【文献】
Mammalian expresson vector pmAlbEPintPlauGH DNA, complete sequence.,Database GenBank [online], Accession No.AB453180.1,2011年 8月16日,[retrieved on 2017.6.14],URL,<https://www.ncbi.nlm.nih.govb/nuccore/AB453180.1>
【文献】
Cloning vector pCI-nGFP-C656G greeen fluorescent protein-glucocorticoid receptor(GFP-GR) chimeric protein mRNA, complete cds.,Database Genbank [online], Accession No.U53602.1,1996年 9月12日,[retrieved on 2017.05.29],URL,<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/U53602.1>
【文献】
NEMETH M.J. et al.,Gene Ther Mol Biol.,2004年,8(B),p.475-486
【文献】
Accession No. M62716,Human CSP-B gene flanking sequence,Database GenBank [online] ,1994年11月 1日,[retrieved on 2018 Jan 29th],Retrieved from the Internet,URL,<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/M62716>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細胞が、CHO−K1細胞、CHO−DG44細胞、CHO−S細胞、CHO DUKX−B11細胞、COS7細胞、COS3細胞、COS1細胞、NSO細胞、HeLa細胞、Vero細胞、PER−C6細胞、HepG2細胞、及びBHK細胞からなる群から選択される、請求項5に記載の細胞。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞等における外来性遺伝子の発現の産生効率が改善された安定発現ベクターを調製するために、遺伝子発現レベルを高め得るエレメントを、様々なMARエレメント、足場付着領域(SAR)エレメント、遺伝子座制御領域(LCR)及びイントロンエレメントの中から同定する。
【0016】
従って、本発明は、作動的に連結されたシミアンウイルス40(SV40)プロモーター、足場付着領域(SAR)又はマトリックス結合領域(MAR)エレメント、及びキメライントロンを含む発現ベクターを提供する。
【0017】
本明細書では、用語「プロモーター」とは、コード領域の上流にある非翻訳核酸配列のことを指し、その配列はポリメラーゼの結合部位を含み、下流の遺伝子に対するmRNAの転写開始活性を有する。具体的には、「プロモーター」は、RNAポリメラーゼによる転写を開始するために機能するTATAボックス又はTATA様の領域を含むが;その周りの領域に制限されず;RNAポリメラーゼ以外のタンパク質と結合して発現を調節するのに必要な領域を含むことができる。
【0018】
本発明において、プロモーターは、SV40プロモーター又はそのバリアント、好ましくは配列番号12によって表されるSV40プロモーターを含むことができる。プロモーターバリアントとは、遺伝子発現を高めるために、プロモーター配列の特定の部分が、付加、欠失又は置換によって修飾されているバリアントのことを指す。
【0019】
本発明の一実施形態によると、SV40プロモーターを使用する本発明の発現ベクターは、CMVプロモーターと比較して約4倍の発現増加を示す(実施例1−1を参照のこと)。
【0020】
加えて、そのようなプロモーターは、外来性遺伝子である標的遺伝子に作動的に連結されており;本明細書では「作動的に連結される」とは、標的遺伝子の発現を調節する核酸配列と標的タンパク質をコードする核酸配列とが、一般的な機能を実行できるように機能的に連結されることを意味する。組換えベクターへの作動可能な連結は、当業者に公知の組換えDNA技術を使用して実現することができ;部位特異的DNA切断及び連結を、当業者に一般に公知の酵素を使用して行うことができる。
【0021】
本発明において、遺伝子発現増加エレメントに、SAR又はMARエレメントを含めることができる。そのようなエレメントがプロモーターの5’末端;3’末端;若しくは5’及び3’末端の両方に存在できるように、SAR又はMARエレメントを含めて、発現ベクターを構成することができる。
【0022】
本明細書では、「MARエレメント」とは、転写活性のあるDNAループドメインを核マトリックスに一時的に付着させるDNA配列のことを指し(Pientaら、[1991年]Crit.Rev.Eukaryotic Gene Expres.、1:355〜385頁)、MAR配列の例は当業者に公知である。
【0023】
本発明において、遺伝子発現増加エレメントを選択するために、二重(5’及び5’+3’)及びcis+trans関連試験を、ヒトβ−グロビンMAR(Yu,J.、Bock,J.H.、Slightom,J.L.及びVilleponteau,B.、Gene 139[2]、139〜145頁[1994年]、Genbank番号L22754)及びヒトCSP−B遺伝子隣接SAR(Hanson,R.D.及びLey,T.J.、Blood、79[3]、610〜618頁[1992年]、Genbank番号M62716)についてルシフェラーゼアッセイを使用して実行し;その結果、特定の所望のエレメントを選択した(実施例1−1を参照のこと)。
【0024】
上記のMAR又はSARエレメントは、配列番号39で表されるヒトCSP−B SAR;ヒトβグロビンMARから単離された配列番号40で表されるMAR2.2又は配列番号41で表されるMAR3.0であってよい。エレメントがプロモーターの5’末端;3’末端;若しくは5’及び3’末端の両方で存在できるように、SAR又はMARエレメントを含めることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、エレメントは、5’MAR2.2、5’MAR3.0、3’MAR2.2、3’MAR3.0、5’3’MAR2.2又は5’3’MAR3.0と称したエレメントであってよい。
【0026】
本発明による発現ベクターは、遺伝子発現を高めるためのキメライントロンを含むことができる。
【0027】
そのようなキメライントロンは、配列番号25で表すことができる(Backliwal,G.、Hildinger,M.、Chenuet,S.、Wulhfard,S.、De Jesus,M.、Wurm,F.M.、Nucleic Acids Res.、36[15]、e96[2008年]、Genbank番号JQ795930)が、本発明はそれに制限されない。本発明において、遺伝子発現の増大に対する効果は、ルシフェラーゼアッセイによって確認された(実施例1−3を参照のこと)。
【0028】
本発明によると、MARエレメントとキメライントロンエレメントの両方を含む発現ベクターは、生産性に対する相乗効果を示し、遺伝子発現レベルの増加をもたらす(実施例3−3及び表9を参照のこと)。
【0029】
本発明の一実施形態によると、MARエレメント、SVプロモーター及びキメライントロンを含む新規ベクター対II(pMSI−P−ER2LC及びpMSI−D−ER2HC)は、キメライントロンを含有しない従来のプロモーターベクター、従来のイントロンベクター及び新規ベクター対I(pMS−P−D−ER2LC及びpMS−ER2HC)と比較して卓越した遺伝子発現増加効果を示す。
【0030】
本発明による発現ベクターは、LCRエレメントを更に含むことができる。
【0031】
本発明において、遺伝子発現増加エレメントを同定するために、国際公開番号WO 2009/102085に開示されるように第IX因子発現増加効果をこれまでに示した多重体(×1及び×4)及び二重(5’、3’及び5’+3’)関連試験を、AAT108(α−1−アンチトリプシン前駆体、120bp、配列番号13)及びAlb E6(血清アルブミンプレプロタンパク質、81bp、配列番号14)についてルシフェラーゼアッセイを使用して実行し、その結果、好ましいLCRエレメントを選択した(実施例1−2を参照のこと)。
【0032】
本発明における好ましいLCRエレメントは、配列番号15で表されるAAT108×4であってよく、そのエレメントを、ベクターの3’末端だけ(3’AAT108×4);又は5’及び3’末端の両方(5’3’AAT 108×4)に存在するように含めることができる。また、LCRエレメントは、配列番号16によって表されるAlb E6×4であってもよい。
【0033】
