特許第6347826号(P6347826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6347826
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20180618BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20180618BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   A61F13/514 400
   A61F13/49 413
   A61F13/496
   A61F13/49 312Z
   A61F13/514 321
【請求項の数】8
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-238859(P2016-238859)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-93947(P2018-93947A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年3月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 彩
(72)【発明者】
【氏名】森 洋介
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/161700(WO,A1)
【文献】 特開2016−179041(JP,A)
【文献】 特開2011−225000(JP,A)
【文献】 特開2004−141640(JP,A)
【文献】 特開2013−230188(JP,A)
【文献】 特開2014−054422(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の少なくとも胴周り領域及び後身頃の少なくとも胴周り領域を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に取り付けられた、吸収要素を内蔵する内装体とを備え、
前記外装体は、弾性部材と、前記弾性部材の内側に隣接する内側シート層と、前記弾性部材の外側に隣接する外側シート層とを有しており、
前身頃の前記外装体の両側部と後身頃の前記後側外装体の両側部とがそれぞれ接合され、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成された、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記内装体の少なくとも幅方向中間部は、前記吸収要素より外側に液不透過性シートを有しない部分となっており、
前記外装体における前記外側シート層より外側を通り、前記内装体における前記液不透過性シートを有しない部分の全体を覆う、樹脂フィルムからなる液不透過性シートを有しており、
前記液不透過性シートには装飾印刷が施されており、
前記液不透過性シートの外面全体が、不織布からなるカバーシートにより被覆されている、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記カバーシートの両側縁が、前記吸収要素の両側縁の位置よりも幅方向中央側に位置し、かつ
前記カバーシートの内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が対向面にホットメルト接着剤を介して接着されている、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記内側シート層及び外側シート層は不織布であり、
前記内側シート層、外側シート層及びカバーシートの繊維配向が幅方向となっている、
請求項2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記カバーシートは、前身頃及び後身頃の少なくとも一方で、ウエスト開口に向かって延び、ウエスト開口で前記内側シート層より内側に折り返されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記外装体は、前記吸収要素と重なる領域の幅方向中間部に設けられた非伸縮領域と、この非伸縮領域の幅方向両側に設けられた伸縮領域とを有しており、
前記カバーシートは、前記非伸縮領域の幅方向範囲内に設けられている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記外側シート層は不織布であり、
前記液不透過性シートの両側縁の位置が前記カバーシートの両側縁の位置と一致しており、
前記カバーシートの内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が前記液不透過性シートにホットメルト接着剤を介して接着されるとともに、
前記液不透過性シートの内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が前記外装体にホットメルト接着剤を介して接着されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記外装体として、前身頃の少なくとも胴周り部を構成する前側外装体及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する後側外装体とを別々に備え、これら前側外装体及び後側外装体が前後方向中間で前後方向に離間している、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記カバーシートは、表裏に貫通する孔が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃及び後身頃を個別又は一体的に構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に対して取り付けられた、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃の外装体の両側縁部と後身頃の外装体の両側縁部とが接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものが一般的である。
【0003】
このようなパンツタイプ使い捨ておむつでは、身体へのフィット性を向上させるために、外装体を複数のシート層を有する積層構造とするとともに、そのシート層間に、種々の弾性部材を伸長状態で取り付けることが行われており、中でも、サイドシール部と対応する前後方向範囲として定まる胴周り領域や、前後の胴周り領域の間に位置する中間領域に、幅方向に沿う細長状弾性部材が前後方向に間隔を空けてそれぞれ幅方向に伸長された状態で取り付けられているものは、身体に対するフィット性が比較的に高いものとなっている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0004】
他方、パンツタイプ使い捨ておむつでは、製品外面から視認可能なようにキャラクターや模様等の装飾印刷を設けることが知られている。このような装飾印刷は、外装体におけるシート層の間や外装体と内装体との間に設けられる専用の印刷シートに施す(例えば特許文献1〜6参照)他、吸収要素の裏側を覆う液不透過性シートに施すこと(例えば特許文献7,8参照)も行われている。
【0005】
しかしながら、前者の場合、装飾印刷が製品外面に近いため、より明瞭に視認できる反面、専用のシートを設ける必要がある。これに対し、後者は専用のシートを設ける必要がなく、かつ広範囲に装飾印刷を設けることができるが、特に外装体と重なる領域では複数のシート層を通して装飾印刷を視認することになり、視認性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−073428号公報
【特許文献2】特表2006−525857号公報
【特許文献3】特開2011−147516号公報
【特許文献4】特開2014−028308号公報
【特許文献5】特許第4964993号公報
【特許文献6】特開2001−000478号公報
【特許文献7】特表2001−517098号公報
【特許文献8】特開2005−315651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、専用の装飾印刷シートを用いずに装飾印刷の視認性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は以下のとおりである。
<第1の態様>
前身頃の少なくとも胴周り領域及び後身頃の少なくとも胴周り領域を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に取り付けられた、吸収要素を内蔵する内装体とを備え、
前記外装体は、弾性部材と、前記弾性部材の内側に隣接する内側シート層と、前記弾性部材の外側に隣接する外側シート層とを有しており、
前身頃の前記外装体の両側部と後身頃の前記外装体の両側部とがそれぞれ接合され、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成された、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記内装体の少なくとも幅方向中間部は、前記吸収要素より外側に液不透過性シートを有しない部分となっており、
前記外装体における前記外側シート層より外側を通り、前記内装体における前記液不透過性シートを有しない部分の全体を覆う、樹脂フィルムからなる液不透過性シートを有しており、
前記液不透過性シートには装飾印刷が施されており、
