコマンド信号(160で図示)、RF応答(162で図示)、および音響応答(164で図示)の、信号エンベロープ形状を示す。AO結晶の設計、変換器の外形、および生成される有効音響窓の面積は、効率、偏向範囲、および相互変調などの多数の因子を考慮対象とする。任意のタイプの適切な結晶/変換器の外形が、選択され、AOBDデバイスにおいて使用されてもよい。好ましくは、TeO
2結晶が使用されるが、他のタイプの音響光学材料、特に音響光学ビーム偏向器における使用向けに開発されたものなどが、使用され得る。各デバイスタイプは、材料および構造外形ならびに音響窓を埋めるビームの外形に応じて、音波がセルを横断する際に偏向を設定するのに要する特徴的な時間を有することとなる。最適化は、偏向効率対指令された偏向角後の時間の測定と、この偏向角での所望の効率を達成するのに必要な最低リードタイムの判定と、所望の効率を達成するために必要な時間に基づく、レーザ加工シーケンスを最適化するように最低リードタイムでレーザパルスを発射するためのレーザ発射シーケンスのタイミング調節とを含み得る。この最適化は、例えば新たな偏向角の設定の直前のAOBDの偏向状態など、異なる初期条件セットを考慮対象とし得る。同様に、他のAOBD性能特徴が、最低設定時間での所望の性能レベルを確保するために、解析および最適化され得る。
【0033】
ランダムアクセス位置決めにおけるAOBD最適化の別の関連する側面は、印加されるRF偏向信号の期間である。印加されるRFの期間は、最適化されたリードタイムを利用して変更されてもよく、その一方で、偏向効率または他のパラメータが、測定される。このようにすることで、最低RF偏向期間が、あらゆる特定のAOBDデバイスに対して判定され得る。最低リード時間と組み合わせて最低RF期間を利用することにより、レーザ加工シーケンスをさらに最適化することができる。
【0034】
フィールド位置を用いてRF入力パワーレベルを調節することにより、AOBD効率(AOBD効率はAOBDに進入するパルスエネルギーに対するAOBDを出るパルスエネルギーの比率である)の変化に対する補償を行うことは、周知の技術である。理論モデルが、効率性能対角度を予測し、補正値を生成するために使用され得る。しかし、各AOBDは、様々な効率特徴を有することが可能である。その結果、絶対効率に関して
図9Aにおいて166で示すような、および相対効率に関して
図9Bにおいて168で示すような、効率特徴は、好ましくは、偏向される光学パワーを直接的に測定することにより判定される。次いで、補正のために、RFパワーが、偏向範囲にわたり均一な光学出力を維持するように、測定された効率対角度に応じて変調され得る。
【0035】
しかし、AOBD効率対角度は、RFパワーレベルによっても決定されるため、静的RFパワーレベルでの単純な効率測定は、この非線形効率特徴に対応するには不十分なものとなり得る。したがって、より洗練された補正方式が必要となる。動的測定は、RFレベルを調節して、選択された偏向角範囲にわたり効率目標値へと測定される値を合致させることにより、この効率目標値に対するRFパワー対偏向角補正関数を生成することによって、行われ得る。代替的には、反復測定が、公称効率目標値に対して偏向範囲にわたり行われて、初期RF補正関数から開始され、その後のステップにおける効率測定値に基づき残余効率誤差対角度を判定し、この残余誤差値を利用して改良されたRF補正関数を生成することが可能である。所望の偏向および効率の範囲に対する効率ルックアップテーブルを生成するなど、他の手順を利用して、効率対フィールド角度を正確に較正してもよい。しかし、特徴的な曲線セットを判定するなどの、データ管理オーバーヘッドを最小限に抑える技術が、特に以下において説明する2軸偏向の複雑性を考慮する場合には好ましい。
【0036】
AOBDにおけるRFパワーの変調は、光減衰を制御するために利用することが可能である。しかし、効率曲線は、
図9Aおよび
図9Bに示すように異なる減衰ごとに変化するため、設定された補正曲線が、所望の光減衰にそれぞれが対応する個々の効率目標値ごとに必要となる。これらの補正曲線は、論じるように直接的な測定から判定されてもよく、特徴的なデータセットまたはデータテーブルから構築されてもよく、あるいは2つ以上の補正曲線から値を補間することにより少なくとも部分的に生成されてもよい。これらの曲線セットは、事実上、偏向角の次元および減衰レベルに対するAOBDを較正するために必要とされるRFパワー値の表面を表す。
【0037】
図10は、予測レーザ加工システムのタイミング図を示す。
図10に示すように、レーザは、レーザタイムラインLTにより表されるように3.5μs毎に発射され得る。このタイミングは、300KHzレーザにほぼ一致する。レーザパルスは、波形LTRにより表されるようにトリガ波形によりトリガされる。レーザトリガは、矢印170により表されるように方形波の立ち下りがりエッジにおいて引き起こされ得る。遅延が、レーザパルスを発射するためのレーザトリガ信号の加工に存在し得る。レーザパルスの発生は、
図10において172a〜172fとして表される。図示するように、遅延は、方形波トリガパルス170と172aのレーザパルスの発射との間の1.0μsの遅延として表され得るが、これに限定されない。
図10は、レーザパルス172eを用いてリンクを予測ブラスティングするためのプロセスを示す。また、
図10に示すように、このパルスに関する偏向パラメータが、計算され、偏向開始のプロセスが、レーザパルス172eの前の約3つのレーザパルス周期前に開始される(174)。
【0038】
したがって、いくつかの実施形態によれば、
図11を参照とする予測加工の方法が利用され得る。先に本願に引用して援用した米国特許出願公開第2011/0210105を、特に
図20と、段落0176、段落0177、段落0178、および段落0179を含むその図面に伴うパラグラフとを参照されたい。
【0039】
ビーム送信の効率は、選択された周波数でAOBDに対して印加するのに適切なRFエネルギーを判定するために、TRxおよびTRyで表されるものとして判定され得る。ルックアップテーブルまたは公式を利用して、所望の偏向量およびリンクをブラスティングするための所望のパルスエネルギーに対応する、RF周波数値および振幅を判定してもよい。
【0040】
176で表すように、予測加工シーケンスは、偏向フィールドとのオフセット位置(dX:dY)の比較を含んでもよい。178で表すように、システムは、偏向フィールドとの(dX:dY)の比較に基づき、リンクブラスティングがこのパルスで実行されるべきか否かを判定してもよい。オフセット位置が、ブラスティングを検討中のリンクに関する偏向フィールドの外部に位置する場合には、このシステムは、そのレーザパルスがリンクブラスティングに使用されるべきではないと判定し得る。例えば、レーザパルスは、偏向されずピックオフされないままに残されるか、減衰されるか、またはリンクの加工が行われないダンプ位置に偏向され得る。位置が、偏向フィールド内である場合には、シーケンスは、180で表すように、継続して、レーザパルス172eに関するAOBD制御を開始し得る。