また、発現がプロモーターによって調節される標的遺伝子を、本発明の発現ベクターに挿入することができる。
【0034】
標的遺伝子は、発現させようとする外来性産物をコードする遺伝子であり、組換えタンパク質として発現させ得る任意の型のタンパク質をコードしている遺伝子であってよい。そのような標的遺伝子は、ベクターに挿入するための制限酵素切断部位を有する核酸配列である「多重クローニング部位(MCS)」を含む。
【0035】
上記の標的遺伝子は、血液凝固関連遺伝子及び様々な抗体遺伝子のうちの1つであってよく;例えば第VII因子(FVII)遺伝子、第VIII因子(FVIII)遺伝子、第IX因子(FIX)遺伝子、上皮増殖因子受容体ファミリー抗体遺伝子、インスリン遺伝子、インターロイキン遺伝子、腫瘍壊死因子遺伝子、インターフェロン遺伝子、コロニー刺激因子遺伝子、ケモカイン遺伝子、エリスロポイエチン遺伝子、α−フェトプロテイン遺伝子、a−グルコシダーゼ遺伝子、α1−アンチトリプシン遺伝子、アンチトロンビン遺伝子、リポタンパク質遺伝子、セルロプラスミン(celluloplasmin)遺伝子、フィブリノゲン遺伝子、グルコセレブロシダーゼ遺伝子、ハプトグロビン遺伝子、プラスミノゲン遺伝子、プロトロンビン遺伝子、及びトランスフェリン遺伝子からなる群から選択することができるが、それに限定されない。本発明の一実施形態によると、標的遺伝子は、FIX(第IX因子)遺伝子又は上皮増殖因子受容体ER2抗体遺伝子であってよい。
【0036】
本発明による発現ベクターは、任意の従来から公知の転写ターミネータを含むことができる。好ましくは、それはpolyAに接続していてよい。例えば、それはSV40後期ポリアデニル化シグナル(polyA)を含むことができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、本発明の発現ベクターは、
図19に示すpMSI−P−ER2LC又はpMSI−D−ER2HCの切断地図を有する。
図19は、MARエレメント、キメライントロンエレメント、SV40プロモーター、polyA等のような遺伝子発現増加エレメントを含む発現ベクターを図式的に例示する。
【0038】
一方、本発明は、上記の発現ベクターによって形質転換された細胞を提供する。
【0039】
本明細書では、細胞は、一般に公知な動物細胞であってよく、好ましくはCHO−K1細胞、CHO−DG44細胞、CHO−S細胞、CHO DUKX−B11細胞、COS3細胞、COS7細胞、COS1細胞、NSO細胞、HeLa細胞、Vero細胞、PER−C6細胞、HepG2細胞、及びBHK細胞からなる群から選択できるが、それに限定されない。
【0040】
また、本発明は、上記の発現ベクターを使用して標的タンパク質を産生する方法を提供する。より具体的には、本発明は、上記の発現ベクターによって形質転換された細胞を培養して標的タンパク質を発現させる工程と、次いで標的タンパク質を回収する工程とを含む、標的タンパク質を大量に産生する方法を提供する。
【0041】
そのような方法は、
(1)発現ベクターに発現がプロモーターによって調節される標的遺伝子を挿入する工程と、
(2)標的遺伝子が挿入されている発現ベクターで細胞を形質転換する工程と、
(3)発現ベクターによって形質転換された細胞を培養して標的タンパク質を発現させ、次いで標的タンパク質を回収する工程と
を含むことができる。
【0042】
標的遺伝子を挿入し、細胞を形質転換し、細胞を培養して標的タンパク質を発現させ、標的タンパク質を回収するための方法は、当業者に公知の技術を使用することによって実施できる。
【0043】
本発明は、以下の実施例により更に詳細に記述する。以下の実施例は、その範囲を制限することなく本発明を更に例示することを目的とする。
【実施例1】
【0044】
エレメントの選択
1−1:MARエレメント選択
ベクターを改善するために、ヒトβ−グロビン(β−グロビンMAR、3kb、2.2kb)のMAR及びヒトCSP−B遺伝子隣接SAR(1.2kb)を候補として選択した。また、タンパク質発現の間接的な評価を可能にするレポータ遺伝子アッセイを実行するために、ルシフェラーゼアッセイを、評価の利便性を考慮して選んだ。
【0045】
分析用のベクターと、MARエレメントを含有しない対照ベクターとの間の蛍光値の差異を比較することによってベクターの効果を接近することを計画し、それに応じて分析用のベクターを調製した。安定した状況において効果を評価するために、pGL4.20[luc2/Puro]ホタルルシフェラーゼベクター(Promega Inc.)を選択した、このベクターは、速く、強力な細胞選択マーカーであるピューロマイシン抵抗性遺伝子を含有する。
【0046】
最初に、鋳型としてpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen、V790−20)、配列番号1及び2のプライマー組、並びにDNAポリメラーゼ(Ex−Taq、Takara)を使用することにより、PCRを実施して、CMVプロモーターを含むDNA断片を得た。次いで、鋳型を94℃で5分間変性させてDNA鎖を分離し、DNA分子を、変性94℃で30秒間、アニーリング56℃で30秒間及び伸長72℃で1分間の過程を30サイクル繰り返し、続けて72℃で5分間更に伸長させることによって増幅させた。PCRによって増幅したDNA断片をゲル抽出によって精製し、pCR2.1−TOPOプラスミドベクター(Invitrogen、K4500−01)に挿入した。配列番号11によって表されるCMVプロモーターの存在を、制限酵素を使用する切断マッピング及び塩基配列分析によって検証し、CMVプロモーターをpGL4.20[luc2/Puro]ベクターの多重クローニング部位のNheI/XhoI部位に挿入した。得られたベクターをpGL4.2−CMVと称し、対照ベクターとして使用した。
【0047】
次に、SAR用のプライマー組(配列番号3及び4)、MAR2.2用のプライマー組(配列番号5及び6)及びMAR3.0用のプライマー組(配列番号7及び8)を使用して、SAR、MAR2.2及びMAR3.0を、上記と同じ方法によってpCR2.1−TOPOプラスミドベクターにそれぞれ挿入した。調製したベクターを、pCR2.1−SAR、pCR2.1−MAR2.2及びpCR2.1−MAR3.0と称した。
【0048】
pMSG及び5’B1−P1ベクター(韓国特許第408844号を参照のこと)を、それぞれMAR及びSARのためのPCR鋳型として使用した。制限酵素を使用する切断マッピング及び塩基配列分析によって、配列番号39、40及び41によってそれぞれ表されるSAR、MAR2.2及びMAR3.0の存在を検証した。以降のクローニング手順において、すべての挿入物は、制限酵素による切断及びゲル抽出による精製後に使用され;ベクターは、制限酵素による切断及びエビアルカリホスファターゼによる処理後に使用された。
【0049】
BamHIでpCR2.1−SARベクターを切断することにより調製した挿入物を、同じ制限酵素で切断することによって調製したpGL4.2−CMVベクターに挿入した。制限酵素を使用する切断マッピングにより、所望のSAR DNA断片がフォワード方向に存在することを検証し、得られたベクターをpGL4.2−CMV−3’SARと称した。次に、pCR2.1−SARベクターをKpnI及びNheIで切断することによって調製した挿入物を、同じ制限酵素で切断したpGL4.2−CMV−3’SARベクター及びpGL4.2−CMVベクターにそれぞれ挿入した。制限酵素を使用する切断マッピングにより、各プラスミドにおける標的DNA断片の存在を検証し、得られたプラスミドをそれぞれpGL4.2−CMV−5’3’SAR及びpGL4.2−CMV−5’SARと称した。
【0050】
MAR2.2及びMAR3.0を含むベクターを調製するために、pCR2.1−MAR2.2及びpCR2.1−MAR3.0をそれぞれKpnI及びNheIで切断することによって調製した挿入物を、同じ制限酵素で切断することによって調製したpGL4.2−CMVベクターに挿入し、それによって最初にpGL4.2−CMV−5’MAR2.2及びpGL4.2−CMV−5’MAR3.0ベクターを調製し;更に、pCR2.1−MAR2.2及びpCR2.1−MAR3.0をBamHIで切断することによって調製した挿入物を、それぞれ同じ制限酵素で切断することよって調製したpGL4.2−CMV−5’MAR2.2及びpGL4.2−CMV−5’MAR3.0ベクターに挿入して、pGL4.2−CMV−5’3’MAR2.2及びpGL4.2−CMV−5’3’MAR3.0ベクターを調製した。MARエレメントを、逆方向に挿入した。調製したルシフェラーゼベクターの概略図を
図1に示す。
【0051】
MAR候補エレメントを持つベクターのルシフェラーゼ発現レベルを、付着細胞株CHO−K1を使用して測定した。Cis+Trans効果を評価するための1組のベクターを、上で調製したベクターに、トランスフェクションにも使用したSAR又はMARエレメントを4倍のモル数有するように更に付与することによって調製した。