前記液不透過性シートの外面全体が、不織布からなるカバーシートにより被覆されている、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0009】
(作用効果)
本第1の態様は、従来は内装体に設けられることが常識であった液不透過性シートを、外装体の外側に移動し、さらにその外側をカバーシートで被覆し、布のような製品外面としたところに特徴を有する。この結果、液不透過性シートに装飾印刷を設けると、専用の装飾印刷シートを用いる必要がなくなるだけでなく、装飾印刷が製品外面に近く、より明瞭に視認できるようになる。
【0010】
<第2の態様>
前記カバーシートの両側縁が、前記吸収要素の両側縁の位置よりも幅方向中央側に位置し、かつ
前記カバーシートの内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が対向面にホットメルト接着剤を介して接着されている、
第1の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0011】
(作用効果)
カバーシートの側端部は、剛性が低い部分に位置していたり、変形を受けやすかったりすると、対向面に接着されていたとしても剥離するおそれがある。また、カバーシートの側端部が装着者の脚に擦れやすいと、より剥離のおそれが高いものとなるとともに、段差が肌触りを悪化させるおそれがある。これに対して、本第2の態様では、カバーシートの側端部が、吸収要素を有する領域、つまり周囲よりも高剛性で変形を受けにくく、装着者の脚が擦れにくい領域内に位置しているため、対向面に対する接着が剥離しにくく、かつ肌触りが悪化しにくい。また、カバーシートの側端部が対向面に接着されているため、境界が継ぎ目なく一体化し、目立たつこともない。
【0012】
<第3の態様>
前記内側シート層及び外側シート層は不織布であり、
前記内側シート層、外側シート層及びカバーシートの繊維配向が幅方向となっている、
第2の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0013】
(作用効果)
このように、内側シート層、外側シート層及びカバーシートの繊維配向が幅方向で一致していると縦横の引張伸度(あるいは引張伸度の縦横比)が近くなるため、使用中に変形したとき、内側シート層、外側シート層及びカバーシートが一体的に変形することができ、重ね貼りしたカバーシートと外装体との継ぎ目が目立ちにくく、かつカバーシートの側端部が剥離しにくいものとなる。
【0014】
<第4の態様>
前記カバーシートは、前身頃及び後身頃の少なくとも一方で、ウエスト開口に向かって延び、ウエスト開口で前記内側シート層より内側に折り返されている、
第1〜3のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0015】
(作用効果)
カバーシートの前縁及び後縁が製品外面に露出せず、外観が良好となる。また、カバーシートの前縁及び後縁が衣類と擦れて剥離するといった事態が発生しにくい。
【0016】
<第5の態様>
前記外装体は、前記吸収要素と重なる領域の幅方向中間部に設けられた非伸縮領域と、この非伸縮領域の幅方向両側に設けられた伸縮領域とを有しており、
前記カバーシートは、前記非伸縮領域の幅方向範囲内に設けられている、
第1〜4のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0017】
(作用効果)
このようにカバーシートが非伸縮領域の幅方向範囲内に設けられていると、カバーシートの全体にわたり皺が少なく、美観に優れたものとなる。これに対し、カバーシートが伸縮領域まで延びていると、カバーシートにも収縮皺が形成されるため、カバーシートの側端部が剥離しやすくなったり、皺が目立って不自然な見た目となったりする。
【0018】
<第6の態様>
前記外側シート層は不織布であり、
前記液不透過性シートの両側縁の位置が前記カバーシートの両側縁の位置と一致しており、
前記カバーシートの内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が前記液不透過性シートにホットメルト接着剤を介して接着されるとともに、
前記液不透過性シートの内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が前記外装体にホットメルト接着剤を介して接着されている、
第1〜5のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0019】
(作用効果)
この場合、カバーシートの両側端部が、樹脂フィルムからなる液不透過性シートを介して、不織布からなる外側シート層に接着されるため、カバーシートの両側端部と外側シート層との接合が強固となる。
【0020】
<第7の態様>
前記外装体として、前身頃の少なくとも胴周り部を構成する前側外装体及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する後側外装体とを別々に備え、これら前側外装体及び後側外装体が前後方向中間で前後方向に離間している、
第1〜6のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0021】
(作用効果)
前側外装体及び後側外装体が前後方向に離間する位置は、尿の供給位置に該当し、特に漏れ防止性が重要となる領域である。本発明では、液不透過性シートが外装体の外側に位置することになるが、このような外装二分割構造では、前側外装体及び後側外装体が前後方向に離間する位置において、内装体における液不透過性シートを有しない部分を、外装体を介さずに液不透過性シートで被覆することができるため、尿が外装体内を浸透して外部に染み出しにくい。さらに、カバーシートが前側外装体及び後側外装体にわたり設けられるため、前側外装体及び後側外装体にわたり連続した外観及び肌触りとなる。よって、本発明は、このような外装二分割構造との組み合わせに適している。
【0022】
<第8の態様>
前記カバーシートは、表裏に貫通する孔が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布である、
第1〜7のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0023】
(作用効果)
カバーシートがこのような有孔不織布であると、通気性、柔軟性、嵩高さ(ふんわり感)等を向上できるだけでなく、液不透過性シートの装飾印刷が見やすくなる。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、専用の装飾印刷シートを用いずに装飾印刷の視認性を改善することができる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、平面図である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
図3図1の2−2断面図である。
図4図1の3−3断面図である。
図5】(a)図1の4−4断面図、及び(b)図1の5−5断面図である。
図6】パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図(孔省略)である。
図7】展開状態の内装体の外面を示す、平面図である。
図8】展開状態の内装体の外面を外装体の輪郭とともに示す、平面図である。
図9】(a)図1の4−4断面図、及び(b)図1の5−5断面図である。
図10図1の2−2断面図である。
図11】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
図12】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
図13】(a)図12の4−4断面図、及び(b)図1の5−5断面図である。
図14】有孔不織布の孔を示す、(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)断面図である。
図15】有孔不織布の孔を示す、(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)断面図である。
図16】有孔不織布の孔を示す、(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)断面図である。
図17】有孔不織布の要部拡大平面図である。
図18】カバーシートの接着部分の(a)(c)断面図、(b)(d)平面図である。
図19】ホットメルト接着剤の塗布時の変化を示す平面図である。
図20】パンツタイプ使い捨ておむつの(a)製造設備のフロー図、及び(b)組立状態の変化を示す平面図である。
図21】(a)従来の積層構造の要部を示す分解組立図、及び(b)本発明の積層構造の要部を示す分解組立図である。
図22】本発明の積層構造の要部を示す分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0027】
図1図8は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する前側外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する後側外装体12Bと、前側外装体12Fから股間部を経て後側外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bに取り付けられた、吸収要素50を内蔵する内装体200とを備えており、前側外装体12Fの両側部と後側外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されることにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなる。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支える機能を担う支持体である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0028】