図10に示すように、AOBD遅延(AOBD_DLY)が、電源からの必要な電気RF出力を生成するために存在してもよい。この遅延は、部分的には、電気駆動信号の所望の周波数および振幅を計算し、変換器を駆動するために電源からRF駆動信号を生成するために必要な時間によるものであり得る。この遅延は、例えば、約2μsの遅延となり得る。この遅延時間の後に、AOBD音波が、182で生成される。
【0041】
AOBD音波は、AOBD偏向窓に進入するための所定の時間量を必要とし得る。例えば、この時間は、AOBD偏向窓に進入し始めるための5μsの伝搬時間として表される。音波が、音響窓に十分に存在するようになると、リンクは、184で、レーザパルス172eにより切断される。
【0042】
各AOBD内において、ビーム偏向に使用される音響開口を埋めるために音響結晶を通過して伝搬するようにRF生成された音波の特徴的な音響遅延時間が存在する。そのため、遮断ポイントからオフセットされたレーザスポットと、関連するRF周波数およびRF振幅とは、レーザパルスに先立ち(これは約10マイクロ秒となり得る)判定されなければならない。この遅延は、音響結晶材料の特性(音響速度)とAOBD結晶の外形とにより決定される。100KHz超でパルス化されるレーザなどの、高繰り返しレーザが使用される場合には、パルス繰り返し周期は、音響遅延時間未満となり得る。本発明の一実装形態においては、高速連続パルス送信は、AO結晶におけるRFパルスのスタッキングにより対応され得る。例えば、約300KHzでは、3つのRFパルスが、AO結晶において同時に伝搬し、RF生成が、レーザパルスに先立つ複数のパルスとなり得る。音波がAOBD窓に進入するために必要な時間量は、例えば、5μsの伝搬時間として表すことができる。音波が、音響窓に十分に存在するようになると、リンクは、レーザパルスにより切断され得る。
【0043】
したがって、各RFパルスは、パルス周期期間がパルス開始時間からパルス終了時間までに及ぶ場合の、開始時間および終了時間により特徴づけられる。例えば、
図12Aは、デバイスの一方の側に対して変換器192が結合されたAOBDデバイス190を示す。また、デバイス190は、ビームが通過する音響窓194を有する。音波196は、RF変換器から伝搬するのが図示され、RF開始時間およびRF終了時間により規定される空間幅を有する。
図12Bに示すように、音波196は、デバイス190を通過し、窓194内のレーザ経路を横断する。図示するように、音波が窓を埋めるのに必要な時間は、例えば約5μs〜10μsなどであってもよい。
【0044】
デバイスのこの特徴的な伝搬遅延により、音波は、複数の音波が同時にデバイスを通過して伝搬している状態になり得るように、スタッキングされ得る。例えば、
図13は、デバイス190を通過している複数の音波200、202、204、206を示す。音波204が、窓194を埋めているのが図示される一方で、音波206は、窓194を通過済みである。
【0045】
RFパルスは、通常は、例えば100KHz〜300KHzなどの、レーザ加工出力繰り返し率に対応する繰り返し率で生成される。各RFパルスは、音波伝搬遅延を補償するために対応するレーザパルスに先立ち生成される。このようにすることで、RFパルスタイミングは、音響窓が、レーザパルスまたはレーザパルス群が送信されることとなる時に埋められるように、レーザ加工出力繰り返し率と同期される。
【0046】
AOBD変換器に対するRFパワーの印加および音響媒体における音響エネルギーの透過により、バルク材料の加熱が結果的に生じ得る。加熱は、バルク材料の温度を上昇させ、バルク材料内に温度勾配を発生させることとなる。この加熱は、印加されるRFパワーと共に変化し、偏向角の変化(ビームのぶれ)および偏向されたビームの送信率の変化(効率のぶれ)を結果的にもたらし得る。また、他のエネルギー源が、AOBDを加熱する場合もあり、例えば、レーザエネルギーの高光吸収により、局所加熱が引き起こされ得る。動作許容範囲を超える加熱および高ピークパワー光照射は、材料の損傷、コーティングの損傷、およびグレートラックダメージなどの材料の劣化など、追加的な望ましくない効果を有し得る。
【0047】
熱的に安定した音響光学デバイスが、ビーム照準の不安定性を軽減し、光収差を低減させるために、本発明の少なくとも1つの実施形態において使用され得る。熱的に安定した音響光学デバイスは、連続パルスシーケンスからのパルスピッキングを行うため、またはビーム位置決めを行うために、使用され得る。安定化された音響光学デバイスは、RFパワーを用いて1つ以上の周波数にて1つ以上の変換器により駆動される。1次回折ビームは、当技術において周知であるように、レーザ加工経路へと偏向される。RFの周波数は、正確な工作物の位置に対して偏向されたレーザスポットを位置決めするために、動的に変更され得る。RFの振幅は、音響光学デバイスの回折効率を変化させ、ビームエネルギーを変調させるために、変更され得る。パルス状加工の最中に、および加工パルス同士の間に、音響光学セルは、RFパワーおよびほぼ一定の熱負荷を受ける。RF周波数は、単一の非加工パルスが別次ビームへと変化してビームダンプにまたは偏向されたビームダンプに進み得るように、非加工パルスと同時に遮断される。したがって、RFのデューティサイクルは、典型的には高く、断続的なRF負荷による熱安定性は、低下する。RFパワーは、例えば一定の平均熱負荷を維持するためになど、音響光学セルに対する熱負荷を制御するために、レーザパルス同士の間で変調されてもよい。
【0048】
いくつかの従来的な正確なパルス状レーザ加工システムにおいては、RFは、約10ミリ秒以下の比較的短いパルスで印加される。これは、レーザがパルス化される場合にのみ、高回折効率のために音響窓内の音波を設定し、これにより、RFデューティサイクルが最低限に抑えられ、したがってAOBDにおける加熱が制限される。所定の設定されたRF振幅レベルについては、レーザ繰り返し率が上昇すると、より多数のRFパルスがAOBDに対して印加される。その結果、加熱は、RFパルスが最大RFパルス繰り返し率にて最大AOBDデューティサイクルを有する場合には、最大限まで上昇される。
【0049】
この最大AOBD繰り返し率は、所定のレーザがより高い繰り返し率にて独立的に動作することが可能であり得る場合であっても、これに従い最大レーザ加工速度を制限する。フィールド位置および加工パルスエネルギーを考慮に入れて、最大全体加熱は、例えば効率が最低となる(例えばフィールドエッジにて)RF周波数での最大送信でなど、最大繰り返し率および最高RFパワーにて生じることとなる。
【0050】
連続的で反復的な加工シーケンスは、例えば連続ラスタ走査などにより、AOBDデバイスの規則的かつ均一に時間平均化された加熱を効果的に実現し得る。