【0052】
lipofectamine 2000(Invitrogen、11668027)を使用して、CHO−K1細胞株(ATCC、CCL−61)に上記のホタルルシフェラーゼベクター1.0μgをトランスフェクトし、48時間後に、ピューロマイシン(50μg/mL)を含有するDMEM培地(Lonza、112−604F)に継代しながら培養した。安定な細胞を、約2〜4週間の選択期間で樹立した。試験を、合計で3組実施し、ホタルルシフェラーゼ分析を、値が細胞数に補正されるOne−glo luciferase analysis system(Promega、E6110)によって行った。
【0053】
ホタルルシフェラーゼ分析法は以下の通りである。最初に、細胞を培養していたウェルから培地を除去し、1×PBSの各々 1mLで洗浄した。トランスフェクトした細胞に100μL/ウェルでトリプシン−EDTAを添加し、37℃で1分間反応させて、底部から細胞を分離した。各ウェルに、1mLの培地を添加した。細胞数を計数した後、形質転換細胞を、1.0×10
5個細胞/mL(生細胞数に基づく)になるように培地で希釈した後に1.5mLチューブにそれぞれ分注した。96ウェル白色プレートに、各試験済みDNAに対して100μL/ウェルで細胞を入れた。前もって調製したOne−glo luciferase analysis試薬を、100μL/ウェルでウェルに添加し、室温で3分間反応させた。光度計(EG&G Berthold、Microplate luminometer LB 96V)を使用して、ホタルRLU(相対的光量単位)を測定した。pGL4.2−CMVと比較した試験ベクターの測定結果を、
図2及び表1に示す。
【0054】
結果として、5’MARエレメントが最高の効果を示し、効果(平均)においてpGL4.2−CMV対照ベクターと比較して1.6〜5.3倍の増加を示した。更に、単一及び二重MARの間又はCis及びCis+Trans MARの間で効果に差異は見られなかった。このように、候補エレメントの試験結果の値は、それらの中で有意な差異を示さなかったが、大きな変動を示し、従って、2つのエレメント、5’MAR2.2及び5’MAR3.0を主として選択した。
【0055】
【表1】
【0056】
MARエレメントの効果は、予想通り不十分であり、従って、CMV及びSV40プロモーターに関してMAR効果を評価した。具体的には、PCRを、鋳型としてpGL4.20ベクターを使用し、配列番号9及び10のプライマー組を使用して行って、SV40プロモーターを含有するDNA断片を得た。PCRによって増幅したDNA断片をゲル抽出によって精製し、pCR2.1−TOPOプラスミドベクターに挿入した。配列番号12によって表されるSV40プロモーターの存在を、制限酵素を使用する切断マッピング及びDNA配列分析によって検証した。次いで、pGL4.2−CMV、pGL4.2−CMV−5’MAR2.2及びpGL4.2−CMV−5’MAR3.0ベクターを、NheI及びXhoIで処理してCMVプロモーターを除去し、同じ制限酵素で処理したSV40プロモーターをそこへ挿入して、pGL4.2−SV40、pGL4.2−SV40−5’MAR2.2及びpGL4.2−SV40−5’MAR3.0ベクターを調製した。
【0057】
付着細胞株CHO−K1におけるルシフェラーゼ発現レベルを、MAR候補エレメント試験と同じ方法によって測定した。安定な細胞を、約2週間の選択期間で樹立した。試験を、合計2組において実施し、ホタル蛍光値を上記と同じ様式で測定した。
【0058】
図3に示すように、SV40は、CMVプロモーターと比較して効果において約4倍の増加を示した。中でも、pGL4.2−SV40−5’MAR3.0ベクターは、最高の結果を示し、CMV対照群及びSV40対照群と比較してそれぞれ9倍及び2.2倍の遺伝子発現増加効果を示した。
【0059】
1−2:LCRエレメント選択
国際特許公開WO 2009/102085に開示されるLCRエレメントのうち、in vivoで第IX因子発現増加効果を示したAAT 108(α−1−アンチトリプシン前駆体、120bp、配列番号13)及びAlb E6(血清アルブミンプレプロタンパク質、81bp、配列番号14)を選択して、in vitroでの効果を評価した。AAT 108又はAlb E6を、SV40後期poly(A)シグナルの5’領域、3’領域、並びにpGL4.2−CMV対照ベクターの5’及び3’領域の両方に付加して、試験用として様々なベクターを得た(
図4を参照のこと)。
【0060】
加えて、LCRエレメントは、長さが非常に短いので、各部位に4コピーのエレメントが複数挿入されているベクターを調製して、エレメントが複数挿入されている場合の発現に対する効果を評価した。
【0061】
国際特許公開WO 2009−102085に開示されるベクター(pCR−AAT108LCR、pCR−E6LCR)を使用して、PCRを1回だけ行うことによって各エレメントの単量体を得て;Alb E6×4多重体を、組換えPCRを4回行うことによって調製した。
【0062】
最初に、各エレメントの単量体を得るために、配列番号17及び18のプライマー組並びに配列番号19及び20のプライマー組を、それぞれAlb E6×1及びAAT108×1に対して使用した。次いで、鋳型を94℃で2分間変性させてDNA鎖を分離し、DNA分子を、変性94℃で15秒間、アニーリング55℃で15秒間及び伸長72℃で1分間の過程を30サイクル繰り返し、続けて72℃で5分間更に伸長させることによって増幅させた。PCRによって増幅したDNA断片をゲル抽出によって精製し、pCR2.1−TOPOプラスミドベクターに挿入した。配列番号13及び14によって表されるAAT108及びAlbE6遺伝子それぞれの存在を、制限酵素を使用する切断マッピング及びDNA配列分析によって検証した。
【0063】
他方で、
図5に示す通り、Alb E6×4多重体を、組換えPCRを4回行うことによって調製した。PCRは、アニーリング時間を30秒間に延長したことを除いて、上記と同じ方法によって行った。DNA配列分析によって、配列番号16によって表されるAlb E6×4遺伝子の存在が検証された。AAT 108×4多重体(配列番号15)を、Genscript Incで合成した。
【0064】
pGL4.2−CMVベクター内のプロモーターの5’領域にLCRエレメントを挿入するために、ベクター及びPCR産物をKpnI及びNheIで切断し、その後ライゲーションした。クローニングされた産物を同じ制限酵素で処理し、所望のサイズを持つバンドがDNAゲル上に存在するかどうか検証した。上記の手順によって、5’AAT 108×1、5’AAT 108×4、5’Alb E6×1、及び5’Alb E6×4ベクターを得た。
【0065】
pGL4.2−CMVベクター内のSV40後期poly(A)シグナルの3’領域にLCRエレメントを挿入するために、pGL4.2−CMVベクター及びAlb E6エレメントをBamHI制限酵素で切断し、AAT 108エレメントをBglII制限酵素で切断した。生成物を、適合する末端を使用してpGL4.2−CMVベクターに挿入した。上記の手順によって、3’AAT 108×1、3’AAT 108×4、3’Alb E6×1及び3’Alb E6×4ベクターを得た。
【0066】
LCRを、pGL4.2−CMVベクター内のプロモーターの5’領域及びSV40後期poly(A)シグナルの3’領域に挿入するために、SV40後期poly(A)シグナルの3’領域にLCRエレメントを含有するベクター、及び上で調製したPCR産物を制限酵素KpnI及びNheIで切断し、その後ライゲーションした。上記の手順によって、5’3’AAT 108×1、5’3’AAT 108×4、5’3’Alb E6×1及び5’3’Alb E6×4ベクターを得た。
【0067】
LCRエレメントの効果を評価するために、CHO−K1付着細胞株を、トランスフェクションに供した。トランスフェクションの24時間前に、DMEM(LONZA、12−604F)(w/v 10%FBS)培地中で二次培養したCHO−K1細胞培養各500μLを、0.5×10
5個細胞/ウェルで24ウェルプレートに分注した。試験DNA(それぞれpGL4.2−CMV、5’AAT 108×1、5’AAT 108×4、5’Alb E6×1、5’Alb E6×4、5’3’AAT 108×1、5’3’AAT 108×4、5’3’Alb E6×1、及び5’3’Alb E6×4)800ngを、総容量50μL(1ウェルに基づく)になるように1.5mLチューブ中でOpti−MEM(Gibco、31985−088)と混合した。他の1.5mLチューブ中で、lipofectamine(Invitrogen、11668027)2μLを、総容量50μLになるようにOpti−MEMと混合し、室温で5分間反応させた。上で調製した2つの溶液を混合し、室温で20分間反応させた。生成物を100μL/ウェルでウェルに分注した。24時間後に、各ウェル中の培地を新しくし、50μg/mLピューロマイシン(Gibco、A11138−03)をウェルに添加して細胞を選択した。