本形態のパンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成するウエスト部Wと、これよりも下側の部分であるウエスト下方部Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15〜40mm、ウエスト下方部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが装着者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体として略砂時計形状をなしている。
【0029】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3図5に示されるように、吸収要素50と、吸収要素の表側を覆う液透過性のトップシート30とを備えているものであり、吸収機能を担う本体である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の脚周りに接するように延び出た立体ギャザー60を示している。
【0030】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0031】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0032】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0033】
トップシート30は、裏側部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示形態では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0034】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(セカンドシートとも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの逆戻り現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0035】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0036】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0037】
中間シート40は、裏側部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示形態では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0038】
(立体ギャザー)
立体ギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向LDの全体にわたり延在し、内装体200の側部から表側に立ち上がり、装着者の脚周りに接して横漏れを防止するものである。
【0039】
本形態の立体ギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、全体として幅方向中央側に起立する形態等、適宜の変更が可能である。より詳細に説明すると、本形態の立体ギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザー不織布62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。立体ギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200における裏側の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。この形態は面接触タイプの立体ギャザー60であるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの立体ギャザー60も採用することができる。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分68とされ、この自由部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0040】
以上のように構成された立体ギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、本体部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分68とされているため、自由部分68のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、付根部分65が内装体200の裏側に位置していると、股間部及びその近傍において自由部分68が幅方向外側に開くように起立するため、立体ギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0041】
ギャザー不織布62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザー不織布62の間に防水フィルム64を介在させることもでき、この場合には防水フィルム64の存在部分においてギャザー不織布62を部分的に省略することもできるが、製品の外観及び肌触りを布のようにするためには、図示形態のように、少なくとも立体ギャザー60の基端から先端までの外面がギャザー不織布62で形成されていることが必要である。
【0042】
本形態の立体ギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲形態では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは一つの好ましい形態である。
【0043】
立体ギャザー60の自由部分に設けられるギャザー弾性部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。
【0044】
立体ギャザー60の自由部分68では、ギャザー不織布62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザー不織布62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザー不織布62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザー不織布62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザー不織布62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
【0045】
同様に、立体ギャザー60に組み込まれる防水フィルム64とギャザー不織布62との固定や、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0046】
本形態の立体ギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図3に示すように、立体ギャザー60の起立高さ(展開状態における本体部分66の幅方向長さ)W2は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、立体ギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W1は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0047】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。吸収体56が形状維持性に優れる場合等、必要に応じて包装シート58は省略することもできる。
【0048】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0049】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図1及び図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と立体ギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0050】
また、吸収体56の寸法は排尿口位置の前後左右にわたる限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0051】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0052】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0053】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0054】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0055】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0056】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0057】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0058】