図14は、実証例のRFパルスの送信を、210で示す。レーザ加工パルスの送信210の断続的な性質により、平均RFパワーは、212で示すように不安定化される。AOBD変調により制御される標的に対するレーザ加工パルスの断続的な印加により、断続的な熱負荷が結果として得られ得る。さらに、加工標的の配置が不規則であることにより、これに対応して偏向角が可変的となり、RF振幅(レーザ変調用の)が変化し得ることが、不規則な熱負荷のさらなる一因となり得る。この不均衡な熱負荷は、不安定なAOBDデバイス温度を結果的にもたらすことがある。図示するように、種々の振幅が、断続的な時間に印加され、平均負荷は、RFパルシング中に上昇し、次いで低下して、AOBD温度の上昇および低下を示す。他の効果の中でもとりわけ、不安定なデバイス温度により、指令されたエネルギー値に対する送達される光エネルギーの不安定性がもたらされ得ることが、確認されている。
【0051】
AOBDデバイスの従来的な冷却は、主に受動的な伝導冷却である。高光パワー用に設計された、または高RFパワーを必要とする、いくつかのデバイスタイプの場合には、能動的な液体冷却が利用され得る。例えば、ゲルマニウムデバイスは、熱暴走を防止するために液体冷却され得る。しかし、多数の微細機械加工用途においては、受動冷却が、動作許容範囲内にAOBDデバイスを維持するために十分なものとなる。冷却要件および熱安定性は、例えばレーザビーム経路エンクロージャボックスなどのサブシステムエンクロージャ内などにおいて、局所的温度管理により影響を受け得る。次のレベルでは、システムエンクロージャおよびシステム温度管理が、AOBD動作に影響を及ぼし得ると共に、最終的には、部屋または工場の雰囲気条件が、例えば動作設定点などに影響を及ぼし得る。
【0052】
例えばレーザベースメモリリペアシステムなどの、幅狭のレーザパルスエネルギー加工窓を有するいくつかのレーザ加工用途については、送達されるレーザパルスエネルギーは、正確に制御され得る。
図15は、非送信パルス214と共に、
図12の断続送信RFパルス210を示す。したがって、本発明の一実施形態によれば、非送信パルス214は、レーザ加工用に使用されるように意図されないレーザパルスのために使用される。非送信パルス214は、AOBDデバイスまたはAOMデバイスに、レーザ加工光学経路以外の経路に沿って(例えばビームストップの方向に)ビームを送らせる振幅および/または周波数を有する。
図16に示すように、この効果は、音響光学デバイスにおけるRFパワーを安定化することである。特に、
図16は、断続パルス210と、安定化された平均RFパワー(216で図示)とを示す。
【0053】
図17は、上記で論じた音響光学デバイス190および装着される変換器192を再度概略的に示す。変換器192は、音波のシーケンスを伝搬するための変調されたRF駆動信号を供給するために、制御システム(220で全体的に図示)により駆動される。特に、第1の音波222は、第1の周波数および第1の振幅を有し、第2の音波224は、第2の異なる周波数および第2の異なる振幅を有し得る。第3の音波226は、第3の周波数および第3の振幅を有し、第4の音波228は、さらに他の異なる周波数および振幅を有し得る。一般的には、音波の振幅および/または周波数は、所定のレーザパルスエネルギーで所定の標的位置に対してレーザパルスを送信するように設定されてもよく、レーザパルスエネルギーがデバイスにおいて非常に安定的な平均音響パワーをもたらすようには送信されない場合には、動的に調節され得ることにより、温度の安定化を実現する。音波224は、音響窓194内に位置するものとして図示される一方で、音波222は、音響窓194を既に通過済みである。
【0054】
図18は、非送信ゼロ次経路(236で図示)、1つ以上のビーム加工経路(238で全体的に図示)、または1つ以上の非送信補償経路(240で図示)の中のいずれかに沿ってレーザ234からパルスを選択的に送るAOBDデバイス322を駆動するRFドライバ230の動作を制御するためのシステムの概略的な流れ図を示す。非加工非送信経路は、図示するようにストップダンプ242/ビームダンプ244の方向にビームを送る。この制御システムは、音響光学デバイスの温度を安定化させ、正確なエネルギー送達を維持する。
【0055】
一般的には、本発明のいくつかの実施形態によれば、特に断続レーザパルスが加工用の安定的な絶えずパルス化されるレーザ源から選択される場合に、AOBDデバイスにおける熱的に誘起されるエネルギーのぶれおよびビームのぶれを最小限に抑えるための技術が、利用される。これらの技術は、印加されるRFエネルギーの制御による様々な形態の均衡化された熱負荷を利用する。これらの技術は、実質的に一定の率でRFパルスを印加することにより、一定の平均パワーで音響光学セルに均一に負荷を与えると共に、パルス選択および熱負荷均衡化を実現するためにRFパルスパラメータを変化させることを含む。RFパルスは、偏向フィールドにおいては実質的にゼロ効率を有するか、または偏向フィールド外にビームを偏向する、非送信周波数でのレーザパルスと同時の偏向のために生成され得る。これらの場合には、RFパルスエネルギーは、一定の熱負荷に寄与するが、音響光学送信には寄与しない。これにより、パルスごとの熱安定化が可能となり、また同時にレーザ加工用のAO送信の個別の制御が可能となる。
【0056】
特に、この制御システムは、以下のように機能し得る。レーザパルス(250で図示)ごとに、システムは、初めに、パルスがレーザ加工用に使用されるべきかまたはストップへとダンピングされるべきかを判定する(252で図示)。レーザパルスが、レーザ加工用に使用されるべきではない(非ブラスティング判定)場合には、次いで、パルスは、ビームダンプへと偏向されることになる(254で図示)。ダンプ位置の対応する非送信RF周波数(256で図示)は、RFドライバ230と通信するRF周波数マルチプレクサ(258で図示)への入力として生成される。RF周波数マルチプレクサは、非ブラスティング判定に基づき、出力用の非送信周波数を選択する。
【0057】
レーザパルスが、レーザ加工用に使用されるべき場合には(ブラスティング判定、252で図示される)、レーザパルスは、標的の方向に偏向されることとなる(260で図示)。レーザスポットの指令された標的位置(262で図示)は、較正テーブル(264で図示)を用いて較正済み送信RF周波数へと変換されて、RFドライバ(230で図示)と通信状態にあるRF周波数マルチプレクサ(258で図示)へのさらなるデータ入力を供給する。RF周波数マルチプレクサは、(はい)ブラスティング判定に基づき出力用の送信周波数を選択する。指令されたパルス送信(266で図示)は、補正テーブル(268に図示)を参照して対応する加工RF振幅(270で図示)を判定することにより、補正される。この送信加工RF振幅は、RFドライバ(230で図示)とやはり通信状態にあるRF振幅マルチプレクサ(272で図示)への入力として生成される。RF振幅マルチプレクサは、(はい)ブラスティング判定に基づき出力用の送信RF振幅を選択する。また、フィードバックループが設けられ、RF振幅マルチプレクサ(272で図示)の出力は、平均RFパワー(274で図示)を判定するためのルーチンへと供給される。
【0058】
公称RFパワー(276で図示)が、平均RFパワー(278で図示)から減算される。次いで、この差が、RFパワーエラー信号(280で図示)として、補償RF振幅ルーチン(282で図示)へと供給される。補償RF振幅ルーチンは、RF振幅マルチプレクサ(272で図示)への入力として補償RF振幅信号を生成する。RF振幅マルチプレクサは、非ブラスティング判定に基づき出力用の非送信補償振幅を選択する。コントローラは、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路または集積回路チップなどであってもよい。