【0068】
7つの組について、安定な細胞を、約2〜4週間の選択期間で樹立した。樹立された安定な細胞を使用して、ルシフェラーゼ分析を、MAR候補エレメント分析と同じ方法によりOne−glo luciferase analysis system(Promega、E6110)によって行った。7組の結果の中で、最も類似した結果を示した3組の結果を選び、個々のエレメントの効果を比較した。各エレメントのホタル蛍光値を測定し、細胞数に対して補正し、その値はpGL4.2−CMVベクターと比較して0.54〜3.94倍の増加を示した(
図6を参照のこと)。
【0069】
図6に示すように、最高の結果を示したエレメントは、従来から使用されている5’MAR 3.0kbエレメントであり、それは0.24〜9.02(3.94±4.55)倍の増加効果を示した。次に、5’3’AAT 108×4エレメントが、1.79〜4.67(3.38±1.46)倍の増加効果を示した。
【0070】
安定発現におけるpGL4.2−CMV−3’Alb E6、pGL4.2−CMV−3’Alb E6×4、pGL4.2−CMV−3’AAT 108×1及びpGL4.2−CMV−3’AAT 108×4ベクターの効果を評価するために、上と同じ試験を行った。ピューロマイシン選択を2週間行い、1組の試験を行った。結果を、
図7に示す。
【0071】
図7に示すように、pGL4.2−CMV−3’AAT 108×4ベクターは、pGL4.2−CMVベクターと比較して約2倍の増加を示した。この結果は、pGL4.2−CMV−5’AAT 108×4ベクターが、平均1.15倍以下の増加を示したが、pGL4.2−CMV−5’3’AAT 108×4ベクターは平均3.38倍の増加を示したことを間接的ではあるが説明できると考えられた(
図6を参照のこと)。
【0072】
安定な条件下におけるルシフェラーゼ分析試験の結果から、有効なLCRエレメントの型が2つ同定されたが、それらは、従来から使用されている5’MAR 3.0kbと比較して有意な改善を示さなかった。また、蛍光測定試験における大きい変動を考慮して、本試験において効果を検証済みのベクター、pGL4.2−CMV−3’AAT 108×4ベクター及びpGL4.2−CMV−5’3’AAT 108×4ベクターを選び、組換えタンパク質の発現レベルを直接評価しようと計画した。
【0073】
1−3:イントロンエレメント選択
ヒト補体因子H(dCFH)の欠失形態の発現によってキメライントロンの効果を評価するために、dCFH遺伝子を最初に調製した。
【0074】
2工程PCRにより、SCR#1〜4(調節領域)をSCR#18〜20(結合領域)に連結することによって合計7つのSCR(短いコンセンサス反復配列)を有するdCFHを調製した。これらのSCRは、CFH中にある20個のSCRのうち、中間の13個のSCRを除いて選択した。以下で行われる試験において、Phusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermo/F−530S)をポリメラーゼとして使用し;鋳型を98℃で30秒間変性させてDNA鎖を分離し、DNA分子を、変性98℃で10秒間、アニーリング55℃で30秒間及び伸長72℃で30秒間の過程を30サイクル繰り返し、続けて72℃で5分間更に伸長させることによって増幅させた。
【0075】
今後のクローニングにおいて使用できるように、SCR 1Fプライマー(配列番号21)は制限酵素NotI部位を含有し、SCR 20 Bプライマー(配列番号24)はXhoI部位を含有していた。
【0076】
PCRの第1の工程において、鋳型としてpMSGneo−hCFHを使用し、SCR#5の後部(3’)領域及びSCR#18の前部(5’)領域を含有するSCR 1Fプライマー(配列番号21)及びSCR 5(18)Bプライマー(配列番号22)を使用して、SCR#1〜5を得た。また、鋳型としてpMSGneo−hCFHを使用し、SCR#5の後部(3’)領及びSCR#18の前部(5’)領域を含有するSCR 18(5)Fプライマー(配列番号23)、並びにSCR 20 Bプライマー(配列番号24)を使用して、SCR断片#18〜20を得た。調製した2種類の断片を、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean−Up system(Promega)で精製し、回収した。
【0077】
上記のpMSGneo hCFHの調製方法は、以下の通りである。
【0078】
最初に、鋳型としてpCMV−SPORT6−hCFHベクター(Imagene、#IRATp970B10140D)を使用して、プライマー対(配列番号47及び48)を使用して、PCRを実施した。PCRは、以下の通りに実施した:pCMV−SPORT6−hCFH 5ng、各プライマー(10nmol/mL)1μL、PCRプレミックス(AccuPower[登録商標]ProFi Taq PCR PreMix、Bioneer)1μL及び蒸留水46μLを混合することによって、合計50μLのPCR反応混合物を調製し;次いで、混合物を、94℃で30秒間、65℃で60秒間、65℃で3分20秒間の反応過程に30サイクル供した。PCR産物を0.8%アガロースゲルで電気泳動した後、hCFHをコードしている遺伝子断片をゲル溶出によって得た。
【0079】
次いで、hCFHをコードしている遺伝子断片、及び骨格ベクターであるpMSGneoベクター(Mogam Institute、Korea)を、それぞれNotI及びXhoIで処理し;次いで、それらを、T4リガーゼを使用してライゲーションしてhCFHの発現ベクターを得て;このように調製した発現ベクターを、「pMSGneo−hCFH」と称した。
【0080】
PCRの第2の工程は、鋳型として第1のPCR工程において得た2種類の断片を使用し、SCR 1Fプライマー(配列番号21)及びSCR 20 Bプライマー(配列番号24)を使用して行った。Phusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermo/F−530S)を使用して、鋳型を98℃で30秒間変性させてDNA鎖を分離し、DNA分子を、変性98℃で10秒間、アニーリング55℃で30秒間及び伸長72℃で45秒間の過程を30サイクル繰り返し、続けて72℃で5分間更に伸長させることによって増幅させて、dCFH遺伝子(配列番号46)(
図8)を得た。
【0081】
次に、発現ベクターpcDNA−dCFHを調製した。
【0082】
pMSGneo−dCFHベクター及びpcDNA3.1(+)ベクターを、NotI及びXhoI制限酵素で、37℃で約3時間切断した。切断したベクターを、アガロースゲルで電気泳動し;切断したpMSGneo−dCFH遺伝子の中のdCFH遺伝子、及び切断したpcDNA3.1(+)遺伝子の中のベクターのサイズを持つ遺伝子を、ゲルから切り出した。切り出した遺伝子を、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean−Up systemで精製し、回収した。切断した遺伝子を、DNA Ligation Kit Ver.2.1を使用して16℃で約6時間反応させて、pcDNA−dCFH発現ベクターを調製した。
【0083】
次いで、pcDSーdCFH発現ベクターを調製した。pcDNA3.1(+)ベクター及びY11 LC pcIWベクター(Nucleic Acids Res.、2008年9月;36[15]:e96を参照のこと)を、NheI(NEB/R0131S)及びNotI制限酵素で切断した。切断した遺伝子を、アガロースゲルで電気泳動し;切断したY11 LC pcIWベクター遺伝子の中のキメライントロン遺伝子(配列番号25)及び切断したpcDNA3.1(+)ベクター遺伝子を、ゲルから切り出した。切り出した遺伝子を、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean−Up systemで精製し、回収した。切断した遺伝子を、DNA Ligation Kit Ver.2.1を使用して16℃で約6時間反応させて、pcDS−MCSベクターを調製した。更に、上で調製したpcDS−MCSベクター及びpcDNA−dCFHベクターを使用して、pcDS−dDFHベクターを上記の方法によって調製し、この際にdCFH遺伝子を、pcDS−MCSベクターのNheI/NotI切断部位に挿入した。
【0084】