(液不透過性シートを有しない部分)
図3図5に示すように、内装体200の少なくとも幅方向中間部は、吸収要素50より外側に液不透過性シート11を有しない部分203となっている。すなわち、本形態では、従来は内装体200に設けられることが常識であった、裏側への染み出しを防止する液不透過性シート11が内装体200に設けられていない。なお、本形態では、立体ギャザー60に内蔵された防水フィルム64が、内装体200の幅方向両端部における吸収要素50の裏側まで延びているため、幅方向両端部は液不透過性シート11を有する部分となっているが、立体ギャザー60に防水フィルム64がない形態、又はあっても内装体200の裏側まで延びていない形態とすることもでき、その場合、内装体200の幅方向全体が吸収要素50より外側に液不透過性シート11を有しない部分となる。また、立体ギャザー60の防水フィルム64以外の防水フィルムが、内装体200の幅方向WD両端部における吸収要素50より外側に設けられていてもよい。
【0059】
(外装体)
外装体12F,12Bは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である前側外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である後側外装体12Bとからなり、前側外装体12F及び後側外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されている。この離間距離12dは例えば150〜250mm程度とすることができる。また、図12及び図13に示すように、外装体12が、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続する一体的なものとすることもできる(外装一体タイプ)。
【0060】
外装体12F,12Bは、胴周り領域Tと対応する前後方向範囲である胴周り部を有する。また、本形態では、前側外装体12Fよりも後側外装体12Bの方が前後方向寸法が長くなっており、前側外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有していないが、後側外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有している。図示しないが、前側外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けたり、鼠径カバー部は設けるものの臀部カバー部は設けない形態としたり、前側外装体12F及び後側外装体12Bの両方に中間領域Lと対応する部分を設けなくても良い。また、図示形態では、臀部カバー部Cの下縁は、前側外装体12Fの下縁と同様、幅方向WDに沿う直線状に形成しているが、幅方向外側に向かうにつれてウエスト開口側に位置するようになる曲線とすることもできる。
【0061】
外装体12F,12Bは、図4及び図5に示されるように、後述する弾性部材15〜19の外側及び内側にそれぞれ位置する外側シート層12S及び内側シート層12Hがホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されたものである。外側シート層12Sを形成するシート材及び内側シート層12Hを形成するシート材は、共通の一枚のシート材とする他、個別のシート材とすることもできる。すなわち、前者の場合、外装体の一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁(股間側の縁としても良い)で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分により内側シート層12H及び外側シート層12Sがそれぞれ形成される。なお、前者の形態では、シート材の資材数が少ないという利点があり、後者の形態では内側シート層12H及び外側シート層12Sを貼り合わせる際に位置ずれしにくいという利点がある。図示形態は後者に相当するものであり、内側シート層12Hを形成するシート材はウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、外側シート層12Sを形成するシート材は、内側シート層12Hのシート材のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
【0062】
外側シート層12S及び内側シート層12Hに用いるシート材としては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などからなる不織布を使用することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。また、外側シート層12Sに用いる不織布、及び内側シート層12Hに用いる不織布の厚みはそれぞれ0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0063】
また、外装体12F,12Bに用いる不織布の総目付け(外側シート層12Sの目付け及び内側シート層12Hの目付けの和)は20〜60g/m2程度であるのが好ましい。
【0064】
(伸縮領域・非伸縮領域)
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、外側シート層12S及び内側シート層12H間に弾性部材15〜19が設けられ、弾性部材15〜19の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されていると好ましい。この伸縮領域A2では、自然長の状態では外側シート層12S及び内側シート層12Hが弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材の長手方向に伸長すると、外側シート層12S及び内側シート層12Hが皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15〜19としては、糸ゴム等の細長状弾性部材(図示例)の他、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15〜19としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0065】
外装体12F,12Bにおける外側シート層12S及び内側シート層12Hの貼り合わせや、その間に挟まれる弾性部材15〜19の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。外装体12F,12B全面を強固に固定すると柔軟性を損ねるため、弾性部材15〜19の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材15〜19の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布して両シート層12S,12H間に挟むことにより、当該弾性部材15〜19の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、両シート層12S,12Hへの弾性部材15〜19の固定と、両シート層12S,12H間の固定とを行う構造となっている。弾性部材15〜19は伸縮領域における伸縮方向の両端部のみ、外側シート層12S及び内側シート層12Hに固定することができる。
【0066】
図示形態の弾性部材15〜19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト部弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト部弾性部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150〜400%、特に220〜320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDの全てに同じ太さのウエスト部弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部で弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0067】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるウエスト下方部弾性部材15,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。
【0068】
ウエスト下方部弾性部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200〜350%、特に240〜300%程度であるのが好ましい。
【0069】
また、後側外装体12Bの臀部カバー部Cにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるカバー部弾性部材16が取り付けられている。
【0070】
カバー部弾性部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1本、又は前後方向に間隔を空けて複数本設けるのが好ましく、これによる臀部カバー部Cの幅方向WDの伸長率は150〜300%、特に180〜260%であるのが好ましい。
【0071】
前側外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には同様にカバー部弾性部材を設けることができる。
【0072】