【0059】
したがって、補償RFパルスエネルギーは、AOデバイスの熱時定数未満である所定の時間間隔にわたり指令されたRFパルス振幅のセットから導出される、予測される平均熱負荷に基づく。各偏向器における平均RFパワーは、測定に基づき判定され得るが、好ましくは、各AOBDについてのデジタル処理された指令されるパルスエネルギーおよび関連する送信値に基づき、正確に推定され得る。正確なエネルギー制御が、メモリリペアのために必要とされるため、少なくともこのレーザ加工用途においては、パルスごとに予測される印加されるRFパワーは、フィールド位置に対する補正テーブルか、またはリアルタイム測定を伴わない精度改良用の他のパラメータに基づいてもよい。したがって、印加される平均RFパワーは、所定の公称送信角および偏向角での所望の送信を実現するのに必要な指令された送信およびRF補正から予測され得る。
【0060】
したがって、RF周波数は、ビーム偏向角を制御し、RF振幅は、光透過度を制御するために使用される。RF周波数較正テーブルは、工作物における正確な位置に対応する周波数でビームを偏向させるために使用され得る。RF振幅補正テーブルは、適用される周波数および送信レベルでの送信の変化を補償して、正確な指令されたパルスエネルギーを生成するために使用され得る。これらの補正は、偏向角で周知の回折効率の変化を補償し、特にAOBDがエネルギー制御に使用される場合には、補正は、RFパワーレベルで非線形送信を補償する。
【0061】
RF周波数範囲にわたり補正されたRF振幅により、デバイスに対して印加されるRFパワーは、種々のRF周波数に対して指令されるパルスエネルギーを実現するために変化する。その結果、RF熱負荷は、偏向フィールド中にわたり多様となる。例えば、偏向フィールド中にわたり指令された一定のパルスエネルギーの場合には、所望の送信を実現するために印加されるRFパワーは、偏向角でのAO回折効率により逆比例的に変化する。典型的な偏向器については、効率は、フィールドのエッジにて低くなるため、より多量のRFパワーが使用されて、フィールドのエッジでの加工の際の熱負荷を上昇させる。偏向フィールド範囲にわたり一定となるように補正された送信の場合には、最大送信度は、偏向フィールド内の最低送信度により限定されることとなる。一般的には、より幅広の偏向フィールドは、より低い送信度およびより高い熱負荷に相当する。
【0062】
レーザパルスエネルギー設定が、感熱性AOBDデバイスを使用して制御される場合には、RFパルス振幅は、送信されるレーザパルスエネルギーを変調させるように変化することとなるため、熱負荷均衡化方式が複雑になる。可変RF振幅を均衡化するためのいくつかのオプションには、送信RFパルスにおける一定のRFパルスエネルギーを維持するために振幅が縮小する際に送信パルス幅を増大させることによるRFパルス幅変調が含まれる。
【0063】
補償RFパルスは、非送信パルスであるため、より短いRFパルスが使用されてもよい。このより短いRFパルスは、付随する非送信音波が音響窓を完全に埋めることを必要とされないため、送信RFパルスには過度に短すぎるものとなる。この場合には、非送信レーザパルスの一部分が、ゼロ次で伝搬し、別の部分が、非送信周波数により偏向され得る。RFパルス幅変調により、補償RFパルス幅は、平均RFパワーを維持するために平均RFパワー設定レベルに比例して設定される。推定される平均RFパワーが設定点未満に低下すると、RFパルス幅は変更され、全RFパルス幅が使用される。対照的に、平均RFパワーが設定点超に低下すると、RFパルス幅は変更され、ゼロRFパルス幅が使用される。このようにすることで、平均RFパワーへの高速収束が実現される。任意には、公称RFパルス幅と全RFパルス幅との間のおよびゼロと公称RFパルス幅との間の中間RFパルス幅が、使用されてもよい。
【0064】
しかし、付随する高レーザパルス繰り返し率での高加工スループットのためには、RF信号は、ほぼ100%のデューティサイクルにてAOセルに対して印加され得る。これは、遅延(すなわち非衝突間隔)RFパルシング方式を非実用的なものにしてしまう。なぜならば、遅延(または進行)RFパルスは、隣接するレーザパルスの時点に音響窓にて生じ得るからである。同様に、RFパルス幅変調は、RF送信周波数にとって実用的ではない。なぜならば、RFパルス幅を短縮することにより部分的に埋められた音響窓が結果的に得られるからである。したがって、これらの熱安定化技術は、いくつかの用途においては、高率単一チャネル加工システムにおける十分な熱均衡化能力を実現しない場合がある。
【0065】
送信RFパルスおよび非送信RFパルスの組み合わされたRF負荷により、安定的な補償された熱負荷が実現される。非送信周波数は、ビームバンプにビームの一部分を偏向し、好ましくは、非送信周波数は、例えば最低送信周波数の2倍超など、AOBD内の超音波高調波の残存効果を最小限に抑えるために偏向周波数範囲よりも高い。非送信周波数における補償RFパルスパワーおよび回折効率に応じて、偏向されないこととなるレーザパルスエネルギーが、ゼロ次ビームストップによりピックオフされることになる。
【0066】
本発明のさらなる実施形態によれば、制御ループが、
図19に示すようなフィードバックシステムを利用して熱負荷設定点を参照することにより音響光学デバイスに関する熱負荷をモニタリングしてもよい。
図19のシステムは、第1のRF振幅マルチプレクサ294(フィードバックデータも受領する)に対する、およびRFドライバ(308で図示)を直接的に制御する第2のRF振幅マルチプレクサ(306で図示)に対する入力として、加工RF振幅(292で図示)を印加する。パルスが、セレクタ信号(290で図示)に基づき非標的加工パルスとなる場合には、第1のRF振幅マルチプレクサ294は、熱負荷設定点(302で図示)に関する負の入力も受領するコンバイナ(296で図示)に対して出力を供給する。サーボ制御論理(例えば比例的および積分器)(298で図示)が、非送信RFパルスを調節し、出力は、熱負荷設定点(やはり302で図示)に関する正の入力も受領するコンバイナ300にて結合される。リミッタが、例えばゼロとAOBD動作限界との間などの指定範囲内に非送信RFパワーを維持するために、適用され(304で図示)、調節された非送信RFパルス振幅データは、両RF振幅マルチプレクサ(294および306で図示)に対して供給される。RF振幅マルチプレクサ306は、非送信RFパルス調節データと送信RFパルスデータとを組み合わせて、RFドライバ308に制御信号を供給する。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、実質的にAOBDの熱時定数未満である時間間隔にわたり組み合わされた送信RFパルスおよび補償非送信RFパルスの安定的な予測される平均熱負荷を維持する制御ループが、利用されてもよい。