WPRE遺伝子(配列番号26)を確保するために、鋳型としてY11 LC pcIWベクターを使用してPCRを行った。以下で行われる試験において、Phusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermo/F−530S)をポリメラーゼとして使用し;鋳型を98℃で30秒間変性させてDNA鎖を分離し、DNA分子を、変性98℃で10秒間、アニーリング55℃で30秒間及び伸長72℃で30秒間の過程を30サイクル繰り返し、続けて72℃で5分間更に伸長させることによって増幅させた。今後のクローニングにおいて使用できるように、本明細書に使用するWPRE Fプライマー(配列番号27)は制限酵素XhoI部位を含有し、WPRE Bプライマー(配列番号28)はXbaI部位を含有していた。得られたPCR産物を、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean−Up systemで精製し、回収した。
【0085】
上記のPCRによって得られたWPRE遺伝子及びpcDS−dCFHベクターを、XhoI及びXbaI(NEB/R0145S)制限酵素で、37℃で約1時間切断した。切断した遺伝子を、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean−Up systemで精製し、回収した。切断した遺伝子を、DNA Ligation Kit Ver.2.1を使用して16℃で約3時間反応させて、pcDSW−dCFHベクターを調製し、この際にWPRE遺伝子を、pcDS−dCFHベクターのXhoI/XbaI切断部位に挿入した。
【0086】
キメライントロンの一過性発現レベル増加効果を検証するために、CHO−S細胞(Invitrogen、#R800−07)を調製した。細胞を解凍し;エルレンマイヤー目盛を使用して3×10
5個細胞/mLでFreeStyle CHO発現培地(Invitrogen、#12651−014)30mLへ播種し;それらが2〜3日間で1.2〜2.0×10
6個細胞/mLに増殖できるように、2〜3継代保った。次いで、細胞に、Freestyle(商標)Max試薬(Invitrogen、#16447−100)を使用して上で調製したpcDNA−dCFHベクター、pcDS−dCFHベクター及びpcDSW−dCFHベクターをトランスフェクトした。トランスフェクション後に、培養液1mLを、3日目〜7日目まで1日に1回採集した。採集した培養液を使用して、細胞数及び生存度を測定し;ヒト補体因子H ELISAキット(Hycult biotech、#HK342)を使用して、dCFH発現レベルを検証した(
図9)。
【0087】
pcDNA−dCFHベクターをトランスフェクトしたCHO−S細胞は、約13.025μg/mLの最大発現レベルを示したが、pcDS−dCFHベクター及びpcDSW−dCFHベクターをトランスフェクトしたCHO−S細胞は、それぞれ約30.757μg/mL及び48.208μg/mLの最大発現レベルを示した。各ベクターは、pcDNA−dCFHより約2.4〜3.7倍高い発現レベルを示した。
【0088】
第2に、キメライントロンの効果を検証するために、調製したdCFH発現ベクターを、FreeStyle(商標) 293−F細胞(Invitrogen/R790−07)にトランスフェクトした。FreeStyle(商標) 293−F細胞を、Freestyle 293発現培地(Gibco/12338−018)中で培養した。トランスフェクションの24時間前に、細胞を7×10
5個細胞/mLで継代した。
【0089】
トランスフェクションの当日に、細胞を、125mLエルレンマイヤーフラスコ中に、7×10
6個細胞/mLで総容量30mLになるように培地を使用して希釈した。1.5mLチューブ中で、トランスフェクションのためのプラスミド(pcDNA−dCFH、pcDS−dCFH及びpcDSW−dCFH)30μg及びOptiPRO(商標)SFM(Gibco/12309−019)を、総容量600μLになるように混合した。新たな1.5mLチューブ中で、PEI MAX(Polyscience/24765−2)(1μg/μL)90μL及びOptiPRO(商標)SFM510μLを混合した。プラスミドを含有する溶液及びPEI MAXを含有する溶液を混合し、室温で10分間反応させた。293−F細胞を含有するエルレンマイヤーフラスコをゆっくりと回転させながら、混合溶液をそこへ添加した。細胞を、5% CO
2の懸濁インキュベーターにおいて130rpmで、37℃で7日間培養した。培地を、3日目から7日間1.5mLチューブに採集し、5000rpmで3分間遠心分離して細胞を沈殿させた。次いで、上清を取り、ヒト補体因子H ELISAキット(Hycult biotech/HK342)を使用して、dCFH発現レベルを測定した(
図10)。
【0090】
図10に示すように、pcDNA−dCFH、pcDS−dCFH及びpcDSW−dCFHをトランスフェクトした細胞は、それぞれ約138.9μg/mL、638.8μg/mL及び896.7μg/mLの最大発現レベルを示した。pcDNA−dCFH発現ベクターと比較して、キメライントロンを含有するベクターをトランスフェクトした細胞は約4.6倍の増加を示し、キメライントロン及びWPREの両方を含有するベクターをトランスフェクトした細胞は約6.5倍の増加を示した。
【0091】
最後に、キメライントロンの安定発現に対する効果を検証するために、CHO−DG44細胞(DR L.Chasin、Columbia University)を調製した。細胞を解凍し;3×10
6個細胞/T75フラスコでMEM α w/HT(Gibco、12571−063)+10%DFBS(Biotechnics research、7103)培地へ播種し;それらが2〜3日間で90%の集密度に増殖できるように、2〜3継代保った。次いで、調製したpcDNA−dCFHベクター、pcDS−dCFHベクター及びpcDSW−dCFHベクターを、lipofectamine(登録商標)2000形質転換試薬(Invitrogen、#11668−027)を使用して5×10
6個細胞/フラスコで細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、培地を500μg/mL G418で補充した培地と置き換えて、細胞を選択した。細胞増殖を約1週間モニターしながら、第1の継代を、80〜90%集密度で実施した。最初の継代後に細胞が、2〜3日間で約80〜90%の集密度を示した場合、継代を更に2回実施し、細胞を、同じ様式で5×10
6個細胞/フラスコでT75フラスコに植菌し、次いで、培養液1mLを、3日目〜7日目まで1日に1回採集した。7日間の最終日に、0.25%トリプシン−EDTA(Invirtogen、#25200−056)で細胞を処理した後に細胞数及び生存度を計数し;dCFH発現レベルを、ヒト補体因子H ELISAキット(Hycult biotech、#HK342)を使用して測定した(
図11)。
【0092】
図11に示すように、pcDNA−dCFHベクターをトランスフェクトしたCHO−DG44細胞は、約0.054μg/mLの最大発現レベルを示したが、pcDS−dCFHベクター及びpcDSW−dCFHベクターをトランスフェクトしたCHO−DG44細胞は、それぞれ約0.934μg/mL及び0.924μg/mLの最大発現レベルを示した。各ベクターは、pcDNA−dCFHより約17.3〜17.1倍高い発現レベルを示した。
【0093】
1−4:追加のエレメントの選択
更なる選択を、MAR及びLCRエレメントの一次選択で選択された4つのエレメントを使用してFIX(第IX因子)タンパク質発現のレベルを比較することによって実施した。上で調製したルシフェラーゼベクターからルシフェラーゼ遺伝子を除去し、FIX遺伝子をそこへ挿入することによってベクターを調製しようと計画した。新規ベクター調製において使用する場合、プライマーが、FIX遺伝子の前部にXhoI、PacI及びApaI制限酵素部位、並びに後部にApaI及びFseI部位を含むようなプライマー組(配列番号29及び30)を調製した。
【0094】
次いで、鋳型としてpMSG−FIXベクター及びプライマー組(配列番号29及び30)を使用してPCRを実施した。
【0095】
pMSG−FIXベクターの調製方法は、以下の通りである。最初に、mRNAを、オリゴdTカラム(Invitrogen、USA)を使用してヒト肝細胞から抽出して、FIX遺伝子を分離した。遺伝子バンク(参照;Genbankアクセッション番号M11309;1〜2775bp)に登録されているFIX遺伝子配列に基づいてFIX遺伝子特異的5’末端及び3’隣接領域と結合するプライマー組(配列番号49及び50)を調製した後、Titan one tube RT−PCR system(Roche)を使用してRT−PCRを実施して、約1383bp(461アミノ酸)のサイズを持つFIX cDNAを合成し、次いでそのcDNAをpGEM−Tベクター(Promega)にクローニングした。
【0096】