図2等に示される形態のウエスト下方部Uや臀部カバー部Cのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材15,16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされる。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。もちろん、図11に示される形態のように、弾性部材の切断を行わず、非伸縮領域A1を設けなくてもよい。
【0073】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層12Hと、外側シート層12Sとの間に、弾性部材15〜17,19を供給し、弾性部材15,16,19を伸縮領域A2における少なくとも伸縮方向の両端部でホットメルト接着剤を介して固定し、非伸縮領域A1となる領域では固定せず、非伸縮領域A1となる領域において、弾性部材15,16,19を幅方向中間の1か所で加圧及び加熱により切断するか、又は弾性部材15,16,19のほぼ全体を加圧及び加熱により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。前者の場合、図4に示すように、非伸縮領域A1には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部が不要弾性部材18として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることとなり、後者の場合、図示しないが、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部、及び両方の伸縮領域A2の弾性部材15,16,19と連続しない弾性部材の切断片が不要弾性部材として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることになる。
【0074】
(内外接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。この内装体200と外装体12F,12Bとを固定する内外接合部201,202は、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
【0075】
(液不透過性シート)
特徴的には、図21(b)にも示すように、外装体12F,12Bにおける外側シート層12Sより外側を通り、内装体200における液不透過性シート11を有しない部分203の全体を覆う、樹脂フィルムからなる液不透過性シート11が設けられている。この点で、本形態は、図21(a)に示すように外装体12F,12Bより内側に液不透過性シート11を有する従来形態と異なっている。また、この液不透過性シート11は図2及び図7に示すように装飾印刷27が施された装飾印刷シートとなっており、この他には装飾専用のものを含め、装飾印刷シートは設けられていない。
【0076】
液不透過性シート11は、内装体200における液不透過性シート11を有しない部分203の全体を覆う限り、その前後方向及び幅方向の寸法及び位置は適宜定めることができる。通常、液不透過性シート11は、外装二分割タイプの場合は図8に示すように、内装体200の最も幅の狭い部分(図示形態の場合、内装体200の全幅200x)の幅方向範囲内に、より狭い全幅11xで設けられているのが好ましく、外装一体タイプの場合は図12に示すように、外装体12又は内装体200のうち最も幅の狭い部分の幅が広い方(図示形態では外装体12)の、最も幅の狭い部分の幅方向範囲内に、より狭い全幅11xで設けられていることが好ましい。また、液不透過性シート11の全幅11xは、内装体200の液不透過性シート11を有しない部分203の全幅より10mm以上広いことが好ましい。特に、漏れ防止性を向上させるために、立体ギャザー60が内装体200の裏側の側部に固定された付根部分65を有する場合、この付根部分65と、液不透過性シート11とは幅方向に5mm以上の重なり部分を有することが好ましい。さらに、図示形態のように、立体ギャザー60が付根部分65に防水フィルム64を含む形態では、付根部分65の防水フィルムと、液不透過性シート11とは幅方向に5mm以上の重なり部分を有することが好ましい。
【0077】
液不透過性シート11の前後方向寸法11yは、図8に示すように吸収要素50の前後方向寸法と同じで、吸収要素50と同じ前後方向範囲に設けられていれば足りるが、図9に示すように吸収要素50より長く、吸収要素50よりも広い前後方向範囲に設けられているのも好ましい。液不透過性シート11は、図9に示されるカバーシート13と同様にウエスト開口で外装体12F,12Bの内側に折り返すこともできるが、図8に示すように、外装体12F,12Bの外側にのみ設ける場合、液不透過性シート11のウエスト開口WO側の縁はウエスト開口WOよりも股間側に離間していることが好ましく、特にウエスト部Wよりも股間側に位置していることが好ましい。
【0078】
特に、本形態のような外装二分割タイプの場合、前側外装体12F及び後側外装体12Bが前後方向LDに離間する位置は、尿の供給位置に該当し、特に漏れ防止性が重要となる領域である。本形態では、液不透過性シート11が外装体12F,12Bの外側に位置することになるが、このような外装二分割構造では、前側外装体12F及び後側外装体12Bが前後方向LDに離間する位置において、内装体200における液不透過性シート11を有しない部分203を、外装体12F,12Bを介さずに液不透過性シート11で被覆することができるため、尿が外装体12F,12B内を浸透して外部に染み出しにくいものとなる。特に、立体ギャザー60が内装体200の裏側の側部に固定された付根部分65を有する場合、前側外装体12F及び後側外装体12Bが前後方向LDに離間する位置では、立体ギャザー60の付根部分65と、液不透過性シート11とを直接接着することができ、漏れ防止性に優れた構造とすることができる。さらに、後述するカバーシート13が前側外装体12F及び後側外装体12Bにわたり設けられるため、前側外装体12F及び後側外装体12Bにわたり連続した外観及び肌触りとなる。
【0079】
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。
【0080】
液不透過性シート11には、装飾のための模様(絵やワンポイントのキャラクター含む)、使用方法や使用補助、サイズ等の機能表示、あるいは製造者や製品名、特徴的機能等の標章表示等の装飾印刷が付加される。液不透過性シート11に不透明性の高い樹脂フィルムを用いる場合には印刷を外面に施す必要があるが、例えば、透明性が高い樹脂フィルムを用いる場合には、液不透過性シート11の内面に印刷部を設けることもできる。
【0081】
液不透過性シート11の内面は、外装一体タイプの場合は対向面である外装体の外側シート層12Sに対して、また外装二分割タイプの場合には前側外装体12F及び後側外装体12Bの外側シート層12S及び内装体200の裏面に対してホットメルト接着剤11Hを介して接着される。液不透過性シート11は、その前後端部を除いた主要領域では、少なくとも両側端部(好ましくは幅方向全体)は、製品長手方向に連続して接着されていることが好ましい。さらに、図示形態のように、立体ギャザー60が付根部分65に防水フィルム64を含む形態では、付根部分65の防水フィルム64と、液不透過性シート11とが重なる部分において、防水フィルム64と液不透過性シート11との間に位置するすべての接着剤層(接着剤層が一層の場合はその層)の幅は3mm以上、特に5mm以上であることが好ましく、接着剤層が複数の場合、すべての接着剤層が重なる部分を有していることが好ましく、その接着剤層の重なる部分の幅は3mm以上であることが好ましい。液不透過性シート11の前後端部は、外装体12F,12Bに対して非接着とする他、それらの間の領域と同様に接着することもできる。
【0082】
(カバーシート)
液不透過性シート11の外面全体は、不織布からなるカバーシート13により被覆される。これにより、液不透過性シート11を外装体12F,12Bの外側に設けても、布のような製品外面となる。また、この液不透過性シート11に装飾印刷27が設けられているため、専用の装飾印刷27シートを用いる必要がなくなるだけでなく、カバーシート13を介して透けて見える装飾印刷27とはなるが、装飾印刷27が製品外面に近く、より明瞭に視認できるようになる。
【0083】
図示形態では、一枚のカバーシート13で液不透過性シート11の外面全体を覆っているが、カバーシート13を前身頃と後身頃とで別々に設ける等、複数枚で液不透過性シート11の外面全体を覆うように構成してもよい。
【0084】
カバーシート13の前後方向範囲は特に限定されず、液不透過性シート11と同じか、又はそれよりも広い範囲とすることができる。図中の符号13yはカバーシート13の全長を示している。例えば、前身頃F及び後身頃Bの少なくとも一方で、図9に示すように、カバーシート13はウエスト開口WOに向かって延び、ウエスト開口WOの縁を回り込んで外装体12F,12Bの内側に折り返されていてもよい。これにより、カバーシート13の前縁及び後縁が製品外面に露出せず、外観が良好となる。また、カバーシート13の前縁及び後縁が衣類と擦れて剥離するといった事態が発生しにくくなる。
【0085】
特に、図示形態のように、カバーシート13が内装体200のウエスト開口WO側の端部上まで延在されていると、外装体12F,12Bの外側シート層12Sの折り返し部分12rを省略することができる。この場合、液不透過性シート11をカバーシート13と同じに外装体12F,12Bの内側に折り返してもよいが、図示形態のように、液不透過性シート11のウエスト開口WO側の縁はウエスト開口WOよりも股間側に離間していることが好ましい。