図20は、例えば上記で論じるようにブラスト信号(316で図示)も受領するRF振幅マルチプレクサ(314で図示)への入力として加工RF振幅データ(310で図示)および補償RF振幅データ(312で図示)を供給する、制御ループフィードバックシステムを図示する。RF振幅マルチプレクサの出力は、RFドライバ(318で図示)に対して供給され、推定された熱負荷ルーチン(320で図示)に対して供給され、この推定された熱負荷ルーチンが、コンバイナ(324で図示)を利用して熱負荷設定点(322で図示)に対してこの出力を比較する。コンバイナの出力は、熱負荷エラールーチン(326で図示)に対して供給され、この熱負荷エラールーチンは、RF振幅マルチプレクサに補償RF振幅データ(312で図示)を供給するために、比例・積分・微分(PID)コントローラ(328で図示)との間で通信を行う。
【0068】
安定的な予測された平均熱負荷は、AOデバイス温度を安定させるほぼ一定の熱負荷を実現する。制御ループは、平均RFパワーに対して事前選択された目標値に対する推定された平均RFパワーから判定され得る、RFパワーエラー信号を備える。例えば経時的にエラーを積分することにより、規定のエネルギー、平均パワー、振幅、または間隔を有する補償RFパルスが、生成され、目標RFパワーが、基板の加工工程にわたり維持される。
【0069】
この制御は、設定点サーモスタットとして動作し得るか、あるいは、安定性の向上を実現するための比例項、積分項、および微分項の中の1つ以上を含んでもよい。
図21は、上記で論じたように出力を選択するためにブラスト信号(336で図示)も受領するRF振幅マルチプレクサ(334で図示)に対する入力として加工RF振幅データ(330で図示)および補償RF振幅データ(332で図示)を供給する、本発明の別の実施形態による制御ループフィードバックシステムを示す。RF振幅マルチプレクサの出力は、RFドライバ(338で図示)に対して供給され、予測される温度解析ルーチン(340で図示)に対して供給され、この温度解析ルーチンは、コンバイナ(344で図示)を利用して温度設定点(342で図示)に対してこの出力を比較する。コンバイナの出力は、温度エラールーチン(346で図示)に対して供給され、この温度エラールーチンは、RF振幅マルチプレクサに補償RF振幅データ(332で図示)を供給するために、温度コントローラ(348で図示)との間で通信を行う。この制御は、デバイスの熱時定数よりも大きく桁違いに高速で動作し得る。
【0070】
図22は、上記で論じたように出力を選択するためにブラスト信号(356で図示)も受領するRF振幅マルチプレクサ(354で図示)への入力として加工RF振幅データ(350で図示)および補償RF振幅データ(352で図示)を供給する、本発明のさらなる実施形態による制御ループフィードバックシステムを図示する。RF振幅マルチプレクサの出力は、RFドライバ(358で図示)に対して供給され、平均RFパワー解析ルーチン(360で図示)に対して供給され、この平均RFパワー解析ルーチンが、第1のコンバイナ(364で図示)を利用して公称RFパワー(362で図示)に対してこの出力を比較する。第1のコンバイナの出力は、−RFパワーエラールーチン(366で図示)に対して供給され、この−RFパワーエラールーチンは、第2のコンバイナ(368で図示)に対してその出力を供給する。この第2のコンバイナは、RF振幅マルチプレクサに補償RF振幅データ(352で図示)を供給するために、公称RFパワーも受領する。
【0071】
比例項および積分項は、適切な安定性を実現することが予想される。この制御は、デジタル電子機器により実装することができ、熱安定化に加えて、デジタル電子機器の使用により、RF振幅対角度、RF振幅対レーザパルスパワー、またはレーザビーム位置対周波数のデジタル較正が可能となり得る。
【0072】
また、RF補償パルスエネルギーは、一定の平均RFパワーを維持することに基づき得る。例えば10,000超のパルスなどの多数のRFパルスが、AOBDの熱緩和時間内に発生する場合には、このアプローチは、パルスの大量のサンプル計数に対して有効な平均化を実現する。補償パルスエネルギーは、AOBDの熱モデルを利用して、所定の値に推定温度を維持するように判定され得る。この場合には、平均負荷は、平均温度を維持するために利用することが可能であり、高負荷は、加温のために利用され、低負荷は、冷却のために利用され得る。平均熱負荷は、典型的な加工デューティサイクルについては約200ミリワットとなり得る。ピークRFパワーは、TeO
2デバイスにおいては4ワットの高さとなり、石英、ゲルマニウム、または他の音響材料においては10ワット以上となり得る。
【0073】
図23は、AOBDパワー安定化システムにおいてマルチチャネルデジタル入力構成370を利用する、本発明の一実施形態によるシステムの一例を示す。特に、デジタル入力構成は、一対の正規化された入力信号と、2つのマルチプレクサ372、374とを使用して、有効な2ビットの4つの状態の入力を供給する。特に、レーザ発射チャネル入力376が、マルチプレクサ372に対しておよび論理ORユニット378に対して供給され、別のレーザ発射チャネル入力380が、マルチプレクサ374および論理ORユニット378に対して供給される。マルチプレクサ372、374の出力は、RF振幅デバイス384に対して結合された出力を供給するコンバイナ382に対して供給される。また、RF振幅デバイスは、補償パワー入力386および論理ORデバイス378からの制御信号を受領し、出力パワー信号388を供給する。
【0074】
したがって、
図23のシステムは、レーザ発射サイクル入力信号と共に多重送信される入力の2つのチャネルを提供する。レーザ発射信号が、いずれのチャネルに対しても供給されない場合には、入力は、パワー安定化システム用の出力に対して直接的に接続される。マルチチャネル入力は、適切な入力構成を有する3つ以上のチャネル(例えば3つまたはそれ以上)を備えてもよく、複数のチャネル入力が、多重送信される加工RF振幅および補償RF振幅を供給する任意の実施形態において、加工RF振幅入力として印加され得る。
【0075】
レーザパルスエネルギー変調のために光学AOMを利用することにより、安定化されるAOBDの動作温度が上昇し得る。これは、偏向器のRF振幅が、レーザパルスエネルギーがAOMにより減衰される場合に、低下しないことによる。さらに、AOMが、加工フィールドにわたるエネルギーを平坦化するためにエネルギー補正も行う場合には、偏向器のRF振幅は、高効率偏向角では低減されないことになる。高RFパワーが、十分な加工デューティサイクルにわたり印加されることにより、AOBDデバイスの温度は、上昇することになる。
【0076】
以下の表1は、中心、中間、およびエッジの偏向角での変調の際のこれらのAOBD RFパワーパラメータの実証的な例における、相対的な指令されるレーザパルスエネルギーと、AOBD効率と、光透過度とを示す。
【表1】
【0077】
指令されたレーザパルスエネルギーは、16%として示され、効率は、20%〜80%で変化する。対応するRF振幅値は、効率により分割される指令されたエネルギーがRF振幅に等しくなるように、決定される。このようにすることで、決定された振幅が印加され、透過度が指令された値に等しくなり、この例においては、印加される平均RFパワーは44%となる。