分離したFIX遺伝子を、NheI及びBglIIを含むプライマー組(配列番号51及び52)を使用するPCRによって増幅し、動物細胞発現ベクターであるpMSGベクター(Mogam Biotechnology institute、Korea)にクローニングした。PCRから得たFIX遺伝子を、NheI及びBglII制限酵素(New England Bio Labs、USA)を使用して切断し、次いで1.2%アガロースゲル電気泳動に供して1.4kbのサイズを持つ遺伝子を分離した。分離したFIX遺伝子を、NheI及びBglII制限酵素で前処理したpMSGベクターにライゲーションして、FIX発現ベクターを調製した。CaCl
2沈殿を使用して、大腸菌(E.coli)DH5aをライゲーション反応が完了したDNA混合物で形質転換した。形質転換した大腸菌を、50μg/mLアンピシリンを含有するLBプレートに塗り広げ、37℃で終夜培養した。培養皿上に形成されたコロニーを培養した後、QIAfilter mini−Plasmid Kit(Qiagen、Germany)を使用してプラスミドを単離した。NheI/BglII制限酵素での処理によって、単離したプラスミドDNAがFIX DNA断片を含有することを確認した。このように調製した発現ベクターを、「pMSG−FIX」と称した。
【0097】
PCRによって増幅したDNA断片をゲル抽出によって精製し、pCR2.1−TOPOプラスミドベクターに挿入した。配列番号31によって表されるFIX遺伝子の存在を、制限酵素を使用する切断マッピング及びDNA配列分析によって検証した。XhoI及びFseI制限酵素を使用してルシフェラーゼ遺伝子が除去されたベクターに、同じ制限酵素を使用してFIX遺伝子を挿入した。このように調製したFIX発現ベクター組1の概略図を、
図12に示す。
【0098】
付着細胞株CHO−K1におけるFIX発現を、ルシフェラーゼ発現試験と同じ方法によって測定した。上記と同じ様式で、安定な細胞を、約2週間の選択期間で樹立した。試験を、合計4組において実施し、FIX発現レベルをELISA法によって測定し、細胞数に対して補正した。
【0099】
FIX ELISA法は以下の通りである。ウェル中の培地を1.5mLチューブに採集した。各ウェルを、1×PBS 1mLで洗浄した。トリプシン−EDTA 100μL/ウェルをウェルに添加し、次いで細胞インキュベーター内で、37℃で1分間反応させて、底面からトランスフェクトした細胞を分離した。各ウェルに、1mLの培地を添加して細胞を採集し、細胞の数を計数した。連続培養の場合、細胞を、12ウェルプレートを使用して0.5〜1.0×10
5個細胞/mLでの継代で培養し、細胞選択を、ピューロマイシン(50μg/mL)を使用して実施した。
【0100】
ヒト第IX因子抗原(Affinity Biological、FIX−EIA)のELISA用としてMatched−pair Antibody setにより提供されている捕捉抗体を、コーティング緩衝液(50mM炭酸塩緩衝液;3次蒸留水1LにNa
2CO
3 1.59g及びNaHCO
3 2.93gを添加した後に、pH9.6に調整した)を使用して1/100に希釈した。希釈した捕捉抗体を、100μL/ウェルで96ウェルELISAプレートに分注し、室温で2時間反応させた。ウェルをPBS−Tween緩衝液で3回洗浄した。次いで、標準として因子FIX(Benefix、250μg/mL)を、希釈緩衝液を使用して50ng/mLから0.781ng/mLへと1/2段階希釈により調製した。最初に採集した培地を、希釈緩衝液(1×PBS中に1%BSA)を使用して1/10、1/100及び1/1000に希釈し、次いで100μL/ウェルでウェルに添加し、室温で1時間30分間反応させた。ウェルをPBS−Tween緩衝液で3回洗浄した。各ウェルにTMBマイクロウエルペルオキシダーゼ基質100μLを添加し、室温で10分間反応させた。次いで各ウェルに2.5M H
2SO
4 100μLを添加して反応を止め、吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0101】
図13及び下の表2に示すように、全体の傾向は、ルシフェラーゼによるこれまでの結果と類似していた。SV40プロモーターは、CMVプロモーターと比較して約3.4倍高い増加効果を示した。最も有効なものは、pGL4.2−SV40−5’MAR3.0ベクターであり、CMV対照群及びSV40対照群と比較してそれぞれ7倍及び2.1倍の発現レベル増加効果を示した。
【0102】
【表2】
【0103】
SV40プロモーターの制御下にあるLCRエレメントの効果を調べるために、ベクターを、プロモーターを置き換えるためのクローニング過程に供した。NheI及びXhoI制限酵素を使用して、CMVプロモーターを有する上で調製したベクターからCMVプロモーターを除去し、同じ制限酵素を使用してSV40プロモーターを挿入した。加えて、5’MAR及び3’AAT108×4、並びに5’3’MAR3.0ベクターの組合せを有するベクターを調製し、試験に使用した。調製したFIX発現ベクター組2の概略図を、
図14に例示する。
【0104】
付着細胞株CHO−K1におけるFIX発現を、FIX発現ベクター組1に対するのと同じ方法によって測定した。安定な細胞を、約2週間の選択期間で樹立した。試験を、合計3組において実施し、FIX発現レベルをELISA法によって測定し、細胞数に対して補正した。
【0105】
図15及び下の表3に示すように、SV40対照群と比較して発現レベルの増加を示した場合はなく;置き換えられたSV40プロモーターを持つLCR候補群において、どのベクターも、pSV40−5’MAR3.0と比較して高い発現レベルを示さなかった。よって、FIX発現レベルの比較から、SV40プロモーター及び5’MAR3.0エレメントを選択した。
【0106】
【表3】
【実施例2】
【0107】
新規ベクターの調製
実施例1において選択したエレメントを使用して新規ベクターを調製した。
【0108】
FIX発現比較試験において使用したpSV40−5’MAR3.0−FIXベクターをApaI制限酵素で処理してFIX遺伝子を除去し、自己ライゲーションさせ、それによりpSV40−5’MAR3.0−MCSベクターを得た。MCSは、4つの型の制限酵素部位:XhoI、PacI、ApaI及びFseIを含んでいた。
【0109】
pSV40−5’MAR3.0−MCSベクター中のピューロマイシン選択領域をDHFR発現領域で置き換えて、DHFR遺伝子を有するベクターを更に調製した。置き換えのために制限酵素部位を調べると、2つのSapI部位が存在する(前部及び後部に)ことが判明し;Sa1I及びAf1IIIで処理し、Klenow酵素を使用して平滑末端を調製し、その後自己ライゲーションすることによって後部にあるSapI部位を除去した。ピューロマイシン発現系(pMS−P−MCS)の制限酵素地図の概略図を、
図16に示す。
【0110】
必要なDHFR発現系として、本研究所において従来から使用されてきたpDCH1Pベクターの発現系を使用した。ハムスターDHFR遺伝子を含む約2.5kbにおいて、5’隣接及び3’隣接、プロモーター並びにpolyA部分を、参照文献(Proc Natl Acad Sci.1991年、第88巻.8572頁;及びMol.Cell.Biol.1984年、第4巻、38頁)に基づいて確認し、サイズを約1.5kbに短くするためにPCRプライマー(配列番号32及び33)を設計した。
【0111】
鋳型としてpDCH1Pベクターを使用してPCRを実施して、DNA断片を得、次いでその断片をpCR2.1−TOPOベクターに挿入し、配列決定した(配列番号34)。遺伝子配列を検証済みのDHFR発現領域を、pSV40−5’MAR 3.0−MCSベクターに挿入した。ベクター及び挿入物を、SapI及びSa1I制限酵素で各々切断し、再び接続した。クローニングされた産物を同じ制限酵素で処理し、所望のサイズを持つバンドがDNAゲル上に存在するかどうか検証した。上の手順によって、新規ベクター対1(pMS−P−MCS及びpMS−D−MCS)を調製した(
図17)。
【0112】
調製した新規ベクターの対の遺伝子発現能力を、従来のベクターと比較するために、ER2抗体(EGFR抗体;韓国特許第1108642号を参照のこと)遺伝子を、新規ベクターの対、及び従来のMARベクターであるpMSGneoベクター(Mogam Biotechnology Institute、韓国)のそれぞれにクローニングした。2種類のベクターにクローニングする場合、ER2抗体の軽及び重鎖の両方に対し、XhoI及びNheI部位を5’領域に、並びにPacI及びXhoI部位を3’領域に付加し、次いでPCRを実施した。PCRの場合、鋳型としてpOptiVEC−ER2HC及びpcDNA3.3−ER2LCベクターをそれぞれ使用し、重鎖及び軽鎖用のプライマーとしてHC(配列番号35及び36)組及びLC(配列番号37及び38)組をそれぞれ使用した。PCR産物をpCR2.1−TOPOベクターに挿入し、DNA配列(配列番号42及び43)を確認した。
【0113】