【0086】
カバーシート13の幅方向範囲は特に限定されず、後述する製造方法を考慮すると、図10に示すように液不透過性シート11と同じとすることが好ましいが、図3に示すように液不透過性シート11よりも広い範囲とすることもできる。図中の符号13xはカバーシート13の全幅を示している。ただし、カバーシート13が伸縮領域A2まで延びていると、カバーシート13にも収縮皺が形成されるため、カバーシート13の側端部が剥離しやすくなったり、皺が目立って不自然な見た目となったりする。これに対し、カバーシート13が、非伸縮領域A1の幅方向範囲内に設けられていると、カバーシート13の全体にわたり皺が少なく、美観に優れたものとなるため好ましい。また、カバーシート13の両側縁が、吸収要素50の両側縁の位置よりも幅方向中央側に位置していると、より好ましい。すなわち、カバーシート13の側端部は、剛性が低い部分に位置していたり、変形を受けやすかったりすると、対向面に接着されていたとしても剥離するおそれがある。また、カバーシート13の側端部が装着者の脚に擦れやすいと、より剥離のおそれが高いものとなるとともに、段差が肌触りを悪化させるおそれがある。これに対して、カバーシート13の側端部が、吸収要素50を有する領域、つまり周囲よりも高剛性で変形を受けにくく、装着者の脚が擦れにくい領域内に位置していると、肌触りが悪化しにくく、かつ側端部が対向面に接着されている場合にはその接着が剥離しにくく、境界が継ぎ目なく一体化し、目立たつこともないものとなる。なお、このような構造とするためには、内装体200における吸収要素50の両側部の裏側に、前述の立体ギャザー60の防水フィルム64等の液不透過性シート11を設け、外装体12F,12Bの外側に設ける液不透過性シート11の幅を狭くすることが必要となる。また、吸収要素50の両側縁の位置よりも幅方向外側で、かつ外装体12F,12Bにおける外側シート層12Sより外側に、不織布を有していないと、吸収要素50と重ならない部分は薄く伸縮に適し、かつ吸収要素50と重なる部分はふんわりとした手触り感に優れるものとなるため好ましい。
【0087】
カバーシート13に用いる不織布の繊維の種類や、繊維の結合(交絡)の加工方法は特に限定されず、外装12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができるが、エアスルー不織布を用いることが望ましい。また、カバーシート13の目付けは20〜40g/m2程度が好ましい。さらに、カバーシート13の厚みは0.3〜1.0mmであると好ましく、内側シート層12H及び外側シート層12Sが不織布である場合、内側シート層12H及び外側シート層12Sのそれぞれの厚みよりも薄くてもよいが、内側シート層12H及び外側シート層12Sのそれぞれの厚みよりも厚いことが好ましい。他方、内側シート層12H及び外側シート層12Sが不織布である場合、内側シート層12H、外側シート層12S及びカバーシート13の繊維配向が幅方向WDで一致していると縦横の引張伸度(あるいは引張伸度の縦横比)が近くなるため、使用中に変形したとき、内側シート層12H、外側シート層12S及びカバーシート13が一体的に変形することができ、カバーシート13の側端部が剥離しにくくなるため好ましい。カバーシート13は、液不透過性シート11又は装飾印刷27を有する領域と重なる部分は一層であることが好ましいが、これら以外の領域では二層とすることも可能であり、例えば図22に示すように、カバーシート13の両側部を幅方向WD中央側に折り返す又は別途不織布を貼り付けることにより二層構造とし、その層間に前後方向LDに沿って弾性部材13Gを取り付け、当該部分を前後方向に伸縮可能とすることも可能である。
【0088】
カバーシート13は、表裏に貫通する孔を有しない無孔不織布を用いてもよいが、本形態では、表裏に貫通する孔14が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布となっていると、通気性が向上するだけでなく、液不透過性シートの装飾印刷の視認性良好となるため好ましい。
【0089】
カバーシート13に有孔不織布を用いる場合、カバーシート13の前後方向LDの一部に孔14の無い領域を有していてもよいが、通気性向上効果を考慮すると前後方向全体にわたり設けられていることが望ましい。一方、カバーシート13の幅方向WDの両端部に孔14の無い領域を有している形態では、カッターによる打ち抜き以外の方法で孔14を開けると、後述するように孔14の周囲部14eの繊維が外側又は垂直方向に退けられて孔14の周囲部14eが反り返り、有孔領域の厚みが無孔領域よりも厚くなるため、カバーシート13の資材をロール状態で保管する際、無孔領域の部分が緩く巻かれた状態になり、両側部の無孔領域に皺や折れが形成されるおそれがある。よって、図示形態のように幅方向WDの全体にわたり孔14が形成されていることが望ましい。なお、カバーシート13への孔形成をおむつの製造工程において行うことにより、孔のない資材を使用することができ、孔形成部位も任意にコントロールすることが可能となるが、孔形成設備を導入することにより製造全体が大きくなって費用やメンテナンスの負担が大きくなり、また、高速ラインにおいては孔形状や柔らかさの調整が難しくなるといった問題がある。よって、前後方向及び幅方向の全体にわたり孔が形成された資材を用いて製造するのが好ましい。
【0090】
個々の孔14の平面形状(開口形状)は、適宜定めることができ、図17(a)(b)に示すような長孔形とする他、図17(c)(e)に示すような真円形、図17(d)に示すような楕円形、三角形、長方形、ひし形等の多角形、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々の孔14の寸法は特に限定されないが、前後方向LDの最大寸法14Lは0.4〜1.8mm、特に0.8〜1.3mmとするのが好ましく、幅方向WDの最大寸法14Wは0.3〜1.5mm、特に0.5〜1.0mmとするのが好ましい。孔14の形状が、長孔形、楕円形、長方形、ひし形等のように一方向に長い形状の場合、長手方向の最大寸法はこれと直交する方向の最大寸法の2.5倍以下であることが好ましい。また、孔14の形状が一方向に長い形状の場合、孔14の長手方向が前後方向LDであることが望ましいが、幅方向WDや斜め方向であってもよい。
【0091】
個々の孔14の面積及び面積率は適宜定めればよいが、面積は0.2〜2.5mm2(特に0.5〜1.5mm2)程度であることが好ましく、面積率は1.0〜15.0%(特に5.0〜10.0%)程度であることが好ましい。
【0092】
孔14の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、図17(a)に示すような斜方格子状や、図17(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、図17(c)に示すような正方格子状、図17(d)に示すような矩形格子状、図17(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが前後方向LDに対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、孔14の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
【0093】
孔14の前後方向間隔14y及び幅方向間隔14xは適宜定めることができるが、通気性を考慮すると、それぞれ0.5〜8mm、特に1〜5mmの範囲内とすることが望ましく、前後方向間隔14yと幅方向間隔14xを平均すると1〜5mmの範囲内とすることが好ましい。特に、図17(d)に示すように、孔14の形状を前後方向LDに細長い形状とするとともに、孔14の前後方向LDの最大寸法14Lよりも狭い前後方向間隔14yで前後方向に並ぶ孔14の列が幅方向WDに所定の間隔で繰り返し、かつその幅方向間隔14xは孔14の前後方向LDの最大寸法14Lよりも広い(さらに、孔14の幅方向寸法14Wの3倍以上であるとより好ましい)と、通気性の向上を顕著なものとしつつ、柔らかさや嵩高さも損なわず、また、製造時に重要な前後方向のシートの引張強度の低下がないため好ましい。
【0094】
孔14の断面形状としては、図14に示すように孔14の周囲から孔14の縁に近づくにつれて不織布の厚みが薄くなり、孔14の縁が不織布の厚み方向の中間に位置している第1形態、図15に示すように孔14の周囲部14eが表側に反り返っており、かつ反り返り高さ14hがほぼ均一である第2形態、及び図16に示すように孔14の周囲部14eが表側に反り返っているとともに、周囲部14eは反り返り高さ14iが最も高い対向部分と、これと直交する方向に対向する対向部分であって反り返り高さ14jが最も低い部分とを有する高い第3形態のいずれであってもよい。通気性の観点からは孔14を有する部分が周囲と比較して厚くなる第2形態及び第3形態が望ましく、特に第3形態は孔14の周囲部14eの反り返り高さ14i,14jの差により形成される隙間が通気性向上に寄与するため好ましい。第2及び第3の形態において、反り返り高さ14g,14h,14i(光学顕微鏡を用いて測定される圧力を加えない状態での見かけの高さ)は0.2〜1.2mm程度であることが好ましく、第3の形態において最も高い反り返り高さ14iは、最も低い反り返り高さ14jの1.1〜1.4倍程度であることが好ましい。
【0095】