【0078】
以下の表2は、外部変調器が指令された値にレーザパルスエネルギーを設定するために使用される場合のさらなる実証的な例における同一の偏向を示す。
【表2】
【0079】
この場合には、AOBDのRF振幅は、フィールドエッジにおいて16%の透過度をもたらすために、一定の80%に設定される。AOMは、25%〜100%まで変化することにより、フィールドにわたり指令された16%の透過度を生じさせる。これらの表による結果的に得られる平均印加RFを比較することにより、この例におけるAOMの利用が、AOBDの平均負荷を44%から80%へと上昇させたことが明らかである。したがって、AOBDベースのレーザパルスエネルギー変調により、加工中の偏向フィールド中の平均デバイス透過度と平均RFデューティサイクルとの両方に対応するより低い平均RFパワーが与えられる。表1および表2に示すパラメータは、上記の比較の便宜を目的として含まれる。外部変調を用いるまたは用いる加工に使用される実際のパラメータ値工は、変更することができる。
【0080】
また、推定される平均パワーは、最大許容帯域の外部のレベルなどの過失条件に関してモニタリングされてもよい。エラーが検出されると、システム動作は、平均パワーが安定化され許容状態になるまで、終了または中断され得るか、あるいは、加工軌道が、安定的な平均パワーに対応するように変形され得る。一実施形態においては、リミッタ304(
図19の)が、例えばゼロ未満または所定の最大RF振幅超などの、許容し得る振幅範囲外のRF振幅入力を検出し、入力が許容し得る範囲内になるまで、限定された振幅出力を供給する。
【0081】
一定にパルス化されたレーザから加工パルスを選択する場合に、選択される作用レーザパルスの平均化されたデューティサイクルは、実質的に100%未満となり、補償RFパルスは、加工レーザパルスまたは位置合わせレーザパルスが要求されない場合には常に、印加され得ることが、予想される。AOセルの熱時定数は、かなりの秒数規模であり、レーザが300KHzなど100台のKHzで動作する状態で、多数の異なる加工システム動作が、AOデバイスの時定数未満の時間周期内で異なるレーザパルスエネルギー要件と共に実施され得ることが、認識されよう。
【0082】
したがって、レーザ加工デューティサイクルの未使用部分の間に断続的に送達される補償RFエネルギーは、デバイスの時定数未満の平均時間周期にわたり熱安定化を効果的に実現することが可能である。例えば、200mm/秒の加工速度では、50mmの場所が、約0.25秒で横断され得る。同様に、大幅に低下したレーザパルスエネルギーで典型的には行われるアラインメントルーチンは、数十ミリ秒の規模で実施され得る。加工軌道セグメント中の未使用RFパルス周期が、熱負荷の平衡化のために使用され得るばかりではなく、かなりの加工オーバーヘッドを含む非加工軌道セグメントおよび非位置合わせ軌道セグメントもまた、熱負荷の平衡化のために使用され得る。加工デューティサイクルが増大すると、不十分な補償RFパルスが熱負荷の平衡化のために利用可能な場合に制約が存在し得る。
【0083】
平均RFパワーおよび結果的に得られるAO温度に対する最適化された設定点の選択は、軌道プランおよびこの軌道に沿った予想される送信設定に基づくものであってもよい。種々の設定点が、高密度加工用途、標的の傾斜分布、異なる加工エネルギーレベル、または同様の加工特徴などの、他の加工特徴に基づき決定されてもよい。例えば、種々のタイプのメモリデバイスが、種々の設定点を利用してもよく、または、設定点が、所定の軌道に対するAOデバイス温度を最高にもしくは最低にするように設定されてもよく、または、設定点が、熱安定性を最大化するように選択されてもよい。一般的には、非送信RF周波数が使用される場合には、より低い設定点が、上記で論じたようなパルスエネルギー補正のために一定の高パルス繰り返し率のRF負荷および追加のレーザパルスエネルギー変調器(例えば固定の偏向AOM)を利用してシステムと比較される場合に、使用され得る。
【0084】
好ましくは、レーザ加工システム較正は、熱安定化された偏向器を用いて実施される。効率対偏向角および出力パルスエネルギーの補正は、例えば最大RFパワーの50%でなど、単一の事前設定平均パワーで大幅に改善された動作となり得る。平均パワーが安定化された状態では、偏向器温度は、送達されるレーザパルスエネルギーとは無関係となる。異なる(非補償)平均RFパワーでの異なるレーザパルスエネルギーについてのAOBD透明度対偏向角曲線の差は、約10%となり得るが、これらの差は、一定の平均パワーがレーザパルスエネルギーの範囲にわたり偏向器温度を安定化するために使用される場合には、約1%まで低下することが、確認されている。いくつかの場合においては、単一の透明度補正曲線が、レーザパルスエネルギーの範囲にわたり十分なものとなり得ることで、エネルギー較正が単純化される。正確な補正は、変数として偏向RF周波数およびRF振幅の両方を利用し得る。
【0085】
有効なAOBD温度管理をさらに複雑にする要因には、複数軸AOBDビーム送達および異なる標的タイプを含む2次元標的フィールドに対する動作が含まれる。一連の偏向器を用いた2軸ビーム偏向については、送信全体が、それぞれ個別のデバイスの送信の結果となる。各デバイスにおける指令される送信で同時に複数のビーム偏向軸の安定が維持されてもよい。さらに、2次元効果は、加工に影響を及ぼすことがあり、種々のエネルギー設定を必要とし得る。例えば、加工すべき要素の配向に対する加工ビームの偏光の変化により、異なるエネルギー設定が必要となる場合がある。
【0086】
種々の基板軸に沿った加工は、複数の偏向器間における異なる送信分割を示唆し得る。例えば、低送信フィールドの隅部が回避された、十字形状フィールド(
図24Aにおいて390で図示)またはコンパスローズ形状フィールド(
図24Bにおいて392で図示)では、幅狭フィールドが、高送信度を有し得ると共に、直交状態に位置する幅広フィールドが、低送信度を有し得る。その結果として、これらは共に、指令されたパルスエネルギーを生じさせる送信全体をもたらす。十字形状については、一連の行のそれぞれに沿ったラスタまたは各行に沿ったランダムシーケンスが、利用されてもよい。一般的には、行ごとの加工が、幅狭フィールド内においては有利であるが、複数の行が、フィールド形状と合致する場合には、リンクは、行の並びにおける順序を無視して種々の行において加工されてもよい。
【0087】
十字フィールドは、ビームが高偏向精度を有するエリア内のみにおいて偏向されることになるため、ブラスティング精度を向上させ得る。ビームは、正方形フィールドの隅部へは偏向されないため、ブラスティング精度が、改善され得る。複数列のラインシーケンスが、十字形状フィールドまたはコンパスローズ形状フィールドにより加工されてもよい。コンパスローズ形状では、より大きな組み合わされたx−yオフセットが、中心付近で使用され、より小さな組み合わされたx−yオフセットが、各軸の端方向へと漸進的に使用され得る。
【0088】