配列を検証済みのER2抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子を、NheI及びXhoI制限酵素を使用してpMSGneoベクターにクローニングし、XhoI及びPacI制限酵素を使用して新規ベクターの対(pMS−P−MCS及びpMS−D−MCS)にもそれぞれクローニングした。
【0114】
クローニングされた産物を同じ制限酵素で処理し、所望のサイズを持つバンドがDNAゲル上に存在するかどうか検証した。このように、4つのベクターを調製し、それにはER2抗体発現用の新規ベクター対I(pMS−P−ER2LC及びpMS−D−ER2HC)及び一対のMARベクター(pMSGneo−ER2LC及びpMSGneo−ER2HC)が含まれる(
図18A及び18B)。
【0115】
他方で、上で調製した新規ベクター対Iにキメライントロンを付加する効果を検証するために、ベクターを更に調製した。PCRを、鋳型としてpcDSdCFHベクターを使用し、配列番号44及び45のプライマー組を使用して実施して、DNA断片を得、PCR産物をpCR2.1−TOPOベクターに挿入し、キメライントロン(配列番号25)のDNA配列を検証した。ER2抗体発現用の新規ベクター対I(pMS−P−ER2LCベクター及びpMS−D−ER2HCベクター)をXhoIで切断し、同じ制限酵素で処理したキメライントロンを、それぞれに挿入した。上の手順により、ER2抗体発現用の新規ベクター対II(pMSI−P−ER2LC及びpMSI−D−ER2HC ER2)を調製した(
図19)。
【0116】
ER2抗体発現ベクターを更に調製して、新規ベクター対IIのエレメント特性を検証した。
【0117】
SV40プロモーターだけを持つベクターに関しては、pS−P−MCSベクターを、上記と同じ方法によってpGL4.2−SV40−FIXベクターからFIX遺伝子を除去することによって調製し、pS−D−MCSベクターを、ピューロマイシン遺伝子をDHFR遺伝子で更に置き換えることによって調製した。次いで、XhoI及びPacIを使用してそこにER2の軽及び重鎖遺伝子を挿入して、SV40プロモーターを持つER2抗体発現ベクター用の一対のベクター(pS−P−ER2LC及びpS−D−ER2HC)を調製した(
図20A)。XhoI制限酵素を使用して調製したベクターへキメライントロンを挿入して、キメライントロンを含む一対のベクター(pSI−P−ER2LC及びpSI−D−ER2HC)を調製した(
図20B)。
【実施例3】
【0118】
ベクターの遺伝子発現能力の評価
上で調製した新規ベクターの遺伝子発現能力を、以下の通りに検証した。
【0119】
3−1:付着細胞株におけるER2抗体発現についての新規ベクター対I及び新規ベクター対IIの評価
最初に、新規ベクター対I及び新規ベクター対IIを使用するER2抗体発現を、CHO−K1及びCHO−DG44付着細胞株において実施した。発現レベルを、一対の市販の二重ベクター及び表4に示す一対のMARベクターと比較した。
【0120】
【表4】
【0121】
トランスフェクションの24時間前に、DMEM(w/10%FBS)培地中で培養したCHO−K1細胞を、0.8×10
5個細胞/ウェルで、各500μLの量で12ウェルプレートのウェルへ分注した。MEM−αw/HT(Gibco、12571−063)培地中で培養したCHO−DG44細胞を、1.5×10
5個細胞/ウェルで、各500μLの量でウェルへ分注した。分注の24時間後に、Opti−MEM及び試験ベクターを、総容量50μL(1ウェルに基づく)になるように1.5mLチューブ内で混合した。Opti−MEM 47μL及びlipofectamine 2000 3μLを、新たな1.5mLチューブ中で混合し、室温で5分間反応させた(1ウェルに基づく)。反応が完了した後、上で調製した2種類の溶液を混合し、室温で20分間反応させた。24時間後に、各ウェルからトランスフェクトした培地を除去し、PBSで洗浄した。トリプシン−EDTA(1×)を、100μL/ウェルでそこへ分注し、37℃で1分間反応させて、細胞を分離した。培地を1000μL/ウェルでそこへ分注し、細胞の数を計数した。
【0122】
CHO−K1細胞を、総容量1mLになるように1.0×10
5個細胞/ウェルで12ウェルプレートのウェルに分注し;1000μg/mL G418(PAA、P11−012)又は50μg/mLピューロマイシンを各ベクターに対して適切にそこへ添加し;細胞選択を実施した。DG44細胞を、総容量1mLになるように1.5×10
5個細胞/ウェルで12ウェルプレートのウェルに分注し;750μg/mL G418又は20μg/mLピューロマイシンを各ベクターに対して適切にそこへ添加し;細胞選択を実施した。トランスフェクションを合計2組で行い、3週間の間に1組当たり合計3回サンプルを得て、ELISA試験を行った。
【0123】
ER2 ELSIA法については以下の通りである。ヤギ抗ヒトIgG(Fab特異的)(Sigma、I5260)を、コーティング緩衝液を使用して5μg/mLに希釈した。希釈した捕捉抗体を、100μL/ウェルで96ウェルELISAプレートに分注し、室温で2時間又はそれ以上反応させた。それらを、PBS−0.1%Tween20緩衝液300μLを使用して3回洗浄した。PBS−1%BSAを、300μL/ウェルでそこへ添加し、ブロッキングを室温で2時間実施した。生成物を、PBS−0.1%Tween20緩衝液300μLを使用して3回洗浄した。標準としてHBIG遺伝子(2.8mg/mL)を、PBS−1%BSAを使用して280、140、70、35、17.5、8.75及び4.375ng/mLの濃度で調製した。培養液を、PBS−1%BSAを使用して希釈した。標準及び希釈した培養液を、2つ組で100μL/ウェルの捕捉抗体でコーティングした96ウェルプレートへ分注し、室温で1時間反応させた。ウェルを、PBS−0.1%Tween20緩衝液300μLを使用して3回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)−HRP(Sigma、A0170)を、PBS−BSAを使用して1/100000に希釈した。希釈した溶液を、100μL/ウェルでプレートへ分注し、室温で1時間反応させた。生成物をPBS−0.1%Tween20緩衝液300μLで3回洗浄した。TMBマイクロウエルペルオキシダーゼ基質を、100μL/ウェルで分注し、室温で30分間反応させた。2.5M H
2SO
4を、100μL/ウェルで分注して反応を止め、吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して450nmで測定した。標準曲線を、4パラメータフィッティングで作製し、測定した培養液の吸光度をパラメータと置き換えて濃度を算出した。
【0124】
表5、並びに
図21A及び21Bに示すように、CHO−K1において市販の二重ベクターの対でER2 Abの発現レベルは確認できなかった。従来のMARベクターの対、新規ベクター対I及び新規ベクター対IIは、それぞれ約9.7ng/mL、約14.0ng/mL、及び約1473.2ng/mLの平均発現レベルを示した。新規ベクター対I及び新規ベクター対IIはそれぞれ、一対のMARベクターより約1.4倍及び約151.3倍高い発現レベルを示した。加えて、新規ベクター対IIは、新規ベクター対Iより約105.4倍高い発現レベルを示し、これから、キメライントロンの効果が優れていることが示された。
【0125】
CHO DG44細胞において市販の二重ベクターの対、MARベクターの対、新規ベクター対I及び新規ベクター対IIのER2 Abの平均発現レベルはそれぞれ、13.1ng/mL、3.8ng/mL、27.5ng/mL及び653.0ng/mLであった。市販の二重ベクターの対は、MARベクターの対より約3.5倍高い発現レベルを示した。新規ベクター対I及び新規ベクター対IIはそれぞれ、MARベクターの対より約7.3及び173.7倍高い発現レベルを示した。加えて、新規ベクター対IIは、新規ベクター対Iより約23.8倍高い発現レベルを示した。
【0126】
【表5】
【0127】
3−2:懸濁細胞株における新規ベクター対IIの評価
新規ベクター対IIを、CHO−S及びCD DG44−S懸濁液細胞株において評価した。
【0128】
トランスフェクションの24時間前に、CHO−S細胞株(Gibco、A13696−01)を、CD FortiCHO培地に5〜6×10
5個細胞/mLで必要量まで継代した。トランスフェクションの当日、細胞の数及び生存度(必ず95%以上)を、測定した。細胞を、CD FortiCHO培地(Gibco、A11483−01)を使用して1×10