孔14は、縁部が繊維の切断端により形成されている打ち抜き孔14であっても、孔14の縁部に繊維の切断端がほとんど無く、ピンが繊維間に挿入されて押し広げられて形成された非打ち抜き孔14(周囲部の繊維密度が高い)であってもよい。前者は上記第1形態に適しており、後者は上記第2形態・第3形態に適している。例えば、一方向に長い形状の孔14をピンの挿入により形成すると、孔14の周囲部14eの繊維が外側又は垂直方向に退けられて孔14の周囲部14eが反り返るとともに、孔14の長手方向の対向部分の反り返り高さiが、長手方向と直交する方向の対向部分の反り返り高さjよりも高くなる。上記第2形態・第3形態においては、孔14の周囲部14eが表面に反り返っている部分の縁部は、繊維密度がその周囲の部分と比べて低い場合もあるが、同程度又は高くなっているのが好ましい。また、孔14の周囲部14eの繊維同士が融着していることが望ましいが、融着していなくてもよい。
【0096】
カバーシート13の内面は、カバーシート13及び液不透過性シート11の前後方向範囲及び幅方向範囲が一致しているときには液不透過性シート11のみにホットメルト接着剤13Hを介して接着され(幅方向範囲が一致している形態は図10参照)、図3に示すようにカバーシート13が液不透過性シート11よりも大きい場合には液不透過性シート11と重なる部分は液不透過性シート11に、及び液不透過性シート11からはみ出た部分が外装体にそれぞれホットメルト接着剤13Hを介して接着される。
【0097】
カバーシート13は、前後端部(2〜10mm程度)を除いた主要領域では、少なくとも両側端部、好ましくは幅方向WDの全体にわたり対向面に接着されていると、カバーシート13の側端部が対向面に接着されているため、境界が継ぎ目なく一体化し、目立たつことがないため好ましい。カバーシート13の前後端部は、外装体12F,12Bに対して非接着とする他、主要領域と同様に接着することもできる。特に、外側シート層12Sが不織布であり、液不透過性シート11の両側縁の位置がカバーシート13の両側縁の位置と一致している場合、カバーシート13の内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が液不透過性シート11にホットメルト接着剤13Hを介して接着されるとともに、液不透過性シート11の内面は、その前後端部を除いた領域では、少なくとも両側端部が外装体12F,12Bにホットメルト接着剤11Hを介して接着されていると、カバーシート13の両側端部が、樹脂フィルムからなる液不透過性シート11を介して、不織布からなる外側シート層12Sに接着されるため、カバーシート13の両側端部と外側シート層12Sとの接合が強固となる。
【0098】
このようにカバーシート13の少なくとも両側端部がホットメルト接着剤13Hを介して接着されている構造は、例えば図20に示す製造方法により製造することができる。すなわち、この製造方法は、図示しない外装体組立工程と、弾性部材切断工程301と、内装体取付工程302と、カバーシート接着工程303と、ウエスト部折り返し工程304と、図示しない折り畳み工程と、図示しない側部接合切り離し工程とを含むものである。なお、図20の(a)は製造設備のフロー図であり、(b)は組立状態の変化を示す平面図であり、両図は対応するように描かれている。
【0099】
外装体組立工程では、MD方向に連続的に供給される弾性部材を挟むように、MD方向に連続する一枚のシート材をCD方向に折り畳むか、又はMD方向に連続する二枚のシート材を貼り合わせることにより、弾性部材が内側シート層及び外側シート層間に介在する外装帯状体120を形成する。外装帯状体120は、外装体となる部分がその幅方向WDと製造ラインにおけるMD方向とが一致するようにMD方向に繰り返し連続するものである。図示形態は外装二分割タイプの前側外装体12Fとなる部分を含む外装帯状体120と、後側外装体12Bとなる部分を含む外装帯状体120とを別々に形成しているが、外装一体タイプの場合には外装帯状体120は一本となることはいうまでもない。
【0100】
次いで、形成した外装帯状体120に対して、必要に応じて弾性部材切断工程301を行い、MD方向に所定の間隔を空けて、後に内装体200と重なる部分CTに位置する弾性伸縮部材121をヒートエンボス等の切断装置310により切断し、当該部分CTにおいて弾性伸縮部材121の収縮力が実質的に作用しない状態とする。
【0101】
内装体取付工程302では、外装帯状体120をおむつの展開状態と同様の配置でCD方向に間隔を空けて平行に移送しつつ、この外装帯状体120における個々の外装体となる部位に、別ラインで公知の手法により同時並行的に製造した展開状態の内装体200を順次接合することによって、個々のおむつとなる部分が展開状態でMD方向に連続する内装組み付け体を形成する。これらの接合及び固定はホットメルト接着剤等の適宜手段により行うことができる。
【0102】
カバーシート接着工程303では、外装帯状体120における内装体200の接合面と反対側の面に、MD方向に間隔を空けてカバーシート13を接着する。カバーシート接着工程303は、折り畳み工程よりも前であればよいが、カバーシート13は前身頃Fから後身頃Bにわたるものであるため、図示形態のような外装二分割タイプの場合は、前側外装体12Fとなる部分を含む外装帯状体120と、後側外装体12Bとなる部分を含む外装帯状体120との位置関係が定まる位置よりも後、つまり内装体取付工程302の後が好ましい。
【0103】
ウエスト部折り返し工程304では、外装帯状体120のCD方向外側の端部122をCD方向中央側に折り返すとともに、この折り返し部分の下にMD方向に連続的に弾性部材123を挟み込む。これにより、ウエスト部弾性部材17の取り付けと、折り返し部分12rの形成を行うことができる。
【0104】
以後は、図示しないが、公知の手法によりパンツタイプ使い捨ておむつを製造することができる。すなわち、折り畳み工程では、外装帯状体120に内装体200を取り付け、かつカバーシート13を取り付けた後の内装組み付け体をCD方向に二つ折りすることによって、二つ折り帯状体を形成し、側部接合切り離し工程では、二つ折り帯状体における個々のおむつの両側部となる部分において前身頃の外装体及び後身頃の外装体を接合するとともに、個々のおむつの境界において前身頃の外装体及び後身頃の外装体を切断することにより、個々のおむつを得る。
【0105】
特徴的には、カバーシート接着工程303では、帯状に連続するカバーシートの帯状体130をその連続方向に沿って搬送しつつ、その外装帯状体120に対する接着面に、塗布装置312によりMD方向に連続的にホットメルト接着剤を塗布した後、スリップカッター311によりMD方向に間隔を空けて個々のカバーシート13に切断し、この切断したカバーシート13を、外装帯状体120における内装体200の接合面と反対側の面に、MD方向に間隔を空けて接着する。これにより、カバーシート13の前後端部以外は、カバーシート13のちょうど側縁まで幅方向WDに連続的にホットメルト接着剤を塗布することができ、ホットメルト接着剤のはみ出しなく、カバーシート13の側端部を対向面にしっかりと接着することができる。
【0106】
特に、図示形態のように、カバーシート接着工程303の前に、カバーシートの帯状体130における外装帯状体120に対する接着面に、装飾印刷を施した樹脂フィルムからなる液不透過性シートの帯状体111をMD方向に連続的に接着する樹脂フィルム接着工程305を付加するのは一つの好ましい形態である。符号313は、カバーシートの帯状体130における液不透過性シートの帯状体111との接着面に、ホットメルト接着剤を塗布する塗布装置を示している。これにより、カバーシート接着工程303では、液不透過性シートの帯状体111を接着したカバーシートの帯状体130における、外装帯状体120に対する接着面に、塗布装置312によりMD方向に連続的にホットメルト接着剤を塗布した後、スリップカッター311によりMD方向に間隔を空けて個々のカバーシート13及び液不透過性シート11に切断し、この切断したカバーシート13及び液不透過性シート11を、外装帯状体120における内装体200の接合面と反対側の面に、MD方向に間隔を空けて接着することとなる。また、この場合、製品におけるカバーシート13の両側縁と液不透過性シート11の両側縁とが一致するものとなる。この形態では、カバーシート13の帯状体に樹脂フィルムからなる液不透過性シートの帯状体111を貼り付けた後に、個々のカバーシート13に切断して外装帯状体120に貼り付けるため、切断後の個々のカバーシート13の剛性が樹脂フィルムを有する分だけ高くなるとともに、通気性が顕著に下がるため、スリップカッター311により図中矢印で示すように吸引保持し、外装帯状体120に対対して間欠貼り付けする際に形状及び吸引保持性が安定し、安定した貼り付けが可能となる。
【0107】
図示しないが、カバーシートの帯状体130に液不透過性シートの帯状体111を貼り付けるのではなく、カバーシート13を接着する前の外装帯状体120に液不透過性シート11を接着し、さらにその上からカバーシート13を接着してもよい。
【0108】
カバーシート13が有孔不織布である場合、カバーシート13として予め加工済みの有孔不織布を用いることもできるが、資材コストを削減するためにはインラインでの加工が好ましい。しかし、不織布に穿孔加工を施す場合、加工ラインの速度が速いほど安定して高精度の加工を行うことは困難となる。これに対して、図示形態の製造方法におけるカバーシート接着工程303では、切断及び間欠貼り付けを行うことに起因して、カバーシート接着工程303に対するカバーシートの帯状体130の供給速度が遅くなるため、図示形態のように、カバーシート接着工程303に対するカバーシート13の帯状体の供給ラインに穿孔装置314を付加し、カバーシート13に対する穿孔工程306を行うと、安定した穿孔加工が可能となるため好ましい。
【0109】