成形されたフィールドでは、加工方向が変化すると、高送信効率および低送信効率の任務が、加工方向に対する幅狭フィールド軸および幅広フィールド軸の配向と共に反転され得る。さらに、これは、結果として、2つの一連のデバイス間におけるビーム送信の結果全体の一定性を維持しつつ、指令される送信分割の反転をもたらし得る。例えば、x軸に対して平行に配向された列に沿った加工時には、x軸偏向器は、幅狭高効率偏向範囲を有し、y軸偏向器は、幅広低効率範囲を有し得る。y軸に対する平行な加工時には、反転される任務は、x軸偏向器に対する幅広低効率範囲と、y軸に対する幅狭高効率範囲とになる。したがって、一定で送達されるパルスエネルギーを維持しながらの単一の加工動作の最中であっても、単一のAOBDにおける指令される送信は、変化し得るし、AOBDデバイスに対する熱負荷は、大幅に変化し得る。
【0089】
いくつかの実施形態の態様は、全ての偏光されたビームが同一セットの光学構成要素に対して入射する、単一経路光学システムにおいて実施され得る。単一経路システムにおいては、偏向されたビームは、光学経路軸からオフセットされて、非共線ビーム軸と共に伝搬し得るが、一般的には、各ビームは、共通の光学素子を貫通する光学経路軸付近で同一シーケンスにおいて同一方向に伝搬する。非共線ビームは、一般的には、レーザ加工レンズの入射瞳に対して集められることにより、視野内の各標的位置に位置するビームは、テレセントリックとなる。
図25に図示するように、入射瞳430では、各偏向されたビームは、レンズ軸に対して方位角および仰角を有するベクトル方向に沿って伝搬することとなる。アレイのレンズの焦点面に形成される、一般的には回折が制限されたレーザビームのくびれ部であるレーザスポット432、434は、方位角に対応する配向と、レンズ焦点距離×仰角に対応するラジアル方向距離とを有しつつ、レンズ軸からオフセットされる。ビーム位置決めシステムは、ビーム位置合わせ用の様々な調節装置を備え得る。この調節装置は、とりわけ、加工レンズ436の入射瞳の中心にビームを位置合わせし得る。
【0090】
上記の実施形態は、単一パルスリンク加工に関連して説明されたが、本発明のシステムは、リンクを切断するために各リンクに対して複数のパルスを印加するリンクブローイングシステムにおいても利用され得る。
図26は、各リンクに対して2つのパルスのバーストすなわち2つのパルスのシーケンス440を印加するシステムを図示する。この実施形態においては、コントローラ444が、パルスセレクタ442に、リンク加工用の個々のパルスではなくパルス群444、446を選択させるために、使用される。いくつかの実施形態においては、レーザ自体は、分離されたパルスバーストをもたらし、この場合に、バースト内のパルスまたはパルス分割は、バースト間での分割よりもはるかに低くなる。これらの実施形態においては、パルスピッカ442が、パルスバーストを選択的に通過させるまたは遮断する。他の公知の実施形態は、複数のレーザを使用し、またはパルスを分割および再結合して、加工用にリンクに対して印加されるレーザエネルギーの様々な強度プロファイルを生成する。したがって、加工用に標的構造体に対してパルスを印加することに関する本文献全体にわたる議論は全て、パルスのシーケンス、パルス群、結合されたパルス、もしくはパルスバースト、あるいは完全なもしくは部分的な標的加工機能を実施するための任意の他の照射強度プロファイルの印加を含むことが、認識されよう。多数の実施形態において、パルスピッカ442は、音響光学変調デバイスであるが、電子工学スイッチ、高速ステアリングミラー、または十分な速度および精度を有する任意の他のタイプの光学スイッチであってもよい。
【0091】
高速偏向器の使用に関して、および
図27を参照として、先に本願に引用して援用した米国特許出願公開第2009/0095722号を、特に
図19および段落0130〜段落0146を含むその図面に伴う段落を参照されたい。
【0092】
各送信RFパルスの最小期間は、AOBD音響窓を越える音響通過時間により決定される。このRFパルス期間は、最短レーザパルス繰り返し周期および最高レーザパルス繰り返し周波数に対応する。レーザパルス繰り返し周波数が低下すると、RFデューティサイクルは、最小RFパルス期間を維持しつつ縮小され得る。最大でレーザパルス繰り返し周期までのRFパルス期間の拡大が可能であるが、結果的に得られるパルス間間隔により、所定のRFパルスに対するRFパワーが増大する。このRFパルス期間の拡大は、非送信RFパルスに加えて、AOBDをさらに安定化させるために利用され得る。いくつかの場合においては、非送信の時間変位されたRFパルスも可能であるが、一連のRFパルスのRFデューティサイクルが50%を超える場合には常に、これは困難になる。ある程度は、非送信RFパルスのRF振幅を増大させ、非送信RF期間を短縮することにより、時間変位されたRFパルスは、デューティサイクルの50%未満を利用することができる。
【0093】
例えば、RFパルス期間が、レーザ繰り返し周期の2/3である場合には、追加のRFパルスまたは100%RF振幅でのRFパルスの拡大は、デューティサイクルの未使用の1/3にわたり適用されることが可能となり、追加されるRFパルスエネルギーは、通常の2/3周期にわたる50%RF振幅に対応する。レーザパルス繰り返し率の低下は、軌道速度の低下に対応し得ると共に、加工は、例えば平均熱負荷が最大レーザPRFでの安定化を可能にするのに十分な均一性を有さない場合などに、温度安定化に対応するために減速され得る。
【0094】
したがって、様々な実施形態によれば、本発明は、熱的に安定化された音響光学ビーム偏向器を用いたレーザ加工方法を提供する。この方法は、レーザパルス繰り返し率を有するレーザパルスのシーケンスに対応するRFパルスのシーケンスを発生させるステップであって、RFパルスが、各送信方向および非送信方向へとレーザパルスのシーケンスを偏向させるために送信RF周波数の送信RFパルスおよび非送信RF周波数の非送信RFパルスを有し、各RFパルスが、RF周波数、RF振幅、および期間を有する、ステップと、RFパルスのシーケンスが音響光学偏向器に対する均衡化された熱負荷を与えるように変調された変調済みRF駆動信号を生成するように、各RFパルスを制御するステップと、音響光学偏向器に対して変調されたRF駆動信号を印加するステップと、変調されたRF駆動信号を利用して音響光学偏向器を用いて少なくとも1つのレーザパルスを偏向させて、所定のパルスエネルギーで選択された標的位置を照射するステップとを含む。
【0095】
さらなる実施形態においては、各RFパルスを制御するステップは、各RFパルスの振幅および期間を制御することをさらに含む。さらなる一実施形態においては、各RFパルスの期間は、そのレーザ繰り返し率にて少なくとも50%のデューティサイクルを有する。さらなる一実施形態においては、レーザパルス繰り返し率は、100KHz超である。さらなる一実施形態においては、各送信RFパルスの期間は、実質的に100%のデューティサイクルを有する効率的なレーザパルス送信に対応する最小期間であり、レーザパルス繰り返し率は、最大化される。
【0096】