6個細胞/mLで125mLフラスコへ分注した。プラスミドDNA 90μgを、総容量1.5mLになるようにOptiPro(商標)SFMと混合した。PEI MAX(1μg/μL)270μL及びOptiPro(商標)SFM 1230μLを、一切ボルテックスせずに混合した。PEI MAXを含有するOptiPro(商標)SFMを、プラスミドDNAを含有するOptiPro(商標)SFMに入れ、次いで穏やかに混合した。次いで、生成物を室温で5分間反応させた。産生したDNA:PEI複合体3mLを、予め調製しておいた125mLフラスコ中のCHO−S細胞に滴下した。細胞を、CO
2振盪培養器内で、130〜150rpmで攪拌しながら37℃で培養し、細胞選択を48時間後に実施した。
【0129】
他方で、CD DG44−S細胞株を、以下の方法によって調製した。最初に、無血清培地(HyQ SFM4CHO[Thermo Scientific、Hyclone]+1×HT Supplement)を使用して、CHO DG44付着細胞株(α−MEM[w/]+10% cFBS培地中で培養した)を、125mLスピナーフラスコを使用して50mL培地中で2〜3日間隔で継代し、それにより細胞を懸濁培養に適応させた。適応細胞を、EX−CELL(商標)CD CHO(Sigma、14361C)/4mM L−グルタミン/1×HT Supplement mediumが入った置き換え培地で、2〜3日間隔で二次培養し、それにより細胞を培地に適応させた。細胞の増殖が安定であり、生存度が90%以上で維持され、細胞の濃度が1〜2×10
6個細胞/mLに達した場合、CHO DG44−S宿主細胞株を預託し、それにより細胞株の確立を保証した。
【0130】
トランスフェクションの24時間前に、細胞を、EX−CELL(商標)CD CHO(Sigma、14361C)に5〜7×10
5個細胞/mLで必要量まで継代した。細胞を、Freestyle CHO培地を使用して2×10
6個細胞/mLで、15mLの量で125mLフラスコへ分注した。プラスミドDNA30μgを、総容量0.75mLになるように、150mM NaClと混合した。PEI MAX(1μg/μL)90μL及び150mM NaClを、一切ボルテックスせずに混合した。PEI MAXを含有する150mM NaClを、プラスミドDNAを含有する150mM NaClに入れ、穏やかに混合した。生成物を室温で5分間反応させた。産生したDNA:PEI複合体1.5mLを、予め調製しておいた125mLフラスコ中のCD DG44−S細胞に滴下した。細胞を、CO
2振盪培養器内で、130rpmで、37℃で5時間培養し、細胞の選択を48時間後に実施した。
【0131】
CHO−Sの場合、細胞の選択は、表6に示す選択培地を使用して実施した。
【0132】
【表6】
【0133】
最初に、トランスフェクトされた細胞の数を計数した。各条件に適切な選択培地を使用して、細胞を、5×10
5個細胞/mLで、50mLの量でT−175フラスコへ分注した。細胞数が十分でなかった場合、総容量を減少させた。細胞を、CO
2インキュベーター内で、37℃で、静止状態で培養した。選択の7日後に、細胞の数を計数した。生存度が30%を超えた場合、試験を次の工程に進めたが、そうでない場合、細胞の数を10〜11日後に計数した。11日後でも生存度が30%未満であった場合、選択培地を新たな培地に置き換え、濃度が3×10
5個細胞/mL以上になるように、T−フラスコのサイズを小さくした。培地を3〜4日間隔で完全に置き換え、もしあれば回復シグナルを調べた。回復シグナルが存在し、生存度が30〜50%であった場合、細胞を、条件に適切な選択培地を使用して3×10
5個細胞/mLで125mLフラスコに継代した。細胞を、CO
2インキュベーターにおいて150rpmで攪拌しながら37℃で培養した。3〜4日間隔で、細胞を、条件に適切な選択培地を使用して3×10個細胞/mLで、30mLの量で125フラスコに継代した。希釈倍率が2倍以上だった場合、培地は完全には新しくしなかった。生存度が85%以上、生細胞密度が1×10
6個細胞/mL以上だった場合、選択が完了したと見なした。
【0134】
他方で、CD DG44−Sの場合、細胞の選択は、表7に示す選択培地を使用して実施した。
【0135】
【表7】
【0136】
トランスフェクトされた細胞の数を計数した。細胞を、各ベクターに適切な選択培地を使用して5×10
5個細胞/mLで、各30mLの量で125mLフラスコへ分注した。細胞数が十分でなかった場合、総容量を減少させることになった。細胞を、CO
2インキュベーターにおいて130rpmで攪拌しながら37℃で培養した。3〜4日間隔で、細胞を、選択培地を使用して3×10
5個細胞/mLで、30mLの量で125mLフラスコに継代した。希釈倍率が2倍以上だった場合、培地は完全には新しくしなかった。生存度が80%以上、生細胞密度が1×10
6個細胞/mL以上だった場合、選択が完了したと見なした。トランスフェクションを合計2組で実施し、3〜4週間の間に各組当たり合計3回サンプルを得て、ELISA試験を行った。
【0137】
ER2 ELISAを、付着細胞株について記述したのと同じ様式で実施し、その結果を表8に示す。
【0138】
下記の表8に示すように、CHO−S細胞株におけるER2抗体の3日間の生産性について、市販の二重ベクターの対、MARベクターの対、及び新規ベクター対IIの発現レベルは、それぞれ0.2〜0.3μg/mL、1.0〜2.0μg/mL、及び9.5〜17.0μg/mL(平均)であった。バッチ生産性において、市販の二重ベクターの対、MARベクターの対、及び新規ベクター対IIの最大産生量は、それぞれ0.7μg/mL、10.3μg/mL、及び35.0μg/mL(平均)であった。従って、バッチ生産性において、本発明の新規ベクター対IIは、市販の二重ベクターの対及びMARベクターの対と比較して、それぞれ約50倍、及び約3.4倍以上の抗体発現増加効果を示した。
【0139】
加えて、CD DG44−S細胞株におけるER2抗体の3日間の生産性について、市販の二重ベクターの対、MARベクターの対、及び新規ベクター対IIの発現レベルは、それぞれ0.2〜0.3μg/mL、0.2〜0.25μg/mL、及び1.0〜1.5μg/mLであった。バッチ生産性において、市販の二重ベクターの対、MARベクターの対、及び新規ベクター対IIの最大産生量は、それぞれ0.7μg/mL、0.5μg/mL、及び3.6μg/mL(平均)であった。
【0140】
バッチ生産性において、新規ベクター対IIは、市販の二重ベクターの対及びMARベクターの対と比較して、それぞれ約5.1倍、及び約7.2倍以上の抗体発現増加効果を示した。
【0141】
【表8】
【0142】
3−3:新規ベクターの構成エレメントの特性評価
新規ベクターの構成エレメントの特性評価を、CHO−S及びCD DG44−S細胞株において実施した。下記の表9に示すように、試験に使用したベクターの対は、以下の通りであった:pS(一対のプロモーターベクター)、pSI(一対のイントロンベクター)、pMS(新規ベクター対I)及びpMSI(新規ベクター対II)。
【0143】
【表9】
【0144】
実施例3−2と同じ評価方法を、以下の通りに使用した。ベクターの各対をトランスフェクトし、選択期間を過ぎて選択が完了したら、ER2抗体発現レベルを比較した。その結果を、以下の表10に示す。
【0145】
【表10】
【0146】
表10に示すように、CHO−S細胞株において、新規ベクター対I、新規ベクター対II、プロモーターベクターの対、及びイントロンベクターの対に関する細胞選択は、それぞれ約4週間、約4.5週間、及び約7週間で完了した。MARエレメントを有する新規ベクター対I及び新規ベクター対IIは、イントロンベクターの対より約1.8倍短い選択期間を示した。選択結果は、プロモーターベクターの対と比較して、イントロンベクターの対、新規ベクター対I及び新規ベクター対IIの3日間の生産性が、それぞれ18.4倍、1.8倍、及び20.6倍増加し;イントロンベクターの対、新規ベクター対I、及び新規ベクター対IIのPCD(pg/細胞/日)が、それぞれ13.3倍、1.0倍、及び26.1倍増加したことを示した。
【0147】
CD DG44−S細胞株において、4つのベクターの細胞の選択は、約3週間ですべて完了した。CHO−Sとは異なり、すべてのベクターが、同様の期間の間に適応した。また、プロモーターベクターの対と比較して、イントロンベクターの対、新規ベクター対I及び新規ベクター対IIの3日間の生産性が、それぞれ13.8倍、2.4倍、及び64.8倍増加し;イントロンベクターの対、新規ベクター対I及び新規ベクター対IIのPCDが、それぞれ14.7倍、3.8倍及び86.4倍増加したことが判明した。
【0148】
結論として、MARエレメント、及びイントロンエレメントを別々に使用するのではなく一緒に使用した場合に、3日間の生産性及びPCDにおいて約1.6〜2.0倍の相乗効果が観察された。
【0149】
本発明は、上の特定の実施形態に関して記述してきたが、当業技術者は本発明を様々に修飾及び変更することができ、それらも、添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれることは認識されるべきである。