他方、孔14を有するカバーシート13の場合、一つの好ましい接着構造は、図18に示すように、カバーシート13の内面及び外面の少なくとも一方の接着領域のうち、孔14と重なる領域の周縁部14iより中央側にはホットメルト接着剤13Hがなく、孔14と重なる領域の周縁部14i以外ではホットメルト接着剤13Hが連続面状に存在しているものである。孔14と重なる領域の周縁部14iより中央側にはホットメルト接着剤13Hがないため、通気性に優れるものとなる。また、肌に触れる面と反対側の面のみ、このような接着構造を有する部分では、ホットメルト接着剤13Hによりべとべとした肌触りになりにくく、かつ孔14の周囲部14eは対向面に確実に固定される。
【0110】
代表的な接着状態としては、図18(a)(b)に示すように、孔14と重なる領域にはホットメルト接着剤13Hがなく、孔14と重なる領域以外ではホットメルト接着剤13Hが連続面状に存在している状態、図18(c)(d)に示すように、孔14と重なる領域の周縁部14iにホットメルト接着剤13Hがはみ出しているが、孔14と重なる領域の周縁部14iより中央側にはホットメルト接着剤13Hがなく、孔14と重なる領域の周縁部14i以外ではホットメルト接着剤13Hが連続面状に存在している状態を例示することができる。前者の状態は、特に望ましい状態であるが、孔14と重なる領域の周縁部14iは孔14の周囲部14eに近接する部分であり、カバーシート13は一定の厚みを有するため、後者のようにこの部分にホットメルト接着剤13Hがはみ出していても、肌に触れる面と反対側の面のみ接着した部分において、カバーシート13における接着面と反対側の面に手で触れたときにホットメルト接着剤13Hに直接触れることはほとんどない。なお、孔14と重なる領域の周縁部14iにおけるホットメルト接着剤13Hのはみ出し幅はカバーシート13の厚みの半分以下で、0.5mm以下程度であることが好ましい。また、孔14と重なる領域の面積の80%以上の部分にホットメルト接着剤13Hが存在しないことが望ましい。
【0111】
カバーシート13における孔14の断面形状は限定されるものではないが、前述のように孔14の周囲部14eが液不透過性シート11側に反り返った反り返り部となっていると、液不透過性シート11側と反対側の面から見た孔径の割には液不透過性シート11側から見た孔径が小さくなる。よって、肌に触れる面と反対側の面のみ接着した部分において、接着面と反対側の面に手で触れたときにホットメルト接着剤13Hに触れにくくなる。また、反り返り部は支柱のようにカバーシート13を対向面に対して支持するため、同じ目付けの無孔不織布と比較して嵩高くなり、通気性にも優れたものとなる。さらに、孔14の周囲部14e以外の領域では、カバーシート13と液不透過性シート11の接着が浮きやすくなる(図18ではホットメルト接着剤13Hがシート間の空間を隙間なく埋めているように描いているが実際の塗布量は少なく隙間ができやすい)ため、孔14の周囲部14eは確実に接着しつつ、それ以外の領域では不完全な接着となる(実質的な接着面積が小さくなる)ことにより、優れた柔らかさ・ふんわり感を得ることができる。
【0112】
このような接着構造は、有孔不織布における接着面に、エアーを用いずに連続面状にホットメルト接着剤を塗布し、対向面に接着することにより製造することができる。この手法は、有孔不織布における接着面に、エアーを用いずに連続面状にホットメルト接着剤を連続面状に塗布すると、対向面と貼り合わせる前に、ホットメルト接着剤の表面張力により、ホットメルト接着剤における有孔不織布の孔と重なる部分の中央に口(孔)が開いてその開口が有孔不織布の孔の周囲部まで拡大する、との新規な知見に基づくものである。すなわち、このような接着方法を採用すると、図19に矢印で変化を示すように、有孔不織布にホットメルト接着剤13Hを連続面状に塗布した後、対象部材と貼り合わせる前に、ホットメルト接着剤13Hの表面張力により、ホットメルト接着剤13Hにおける有孔不織布の孔14と重なる部分の中央に口(孔)hが開いてその開口hが有孔不織布の孔14の周囲部14eまで拡大する。したがって、有孔不織布を対象部材に接着した後に、図18に示す例のように、孔14内の大部分にホットメルト接着剤13Hがないものとなり、エアーによる孔14からのホットメルト接着剤13Hの抜けや染み出しもないため、接着面と反対側の面に手で触れたときにべとべとした肌触りになりにくいものとなる。
【0113】
エアーを用いずに連続面状にホットメルト接着剤を塗布するホットメルトアプリケータとしては、有孔不織布の接着面に塗工ヘッド(ダイ)を接触させ、塗工ヘッドの先端に設けられたCD方向(MD方向(製造ラインの流れ方向)と直交する方向)に沿うスリットからホットメルト接着剤を押し出して塗布を行うスロットコート、あるいは有孔不織布の接着面から塗工ヘッド(ダイ)を浮かせた状態で、塗工ヘッドの先端に設けられたCD方向に沿うスリットからホットメルト接着剤を押し出し、有孔不織布の移送速度との差によりホットメルト接着剤を延伸して極薄フィルム状に塗付する非接触タイプのスロットコートを好適に用いることができる。
【0114】
接着条件は適宜定めることができるが、孔14と重なるホットメルト接着剤13Hを速やかに孔14の周囲部14eに移動させ、孔14の周囲部14eを強固に接着するためには、以下の条件の少なくとも1つを満足することが望ましい。
ホットメルト接着剤の溶融粘度(温度140℃):3,000〜2,600mPa・s
ホットメルト接着剤の溶融粘度(温度160℃):1,150〜1,550mPa・s
有孔不織布に対するホットメルト接着剤の塗布時の温度:110〜150℃
有孔不織布に対するホットメルト接着剤の塗布量:1.0〜8.0g/m2
ホットメルト接着剤の塗布後のオープンタイム:0.1〜1.0秒
【0115】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0116】
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
【0117】
・「MD方向」とは製造ラインの流れ方向を意味し、マシン方向の略称であり、「CD方向」とは、MD方向と直交する横方向を意味し、クロス方向の略称であり、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。
【0118】
・「繊維配向」とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
【0119】
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0120】
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0121】
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えばカバーシート)における対象部分(例えば孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。例えば、孔の面積率は、例えばKEYENCE社の商品名VHX−1000を使用し、測定条件を20倍として、以下の手順で測定することができる。
(1)20倍のレンズにセットし、ピントを調節する。穴が4×6入るように不織布の位置を調整する。
(2)孔の領域の明るさを指定し、孔の面積を計測する。
(3)「計測・コメント」の「面積計測」の色抽出をクリックする。孔の部分をクリックする。
(4)「一括計測」をクリックし、「計測結果ウィンドを表示」にチェックを入れ、CSVデータで保存をする。
【0122】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0123】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
【0124】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0125】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0126】
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0127】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0128】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0129】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0130】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。
【符号の説明】
【0132】
11…液不透過性シート、12A…サイドシール部、12B…後側外装体、12F…前側外装体、12H…内側シート層、12S…外側シート層、13…カバーシート、14…孔、17…ウエスト部弾性部材、18…不要弾性部材、200…内装体、201,202…内外接合部、27…装飾印刷、30…トップシート、301…弾性部材切断工程、302…内装体取付工程、303…カバーシート接着工程、304…ウエスト部折り返し工程、305…樹脂フィルム接着工程、306…穿孔工程、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…立体ギャザー、60A…先端側部分、60B…付け根側部分、62…ギャザー不織布、67…倒伏部分、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、B…後身頃、C…臀部カバー部、F…前身頃、L…中間領域、LD…前後方向、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口。
図1
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