さらなる一実施形態においては、レーザパルス繰り返し率は、約300KHzである。さらなる一実施形態においては、各RFパルスの期間を制御するステップは、そのレーザ繰り返し率で50%〜100%の範囲の各デューティサイクルを有するRFパルスを発生させることと、音響光学偏向器に対して均衡化された熱負荷を与えるように、非送信RFパルスの期間を制御することとを含む。さらなる一実施形態においては、変調された駆動信号は、音響光学ビーム偏向器を熱的に安定化させるために実質的に一定の平均化されたRFパワーを供給する。
【0097】
さらなる一実施形態においては、制御するステップは、音響光学偏向器における伝搬遅延に対処するために、対応するレーザパルス発射に先立ち一連のRFパルス発生をタイミング調節することと、偏向器において複数の振幅変調された音響パルスを同時に伝搬するようにRFパルス振幅を変調することとをさらに含む。さらなる一実施形態においては、RFパルス振幅を変調するステップは、音響光学ビーム偏向器を熱的に安定化させるために異なるRFパルスエネルギーを有する少なくとも2つの非送信RFパルスを供給する。さらなる一実施形態においては、RF振幅を変調するステップは、異なるRFパルスエネルギーを有する少なくとも2つの送信RFパルスを供給する。
【0098】
さらなる一実施形態においては、この方法は、RFパワー基準値を記憶するステップと、音響光学ビーム偏向器に対して印加される平均RFパワーを予測するステップと、基準値と予測を比較するステップと、この比較に基づき少なくとも1つの非送信RFパルスのRFパルスエネルギーを判定するステップとをさらに含む。
【0099】
さらなる一実施形態においては、この方法は、偏向器RF周波数の送信範囲にわたる偏向器の光学送信対偏向RF周波数に対する補正テーブル値を記憶するステップをさらに含み、制御するステップは、偏向周波数および対応する記憶された補正テーブル値に基づき送信RFパルス振幅を変調することを含む。
【0100】
さらなる一実施形態においては、この方法は、偏向されたレーザビームに対して基板を移動させるためにレーザ加工システムを操作することと、所定のレーザパルスエネルギー許容範囲内において基板上の選択された標的位置へと補償されたレーザパルスエネルギーを送達することとをさらに含む。さらなる一実施形態においては、この方法は、計算された音響光学ビーム偏向器のRFパワーが所定のエラー許容範囲を超える場合に、レーザ加工を終了することさらに含む。
【0101】
さらなる一実施形態によれば、本発明は、音響光学ビーム偏向器において熱安定性を与える方法を提供する。この方法は、音響光学ビーム偏向器が標的基板にて終端する光学経路に沿って加工レーザパルスを送るのを実現するために、音響光学ビーム偏向器に対して送信RFパルスを供給するステップと、音響光学ビーム偏向器が標的基板に到達することなく終端する光学経路に沿って非送信レーザパルスを送るのを実現するために、音響光学ビーム偏向器に対して非送信RFパルスを供給するステップとを含み、各非送信RFパルスは、音響光学ビーム偏向器の熱安定性を実現するように選択されたパルス特徴を有する。
【0102】
さらなる一実施形態においては、このパルス特徴は、非送信RFパルスの振幅である。さらなる一実施形態においては、このパルス特徴は、非送信RFパルスの周波数である。さらなる一実施形態においては、このパルス特徴は、非送信RFパルスのパルス幅である。
【0103】
さらなる一実施形態においては、この方法は、非送信RFパルスのパルス特徴を実現するために音響光学ビーム偏向器におけるRFパワーをモニタリングするステップをさらに含む。さらなる一実施形態においては、この方法は、非送信RFパルスのパルス特徴を実現するために音響光学ビーム偏向器における熱負荷をモニタリングするステップをさらに含む。さらなる一実施形態においては、この方法は、非送信RFパルスのパルス特徴を実現するために音響光学ビーム偏向器の温度をモニタリングするステップをさらに含む。
【0104】
さらなる一実施形態においては、本発明は、レーザ加工シーケンスに応じてレーザ加工フィールド内の選択された標的に対してレーザパルスを偏向するための熱的に安定化された高速レーザ加工システムを提供する。このシステムは、レーザ加工コマンドのシーケンスを実行し、システム構成要素を熱的に安定化させるためのコントローラであって、これらのコマンドが、送達されるレーザパルスのエネルギーコマンドおよびレーザ加工フィールド内のレーザパルス位置に関する送達されるレーザパルスの位置コマンドを含み、コントローラが、少なくとも1つのシステム構成要素を熱的に安定化させるために前記レーザ加工コマンドに応答して1つ以上の偏向器制御信号を発生させる、コントローラと、偏向器制御信号を受領し各RF駆動信号を発生させるように構成された少なくとも1つのRF信号発生器であって、各RF駆動信号が送信RFパルスおよび非送信RFパルスのシーケンスを含み、各送信RFパルスがレーザ加工フィールド内の選択された標的座標に対応する所定の送信周波数により特徴づけられ、各所定の熱負荷により特徴づけられ、各非送信RFパルスが、各非送信周波数および各補償熱負荷により特徴づけられ、各RF駆動信号が、少なくとも1つの音響光学ビーム偏向器において送信RFパルスおよび補償非送信RFパルスの安定化された熱負荷をもたらす、RF信号発生器とを備え、少なくとも1つの音響光学偏向器は、各RF駆動信号を受領するように、およびレーザ加工シーケンスに応じてレーザパルスを偏向して所定のレーザパルスエネルギーで所定の標的座標を照射するように、構成される。
【0105】
さらなる一実施形態においては、各RFパルスは、偏向器制御信号に応答するRF振幅を有することによりさらに特徴づけられる。さらなる一実施形態においては、コントローラは、各RFパルスごとに熱負荷推定値を事前に判定するための手段をさらに備える。さらなる一実施形態においては、コントローラは、選択された標的座標と関連する所定のRF振幅補正係数とに基づき、指令されたパルスエネルギーを対応する補正されたRF振幅に変換するための手段をさらに備える。
【0106】
さらなる一実施形態においては、コントローラは、所定の値に対する計算されたRFパワーの比較に基づき熱的に均衡化された偏向器制御信号を発生させるための手段をさらに備える。さらなる一実施形態においては、RF信号発生器は、RFパワー増幅器をさらに備える。さらなる一実施形態においては、このシステムは、RFパワー増幅器から音響光学偏向器までRFパワーを送達するためのRFケーブルおよびインピーダンス整合構成要素をさらに備える。
【0107】
さらなる一実施形態においては、音響光学温度が、安定化された高温である。さらなる一実施形態においては、安定化された熱負荷は、実質的に一定のRFパワーを含む。さらなる一実施形態においては、コントローラは、熱負荷を変更するためのパルス幅変調手段を備える。さらなる一実施形態においては、コントローラは、熱負荷を変更するためのRFパルス振幅変調手段を備える。さらなる一実施形態においては、コントローラは、構成されたFPGAを備える。
【0108】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記に開示した実施形態に対して多数の変形および変更を行い得ることが、当業者には認識されよう。